(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照にして本発明にかかる凹凸構造体について説明する。
【0014】
図1は、第1実施形態の第1元画像1を示す図である。
【0015】
本実施形態の第1元画像1は、コンピュータ上で電子情報として作製される図柄である。第1元画像1の画像データは、モノクロ画像のデータであり、カラーの画像をグレースケール化してモノクロに変換する。元々、モノクロの画像の場合には、そのままモノクロの第1元画像1の画像データを使用する。
【0016】
図2は、第1実施形態の第1元画像を階調化した画像を示す図である。
【0017】
第1元画像1は、n段階に階調化され、第1階調化画像11となる。第1実施形態の第1階調化画像11は、4段階に階調した部分を有する。第1元画像第1階調部11aは輝度が低く、第1元画像第2階調部11b、第1元画像第3階調部11c、第1元画像第4階調部11dとなるにつれて、輝度が高くなるように設定する。なお、何段階に階調化するかは適宜決定することができる。
【0018】
図3は、第1実施形態の第2元画像2を示す図である。
【0019】
第1実施形態の第2元画像2は、コンピュータ上で電子情報として作製される図柄である。第2元画像2の画像データは、モノクロ画像のデータであり、カラーの画像をグレースケール化してモノクロに変換する。元々、モノクロの画像の場合には、そのままモノクロの第2元画像2の画像データを使用する。
【0020】
図4は、第1実施形態の第2元画像を階調化した画像を示す図である。
【0021】
第2元画像2は、n段階に階調化され、第2階調化画像21となる。第1実施形態の第2階調化画像21は、4段階に階調した部分を有する。第2元画像第1階調部21aは輝度が低く、第2元画像第2階調部21b、第2元画像第3階調部21c、第2元画像第4階調部21dとなるにつれて、輝度が高くなるように設定する。なお、何段階に階調化するかは適宜決定することができる。
【0022】
図5は、第1実施形態の隠し画像3を示す図である。
【0023】
隠し画像3は、
図1に示した第1元画像1及び
図3に示した第2元画像2に対して、第1元画像1及び第2元画像2の特徴を損なわないように埋め込まれ、視認可能な第1元画像1及び第2元画像2とは別の情報をいう。隠し画像3は、所定の観察条件でのみ確認可能な画像、図形、又は文字等が好ましい。
【0024】
図6は、第1実施形態の隠し画像3の第1基本散乱構造12を示す図である。
図7は、第1実施形態の隠し画像3の第2基本散乱構造22を示す図である。
【0025】
第1実施形態の第1基本散乱構造12は、隠し画像3をフーリエ変換し、その位相情報を2値化して深さとして記録したものである。なお、フーリエ変換後の位相情報は、2値化に限らず、多値化して深さとして記録してもよい。この第1基本散乱構造12は、レーザー光を照射すると、回折光の集合が特定の情報を持つように構成されている。本実施形態の第1基本散乱構造12にレーザー光を照射すると、
図5に示した「OK」の文字を観察することができる。
【0026】
第1基本散乱構造12は、指向性を持たせており、一見すると単なる黒色の図柄に見えるが、90°回転させると白色の図柄に見える。また、レーザー光を照射すると、回折光の集合を観察することができるので、真偽の判定を行うことが可能となる。
【0027】
第2基本散乱構造22は、第1基本散乱構造12と基本的な構造が同一であるが、第1基本散乱構造を90°回転させた構造を有する。したがって、第2基本散乱構造12は、一見すると単なる白色の図柄に見えるが、90°回転させると黒色の図柄に見える。また、レーザー光を照射すると、回折光の集合を観察することができるので、真偽の判定を行うことが可能となる。なお、第1基本散乱構造12と第2基本散乱構造22との角度の違いは、90°に限らず、異なる角度とすればどの角度でもよいが、90°とすることで図柄の差異が明確となり、好ましい。
【0028】
次に、凹凸構造体4について説明する。
【0029】
図8は、基本散乱構造12,22を記録することにより、第1元画像1及び第2元画像2を形成した凹凸構造体4を示す図である。また、
図9は、
図8の第1元画像1に対応する各階調部を拡大した図であり、
図10は、
図8の第2元画像2に対応する各階調部を拡大した図である。さらには、
図11は、
図8のAの部分を拡大した図であり、
図12は、
図8のBの部分を拡大した図である。また、
図13は、凹凸構造体4を90°回転した状態を示す図である。
【0030】
図8に示した凹凸構造体4は、
図2に示した第1元画像1の第1階調化画像11及び
図4に示した第2元画像2の第2階調化画像21の輝度に対応させて、
図6及び
図7に示した第1基本散乱構造12の散乱部分13及び第2基本散乱構造22の散乱部分23の面積を変化させて図柄を構成したものである。したがって、凹凸構造体4は、階調を持ったモノクロの元画像1,2を表現することができる。
【0031】
本実施形態の凹凸構造体4は、
図9及び
図10に示すように、第1元画像第1散乱度部12a、第1元画像第2散乱度部12b、第1元画像第3散乱度部12c、第1元画像第4散乱度部12d、第2元画像第1散乱度部22a、第2元画像第2散乱度部22b、第2元画像第3散乱度部22c、及び第2元画像第4散乱度部22dを有する。第1元画像第1散乱度部12a及び第2元画像第1散乱度部22aは散乱度が低く、それぞれ第2散乱度部12b,22b、第3散乱度部12c,22c、第4散乱度部12d,22dとなるにつれて、散乱度が高くなるように基本領域に対する散乱部分13,23の面積を設定する。なお、散乱度の段階は、階調と対応させればよい。
【0032】
第1元画像第1散乱度部12aは、
図2に示した階調化した画像11の輝度の低い第1階調部11aに用いられる。第1元画像第1散乱度部12aは、
図9(a)に示すように、周囲をトリミング又は縮小することで散乱部分13の面積を小さくしたものである。本実施形態では、基本領域に対する散乱部分13の面積を25%とし、輝度を25%に低減する。
【0033】
第1元画像第2散乱度部12bは、
図2に示した階調化した画像11の第1階調部11aの次に輝度の高い第2階調部11bに用いられる。第1元画像第2散乱度部12bは、
図9(b)に示すように、周囲をトリミング又は縮小することで散乱部分13の面積を小さくしたものである。本実施形態では、基本領域に対する散乱部分13の面積を50%とし、輝度を50%に低減する。
【0034】
第1元画像第3散乱度部12cは、
図2に示した階調化した画像11の第2階調部11bの次に輝度の高い第3階調部11cに用いられる。第1元画像第3散乱度部12cは、
図9(c)に示すように、周囲をトリミング又は縮小することで散乱部分13の面積を小さくしたものである。本実施形態では、基本領域に対する散乱部分13の面積を75%とし、輝度を75%に低減する。
【0035】
第1元画像第4散乱度部12dは、
図2に示した階調化した画像11の最も輝度の高い第4階調部11dに用いられる。第1元画像第4散乱度部12dは、
図9(d)に示すように、周囲をトリミング又は縮小せずにそのまま用いる。本実施形態では、基本領域に対する散乱部分13の面積を100%とし、輝度を100%に低減する。
【0036】
なお、第1実施形態では、
図10に示すように、第2画像2に対応する各散乱度部23a、23b,23c,23dは、
図9に示した第1画像2に対応する各散乱度部13a、13b,13c,13dを90°回転した構造となっている。
【0037】
例えば、
図8のAの部分は、第1階調化画像11の第2階調部11b及び第3階調部11cに対応する第1元画像第2散乱度部12b及び第1元画像第3散乱度部12cと、第2階調化画像12の第1階調部21aに対応する第2元画像第1散乱度部22aとが重なっている。
【0038】
したがって、
図8のAの部分は、
図11に示すように、第1元画像第2散乱度部12bと第2元画像第1散乱度部22aが交互に配置された部分と、第1元画像第3散乱度部12cと第2元画像第1散乱度部22aが交互に配置された部分とから構成される。
【0039】
また、例えば、
図8のBの部分は、第1階調化画像11の第1階調部11a及び第2階調部11bに対応する第1元画像第1散乱度部12a及び第1元画像第2散乱度部12bと、第2階調化画像12の第3階調部21c及び第4階調部21dに対応する第2元画像第3散乱度部22c及び第2元画像第4散乱度部22dとが重なっている。
【0040】
したがって、
図8のBの部分は、
図12に示すように、第1元画像第2散乱度部12bと第2元画像第3散乱度部22cが交互に配置された部分と、第1元画像第1散乱度部12aと第2元画像第3散乱度部22cが交互に配置された部分と、第1元画像第2散乱度部12bと第2元画像第4散乱度部22dが交互に配置された部分と、第1元画像第2散乱度部12bのみからなる部分と、から構成される。
【0041】
なお、本実施形態では、第1元画像に対応する散乱度部と、第2画像に対応する散乱度部と、を交互に配置するようにしたが、縦列または横列ごとに配置してもよい。また、これに限らず、並べ方は、適宜変更してもよい。
【0042】
このような凹凸構造体4は、従来から用いられているEB描画等の手法を用いて作成する。この際、パターンの白部または黒部を凹部または凸部に対応させて形成する。
【0043】
このような構成の凹凸構造体4は、目視により図柄を観察すると、
図1に示したような第1元画像1を観察することができる。また、凹凸構造体4を90°回転してみると、
図13に示すように、90°回転した第2元画像2を観察することができる。
【0044】
図14は、第1実施形態の凹凸構造体4に光源Lからレーザー光を照射した状態を示す図である。
【0045】
通常、凹凸構造体4を観察した場合、観察者は、
図1に示したモノクロの第1元画像1を観察することができ、凹凸構造体4を90°回転させて観察した場合、観察者は、
図13に示したモノクロの第2元画像2を観察することが可能である。通常の状態では、隠し画像は、観察することができない。
【0046】
図14に示すように、凹凸構造体4に光源Lからレーザー光を照射すると、回折光の集合によって、隠し画像を観察することが可能となる。本実施形態の場合、隠し画像3としての「OK」の文字が浮き出ているように観察することができ、真偽を判定することが可能となる。
【0047】
図15は、第2実施形態の第2隠し画像3’を示す図である。
【0048】
第2実施形態では、第2基本散乱構造22は、第1基本散乱構造12とは異なり、レーザー光を照射すると、
図15に示すように、第1基本散乱構造12の第1隠し画像3「OK」とは別の第2隠し画像3’「NG」を観察することができる構造として、第1基本散乱構造21に対して90°回転させて配置する。
【0049】
図16は、第2実施形態の凹凸構造体3の第2基本散乱構造22の部分に光源Lからレーザー光を照射した状態を示す図である。
図17は、第2実施形態の凹凸構造体3の第1基本散乱構造12の部分及び第2基本散乱構造22の部分に跨がるように光源Lからレーザー光を照射した状態を示す図である。
【0050】
通常、凹凸構造体3を観察した場合、観察者は、
図1に示したモノクロの元画像1、または黒と白が反転したモノクロの元画像1を観察することが可能である。通常の状態では、隠し画像は、観察することができない。
【0051】
図16に示すように、凹凸構造体3に光源Lからレーザー光を照射すると、回折光の集合によって、隠し画像を観察することが可能となる。本実施形態の場合、第1基本散乱構造12の部分に照射されたレーザー光では、
図14に示したように、第1隠し画像3としての「OK」の文字が浮き出ているように観察することができ、真偽を判定することが可能となる。第2基本散乱構造22の部分に照射されたレーザー光では、
図16に示すように、第2隠し画像3’としての「NG」の文字が浮き出ているように観察することができ、真偽を判定することが可能となる。
【0052】
また、
図17に示すように、第1基本散乱構造12の部分及び第2基本散乱構造22の部分に跨がるように照射されたレーザー光では、第1隠し画像3としての「OK」及び第2隠し画像3’としての「NG」の2文字が浮き出ているように観察することができ、真偽を判定することが可能となる。
【0053】
次に、本実施形態の凹凸構造体4の使用方法について説明する。
【0054】
通常、印刷物等に貼着して用いる凹凸構造体4としては、凹凸のレリーフ構造の回折格子のレリーフ面あるいは平面に蒸着等で金属反射膜を設けて反射型とした回折格子が用いられるが、それ以外に、振幅が周期的に変化する振幅型回折格子を構成するもの又は屈折率が周期的に変化して位相型回折格子を構成するものの裏面に金属反射膜を設けて反射型とした回折格子、体積型感光材料中に干渉縞で回折格子を構成した体積型回折格子等を用いてもよい。
【0055】
もちろん、反射型でなく透過型のもので構成し、回折格子も透過型の回折格子で構成してもよい。
【0056】
さて、凹凸構造体4は、転写箔、ラベル、フィルム等種々の形態に構成することができる。転写箔形態の場合には、例えば商品券、クレジットカード、パッケージ等に適用でき、ラベル形態の場合には、例えばソフトウエア、カートリッジ、医薬品等のパッケージ等に適用でき、フィルム形態の場合には、例えばそのフィルムを1〜2mm程度の幅にマイクロスリットし、用紙の抄造時に紙中に共に抄き込んで偽造防止を図ることができる。また、ラベル形態の場合には、脆質層を層構成中に介在させて、偽造のためにラベルを剥離しようとしたときにその脆質層から剥がれるようにして偽造のために表示体を剥がすことを困難にすることができる(脆質ラベル)。
【0057】
本実施形態の光回折構造による隠し画像3を内包する凹凸構造体4を、転写箔、ラベル、脆質ラベル、フィルムの各形態に構成する場合の、層構成とその作製工程は、特許文献2等に記載されたものと同様である。
【0058】
このように、本実施形態の凹凸構造体4は、凹凸構造体4は、所定の波長の光を照射することにより回折光が生じ特定の情報を表示する基本散乱構造12,22を有し、基本散乱構造12,22は、第1元画像1に対応する第1基本散乱構造12と、第2元画像2に対応し、第1基本散乱構造12と異なる角度で構成される第2基本散乱構造22と、を含み、第1元画像1の輝度に対応して、第1基本散乱構造12の基本領域に対する面積が設定され、第2元画像2の輝度に対応して、第2基本散乱構造22の基本領域に対する面積が設定され、第1基本散乱構造12及び第2基本散乱構造22の集合から構成されるので、デザイン性に優れ、偽造防止性が高く、セキュリティ的にも信頼性が高いものである。
【0059】
また、第1基本散乱構造12及び第2基本散乱構造22は、交互に並べて配置されるので、簡単な構造で異なる2つの観察画像を観察させることが可能となる。
【0060】
また、第2基本散乱構造22は、第1基本散乱構造21を90°回転させた構造であるので、より簡単な構造で観察画像に変化を持たせることが可能となる。
【0061】
また、基本散乱構造21は、特定の情報に対応するデータをフーリエ変換し、その位相情報を多値化して深さとして記録するので、短時間で容易に製作することが可能となる。
【0062】
以上、凹凸構造体をいくつかの実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。