(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記型枠が、前記縦架設材の前後方向前方に位置しつつ該縦架設材に固定されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数本の第2横架設材を含み、それら第2横架設材が、前記壁面と前記パネルとの間の空間に前記コンクリートを打設したときのそれら縦架設材の前後方向前方への変形および横方向への撓みを防ぐ請求項1に記載の型枠。
それら縦間材が、断面形状四角形の金属管であり、前記第1横架設材に対向する前板と、前記壁面に対向する後板と、前記前後板の間に延びる両側板とを有し、それら縦間材には、その後板から横方向へ張り出してそれら縦間材の間に配置された型枠パネルの前記壁面側への倒れ込みを防止する支持板が設置されている請求項1または請求項2に記載の型枠。
それら縦間材が、その前板に設置されて上下方向へ所定寸法離間して並んでいてそれら第1横架設材を支持する複数個の支持金具を備え、それら支持金具が、前記壁面と前記型枠パネルとの間の空間に前記コンクリートを打設したときのそれら第1横架設材のパネルの外面に対する当接状態を維持する請求項3に記載の型枠。
前記第1横架材が、横方向へ延びていて前記建造物のスラブ底面または梁底面に固定される固定板と、前記壁面に対向して前記固定板の一方の側縁から下方へ延出する第1側板と、前記第1側板の反対側に位置して前記固定板の他方の側縁から下方へ延出する第2側板とを有し、前記第2横架材が、横方向へ延びていて前記建造物の床面に固定される固定板と、前記壁面に対向して前記固定板の一方の側縁から上方へ延出する第1側板と、前記第1側板の反対側に位置して前記固定板の他方の側縁から上方へ延出する第2側板とを有し、それら縦間材が、前記第1横架材の固定板と第1および第2側板との間に挿脱可能に嵌入して該第1横架材に支持された上端部と、前記第2横架材の固定板と第1および第2側板との間に挿脱可能に嵌入して該第2横架材に支持された下端部とを有する請求項3または請求項4に記載の型枠。
前記縦架設材が、前記第1横架設材の外面に当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材と、前記第1垂直材から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材と、前記第1垂直材と前記第2垂直材との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られたトラス構造物であり、前記トラス構造物の上端部が、所定の固定手段を介して前記建造物のスラブ底面または梁底面に固定され、前記トラス構造物の下端部が、所定の固定手段を介して前記建造物の床面に固定されている請求項1ないし請求項5いずれかに記載の型枠。
前記トラス構造物が、その高さ寸法を調節可能な寸法調節材を含み、前記寸法調節材が、前記建造物の側に位置して該建造物に固定される固定端部と、前記第1垂直材の側に位置して該第1垂直材に対する上下方向の固定位置を調節可能な開口部とを有し、前記第1垂直材が、前記開口部を介して前記寸法調節材に着脱可能に連結されている請求項6に記載の型枠。
前記型枠パネルが、上下方向へ複数枚に分割され、それらパネルが、前記第1および第2横架材と前記縦間材との間に挿脱可能に嵌入して上下方向へ並ぶとともにそれら横架材とそれら縦間材とに支持される請求項1ないし請求項7いずれかに記載の型枠。
それら型枠パネルの少なくとも1つには、前記壁面と前記パネルとの間の空間に前記コンクリートを打設する供給口が作られ、それら型枠パネルの少なくとも1つには、前記壁面と前記パネルとの間の空間に前記コンクリートを打設するときに、前記空間への前記コンクリートの打設状態を確認可能な確認窓が作られている請求項8に記載の型枠。
それら型枠パネルの外周面には、該パネルの前記壁面に対向する対向面の前記コンクリートに対する摩擦抵抗を低下させるとともに該パネル全体の強度を増加させる合成樹脂が塗布されている請求項1ないし請求項9いずれかに記載の型枠。
前記型枠では、上下方向下方に位置する型枠パネルに対する前記第1横架設材の設置本数が上下方向上方に位置する型枠パネルに対する前記第1横架設材のそれよりも多い請求項8ないし請求項10いずれかに記載の型枠。
前記型枠では、それら第1横架設材が前記型枠パネルの上下方向中央部に配置されているとともに、それら第1横架設材が前記型枠パネルの上下方向両端部に配置されている請求項1ないし請求項11いずれかに記載の型枠。
前記型枠では、それら縦間材が横方向へ略等間隔離間して並び、それら縦架設材が横方向へ略等間隔離間して並んでいる請求項1ないし請求項12いずれかに記載の型枠。
前記建造物が、既設のそれであり、前記型枠が、既設の前記建造物の壁面に作られる鉄筋コンクリート製の耐震補強壁の構築に利用される請求項1ないし請求項13いずれかに記載の型枠。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セパレータを設置する手順の一例は、以下のとおりである。建造物の壁に複数個のアンカーホールを穿孔するとともに、アンカーホールの位置に対応する型枠のベニヤ板に複数の貫通孔を穿孔する。次に、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置するとともに、樹脂アンカーや機械式アンカーにセパレータの一方の締め付け金物を接続し、ベニヤ板の貫通孔から露出するセパレータの他方の締め付け金物に円筒管を噛ませた状態でクランプを螺着する。型枠を組み立てる場合、配筋する鉄筋に衝突しないように鉄筋の位置を考慮しつつ、壁の単位面積当たりに相当数のセパレータを設置しなければならないのみならず、建造物の壁にアンカーホールを穿孔する場合、壁に埋設された鉄筋を避けなければならず、さらに、アンカーホールを穿孔する穿孔位置を決めた後、その穿孔位置に対応するベニヤ板の任意の位置にアンカーホールに対応する複数の貫通孔を穿孔しなければならない。壁に対するアンカーホールの穿孔位置やベニヤ板に対する貫通孔の穿孔位置を正確に位置決め(墨出し)して、壁とベニヤ板との並行状態を確実に保持するには型枠大工の長年の経験に頼らざるを得ないのが現状である。なお、型枠大工が型枠工事をする場合においても、設計どおりの型枠を組み立てるまでに相当の熟練と時間とを要するとともに、多くの手間を必要としている。
【0005】
本発明の目的は、型枠大工の経験に頼ることなく、短時間に効率よく組み立てることができ、手間を要さずに廉価に組み立てることができるとともに、打設されるコンクリートの側圧に十分に耐えることができる型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、建造物の壁面に組み立てられ、壁面の外側にコンクリートを増し打ちして新たな壁を作るために使用される型枠である。
【0007】
前記前提における本発明の特徴は、型枠が、壁面から前後方向前方へ所定寸法離間して横方向へ延びるとともに建造物のスラブ底面または梁底面に固定された第1横架材と、壁面から前後方向前方へ所定寸法離間して横方向へ延びるとともに建造物の床面に固定された第2横架材と、第1および第2横架材の間に配置されて上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数本の縦間材と、第1および第2横架材と縦間材との間に配置された所定面積の型枠パネルと、パネルの前後方向前方に位置しつつそれら縦間材に支持されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数本の第1横架設材と、それら第1横架設材の前後方向前方に位置して上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数個の縦架設材とを備え、それら第1横架設材が壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのパネルの前後方向前方への変形を防ぐとともに、それら縦架設材が壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのパネルおよびそれら第1横架設材の前後方向前方への変形を防ぐことにある。
【0008】
本発明の一例としては、型枠が縦架設材の前後方向前方に位置しつつ縦架設材に固定されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数本の第2横架設材を含み、それら第2横架設材が壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのそれら縦架設材の前後方向前方への変形および横方向への撓みを防ぐ。
【0009】
本発明の他の一例としては、それら縦間材が、断面形状四角形の金属管であり、第1横架設材に対向する前板と、壁面に対向する後板と、前後板の間に延びる両側板とを有し、それら縦間材には、その後板から横方向へ張り出してそれら縦間材の間に配置された型枠パネルの壁面側への倒れ込みを防止する支持板が設置されている。
【0010】
本発明の他の一例としては、それら縦間材がその前板に設置されて上下方向へ所定寸法離間して並んでいてそれら第1横架設材を支持する複数個の支持金具を備え、それら支持金具が壁面と型枠パネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのそれら第1横架設材のパネルの外面に対する当接状態を維持する。
【0011】
本発明の他の一例としては、第1横架材が、横方向へ延びていて建造物のスラブ底面または梁底面に固定される固定板と、壁面に対向して固定板の一方の側縁から下方へ延出する第1側板と、第1側板の反対側に位置して固定板の他方の側縁から下方へ延出する第2側板とを有し、第2横架材が、横方向へ延びていて建造物の床面に固定される固定板と、壁面に対向して固定板の一方の側縁から上方へ延出する第1側板と、第1側板の反対側に位置して固定板の他方の側縁から上方へ延出する第2側板とを有し、それら縦間材が、第1横架材の固定板と第1および第2側板との間に挿脱可能に嵌入して第1横架材に支持された上端部と、第2横架材の固定板と第1および第2側板との間に挿脱可能に嵌入して第2横架材に支持された下端部とを有する。
【0012】
本発明の他の一例としては、縦架設材が、第1横架設材の外面に当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材と、第1垂直材から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材と、第1垂直材と第2垂直材との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られたトラス構造物であり、トラス構造物の上端部が所定の固定手段を介して建造物のスラブ底面または梁底面に固定され、トラス構造物の下端部が所定の固定手段を介して建造物の床面に固定されている。
【0013】
本発明の他の一例としては、トラス構造物がその高さ寸法を調節可能な寸法調節材を含み、寸法調節材が、建造物の側に位置して建造物に固定される固定端部と、第1垂直材の側に位置して第1垂直材に対する上下方向の固定位置を調節可能な開口部とを有し、第1垂直材が開口部を介して寸法調節材に着脱可能に連結されている。
【0014】
本発明の他の一例としては、型枠パネルが上下方向へ複数枚に分割され、それらパネルが第1および第2横架材と縦間材との間に挿脱可能に嵌入して上下方向へ並ぶとともにそれら横架材とそれら縦間材とに支持される。
【0015】
本発明の他の一例として、それら型枠パネルの少なくとも1つには、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設する供給口が作られ、それら型枠パネルの少なくとも1つには、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設するときに、空間へのコンクリートの打設状態を確認可能な確認窓が作られている。
【0016】
本発明の他の一例として、それら型枠パネルの外周面には、パネルの壁面に対向する対向面のコンクリートに対する摩擦抵抗を低下させるとともにパネル全体の強度を増加させる合成樹脂が塗布されている。
【0017】
本発明の他の一例として、型枠では、上下方向下方に位置する型枠パネルに対する第1横架設材の設置本数が上下方向上方に位置する型枠パネルに対する第1横架設材のそれよりも多い。
【0018】
本発明の他の一例として、型枠では、それら第1横架設材が型枠パネルの上下方向中央部に配置されているとともに、それら第1横架設材が型枠パネルの上下方向両端部に配置されている。
【0019】
本発明の他の一例として、型枠では、それら縦間材が横方向へ略等間隔離間して並び、それら縦架設材が横方向へ略等間隔離間して並んでいる。
【0020】
本発明の他の一例としては、建造物が既設のそれであり、型枠が既設の建造物の壁面に作られる鉄筋コンクリート製の耐震補強壁の構築に利用される。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる型枠によれば、型枠パネルの前後方向前方に位置しつつそれら縦間材に支持されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数本の第1横架設材を有し、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるそれら型枠パネルの前後方向前方への膨隆をそれら第1横架設材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときのパネルの前後方向前方への変形を防ぐことができる。さらに、それら第1横架設材に当接して上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数個の縦架設材を有し、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるそれら第1横架設材の前後方向前方への膨隆をそれら縦架設材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときのパネルおよびそれら第1横架設材の前後方向前方への変形を防ぐことができる。型枠は、それら第1横架設材とそれら縦架設材とを利用することで、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧に十分に耐えることができ、建造物の壁面とパネルとの並行状態を維持することができるから、壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。型枠は、それを組み立てる際に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験に頼る必要はなく、短時間に効率よく組み立てることができるとともに、手間を要さずに廉価に組み立てることができる。
【0022】
縦架設材の前後方向前方に位置しつつ縦架設材に固定されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数本の第2横架設材を含む型枠は、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるそれら縦架設材の前後方向前方への膨隆をそれら第2横架設材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときのそれら縦架設材の前後方向前方への変形や横方向への撓みを防ぐことができる。型枠は、それら第1横架設材とそれら縦架設材とそれら第2横架設柱材を利用することで、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧に十分に耐えることができ、建造物の壁面とパネルとの並行状態を維持することができるから、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
【0023】
縦間材の後壁から横方向へ張り出してそれら縦間材の間に配置された型枠パネルの壁面側への倒れ込みを防止する支持板がそれら縦間材に設置された型枠は、型枠パネルが縦間材に設置された支持板に支持され、パネルが壁面に向かって倒れることはなく、建造物の壁面とパネルとの並行状態を維持することができるとともに、パネルによって壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを滞留させることができるから、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
【0024】
それら縦間材がその前板に設置されて上下方向へ所定寸法離間して並んでいてそれら第1横架設材を支持する複数個の支持金具を備えた型枠は、支持金具によってそれら第1横架設材のパネルの外面に対する当接状態が維持されるから、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるパネルの前後方向前方への変形を防ぐことができる。型枠は、支持金具に支持されたそれら第1横架設材やそれら縦架設材、それら第2横架設材を利用することで、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧に十分に耐えることができるから、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
【0025】
第1および第2横架材が固定板と第1および第2側板とを有し、それら縦間材が第1横架材の固定板と第1および第2側板との間に挿脱可能に嵌入して第1横架材に支持された上端部と第2横架材の固定板と第1および第2側板との間に挿脱可能に嵌入して第2横架材に支持された下端部とを有する型枠は、横方向へ所定寸法離間して並ぶそれら縦間材の上下端部が第1および第2横架材の固定板と第1および第2側板との間に嵌入してそれら横架材に支持されることで、第1および第2横架材と縦間材との間に型枠パネルをしっかりと配置することができる。型枠は、建造物の壁面とパネルとの並行状態を維持することができるとともに、パネルによって壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを滞留させることができるから、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
【0026】
縦架設材が上下方向へ直状に延びる第1および第2垂直材とそれら垂直材の間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られたトラス構造物であり、トラス構造物の上端部が固定手段を介して建造物のスラブ底面または梁底面に固定され、トラス構造物の下端部が固定手段を介して建造物の床面に固定された型枠は、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるそれら第1横架設材の前後方向前方への膨隆をそれらトラス構造物のトラス材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときのパネルおよびそれら第1横架設材の前後方向前方への変形を防ぐことができる。型枠は、それら第1横架設材とそれらトラス構造物とを利用することで、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧に十分に耐えることができるから、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
【0027】
トラス構造物がその高さ寸法を調節可能な寸法調節材を含み、寸法調節材が建造物の側に位置して建造物に固定される固定端部と第1垂直材の側に位置して第1垂直材に対する上下方向の固定位置を調節可能な開口部とを有し、第1垂直材が開口部を介して寸法調節材に着脱可能に連結される型枠は、寸法調節材によってトラス構造物の上下方向の寸法を調節することができるから、トラス構造物の上下方向の寸法を建造物の壁面の高さ寸法に一致させることができ、トラス構造物を建造物に確実に固定することができる。型枠は、コンクリートの側圧による型枠パネルおよびそれら第1横架設材の前後方向前方への膨隆をそれらトラス構造物が押さえるから、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのそれらパネルおよびそれら第1横架設材の前後方向前方への変形を防ぐことができる。型枠は、それら第1横架設材とそれらトラス構造物とを利用することで、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧に十分に耐えることができるから、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
【0028】
型枠パネルが上下方向へ複数枚に分割され、それらパネルが第1および第2横架材と縦間材との間に挿脱可能に嵌入して上下方向へ並ぶとともにそれら横架材とそれら縦間材とに支持される型枠は、建造物の壁面の高さ寸法が大きい場合であっても、上下方向へ複数枚に分割された型枠パネルを第1および第2横架材と縦間材との間に上下方向へ並べることで、パネルを壁面の高さ寸法全体に設置することができる。型枠は、建造物の壁面とパネルとの並行状態を維持することができるとともに、パネルによって壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを滞留させることができるから、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
【0029】
壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設する供給口がそれら型枠パネルの少なくとも1つに作られ、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設するときに、空間へのコンクリートの打設状態を確認可能な確認窓がそれら型枠パネルの少なくとも1つに作られている型枠は、パネルに作られた供給口を利用することで、コンクリートを空間に容易に打設することができ、建造物の壁面にコンクリートを容易に増し打ちすることができる。型枠は、空間へのコンクリートの打設状態を確認窓から確認することができるから、空間全域にコンクリートを確実に打設することができ、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができる。
【0030】
コンクリートに対する摩擦抵抗を低下させるとともに型枠パネル全体の強度を増加させる合成樹脂がそれらパネルに塗布された型枠は、合成樹脂を塗布することによってパネルの壁面に対向する対向面を平滑にすることができ、それによって対向面のコンクリートに対する摩擦抵抗が低下するから、打設されたコンクリートを養生した後、型枠を取り外すときに、硬化したコンクリートからパネルを容易に取り外すことができる。型枠は、型枠パネルの対向面の平滑度が合成樹脂によって維持されるから、使用済みのパネルを繰り返して使用することができ、型枠にかかるコストを押さえることができる。型枠は、パネルの強度が合成樹脂によって増加し、使用中におけるパネルの座屈や破損が防止されるから、パネルによって壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを滞留させることができ、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができる。
【0031】
上下方向下方に位置する型枠パネルに対する第1横架設材の設置本数が上下方向上方に位置する型枠パネルに対する第1横架設材のそれよりも多い型枠は、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧が下方に位置するパネルに大きく作用するが、上下方向下方に位置する型枠パネルに対する第1横架設材の設置本数が多いから、それら第1横架設材によってそのパネルの前後方向前方への膨隆が確実に押さえられ、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのそれらパネルの前後方向前方への変形を確実に防ぐことができる。
【0032】
それら第1横架設材が型枠パネルの上下方向中央部に配置されているとともに、それら第1横架設材が型枠パネルの上下方向両端部に配置されている型枠は、第1横架設材によってパネルの上下方向中央部が押さえられるとともに、パネルの上下方向両端部が押さえられるから、それら第1横架設材によってパネルの前後方向前方への膨隆が確実に押さえられ、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるパネルの前後方向前方への変形を確実に防ぐことができる。型枠は、複数枚の型枠パネルが上下方向へ並んだ場合であっても、各パネルの上下方向両端部が第1横架設材によって押させられるから、それらパネルの当接部分における変形が第1横架設材によって防止され、それらパネルの当接部分からのコンクリートの漏出を防ぐことができる。
【0033】
それら縦間材が横方向へ略等間隔離間して並び、それら縦架設材が横方向へ略等間隔離間して並んでいる型枠は、それら縦間材を横方向へ略等間隔離間して設置することで、型枠パネルの横方向の寸法を同一にすることができ、パネルの横方向の寸法が異なることによる各パネルの強度のばらつきを防ぐことができ、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのパネルの部分的な変形を防ぐことができる。型枠は、それら縦架設材を横方向へ略等間隔離間して設置することで、それら縦架設材によってパネルおよびそれら第1横架設材を均一に押さえることができるから、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのパネルおよびそれら第1横架設材の前後方向前方への変形を確実に防ぐことができる。
【0034】
建造物が既設のそれであり、既設の建造物の壁面に作られる鉄筋コンクリート製の耐震補強壁の構築に利用される型枠は、型枠を使用して既設の建造物の壁に構造計算された設計どおりの新たな鉄筋コンクリート製の耐震補強壁を新設することができる。型枠は、鉄筋コンクリート製の耐震補強壁を短時間に効率よく作ることができ、耐震補強壁を手間を要さずに廉価に作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
組み立てられた型枠10Aの一例を示す正面図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる型枠の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、組み立てられた型枠10Aの側面図であり、
図3は、一例として示す第1横架材17および縦間柱19の部分拡大斜視図である。
図4は、一例として示す第2横架材18および縦間柱19の部分拡大斜視図である。
【0037】
図1,2では、上下方向を矢印Aで示し、横方向の矢印B(
図1のみ)で示すとともに、前後方向を矢印C(
図2のみ)で示す。
図2では、コンクリート13に埋設された鉄筋の図示を省略している。
図3では、縦間柱19の上端部が第1横架材17に嵌入した状態を二点鎖線で示し、
図4では、縦間柱19の下端部が第2横架材18に嵌入した状態を二点鎖線で示す。
【0038】
型枠10Aは、既設の建物11(建造物)の壁面12の前後方向前方へ所定寸法離間した位置に組み立てられ、壁面12の外側にコンクリート13を増し打ちして新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁78を作るために使用される。耐震補強壁78を作る箇所に複数本の鉄筋(図示せず)を配筋するとともに型枠10Aを組み立て、壁面12と型枠10A(型枠パネル20)との間の空間14(壁面12の外側)にコンクリート13を打設する。打設したコンクリート13を所定期間養生した後、組み立てた型枠10Aを取り外す(分解する)ことで鉄筋コンクリート製の耐震補強壁78が作られる。
【0039】
なお、
図1,2では、建物11の柱15の間に施設された既設の壁16の壁面12に耐震補強壁78を構築する場合を図示しているが、柱15の間のみならず、型枠10A(後記する型枠10Bを含む)を利用することで、壁梁の間の壁や床スラブの間の壁等のあらゆる既設の壁の壁面に耐震補強壁78を構築することができる。また、既設の壁には、外壁や耐力壁、間仕切り壁、垂れ壁、袖壁、腰壁等のあらゆる壁が含まれる。型枠10Aは、第1横架材17(第1ランナー)および第2横架材18(第2ランナー)と、複数本の縦間柱19(縦間材)(スタッド)と、複数枚の型枠パネル20と、複数本の第1横架設柱21(第1横架設材)と、複数個のトラス構造物22(縦架設材)と、複数本の第2横架設柱23(第2横架設材)とから形成されている。
【0040】
第1横架材17(第1ランナー)は、壁面12から前後方向前方へ所定寸法離間した位置に設置されて横方向へ延びている。第1横架材17は、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られ、建物11のスラブ底面24または梁底面24の位置決めされた第1横架材取付箇所(墨出し箇所)に着脱可能に取り付けられる。スラブ底面24や梁底面24に対する第1横架材17の取付箇所(壁面12から前後方向前方への離間寸法)は、新設する耐震補強壁78の構造計算によって決定された厚み寸法によって異なる。第1横架材17は、
図3に示すように、固定板25と第1および第2側板26,27とから形成されている。
【0041】
固定板25は、建物11のスラブ底面24または梁底面24の位置決めされた箇所に配置されて横方向へ直状に延びている。固定板25には所定の間隔で複数の緊結孔28が作られており、それら緊結孔28と建物11のスラブ底面24または梁底面24とに釘やボルト、ビス等の接合用部材29を打ち込むことで、固定板25(第1横架材17)がスラブ底面24や梁底面24に強固に固定される。第1側板26は、壁面12に対向して固定板25の一方の側縁から上下方向下方へ延出するとともに、横方向へ直状に延びている。第2側板27は、第1側板26の反対側に位置して固定板25の他方の側縁から上下方向下方へ延出するとともに、横方向へ直状に延びている。第2側板27には、それを貫通する緊結孔30が作られている。第2側板27は、その上下方向下方への延出寸法が第1側板26の上下方向下方へのそれよりも短い。
【0042】
第2横架材18(第2ランナー)は、壁面12から前後方向前方へ所定寸法離間した位置に設置されて横方向へ延びている。第2横架材18は、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られ、建物11の床面31の位置決めされた第2横架材取付箇所(墨出し箇所)に着脱可能に取り付けられる。床面31に対する第2横架材18の取付箇所(壁面12から前後方向前方への離間寸法)は、第1横架材17と同様に、新設する耐震補強壁78の構造計算によって決定された厚み寸法によって異なる。なお、スラブ底面24または梁底面24の第1横架材取付箇所と床面31の第2横架材取付箇所とが略正確に一致しており、第2横架材18が第1横架材17に対して並行に配置、固定されている。第2横架材18は、
図4に示すように、固定板32と第1および第2側板33,34とから形成されている。
【0043】
固定板32は、建物11の床面31の位置決めされた箇所に配置されて横方向へ直状に延びている。固定板32には所定の間隔で複数の緊結孔35が作られており、それら緊結孔35と建物11の床面31とに釘やボルト、ビス等の接合用部材36を打ち込むことで、固定板32(第2横架材18)が床面31に固定される。第1側板33は、壁面12に対向して固定板32の一方の側縁から上下方向上方へ延出するとともに、横方向へ直状に延びている。第2側板34は、第1側板33の反対側に位置して固定板32の他方の側縁から上下方向上方へ延出するとともに、横方向へ直状に延びている。第2側板34には、それを貫通する緊結孔37が作られている。第1側板33と第2側板34とは、その上下方向下方への延出寸法が同一である。
【0044】
縦間柱19(縦間材)(スタッド)は、第1横架材17と第2横架材18との間に配置されて上下方向へ延びている。それら縦間柱19は、第1横架材17と第2横架材18との間において横方向へ略等間隔離間して並んでいる。なお、
図1では3本の縦間柱19を図示しているが、縦間柱19の本数に特に限定はなく、構築する耐震補強壁78の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によって使用する縦間柱19の本数が決定される。また、それら縦間柱19が横方向へ略等間隔離間して並ぶ必要はなく、それら縦間柱19が横方向へ異なる寸法離間して並んでいてもよい。
【0045】
それら縦間柱19は、
図3,4に示すように、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の中空の金属管であるが、断面形状が四角形の金属柱、他の形状の金属管や金属柱、H型鋼やI型鋼、角型鋼材等を使用することもできる。縦間柱19は、前板38および後板39と、前後板38,39の間に延びる両側板40,41とを有するとともに、第1横架材17に支持される上端部41と、第2横架材18に支持される下端部43とを有する。前板38は、第1横架設柱21に対向し、後板39は、建物11の壁面12に対向する。上端部42における前板38には、それを貫通する緊結孔44が作られている。下端部43における前板38には、それを貫通する緊結孔45が作られている。後板39には、横方向へ延びる一対の支持板46が設置されている。支持板46は、それら縦間柱39の間に配置された型枠パネル20の壁面12の側への倒れ込みを防止する。
【0046】
なお、それら縦間柱19では、後板39と支持板46とが一体になっているが、別部材の支持板が後板39に着脱可能に設置される場合もある。この場合、支持板としてL字型のアングルを用意し、一方のアングルの固定板を縦間柱19の一方の側板40に固定(アジャスターボルトや溶接による固定)するとともに、他方のアングルの固定板を縦間柱19の他方の側板41に固定(アジャスターボルトや溶接による固定)し、それらアングルの自由板を後板39から横方向へ延出させることで、アングルの自由板を支持板46として利用する。
【0047】
それら縦間柱19は、
図3に二点鎖線で示すように、その上端部42の前後板38,39および両側板40,41が第1横架材17の固定板25と第1および第2側板26,27の間に嵌入し、
図4に二点鎖線で示すように、その下端部43の前後板38,39および両側板40,41が第2横架材18の固定板32と第1および第2側板33,34の間に嵌入する。第1横架材17の第2側板27に穿孔された緊結孔30と上端部42における前板38に穿孔された緊結孔44とにボルトやビス等の接合用部材47が螺着されることで、縦間柱19の上端部42が第1横架材17に固定(支持)される。第2横架材18の第2側板34に穿孔された緊結孔37と下端部43における前板38に穿孔された緊結孔45とにボルトやビス等の接合用部材47が螺着されることで、縦間柱19の下端部43が第2横架材18に固定(支持)される。
【0048】
なお、それら縦間柱19の上下端部42,43が接合用部材47を介して第1および第2横架材17,18に固定されることなく、縦間柱19の上端部42が第1横架材17の固定板25と第1および第2側板26,27の間に嵌入し、上端部42が第1横架材17に横方向へ摺動可能に支持されているとともに、縦間柱19の下端部43が第2横架材18の固定板32と第1および第2側板33,34の間に嵌入し、下端部43が第2横架材18に横方向へ摺動可能に支持されていてもよい。
【0049】
それら縦間柱19の前壁38には、上下方向へ所定間隔離間して並ぶ複数個の支持金具48が設置されている。それら支持金具48は、第1横架設柱21を支持する金属製の支持座49と、支持座49を着脱可能に支持する受け座50とから形成されている。支持座49は、受け座50に挿脱可能に挿入される挿入部51と、挿入部51の上端縁から前後方向前方へ延出する載置部52と、載置部52の前端縁から上下方向上方へ延出する押さえ部53とから形成されている。
【0050】
受け座50は、前後方向へ延びる一対の脚部54と、それら脚部54の間に延びる支え部55とから形成されている。脚部54の一部が前壁38に溶接によって固定され、前壁38と脚部54と支え部55とに囲繞された収容スペース56が画成されている。支持金具48では、
図3,4に矢印で示すように、支持座49の挿入部51を収容スペース56に収容すると、支持座49の載置部52が受け座50の支え部55に当接し、支持座49が受け座50に支持される。なお、縦間柱19の前壁38に設置される支持金具48(受け座50)の個数に特に限定はない。
【0051】
図5は、一例として示す型枠パネル20の斜視図であり、
図6は、
図5の6−6線端面図である。
図7は、第1横架材17、縦間柱19、型枠パネル20、第1横架設柱21の部分拡大斜視図であり、
図8は、第2横架材18、縦間柱19、型枠パネル20、第1横架設柱21の部分拡大斜視図である。
図7では、縦間柱19の上端部42が第1横架材17に嵌入した状態にあるとともに、第1横架設柱21が支持金具48に支持された状態にある。
図8では、縦間柱19の下端部43および型枠パネル20が第2横架材18に嵌入した状態にあるとともに、第1横架設柱21が支持金具48に支持された状態にある。
【0052】
それら型枠パネル20は、所定の厚み寸法および所定面積を有する平面形状が四角形の板状に成型されている。型枠パネル20は、壁面12に対向する対向面57と、対向面57の反対側に位置して第1横架設柱21に対向する正面58と、上下面59,60および両側面61,62とを有する6面体である。なお、それら型枠パネル20の上下方向の寸法や横方向の寸法、厚み寸法に特に限定はなく、構築する耐震補強壁78の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によってパネル20の各寸法が決定される。また、それら寸法の異なる各種複数のパネル20を用意し、型枠10Aを組み立てる際にそれらを適宜組み合わせて使用することもできる。
【0053】
それら型枠パネル20は、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、発泡ポリエチレン、フェノールフォーム等から作られている。それら型枠パネル20には、
図5,6に示すように、その6面57〜62(外周面)にイソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂63(合成樹脂)が塗布(スプレー塗布)されている。それら型枠パネル20の6面57〜62には、硬化したポリウレア樹脂63による所定厚みの平滑な被膜層が形成されている。それら型枠パネル20の6面57〜62に塗布されたポリウレア樹脂63によって6面57〜62の凹凸が修正され、6面57〜62が平滑に加工されている。
【0054】
それら型枠パネル20は、6面57〜62における摩擦抵抗が大幅に低下し、養生後のコンクリート13が6面57〜62に付着することなく、コンクリート13に対する離型が容易である。さらに、硬化したポリウレア樹脂63によって形成された被膜層により、パネル20の強度が大幅に増加し、パネル20を上下方向へ重ねたときのその座屈や破損が防止されるのみならず、パネル20の曲がり変形が防止される。なお、型枠パネル20は、強化プラスチックや透明な合成樹脂の板、木材から作られていてもよい。この場合においても、その6面57〜62にポリウレア樹脂63が塗布されることが好ましい。また、型枠パネル20には、ポリウレア樹脂63ではなく、6面57〜62を平滑にすることが可能であれば、他の熱可塑性合成樹脂(ポリウレタンやポリスチレン、強化プラスチック用塗料等)や熱硬化性合成樹脂を塗布することもできる。
【0055】
それら型枠パネル20は、第1および第2横架材17,18と縦間柱19との間に挿脱可能に嵌入し、上下方向へ並んでいる。横方向へ隣接する縦間柱19の間には、型枠10Aの最上部に位置する型枠パネル20、中間部に位置するパネル20、最下部に位置するパネル20の3枚のパネル20が嵌め込まれている。型枠10Aの最上部に位置する型枠パネル20は、対向面57が壁面12に対向するとともに縦間柱19に設置された支持板46に当接(密着)し、側面61,62が縦間柱19の側板40,41に当接(密着)し、その下面60が中間部に位置するパネル20の上面59に当接(密着)する。
【0056】
中間部に位置する型枠パネル20は、対向面57が壁面12に対向するとともに縦間柱19に設置された支持板46に当接(密着)し、側面61,62が縦間柱19の側板40,41に当接(密着)し、その下面60が最下部に位置するパネル20の上面59に当接(密着)する。最下部に位置する型枠パネル20は、対向面57が壁面12に対向するとともに縦間柱19に設置された支持板46に当接(密着)し、側面61,62が縦間柱19の側板40,41に当接(密着)する。なお、上下方向へ並ぶパネル20の枚数に特に限定なく、構築する耐震補強壁78の各寸法に合わせて枚数を適宜決定する。
【0057】
型枠パネル20は、それら横架材17,18とそれら縦間柱19とに支持されるとともに、縦間柱19に設置された支持板46に支持されることで、壁面12の側への倒れ込みが防止される。型枠10Aの最上部に位置する型枠パネル20は、その上端部が第1横架材17の第1側板26に支持され、パネル20の壁面12の側への倒れ込みが防止される。最下部に位置する型枠パネル20は、その下端部が第2横架材18の固定板32と第1および第2側板の間に嵌入し、パネル20の下端部が第2横架材18に支持され、パネル20の壁面12の側への倒れ込みが防止される。
【0058】
それら型枠パネル20のうちの1つのパネル20には、壁面12とパネル20との間の空間14にコンクリート13を打設する(流入させる)ための供給口64が作られている。供給口64では、パネル20が四角形にくり抜かれ、そこに金属製の口筒を有する四角形の鉄板が固定されている。それら型枠パネル20のうちの3つのパネル20には、空間14にコンクリート13を打設するときに、空間14へのコンクリート13の打設状態を確認可能な四角形の確認窓65が作られている。確認窓65では、パネル20が四角形にくり抜かれ、そこに透明な四角形の合成樹脂板が嵌め込まれている。
【0059】
それら第1横架設柱21(第1横架設材)には、
図7,8に示すように、断面形状が四角形の木材が使用されているが、他の形状の木材を使用することもでき、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の中空の金属管や他の形状の中空の金属管を使用することもできるとともに、H型鋼やI型鋼、角型鋼材等の鋼材を使用することもできる。第1横架設柱21は、型枠パネル20の前後方向前方に位置しつつそれら縦間柱17に設置された支持金具48に支持されて横方向へ直状に延びている。それら第1横架設柱21は、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。第1横架設柱21を支持座49の載置部52と押さえ部53との間に嵌め込むと、第1横架設柱21が載置部52に載置され、その外周面が載置部52と押さえ部53とに当接するとともに、パネル20の正面58に当接し、それら第1横架設柱21がパネル20と支持金具48とによって支持される。それら第1横架設柱21は、1枚の型枠パネル20に対して3本のそれらが設置され、3本のうちの1本がパネル20の上下方向中央部に位置し、3本のうちの2本がパネル20の上下方向両端部に位置している。
【0060】
それら第1横架設柱21は、それら支持金具48によって空間14にコンクリート13を打設したときのパネル20の外面に対する当接状態が維持される。したがって、それら第1横架設柱21とそれら支持金具48とにより、空間14にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるパネル20の前後方向前方への膨隆が押さえられ、パネル20の前後方向前方への変形が防止される。また、それら支持金具48により、空間14にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるそれら第1横架設柱21の型枠10Aからの脱落が防止される。
【0061】
トラス構造物22(縦架設材)は、それら第1横架設柱21の前後方向前方に位置して上下方向へ直状に延びている。それらトラス構造物22は、横方向へ略等間隔離間して並んでいる。なお、
図1では3個のトラス構造物22を図示しているが、トラス構造物22の個数について特に限定はなく、構築する耐震補強壁78の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によって使用するトラス構造物22の個数が決定される。また、トラス構造物22の他に、縦架設材として、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の金属柱や他の形状の金属柱を使用することもできるとともに、H型鋼や角型鋼管(コラム)、I型鋼、C型鋼、溝型鋼等の鋼材を使用することもできる。
【0062】
トラス構造物22は、第1横架設柱21の外周面に当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材66と、第1垂直材66から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材67と、第1垂直材66と第2垂直材67との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材68と、トラス構造物22の高さ寸法を調節可能な寸法調節材69とから作られている。トラス構造物22では、第1垂直材66とトラス材68とがボルトおよびナットによって連結され、第2垂直材67とトラス材68とがボルトおよびナットによって連結されている。
【0063】
トラス構造物22では、その上端部70(寸法調節材69の後記する固定端部75)が所定の固定手段を介して建物11のスラブ底面24または梁底面24に固定されている。また、トラス構造物22の下端部71(第1垂直材66の下端部)が所定の固定手段を介して建物11の床面31に固定されている。固定手段の具体例としては、アングル72、アンカーボルト73、アジャスターボルト74が使用されている。
【0064】
スラブ底面24または梁底面24の位置決めされたトラス取付箇所(墨出し箇所)に横方向へ並ぶアンカーホール(図示せず)を穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置し、アングル72に形成されたボルト孔にアンカーボルト73を挿通するとともにそのアンカーボルト73をアンカーホールに螺着してアングル72をトラス取付箇所に強固に固定する。床面31の位置決めされたトラス取付箇所(墨出し箇所)に横方向へ並ぶアンカーホール(図示せず)を穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置し、アングル72に形成されたボルト孔にアンカーボルト73を挿通するとともにそのアンカーボルト73をアンカーホールに螺着してアングル72をトラス取付箇所に強固に固定する。スラブ底面24または梁底面24のトラス取付箇所と床面31のトラス取付箇所が略正確に一致している。
【0065】
次に、アングル72に穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)と寸法調節材69の固定端部75に穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)とにアジャスターボルト74を螺着し、そのボルト74にナットを螺着して固定端部75をアングル72に強固に固定する。さらに、アングル72に穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)と第1垂直材66の下端部に穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)とにアジャスターボルト74を螺着し、そのボルト74にナットを螺着して第1垂直材66の下端部をアングル72に強固に固定する。なお、第1垂直材66の上端部の寸法調節材69の開口部76に対する固定位置(固定ボルトおよびナットによって第1垂直材66の上端部を寸法調節材69の開口部76に固定)を調節することにより、開口部76の長さ寸法の限度でトラス構造物22の上下方向の高さ寸法を調節することができる。型枠10Aは、寸法調節材69によってトラス構造物22の上下方向の寸法を調節することができ、トラス構造物22の上下方向の寸法を建物11の壁面12の高さ寸法に一致させることができる。
【0066】
トラス構造物22の上下方向の高さ寸法を調節しつつ、アングル72に寸法調節材69の固定端部75や第1垂直材66の下端部を固定すると、第1垂直材75が各第1横架設柱21に当接する。したがって、それらトラス構造物22により、空間14にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるそれら型枠パネル20およびそれら第1横架設柱21の前後方向前方への膨隆が押さえられ、型枠パネル20や第1横架設柱21の前後方向前方への変形が防止される。
【0067】
第2横架設柱23(第2横架設材)は、トラス構造物22の前後方向前方に位置しつつトラス構造物22に固定されて横方向へ直状に延びている。それら第2横架設柱23は、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。なお、
図1では2本の第2横架設柱23を図示しているが、第2横架設柱23の本数に特に限定はなく、構築する耐震補強壁78の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によって使用する第2横架設柱23に本数が決定される。
【0068】
それら第2横架設柱23は、
図1,2に示すように、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が円形の中空の金属筒であるが、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の中空の金属管を使用することもできるとともに、H型鋼やI型鋼、角型鋼材等の鋼材を使用することもできる。第2横架設柱23は、固定金具77を介してトラス構造物22の第2垂直材67に強固に固定されている。それら第2横架設柱23により、空間14にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるそれらトラス構造物22の前後方向前方への膨隆が押さえられ、トラス構造物22の前後方向前方への変形や横方向への撓みが防止される。
【0069】
図9は、耐震補強壁78の施工手順の一例を示す図であり、
図10は、
図9から続く耐震補強壁78の施工手順を示す図である。
図11は、
図10から続く耐震補強壁78の施工手順を示す図であり、
図12は、
図11から続く耐震補強壁78の施工手順を示す図である。鉄筋コンクリート製の耐震補強壁78は、位置決め工程、横架材設置工程(ランナー固定工程)、縦間柱設置工程(スタッド設置工程)、パネル設置工程、第1横架設柱設置工程(第1横架設材固定工程)、トラス構造物設置工程(縦架設材固定工程)、第2横架設柱設置工程(第2横架設材固定工程)の各工程を実施することで型枠10Aを組み立てた後、コンクリート打設工程、型枠取り外し工程の各工程を実施することによって作られる。なお、
図9は、横架材設置工程が完了した状態を示し、
図10は、縦間柱設置工程が完了した状態を示す。
図11は、パネル設置工程が完了した状態を示し、
図12は、第1横架設柱設置工程が完了した状態を示す。
図9,10では鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋)の図示を省略している。
【0070】
最初に位置決め工程を行う。位置決め工程では、建物11の底面24または梁底面24に対する第1横架材17(第1ランナー)の第1横架材取付箇所(墨出し箇所)を正確に位置決め(墨出し)するとともに、床面31に対する第2横架材18(第2ランナー)の第2横架材取付箇所(墨出し箇所)を正確に位置決め(墨出し)する。スラブ底面24や梁底面24における第1横架材17の取付箇所は、壁面12から前後方向前方へ離間した箇所であり、その取付箇所に横方向へ延びる第1ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。床面31における第2横架材18の取付箇所は、壁面12から前後方向前方へ離間した箇所であり、その取付箇所に横方向へ延びる第2ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。なお、第1横架材取付箇所の壁面12から前後方向前方への離間寸法と第2横架材取付箇所の壁面12から前後方向前方への離間寸法とは同一である。
【0071】
底面24または梁底面24に第1ラインを引くとともに、床面31に第2ラインを引いた後、図示はしていないが、空間14に鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋)を配筋する。空間14に鉄筋を配筋した後、横架材設置工程を行う。横架材設置工程(ランナー固定工程)では、
図9に示すように、スラブ底面24または梁底面24の第1横架材の取付箇所に第1横架材17を設置・固定するとともに、床面31の第2横架材取付箇所に第2横架材18を設置・固定する。第1横架材17が第1ライン上に正確に位置するように、第1横架材17の固定板25を第1ラインに配置し、固定板25の緊結孔28と建物11のスラブ底面24または梁底面24とに釘やボルト、ビス等の接合用部材29を打ち込み、固定板25(第1横架材17)をスラブ底面24や梁底面24に固定する。第2横架材18が第2ライン上に正確に位置するように、第2横架材18の固定板32を第2ラインに配置し、固定板32の緊結孔35と建物11の床面31とに釘やボルト、ビス等の接合用部材36を打ち込み、固定板32(第2横架材18)を床面31に固定する。
【0072】
第1横架材17を第1横架材取付箇所に固定するとともに、第2横架材18を第2横架材取付箇所に固定した後、縦間柱設置工程を行う。縦間柱設置工程(スタッド設置工程)では、上下方向へ延びる複数本の縦間柱19(スタッド)を第1および第2横架材17,18の間に設置する。それら縦間柱19の上端部42を第1横架材17の固定板25と第1および第2側板26,27の間に嵌入した後、第1横架材17の緊結孔30と縦間柱19の緊結孔44とにボルトやビス等の接合用部材47を螺着して縦間柱19の上端部42を第1横架材17に固定する。それら縦間柱19の下端部43を第2横架材18の固定板32と第1および第2側板33,34の間に嵌入した後、第2横架材18の緊結孔37と縦間柱19の緊結孔45とにボルトやビス等の接合用部材47を螺着して縦間柱19の下端部43を第2横架材18に固定する。
【0073】
縦間柱19を第1および第2横架材17,18の間に設置すると、
図10に示すように、それら縦間柱19が横方向へ略等間隔で並ぶ。なお、
図10の左方に位置する縦間柱19は、その支持板46が建物11の柱15に当接し、
図10の右方に位置する縦間柱19は、その支持板46が建物11の柱15に当接している。それら縦間柱19のそれぞれには、上下方向へ並ぶ9個の支持金具48が取り付けられている。それら支持金具48は、
図3,4に示すように、支持座49と受け座50とから形成されている。
【0074】
縦間柱19を第1および第2横架材17,18の間に設置した後、パネル設置工程を行う。パネル設置工程では、
図10の左方に位置する縦間柱19と中央に位置する縦間柱19との間に3枚の型枠パネル20をパネル20c→パネル20b→パネル20aの順に嵌入させる。さらに、
図10の右方に位置する縦間柱19と中央に位置する縦間柱19との間に3枚の型枠パネル20をパネル20c→パネル20b→パネル20aの順に嵌入させる。なお、型枠パネル20aには、壁面12とパネル20との間の空間14にコンクリート13を打設するための供給口64が作られている。また、型枠パネル20a,20cには、空間14にコンクリートを打設するときに、空間14へのコンクリート13の打設状態を確認可能な確認窓65が作られている。
【0075】
縦間柱19の間にそれらパネル20a〜20cを嵌入すると、パネル20a〜20cの対向面57が縦間柱19の支持板46に当接し、側面61,62が縦間柱19の側板40,41に当接する。
図11に示すように、最下部に位置する型枠パネル20cの下端部が第2横架材18の固定板32と第1および第2側板の間に嵌入し、パネル20cの上面59が中間部に位置するパネル20bの下面60に当接し、パネル20cとパネル20bとが上下方向へ重なり合う。中間部に位置するパネルの上面59が最上部に位置するパネル20aの下面60に当接し、パネル20bとパネル20aとが上下方向へ重なり合う。さらに、それらパネル20a〜20cの1組とそれらパネル20a〜20cの1組とが横方向へ並ぶ。なお、第1ランナー17の第2側板27の下方への延出寸法が第1側板26のそれよりも短いから、第1および第2ランナー17,18の間にパネル20a〜20cを容易に設置することができるのみならず、第1ランナー17の第1側板26にパネル20aが支持されるから、パネル20aの壁面12の側への倒れ込みを防ぐことができる。
【0076】
縦間柱19の間に型枠パネル20a〜20cを嵌入した後、第1横架設柱設置工程を行う。第1横架設柱設置工程(第1横架設材固定工程)では、横方向へ延びる複数本の第1横架設柱21(第1横架設材)をそれら縦間柱19に設置する。第1横架設柱設置工程では、それら第1横架設柱21を支持座49の載置部52と押さえ部53との間に嵌め込む。それら第1横架設柱21を支持座49の載置部52と押さえ部53との間に嵌め込むと、第1横架設柱21が載置部52に載置され、その外周面が載置部52と押さえ部53とに当接するとともに、パネル20の正面58に当接し、それら第1横架設柱21がパネル20と支持金具48とによって支持される。
【0077】
全ての第1横架設柱21を縦間柱19に設置すると、
図12に示すように、型枠パネル20a〜20cに対してそれぞれ3本の第1横架設柱21が設置され、3本のうちの1本がパネル20a〜20cの上下方向中央部に配置され、3本のうちの2本がパネル20a〜20cの上下方向両端部に配置される。それら第1横架設柱21とそれら支持金具48とによってそれら型枠パネル20a〜20cの前後方向前方への変形や積み重ねたパネル20a〜20cの崩落が防止される。
【0078】
図13は、
図12から続く耐震補強壁78の施工手順を示す図であり、
図14は、
図13の側面図である。
図15は、
図13から続く耐震補強壁78の施工手順を示す図であり、
図16は、
図15の側面図である。
図17は、コンクリート13の打設状態を示す
図16と同様の側面図である。なお、
図15は、トラス構造物設置工程が完了した状態を示し、
図17は、第2横架設柱設置工程が完了した状態を示す。
図14,16,17では鉄筋の図示を省略している。
【0079】
第1横架設柱21を縦間柱19に設置した後、トラス構造物設置工程を行う。トラス構造物設置工程(縦架設材固定工程)では、
図13〜16に示すように、上下方向へ延びる複数個のトラス構造物22(縦架設材)をそれら第1横架設柱21の前後方向前方に設置・固定する。最初に、建物11の底面24または梁底面24に対するトラス構造物22(アングル72)のトラス取付箇所(墨出し箇所)を正確に位置決め(墨出し)するとともに、床面31に対するトラス構造物22(アングル72)のトラス取付箇所(墨出し箇所)を正確に位置決め(墨出し)する。
【0080】
スラブ底面24や梁底面24におけるトラス構造物22の取付箇所は、壁面12から前後方向前方へ離間した箇所(第1横架材取付箇所から前後方向前方へわずかに離間した箇所)であり、その取付箇所に横方向へ延びる第3ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。床面31におけるトラス構造物22の取付箇所は、壁面12から前後方向前方への離間した箇所(第2横架材取付箇所から前後方向前方へわずかに離間した箇所)であり、その取付箇所に横方向へ延びる第4ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。なお、面24におけるトラス構造物22の取付箇所の壁面12から前後方向前方への離間寸法および面31におけるトラス構造物22の取付箇所の壁面12から前後方向前方への離間寸法は同一である。
【0081】
スラブ底面24または梁底面24の位置決めされたトラス取付箇所に横方向へ並ぶアンカーホール(図示せず)を穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、トラス構造物22の上端部70が第3ライン上に正確に位置するように、アングル72を第3ラインに配置し、アングル72に形成されたボルト孔にアンカーボルト73を挿通するとともにそのアンカーボルト73をアンカーホールに螺着してアングル72をスラブ底面24または梁底面24におけるトラス取付箇所に強固に固定する。
【0082】
また、床面31の位置決めされたトラス取付箇所に横方向へ並ぶアンカーホール(図示せず)を穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、トラス構造物22の下端部71が第4ライン上に正確に位置するように、アングル72を第4ラインに配置し、アングル72に形成されたボルト孔にアンカーボルト73を挿通するとともにそのアンカーボルト73をアンカーホールに螺着してアングル72を床面31におけるトラス取付箇所に強固に固定する。
【0083】
次に、アングル72に穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)と第1垂直材66の下端部に穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)とにアジャスターボルト74を螺着し、そのボルト74にナットを螺着して第1垂直材66の下端部をアングル72に強固に固定する。トラス構造物22の上下方向の高さ寸法を調節するために、第1垂直材66の上端部の寸法調節材69の開口部76に対する固定位置を決める。固定位置を決めた後、その固定位置において第1垂直材66の上端部を寸法調節材69の開口部76に強固に固定する。第1垂直材66の上端部と寸法調節材69とは固定ボルトおよびナットを介して固定される。さらに、アングル72に穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)と寸法調節材69の固定端部75に穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)とにアジャスターボルト74を螺着し、そのボルト74にナットを螺着して寸法調節材69の固定端部75をアングル72に強固に固定する。
【0084】
トラス構造物22の上下方向の高さ寸法を調節しつつ、アングル72に第1垂直材66の下端部や寸法調節材69の固定端部75を固定すると、トラス構造物22の第1垂直材75が各第1横架設柱21に当接する。それらトラス構造物22によって型枠パネル20や第1横架設柱21の前後方向前方への変形が防止されるとともに、積み重ねたパネル20a〜20cの崩落が防止される。
【0085】
それら第1横架設柱21の前方にそれらトラス構造物22を設置した後、第2横架設柱設置工程を行う。第2横架設柱設置工程(第2横架設材固定工程)では、
図17に示すように、横方向へ延びる複数本の第2横架設柱23(第2横架設材)を上下方向へ所定寸法離間させた状態でそれらトラス構造物22の前後方向前方に設置する。第2横架設柱設置工程では、固定金具77を介して第2横架設柱23をトラス構造物22の第2垂直材67に強固に固定する。それら第2横架設柱23によってトラス構造物22の前後方向前方への変形や横方向への撓みが防止される。
【0086】
位置決め工程、横架材設置工程、縦間柱設置工程、パネル設置工程、第1横架設柱設置工程、トラス構造物設置工程、第2横架設柱設置工程が完了すると、
図1に示す型枠10Aが完成する。壁面12と型枠10A(型枠パネル20a〜20c)との間には、コンクリート13を打設する空間14が形成されている。なお、図示はしていないが、空間14にコンクリート13を打設するときの空間14に存在する空気を外部に逃がす空気孔がいずれかの型枠パネル20aに形成されている。型枠10Aを組み立てた後、コンクリート打設工程を行う。コンクリート打設工程では、
図17に示すように、型枠パネル20aに形成された供給口64から空間14にコンクリート13を打設する。空間14へのコンクリート13の打設は、図示はしていないが、コンクリートミキサーから延びるホースをパネル20aの供給口64に接続し、供給口64から空間14にコンクリート13を圧入する。空間14の空気は、型枠パネル16aの空気孔から外部に排気される。コンクリート打設工程では、確認窓65から空間14を視認しつつ、確認窓65を利用して空間14へのコンクリート13の打設状態を判断しながら、コンクリート13の打設作業が行われる。
【0087】
コンクリート打設工程において、型枠パネル20aに作られた供給口64を利用することで、コンクリート13を空間14に容易に打設することができ、建物11の壁面12にコンクリート13を容易に増し打ちすることができる。また、空間14へのコンクリート13の打設状態を確認窓65から確認することができるから、空間14全域にコンクリート13を確実に打設することができ、壁面12にコンクリート13を確実に増し打ちすることができる。
【0088】
コンクリート打設工程によってコンクリート13を空間に打設すると、空間14に進入したコンクリート13の側圧が型枠パネル20a〜20cに作用する。コンクリート13の側圧がそれらパネル20a〜20cに作用すると、各パネル20a〜20cが前後方向前方へ膨隆しようとするが、それら第1横架設柱21によって各パネル20a〜20cの膨隆が押さえられ、コンクリート13の側圧によるパネル20a〜20cの変形や積み重ねたパネル20a〜20cの崩落が防止される。また、コンクリート13の側圧によって第1横架設柱21が前後方向前方へ膨隆しようとするが、それらトラス構造物22によって各第1横架設柱21の変形が防止される。さらに、コンクリート13の側圧によってそれらトラス構造物22が前後方向前方へ膨隆しようとするが、それら第2横架設柱23によって各トラス構造物22の膨隆が押さえられ、コンクリート13の側圧によるトラス構造物22の変形や撓みが防止される。
【0089】
型枠10Aでは、各第1横架設柱21および各第2横架設柱23が型枠パネル20a〜20cに対する横方向の押さえになるとともに、各トラス構造物22がパネル20a〜20cに対する上下方向の押さえになり、空間14に打設されたコンクリート13の側圧が各パネル20a〜20cに作用したとしても、パネル20a〜20cが曲がることはなく、パネル20a〜20cの直状状態を維持することができる。さらに、それらパネル20a〜20cの6面58〜62にポリウレア樹脂63が塗布され、硬化したポリウレア樹脂63によってパネル20自体の曲げ強度が大幅に増加しているから、コンクリート13の側圧が各パネル20a〜20cに作用したとしても、パネル20a〜20cが曲がることはなく、パネル20a〜20cの直状状態を維持することができる。
【0090】
空間14にコンクリート13を打設した後、コンクリート13を所定期間養生する。コンクリート13の養生期間が経過した後、型枠取り外し工程を行う。型枠取り外し工程では、トラス構造物22の第2垂直材67から固定金具77を外し、トラス構造物22からそれら第2横架設柱23を取り外す。第2横架設柱23を取り外した後、アングル72のボルト螺着孔および寸法調節材69の固定端部75のボルト螺着孔からアジャスターボルト74を取り外し、寸法調節材69の固定端部75とアングル72との固定を解除するとともに、アングル72のボルト螺着孔および第1垂直材66の下端部のボルト螺着孔からアジャスターボルト74を取り外し、第1垂直材66の下端部とアングル72との固定を解除し、第1横架設柱21からそれらトラス構造物22を取り外す。
【0091】
トラス構造物22を取り外した後、床面31のトラス取付箇所に穿孔されたアンカーホールの樹脂アンカーや機械式アンカーからアンカーボルト73を抜き取り、床面31とアングル72との固定を解除するとともに、スラブ底面24または梁底面24のトラス取付箇所に穿孔されたアンカーホールの樹脂アンカーや機械式アンカーからアンカーボルト73を抜き取り、スラブ底面24や梁底面24とアングル72との固定を解除する。
【0092】
アングル72を取り外した後、それら第1横架設柱21を支持座49の載置部52と押さえ部53との間から抜き取り、全ての第1横架設柱21を縦間柱19から取り外す。第1横架設柱21を取り外した後、縦間柱19の間から型枠パネル20a〜20cを取り外す。それらパネル20a〜20cの6面58〜62にはポリウレア樹脂63が塗布され、6面58〜62の摩擦抵抗が大幅に低下しているから、養生後の硬化したコンクリート13がパネル20a〜20cの対向面57に付着することなく、コンクリート13からパネル20a〜20cを容易に取り外すことができる。また、第1ランナー17の第2側板27の下方への延出寸法が第1側板26のそれよりも短く、パネル20aが第1ランナー17に食い込んでランナー17に固定されることがないから、第1および第2ランナー17,18からそれらパネル20a〜20cを容易に取り外すことができる。
【0093】
型枠パネル20a〜20cを取り外した後、第1横架材17の緊結孔30および縦間柱19の緊結孔44から接合用部材47を抜き取り、第2横架材18の緊結孔37および縦間柱19の緊結孔45から接合用部材47を抜き取って第1および第2横架材17,18と縦間柱19との固定を解除する。次に、それら縦間柱19を第1および第2横架材17,18から取り外す。縦間柱19を第1および第2横架材17,18から取り外した後、第1横架材17をスラブ底面24や梁底面24から取り外すとともに、第2横架材18を床面31から取り外す。第1横架材17の緊結孔28およびスラブ底面24や梁底面24から接合用部材29を抜き取ってスラブ底面24や梁底面24と第1横架材17との固定を解除する。第2横架材18の緊結孔35および床面31から接合用部材36を抜き取って床面31と第2横架材18との固定を解除する。型枠10Aを形成する全ての部材を取り外し、組み立てた型枠10Aを取り外す(分解する)ことで、新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁78が作られる。
【0094】
型枠10Aは、第1横架設柱21(第1横架設材)とトラス構造物22(縦架設材)と第2横架設柱23(第2横架設材)とを利用することで、建物11の壁面12と型枠パネル20との間の空間14に打設されたコンクリート14の側圧に十分に耐えることができ、壁面12とパネル20との並行状態を維持することができるから、壁面12にコンクリート13を確実に増し打ちすることができ、既設の壁16の外側に構造計算された設計どおりの新たな鉄筋コンクリート製の耐震補強壁78を作ることができる。
【0095】
型枠10Aは、それを組み立てる際に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験に頼る必要はなく、短時間に効率よく組み立てることができるとともに、手間を要さずに廉価に組み立てることができる。また、型枠10Aは、空間14にセパレータを設置する必要がないことから、空間14に配筋された鉄筋がセパレータの設置の邪魔になることはなく、空間14に自由に鉄筋を配筋することができ、強固な鉄筋コンクリート製の耐震補強壁78を作ることができる。
【0096】
図18は、組み立てられた型枠10Bの他の一例を示す正面図であり、
図19は、組み立てられた
図18の型枠10Bの側面図である。
図18,19では、上下方向を矢印Aで示し、横方向の矢印B(
図18のみ)で示すとともに、前後方向を矢印C(
図19のみ)で示す。
図19では、コンクリート13に埋設された鉄筋の図示を省略している。
【0097】
型枠10Bは、型枠10Aと同様に、既設の建物11の壁面12の前後方向前方へ所定寸法離間した位置に組み立てられ、壁面12の外側にコンクリート13を増し打ちして新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁78を作るために使用される。耐震補強壁78を作る箇所に複数本の鉄筋(図示せず)を配筋するとともに型枠10Bを組み立て、壁面12と型枠10B(型枠パネル20)との間の空間14(壁面12の外側)にコンクリート13を打設する。打設したコンクリート13を所定期間養生した後、組み立てた型枠10Bを取り外す(分解する)ことで鉄筋コンクリート製の耐震補強壁が作られる。
【0098】
図18の型枠10Bが
図1のそれと異なるところは、型枠パネル20cに対する第1横架設柱21の設置本数がパネル20cの上方に位置するパネル20bに対する第1横架設柱21のそれよりも多く、型枠パネル20bに対する第1横架設柱21の設置本数がパネル20bの上方に位置するパネル20aに対する第1横架設柱21のそれよりも多い点にある。さらに、パネル20aの前方に第2横架設柱23が設置され、パネル20bの前方に第2横架設柱23が設置されているとともに、パネル20cの前方に第2横架設柱23が設置されている点にある。
【0099】
なお、この型枠10Bにおけるその他の構成は
図1のそれと同一であるから、
図1の型枠10Aの説明を援用することで、この型枠10Bにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。型枠10Bは、第1横架材17(第1ランナー)および第2横架材18(第2ランナー)と、複数本の縦間柱19(縦間材)(スタッド)と、複数枚の型枠パネル20と、複数本の第1横架設柱21(第1横架設材)と、複数個のトラス構造物22(縦架設材)と、複数本の第2横架設柱23(第2横架設材)とから形成されている。
【0100】
第1横架材17(第1ランナー)は、壁面12から前後方向前方へ所定寸法離間した位置に設置されて横方向へ延びている。第1横架材17は、建物11のスラブ底面24または梁底面24の位置決めされた第1横架材取付箇所(墨出し箇所)に着脱可能に取り付けられる。第1横架材17は、固定板25と第1および第2側板26,27とから形成されている(
図3援用)。第2横架材18(第2ランナー)は、壁面12から前後方向前方へ所定寸法離間した位置に設置されて横方向へ延びている。第2横架材18は、建物11の床面31の位置決めされた第2横架材取付箇所(墨出し箇所)に着脱可能に取り付けられる。第2横架材18は、
図4に示すように、固定板32と第1および第2側板33,34とから形成されている(
図4援用)。
【0101】
縦間柱19(縦間材)、(スタッド)は、第1横架材17と第2横架材18との間に配置されて上下方向へ延びている。それら縦間柱19は、第1横架材17と第2横架材18との間において横方向へ略等間隔離間して並んでいる。縦間柱19は、前板38および後板39と、前後板38,39の間に延びる両側板40,41とを有するとともに、第1横架材17に支持される上端部41と、第2横架材18に支持される下端部43とを有する。後板39には、横方向へ延びる一対の支持板46が設置されている(
図3,4援用)。
【0102】
縦間柱19は、その上端部42が第1横架材17に嵌入し、上端部42が第1横架材17に固定(支持)され、その下端部43が第2横架材18に嵌入し、下端部43が第2横架材18に固定(支持)される。それら縦間柱19の前壁38には、上下方向へ所定隔離間して並ぶ複数個の支持金具48が設置されている。それら支持金具48は、第1横架設柱21を支持する金属製の支持座49と、支持座49を着脱可能に支持する受け座50とから形成されている。
【0103】
それら型枠パネル20a〜20cは、所定の厚み寸法および所定面積を有する平面形状が四角形の板状に成型されている。型枠パネル20は、壁面12に対向する対向面57と、対向面57の反対側に位置して第1横架設柱21に対向する正面58と、上下面59,60および両側面61,61とを有する6面体であり、6面57〜62にポリウレア樹脂63(合成樹脂)が塗布されている(
図5,6援用)。なお、パネル20a〜20cの材質は、
図1の型枠10Aにおいて使用するそれと同一である。
【0104】
それら型枠パネル20a〜20cは、第1および第2横架材17,18と縦間柱19との間に挿脱可能に嵌入し、上下方向へ並んでいる。型枠パネル20a〜20cは、それら横架材17,18とそれら縦間柱19とに支持され、縦間柱19に設置された支持板46に支持されることで、壁面12の側への倒れ込みが防止される。パネル20aには、空間14にコンクリート13を打設する(流入させる)ための供給口64が作られている。また、パネル20a,20cには、空間14にコンクリートを打設するときに、空間14へのコンクリート13の打設状態を確認可能な四角形の確認窓65が作られている。
【0105】
第1横架設柱21(第1横架設材)は、型枠パネル20a〜20cの前後方向前方に位置しつつそれら縦間柱17に設置された支持金具48に支持されて横方向へ直状に延びている。第1横架設柱21は、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。最下部の型枠パネル20cに対しては5本の第1横架設柱21が設置され、5本のうちの1本がパネル20cの上下方向中央部に配置され、5本のうちの2本がパネル20cの上下方向両端部に配置されている。中間部の型枠パネル20bに対しては4本の第1横架設柱21が設置され、4本のうちの1本がパネル20bの上下方向中央部に配置され、4本のうちの2本がパネル20bの上下方向両端部に配置されている。最上部の型枠パネル20aに対しては3本の第1横架設柱21が設置され、3本のうちの1本がパネル20aの上下方向中央部に配置され、3本のうちの2本がパネル20aの上下方向両端部に配置されている。
【0106】
トラス構造物22(縦架設材)は、それら第1横架設柱21の前後方向前方に位置して上下方向へ直状に延びている。それらトラス構造物22は、横方向へ略等間隔離間して並んでいる。トラス構造物22は、第1横架設柱21の外周面に当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材66と、第1垂直材66から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材67と、第1垂直材66と第2垂直材67との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材68と、トラス構造物22の高さ寸法を調節可能な寸法調節材69とから作られている。トラス構造物22では、その上端部70(寸法調節材69の後記する固定端部75)が所定の固定手段を介して建物11のスラブ底面24または梁底面24に固定されている。また、トラス構造物22の下端部71(第1垂直材66の下端部)が所定の固定手段を介して建物11の床面31に固定されている。
【0107】
第2横架設柱23(第2横架設材)は、トラス構造物22の前後方向前方に位置しつつトラス構造物22に固定されて横方向へ直状に延びている。それら第2横架設柱23は、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。第2横架設柱23は、固定金具77を介してトラス構造物22の第2垂直材67に強固に固定されている。1本の第2横架設柱23がパネル20aの前方に設置され、1本の第2横架設柱23がパネル20bの前方に設置されているとともに、1本の第2横架設柱23がパネル20cの前方に設置されている。
【0108】
鉄筋コンクリート製の耐震補強壁78は、位置決め工程、横架材設置工程
(ランナー固定工程)、縦間柱設置工程
(スタッド設置工程)、パネル設置工程、第1横架設柱設置工程(第1横架設材柱設置工程)、トラス構造物設置工程(縦架設材固定工程)、第2横架設柱設置工程(第2横架設材設置工程)の各工程を実施することで型枠10Bを組み立てた後、コンクリート打設工程、型枠取り外し工程の各工程を実施することによって作られる。なお、この型枠10Bを使用した耐震補強壁78の施工手順は
図1の型枠10Aを使用した耐震補強壁78のそれと同一であるから、
図1の型枠10Aを使用した耐震補強壁78の施工手順の説明を援用するとともに、
図9〜
図17を援用することで、型枠10Bを使用した耐震補強壁78の施工手順の説明は省略する。
【0109】
型枠10Bでは、それら第1横架設柱21とそれら支持金具48とにより、空間14にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるパネル20a〜20cの前後方向前方への膨隆が押さえられ、パネル20a〜20cの前後方向前方への変形や積み重ねたパネル20a〜20cの崩落が防止される。それらトラス構造物22により、空間14にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるそれら型枠パネル20およびそれら第1横架設柱21の前後方向前方への膨隆が押さえられ、型枠パネル20や第1横架設柱21の前後方向前方への変形が防止される。さらに、それら第2横架設柱23により、空間14にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるそれらトラス構造物22の前後方向前方への膨隆が押さえられ、トラス構造物22の前後方向前方への変形や横方向への撓みが防止される。
【0110】
型枠10Bでは、各第1横架設柱21および各第2横架設柱23が型枠パネル20a〜20cに対する横方向の押さえになるとともに、各トラス構造物22がパネル20a〜20cに対する上下方向の押さえになり、空間14に打設されたコンクリート13の側圧が各パネル20a〜20cに作用したとしても、パネル20a〜20cが曲がることはなく、パネル20a〜20cの直状状態を維持することができる。さらに、それらパネル20a〜20cの6面58〜62にポリウレア樹脂63が塗布され、硬化したポリウレア樹脂63によってパネル20自体の曲げ強度が大幅に増加しているから、コンクリート13の側圧が各パネル20a〜20cに作用したとしても、パネル20a〜20cが曲がることはなく、パネル20a〜20cの直状状態を維持することが可能である。
【0111】
型枠10Bは、
図1の型枠10Aが有する効果に加え、以下の効果を有する。型枠10Bは、壁面12と型枠パネル20a〜20cとの間の空間14に打設されたコンクリート13の側圧が下方に位置するパネル20b,20cに大きく作用するが、中間部と最下部とに位置するパネル20b,20c(上下方向下方に位置するパネル20b,20c)に対する第1横架設柱21の設置本数が最上部に位置するパネル20aに対する第1横架設柱21のそれよりも多いから、それら第1横架設柱21によってそのパネル20b,20cの前後方向前方への膨隆が確実に押さえられ、空間14にコンクリート14を打設したときのそれらパネル20b,20cの前後方向前方への変形を確実に防ぐことができる。