(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら、本発明に係る実施形態の一例である太陽電池モジュール10について以下詳細に説明するが、本発明の適用はこれに限定されない。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0011】
図1〜
図4を参照しながら、太陽電池モジュール10の構成について説明する。
図1は、太陽電池モジュール10を受光面側から見た平面図である。
図2〜
図4は、それぞれ
図1のX‐X線、Y‐Y線、及びZ‐Z線で、太陽電池モジュール10を厚み方向に切断した断面図である。
【0012】
太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池11A,11Bと、太陽電池11A,11Bの受光面側に配置される第1保護部材12と、太陽電池11A,11Bの裏面側に配置される第2保護部材13とを備える。複数の太陽電池11A,11Bは、第1保護部材12と第2保護部材13とにより挟持されると共に、充填剤14により封止されている。第1保護部材12及び第2保護部材13には、例えば、ガラス基板や樹脂基板、樹脂フィルム等の透光性を有する部材を用いることができる。充填剤14には、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂を用いることができる。
【0013】
太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池を直列に接続する配線材15を備える。
図2に示すように、隣接して配置される太陽電池11Aと太陽電池11Bとを接続する場合、配線材15の一端側は、太陽電池11Aの後述するバスバー電極42Aに取り付けられる。配線材15の他端側は、太陽電池11Bの後述するバスバー電極32Bに取り付けられる。配線材15は、隣接する太陽電池11Aと太陽電池11Bとの間で太陽電池モジュール10の厚み方向に曲がり、各太陽電池を直列に接続する。
【0014】
太陽電池モジュール10は、例えば、配線材15同士を接続する渡り配線材16、第1保護部材12及び第2保護部材13の周縁に取り付けられるフレーム17、図示しない端子ボックス等をさらに備える。
【0015】
太陽電池モジュール10には、上記のように、少なくとも2種類の太陽電池11A,11Bが含まれる。詳しくは後述するが、太陽電池11A,11Bは、光電変換部20A,20Bの特性(特性値)に基づいて分類され、互いに異なる電極構造を有する。本明細書では、太陽電池11Aに係る構成要素には「A」を付し、太陽電池11Bに係る構成要素には「B」を付する。
【0016】
太陽電池11A,11Bは、太陽光を受光することでキャリアを生成する光電変換部20A,20Bと、その受光面上に形成された受光面電極である第1電極30A,30Bと、その裏面上に形成された裏面電極である第2電極40A,40Bとをそれぞれ備える。太陽電池11A,11Bでは、光電変換部20A,20Bでそれぞれ生成されたキャリアが、第1電極30A,30B及び第2電極40A,40Bによりそれぞれ収集される。ここで、「受光面」とは太陽電池の外部から太陽光が主に入射する面を、「裏面」とは受光面と反対側の面をそれぞれ意味する。例えば、太陽電池に入射する太陽光のうち50%超過〜100%が受光面側から入射する。
【0017】
光電変換部20A,20Bは、少なくとも曲線因子に基づいて分類されることが好適である。以下では、光電変換部の曲線因子を「FF
0」とし、太陽電池の曲線因子を「FF」とする。例えば、光電変換部20Aは、所定の閾値以上のFF
0を有し、光電変換部20Bは、所定の閾値未満のFF
0を有する。所定の閾値は、例えば、FF
0の規格下限値(以下、「FF
L」とする)である。光電変換部20BはFF
0がFF
L以上となるように製造されたものであるが、製造工程における諸条件の変動によりFF
0が低くなったものである。したがって、光電変換部20A,20Bは巨視的には同じ構造を有する。また、太陽電池11A,11Bは、フィンガー電極、バスバー電極を有する点で共通している。以下では、太陽電池11A,11Bで共通する内容は太陽電池11Aについて説明する。
【0018】
光電変換部20Aは、結晶系シリコン(c‐Si)、ガリウム砒素(GaAs)、インジウム燐(InP)等の半導体材料からなる基板21Aと、基板21Aの受光面上に形成された非晶質半導体層22Aと、基板21Aの裏面上に形成された非晶質半導体層23Aとを有する。基板21Aとしては、n型単結晶シリコン基板が特に好適である。基板21Aの受光面には、テクスチャ構造26A(後述の
図12参照)を形成することが好適である。また、基板21Aの裏面にもテクスチャ構造を形成することが好適である。
【0019】
テクスチャ構造26Aとは、光の反射を低減して受光効率を高めるための微細な凹凸構造である。テクスチャ構造26Aの具体例としては、主面が(100)面であるn型単結晶シリコン基板に、異方性エッチングを施すことによって得られるピラミッド状の凹凸構造が挙げられる。テクスチャ構造26Aのサイズ(以下、「Txサイズ」という場合がある)は、0.5μm〜20μm程度が好ましい。Txサイズとは、基板21Aの主面を平面視した状態におけるサイズを意味し、走査型電子顕微鏡(SEM)やレーザーマイクロスコープを用いて測定できる。Txサイズの定義は特に限定されないが、以下では、テクスチャ構造26Aの外接円の直径をTxサイズとする。また、Txサイズは、1mm
2以上の範囲における平均値を意味するものとする。テクスチャ構造26Aの凹部の深さは、例えば、数μm程度である。非晶質半導体層22A、後述の透明導電層24Aの厚みは、例えば、数nm〜数百nm程度であるから、これら薄膜層の上にもテクスチャ構造26Aが現れる。
【0020】
非晶質半導体層22Aは、例えば、i型非晶質シリコン層と、p型非晶質シリコン層とが順に形成された層構造である。非晶質半導体層23Aは、例えば、i型非晶質シリコン層と、n型非晶質シリコン層とが順に形成された層構造である。なお、光電変換部20Aは、基板21Aの受光面上にi型非晶質シリコン層と、n型非晶質シリコン層とが順に形成され、基板21Aの裏面上に、i型非晶質シリコン層と、p型非晶質シリコン層とが順に形成された構造でもよい。
【0021】
光電変換部20Aは、非晶質半導体層22A上に透明導電層24Aを、非晶質半導体層23A上に透明導電層25Aを備えることが好適である。透明導電層24A,25Aは、例えば、酸化インジウム(In
2O
3)や酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物に、錫(Sn)やアンチモン(Sb)等をドープした透明導電性酸化物から構成される。透明導電層24A,25Aは、例えば、非晶質半導体層22A,23A上の端縁部を除く全域を覆って形成される。
【0022】
第1電極30Aは、透明導電層24A上に形成された、複数(例えば、50本)のフィンガー電極31Aと、複数(例えば、2本)のバスバー電極32Aとを含む。フィンガー電極31Aは、透明導電層24A上の広範囲に形成される細線状の電極である。バスバー電極32Aは、フィンガー電極31Aからキャリアを収集する電極である。第1電極30Aにおいては、各バスバー電極32Aが所定の間隔を空けて互いに平行に配置され、これに直交して複数のフィンガー電極31Aが配置されている。複数のフィンガー電極31Aは、一部がバスバー電極32Aの各々から受光面の端縁側に延び、残りが各バスバー電極32Aを繋いでいる。
【0023】
第2電極40Aも、第1電極30Aと同様に、透明導電層25A上に形成された、複数(例えば、250本)のフィンガー電極41Aと、複数(例えば、2本)のバスバー電極42Aとを含む。各電極の配置は、第1電極30Aの場合と同様である。
【0024】
フィンガー電極31Aの幅は、遮光ロス低減等の観点から、30μm〜150μm程度が好ましく、40μm〜100μm程度がより好ましい。バスバー電極32Aの幅は、配線材15の幅よりも小さいことが好適であり、50μm〜300μm程度が好ましく、80μm〜150μm程度がより好ましい。即ち、配線材15の一部は、バスバー電極32A上からはみ出してフィンガー電極31Aに接続される。
【0025】
フィンガー電極31A及びバスバー電極32Aの厚みは、抵抗損失低減等の観点から40μm〜150μm程度、好ましくは60μm〜100μm程度であり、互いに同程度であることが特に好適である。電極厚みは、透明導電層24A上から各々の電極の最上点までの基板21Aの厚み方向に沿った長さであって、テクスチャ構造26Aがある場合はテクスチャ構造26Aの凸部からの長さである。電極厚みは、SEMやレーザ顕微鏡等を用いた断面観察により測定できる。
【0026】
第2電極40については、通常、遮光ロスの影響が小さいので、例えば、フィンガー電極31Aに比べてフィンガー電極41Aの幅を太くすることができる。また、フィンガー電極41Aは、その幅を太くし、フィンガー電極31Aよりも本数を増やすことにより、電極厚みを小さくすることができる。
【0027】
第1電極30A、第2電極40A(以下、これらを総称して「電極」という場合がある)は、例えば、エポキシ樹脂等のバインダ樹脂中に導電性フィラーが分散した構造を有する。導電性フィラーには、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の金属粒子やカーボン、又はこれらの混合物などが用いられる。これらのうち、Ag粒子が好適である。電極は、例えば、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法により形成される。電極は、電解めっき法やスクリーン印刷法以外の印刷法(例えば、インクジェット法、フレキソ印刷法など)により形成することもできる。印刷法により電極を形成する場合、導電性ペーストの印刷後に加熱処理してペースト中の溶剤を除去し、バインダ樹脂を熱硬化させることが好適である。
【0028】
太陽電池11Bの第1電極30Bは、第1電極30Aと同様の電極配置で形成されたフィンガー電極31Bと、バスバー電極32Bとを含む。第2電極40Bについても、第1電極40Aと同様の電極配置で形成されたフィンガー電極41Bと、バスバー電極42Bとを含む。但し、太陽電池11Aと太陽電池11Bとでは、電極の形成パターン、特にフィンガー電極の形成パターンが互いに異なる。より詳しくは、
図3及び
図4に示すように、対応するフィンガー電極の厚みが互いに異なる。即ち、フィンガー電極31Bの厚みh
31Bがフィンガー電極31Aの厚みh
31Aよりも大きく(h
31B>h
31A)、フィンガー電極41Bの厚みh
41Bがフィンガー電極41Aの厚みh
41Aよりも大きくなっている(h
41B>h
41A)。
【0029】
太陽電池モジュール10は、上記のように、対応するフィンガー電極の厚みが互いに異なる2種類の太陽電池11A,11Bを含む。例えば、厚みh
31Bの平均値(以下、「平均厚み[h
31B]」とする)は、厚みh
31Aの平均値(以下、「平均厚み[h
31A]」とする)よりも大きい。当該平均厚みは、太陽電池毎に、少なくともフィンガー電極の全本数の10%以上に基づいて算出される。各々の太陽電池においても、[h
31A]及び[h
31B]にはある程度のバラツキが存在するが、[h
31B]は[h
31A]よりも意図的に大きく設定されたものであり、[h
31A]と[h
31B]との差は少なくとも当該バラツキより大きい。即ち、最大の[h
31A]よりも最小の[h
31B]の方が大きいことが好適である。また、フィンガー電極41Bの平均厚み[h
41B]も、[h
31B]と同様に、フィンガー電極41Aの平均厚み[h
41A]よりも大きい。
【0030】
フィンガー電極31B,41Bは、バスバー電極32B,42Bにそれぞれ近接する部分であって配線材15が接続される部分の厚みを、バスバー電極32B,42Bの厚みとそれぞれ同程度にすることができる。これにより、配線材15とバスバー電極32B,42Bとの接続が可能となる。つまり、太陽電池11Bのフィンガー電極の一部は、太陽電池11Aの対応するフィンガー電極と同程度の厚みを有する部分があってもよい。或いは、h
31B<h
31Aとなる部分が存在してもよい。
【0031】
図3及び
図4では、フィンガー電極の厚みが互いに異なる電極形成パターンを示したが、太陽電池11Aと太陽電池11Bとで対応するフィンガー電極の幅を互いに異ならせてもよい。
図5及び
図6に示す例では、フィンガー電極41Bの幅W
41Bをフィンガー電極41Aの幅W
41Aよりも太くしている。また、図示しないが、フィンガー電極31Bの幅W
31Bをフィンガー電極31Aの幅W
31Aよりも太くしてもよい。また、遮光ロス低減等の観点から、受光面側では幅W
31Bを太くせず、[h
31B]を[h
31A]よりも厚くし、裏面側では[h
41B]を厚くせず、幅W
41Bを幅W
41Aより太くしてもよい。
【0032】
太陽電池11A,11Bの電極形成パターンは、電極厚み、電極幅の他に、電極本数や電極ピッチを互いに変更することで異ならせてもよい。電極本数、電極ピッチも、バスバー電極については変更せず、フィンガー電極について変更することが好適である。また、電極形成パターンの変更以外にも、電極材料を変更することで、太陽電池11A,11Bの電極構造を異ならせてもよい。例えば、電極に含まれる導電性フィラーの含有量を太陽電池11Aと11Bとで互いに異ならせることが挙げられる。具体的には、太陽電池11Bの電極を構成する導電性フィラーの含有量を、太陽電池11Aの電極を構成する導電性フィラーの含有量よりも多くすることができる。
【0033】
上記いずれの形態においても、太陽電池11Bでは、太陽電池11Aに比べて、電極を構成する導電性材料(例えば、導電性フィラー)の使用量が多い。即ち、太陽電池11Bは、太陽電池11Aよりも低抵抗な電極構造を有する。
【0034】
光電変換部には、上記以外の構造を適用することができる。例えば、n型単結晶シリコン等からなる基板の受光面側に、i型非晶質シリコン層及びn型非晶質シリコン層を順に形成し、基板の裏面側に、i型非晶質シリコン層及びp型非晶質シリコン層で構成されたp型領域と、i型非晶質シリコン層及びn型非晶質シリコン層で構成されたn型領域とを形成した光電変換部であってもよい。この場合、基板の裏面側のみに電極(p側電極及びn側電極)が設けられる。また、p型多結晶シリコン等からなる基板と、基板の受光面上に形成されたn型拡散層と、基板の裏面上に形成されたアルミニウム金属層とから構成される光電変換部であってもよい。
【0035】
図7〜
図9を参照しながら、上記構成を備える太陽電池モジュール10の製造方法の一例について詳説する。
図7は、太陽電池11及び太陽電池モジュール10の製造工程の全体を示す概略図である。
図7では、図面の明瞭化のため、一部ハッチングを省略するが、いずれも断面図である。
図8は、ここで例示する工程(以下、「本工程」という場合がある)のフローチャートである。
図9は、本工程で製造される各光電変換部のFF
0と電極の形成パターンとの関係を示す図である。
【0036】
本工程では、FF
0が所定の目標値(以下、「FF
C」とする)となる光電変換部20Aが得られるように製造条件が設定されるが、当該条件の変動によりFF
0にばらつきが発生する。これにより、FF
0がFF
L未満である規格外品の光電変換部20Bが幾つか製造される。また、本工程には、光電変換部20(光電変換部20A,20Bに分類される前の光電変換部)のFF
0を自動的に測定する製造システム50を用いる。製造システム50は、光電変換部20の振り分け等を実行するための情報を含むデータベースを備え、測定したFF
0とデータベースから読み出した当該情報とに基づき、光電変換部20を光電変換部20A,20Bに自動的に振り分ける。但し、製造システムは、これに限定されず、FF
0の測定や光電変換部の振り分けが人為的に行われてもよい。
【0037】
製造システム50のデータベースには、例えば、上記情報として光電変換部20の規格値が記憶されている。記憶される規格値としては、FF
CやFF
Lが例示でき、これらの他にも後述のR
0やIso
0、Voc
0、Txサイズ等に関する規格値が例示できる。データベースには、測定した光電変換部20の特性値を蓄積してもよく、製造システム50は、蓄積したデータを用いて規格値等を自動的に変更するものであってもよい。本工程において、電極構造の選定は、予めデータベースに記憶された規格値と、測定された特性値とが自動的に比較されて行われる。
【0038】
図7及び
図8に示すように、太陽電池モジュール10の製造工程では、まず、光電変換部20を製造する(S10)。基板21の受光面上に、例えば、i型非晶質シリコン層及びp型非晶質シリコン層を含む非晶質半導体層22と、透明導電層24とを順に形成し、基板21の裏面上に、例えば、i型非晶質シリコン層及びn型非晶質シリコン層を含む非晶質半導体層23と、透明導電層25とを順に形成する。この工程では、洗浄された基板21を真空チャンバ内に設置して、CVDやスパッタリング法により各層を形成できる。
【0039】
CVDによるi型非晶質シリコン層の成膜には、例えば、シラン(SiH
4)を水素(H
2)で希釈した原料ガスを使用する。p型非晶質シリコン層の場合は、シランにジボラン(B
2H
6)を添加し、水素(H
2)で希釈した原料ガスを使用することができる。n型非晶質シリコン層の場合は、シランにホスフィン(PH
3)を添加し、水素(H
2)で希釈した原料ガスを使用することができる。
【0040】
S10では、上記各層を積層する前に、基板21の受光面及び裏面にテクスチャ構造を形成しておくことが好適である。基板21は、例えば、エッチング液に浸漬されることで、受光面及び裏面にテクスチャ構造が形成される。好適なエッチング液としては、基板21が(100)面を有する単結晶シリコン基板である場合、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液や水酸化カリウム(KOH)溶液等のアルカリ溶液が例示できる。使用する基板21やエッチング液の濃度、処理時間等を変更することにより、Txサイズを調整することが可能である。エッチングガスを用いて、テクスチャ構造を形成することもできる。
【0041】
続いて、光電変換部の特性値を測定する(S11)。S11で測定される特性値は、電極構造を決定するための重要な因子であり、後述する短絡電流Iso
0や開放電圧Voc
0を用いてもよいが、少なくともFF
0が含まれることが好適である。本工程では、FF
0のみを用いる。次に、測定した特性値に基づき電極構造を決定する。具体的には、FF
0と所定の閾値とを比較して電極構造を選定する(S12)。本工程では、所定の閾値として、FF
Lを用いる。S12では、各光電変換部20のFF
0がFF
L以上(FF
0≧FF
L)であるか否かを判断し、FF
0≧FF
L(即ち、光電変換部20A)であれば電極形成パターンをAパターンとし、FF
0<FF
L(即ち、光電変換部20B)であれば電極形成パターンをAパターンよりも低抵抗なBパターンとする。この場合、選定対象である電極構造は2種類である。
【0042】
光電変換部20のFF
0は、従来公知の方法、例えば、PLイメージング法やsunsVoc法により測定することができる。PLイメージング法、sunsVoc法によれば、光電変換部の開放電圧Voc
0も測定できる。なお、FF
0の測定は、透明導電層24,25を形成する前に行うこともできる。
【0043】
S11,12では、例えば、製造システム50が特性値測定場所51に光電変換部20を搬送して、全ての光電変換部20についてFF
0を測定する。次に、製造システム50は、測定したFF
0とデータベースに予め記憶されたFF
Lとに基づいて光電変換部20を光電変換部20A,20Bに分類する。そして、光電変換部20Aを電極形成場所52に搬送し、光電変換部20Bを電極形成場所53に搬送する。電極形成場所52は、Aパターンで電極を形成する場所であり、電極形成場所53は、Bパターンで電極を形成する場所である。
【0044】
ここで、光電変換部20A,20B、及びそれぞれの電極構造(A,Bパターン)について説明する。上記と重複する説明は省略する。
【0045】
図9に示すように、光電変換部20のFF
0のばらつきは、通常、FF
Cを中心とする正規分布に従う。本工程では、FF
0がFF
Cである光電変換部20Aが最も多く製造されるが、FF
0がFF
L未満の光電変換部20Bも幾つか製造される。FF
Lは、太陽電池の性能及び歩留まりを考慮して、任意に設定することができる。例えば、光電変換部20の全個数うち、FF
0の低いものから10%程度が光電変換部20BとなるようにFF
Lを設定することができる。
【0046】
太陽電池は、電極の形成により曲線因子が低下するが(即ち、FF
0>FF)、その低下の程度は電極構造により異なる。具体的には、抵抗の低い電極構造にするほど曲線因子は低下し難い。したがって、S12では、光電変換部20Aに標準的な電極形成パターンであるAパターンを適用し、光電変換部20BにAパターンよりも低抵抗なBパターンを適用する。即ち、FF
0が低いほど、抵抗の低い電極構造とすることが好適である。これにより、規格外品である光電変換部20Bを用いた場合の曲線因子の低下を、光電変換部20Aを用いた場合に比べて抑制できる。そして、太陽電池11BのFFを太陽電池11AのFFに近づける、或いは同程度とすることが可能になる。
【0047】
Bパターンでは、Aパターンに比べて、対応するフィンガー電極の厚みが厚く設定されている。Aパターンは、フィンガー電極31A,41Aを含み、Bパターンは、[h
31A]<[h
31B]、[h
41A]<[h
41B]であるフィンガー電極31B,41Bを含む。バスバー電極については、例えば、A,Bパターンで同じ厚みに設定される。
【0048】
電極幅や電極本数を互いに異ならせたA,Bパターンとしてもよい。電極幅を互いに異ならせる場合、BパターンはAパターンに比べて電極幅を太くする。電極本数を互いに異ならせる場合、BパターンはAパターンに比べて電極本数を多くする。また、電極を構成する導電性フィラーの含有量を互いに異ならせたA,Bパターンとしてもよい。この場合、BパターンはAパターンに比べて導電性フィラーの含有量を多くする。また、電極厚み、電極幅、電極本数、及び導電性フィラーの含有量から選択される複数の要素を互いに異ならせたA,Bパターンとしてもよい。
【0049】
続いて、光電変換部20Aについては、電極形成場所52において、Aパターンで電極を形成する(S13)。この工程により、太陽電池11Aが製造される。光電変換部20Bについては、電極形成場所53において、Bパターンで電極を形成する(S14)。この工程により、太陽電池11Bが製造される。
【0050】
導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法により電極を形成する場合、例えば、電極形成場所53では電極形成場所52よりも版厚(後述のマスク材の厚みにより調整することが好適である)の大きな製版が使用される。つまり、この場合、電極構造の選定は、上記特性値に基づいて製版を選定することによりなされる。或いは、各パターンで同じ製版を用いて、印刷回数を異なるものとしてもよい。例えば、Aパターンの場合は、導電性ペーストを単層印刷し、Bパターンの場合は、導電性ペーストを多層印刷してもよい。また、導電性フィラーの含有量をBパターン>Aパターンとする場合、例えば、電極形成場所53では電極形成場所52よりも導電性フィラーの含有量が多い導電性ペーストが使用される。なお、各パターンの電極は、同じ場所で製版や電極材料、印刷条件等を切り替えて形成してもよい。
【0051】
続いて、上記工程(S13,S14)により製造された、電極構造が互いに異なる2種類の太陽電池11A,11Bをまとめてモジュール化する(S15)。太陽電池11A,11Bの個数比率は、例えば、11A:11B=9:1である。太陽電池モジュール10は、各構成部材を積層して熱圧着するラミネート工程を経て製造することができる。この場合、充填材14は、例えば、厚みが0.1mm〜1.0mm程度のフィルムの形態で供給される。複数の太陽電池11A,11Bは、配線材15により直列に接続される。これにより、複数の太陽電池11A,11Bが同一平面上に並んだストリングが作製される。配線材15は、例えば、フィルム状やペースト状の熱硬化性樹脂からなる接着材を用いて太陽電池11A,11Bの電極に取り付けることができる。
【0052】
ラミネート工程では、第1保護部材12上に充填材14を構成する第1の樹脂フィルムを積層し、第1の樹脂フィルム上に上記ストリングを積層する。さらに、ストリング上に充填材14を構成する第2の樹脂フィルムを積層し、その上に第2保護部材13を積層する。そして、各樹脂フィルムが溶融する温度で加熱しながら、第2保護部材13側から圧力を加えてラミネートする。こうして、ストリングが充填材14で封止された構造が得られる。最後に、フレーム17や端子ボックス等を取り付けて、太陽電池モジュール10が製造される。
【0053】
本工程では、光電変換部20を光電変換部20A,20Bの2つに分類したが、3つ以上に分類してもよい。即ち、選定対象となる電極構造が3つ以上存在してもよい。具体例としては、
図10に示すように、光電変換部20A,20Bに加えて、FF
0がFF
Cよりも大きな第2の閾値(以下、「FF
H」とする)を超える光電変換部20Cを設定する。光電変換部20Cについては、Cパターンで電極を形成する。Cパターンは、Aパターンよりも高抵抗な電極構造とする。例えば、Cパターンの電極構造は、Aパターンと比べて、電極厚みを小さくする、又は電極幅を細くする、又は電極本数を少なくする、又は導電性ペーストの含有量を少なくする、又はこれらを組み合わせることにより形成される。即ち、Cパターンでは、Aパターンよりも電極材料を低減することができる。FF
Hは、例えば、FF
0がFF
Cよりも大幅に大きなオーバースペックの光電変換部について、電極材料を低減してコストダウンを図るために設定される。例えば、光電変換部20の全個数うち、FF
0の高いものから10%程度が光電変換部20CとなるようにFF
Hを設定することができる。
【0054】
本工程では、FF
Cを閾値として電極構造を変更したが、閾値を設けずにFF
0が低くなるほど、抵抗の低い電極構造としてもよい。この場合、電極構造を変更しない範囲及び変更する範囲を複数設定して段階的に電極構造を変更してもよい。或いは、製造システム50に、FF
0と印刷条件とを関連付けた演算プログラムを記憶しておき、FF
0に応じて印刷条件を微調整してもよい。
【0055】
本工程では、FF
0のみに基づいて光電変換部20を振り分けて、光電変換部20A,20Bで電極構造を互いに変更したが、FF
0以外の特性値を用いて光電変換部20を振り分けてもよい。また、FF
0以外の特性値を用いて電極構造を決定してもよい。具体例としては、
図11に示すように、光電変換部20のシート抵抗R
0、短絡電流Iso
0、Voc
0に基づいて電極形成パターンを決定する。
【0056】
図11に示す例では、S10、S13、及びS15が
図8に示す例と同じであり、例えば、
図8に示すS12、S14をさらに備える。
図11に示す例では、S10で製造した光電変換部20の特性値として、FF
0,R
0,Iso
0,Voc
0を測定する(S11)。R
0は、従来公知の方法(例えば、四探針法)により測定できる。Iso
0は、光電変換部の反射率や厚みを測定し、それら測定値から推定することができる。
【0057】
続いて、FF
0と、FF
Cよりも大きな第2の閾値であるFF
Hとを比較して(S16)、FF
0がFF
Hを超える場合に、Aパターンから別のパターンへの変更を決定する(S17)。即ち、FF
0がFF
Hを超える場合に、Aパターンとは別のパターンを選定する。当該別のパターンは、例えば、Aパターンよりも高抵抗な上記Cパターンであり、Cパターンは、C1,C2・・・Cnパターンのように複数設定することができる。Cパターンへの変更が決定されると、R
0,Iso
0,Voc
0に基づいて、電極パターンをC1〜Cnパターンのいずれかを選択する(S18)。そして、決定されたパターンで電極を形成する(S19)。
【0058】
S18では、例えば、R
0が高いほど抵抗の低い電極パターンとし、Iso
0,Voc
0が低いほど抵抗の低い電極パターンとする。R
0,Iso
0,Voc
0は、電極パターンの選定において考慮する程度が同程度であってもよく、いずれかが重要視されてもよい。或いは、R
0,Iso
0,Voc
0のうち、1つ又は2つのみを用いてもよい。
【0059】
図11に示す例では、Cパターンへの変更が決定されるとC1〜Cnパターンのいずれかを選択したが、例えば、R
0に上限値を設定して、FF
0がFF
Hを超える場合であってもR
0が上限値を超える場合には、電極形成パターンをAパターンとしてもよい。即ち、Cパターンではシート抵抗が高くなり過ぎる場合等には、電極構造の変更を取り止めることができる。同様に、Iso
0,Voc
0に下限値を設定して、FF
0がFF
Hを超える場合であってもIso
0,Voc
0が下限値を超える場合には、電極形成パターンをAパターンとしてもよい。
【0060】
図12〜
図15に示すように、Txサイズに基づいて電極構造を選定することもできる。
図12及び
図13は、テクスチャ構造26A,26Bがそれぞれ形成された光電変換部20A,20B上に、製版60,70をそれぞれ用いて電極を形成する様子を示す。
【0061】
図12及び
図13に示す例では、テクスチャ構造26AのTxサイズ(以下、「TxサイズA」とする)が、テクスチャ構造26BのTxサイズ(以下、「TxサイズB」とする)よりも小さくなっている。Txサイズは、FF
0等と同様に所定の目標値となるようにエッチング条件等が設定されるが、当該条件の変動によりTxサイズにばらつきが発生する場合がある。そして、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法により電極を形成する場合、Txサイズに応じて光電変換部、製版、及び導電性ペーストの間の相互作用が変化し、通常、Txサイズが小さくなるほど光電変換部上に塗布される導電性ペーストの量が少なくなる傾向がある。また、Txサイズが小さくなるほど導電性ペーストのにじみ、即ち光電変換部上における導電性ペーストの広がりが低減されて電極幅が細くなる傾向がある。
【0062】
したがって、光電変換部のTxサイズを測定し、該測定値に基づいて製版を選定することが好適である。具体的には、Txサイズが小さいほど、導電性ペーストの塗布量が多くなる製版を選定する。つまり、光電変換部20Aを形成する場合には、光電変換部20Bの電極を形成する製版70よりも導電性ペーストの塗布量が多くなる製版60が使用される。
【0063】
製版60は、図示しない枠に張られたメッシュ61と、メッシュ61の網目を埋めて形成されるマスク材62とを備える。マスク材62は、例えば、感光性の乳剤を用いて構成され、目的とする電極パターンに対応する開口部63を残して形成されている。スクリーン印刷工程では、開口部63が形成された製版60上に導電性ペースト64(以下、「ペースト64」とする)を載せ、スキージ65を摺動させることにより、開口部63にペースト64を充填する。続いて、製版60のスキージ65が通り過ぎた部分が光電変換部20A上から離れるときに、開口部63からペースト64が吐出されて光電変換部20A上に転写される。
【0064】
製版70は、製版60と同じメッシュ61と、マスク材72とを備える。マスク材72は、マスク材62と異なったパターンで形成されている。具体的には、マスク材62,72の厚みt
62,t
72と、開口部63,73の開口幅w
63,w
73とが互いに異なり、厚みt
62>t
72、開口幅w
63>w
73である。これにより、製版60を用いた場合には、製版70を用いた場合に比べて、ペースト64の塗布性が高くなり、例えば、Txサイズのばらつきによる電極パターン変化を抑制することができる。製版60,70において、マスク材の厚み、開口幅の一方のみを変化させてもよいが、例えば、ペーストの塗布量と厚みとの関係は単純な比例関係にはないため、かかる関係を実験等により予め特定しておく必要がある。なお、Txサイズに応じて、メッシュのオープニングや線径が異なる製版を用いてもよい。
【0065】
また、Txサイズに応じて異なる導電性ペーストを用いてもよい。例えば、電極を構成する導電性フィラーとして、フレーク状フィラー及び球状フィラーを含有する導電性フィラーを用いることができ、Txサイズに基づいてフレーク状フィラー及び球状フィラーの含有率を選定してもよい。フレーク状フィラーとは、例えば、SEMにより観察したフィラーのアスペクト比(長径/短径)が1.5以上であるものを意味し、球状フィラーとは、アスペクト比が1.5未満のものを意味する。かかる選定の好適な例としては、Txサイズが小さくなるほど、球状フィラーの割合を多くフレーク状フィラーの割合を少なくすることである。これにより、テクスチャ構造の凹部に導電性フィラーが充填され易くなる。
【0066】
図14及び
図15は、特性値にTxサイズを含む場合の製造工程の一例を示す。
図14及び
図15では、太陽電池モジュールの製造工程については示していないが、例えば、上記の場合と同様に、本工程で製造される複数の太陽電池をまとめてモジュールを製造することができる。
【0067】
図14に示す例では、S20で製造した光電変換部20の特性値としてFF
0及びTxサイズを測定する(S21)。Txサイズは、上記のように、レーザーマイクロスコープ等を用いて測定することができる。テクスチャ構造は、例えば、複数の基板21をエッチング液が充填された処理層に浸漬して形成されるが、かかる処理単位毎に1つ又は幾つかの基板21についてTxサイズを測定してもよい。同様に、FF
0も全数測定に限定されない。
【0068】
S22では、FF
0及びTxサイズの両方をデータベースの規格値と比較する。そして、FF
0及びTxサイズが各々規格値を満たす場合には、電極パターンを上記Aパターンとし、いずれか一方が規格値を満たさない場合には、上記Bパターンとすることができる(S23,S24)。また、FF
0及びTxサイズに基づいて、両値を変数とする電極構造選定のための選定パラメータを導き、該パラメータと所定の規格値とを比較することもできる。かかる選定パラメータは、例えば、実験やシミュレーションにより求めることができる。或いは、FF
0に基づいて電極パターンを選定し、Txサイズを考慮して選定した電極パターンを形成するための製版を選定する構成としてもよい。
【0069】
図15に示す例では、S30で製造した光電変換部20の特性値としてTxサイズのみを測定する(S31)。続いて、測定したTxサイズと、データベースに予め記憶された規格値であるTxサイズの第1閾値及び第2閾値とを比較し(S32)、スクリーン印刷の製版を選定する(S33〜S35)。具体的には、Txサイズが第1閾値より大きな場合には製版70を選定し(S33)、Txサイズが第1閾値と第2閾値との間である場合には製版60を選定することができる(S34)。また、Txサイズが第2閾値より小さな場合には、例えば、製版60よりも開口幅が大きな製版Zを用いることができる(S35)。そして、各々の製版を用いて電極を形成することにより、いずれの光電変換部上にも厚みや幅が同程度の電極を形成することができる。
【0070】
以上のように、上記製造方法によれば、良好な出力特性を有する太陽電池11及び太陽電池モジュール10を、歩留まり良く製造することができる。
【0071】
上記製造方法では、例えば、FF
0が低い光電変換部20Bについて、FF
0が高い光電変換部20Aよりも、電極厚みを大きくする等して電極抵抗を小さくする。電極の形成により曲線因子は低下するが、上記製造方法によれば、光電変換部20Bを用いた場合の曲線因子の低下を、光電変換部20Aを用いた場合に比べて抑制できる。つまり、光電変換部の性能不良を電極構造により補填できる。これにより、例えば、不良品として廃棄される光電変換部を低減でき、歩留まりが向上する。また、太陽電池11及び太陽電池モジュール10の性能を向上させることができる。
【0072】
上記製造方法では、例えば、FF
0が大幅に高いオーバースペックの光電変換部20Cについて、光電変換部20Aよりも電極抵抗を大きくする。これにより、電極材料の使用量を低減することができ、例えば、太陽電池11及び太陽電池モジュール10のコストを低減することができる。