(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、負荷電圧が低い状況で電力を制限する制御モードと、負荷電圧が高い状況で電力を制限する制御モードとを有し、受電コイル電流が誘導電流よりも大きい場合には、負荷電圧が低い状況で電力を制限する制御モードを選択し、一方、誘電電流が受電コイル電流よりも大きい場合には、負荷電圧が高い状況で電力を制限する制御モードを選択することを特徴とする請求項1に記載された非接触給電システム。
前記制御部は、負荷電圧が低い状況で電力を制限する制御モードを選択した場合には、最小電力にて前記送電コイルに通電を開始し、前記送電コイルの電圧に基づいて、当該送電コイルの電圧がコイルの上限電圧を超えない範囲で前記送電コイルに通電する電力を指定する電力指令を増大させていくことを特徴とする請求項2に記載された非接触給電システム。
前記制御部は、負荷電圧が高い状況で電力を制限する制御モードを選択した場合には、負荷側からの電力指令にて前記送電コイルに通電を開始し、前記送電コイルの電圧に基づいて、当該送電コイルの電圧がコイルの上限電圧を超えない範囲で前記送電コイルに通電する電力を指定する電力指令を減少させていくことを特徴とする請求項2に記載された非接触給電システム。
前記制御部は、負荷電圧、電力指令、受電コイルの電圧に基づいて、前記送電コイルの電圧を推定することを特徴とする請求項3又は4に記載された非接触給電システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る非接触給電システムの構成を模式的に示すブロック図であり、
図2は、非接触給電システムの回路構成及び制御系の構成を模式的に示す説明図である。非接触給電システムは、地上側ユニットである給電装置100と、車両側ユニットを含む電動車両(以下単に「車両」という)200とを備え、給電装置100から非接触で電力を供給し、車両200に設けられるバッテリ28を充電する給電システムである。
【0010】
給電装置100は、車両200の駐車スペースを備える充電スタンドなどに設置されており、車両200に対して電力を供給する。この給電装置100は、電力制御部11と、送電コイル12と、無線通信部14と、制御部15とを主体に構成されている。
【0011】
電力制御部11は、交流電源300から送電される交流電力を、高周波の交流電力に変換し、送電コイル12に送電するための機能を備えている。この電力制御部11は、整流部111と、PFC(Power Factor Correction)回路112と、インバータ113とを備えている。
【0012】
整流部111は、交流電源300と電気的に接続され、交流電源からの出力交流電流を整流する。
【0013】
PFC回路112は、整流部111とインバータ113との間に接続されている。PFC回路112は、例えば昇圧チョッパ回路などを含み、整流部111からの出力電流の波形を整形することで力率を改善するための回路である。PFC回路112の出力は平滑コンデンサで平滑される。
【0014】
インバータ113は、平滑コンデンサやIGBT等のスイッチング素子等を含む電力変換装置であり、制御部15からの駆動信号に基づいて、直流電流を高周波の交流電流に変換し、送電コイル12に供給する。例えば、インバータ113は、PWM制御により、直流電圧からPWMパルスを生成し、これにより、交流電圧を送電コイル12に印加する。
【0015】
送電コイル12は、車両200側の受電コイル22に対して非接触で電力を送電するための一次コイルである。送電コイル12は、コイルと、共振用のコンデンサとを直列に接続して構成されているが、コイルと共振コンデンサの接続は、並列や直並列などでもよい。この送電コイル12は、車両200を駐車する駐車スペースといった目的箇所に設けられており、車両200が駐車スペースの規定位置に駐車した場合、車両200側の受電コイル22の下方に対峙する。
【0016】
無線通信部14は、車両200側に設けられた無線通信部24と、双方向に通信を行う。無線通信部14と無線通信部24との間の通信周波数には、インテリジェンスキーなどの車両周辺機器で使用される周波数より高い周波数が設定されているため、無線通信部14と無線通信部24との間で通信を行っても、車両周辺機器は、当該通信による干渉を受けにくい。無線通信部14及び無線通信部24との間の通信には、例えば各種の無線LAN方式が用いられ、遠距離に適した通信方式が用いられている。
【0017】
制御部15は、給電装置100を制御する機能を担っている。制御部15としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。制御部15は、電力制御部11、送電コイル12及び無線通信部14を制御する。具体的には、制御部15は、無線通信部14と無線通信部24との間の通信により、電力供給を開始する旨の制御信号を車両200側に送信したり、電力を受給したい旨の制御信号を車両200側から受信したりする。制御部15は、インバータ113のスイッチング制御などを行い、送電コイル12から供給される電力を制御する。
【0018】
つぎに、車両200は、受電コイル22と、無線通信部24と、充電制御部25と、整流部26と、リレー部27と、バッテリ28と、インバータ29と、モータ30と、通知部32とを備えている。
【0019】
受電コイル22は、給電装置100側の送電コイル12から非接触で電力を受けるための二次コイルである。受電コイル22は、コイルと、共振用のコンデンサとを直列に接続して構成されているが、コイルと共振コンデンサの接続は、並列や直並列などでもよい。この受電コイル22は、例えば、車両200の底面(シャシ)といった目的箇所に設けられており、車両200が駐車スペースの規定位置に駐車されると、給電装置100側の送電コイル12の上方に対峙する。
【0020】
無線通信部24は、給電装置100側に設けられた無線通信部14と、双方向に通信を行う。
【0021】
整流部26は、受電コイル22に接続され、受電コイル22で受電された交流電力を直流に整流する整流回路を主体に構成されている。この整流部26は、受電コイル22からの出力を、整流及びフィルタ回路によりフィルタ処理することで、直流電力に変換して出力する。
【0022】
リレー部27は、充電制御部25の制御によりオン及びオフが切り変わるリレースイッチを備えている。リレー部27は、当該リレースイッチをオフにすることで、バッテリ28を含む回路と、受電コイル22及び整流部26を含む回路とを切り離すことできる。
【0023】
バッテリ28は、車両200の電力源であり、例えば複数の二次電池を電気的に接続して構成されている。
【0024】
インバータ29は、IGBT等のスイッチング素子、PWM制御回路等を含む電力変換装置であり、制御信号に基づいて、バッテリ28から出力される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力をモータ30に供給する。モータ30は、例えば三相の交流電動機により構成され、車両200を駆動させるための駆動源である。
【0025】
通知部32は、警告ランプ、ナビゲーションシステムのディスプレイ又はスピーカ等により構成され、車室内のインストルメントパネル等に配置されている。この通知部32は、充電制御部25による制御に基づいて、ユーザに対して光、画像又は音等を出力する。
【0026】
充電制御部25は、バッテリ28の充電を制御する機能を担っている。充電制御部25としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。例えば、充電制御部25は、無線通信部24及び無線通信部14の通信により、電力供給を開始する旨の制御信号を給電装置100側から受信したり、電力を受給したい旨の制御信号を給電装置100側に送信したりする。
【0027】
また、図示を省略しているが、充電制御部25は、車両200全体を制御するコントローラとCAN通信網で接続されている。このコントローラは、インバータ29のスイッチング制御を行ったり、バッテリ28を管理するバッテリコントローラからバッテリ28の電圧(以下「バッテリ電圧」という)を取得したり、充電残量に基づいて充電電力指令を演算したりする。充電制御部25は、当該コントローラからバッテリ電圧や、充電電力指令を取得することができる。
【0028】
本実施形態に係る非接触給電システムでは、送電コイル12と受電コイル22との間で、電磁誘導作用により非接触状態で電力の供給を行う。すなわち、送電コイル12に電圧が加わると、送電コイル12と受電コイルである受電コイル22との間に磁気的な結合が生じ、送電コイル12から受電コイル22へ電力が供給される。
【0029】
以下、非接触給電システムによる具体的な給電制御の説明に先立ち、当該給電制御の制御概念について説明する。
図3は、送電コイル12の電圧(縦軸)とバッテリ電圧(横軸)との関係を示す説明図である。同図において、L1〜L5は、コイルの結合状態の違いに応じた電圧傾向を示す。ここで、コイルの結合状態とは、送電コイル12と受電コイル22との結合度合いのことであり、双方のコイル仕様や、給電時における送電コイル12と受電コイル22との相対的な位置関係に応じて定まるパラメータである。L1〜L5は、Lに付された添え字の数字が大きくなる程、係合状態が高くなることを示している。
【0030】
送電コイル12の電圧を示す送電コイル電圧は、バッテリ電圧に応じて変化するものであるが、両者の関係は、コイルの結合状態によってその傾向が異なることが分かる。具体的には、結合状態が低い場合(例えばL1、L2)、両電圧は、バッテリ電圧の増加に応じてコイル電圧も増加する正の相関を有している。一方、結合状態が高い場合(例えばL3、L4、L5)、両電圧は、バッテリ電圧の増加に応じてコイル電圧が低下する負の相関を有している。
【0031】
図4は、本実施形態に係る非接触給電システムの構成を模式的に示す等価回路である。同図において、Ipは送電コイル電流、Vpは送電コイル電圧、C1は送電コイル12側のコンデンサの静電容量である。また、Mは相互インダクタンス、Imは誘導電流を示す。さらに、Vsは受電コイル電圧、Isは受電コイル電流を示す。さらに、C2は受電コイル22側のコンデンサの静電容量、Rは負荷抵抗、Vrは負荷電圧を示す。
【0032】
送電コイル12のコイル電圧特性は、受電コイル電流Isと誘導電流Imの割合で決まる。ここで、受電コイル22に供給される電力をP、角周波数をωとして、受電コイル電流Isと、誘導電流Imとは下式で示される。
【数1】
【数2】
【0033】
電力一定にて制御を行う場合に、バッテリ電圧Vrの上昇に対して受電コイル電流Isが低下するといったケースがある。これは、バッテリ電圧Vrの変化に対して受電コイル電流Isが支配的であることを意味し、コイルの結合状態が高い状況がこれに相当する。この場合、受電コイル電流Isは誘導電流Imに比して大きい傾向を有し、送電コイル電圧Vpは、負荷電圧であるバッテリ電圧Vrの上昇に対して負の相関、すなわち、低下する傾向を取り得る。
【0034】
一方、電力一定にて制御を行う場合に、バッテリ電圧Vrの上昇に対して誘導電流Imが上昇するといったケースがある。これは、バッテリ電圧Vrの変化に対して誘導電流Imが支配的であることを意味し、コイルの結合状態が低い状況がこれに相当する。この場合、誘導電流Imは受電コイル電流Isに比して大きい傾向を有し、送電コイル電圧Vpは、バッテリ電圧Vrの上昇に対して正の相関、すなわち、上昇する傾向を取り得る。
【0035】
この関係性を鑑みるに、コイルの小型化を実現すべく、送電コイル電圧Vpを、送電コイル12において規定される上限電圧(以下「コイル上限電圧」という)の範囲に制限するためには、前者のケースでは、バッテリ電圧が低い状況で送電コイル12に入力する電力を制限する必要があり、一方、後者のケースでは、バッテリ電圧が高い状況で送電コイル12に入力する電力を制限する必要がある。そこで、給電装置100の制御部15は、かかる制御概念を前提に、電力制御部11(具体的にはインバータ113)を制御することにより、送電コイル電圧Vpがコイル上限電圧よりも小さい範囲となるように、送電コイル12に入力する電力を制限する電力制限制御を行う。
【0036】
再び
図2を参照するに、車両200側の充電制御部25は、コントローラ(図示せず)から出力される充電電力指令と、コントローラによって取得されるバッテリ電圧Vrとを取得する。また、充電制御部25は、受電コイル22の電圧である受電コイル電圧Vsを電圧センサ221から取得する。そして、充電制御部25は、充電電力指令、バッテリ電圧、受電コイル電圧Vsを無線通信用のデータに変換する。変換されたデータは、車両200側の無線通信部24により送信されることで、給電装置100側の無線通信部14により受信され、給電装置100側の制御部15に出力される。
【0037】
本実施形態との関係において、制御部15は、これを機能的に捉えた場合、電力制限部151と、インバータ制御部152とを有する。
【0038】
電力制限部151には、電圧センサ121において検出される送電コイル電圧Vpと、車両200側から送信された、受電コイル電圧Vs、バッテリ電圧Vr及び充電電力指令とが入力されている。電力制限部151は、コイルの結合状態に基づいて誘導電流Imと受電コイル電流Isとの大小関係を判断し、当該判断結果に基づいて電力制限制御に適用する制御モードを選択する。電力制限部151は、誘導電流Imが受電コイル電流Isよりも大きい場合には、送電コイル電圧Vpが正の相関を有することから、バッテリ電圧Vrが高い状況で電力を制限する制御モードを選択する。一方、電力制限部151は、受電コイル電流Isが誘導電流Imよりも大きい場合(若しくはイコールの場合)には、送電コイル電圧Vpが負の相関を有することから、バッテリ電圧Vrが低い状況で電力を制限する制御モードを選択する。そして、電力制限部151は、選択された制御モードに従って、コイル上限電圧を満たす範囲となる電力指令(以下「制限電力指令」という)を決定する。この制限電力指令は、インバータ制御部152に出力される。
【0039】
インバータ制御部152には、車両200側から要求される充電電力指令が入力される。また、インバータ制御部152には、電力制限部151によって決定された制限電力指令が入力される。インバータ制御部152は、これらの情報に基づいて、インバータ113の駆動周波数とそのデューティとを演算し、この演算結果に基づいてインバータ113を制御する駆動信号を生成する。これにより、インバータ制御部152は、電力制限部151において決定された制限電力指令を上限として、送電コイル12に入力する電力を制御する。
【0040】
図5は、本実施形態に係る電力制限制御の詳細な手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、給電装置100側の制御部15、具体的には、電力制限部151により実行される。この処理を実行するにあたり、給電装置100側の制御部15は、車両200側の充電制御部25から必要な情報を取得することができる。
【0041】
まず、ステップS1において、電力制限部151は、無線通信部14、24を介して、リレー部27をオフする制御信号を車両200側の充電制御部25に出力する。この制御信号を取得すると、充電制御部25は、リレー部27をオフし、バッテリ28を含む回路と、受電コイル22及び整流部26を含む回路とを切り離す。
【0042】
ステップS2において、電力制限部151は、送電コイル12に所定の一定電流I1を供給し、送電コイル12を弱いレベルの電流で励磁する。
【0043】
ステップS3において、電力制限部151は、無線通信部14、24を介して、車両200側の充電制御部25を通信を行い、ステップS2において励磁された際の受電コイル電圧Vsを取得する。
【0044】
ステップS4において、電力制限部151は、相互リアクタンスωMを推定する。受電コイル電圧Vs、すなわち、受電コイル22の誘起電圧は、下式に示す関係を満たすところ、電力制限部151は、当該関係式に基づいて、相互リアクタンスωMを推定する。
【数3】
【0045】
ステップS5において、電力制限部151は、誘導電流Imと受電コイル電流Isとの大小関係を判断する。具体的には、制御部15は、上述した数式1及び数式2に基づいて誘導電流Imと受電コイル電流Isとをそれぞれ算出し、両者Im、Isの大小比較を行う。そして、電力制限部151は、誘導電流Imが受電コイル電流Isよりも大きい場合には、バッテリ電圧Vrが高い状況で電力を制限する制御モードを選択する。一方、電力制限部151は、受電コイル電流Isが誘導電流Imよりも大きい場合(若しくはイコールの場合)には、バッテリ電圧Vrが低い状況で電力を制限する制御モードを選択する。
【0046】
なお、本ステップS5の終了と同時に、電力制限部151は、無線通信部14、24を介して、リレー部27をオンする制御信号を車両200側の充電制御部25に出力する。
【0047】
図6は、バッテリ電圧Vrが低い状況で電力を制限する制御モードの制御手順を示すフローチャートである。前述のステップS5において、バッテリ電圧Vrが低い状況で電力を制限する制御モードが選択された場合、電力制限部151は、以下に示すように制限電力指令Prefを決定する。
図7は、制限電力指令Prefの決定概念を示す模式図である。同図に示される第1電力指令Pref1から第m電力指令Prefm(m:任意の自然数)は、制限電力指令Prefの候補となる値である。これらの電力指令Pref1〜Prefmは、第1電力指令Pref1、第2電力指令Pref2、・・・、第m電力指令Prefmの順番で順次大きくなる関係となっており、所定の大きさずつ大きさが段階的に相違する関係となっている。
図7に示す例では、m=5のケースが例示されている。
【0048】
まず、ステップS10において、電力制限部151は、車両200側から充電電力指令を取得する。
【0049】
ステップS11において、電力制限部151は、制限電力指令Prefを、最小の電力指令である第1電力指令Pref1に設定し、これをインバータ制御部152に出力する。ここで、第1電力指令Pref1は予め規定された値を用いる。そして、インバータ制御部152は、当該制限電力指令Pref(第1電力指令Pref1)に基づいて、送電コイル12に通電する電力を制御する。
【0050】
ステップS12において、電力制限部151は、第1電力指令Pref1に対応する第1送電コイル電圧Vpref1を、電圧センサ121を通じて検出する。
【0051】
ステップS13において、電力制限部151は、ステップS12において検出された第1送電コイル電圧Vpref1に基づいて、第2電力指令Pref2を設定した際の送電コイル12の電圧である第2送電コイル電圧Vpref2を推定する。同様に、第3電力指令Pref3を設定した際の第3送電コイル電圧Vpre3、・・・、第m電力指令Prefmに対応する第m送電コイル電圧Vprefmもそれぞれ推定する。第2電力指令Pref2に対応する第2送電コイル電圧Vpref2は、下位の電力指令(第1電力指令Pref1)である第1送電コイル電圧Vref1に対して所定の比例関係を有する値に設定されており、第1送電コイル電圧Vref1に応じて一義的に決定される。残余の電力指令Pref3〜Prefmに対応する送電コイル電圧Vpref3〜Vprefmも同様であり、下位の送電コイル電圧Vref2〜Vrefm-1に応じて一義的に決定される。
【0052】
ステップS14において、電力制限部151は、制限電力指令Prefとして選択する第n電力指令Prefn(n:1〜mの自然数)を決定する。具体的には、電力制限部151は、送電コイル電圧Vpref1〜Vprefmのうち、コイル上限電圧Vpmaxよりも小さい範囲の中で最も大きいものを第n送電コイル電圧Vprefnとして特定する。そして、電力制限部151は、特定された第n送電コイル電圧Vrefnに対応する第n電力指令Prefnを制限電力指令Prefに設定し、これをインバータ制御部152に出力する。そして、インバータ制御部152は、当該制限電力指令Pref(第n電力指令Prefn)に基づいて、送電コイル12に入力する電力を制御する。
【0053】
ステップS15において、電力制限部151は、制限電力指令Pref(第n電力指令Prefn)に対応する第n送電コイル電圧Vprefnを、電圧センサ121を通じて検出する。
【0054】
ステップS16において、電力制限部151は、ステップS15において検出された第n送電コイル電圧Vprefnに基づいて、第1送電コイル電圧Vpref1から第5送電コイルVpref5をそれぞれ推定する。送電コイル電圧Vpref1〜Vpref5の推定手法は、ステップS13において例示した手法を用いることができる。
【0055】
ステップS17において、電力制限部151は、ステップS16において推定された第1送電コイル電圧Vpref1から第5送電コイル電圧Vpref5のうち、ステップS15において検出された第n送電コイル電圧Vprefよりも一段階上に存在する第n+1送電コイル電圧Vprefn+1を特定する。そして、電力制限部151は、第n+1送電コイル電圧Vprefn+1がコイル上限電圧Vpmaxよりも小さくなったか否かを判断する。このステップS17において肯定判定された場合には、ステップS18に進む。一方、ステップS17において否定判定された場合には、ステップS15に戻る。
【0056】
ステップS18において、電力制限部151は、ステップS14において選択された第n電力指令Prefnよりも一段階上に存在する第n+1電力指令を、制限電力指令Prefに設定し、これをインバータ制御部152に出力する。そして、インバータ制御部152は、当該制限電力指令Pref(第n+1電力指令Prefn+1)に基づいて、送電コイル12に入力する電力を制御する。
【0057】
ステップS19において、電力制限部151は、給電動作を終了するか否かを判断する。このステップS19において肯定判定された場合には、本ルーチンを終了する。一方、ステップS19において否定判定された場合には、ステップS15の処理に戻る。
【0058】
図8は、バッテリ電圧Vrが高い状況で電力を制限する制御モードの制御手順を示すフローチャートである。前述のステップS5において、バッテリ電圧Vrが高い状況で電力を制限する制御モードが選択された場合、電力制限部151は、以下に示すように制限電力指令Prefを決定する。
図9は、制限電力指令Prefの決定概念を示す模式図である。同図に示される第1電力指令Pref1から第4電力指令Prefx(x:任意の自然数)は、制限電力指令Prefの候補となる値である。これらの電力指令Pref1〜Prefxは、第1電力指令Pref1、第2電力指令値Pref2、・・・、第x電力指令Prefxの順番で順次大きくなる関係となっており、所定の大きさずつ大きさが段階的に相違する関係となっている。
図9に示す例では、x=4のケースが例示されている。
【0059】
まず、ステップS30において、電力制限部151は、車両200側から充電電力指令を取得する。
【0060】
ステップS31において、電力制限部151は制限電力指令Prefを一時的に設定せず、インバータ制御部152は車両200側から取得した充電電力指令に基づいて、送電コイル12に入力する電力を制御する。
【0061】
ステップS32において、電力制限部151は、電圧センサ121を通じて現在の送電コイル電圧Vpを検出し、これを第x送電コイル電圧Vprefxとして設定する。
【0062】
ステップS33において、電力制限部151は、第x送電コイル電圧Vprefxが、コイル上限電圧Vpmax以上であるか否かを判断する。このステップS33において肯定判定された場合には(Vpmax≦Vprefx)、ステップS34に進む。一方、ステップS33において否定判定された場合には(Vpmax>Vprefx)、ステップS32に戻る。
【0063】
ステップS34において、電力制限部151は、現在の第x電力指令Prefxよりも一段階下に存在する第x−1電力指令Prefxを、制限電力指令Prefに設定し、これをインバータ制御部152に出力する。そして、インバータ制御部152は、当該制限電力指令Pref(第x−1電力指令Prefx-1)に基づいて、送電コイル12に入力する電力を制御する。
【0064】
ステップS35において、電力制限部151は、給電動作を終了するか否かを判断する。このステップS35において肯定判定された場合には、本ルーチンを終了する。一方、ステップS35において否定判定された場合には、ステップS32の処理に戻る。
【0065】
このように本実施形態において、送電コイル12を備える給電装置100の電力制限部151は、電力制御部11を制御することにより、送電コイル12に通電する電力を制限する電力制限制御を行うこととしている。ここで、電力制限部151は、送電コイル12と受電コイル22との間のコイルの結合状態に基づいて誘導電流Imと受電コイル電流Isとの大小関係を判断し、当該判断結果に基づいて電力制限制御に適用する制御モードを選択することとしている。
【0066】
かかる構成によれば、バッテリ電圧Vrと送電コイル電圧Vpとの相関がコイルの結合状態によって分別されることから、当該コイルの結合状態に基づいて誘導電流Imと受電コイル電流Isとの大小関係を判断することで、適切な制御モードを選択することができる。これにより、適切な電力制限を行うことが可能となり、送電コイル電圧Vpがコイル上限電圧Vpmaxを超えてしまうといった状況や、不必要に電力を制限してしまうといった状況を抑制することができる。その結果、効率的なシステムを小型のコイルにて構築することができる。
【0067】
また、本実施形態において、電力制限部151は、バッテリ電圧Vrが低い状況で電力を制限する制御モードと、負荷電圧Vrが高い状況で電力を制限する制御モードとを有する。そして、電力制限部151は、受電コイル電流Isが誘導電流Imよりも大きい場合には、バッテリ電圧Vrが低い状況で電力を制限する制御モードを選択し、一方、誘電電流Imが受電コイル電流Isよりも大きい場合には、バッテリ電圧Vrが高い状況で電力を制限する制御モードを選択する。
【0068】
結合状態が高い場合は、バッテリ電圧Vrと送電コイル電圧Vpとは負の相関を有しているため、バッテリ電圧Vrが低い程、送電コイル電圧Vpが高くなる。そこで、バッテリ電圧Vrが低い状況で電力を制限する制御モードを選択することで、送電コイル電圧Vpがコイル上限電圧Vpmaxを超えてしまうといった状況を抑制することができる。また、適切な値で電力制御をすることができるので、不必要に電力を制限してしまうといった状況を適切に抑制することができる。一方、結合状態が低い場合は、バッテリ電圧Vrと送電コイル電圧Vpとは正の相関を有しているため、バッテリ電圧Vrが高い程、送電コイル電圧Vpが高くなる。そこで、バッテリ電圧Vrが高い状況で電力を制限する制御モードを選択することで、送電コイル電圧Vpがコイル上限電圧Vpmaxを超えてしまうといった状況を抑制することができる。また、適切な値で電力制御をすることができるので、不必要に電力を制限してしまうといった状況を適切に抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態において、電力制限部151は、バッテリ電圧が低い状況で電力を制限する制御モードを選択した場合には、最小電力にて送電コイル12に通電を開始し、そして、送電コイル電圧Vrに基づいて当該送電コイル12の電圧がコイル上限電圧Vpmaxを超えない範囲で制限電力指令を増大させている。
【0070】
かかる構成によれば、送電コイル電圧Vpがコイル上限電圧Vpmaxを超えてしまうといった状況を抑制することができる。また、適切な値で電力制御をすることができるので、不必要に電力を制限してしまうといった状況を適切に抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態において、電力制限部151は、バッテリ電圧Vrが高い状況で電力を制限する制御モードを選択した場合には、車両200側からの充電電力指令にて送電コイル12に通電を開始し、送電コイル電圧Vrに基づいて、その送電コイル12の電圧がコイル上限電圧Vpmaxを超えない範囲で制限電力指令を減少させている。
【0072】
かかる構成によれば、送電コイル電圧Vpがコイル上限電圧Vpmaxを超えてしまうといった状況を抑制することができる。また、適切な値で電力制御をすることができるので、不必要に電力を制限してしまうといった状況を適切に抑制することができる。
【0073】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係る非接触給電システムについて説明する。この第2の実施形態が、第1の実施形態のそれと相違する点は、送電コイル電圧Vpを推定することで、電圧センサ121を省略した構成を実現することである。なお、第1の実施形態と共通する構成については説明を省略することとし、以下相違点を中心に説明を行う。
【0074】
電力制限部151は、制限電力指令Prefを決定するにあたり送電コイル電圧Vpを利用する。本実施形態において、電力制限部151は、当該送電コイル電圧Vpをセンサ等の検出によらず、推定することとしている。具体的には、電力制限部151は、下式に基づいて送電コイル電圧Vpを推定する。
【数4】
【数5】
【0075】
数式5において、ωL1は、送電コイルのインダクタンスであり、実験やシミュレーションを通じて予め設定されている。
【0076】
このように本実施形態によれば、電力制限部151は、バッテリ電圧Vr、電力指令、受電コイル電圧Vsに基づいて、送電コイル電圧Vrを推定している。
【0077】
かかる構成によれば、送電コイル電圧Vpを推定することができるので、当該電圧Vpを検出するためのセンサを省略することができる。これにより、システム構成の簡素化やコストの低減を実現することができる。
【0078】
なお、上述した第1の実施形態又は第2の実施形態では、制限電力指令Prefを逐次計算すること求めたが、制限電力指令Prefをマップ演算により決定することも可能である。
【0079】
図10は、バッテリ電圧Vrと送電コイル電圧Vref1〜Vref5とをパラメータとして制限電力指令Prefを規定する電力指令マップを模式的に示す説明図である。
図10(a)に示す電力指令マップは、コイルの結合状態が高い場合、すなわち、バッテリ電圧Vrが低い状況で電力を制限する制御モードにおいて適用されるマップの一例を示すものであり、電力制限部151は、当該マップを複数の相互インダクタンスωMに応じて複数個保持している。また、
図10(b)に示す電力指令マップは、コイルの結合状態が低い場合、すなわち、バッテリ電圧Vrが高い状況で電力を制限する制御モードにおいて適用されるマップの一例を示すものであり、電力制限部151は、当該マップを複数の相互インダクタンスωMに応じて複数個保持している。
【0080】
電力制限部151は、第1の実施形態に示すように、相互リアクタンスωMを推定し、制御モードを選択する。そして、この選択した制御モードに応じて、当該制御モードに応じた電力指令マップが特定され、さらに、相互リアクタンスωMに応じて当該マップが細分化されている場合には、当該相互リアクタンスωMに応じてさらに電力指令マップを特定する。
【0081】
電力指令マップが特定されると、電力制限部151は、バッテリ電圧Vr及び送電コイル電圧Vrefに応じて制限電力指令Prefを決定することができる。
【0082】
このように電力指令マップを使用することで、電力制限部151の直接的な演算負荷を減少させることができる。また、電力指令をリニアに変化させることができるので、電力効率を高めることができる。
【0083】
特願2013−084549号(出願日:2013年4月15日)の全内容は、ここに援用される。
【0084】
以上、第1及び第2の実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。