(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トンネル部は、その頂壁に前記フロアパネルの下面に搭載したバッテリまたは前記ジャンクションボックスから車室内に搭載した室内補機に送電するワイヤハーネスを配索する貫通孔を備えていることを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
前記フロアパネルの下面に搭載したバッテリから車両のフロントコンパートメントに搭載したモータユニットに送電するワイヤハーネスを、前記受電部の上方に通して前記トンネル部の内側に沿って車両前後方向に配索したことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触給電装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0011】
図1に示す本実施形態の非接触給電装置は、地上側ユニットである給電装置100と、車両側ユニットである受電装置200と、を備え、給電スタンド等に配置される給電装置100から、電気自動車やハイブリッド車に代表される車両1に搭載された受電装置200に非接触で電力を供給し、車載バッテリ27を充電するものである。
【0012】
給電装置100は、給電スタンド近傍の駐車スペース2に配置した給電部12を備え、受電装置200は、車両1を駐車スペース2の所定位置に止めたときに給電部12に対向するように車両1の底面に配設した受電部22を備えている。
【0013】
給電部12として導電線からなる一次コイルを主体とした送電コイルが用いられ、また、受電部22として同じく導電線からなる二次コイルを主体とした受電コイルが用いられ、両コイル間における電磁誘導作用により、送電コイル12から受電コイル22へ非接触に電力を供給可能としている。
【0014】
地上側の給電装置100は、電力制御部11と、送電コイル12と、無線通信部13と、制御部14と、を備えている。
【0015】
電力制御部11は、交流電源300から送電される交流電力を、高周波の交流電力に変換し、送電コイル12に送電するための回路で、整流部111と、PFC回路112と、インバータ113と、センサ114と、を備えている。整流部111は、交流電源300に電気的に接続され、交流電源300からの出力交流電力を整流する回路である。PFC回路112は、整流部111からの出力波形を整形することで力率を改善するための回路(Power Factor Correction)であり、整流部111とインバータ113との間に接続されている。
【0016】
無線通信部13は、車両1側に設けられた無線通信部23と双方向に通信を行う。
【0017】
制御部14は、給電装置100全体を制御する部分であり、無線通信部13,23間の通信により給電装置100からの電力供給を開始する旨の信号を車両1側に送信したり、車両1側から給電装置100からの電力を受給したい旨の信号を受信したりする。
【0018】
制御部14は、この他に、センサ114の検出電流にもとづいてインバータ113のスイッチング制御を行い、送電コイル12から送電される電力を制御する。また、給電中に異物センサ15からの検出信号にもとづいて、給電停止を行い、あるいは無線通信部13,23を通じて車両1側に警告信号を送信する。
【0019】
異物センサ15として、例えば金属検知コイルが用いられ、給電中に送電コイル12と受電コイル22との間に形成される磁場に金属異物が侵入,あるいは介在した場合には、異物センサ15の検出電気信号により、制御部14により直ちに警告あるいは給電停止を促して、金属異物の磁場介在に起因する給電不良等の不具合の発生を未然に防止する。
【0020】
車両1側の受電装置200は、受電コイル22と、無線通信部23と、充電制御部24と、整流部25と、リレー部26と、バッテリ27と、インバータ28と、モータ29と、通知部30と、を備えている。
【0021】
受電コイル22は、後述するように車両1を駐車スペース2の所定の停止位置に駐車すると、送電コイル12の直上に正対し、該送電コイル12と距離を保って位置づけられる。
【0022】
整流部25は、受電コイル22に接続され、受電コイル22で受電された交流電力を直流に整流する整流回路により構成されている。
【0023】
リレー部26は、充電制御部24の制御によりオンおよびオフが切り換わるリレースイッチを備えている。また、リレー部26は、リレースイッチをオフにすることで、バッテリ27を含む主回路系と、充電の回路部となる受電コイル22および整流部25とを切り離す。
【0024】
バッテリ27は、複数の二次電池を接続することで構成され、車両1の電力源となる。インバータ28は、IGBT等のスイッチング素子を有したPWM制御回路等の制御回路であって、スイッチング制御信号にもとづいて、バッテリ27から出力される直流電力を交流電力にし、モータ29に供給する。モータ29は、例えば三相の交流電動機により構成され、車両1を駆動させるための駆動源となる。
【0025】
通知部30は、警告ランプ、ナビゲーションシステムのディスプレイまたはスピーカ等により構成され、充電制御部24による制御にもとづいて、ユーザに対して光,画像または音声等を出力する。
【0026】
充電制御部24は、バッテリ27の充電を制御するためのコントローラであり、無線通信部23、通知部30、リレー部26等を制御する。充電制御部24は、充電を開始する旨の信号を、無線通信部23,13の通信により制御部14に送信する。また、充電制御部24は、車両1の全体を制御する図外のコントローラとCAN通信網で接続されている。このコントローラは、インバータ28のスイッチング制御や、バッテリ27の充電状態(SOC)を管理する。そして、充電制御部24は、このコントローラにより、バッテリ27の充電状態にもとづいて満充電に達した場合に、充電を終了する旨の信号を制御部14に送信する。
【0027】
本実施形態の非接触給電装置では、送電コイル12と受電コイル22との間で、電磁誘導作用により非接触状態で高周波電力の送電および受電を行う。言い換えると、送電コイル12に電圧が加わると、送電コイル12と受電コイル22との間には磁気的な結合が生じ、送電コイル12から受電コイル22へ電力が供給される。
【0028】
ここで、上述の送電コイル12と受電コイル22の各々相対する保護筐体面は、電磁誘導域であるためその妨げにならないように合成樹脂材で構成される。
【0029】
図2〜
図10は、上述の受電コイル22およびバッテリ27の車両1への搭載状態を示している。
【0030】
受電コイル22およびバッテリ27は、何れも車両1のフロアパネル40の下面に搭載している。
【0031】
受電コイル22は、その搭載位置をフロアパネル40の前端部下面の車幅方向中央部に設定してあり、バッテリ27はこの受電コイル22の配設部の後側近傍位置から車両後方に亘る広い面積を占有して搭載している。
【0032】
フロアパネル40はその前端にフロントコンパートメント1Fと車室1Rとを隔成するダッシュパネル41を接合配置してあり、その車幅方向中央(車両中心)には車室1R側に膨出して車両前後方向に延在するトンネル部42を備えている(
図2、
図3参照)。
【0033】
トンネル部42の両側の膨出基部に沿って車両前後方向に延在する閉断面の補剛部43を形成してある。
【0034】
フロアパネル
40は、これらトンネル部42およびその補剛部43と、車幅方向両側に車両前後方向に配設したサイドシル44、車幅方向に配設した複数のクロスメンバ45、およびフロア前部側で前記各補剛部43とこれに近接したサイドシル44とを結合するアウトリガー46等のフロア骨格部材により所要のフロア剛性を確保している(
図2〜
図4参照)。
【0035】
そこで、大型でかつ重量のあるバッテリ27は、上述のサイドシル44,クロスメンバ45等の主要骨格部材と、トンネル部42の補剛部43にしっかりと締結固定している。
【0036】
一方、受電コイル22は上述の搭載設定位置、即ち、フロアパネル40の前端部下面の車幅方向中央位置で、トンネル部42の下側開放部に跨って結合配置してある(
図4参照)。
【0037】
受電コイル22は、その車幅方向の幅寸法W2をトンネル部42の下側開放部の幅寸法W1よりも大きく設定して(W1<W2)、
図9(A),(B)に示すようにトンネル部42の下側開放部の補剛部43,43に跨って、あるいはアウトリガー46,46に跨って結合配置してある。
【0038】
受電コイル22は、受電用のコイル本体221と、該コイル本体221を格納固定したアルミ等の非磁性金属製の保護筐体222と、保護筐体222の下側開放部を閉塞した蓋体223と、を備えた方形の盤状として構成している。この蓋体223は前述の理由により適宜の合成樹脂製として、送電コイル12と受電コイル22との電磁誘導作用の妨げとならないようにしている(
図5,
図6参照)。
【0039】
保護筐体222の上面中央には、配電盤(分配装置)やリレー(リレー部26)、コントローラ(充電制御部24)等を格納したジャンクションボックス225を配設してある。
図5、
図6に示す例では、保護筐体222の上面中央に、整流器(整流部25)やコンデンサ等の電装部品を格納した電装ボックス224を設けてある。ジャンクションボックス225は電装ボックス224と投影平面で同じ大きさに別体成形して、この電装ボックス224上に脱着可能に組付けている。
【0040】
電装ボックス224は、保護筐体222と一体に形成して、内部をコイル本体221の格納部分とは仕切プレートで隔成するが、これは、保護筐体222と別体に構成することもできる。
【0041】
フロントコンパートメント1Fの車幅方向両側には、後端をダッシュパネル41に接合して車両前後方向に延在し、車体前部の骨格部材を構成するフロントサイドメンバ50を配設してある。
【0042】
このフロントコンパートメント1Fの下側には、サブフレーム51を配設してあり、該サブフレーム51に前述のインバータ28とモータ29とからなるモータユニット29Uをマウント部材52を介して搭載固定してある。
【0043】
サブフレーム51は平面視して略方形に形成してあり、その車幅方向両側の前,後端部を、左右のフロントサイドメンバ50の前,後端部の下面に結合して、フロントコンパートメント1Fの下側の車体骨格部材を構成している。
【0044】
サブフレーム51の後端部の車幅方向両側には、前記受電コイル22の車幅方向両側に沿って車両後方に延在して、該受電コイル22の固定部分を補剛するエクステンション部53を設けてある(
図7,
図8参照)。図示する例では、エクステンション部53を車幅方向に延在する基部の両端部に車両後方に向けて延設部分を設けた形状に別体成形して、基部をサブフレーム51の後端部と共締め固定し、エクステンション後端をアウトリガー46に結合するようにしているが、これはサブフレーム51と一体に形成することも可能である。
【0045】
そして、このようなバッテリ27と、受電コイル22と、モータユニット29Uと、の車両前後方向に直線的な搭載レイアウトにあって、バッテリ27の前端と、モータユニット29Uの後端部(インバータ28の後端部)とにそれぞれコネクタ接続されて、バッテリ27からモータユニット29Uに送電する強電系のワイヤハーネス31を、受電コイル22の上方に通して、トンネル部42の内側に沿って配索してある。
【0046】
ワイヤハーネス31は、ジャンクションボックス225の上方に配索しているが、場合によってジャンクションボックス225の側方に配索することも可能である。この場合、電装ボックス224およびジャンクションボックス225をトンネル部42内の中心位置よりも一側方向にずらして配置して、大径のワイヤハーネス31の配索スペースを確保するとよい。
【0047】
トンネル部42の頂壁には、ジャンクションボックス225の近傍位置に貫通孔47を設けて、バッテリ27またはジャンクションボックス225から、車室1R内に搭載した空気調和ユニット等の室内補機60に送電する強電系のワイヤハーネス32を挿通配索するようにしている。貫通孔47にはグロメット48を嵌装して、ハーネス挿通周りをシールしている。
【0048】
図10は、バッテリ27と、モータユニット29Uおよび室内補機60との間における送電配線パターンの各異なる例を(A)〜(D)にて示している。
【0049】
(A)図に示す例では、バッテリ27と、モータユニット29U、室内補機60、ジャンクションボックス225と、をそれぞれワイヤハーネス31、32、33で結線している。
【0050】
(B)図に示す例では、(A)図におけるワイヤハーネス32をジャンクションボックス225で分配して接続することによって、バッテリ27からの配線数を1つ減らしている。
【0051】
(C)図に示す例では、(B)図におけるワイヤハーネス31をジャンクションボックス225で分配して接続することにより、ワイヤハーネス33を省略し、バッテリ27からの配線数を2つ減らしている。
【0052】
(D)図に示す例では、ジャンクションボックス225を受電コイル22から分離して車室内に搭載して、トンネル部42内のスペースを広げている。この例では、(A)図におけるワイヤハーネス33と、受電コイル22とジャンクションボックス225とを結線するワイヤハーネス34と、をワイヤハーネス32と共に上述の貫通孔47に挿通して配索している。
【0053】
以上の構成からなる本実施形態の非接触給電装置によれば、受電コイル22は操舵される前輪Wに近いフロアパネル40の前端部下面で、その車幅方向中央部に搭載している。従って、駐車スペース2で所定の停止位置に車両1を駐車する際に路面側の送電コイル12に車両中心を合わせるように操舵すればよく、その運転感覚により、該送電コイル12に対して受電コイル22を適正に正対位置合わせすることができる。また、操舵される前輪Wに近い位置に受電コイル22が配されるため、受電コイル22位置を送電コイル12に合うように微調整でき、より適正に正対位置合わせすることができる。
【0054】
これにより、上述の位置合わせのために送電コイル12を駆動機構を用いた可動構成として、専用の駆動制御システムを構成する必要がなく、コスト的に有利に、かつ、車両1の簡単な運転操作で送電コイル12に対する受電コイル22の正対位置合わせを行うことができる。
【0055】
また、受電コイル22はフロアパネル40の下面のバッテリ27からフロントコンパートメント1Fのモータユニット29Uへ送電する強電系のワイヤハーネス31の下側を覆ってプロテクタとして機能するため、保安性を高めることができる。
【0056】
しかも、受電コイル22を車両中心配置とし、バッテリ27と受電コイル22とモータユニット29Uとを車両前後方向に直線的な搭載レイアウトとして、上述のワイヤハーネス31をこの受電コイル22の上方に通して配索することによって、該ワイヤハーネス31を平面視して直線的に配索できてハーネス長を短くすることができる。
【0057】
ここで、上述のフロアパネル
40は、その車両中心(車幅方向中央部)にトンネル部42を備えていて、上述の受電コイル22をトンネル部42の下側開放部に跨って配設して、ワイヤハーネス31をトンネル部42の内側に沿って配索してある。
【0058】
受電コイル22は上述の金属製の保護筐体222と合成樹脂製の
蓋体223との間にコイル本体221を格納した方形盤状の剛体構造であるため、トンネル部42の下側開放部の剛性を高めて拡開変形(口開き)防止機能を発揮できる。しかも、受電コイル22とトンネル部42とで成す閉断面内にワイヤハーネス31を格納状態に配索できるため、該ワイヤハーネス31の保安性を更に高めることができる。
【0059】
また、受電コイル22はその上面にジャンクションボックス225を備えているが、該受電コイル22を上述のようにトンネル部42の下側開放部に跨って配置して、ジャンクションボックス225をトンネル部42内に配置しているため、該ジャンクションボックス225の保安性を高めることができる。
【0060】
しかも、このような受電コイル22の上面に突出したジャンクションボックス225をトンネル部42内に配置することで、フロアパネル
40の地上高が大きくなるのを抑制できて、車体の造形を設計上有利に行うことができる。
【0061】
ジャンクションボックス225は、受電コイル22と別体に形成してあって、該受電コイル22の上面に脱着可能に組付けてあるので、仕様によってジャンクションボックス225を外して
図10(D)に示す車室内搭載とすることも可能である。これは特にハイブリッド車仕様では、トンネル部42内への排気管の縦走配置が可能となり、車体下部構造の共用化を図ることができる。
【0062】
また、トンネル部42はその頂壁に貫通孔47を備えているので、バッテリ27またはジャンクションボックス225から車室1Rに搭載した室内補機60に送電するワイヤハーネス32等の配索も最短距離で行うことが可能で、配索レイアウトの自由度を高めることができる。
【0063】
トンネル部42は、両側の膨出基部に沿って車両前後方向に延在する閉断面の補剛部43を備えていて、受電コイル22をこれら補剛部43に跨って搭載しているので、受電コイル22の取付剛性とトンネル部42の下側開放部の車幅方向剛性の双方を高めることができる。
【0064】
また、受電コイル22の車幅方向寸法W2をトンネル部42の下側開放部の幅寸法W1よりも大きく設定して、受電コイル22を直接開放部両側の補剛部43に結合しているので、上述の取付剛性および車幅方向剛性をより一層高めることができる。
【0065】
一方、モータユニット29Uはフロントコンパートメント1Fの下側に配置した骨格部材であるサブフレーム51に搭載してあり、該サブフレーム51の後端部には、受電コイル22の車幅方向両側に沿って車両後方に延在して、該受電コイル22の固定部分を補剛するエクステンション部53を設けてある。
【0066】
これにより、エクステンション部53による受電コイル22の固定部分の補剛効果によって、走行時振動等により該固定部分に作用する加振入力に対抗して、受電コイル22の取付け剛性を高められる。また、受電コイル22の前側と左右両側とを、サブフレーム51の後端部とその両側のエクステンション部53とでガードし、受電コイル22の後側をバッテリ27でガードすることができる。
【0067】
この結果、受電コイル22を路面干渉等から保護できると共に、その上方に配索した上述のワイヤハーネス31の保護効果を高めることができる。
【0068】
なお、前記実施形態では受電コイル22の車幅方向寸法W2と、トンネル部42の下側開放部の幅寸法W1との関係を、W1<W2とした場合を例示したが、車両仕様によってW1>W2とすることも可能で、この場合、受電コイル22をブラケットを介してトンネル部42の下側開放部に跨って結合すればよい。
【0069】
特願2013−083545号(出願日:2013年4月12日)の全内容は、ここに援用される。
【0070】
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。