特許第6037142号(P6037142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037142
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/10 20060101AFI20161121BHJP
   A01D 69/06 20060101ALI20161121BHJP
   A01D 61/00 20060101ALI20161121BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   A01F12/10 L
   A01D69/06
   A01D61/00 301B
   A01F12/10 H
   A01D69/00 302G
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-262377(P2014-262377)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-119881(P2016-119881A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】釘宮 啓
(72)【発明者】
【氏名】土居原 純二
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 秀範
(72)【発明者】
【氏名】内山 龍介
【審査官】 中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−97054(JP,A)
【文献】 特許第3494877(JP,B1)
【文献】 特開2004−201643(JP,A)
【文献】 特開平4−335822(JP,A)
【文献】 特開2002−95337(JP,A)
【文献】 特開平6−7020(JP,A)
【文献】 実開平5−68234(JP,U)
【文献】 特開平2−65727(JP,A)
【文献】 特開平4−179408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00−41/16
A01D 61/00−61/04
A01D 67/00−69/12
A01F 12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前方の刈取装置(4)に刈り取った穀稈を脱穀装置(3)の扱室に供給搬送するフィードチェン(13)を設け、前記刈取装置(4)は油圧式無段変速装置(21)により走行装置(2)の走行速度に同調させた変速同調駆動する構成とし、前記脱穀装置(3)はエンジン(20)の駆動回転を一定の変速比で伝達する構成とし、前記フィードチェン(13)は、前記刈取装置(4)に伝達される変速同調回転を伝達する変速回転伝動経路(D)と、前記脱穀装置(3)に一定の変速比で伝達される定速回転伝動経路(T)との二系統の伝動経路により駆動する構成とし、変速回転伝動経路(D)と定速回転伝動経路(T)との夫々に変速用クラッチ(23)と定速用クラッチ(24)とを設け、変速用クラッチ(23)と定速用クラッチ(24)とは、一方が接続されたとき、他方が遮断されるように構成し、変速用クラッチ(23)と定速用クラッチ(24)との入切を単独の切替用モータ(25)により行うことにより前記変速回転伝動経路(D)と定速回転伝動経路(T)とを切替える構成としたコンバイン。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、前記変速回転伝動経路(D)の始端側軸(29)を設けた伝動装置(K)は、前後方向でフィードチェン(13)の前端部と脱穀装置(3)の前板(32)の間に配置したコンバイン。
【請求項3】
請求項2記載の発明において、前記伝動装置(K)の前部を、刈取装置(4)の縦支持フレームの基部回動自在に支持する刈取懸架台(66)に連結し、伝動装置(K)の後部を前記脱穀装置(3)側に連結したコンバイン。
【請求項4】
請求項3において、前記伝動装置(K)は、上部にフィードチェン(13)の始端側軸(29)を設け、始端側軸(29)より下方に入力軸(36)を設けたコンバイン。
【請求項5】
請求項1または請求項2または請求項3または請求項4記載の発明において、前記フィードチェン(13)は回動軸部(72)をオープン支点として外側回動自在に構成し、前記刈取装置(4)はオープン支持部(74)をオープン支点として外側回動自在に構成し、フィードチェン(13)のオープン支点を、刈取装置(4)のオープン支点より前側に設けたコンバイン。
【請求項6】
請求項5記載の発明において、前記フィードチェン(13)のオープン支点を、フィードチェン(13)の前端部と略同じ位置に配置したコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取装置を、走行装置の走行速度に同調させた変速同調駆動する構成とし、フィードチェンの搬送速度をフィードチェン専用の無段変速装置により変速する構成とし、フィードチェンは、車速との同調回転と、刈取装置の刈取穀稈の搬送速度を基準に低速と高速とに変速させる構成は、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3494877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、刈取装置の刈取穀稈の搬送速度を基準に変速することにより、脱穀装置に対するフィードチェンの搬送速度の適正化を図っているため、フィードチェン専用の変速装置が必要となり、製造コストが上昇するという課題がある。
また、手刈り穀稈の供給作業に対応できていないという課題がある。
本願発明は、通常の刈取脱穀作業と手扱ぎ作業との切替を容易にすると共に、切替構成を簡素にしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、機体前方の刈取装置4に刈り取った穀稈を脱穀装置3の扱室に供給搬送するフィードチェン13を設け、前記刈取装置4は油圧式無段変速装置21により走行装置2の走行速度に同調させた変速同調駆動する構成とし、前記脱穀装置3はエンジン20の駆動回転を一定の変速比で伝達する構成とし、前記フィードチェン13は、前記刈取装置4に伝達される変速同調回転を伝達する変速回転伝動経路Dと、前記脱穀装置3に一定の変速比で伝達される定速回転伝動経路Tとの二系統の伝動経路により駆動する構成とし、変速回転伝動経路Dと定速回転伝動経路Tとの夫々に変速用クラッチ23と定速用クラッチ24とを設け、変速用クラッチ23と定速用クラッチ24とは、一方が接続されたとき、他方が遮断されるように構成し、変速用クラッチ23と定速用クラッチ24との入切を単独の切替用モータ25により行うことにより前記変速回転伝動経路Dと定速回転伝動経路Tとを切替える構成としたコンバインとしたものであり、通常作業では、切替用モータ25により定速用クラッチ24を遮断して変速用クラッチ23を接続して、変速回転伝動経路Dによりフィードチェン13を刈取装置4(車速)と同調させてフィードチェン13を駆動し、手扱ぎ作業では、切替用モータ25により変速用クラッチ23を遮断して定速用クラッチ24を接続して定速回転をフィードチェン13に伝達して駆動する。
請求項2記載の発明は、前記変速回転伝動経路Dの始端側軸29を設けた伝動装置Kは、前後方向でフィードチェン13の前端部と脱穀装置3の前板32の間に配置したコンバインとしたものであり、通常作業において、フィードチェン13の前端部と脱穀装置3の前板32の間に位置する伝動装置Kからフィードチェン13に回転が伝達される。
請求項3記載の発明は、前記伝動装置Kの前部を、刈取装置4の縦支持フレームの基部回動自在に支持する刈取懸架台66に連結し、伝動装置Kの後部を前記脱穀装置3側に連結したコンバインとしたものであり、伝動装置Kは、フィードチェン13を駆動すると共に、刈取懸架台66と脱穀装置3を連結する。
請求項4記載の発明は、前記伝動装置Kは、上部にフィードチェン13の始端側軸29を設け、始端側軸29より下方に入力軸36を設けたコンバインとしたものであり、伝動装置Kの下部に設けた入力軸36に刈取装置4側からの動力が伝達される。
請求項5記載の発明は、前記フィードチェン13は回動軸部72をオープン支点として外側回動自在に構成し、前記刈取装置4はオープン支持部74をオープン支点として外側回動自在に構成し、フィードチェン13のオープン支点を、刈取装置4のオープン支点より前側に設けたコンバインとしたものであり、メンテナンス等の際に、フィードチェン13は回動軸部72中心に外側回動させ、刈取装置4はオープン支持部74をオープン支点として外側回動させる。
請求項6記載の発明は、前記フィードチェン13のオープン支点を、フィードチェン13の前端部と略同じ位置に配置したコンバインとしたものであり、フィードチェン13の前端部を回動支点近傍で回動させて、フィードチェン13の外側オープンさせる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、通常作業では、フィードチェン13を車速同調駆動とするので、穀稈搬送を円滑にし、詰まり発生を抑制でき、一定速駆動時は手扱ぎ作業を安全かつ容易に行え、変速回転伝動経路Dと定速回転伝動経路Tとの切替を、単独の切替用モータ25により行うので、切替構成を簡素にできる。
請求項2記載の発明では、伝動装置Kがフィードチェン13の搬送始端部を避けて配置されているので、伝動装置Kが刈取装置4からフィードチェン13への穀稈搬送を阻害しない。
請求項3記載の発明では、伝動装置Kの支持剛性を高め、フィードチェン13への回転伝動効率を向上させ、刈取懸架台66および脱穀装置3の剛性を向上させることができる。
請求項4記載の発明では、伝動装置Kの入力部が刈取装置4およびフィードチェン13の穀稈搬送に干渉するのを抑制でき、また、伝動装置Kに藁屑等の巻き付きを防止して、巻き付きによる伝動不良状態の発生を防止できる。
請求項5記載の発明では、フィードチェン13のオープン時に脱穀装置3の側部を大きく開放でき、フィードチェン13および脱穀装置3のメンテナンスを容易にできる。
請求項6記載の発明では、フィードチェン13のオープン時に、フィードチェン13と刈取装置4や刈取懸架台66等の周辺機器との干渉を防止でき、また、フィードチェン13のオープン量を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コンバインの側面図。
図2】脱穀装置の側面図。
図3】コンバインの伝動経路概略図。
図4】フィードチェンの切替機構付近の側面図。
図5】変速用クラッチを遮断状態に切り替えた側面図。
図6】脱穀装置の一部省略した正面図。
図7】定速用クラッチ付近の展開状態の平面図。
図8】脱穀装置の側面図。
図9】同背面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態をコンバインの図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は機体フレーム1の下方に設けた走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取装置、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6はグレンタンク5の前側に設けた操縦部である。
前記刈取装置4は、最先端位置に立毛する穀稈を左右に分草する分草装置8を左右に並設し、各分草装置8の後側に分草装置8が分草した穀稈を引起す引起装置9を設け、引起装置9の後側には刈刃10を設け(図1)、刈刃10の上方の後側には刈刃10によって刈り取った刈取後の穀稈を後方の脱穀装置3のフィードチェン13に搬送する刈取穀稈搬送装置(図示省略)を設ける。
刈取装置4は、基部を機体側に横軸上下回動自在に取付けた縦支持フレーム11の先端に設ける。
【0009】
刈取装置4により刈取搬送された穀稈は、前記脱穀装置3のフィードチェン13に適正姿勢で受け継がれて供給搬送される。フィードチェン13は、扱胴14(図2)を内装軸架せる扱室一側の扱ぎ口に沿って張設されている(図1)。脱穀処理後の排藁は排藁チェン18によって搬出処理されるようになっている。
前記フィードチェン13は、機体を走行停止状態においても、手作業で扱室に穀稈を供給する手扱ぎ作業可能に構成する。
15はフィードチェン13の案内レール、16はフィードチェン13の上方に設けた挾扼杆、17は案内レール15を支持する支持フレームである。
フィードチェン13へのエンジン20からの回転伝達経路は、前記刈取装置4に伝達される走行速度に同調させた変速同調回転を伝達する変速回転伝動経路Dと、前記脱穀装置3に伝達される定速回転伝動経路Tとの二系統の伝動経路により駆動する構成とし、フィードチェン13は変速回転伝動経路Dと定速回転伝動経路Tとの何れかから伝達する構成とする(図3)。
【0010】
そのため、通常の刈取作業形態と手扱ぎ作業形態の何れでも、円滑に作業を行える。
即ち、走行速度に同調させた変速同調回転を伝達する変速回転伝動経路Dは、例えば、エンジン20からの回転動力を、油圧式無段変速装置21を経由した走行ミッション装置22により走行装置2を無段変速駆動すると共に、走行ミッション装置22を介して刈取装置4に走行速度に同調した変速同調回転を伝達する構成としているが、刈取装置4の専用の無段変速装置を設け、この刈取専用無段変速装置によってフィードチェン13を駆動するようにしてもよい。
また、定速回転伝動経路Tは、前記脱穀装置3に、エンジン20からの一定の変速比の定速回転を伝達する構成とし、この定速回転をフィードチェン13に伝達する構成としている。
【0011】
変速回転伝動経路Dと定速回転伝動経路Tとの切替は、変速回転伝動経路Dと定速回転伝動経路Tとの夫々に変速用クラッチ23と定速用クラッチ24とを設け、変速用クラッチ23と定速用クラッチ24との入切(係脱)を単独の切替用モータ25により行う構成としている。
そのため、通常作業では、変速回転伝動経路Dによりフィードチェン13を刈取装置4(車速)と同調させてフィードチェン13を駆動するので、穀稈搬送を円滑にし、詰まり発生を抑制する。また、手扱ぎ作業では、定速回転伝動経路Tによりエンジン20の回転を通常作業時に比し低速の定速回転をフィードチェン13に伝達して、手作業による少量の穀稈を供給する手扱ぎ作業であっても良好に脱穀され、扱ぎ残し発生を抑制する。
また、フィードチェン13の穀稈搬送速度は、特別なフィードチェン13への回転伝達機構を設けることなく、通常作業時の穀稈搬送速度よりも低速の定速回転が伝達されるので、手扱ぎ作業の安全性を向上させられる。
【0012】
また、エンジン20の低速の定速回転により脱穀装置3およびフィードチェン13を駆動するので、省エネとなる。
フィードチェン13へのエンジン20の回転伝達経路の構成は、任意であるが、一例を示すと、フィードチェン13を掛け回した始端側歯車28の始端側軸29と終端側歯車30の終端側軸31との二軸をフィードチェン13への夫々入力軸とし、始端側軸29と終端側軸31との何れか一方に、脱穀装置3の定速回転を、始端側軸29と終端側軸31との何れか他方に、油圧式無段変速装置21からの変速同調回転を入力する構成とする。
前記変速回転伝動経路Dの始端側軸29を設けた伝動装置Kは、前後方向でフィードチェン13の前端部と脱穀装置3の前板32の間に配置する。
そのため、伝動装置Kをフィードチェン13の搬送始端部を避けて配置することができ、伝動装置Kの存在が刈取装置4からフィードチェン13への穀稈の引継を阻害しない。
【0013】
本実施形態では、フィードチェン13の始端側歯車28の始端側軸29を前側ギヤボックス35に軸装し、この前側ギヤボックス35を前記伝動装置Kとしている。
前側ギヤボックス35には入力軸36を軸装し、入力軸36に設けた入力プーリ37と中間プーリ38の間にベルト39を掛け回す。前記中間プーリ38は刈取装置4への走行速度に同調した変速同調回転が伝達される変速回転軸(カウンタ軸)40に取付け、エンジン20からの油圧式無段変速装置21と走行ミッション装置22とを経由させて刈取装置4に伝達する駆動回転伝動経路を、フィードチェン13に伝達する変速回転伝動経路Dとして構成している。
そのため、刈取装置4からフィードチェン13への変速回転伝動経路Dの構成を簡素に構成できる。
そして、入力プーリ37と中間プーリ38の間のベルト39に当接させたテンションプーリ41を前記変速用クラッチ23としている。
【0014】
図2の示したように、42は脱穀装置3の唐箕、43は一番コンベア、44は二番コンベア、45は揺動選別棚、46は吸引排塵ファンであり、これらの各入力プーリ47にエンジン20からの駆動回転が伝達される。48はベルト、49は中間歯車、50は吸引排塵ファン46の回転軸51に設けた排塵ファン入力歯車、52は排塵ファン入力歯車50に噛み合う歯車、53は歯車52と同軸に別途設けた歯車、54は歯車53に噛み合う終端側軸31に設けた中間歯車であり、吸引排塵ファン46からの駆動回転が歯車52、歯車53、中間歯車54を介してフィードチェン13の終端側歯車30の終端側軸31に伝達され、エンジン20からフィードチェン13の終端側軸31に至る伝動経路を、定速回転伝動経路Tとして構成している。
前記歯車52と歯車53の間に摺動する係合爪55を設けて前記定速用クラッチ24としている。56は係合爪55を摺動させるシフタである。
【0015】
前記切替用モータ25と変速用クラッチ23および定速用クラッチ24の切替機構57は、前側ギヤボックス35の近傍に設ける。
そのため、切替機構57をコンパクトで簡素に構成できる。
切替用モータ25と変速用クラッチ23との間の切替機構57は、テンションプーリ41のテンションアーム58にロッド59の一端を取付け、ロッド59の他端は切替用モータ25により正逆回転する回転体60に取付ける。
したがって、切替用モータ25の正逆回転によりロッド59を押し引きして、テンションプーリ41をベルト39に接離させて、変速用クラッチ23を入切させる。
一方、切替用モータ25と定速用クラッチ24との間の切替機構57は、シフタ56に操作伝達部材61の先端を取付け、操作伝達部材61の基部をロッド62の一端を取付け、ロッド62の他端は前記回転体60に取付ける。
そして、変速用クラッチ23と定速用クラッチ24とは、切替機構57のロッド59とロッド62の作動により、一方が「切(遮断)」のとき、他方が「入(接続)」となるように構成する。
【0016】
また、ロッド59とテンションアーム58との間、および、ロッド62と操作伝達部材61との間には、スプリング63を夫々介在させる。
スプリング63は、変速用クラッチ23と定速用クラッチ24との入切が円滑に行うように作用する。
即ち、変速用クラッチ23と定速用クラッチ24とは、変速用クラッチ23をテンションプーリ式のクラッチとし、定速用クラッチ24は係合爪式のクラッチとし、両者が仮に「入」となるような場合には、変速用クラッチ23のテンションプーリ41が滑るように設定しているが、それでも、切り替える際に負荷が生じることがあり、このときの変速用クラッチ23と定速用クラッチ24の切替に伴う負荷をスプリング63が吸収して、切替を円滑に行う。
【0017】
本例では、図4では、テンションプーリ41がベルト39に当接して、変速用クラッチ23が「入」の接続状態であり、このとき、定速用クラッチ24は、操作伝達部材61が牽引されて一対の係合爪55が離間して「切」となって駆動伝達が遮断される。反対に、回転体60を回転させてロッド59を緩めると、テンションプーリ41はベルト39から離れて、変速用クラッチ23が「切」となり、操作伝達部材61は緩められて一対の係合爪55が係合して定速用クラッチ24が「入」となる。
なお、定速用クラッチ24の構成は任意であるが、後側ギヤボックス64内に設けた歯車52と歯車53の間に摺動する係合爪55を設けて構成し、操作伝達部材61はシフタ56に接続し、シフタ56はバネ(図示省略)により定速用クラッチ24が入りとなるように付勢している。
【0018】
前記前側ギヤボックス35(伝動装置K)は、上部にフィードチェン13の始端側軸29を設け、始端側軸29より下方に入力軸36を設ける。
そのため、刈取装置4と始端側歯車28との間の前後距離を詰めて構成でき、また、ベルト39はフィードチェン13の案内レール15の搬送面から離すことができ、変速回転伝動経路Dに対する穀稈の巻き付き等を抑制できる。
前記前側ギヤボックス35(伝動装置K)は、縦板状の支持部材65に取付ける。支持部材65は、その下部を機体フレーム1に固定し、支持部材65の前側部分は刈取装置4の縦支持フレーム11の基部回動自在に支持する刈取懸架台66に連結すると共に、カウンタ軸67を軸装したステー68に固定する。ステー68は脱穀装置3の前板32に取付ける。
【0019】
即ち、伝動装置K(前側ギヤボックス35)の前部を刈取懸架台66に連結し、伝動装置K(前側ギヤボックス35)の後部を脱穀装置3(前板32・ステー68)に連結する。
そのため、支持部材65は、前側ギヤボックス35と刈取懸架台66と脱穀装置3の前板32とを互いに連結し、前側ギヤボックス35付近の剛性を向上させられる。
フィードチェン13の始端側歯車28と終端側歯車30は、同じ歯数の歯車を使用する。
そのため、部品の共用化が図れる。
前記中間プーリ38の、少なくとも、上面および前面にはカバー70を設け、中間プーリ38の外周を包囲する。
そのため、フィードチェン13からの藁屑等の付着や巻き付きを抑制する。
カバー70には、中間プーリ38からベルト39が外れるのを防止するベルトストッパ71を設ける。ベルトストッパ71は中間プーリ38の下方を包囲するように設ける。
【0020】
フィードチェン13のロッド62の前側部分は、縦軸状に形成して回動軸部72に形成し、回動軸部72は機体フレーム1に設けたフィードチェン支持部73に回転自在に設ける。フィードチェン支持部73は刈取装置4のオープン支持部74より前側に設ける。
即ち、フィードチェン13のオープン支点(回動軸部72)を、刈取装置4のオープン支点(オープン支持部74)より前側に設ける。
そのため、フィードチェン13を外側オープンさせるときの、フィードチェン13の前端が回動支点を中心に回動する際の機体側への入り込みを抑制できて、フィードチェン13の外側オープン量を大きく確保できる。
さらに、フィードチェン13の先端位置を回動軸部72とフィードチェン支持部73と略同じ前後位置とする。
即ち、フィードチェン13のオープン支点(回動軸部72)を、フィードチェン13の前端部と略同じ位置に配置する。
【0021】
そのため、一層、フィードチェン13の前側部分の機体側への入り込みを抑制できて、フィードチェン13の外側オープン量を大きく確保できる。
フィードチェン13のロッド62の前側所定部分には、脱穀装置3側に突き出る移動側ガイド体75を設け、移動側ガイド体75は脱穀装置3側(前板32)に設けた固定側ガイド体76に当接し、ロッド62を所定高さに維持するように構成する。
そのため、フィードチェン13を外側オープンさせて、元の作業状態に復帰させる内側回動させると、移動側ガイド体75は固定側ガイド体76に乗り上げて、ロッド62を所定高さに案内保持させる。
前記移動側ガイド体75は、フィードチェン13の始端側歯車28と終端側軸31の間の所定位置に設ける。
そのため、元の作業状態に復帰させる内側回動させる際の始端側歯車28と終端側軸31の両者の高さを、設定高さに案内でき、カップリング接合を容易にする。
前記フィードチェン13の始端側歯車28と終端側軸31の間の、始端側歯車28に近い側のフィードチェン13の下方には、チェン支持体77(チェン弛み側スラシ)77を設ける。
【0022】
そのため、定速駆動による手扱ぎモード時に、終端側軸31から始端側歯車28に移動するフィードチェン13が弛み側となって垂れ下がることがあるが、チェン支持体77が支持して、フィードチェン13の移動を安定させられる。
なお、通常作業状態である変速回転伝動経路Dから手扱ぎモードとなる定速回転伝動経路Tへ切替えるための切替用モータ25の操作は、任意であるが、モード切替スイッチにより行う構成とすると、エンジン20の回転制御の自動化も容易にでき、操作性を向上させられ、好適である。
脱穀装置3の扱胴14の終端部に排塵処理胴78の始端部を側面視において重ねるように配置し、扱室79の終端と排塵室80の始端とを連通口81により連通させ、連通口81より後方に延長させた扱胴14の終端の周囲を四番処理室82に構成し、四番処理室82内の背面視における扱胴14と排塵処理胴78の間には垂下壁83を設ける。
そのため、連通口81によって排塵室80に入らずに扱胴14により処理された被処理物は、垂下壁83により連通口81付近および排塵処理胴78の始端側で落下する排塵被処理物と混合せずに、揺動選別棚45により処理されて処理効率を向上させられる。
【0023】
即ち、連通口81から排塵室80に入る脱穀被処理物は、藁屑が多く、そのため、排塵室80から落下する排塵被処理物中に藁屑が多くなる傾向となり、一方、四番処理室82では、連通口81にて藁屑が排塵室80に入っているので、藁屑が少なく四番処理室82で扱胴14により処理された四番被処理物の処理精度は高くなり、その結果、垂下壁83により、排塵室80からの排塵被処理物と四番処理室82からの四番被処理物とが、揺動選別棚45上にて合流するのを抑制し、揺動選別棚45の処理精度を向上させられる。
垂下壁83は、その上部を四番処理室82の側方の排塵室80側に取付け、下方に至るに従いフィードチェン13側へ傾斜させ、上下中間所定部分より略垂直状に垂下させて形成している。
そのため、上部の傾斜部により垂下壁83上に被処理物が堆積するのを抑制し、下部の垂下部により排塵室80からの排塵被処理物がフィードチェン13側に飛散するのを防止して、四番処理室82からの四番被処理物との合流を抑制する。
【0024】
(実施形態の作用)
機体を走行させ、刈取装置4により圃場の穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈は脱穀装置3に供給して脱穀する。
この場合、一般的には、先ず、圃場の四隅を手刈りし、コンバインを進入させられる空き地を形成し、この空き地から圃場の穀稈をコンバインを走行させて刈取脱穀する。
なお、圃場の四隅の手刈り穀稈は、たいていは、ひとまず載置しておき、圃場の刈取脱穀作業が終了後に、脱穀装置3にて手扱ぎ作業で脱穀する。
圃場の刈取脱穀が終了すると、機体を停止させた状態で、フィードチェン13および脱穀装置3を駆動させ、フィードチェン13に、前記した手作業で手刈り穀稈を供給して脱穀する。
【0025】
フィードチェン13へのエンジン20からの回転伝達経路は、刈取装置4に伝達される走行速度に同調させた変速同調回転を伝達する変速回転伝動経路Dと、前記脱穀装置3に一定の変速比で伝達される定速回転伝動経路Tとの二系統の伝動経路により駆動する構成とし、フィードチェン13は変速回転伝動経路Dと定速回転伝動経路Tとの何れかから伝達する構成としているので、通常の刈取作業形態と手扱ぎ作業形態の何れでも、円滑に作業行える。
そのため、通常刈取作業では、変速回転伝動経路Dにより走行速度に同調させた変速同調回転を、刈取装置4とフィードチェン13に伝達して刈取作業を行い、一方、脱穀装置3には、エンジン20からの一定の変速比の定速回転が伝達されて脱穀作業が行われる。
【0026】
通常作業状態である変速回転伝動経路Dから手扱ぎモードとなる定速回転伝動経路Tへの切替は、変速回転伝動経路Dと定速回転伝動経路Tとの夫々に変速用クラッチ23と定速用クラッチ24とを設け、変速用クラッチ23と定速用クラッチ24との入切(係脱)を単独の切替用モータ25により行う構成としているので、通常作業では、切替用モータ25により定速用クラッチ24を「切」にして変速用クラッチ23を「入」にし、変速回転伝動経路Dによりフィードチェン13を刈取装置4(車速)と同調させてフィードチェン13を駆動する。
また、手扱ぎ作業では、切替用モータ25により変速用クラッチ23を「切」にして定速用クラッチ24を「入」にし、定速回転伝動経路Tによりエンジン20の回転を通常作業時に比し低速の定速回転をフィードチェン13に伝達して、手作業による少量の穀稈を供給する手扱ぎ作業であっても良好に脱穀して、扱ぎ残し発生を抑制する。
【0027】
フィードチェン13へのエンジン20の回転伝達経路の構成は、フィードチェン13を掛け回した始端側歯車28の始端側軸29と終端側歯車30の終端側軸31との二軸を夫々入力軸とし、始端側軸29と終端側軸31との何れか一方に、脱穀装置3の定速回転を、始端側軸29と終端側軸31との何れか他方に、油圧式無段変速装置21からの変速同調回転を入力する構成としているので、切替用モータ25により変速用クラッチ23と定速用クラッチ24の入切切替するだけで、変速回転伝動経路Dと定速回転伝動経路Tとの切替を行え、操作は容易となる。
変速回転伝動経路Dの始端側軸29を設けた伝動装置Kは、前後方向でフィードチェン13の前端部と脱穀装置3の前板32の間に配置しているので、伝動装置Kをフィードチェン13の搬送始端部を避けて配置することができ、伝動装置Kの存在が刈取装置4からフィードチェン13への穀稈の引継を阻害しない。
【0028】
本実施形態では、フィードチェン13の始端側歯車28の始端側軸29を前側ギヤボックス35に軸装し、この前側ギヤボックス35を前記伝動装置Kとし、前側ギヤボックス35には入力軸36を軸装し、入力軸36に固定の入力プーリ37と中間プーリ38の間にベルト39を掛け回し、中間プーリ38は刈取装置4への走行速度に同調した変速同調回転が伝達される変速回転軸40に取付け、エンジン20からの油圧式無段変速装置21と走行ミッション装置22とを経由させて刈取装置4に伝達する駆動回転伝動経路を、フィードチェン13に伝達する変速回転伝動経路Dとし、入力プーリ37と中間プーリ38の間にベルト39に当接させたテンションプーリ41を前記変速用クラッチ23としているので、刈取装置4からフィードチェン13への変速回転伝動経路Dおよび変速用クラッチ23を簡単に構成できる。
【0029】
脱穀装置3の唐箕42と一番コンベア43等の各部の入力プーリ47にエンジン20からの駆動回転を伝達し、脱穀装置3の各部の定速駆動回転をフィードチェン13の終端側歯車30の終端側軸31に伝達する構成を、定速回転伝動経路Tとして構成し、入力プーリ47と終端側歯車30の間の伝動経路の歯車52と歯車53の間に摺動する係合爪55を設けて定速用クラッチ24としているので、脱穀装置3に一定回転を伝達する伝達経路を利用して、フィードチェン13に、一定の変速比で伝達される定速回転伝動経路Tおよび定速用クラッチ24を設けることができる。
切替用モータ25と変速用クラッチ23および定速用クラッチ24の切替機構57は、前側ギヤボックス35の近傍に設けているので、切替機構57をコンパクトで簡素に構成できる。
切替用モータ25と変速用クラッチ23との切替機構57は、テンションプーリ41のテンションアーム58にロッド59の一端を取付け、ロッド59の他端は切替用モータ25により正逆回転する回転体60に取付けているので、切替用モータ25の正逆回転によりロッド59を押し引きして、テンションプーリ41をベルト39に接離させて、変速用クラッチ23を入切させる。
【0030】
一方、切替用モータ25と定速用クラッチ24との切替機構57は、シフタ56に操作伝達部材61の先端を取付け、操作伝達部材61の基部をロッド62の一端を取付け、ロッド62の他端は前記回転体60に取付けているので、切替機構57のロッド59とロッド62の作動により、変速用クラッチ23と定速用クラッチ24の一方が「切」のとき、他方が「入」となる。
入力プーリ37は始端側歯車28の下方となる前側ギヤボックス35(伝動装置K)に軸装しているので、刈取装置4と始端側歯車28との間の前後距離を詰めて構成でき、また、ベルト39はフィードチェン13の案内レール15の搬送面から離すことができ、変速回転伝動経路Dに対する穀稈の巻き付き等を抑制できる。
前側ギヤボックス35(伝動装置K)を取付けた縦板状の支持部材65の下部は機体フレーム1に固定し、支持部材65の前側部分は刈取装置4の縦支持フレーム11の基部回動自在に支持する刈取懸架台66に連結すると共に、前記変速回転軸40を軸装したステー68に固定し、ステー68は脱穀装置3の前板32に取付けているので、前側ギヤボックス35(伝動装置K)は、刈取懸架台66と脱穀装置3の前板32とを互いに連結する支持部材65により強固に支持される。
【0031】
即ち、伝動装置K(前側ギヤボックス35)の前部を刈取懸架台66に連結し、伝動装置K(前側ギヤボックス35)の後部を脱穀装置3(前板32・ステー68)に連結するので、伝動装置K(前側ギヤボックス35)と刈取懸架台66と脱穀装置3の前板32とは互いに連結され、伝動装置K(前側ギヤボックス35)および刈取懸架台66付近の剛性を向上させられる。
フィードチェン13のロッド62の前側部分の回動軸部72は機体フレーム1に設けたフィードチェン支持部73に回転自在に設け、フィードチェン支持部73は刈取装置4のオープン支持部74より前側に設けているので、フィードチェン13を外側オープンさせるときの、フィードチェン13の前端が回動支点を中心に回動する際の機体側への入り込みを抑制できて、フィードチェン13の外側オープン量を大きく確保できる。
【0032】
即ち、フィードチェン13のオープン支点(回動軸部72)を、刈取装置4のオープン支点(オープン支持部74)より前側に設けているので、フィードチェン13の回動支点をフィードチェン13の前端部に接近させることができ、フィードチェン13の回動支点とフィードチェン13の前端部とを接近させて、フィードチェン13の外側オープンの際の機体側への入り込みを抑制できて、フィードチェン13の外側オープン量を大きく確保できる。
さらに、フィードチェン13の先端位置を回動軸部72とフィードチェン支持部73と略同じ前後位置としているので、フィードチェン13のオープン支点(回動軸部72)を、フィードチェン13の前端部と略同じ位置に配置することになり、一層、フィードチェン13の前側部分の機体側への入り込みを抑制できて、フィードチェン13の外側オープン量を大きく確保できる。
なお、上記の各実施形態は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0033】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、8…分草装置、9…引起装置、10…刈刃、11…縦支持フレーム、13…フィードチェン、14…扱胴14、15…案内レール、16…挾扼杆、17…支持フレーム、20…エンジン、21…油圧式無段変速装置、22…走行ミッション装置、23…変速用クラッチ、24…定速用クラッチ、25…切替用モータ、27…ローラ、28…始端側歯車、29…始端側軸、30…終端側歯車、31…終端側軸、32…前板、35…前側ギヤボックス、36…入力軸、37…入力プーリ、38…中間プーリ、39…ベルト、40…変速回転軸、41…テンションプーリ、42…唐箕、43…一番コンベア、44…二番コンベア、45…揺動選別棚、46…吸引排塵ファン、47…入力プーリ、48…ベルト、49…中間歯車、50…排塵ファン入力歯車、52…歯車、53…歯車、54…中間歯車、55…係合爪、56…シフタ、57…切替機構、58…テンションアーム、59…ロッド、60…回転体、61…操作伝達部材、62…ロッド、63…スプリング、64…後側ギヤボックス、65…支持部材、66…刈取懸架台、67…カウンタ軸、68…ステー、70…カバー、71…ベルトストッパ、72…回動軸部、73…フィードチェン支持部、74…オープン支持部、75…移動側ガイド体、76…固定側ガイド体、77……チェン支持体、78…排塵処理胴、79…扱室、80…排塵室、81…連通口、82…四番処理室、83…垂下壁、84…二番処理胴。
図1
図2
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図9