(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記磁性ゼオライト合成反応槽で合成された磁性ゼオライトを反応液から固液分離させる固液分離手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の磁性ゼオライト製造装置。
前記遷移金属の化合物として、水溶性の鉄の塩、水溶性のコバルトの塩、水溶性のニッケルの塩、水溶性のマンガンの塩から、一種、あるいは、二種以上組み合わせて用いることを特徴とする請求項6に記載の磁性ゼオライト製造装置。
前記アルカリ金属の水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および/または、水酸化リチウムを用いることを特徴とする請求項10に記載の磁性ゼオライト製造装置。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、その細孔による、高く、かつ、特異的な吸着性能により、水中などの各種資源の回収、あるいは、有害成分の除去などに広く用いられている。
【0003】
しかしながら、その形状は基本的に粒子状であり、その取り扱い性は高くはなかった。このために、各種賦形加工が行われていた。
【0004】
このような取り扱い性向上の試みの1つとして、特許文献1で、ゼオライト粒子と磁性粒子とをセメント等の接着剤成分により組み合わせた複合造粒粒子が提案されている。
【0005】
複合造粒粒子を用いることで、水中で、吸着対象成分を吸着させ、その後、磁気分離により、複合造粒粒子を水から取り出すことができる。このとき、ろ過などの特別な設備なしに、しかも、容易に複合造粒粒子の回収を行うことができる。
【0006】
さらにこのような複合造粒粒子を用いると、磁気を操作することで、配管中に所望の形状の吸着層を形成する等の応用も可能である。
【0007】
しかしながら、このような従来技術では、セメント等の接着剤を用いるために、単位重量当たりの吸着性能が低くなる上に、効率的な吸着を行うために攪拌を行ったり、あるいは、繰り返し使用すると、複合造粒粒子が割れてしまい、磁気分離によって回収されるのは磁気粒子ばかりとなる等の問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、磁気分離により容易に回収することができ、単位重量当たりの吸着性能が高い、磁性を有するゼオライトである磁性ゼオライトを効率よく製造可能とする、磁性ゼオライト製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記課題を解決するため、磁性部前駆体を合成する磁性部前駆体合成反応槽と、
30〜100℃に加温可能な加温手段を備え、水熱合成反応によりゼオライト形成性オリゴマーであるゼオライト部前駆体を合成するゼオライト部前駆体合成反応槽と、
50〜250℃に加熱可能な加熱手段を備え、前記水熱合成反応よりも高温度および高pHでの水熱反応により前記磁性部前駆体と前記ゼオライト部前駆体とから磁性ゼオライトを合成する磁性ゼオライト合成反応槽と、
前記磁性部前駆体合成反応槽、前記ゼオライト部前駆体合成反応槽、および、前記磁性ゼオライト合成反応槽で共通して用いられるアルカリ金属の水酸化物である副原料を用いて副原料液を調製する副原料液調製槽と、前記磁性部前駆体合成反応槽で合成された前記磁性部前駆体を磁性ゼオライト合成反応槽に向けて供給する磁性部前駆体供給ラインと、前記ゼオライト部前駆体合成反応槽で合成された前記ゼオライト部前駆体を磁性ゼオライト合成反応槽に向けて供給するゼオライト部
前駆体供給ラインと、を少なくとも有することを特徴とする磁性ゼオライト製造装置である。
【0011】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記構成に加えて、さらに、前記磁性部前駆体供給ラインにより供給される前記磁性部前駆体と、前記ゼオライト部
前駆体供給ラインにより供給される前記ゼオライト部前駆体と、を混合する前駆体混合槽と、該前駆体混合槽で混合されて得られた前駆体混合物を磁性ゼオライト合成反応槽に供給する前駆体混合物供給ラインと、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記構成に加えて、さらに、磁性部前駆体原料を用いて前記磁性部前駆体を合成するための磁性部前駆体用反応液を調製する磁性部前駆体原料混合槽と、前記磁性部前駆体原料混合槽に供給される前記磁性部前駆体原料を秤量する磁性部前駆体原料秤量手段と、前記磁性部前駆体原料混合槽で調製された磁性部前駆体用反応液を前記磁性部前駆体合成反応槽に供給する磁性部前駆体用
原料供給ラインと、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記構成に加えて、さらに
、前記副原料液を前記磁性部前駆体合成反応槽に供給する副原料液磁性部前駆体合成反応槽供給ラインと、前記副原料液を前記ゼオライト部前駆体合成反応槽に供給する副原料液ゼオライト部前駆体合成反応槽供給ラインと、前記副原料液を前記前駆体混合槽に供給する副原料液前駆体混合槽供給ラインと、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記構成に加えて、さらに、前記磁性ゼオライト合成反応槽で合成された磁性ゼオライトを反応液から固液分離させる固液分離手段を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記構成に加えて、前記磁性部前駆体の原料として、遷移金属の化合物を用いることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、遷移金属の化合物として、水溶性の鉄の塩、水溶性のコバルトの塩、水溶性のニッケルの塩、水溶性のマンガンの塩から、一種、あるいは、二種以上組み合わせて用いることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記構成に加えて、前記ゼオライト部前駆体の原料として、ケイ素、または、アルミニウム、または、ケイ素及びアルミニウムの両者を含む材料を用いることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記構成に加えて、前記ゼオライト部前駆体の原料として、カオリン及び珪質スートから一種または二種選択する組み合わせ(A)、ギブサイト及びアルミン酸ナトリウムから選択される一種または二種と前記組み合わせ(A)との組み合わせ(B)、珪質スートと礬質スラッジとの組み合わせ(C)、及び、製紙スラッジ灰、石炭灰、及び、水ガラスから一種または二種以上選択する組み合わせ(D)の組み合わせ(A)〜(D)のうちのいずれか1つの組み合わせを用いることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記構成に加えて、前記副原料として、アルカリ金属の水酸化物を用いることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記構成に加えて、前記アルカリ金属の水酸化物として、水酸化ナトリウム、および/または、水酸化カリウムを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の磁性ゼオライト製造装置によれば、磁性部前駆体を合成する磁性部前駆体合成反応槽と、ゼオライト部前駆体を合成するゼオライト部前駆体合成反応槽と、前記磁性部前駆体と前記ゼオライト部前駆体とから磁性ゼオライトを合成する磁性ゼオライト合成反応槽と、前記磁性部前駆体合成反応槽で合成された前記磁性部前駆体を磁性ゼオライト合成反応槽に向けて供給する磁性部前駆体供給ラインと、前記ゼオライト部前駆体合成反応槽で合成された前記ゼオライト部前駆体を磁性ゼオライト合成反応槽に向けて供給するゼオライト部供給ラインと、を少なくとも有する構成により、磁気分離により容易に回収することができ、単位重量当たりの吸着性能が高い、磁性を有するゼオライトである磁性ゼオライトが効率よく製造できる。
【0022】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、前記磁性部前駆体供給ラインにより供給される前記磁性部前駆体と、前記ゼオライト部供給ラインにより供給される前記ゼオライト部前駆体と、を混合する前駆体混合槽と、該前駆体混合槽で混合されて得られた前駆体混合物を磁性ゼオライト合成反応槽に供給する前駆体混合物供給ラインと、を有することにより、磁性ゼオライト合成反応槽に原料が十分に混合された状態で供給されるため、磁性ゼオライト製造装置を大型化し、生産性を高めた場合であっても安定した磁性ゼオライトの生産が可能となる。
【0023】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、さらに、磁性部前駆体原料を用いて前記磁性部前駆体を合成するための磁性部前駆体用反応液を調製する磁性部前駆体原料混合槽と、前記磁性部前駆体原料混合槽に供給される前記磁性部前駆体原料を秤量する磁性部前駆体原料秤量手段と、前記磁性部前駆体原料混合槽で調製された磁性部前駆体用反応液を前記磁性部前駆体合成反応槽に供給する磁性部前駆体用反応液供給ラインと、を有することにより、安定した磁性部前駆体の合成が可能となるので、磁性ゼオライト製造装置を大型化し、生産性を高めた場合であっても、より安定した磁性ゼオライトの生産が可能となる。
【0024】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、磁性ゼオライト製造装置において、さらに、前記磁性部前駆体合成反応槽、前記ゼオライト部前駆体合成反応槽、および、前記磁性ゼオライト合成反応槽で共通して用いられる副原料を用いて副原料液を調製する副原料液調製槽と、前記副原料液を前記磁性部前駆体合成反応槽に供給する副原料液磁性部前駆体合成反応槽供給ラインと、前記副原料液を前記ゼオライト部前駆体合成反応槽に供給する副原料液ゼオライト部前駆体合成反応槽供給ラインと、前記副原料液を前記前駆体混合槽に供給する副原料液前駆体混合槽供給ラインと、を有することにより、副原料の調製を一括して行うことができ、さらに、磁性部前駆体、ゼオライト部前駆体、および、副原料の3種類の原料の混合を前駆体混合槽で行うことができ、磁性ゼオライト製造装置を大型化し、生産性を高めた場合であっても、さらに安定した磁性ゼオライトの生産が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、さらに、前記磁性ゼオライト合成反応槽で合成された磁性ゼオライトを反応液から固液分離させる、例えば、遠心分離機、フィルタープレスなどの固液分離手段を有することにより、一連の工程で製品である磁性ゼオライトを得ることができ、作業性が向上する。
【0026】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、前記磁性部前駆体の原料として、遷移金属の化合物を用いることにより、効果的な磁性部位を構成することができる。
【0027】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、前記遷移金属の化合物として、水溶性の鉄の塩、水溶性のコバルトの塩、水溶性のニッケルの塩、水溶性のマンガンの塩から、一種を、あるいは、二種以上組み合わせて、用いることにより、効果的な磁性部位を構成することができる。
【0028】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、前記ゼオライト部前駆体の原料として、ケイ素、または、アルミニウム、または、ケイ素及びアルミニウムの両者を含む材料を用いることにより、効果的なゼオライト部位を構成することができる。
【0029】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、前記ゼオライト部前駆体の原料として、カオリン及び珪質スートから一種または二種選択する組み合わせ(A)、ギブサイト及びアルミン酸ナトリウムから選択される一種または二種と前記組み合わせ(A)との組み合わせ(B)、珪質スートと礬質スラッジとの組み合わせ(C)、及び、製紙スラッジ灰、石炭灰、及び、水ガラスから一種または二種以上選択する組み合わせ(D)の組み合わせ(A)〜(D)のうちのいずれか1つの組み合わせを用いることにより効果的なゼオライト部位を構成することができる。
【0030】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、前記副原料として、アルカリ金属の水酸化物を用いることができる。
【0031】
また、本発明に係る磁性ゼオライト製造装置によれば、上記構成に加えて、前記アルカリ金属の水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および/または、水酸化リチウムを用いることにより、高い生産性で磁性ゼオライトを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の磁性ゼオライト製造装置について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の磁性ゼオライト製造装置の一例をモデル的に示す説明図である。
【0034】
<磁性部前駆体原料のフロー>
符号A1およびA2を付して示されているのは、磁性部前駆体の原料である磁性部前駆体原料を収納する磁性部前駆体原料槽であり、この例では磁性部前駆体原料槽A1には塩化鉄(II)・四水和物、磁性部前駆体原料槽A2には塩化鉄(III)・六水和物が、それぞれ収納されている。
【0035】
磁性部前駆体原料としては、遷移金属の化合物を用いることができる。この様な遷移金属化合物のうち、特に、水溶性の鉄の塩、水溶性のコバルトの塩、水溶性のニッケルの塩、水溶性のマンガンの塩から、一種、あるいは、二種以上組み合わせて、用いることができる。
【0036】
これら磁性部原料槽A1およびA2から磁性部原料供給ラインLA1およびLA2により供給される2種の磁性部前駆体原料は、それぞれ、磁性部前駆体原料秤量手段A11およびA21により秤量され、さらに磁性部原料供給ラインLA1bおよびLA2bにより、前記磁性部前駆体を合成するための磁性部前駆体用反応液を調製する磁性部前駆体用原料混合槽M1に供給される。
【0037】
磁性部前駆体用原料混合槽M1には、水供給ラインLWが設けられていて、バルブBLW1の操作によりこの磁性部前駆体用原料混合槽M1に水が供給されるようになっており、この例では、磁性部前駆体原料槽A1と磁性部前駆体原料槽A2とからの2種類の磁性部前駆体原料、および、水により、磁性部前駆体用反応液が調製される。調製の際には、この例ではモータ部とプロペラ部とから構成された攪拌装置S1が用いられ、均一に調製される。
【0038】
磁性部前駆体用原料混合槽M1で調製された磁性部前駆体用反応液は、磁性部前駆体用原料混合槽M1に接続された磁性部前駆体原料供給ラインLM1により、この磁性部前駆体用原料供給ラインLM1に設けられたバルブBLM1の操作に従い、磁性部前駆体合成反応槽PR1に供給される。
【0039】
<副原料のフロー>
ここで、副原料の供給について説明する。
副原料は、磁性部前駆体合成反応槽PR1、後述するゼオライト部前駆体合成反応槽PR2、および、後述する磁性ゼオライト合成反応槽Rで共通して用いられる。
【0040】
この例では、水酸化ナトリウムを副原料として用いるが、アルカリ金属の水酸化物であれば用いることができる。このようなアルカリ金属の水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水和物を、単独であるいは併用して用いることができる。このようなアルカリ金属水和物は、固体のものであっても、適当な濃度の水溶液であってもよい。
【0041】
副原料槽A3に収納されている副原料は、副原料供給ラインLA3により副原料調製槽M2に供給される。副原料供給ラインLA3には、秤量装置を設けて副原料の供給量を制御してもよい。
【0042】
副原料調製槽M2には、水供給ラインLWが設けられていて、バルブBLW2の操作によりこの副原料調製槽M2に水が供給されるようになっており、この例では、副原料、および、水により、副原料液が調製される。調製の際には、この例ではモータ部とプロペラ部とから構成された攪拌装置S2が用いられ、副原料液が均一に調製される。
【0043】
副原料調製槽M2には、その副原料液を送出する配管が設けられ、この例では、3つに分岐している。すなわち、副原料液を磁性部前駆体合成反応槽PR1に供給する副原料液磁性部前駆体合成反応槽供給ラインLM2a(バルブBLM2aを有する)、原料液を後述するゼオライト部前駆体合成反応槽PR2に供給する副原料液ゼオライト部前駆体合成反応槽供給ラインLM2c(バルブBLM2cを有する)、および、副原料液を後述する前駆体混合槽M3に供給する副原料前駆体混合槽供給ラインLM2b(バルブBLM2bを有する)である。
【0044】
<磁性部前駆体の合成>
磁性部前駆体の合成は、磁性部前駆体合成反応槽PR1で行われる。磁性部前駆体合成反応槽PR1の容量は、この例では3500リットルである。磁性部前駆体合成反応槽PR1内の反応液は、この例ではスチーム加熱により、30〜100℃に加温可能となっており、磁性部前駆体の合成は必要に応じて加温下で行うことができる。加温手段は上記例には限定されず、オイル加熱、マイクロ波(マイクロウェーブ)加熱などの手段であってもよい。
【0045】
磁性部前駆体合成反応槽PR1には上述の磁性部前駆体用原料供給ラインLM1から磁性部前駆体用反応液が、副原料液磁性部前駆体合成反応槽供給ラインLM2aから副原料液が、それぞれ供給され、合成の際には、この例ではモータ部とプロペラ部とから構成された攪拌装置S3により攪拌されて、均一な反応が行われる。
【0046】
合成された磁性部前駆体は、磁性部前駆体合成反応槽PR1に設けられた磁性部前駆体供給ラインLPR1(バルブBLPR1を有する)により、後述する前駆体混合槽M3に供給される。
【0047】
<ゼオライト部前駆体の合成>
図中、符号A4を付して示されているのが、ゼオライト部前駆体の原料を収納するゼオライト部前駆体原料槽であり、この例ではゼオライト部前駆体原料として石炭灰を用いるが、カオリン及び珪質スートから一種または二種選択する組み合わせ(A)、ギブサイト及びアルミン酸ナトリウムから選択される一種または二種と前記組み合わせ(A)との組み合わせ(B)、珪質スートと礬質スラッジとの組み合わせ(C)、及び、製紙スラッジ灰、石炭灰、及び、水ガラスから一種または二種以上選択する組み合わせ(D)の組み合わせ(A)〜(D)のうちのいずれか1つの組み合わせを用いることができる。
【0048】
ゼオライト部前駆体原料はゼオライト部前駆体原料槽A4からゼオライト部前駆体原料供給ラインLA4により、ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2に供給される。ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2には、さらに、副原料液ゼオライト部前駆体合成反応槽供給ラインLM2c(バルブBLM2cが付属)により副原料液が供給される。
【0049】
ゼオライト部前駆体の合成は、ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2内の水熱合成反応により行われる。ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2の容量は、この例では10000リットルである。ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2内の反応液は、この例ではスチーム加熱により、30〜100℃に加温可能となっており、磁性部前駆体の合成は必要に応じて加温下で行うことができる。加温手段は上記例には限定されず、オイル加熱、マイクロ波(マイクロウェーブ)加熱などの手段であってもよい。
【0050】
ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2には上述のゼオライト部前駆体原料供給ラインLA4からゼオライト前駆体用原料が、副原料液磁性部前駆体合成反応槽供給ラインLM2aから副原料液が、それぞれ供給され、合成の際には、この例ではモータ部とプロペラ部とから構成された攪拌装置S4により攪拌されて、均一な反応が行われる。
【0051】
合成されたゼオライト部前駆体は、ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2に設けられたゼオライト部前駆体供給ラインLPR2(バルブBLPR2を有する)により、後述する前駆体混合槽M3に供給される。
【0052】
<前駆体混合槽M3>
前駆体混合槽M3には、磁性部前駆体供給ラインLPR1により磁性部前駆体を含む液が、ゼオライト部前駆体供給ラインLPR2によりゼオライト部前駆体を含む液が、そして、副原料前駆体混合槽供給ラインLM2bにより副原料液が供給される。
【0053】
前駆体混合槽M3には、この例ではモータ部とプロペラ部とから構成された攪拌装置S5により攪拌されており、上記3種の原料は均一に混合される。
【0054】
磁性ゼオライト製造装置が小型の場合、前駆体混合槽M3を省き、前記3種の原料を直接、後述する磁性ゼオライト合成反応槽Rに供給することも可能であるが、磁性ゼオライト製造装置が大きい場合、本例のように前駆体混合槽M3を設けることで、安定した品質の磁性ゼオライトを効率よく製造することができる。
【0055】
前駆体混合槽M3で均一に混合された前駆体混合物は、前駆体混合物供給ラインLM3(バルブBLM3を有する)により磁性ゼオライト合成反応槽Rに供給される。
【0056】
<磁性ゼオライト合成>
磁性ゼオライト合成反応槽Rの容量はこの例では11000リットルである。さらに磁性ゼオライト合成反応槽Rはこの例では加圧容器となっており(内部の圧力は圧力計Pで測定される)、また、オイル加熱により50〜250℃に加熱可能となっている。
【0057】
磁性ゼオライト合成反応槽Rでは、磁性部前駆体合成反応槽PR1で合成された磁性体微粒子である磁性部前駆体が、ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2で合成された、ゼオライト形成性オリゴマーとも云うべきゼオライト部前駆体より徐々に形成されるゼオライト内に固定化されて、磁性ゼオライトが合成される。
【0058】
このために、磁性ゼオライト合成反応槽Rでは、ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2での水熱反応よりも、高温度、高pHで水熱反応を進行させて磁性ゼオライトを形成させる。
【0059】
磁性ゼオライト合成反応槽Rでは、には、この例ではモータ部とプロペラ部とから構成された攪拌装置S6により攪拌されており、水熱反応が均一に、かつ、効率よく進行する。
【0060】
磁性ゼオライト合成反応槽Rには反応により合成された磁性ゼオライトを含む液は磁性ゼオライト排出ラインLR(バルブBLRを有する)により、固液分離装置S(この例ではフィルタープレスを用いるが、他の手段、例えば、遠心分離機等を用いてもよい)に供給されて固液分離され、固体成分である磁性ゼオライトは含水磁性ゼオライト運搬ラインLSにより水洗装置Wに供給される(磁性ゼオライトが除去された反応液は前駆体混合槽M3(前駆体混合槽M3を設けない場合には磁性ゼオライト反応槽R)に戻すこともでき、このとき、副原料の消費を抑制することができる)。水洗装置には水供給ラインLW(バルブBLW3を有する)から水洗水が供給される。
【0061】
水洗後の磁性ゼオライトは、水洗磁性ゼオライト運搬ラインLWZにより、乾燥機Dに供給され、乾燥された磁性ゼオライトの一部は乾燥磁性ゼオライト運搬ラインLDZ1により袋詰め機P1により袋詰めされて製品となる。
【0062】
また、乾燥された磁性ゼオライトの他の一部は乾燥磁性ゼオライト運搬ラインLDZ2により造粒機PMに供給されて、より大きい粒子に加工されたのち、造粒磁性ゼオライト運搬ラインLPMにより袋詰め機P2に供給され、袋詰めされて造粒製品となる。
【0063】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の磁性ゼオライト製造装置は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0064】
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の磁性ゼオライト製造装置を適宜改変することができる。このような改変によってもなお本発明の磁性ゼオライト製造装置の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
【実施例】
【0065】
以下に本発明の磁性ゼオライト製造装置を用いた磁性ゼオライトの製造の実施例について具体的に説明する。
【0066】
<<実施例1>>
装置としては、
図1に示した磁性ゼオライト製造装置を用いた。
【0067】
<磁性部前駆体合成>
磁性部前駆体原料槽A1に は塩化鉄(II)・四水和物を、磁性部前駆体原料槽A2には塩化鉄(III)・六水和物を、それぞれ収納した。
【0068】
磁性部前駆体原料秤量手段A11およびA21により秤量しながら、予め844.8リットルの水を入れた磁性部前駆体用原料混合槽M1に塩化鉄(II)・四水和物を74.8kg、および、塩化鉄(III)・六水和物を204.2kg、供給した。
【0069】
十分に攪拌した後、得られた磁性部前駆体用反応液を磁性部前駆体合成反応槽PR1に供給した。
【0070】
磁性部前駆体合成反応槽PR1に、さらに、副原料調製槽M2で調製された副原料液である水酸化ナトリウム水溶液(濃度:2mol/L(リットル)。以下同じ)を1600リットル供給し、攪拌しながら温度を70℃に保ち、45分間反応させて磁性部前駆体を得た。磁性部前駆体合成反応槽PR1の反応液を微量採取し、分析した結果、合成された磁性部前駆体は88kgであると算出された。
【0071】
<ゼオライト部前駆体合成>
副原料液を3168リットル、および、ゼオライト部前駆体原料槽A4内の石炭灰を792kg、ゼオライト部前駆体合成反応槽PR2に供給したのち、攪拌しながら温度を70℃に保ち、45分間反応させて、ゼオライト部前駆体を得た。
【0072】
<磁性ゼオライト合成・分離>
上記で得られた磁性部前駆体を含む反応液、ゼオライト部前駆体を含む反応液、および、副原料液を、前駆体混合槽M3で十分に攪拌した後、磁性ゼオライト合成反応槽Rに供給した。
【0073】
磁性ゼオライト合成反応槽Rで攪拌しながら温度を140℃に保ち、150分間反応させて、磁性ゼオライトを含む反応液を得た。
【0074】
固液分離装置(フィルタープレス)Sにより、反応液から磁性ゼオライトを取り出し、水洗し、その後、80℃で乾燥させた。
【0075】
<磁性ゼオライトの解析>
得られた磁性ゼオライトは黒褐色の粉末で、880kgあった。個数平均粒径を測定したところ、20μmであった。
【0076】
得られた磁性ゼオライトの磁性についてはネオジム磁石にくっつくことにより確認した。
【0077】
さらに、X線回折分析(XRD)により解析を行ったところ、ゼオライト構造を有していることが判った。
【0078】
得られた磁性ゼオライトを簡易的に水中で超音波発振器を用いて超音波処理を行ったが、粉体全体の磁性は保持された。
【0079】
実施例2及び実施例3は、基本的には実施例1と同様に、ただし、一部変更して行った。
【0080】
<<実施例2>>
<磁性部前駆体合成>
磁性部前駆体原料槽A1には硝酸マンガン(II)・六水和物を、磁性部前駆体原料槽A2には硝酸鉄(III)・九水和物を、それぞれ収納した。これら硝酸マンガン(II)・六和物87.1kg、および、硝酸鉄(III)・九水和物241kgを、予め1898リットルの水を入れた磁性部前駆体合成反応槽PR1に供給した。
【0081】
磁性部前駆体合成反応槽PR1には、また、副原料液である水酸化ナトリウム水溶液を水酸化ナトリウム純量が108kgとなるよう供給した。攪拌しながら温度を70℃に保ち、45分間反応させて磁性部前駆体を得た。磁性部前駆体合成反応槽PR1の反応液を微量採取し、分析した結果、得られた磁性部前駆体は70kgであると算出された。
【0082】
<ゼオライト部前駆体合成>
ゼオライト部前駆体原料槽A4にはカオリンに前処理を施したメタカオリン(Al
2O
3・2SiO
2)を収納した。具体的にはカオリンを500℃にて加熱処理を行って得たメタカオリンである。
【0083】
水酸化ナトリウム純量が207kgとなる量の副原料液、および、上記のメタカオリン700kgを、予め2593リットルの水を入れたゼオライト部前駆体合成反応槽PR2に供給したのち、攪拌しながら温度を70℃に保ち、45分間反応させて、ゼオライト部前駆体を得た。
【0084】
<磁性ゼオライト合成・分離>
上記で得られた磁性部前駆体を含む反応液、ゼオライト部前駆体を含む反応液、および、副原料液を、前駆体混合槽M3で十分に攪拌した後、磁性ゼオライト合成反応槽Rに供給した。
【0085】
磁性ゼオライト合成反応槽Rで攪拌しながら温度を140℃に保ち、150分間反応させて、磁性ゼオライトを含む反応液を得た。次いで、固液分離装置Sにより、反応液から磁性ゼオライトを取り出し、水洗し、その後、80℃で乾燥させた。
【0086】
<磁性ゼオライトの解析>
得られた磁性ゼオライトは黒褐色の粉末で、770kgあった。個数平均粒径を測定したところ、21μmであった。得られた磁性ゼオライトの磁性については上記同様に確認し、さらに、得られた磁性ゼオライトの磁性、ゼオライト構造、及び、粉体全体の磁性を上記同様にして、それぞれ確認した。
【0087】
<<実施例3>>
<磁性部前駆体合成>
磁性部前駆体原料槽A1には硝酸コバルト(II)・六水和物を、磁性部前駆体原料槽A2には硝酸鉄(III)・九水和物を、それぞれ収納した。これら硝酸コバルト(II)・六水和物40.4kg、および、硝酸鉄(III)・九水和物を110.4kgを、予め868リットルの水を入れた磁性部前駆体合成反応槽PR1に供給した。
【0088】
磁性部前駆体合成反応槽PR1には、また、副原料液である水酸化ナトリウム水溶液を水酸化ナトリウム純量が49.4kgとなるよう供給した。攪拌しながら温度を70℃に保ち、45分間反応させて磁性部前駆体を得た。磁性部前駆体合成反応槽PR1の反応液を微量採取し、分析した結果、得られた磁性部前駆体は15kgであると算出された。
【0089】
<ゼオライト部前駆体合成>
ゼオライト部前駆体原料槽A4にはイネ科の植物のもみ殻灰を収納した。そのもみ殻灰300kg、水酸化アルミニウム351kg、及び、水酸化ナトリウム純量が208kgとなる量の副原料液を、予め2396リットルの水を入れたゼオライト部前駆体合成反応槽PR2に供給したのち、攪拌しながら温度を70℃に保ち、45分間反応させて、ゼオライト部前駆体を得た。
【0090】
<磁性ゼオライト合成・分離>
上記で得られた磁性部前駆体を含む反応液、ゼオライト部前駆体を含む反応液、および、副原料液を、前駆体混合槽M3で十分に攪拌した後、磁性ゼオライト合成反応槽Rに供給した。
【0091】
磁性ゼオライト合成反応槽Rで攪拌しながら温度を140℃に保ち、150分間反応させて、磁性ゼオライトを含む反応液を得た。次いで、固液分離装置Sにより、反応液から磁性ゼオライトを取り出し、水洗し、その後、80℃で乾燥させた。
【0092】
<磁性ゼオライトの解析>
得られた磁性ゼオライトは黒褐色の粉末で、315kgあった。個数平均粒径を測定したところ、20μmであった。得られた磁性ゼオライトの磁性、ゼオ5ライト構造、及び、粉体全体の磁性を上記同様にして、それぞれ確認した。