(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の非晶質化エネルギEwを有する非晶質化パルス光の照射によって、非晶質化される相変化記録層を有する記録媒体に対して光学的に情報処理を行う情報装置であって、
前記相変化記録層の所定領域にパルス光を照射する照射部と、
前記所定領域を結晶化するための結晶化エネルギEeを前記パルス光に対して設定するエネルギ設定部と、を備え、
前記エネルギ設定部は、前記結晶化エネルギEeを設定する結晶化エネルギ設定部と、前記非晶質化エネルギEwを設定する非晶質化エネルギ設定部と、を含み、
前記照射部は、前記所定領域に、前記結晶化エネルギEeを有する結晶化パルス光、又は、前記非晶質化エネルギEwを有する前記非晶質化パルス光を、前記パルス光として、選択的に照射し、
前記エネルギ設定部が設定する前記パルス光当たりの前記結晶化エネルギEeは、前記非晶質化パルス光当たりの前記非晶質化エネルギEwよりも大きく、
前記所定領域は、結晶化温度Txと、融点Tmと、によって規定される温度特性を有し、
前記結晶化温度Tx以上且つ前記融点Tm以下の温度範囲において、前記所定領域が結晶化するのに必要とされる最短期間は、期間tcであり、
前記結晶化エネルギ設定部によって設定される前記結晶化パルス光のパルス幅dT1は、前記期間tcよりも短いことを特徴とする情報装置。
前記パルス幅dT1の前記結晶化パルス光の照射の下、前記所定領域が前記融点Tmよりも高い温度Tmaxになるように、前記結晶化エネルギ設定部は、前記結晶化パルス光の結晶化パワーPeを設定し、
前記所定領域が前記温度Tmaxから冷却される間において、前記所定領域が前記温度範囲にある期間Δtが、前記期間tc以上となることを特徴とする請求項1に記載の情報装置。
前記相変化記録層は、Ge−Sb、Ge−Sn−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Bi−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Sn−Bi−Sb−Teのいずれかで表されることを特徴とする請求項10に記載の情報装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
記録媒体が有する相変化記録層を局所的に結晶化し、光学的な情報処理を行うための様々な相変化技術が図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、相変化技術の概念の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、単に本実施形態の原理を容易に理解させることを目的とする。したがって、本実施形態の原理は、これらに何ら限定されるものではない。
【0024】
<第1実施形態>
(非晶質化工程)
図1は、非晶質化工程を受ける記録媒体100の概略的な断面図である。
図1を参照して、非晶質化工程が説明される。本実施形態において、非晶質化工程は、記録媒体100に対して情報を記録するために用いられる。代替的に、非晶質化工程は、記録媒体100に記録された情報を消去するために用いられてもよい。記録媒体100に対する情報の記録及び消去は、光学的な情報処理として例示される。
【0025】
記録媒体100は、基板110と、第1保護層120と、相変化記録層(以下、記録層130と称される)と、第2保護層140と、を備える。第1保護層120は、基板110上に積層される。記録層130は、第1保護層120上に積層される。第2保護層140は、記録層130上に積層される。第1保護層120及び第2保護層140は、誘電体から形成される。
図1に示される記録層130中に示される領域ARは、非晶質化工程によって非晶質化されている。領域ARを除く記録層130の領域は、結晶質である。
【0026】
非晶質化工程において、非晶質化パルス光APLが第2保護層140に照射される。非晶質化パルス光APLは、第2保護層140中を伝搬し、記録層130に至る。この結果、記録層130は、局所的に非晶質化される。
【0027】
本実施形態において、記録層130は、第1保護層120と第2保護層140との間に介挿されている。第1保護層120及び第2保護層140によって、記録層130は、酸化しにくくなる。したがって、記録層130中の記録状態(非晶質化された状態)及び消去状態(結晶化された状態)は安定的に維持される。第1保護層120及び第2保護層140に使用され得る誘電体材料のうち特定の材料は、第1保護層120と記録層130との間の界面及び/又は第2保護層140と記録層130との間の界面において、結晶核の生成を促す。即ち、第1保護層120及び/又は第2保護層140を用いて、記録層130の結晶化が促されることもある。尚、記録層130は、第1保護層120及び第2保護層140のうち一方にのみ覆われてもよい。
【0028】
記録層130は、Ge、Sb、Te、Bi及びSnの群から選択される元素を含んでもよい。好ましい記録層130として、Ge−Sb、Ge−Sn−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Bi−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Sn−Bi−Sb−Teで表される材料層が例示される。記録層130がこれらの化学的組成を有するならば、記録層130の結晶化速度が向上する。したがって、記録層130の相変化を利用して、情報の記録及び消去が高速で行われることとなる。
【0029】
図2は、
図1に示される非晶質化パルス光APLを表す概略的なグラフである。
図1及び
図2を参照して、非晶質化パルス光APLが説明される。
【0030】
非晶質化パルス光APLは、単一パルス光である。本実施形態において、非晶質化パルス光APLのパルス幅dT2は、1ns以下に設定される。この結果、情報は、記録媒体100に、高速で記録されることとなる。
【0031】
高密度な記録の達成のために、小さな光スポット径及び薄い記録層130が要求される。本実施形態において、非晶質化パルス光APLのスポット径φは、1μm以下に設定される。また、記録層130の厚さは、20nm以下に設定される。記録層130の厚さが20nm以下に設定されるならば、相状態(結晶状態又は非結晶状態)は、厚さ方向に略均一となる。したがって、記録状態及び消去状態が安定的に保たれることとなる。
【0032】
図1に示される如く、非晶質化パルス光APLは、非晶質化エネルギEwを有する。
図2に示される如く、非晶質化パルス光APLは、非晶質化パワーPwを有する。非晶質化エネルギEw(単位:J)は、パルス幅dT2(単位:s)と非晶質化パワーPw(単位:W)との積で与えられてもよい。非晶質化エネルギEwが第2保護層140を介して記録層130に伝達され、記録層130は、局所的に非晶質化される。本実施形態において、「非晶質化エネルギEw」との用語は、単一パルス光当たりのエネルギを意味する。
【0033】
(結晶化工程)
図3は、非晶質化工程の後に結晶化工程を受ける記録媒体100の概略的な断面図である。
図3を参照して、結晶化工程が説明される。本実施形態において、結晶化工程は、記録媒体100から情報を消去するために用いられる。代替的に、結晶化工程は、記録媒体100に情報を記録するために用いられてもよい。
【0034】
図3に示される記録層130は、上述の非晶質化工程によって非晶質化された2つの領域ARを含んでいる。
図3に示される結晶化工程において、右側の領域ARが結晶化される。このため、結晶化パルス光CPLは、右側の領域ARに向けて照射されている。尚、結晶化パルス光CPLのスポット径は、非晶質化パルス光APLと同様に、1μm以下に設定される。
【0035】
図4A及び
図4Bは、結晶化パルス光CPLを例示するグラフである。
図3乃至
図4Bを参照して、結晶化パルス光CPLが説明される。
【0036】
非晶質化パルス光APLと同様に、結晶化パルス光CPLは、単一パルス光である。
図3に示される如く、結晶化パルス光CPLは、結晶化エネルギEeを有する。結晶化エネルギEeは、非晶質化エネルギEwよりも大きく設定される。本実施形態において、「結晶化エネルギEe」との用語は、単一パルス光当たりのエネルギを意味する。
【0037】
図4Aに示される如く、結晶化パルス光CPLのパルス幅dT1が、非晶質化パルス光APLのパルス幅dT2に等しいならば、結晶化パルス光CPLが有する結晶化パワーPeは、非晶質化パルス光APLの非晶質化パワーPwよりも大きく設定される。
図4Bに示される如く、結晶化パワーPeが、非晶質化パワーPwに等しいならば、パルス幅dT1は、パルス幅dT2よりも大きく設定される。代替的に、パルス幅dT1と結晶化パワーPeとの積が、パルス幅dT2と非晶質化パワーPwとの積よりも大きくなるように、パルス幅dT1及び結晶化パワーPeの数値的な組み合わせが設定されてもよい。尚、本実施形態において、パルス幅dT1は、1ns以下に設定される。
【0038】
以下の数式1は、本実施形態に用いられるエネルギの関係を表す。
【0040】
以下の数式2は、従来技術(上述の非特許文献1及び2を参照)に用いられているエネルギの関係を表す。
【0042】
上述の数式2で表されるエネルギの関係の下では、小さなスポット径の単一パルス光を用いて、薄い記録層(或いは、互いに独立した複数の微小領域に分割された記録層)の非晶質化領域を結晶化することは困難である。一方、上述の数式1で表されるエネルギの関係の下では、小さなスポット径の単一パルス光を用いて、薄い記録層の非晶質化領域を適切に結晶化することができる。
【0043】
(相変化の原理)
図5は、上述の数式2に表されるエネルギの関係式の下での相変化の原理を表す概略的なグラフである。
図5を参照して、従来技術において用いられている相変化の原理が説明される。
【0044】
図5のグラフの横軸は、時間を表す。
図5の縦軸は、相変化記録層(以下、記録層と称される)の温度を表す。
図5のグラフ中の曲線C1は、結晶化工程における記録層の温度の時間変化を表す。
図5のグラフ中の曲線C2は、非晶質化工程における記録層の温度の時間変化を表す。
【0045】
図5に示される記号「Tx」は、記録層の結晶化温度を表す。
図5に示される記号「Tm」は、記録層の融点を表す。記録層は、結晶化温度Tx及び融点Tmで規定される温度特性を有する。
図5に示される記号「Δt」は、結晶化温度Tx以上融点Tm以下の温度範囲に記録層の温度が保たれている期間を表す。
図5に示される記号「tc」は、結晶化温度Tx以上融点Tm以下の温度範囲において、記録層が結晶化するのに必要とされる最短期間を表す。記号「Tmax」は、相変化工程(結晶化工程及び非晶質化工程)における温度変化中のピーク温度を意味する。これらの記号に対する定義は、以下の説明において共通に用いられる。
【0046】
従来技術において、記録層は、比較的厚い。また、記録層に相変化を生じさせるための単一パルス光の光スポット径は、比較的大きい。この場合、曲線C1で示される如く、期間Δtが、期間tcより長いならば、記録層は結晶化される。即ち、以下の数式3で表される関係が満たされるならば、記録層は結晶化されることとなる。
【0048】
曲線C2で示される如く、記録層が温度Tmaxに到達した後の冷却期間における期間Δtが、期間tcよりも短いならば、記録層は非晶質化される。即ち、以下の数式4で表される関係が満たされるならば、記録層は非晶質化されることとなる。
【0050】
図6は、比較的薄い記録層に対して、小さな光スポット径を有する単一パルス光を照射したときの記録層の温度の時間変化を概略的に表すグラフである。
図6を参照して、薄い記録層の温度の時間変化が説明される。
【0051】
図6のグラフ中、曲線C1は、上述の数式3に示される第1条件式(Tx<Tmax<Tm)を満たしている。しかしながら、薄い記録層の冷却速度は比較的高いので、数式3の第2条件式(Δt>tc)は、満足されにくい。したがって、曲線C1に示されるように、記録層が薄くなるほど、期間Δtは、期間tcよりも短くなりやすくなる(Δt<tc)。
【0052】
図6のグラフ中、曲線C2は、上述の数式4の関係を満たしている。融点Tmよりも高い温度Tmaxが適切に定められるならば、数式4に示される第2条件式(Δt<tc)は容易に満足される。したがって、薄い記録層に対する非晶質化は、従来技術に用いられたエネルギの関係式に基づいて達成される。
【0053】
図6のグラフ中、曲線C3は、上述の数式1に示される関係に基づいて得られる記録層の温度変化を表す。数式1に示される関係が満足されるので、曲線C3によって表される温度Tmaxは、曲線C2によって表される温度Tmaxよりも高くなる。曲線C3によって表される温度Tmaxが高くなるにつれて、期間Δtは長くなる。したがって、上述の数式3の第2条件式(Δt>tc)の関係は満たされやすくなる。数式3の第2条件式(Δt>tc)の関係が満たされるならば、記録層は適切に結晶化される。
【0054】
図7Aは、記録層に照射される単一パルス光と記録層の温度変化とを概略的に表すグラフである。
図4A及び
図7Aを参照して、記録層に照射されるパルス光と記録層の温度変化との関係が説明される。
【0055】
図7Aの上側のグラフは、非晶質化パルス光APLと結晶化パルス光CPLとを示す。非晶質化パルス光APLと結晶化パルス光CPLとの間の関係は、
図4Aを参照して説明された関係に相当する。即ち、結晶化パルス光CPLのパルス幅dT1は、非晶質化パルス光APLのパルス幅dT2に等しく設定される一方で、結晶化パルス光CPLの結晶化パワーPeは、非晶質化パルス光APLの非晶質化パワーPwよりも大きく設定されている。この結果、上述の数式1で表される関係(Ee>Ew)は満足される。尚、パルス幅dT1,dT2は、期間tcよりも短く設定される。
【0056】
図7Aの下側のグラフは、非晶質化パルス光APLが記録層の所定領域に照射されたときにおける当該所定領域の温度変化並びに結晶化パルス光CPLが記録層の所定領域に照射されたときにおける当該所定領域の温度変化を表す。非晶質化パルス光APLが照射されると、記録層の所定領域は、融点Tmよりも高い温度Tmax(A)まで昇温される。その後、記録層の所定領域は冷却される(冷却プロセス)。冷却プロセスにおいて、期間Δtが期間tcよりも小さくなるように、非晶質化パワーPw及びパルス幅dT2は設定される。この結果、記録層の所定領域は、非晶質化される。結晶化パルス光CPLが照射されると、記録層の所定領域は、温度Tmax(A)よりも高い温度Tmax(C)まで昇温される。その後、記録層の所定領域は冷却される(冷却プロセス)。冷却プロセスにおいて、期間Δtが期間tcよりも長くなるように、結晶化パワーPeは設定される。この結果、記録層の所定領域は、結晶化される。
【0057】
図7Bは、記録層に照射される単一パルス光と記録層の温度変化とを概略的に表すグラフである。
図7Bを参照して、記録層に照射されるパルス光と記録層の温度変化との関係が説明される。
【0058】
図7Bの上側のグラフは、非晶質化パルス光APLと結晶化パルス光CPLとを示す。結晶化パルス光CPLのパルス幅dT1は、非晶質化パルス光APLのパルス幅dT2より長く設定される。結晶化パルス光CPLの結晶化パワーPeは、非晶質化パルス光APLの非晶質化パワーPw以下に設定されている。パルス幅dT1,dT2、結晶化パワーPe並びに非晶質化パワーPwの値は、数式1で表される関係(Ee>Ew)が満足されるように定められる。尚、パルス幅dT1,dT2は、期間tcよりも短く設定される。
【0059】
図7Bの下側のグラフは、非晶質化パルス光APLが記録層の所定領域に照射されたときにおける当該所定領域の温度変化並びに結晶化パルス光CPLが記録層の所定領域に照射されたときにおける当該所定領域の温度変化を表す。非晶質化パルス光APLが照射されると、記録層の所定領域は、融点Tmよりも高い温度Tmax(A)まで昇温される。その後、記録層の所定領域は冷却される(冷却プロセス)。冷却プロセスにおいて、期間Δtが期間tcよりも小さくなるように、非晶質化パワーPw及びパルス幅dT2は設定される。この結果、記録層の所定領域は、非晶質化される。結晶化パルス光CPLが照射されると、記録層の所定領域は、温度Tmax(A)よりも高い温度Tmax(C)まで昇温される。その後、記録層の所定領域は冷却される(冷却プロセス)。冷却プロセスにおいて、期間Δtが期間tcよりも長くなるように、結晶化パワーPe及びパルス幅dT1は設定される。この結果、記録層の所定領域は、結晶化される。
【0060】
(相変化方法)
図8Aは、非晶質化工程の概略的なフローチャートである。
図7A乃至
図8Aを参照して、非晶質化工程が説明される。
【0061】
(ステップS110)
記録媒体中において、非晶質化工程を受ける対象領域が決定されると、ステップS110が実行される。尚、対象領域は、結晶状態にある所定領域である。
【0062】
ステップS110において、非晶質化エネルギEwが決定される。本実施形態において、非晶質化エネルギEwを決定するパラメータとして、非晶質化パルス光APLのパルス幅dT2及び非晶質化パワーPwが用いられる。非晶質化エネルギEwは、対象領域の温度が、記録層の融点Tmを超えて上昇するように定められる。加えて、対象領域の昇温の後の冷却期間において、対象領域の温度が結晶化温度Tx以上且つ融点Tm以下の範囲に存する期間Δtが、期間tcよりも短くなるように、非晶質化エネルギEwが決定される。尚、非晶質化エネルギEwを決定するために、期間tcよりも短い非晶質化パルス光APLのパルス幅dT2が用いられる。非晶質化エネルギEwが決定されると、ステップS120が実行される。
【0063】
(ステップS120)
ステップS120において、非晶質化パルス光APLが照射される。非晶質化パルス光APLは、ステップS110によって決定された非晶質化エネルギEwを有する。ステップS120において、対象領域の近くに配置された散乱体が利用されてもよい。この場合、対象領域と散乱体との間でプラズモン共鳴が引き起こされるように、光が散乱体に照射される。この結果、散乱体から出射される近接場光が得られる。非晶質化パルス光APLは、散乱体から出射される近接場光であってもよい。
【0064】
非晶質化パルス光APLによって、対象領域は、融点Tmを超えた温度Tmax(A)まで急速に昇温する。その後、対象領域の温度は、低下する。ステップS110によって、非晶質化エネルギEwは、適切に設定されているので、対象領域の温度が結晶化温度Tx以上且つ融点Tm以下の範囲に存する期間Δtは、期間tcよりも短くなる。したがって、対象領域は非晶質化される。
【0065】
図8Bは、結晶化工程の概略的なフローチャートである。
図7A乃至
図8Bを参照して、結晶化工程が説明される。
【0066】
(ステップS210)
記録媒体中において、結晶化工程を受ける対象領域が決定されると、ステップS210が実行される。尚、対象領域は、非結晶状態にある所定領域である。
【0067】
ステップS210において、結晶化エネルギEeが決定される。本実施形態において、結晶化エネルギEeを決定するパラメータとして、結晶化パルス光CPLのパルス幅dT1及び結晶化パワーPeが用いられる。結晶化エネルギEeは、対象領域の温度が、ステップS120において対象領域が到達する温度Tmax(A)を超えて上昇するように定められる。加えて、対象領域の昇温の後の冷却期間において、対象領域の温度が結晶化温度Tx以上且つ融点Tm以下の範囲に存する期間Δtが、期間tcよりも長くなるように、結晶化エネルギEeが決定される。ステップS210において設定される結晶化エネルギEeは、ステップS110において設定される非晶質化エネルギEwよりも大きい。尚、結晶化エネルギEeを決定するためのパラメータとして用いられる結晶化パワーPeは、ステップS110において設定された非晶質化パワーPwよりも大きくてもよい。代替的に、結晶化エネルギEeを決定するためのパラメータとして用いられる結晶化パワーPeは、ステップS110において設定された非晶質化パワーPwよりも小さくてもよい。この場合、結晶化パルス光CPLのパルス幅dT1は、ステップS110において設定されたパルス幅dT2よりも長く設定される。結晶化エネルギEeを決定するために、期間tcよりも短い結晶化パルス光CPLのパルス幅dT1が用いられる。結晶化エネルギEeが決定されると、ステップS220が実行される。本実施形態において、ステップS210は、設定工程として例示される。
【0068】
(ステップS220)
ステップS220において、結晶化パルス光CPLが照射される。結晶化パルス光CPLは、ステップS210によって決定された結晶化エネルギEeを有する。ステップS220において、対象領域の近くに配置された散乱体が利用されてもよい。この場合、対象領域と散乱体との間でプラズモン共鳴が引き起こされるように、光が散乱体に照射される。この結果、散乱体から出射される近接場光が得られる。結晶化パルス光CPLは、散乱体から出射される近接場光であってもよい。本実施形態において、ステップS220は、照射工程として例示される。
【0069】
結晶化パルス光CPLによって、対象領域は、ステップS120において到達した温度Tmax(A)を超えた温度Tmax(A)まで急速に昇温する。その後、対象領域の温度は、低下する。ステップS210によって、結晶化エネルギEeは、適切に設定されているので、対象領域の温度が結晶化温度Tx以上且つ融点Tm以下の範囲に存する期間Δtは、期間tcよりも長くなる。したがって、対象領域は結晶化される。
【0070】
本実施形態の相変化方法によれば、小さなスポット径を有する単一パルス光を用いて、非常に薄い記録層の相変化が達成される。記録層の所定領域の結晶化及び非晶質化は短時間で行われるので、光学的な情報処理(情報の記録及び消去)が高速に行われる。記録媒体中の非晶質化領域において、情報が記録され、且つ、
図8Bを参照して説明された結晶化技術が非晶質化領域に適用されるならば、非晶質化領域の情報は高速に消去される。したがって、高密度な記録媒体に記録された情報は、高速に消去される。
【0071】
(パルス光)
本実施形態の原理は、様々な波形の単一パルス光の使用を許容する。
【0072】
図9A乃至
図9Cは、様々な波形の単一パルス光を表す。上述された相変化技術は、
図9A乃至
図9Cに示される波形の単一パルス光を採用してもよい。
【0073】
図9Aは、三角波形を有する単一パルス光を概略的に示す。結晶化エネルギEe及び非晶質化エネルギEwは、単一パルス光の三角波形と時間軸とによって囲まれるハッチング領域の面積として定義されてもよい。
【0074】
図9Bは、階段状の波形を有する単一パルス光を概略的に示す。結晶化エネルギEe及び非晶質化エネルギEwは、単一パルス光の階段状の波形と時間軸とによって囲まれるハッチング領域の面積として定義されてもよい。
【0075】
図9Cは、時間的に変動しない直流成分(
図9C中、記号「DC」で表される)を含む単一パルス光を概略的に示す。直流成分が単一パルス光に含まれていても、結晶化エネルギEe及び非晶質化エネルギEwは、単一パルス光のパワーとパルス幅との積として定義されてもよい。
図9Cにおいて、結晶化エネルギEe及び非晶質化エネルギEwとして表される概念として、ハッチング領域が示されている。
【0076】
<第2実施形態>
第1実施形態に関連して説明された記録層130(
図1参照)は、記録媒体100に亘って一様に広がっている。上述の如く、非晶質化パルス光APLの照射によって、記録層130は、局所的に昇温される。このとき、非晶質化パルス光APLの光スポットの周囲にも熱が伝達される(熱拡散)。熱拡散の結果、記録層130に形成される記録マーク(非晶質化領域)は、拡大する。高い記録密度が要求されるならば、記録マークの拡大は無視されるべきではない。本実施形態において、小さな記録マーク(例えば、100nm以下の長径)を略均一に形成する技術が説明される。
【0077】
(記録媒体)
図10は、記録媒体200の概略的な断面図である。
図10を参照して、小さな記録マークを略均一に形成する技術が説明される。尚、第1実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、第1実施形態の説明が援用される。
【0078】
記録媒体200は、第1実施形態に関連して説明された基板110に加えて、基板110上に積層された保護層220と、保護層220中に分散して配置された多数の相変化材料230と、を備える。本実施形態において、多数の相変化材料230を含む保護層220は、相変化記録層として例示される。
【0079】
保護層220に用いられる誘電体材料は、平坦な基板110上に均一に積層されてもよい。その後、均一に積層された誘電体材料の層上に相変化材料230が配置されてもよい。その後、誘電体材料が再度積層され、相変化材料230が誘電体材料によって覆われてもよい。この結果、相変化材料230によって隆起された多数の微小領域250が記録媒体200の上面(記録面)に形成される。微小領域250の長径は、100nm以下である。多数の微小領域250は、互いに分離或いは独立している。
【0080】
図10には、記録媒体200に加えて、出射部260及び散乱体270が示されている。出射部260は、出射光ELを出射する光源261と、出射光ELを散乱体270へ導く導光部262と、を含む。光源261として、レーザ光を出射するレーザ光源や、散乱体270と記録媒体200との間でプラズモン共鳴を引き起こすことができる光を出射することができる他の光学素子が例示される。導光部262は、散乱体270に集光することができる集光素子(例えば、対物レンズ、SILレンズや導波路)であってもよい。散乱体270は、多数の微小領域250のうち1つ(
図10中、符号「250T」が付されている)に近接して配置される。出射光ELが散乱体270に照射されると、散乱体270と微小領域250Tとの間でプラズモン共鳴が発生する。この結果、散乱体270から近接場光NFLが出射される。本実施形態において、近接場光NFLは、第1実施形態に関連して説明された非晶質化パルス光として用いられる。加えて、近接場光NFLは、第1実施形態に関連して説明された結晶化パルス光として用いられてもよい。本実施形態において、微小領域250Tは、所定領域として例示される。
【0081】
非晶質化パルス光及び/又は結晶化パルス光として、近接場光NFLが用いられるならば、光スポット径は、回折限界の制限を受けない。したがって、微小領域250ごとに分離された相変化材料230それぞれは、適切に照光される。
【0082】
非晶質化パルス光及び/又は結晶化パルス光として、近接場光NFLが用いられるならば、相変化材料230上に積層される誘電体材料の層の厚さは、10nm以下であることが好ましい。当該寸法条件の下、十分な量の近接場光NFLが、相変化材料230に到達するので、相変化材料230の相変化が適切に引き起こされる。この結果、記録媒体200への情報の記録及び記録媒体200からの情報の消去が適切に行われる。
【0083】
近接場光NFLの照射によって、微小領域250Tは昇温される。微小領域250Tは、隣接する微小領域250から離間しているので、微小領域250Tから他の微小領域250への熱伝達量は非常に小さい。したがって、記録マークは、微小領域250T内で形成されることとなる。したがって、記録媒体200は、高密度の記録を可能にする。加えて、微小領域250間の熱伝達に対する制限の結果、記録媒体200からの情報の消去も正確に行われることとなる。
【0084】
図11は、記録媒体300の概略的な断面図である。
図11を参照して、小さな記録マークを略均一に形成する技術が説明される。尚、
図10に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、
図10に関連する説明が援用される。
【0085】
記録媒体300は、基板310と、記録層330と、保護層340と、を備える。基板310は、多数の突部311を含む。多数の突部311は、互いに分離独立している。記録層330に用いられる相変化材料は、突部311が形成された基板310の上面に積層される。その後、保護層340に用いられる誘電体材料が更に記録層330上に積層される。この結果、突部311、突部311上に積層された記録層330並びに保護層340は、互いに分離独立した多数の微小領域350を形成する。微小領域350の長径は、100nm以下である。尚、
図11において、多数の微小領域350のうち1つに記号「350T」が付されている。
【0086】
図11において、散乱体270は、微小領域350Tに近接している。出射光ELが散乱体270に照射されると、散乱体270と微小領域350Tとの間でプラズモン共鳴が発生する。この結果、散乱体270から近接場光NFLが出射される。本実施形態において、近接場光NFLは、第1実施形態に関連して説明された非晶質化パルス光として用いられる。加えて、近接場光NFLは、第1実施形態に関連して説明された結晶化パルス光として用いられてもよい。
【0087】
非晶質化パルス光及び/又は結晶化パルス光として、近接場光NFLが用いられるならば、光スポット径は、回折限界の制限を受けない。したがって、微小領域350ごとに分離された記録層330それぞれは、適切に照光される。
【0088】
非晶質化パルス光及び/又は結晶化パルス光として、近接場光NFLが用いられるならば、記録層330上に積層される誘電体材料の層の厚さは、10nm以下であることが好ましい。当該寸法条件の下、十分な量の近接場光NFLが、記録層330に到達するので、記録層330の相変化が適切に引き起こされる。この結果、記録媒体300への情報の記録及び記録媒体300からの情報の消去が適切に行われる。
【0089】
近接場光NFLの照射によって、微小領域350Tは昇温される。微小領域350Tは、隣接する微小領域350から離間しているので、微小領域350Tから他の微小領域350への熱伝達量は非常に小さい。したがって、記録マークは、微小領域350T内で形成されることとなる。したがって、記録媒体300は、高密度の記録を可能にする。加えて、微小領域350間の熱伝達に対する制限の結果、記録媒体300からの情報の消去も正確に行われることとなる。
【0091】
本実施形態において、微小領域250T,350Tを仕切る空隙は、熱拡散を生じさせにくくするので、昇温が生ずる体積は非常に小さくなる。この結果、単一パルス光の照射の後、微小領域250T,350Tの温度は、急激に下がる。結晶化エネルギEeが、非晶質化エネルギEwよりも低く設定されるならば、
図6の曲線C1に示されるように、期間Δtは、期間tcよりも短くなりやすい。
図6に関連して説明された如く、この場合、適切な結晶化は得られない。
【0092】
図8Bに関連して説明された結晶化技術に従って、結晶化エネルギEeが非晶質化エネルギEwよりも高く設定されるならば、
図6の曲線C3によって示される温度変化が得られる。この結果、適切な結晶化が得られることとなる。したがって、記録媒体200,300に対して、第1実施形態に関連して説明された結晶化技術は、好適に適用される。
【0093】
本実施形態に示された様々な記録媒体200,300は、互いに独立した微小領域250,350を含む。第1実施形態に関連して説明された結晶化処理の対象となる所定領域は、本実施形態において、微小領域250,350に対応する。
図8Bに関連して説明されたステップS210において、微小領域250,350に与えられる結晶化エネルギEeは、非晶質化エネルギEwよりも高く設定される。
【0094】
微小領域250,350が結晶状態であるならば、
図8Aに関連して説明されたステップS120での非晶質化パルス光の照射によって、微小領域250,350は非晶質化される。その後、
図8Bに関連して説明されたステップS220が実行され、結晶化パルス光が微小領域250,350に照射されるならば、微小領域250,350は、適切に結晶化される。尚、上述の如く、結晶化パルス光の結晶化エネルギEeは、非晶質化パルス光の非晶質化エネルギEwよりも大きい。
【0095】
本実施形態において、結晶化パルス光及び非晶質化パルス光のスポット径は、微小領域250,350に合わせて、小さく設定されてもよい。また、相変化材料230又は記録層330は、非常に薄く形成されてもよい。この結果、結晶化は、高速に行われることとなる。
【0096】
<第3実施形態>
(情報装置)
図12は、情報装置400の概略図である。
図3、
図7A、
図7B、
図8B、
図10乃至
図12を参照して、情報装置400が説明される。第1実施形態又は第2実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、第1実施形態又は第2実施形態の説明が援用される。
【0097】
情報装置400は、記録媒体410とともに用いられる。尚、記録媒体410は、第1実施形態及び第2実施形態に関連して説明された記録媒体100,200,300のうちいずれか1つであってもよい。
【0098】
記録媒体410は、非晶質化エネルギEwを有する非晶質化パルス光を用いて非晶質化された領域を含んでいる。非晶質化された領域には、情報が記録されている。情報装置400は、結晶化パルス光CPLを記録媒体410に照射し、非晶質化された領域を結晶化する。この結果、非晶質化された領域に記録された情報が消去される。本実施形態において、結晶化パルス光CPLは、情報の消去に用いられる。代替的に、結晶化パルス光CPLは、記録媒体410への情報の記録に用いられてもよい。
【0099】
情報装置400は、記録媒体410を回転させるモータ420と、結晶化パルス光CPLを記録媒体410に照射する照射部430と、結晶化パルス光CPLのエネルギを設定するエネルギ設定部440と、を備える。照射部430は、第2実施形態に関連して説明された出射部260と、散乱体270と、を含む。したがって、第2実施形態と同様に、記録媒体410に照射される結晶化パルス光CPLは、近接場光NFLである。
【0100】
情報装置400は、
図8Bに関連して説明された手順に従って、結晶化パルス光CPLを出射する。
【0101】
ステップS210において、エネルギ設定部440は、非晶質化された領域を結晶化するための結晶化エネルギEeを結晶化パルス光CPLに対して設定する。
図8Bに関連して説明された如く、ステップS210において、非晶質化エネルギEwよりも大きな結晶化エネルギEeが設定される。結晶化エネルギEeが設定されると、エネルギ設定部440は、設定された結晶化エネルギEeに関する情報を含む制御信号を照射部430に出力する。
【0102】
ステップS220において、照射部430は、エネルギ設定部440から送られた制御信号に応じて、近接場光NFLを生成する。照射部430は、制御信号に応じて、出射部260から出射される出射光ELの強度を調整する。散乱体270が非晶質化された領域に近接すると同時に、照射部430は、近接場光NFLを用いて生成された単一パルス光を照射する。この結果、単一パルス光は、非晶質化された領域に照射される。単一パルス光は、ステップS210において設定された結晶化エネルギEeを有する結晶化パルス光CPLであるので、非晶質化された領域は、適切に結晶化される。本実施形態において、記録媒体410の非晶質化された領域は、所定領域として例示される。
【0103】
図7A及び
図7Bを参照して説明された如く、ステップS210において、非晶質化エネルギEwよりも大きな結晶化エネルギEeが設定されるので、結晶化パルス光CPLが照射された領域は、融点Tmを上回る温度Tmax(C)まで昇温される。その後、結晶化パルス光CPLの照射領域は、冷却される。照射領域の温度が融点Tmから結晶化温度Txまで下がるのに、照射領域が結晶化するために必要な期間tc以上かかる。
【0104】
図7A及び
図7Bを参照して説明された如く、エネルギ設定部440は、期間tcより短いパルス幅dT1を設定する。また、照射領域が融点Tmを上回り、且つ、照射領域の温度が融点Tmから結晶化温度Txまで下がるのに、照射領域が結晶化するために必要な期間tc以上かかるように、エネルギ設定部440は、パルス幅dT1を考慮して、結晶化パワーPeを設定してもよい。
【0105】
<第4実施形態>
(情報装置)
図13は、情報装置400Aの概略図である。
図7A乃至
図8B並びに
図13を参照して、情報装置400Aが説明される。第3実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、第3実施形態の説明が援用される。
【0106】
情報装置400Aは、第3実施形態に関連して説明されたモータ420及び照射部430に加えて、エネルギ設定部440Aとデータ生成部450とを備える。エネルギ設定部440Aは、結晶化エネルギ設定部441と、非晶質化エネルギ設定部442と、を含む。
【0107】
データ生成部450は、記録媒体410に記録されるデータを生成する。データは、データ生成部450からエネルギ設定部440Aへ出力される。エネルギ設定部440Aは、データ生成部450からのデータに応じて、散乱体270からの近接場光NFLの出射タイミング及び近接場光NFLのエネルギに関する情報を含む制御信号を生成する。制御信号は、エネルギ設定部440Aから照射部430へ出力される。
【0108】
照射部430は、制御信号に応じて、出射部260を制御し、出射部260からの出射光ELの出射タイミング及び出射光ELの強度を調整する。散乱体270は、出射部260からの出射光ELを受け、近接場光NFLを記録媒体410に照射する。尚、照射部430は、近接場光NFLを用いて、単一パルス光を生成する。
【0109】
本実施形態において、記録媒体410上の情報が消去されるとき、エネルギ設定部440Aは、結晶化エネルギ設定部441を用いて、結晶化エネルギEeを設定する。記録媒体410へ情報を記録するとき、エネルギ設定部440Aは、非晶質化エネルギ設定部442を用いて、非晶質化エネルギEwを設定する。結晶化エネルギ設定部441によって設定された結晶化エネルギEeを有する近接場光NFLは、結晶化パルス光CPLとして用いられる。非晶質化エネルギ設定部442によって設定された非晶質化エネルギEwを有する近接場光NFLは、非晶質化パルス光APLとして用いられる。照射部430は、結晶化パルス光CPL及び非晶質化パルス光APLをデータ生成部450からのデータに応じて選択的に照射することができるので、情報装置400Aは、記録媒体410に対してオーバーライト処理を好適に行うことができる。
【0110】
本実施形態において、非晶質化パルス光APLは、記録媒体410へ情報を記録するために用いられる。代替的に、非晶質化パルス光APLは、記録媒体410から情報を消去するために用いられてもよい。
【0111】
本実施形態において、結晶化パルス光CPLは、記録媒体410から情報を消去するために用いられる。代替的に、結晶化パルス光CPLは、記録媒体410へ情報を記録するために用いられてもよい。
【0112】
非晶質化エネルギ設定部442は、
図8Aに関連して説明されたステップS110において、非晶質化パルス光APLの非晶質化エネルギEwを設定する。非晶質化エネルギ設定部442は、近接場光NFLの照射領域が結晶化するのに必要な期間tcよりも短いパルス幅dT2を設定してもよい。また、照射領域が、融点Tmを超えて昇温され、且つ、照射領域の温度が融点Tmから結晶化温度Txまで下がるのに期間tcよりも短い期間を要するように、非晶質化エネルギ設定部442は、パルス幅dT2を考慮して、非晶質化パワーPwを設定してもよい。
【0113】
図8Aに関連して説明されたステップS120において、照射部430は、非晶質化パルス光APLとして近接場光NFLを照射する。この結果、照射領域は、温度Tmax(A)まで昇温される。その後、照射領域は、冷却される。照射領域の温度が、融点Tmから結晶化温度Txまで低下するのに要する期間は、期間tcよりも短いので、照射領域は、適切に非晶質化される。
【0114】
結晶化エネルギ設定部441は、
図8Bに関連して説明されたステップS210において、結晶化パルス光CPLの結晶化エネルギEeを設定する。結晶化エネルギ設定部441は、近接場光NFLの照射領域が結晶化するのに必要な期間tcよりも短いパルス幅dT1を設定してもよい。また、照射領域が、融点Tmを超えて昇温され、且つ、照射領域の温度が融点Tmから結晶化温度Txまで下がるのに期間tcよりも長い期間を要するように、結晶化エネルギ設定部441は、パルス幅dT1を考慮して、結晶化パワーPeを設定してもよい。
【0115】
結晶化エネルギ設定部441は、非晶質化エネルギ設定部442が設定した非晶質化パワーPwよりも大きな結晶化パワーPeを設定してもよい。結晶化パワーPeが、非晶質化エネルギ設定部442が設定した非晶質化パワーPwよりも小さいならば、結晶化エネルギ設定部441は、非晶質化エネルギ設定部442が設定したパルス幅dT2よりも長いパルス幅dT1を設定してもよい。
【0116】
図8Bに関連して説明されたステップS220において、照射部430は、結晶化パルス光CPLとして近接場光NFLを照射する。この結果、照射領域は、温度Tmax(C)まで昇温される。その後、照射領域は、冷却される。照射領域の温度が、融点Tmから結晶化温度Txまで低下するのに要する期間は、期間tcよりも長いので、照射領域は、適切に結晶化される。
【0117】
<第5実施形態>
(情報装置)
図14は、情報装置400Bの概略図である。
図7A乃至
図8B並びに
図10及び
図14を参照して、情報装置400Bが説明される。第4実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、第4実施形態の説明が援用される。
【0118】
情報装置400Bは、第4実施形態に関連して説明されたモータ420、エネルギ設定部440A及びデータ生成部450に加えて、結晶化パルス光CPLとして近接場光NFLを記録媒体410に照射する第1照射部431と、非晶質化パルス光APLとして近接場光NFLを照射する第2照射部432と、を備える。第1照射部431は、
図10を参照して説明された出射部260及び散乱体270を含む。第2照射部432は、第1照射部431と同様に、出射部260及び散乱体270を含む。
【0119】
データ生成部450は、記録媒体410に記録されるデータを生成する。データは、データ生成部450からエネルギ設定部440Aへ出力される。エネルギ設定部440Aは、データ生成部450からのデータに応じて、散乱体270からの近接場光NFLの出射タイミング及び近接場光NFLのエネルギに関する情報を含む制御信号を生成する。制御信号は、データ生成部450からのデータに応じて、エネルギ設定部440Aから第1照射部431又は第2照射部432に選択的に出力される。
【0120】
第1照射部431は、制御信号に応じて、出射部260を制御し、出射部260からの出射光ELの出射タイミングを調整する。散乱体270は、出射部260からの出射光ELを受け、結晶化パルス光CPLとして近接場光NFLを記録媒体410に照射する。尚、第1照射部431は、近接場光NFLを用いて、単一パルス光を生成する。
【0121】
第2照射部432は、制御信号に応じて、出射部260を制御し、出射部260からの出射光ELの出射タイミングを調整する。散乱体270は、出射部260からの出射光ELを受け、非晶質化パルス光APLとして近接場光NFLを記録媒体410に照射する。第1照射部431と同様に、第2照射部432は、近接場光NFLを用いて、単一パルス光を生成する。
【0122】
本実施形態において、記録媒体410上の情報が消去されるとき、エネルギ設定部440Aは、結晶化エネルギ設定部441を用いて、結晶化エネルギEeを設定する。記録媒体410へ情報を記録するとき、エネルギ設定部440Aは、非晶質化エネルギ設定部442を用いて、非晶質化エネルギEwを設定する。結晶化エネルギ設定部441によって設定された結晶化エネルギEeを有する近接場光NFLは、結晶化パルス光CPLとして用いられる。非晶質化エネルギ設定部442によって設定された非晶質化エネルギEwを有する近接場光NFLは、非晶質化パルス光APLとして用いられる。情報装置400Bは、第1照射部431及び第2照射部432を用いて、結晶化パルス光CPL及び非晶質化パルス光APLをデータ生成部450からのデータに応じて選択的に照射することができる。したがって、情報装置400Bは、記録媒体410に対してオーバーライト処理を好適に行うことができる。
【0123】
本実施形態において、非晶質化パルス光APLは、記録媒体410へ情報を記録するために用いられる。代替的に、非晶質化パルス光APLは、記録媒体410から情報を消去するために用いられてもよい。
【0124】
本実施形態において、結晶化パルス光CPLは、記録媒体410から情報を消去するために用いられる。代替的に、結晶化パルス光CPLは、記録媒体410へ情報を記録するために用いられてもよい。
【0125】
非晶質化エネルギ設定部442は、
図8Aに関連して説明されたステップS110において、非晶質化パルス光APLの非晶質化エネルギEwを設定する。非晶質化エネルギ設定部442は、近接場光NFLの照射領域が結晶化するのに必要な期間tcよりも短いパルス幅dT2を設定してもよい。また、照射領域が、融点Tmを超えて昇温され、且つ、照射領域の温度が融点Tmから結晶化温度Txまで下がるのに期間tcよりも短い期間を要するように、非晶質化エネルギ設定部442は、パルス幅dT2を考慮して、非晶質化パワーPwを設定してもよい。
【0126】
図8Aに関連して説明されたステップS120において、第2照射部432は、非晶質化パルス光APLとして近接場光NFLを照射する。この結果、照射領域は、温度Tmax(A)まで昇温される。その後、照射領域は、冷却される。照射領域の温度が、融点Tmから結晶化温度Txまで低下するのに要する期間は、期間tcよりも短いので、照射領域は、適切に非晶質化される。
【0127】
結晶化エネルギ設定部441は、
図8Bに関連して説明されたステップS210において、結晶化パルス光CPLの結晶化エネルギEeを設定する。結晶化エネルギ設定部441は、近接場光NFLの照射領域が結晶化するのに必要な期間tcよりも短いパルス幅dT1を設定してもよい。また、照射領域が、融点Tmを超えて昇温され、且つ、照射領域の温度が融点Tmから結晶化温度Txまで下がるのに期間tcよりも長い期間を要するように、結晶化エネルギ設定部441は、パルス幅dT1を考慮して、結晶化パワーPeを設定してもよい。
【0128】
結晶化エネルギ設定部441は、非晶質化エネルギ設定部442が設定した非晶質化パワーPwよりも大きな結晶化パワーPeを設定してもよい。結晶化パワーPeが、非晶質化エネルギ設定部442が設定した非晶質化パワーPwよりも小さいならば、結晶化エネルギ設定部441は、非晶質化エネルギ設定部442が設定したパルス幅dT2よりも長いパルス幅dT1を設定してもよい。
【0129】
図8Bに関連して説明されたステップS220において、第1照射部431は、結晶化パルス光CPLとして近接場光NFLを照射する。この結果、照射領域は、温度Tmax(C)まで昇温される。その後、照射領域は、冷却される。照射領域の温度が、融点Tmから結晶化温度Txまで低下するのに要する期間は、期間tcよりも長いので、照射領域は、適切に結晶化される。
【0130】
<第6実施形態>
(試験例)
本発明者は、上述の相変化原理に関する様々な試験を行った。本実施形態において、本発明者による試験が説明される。
【0131】
図15Aは、試験に用いられた試験サンプル500の概略的な断面図である。
図15Bは、試験に用いられた試験サンプル550の概略的な断面図である。
図15A及び
図15Bを参照して、本発明者による試験が説明される。
【0132】
試験サンプル500は、基板510と、第1保護層520と、記録層530と、第2保護層540と、を備える。第1保護層520は、基板510上に積層される。記録層530は、第1保護層520上に積層される。第2保護層540は、記録層530上に積層される。基板510として、厚さ1.1mmのガラス基板が用いられた。記録層530を形成する相変化材料として、Ge
10Sb
90が用いられた。記録層530の厚さは、15nmであった。第1保護層520及び第2保護層540は、(ZrO
2)
25(SiO
2)
25(Cr
2O
3)
50(mol%)が用いて形成された。第1保護層520及び第2保護層540それぞれの厚さは、10nmであった。
【0133】
試験サンプル550は、試験サンプル500と同様に、基板510と、第1保護層520と、第2保護層540と、を備える。試験サンプル550は、記録層535を更に備える。記録層535は、第1保護層520と第2保護層540との間に介挿される。記録層530と同様に、記録層535を形成する相変化材料として、Ge
10Sb
90が用いられた。記録層535の厚さは、50nmであった。
【0134】
記録層530,535は、単一パルス光の照射前において、全体的に結晶状態であった。試験に用いられる単一パルス光は、532nmの波長と、50psのパルス幅を有した。本発明者は、試験において、単一パルス光のパワーを変更し、単一パルス光の照射後の記録層530,535を観察した。
【0135】
本発明者は、試験サンプル550を、従来技術の知見(非特許文献1及び2を参照)を検証するために用いた。本発明者は、単一パルス光のスポット径を100μmに設定し、且つ、単一パルス光のパワーを「Pw1」に設定し、単一パルス光を照射した。この結果、記録層535に非晶質化された領域ARが形成された。その後、本発明者は、光スポット径を維持したまま、単一パルス光のパワーを、「Pw1」よりも低い「Pe1」に設定し、単一パルス光を領域ARに照射した。この結果、非晶質化された領域ARは、結晶状態に戻った。非晶質化エネルギEwよりも小さな結晶化エネルギEeの照射の下、記録層535の融点Tmを超えた昇温を生ずることなく、記録層535は、結晶化された。かくして、従来技術の知見は検証された。
【0136】
本発明者は、試験サンプル500を用いて、上述の様々な実施形態の原理を検証した。本発明者は、単一パルス光のスポット径を1μmに設定し、且つ、単一パルス光のパワーを「Pw2」に設定し、単一パルス光を照射した。この結果、記録層530に非晶質化された領域ARが形成された。本発明者は、その後、単一パルス光のパワーを変更し、領域ARに単一パルス光を照射した。本発明者は、「Pw2」よりも大きなパワー「Pe2」を有する単一パルス光が領域ARに照射されたとき(即ち、領域ARの形成に用いられた単一パルス光のエネルギよりも大きなエネルギの単一パルス光が領域ARに照射されたときに)、非晶質化された領域ARが結晶状態に戻ることを確認した。
【0137】
図16は、上述の試験サンプル500に対する試験結果を表す光学顕微鏡写真である。
図6、
図15A及び
図16を参照して、試験結果が説明される。
【0138】
(非晶質化試験)
本発明者は、試験サンプル500に、50psのパルス幅を有する単一パルス光を照射し、記録マーク(
図15Aの領域AR)が形成されるエネルギの条件を見出した。尚、50psのパルス幅は、記録層530が結晶化するのに必要な最短の期間tcよりも短い。
【0139】
図16の光学顕微鏡写真は、波長455nmの光を用いた透過照明下で得られた。
図16に示される如く、「34pJ(パワー:0.68W)」から「0.10nJ(パワー:2.0W)」のエネルギ条件の下、透過率が他の領域よりも低い記録マークが形成された。記録マークが形成されたエネルギ条件よりも高いエネルギ条件(「0.14nJ(パワー:2.7W)」から「0.20nJ(パワー:4.1W)」)において、記録マークは形成されなかった。「0.24nJ(パワー:4.7W)」以上のエネルギ条件の下では、非常に高い透過率の領域が形成された。「0.24nJ」以上のエネルギ条件の下で形成された高い透過率の領域において、試験サンプル500の破壊又は変形が生じていると考えられる。
【0140】
「0.14nJ」から「0.20nJ」のエネルギ条件の下では、
図6の曲線C3で表される温度変化が試験サンプル500に生じたと考えられる。「0.14nJ」から「0.20nJ」のエネルギ条件の単一パルス光の照射によって記録層530が溶融した後、記録層530の温度が融点Tmから結晶化温度Txに降下するのに、期間tcより長い期間を経過したため、単一パルス光の照射領域が結晶化したと考えられる。
【0141】
(相変化試験)
本発明者は、
図16の光学顕微鏡写真から得られた知見に基づき、記録層530に繰り返し相変化させる試験を行った。
【0142】
図17は、相変化試験の結果を表す光学顕微鏡写真である。
図15A及び
図17を参照して、相変化試験が説明される。尚、
図17の光学顕微鏡写真は、波長455nmの光を用いた透過照明下で得られた。
【0143】
本発明者は、0.10nJの単一パルス光を用いて記録マークを形成する工程と0.14nJの単一パルス光を用いて記録マークを消去する工程とを5回繰り返した。
図17に示される如く、記録マークの形成及び消去は、5回のサイクルの間、成功裏に確認された。
【0144】
本発明者は、25pJ(パワー:0.51W)以下のエネルギ条件の下、記録マークを消去することを試みた。しかしながら、25pJ以下のエネルギの単一パルス光は、記録マークを消去することはできなかった。かくして、記録層530は、「34pJ」から「0.10nJ」のエネルギ条件の下で非晶質化し、「0.14nJ」から「0.20nJ」のパワー条件の下で結晶化することが検証された。即ち、上記の数式1に示される条件の下で、記録層530は適切に結晶化されることが検証された。
【0145】
相変化試験において、記録層530の結晶化に用いられた結晶化エネルギEeは、記録層530の非晶質化に用いられた非晶質化エネルギEwよりも大きい。結晶化エネルギEeを有する単一パルス光は、記録層530の所定領域の温度を融点Tmよりも高い温度まで昇温される。その後の冷却期間において、記録層530の融点Tmから結晶化温度Txまで所定領域の温度が下がる期間は、記録層530が結晶化するのに必要とされる最短の期間tcよりも長くなる。この結果、記録層530の所定領域は、適切に結晶化される。
【0146】
本発明者は、
図1に関連して説明された記録媒体100に類似する構造の試験サンプル500を用いて、相変化試験を行った。加えて、本発明者は、第2実施形態(
図10及び
図11を参照)に関連して説明された微小領域250,350に相当する構造を有する試験サンプルを用意し、相変化試験を行い、上述の試験結果と同様の結果を得ることができた。
【0147】
上述の実施形態に関連して説明された様々な技術は、以下の特徴を主に備える。
【0148】
上述の実施形態の一局面に係る情報装置は、所定の非晶質化エネルギEwを有する非晶質化パルス光の照射によって、非晶質化される相変化記録層を有する記録媒体に対して光学的に情報処理を行う。情報装置は、前記相変化記録層の所定領域にパルス光を照射する照射部と、前記所定領域を結晶化するための結晶化エネルギEeを前記パルス光に対して設定するエネルギ設定部と、を備える。前記エネルギ設定部が設定する前記パルス光当たりの前記結晶化エネルギEeは、前記非晶質化パルス光当たりの前記非晶質化エネルギEwよりも大きい。
【0149】
上記構成によれば、エネルギ設定部が設定するパルス光当たりの結晶化エネルギEeは、非晶質化パルス光当たりの非晶質化エネルギEwよりも大きいので、薄い相変化記録膜が適切に結晶化される。したがって、情報装置は、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0150】
上記構成において、前記エネルギ設定部は、前記結晶化エネルギEeを設定する結晶化エネルギ設定部と、前記非晶質化エネルギEwを設定する非晶質化エネルギ設定部と、を含んでもよい。前記照射部は、前記所定領域に、前記結晶化エネルギEeを有する結晶化パルス光、又は、前記非晶質化エネルギEwを有する前記非晶質化パルス光を、前記パルス光として、選択的に照射してもよい。
【0151】
上記構成によれば、照射部は、所定領域に、結晶化エネルギEeを有する結晶化パルス光、又は、非晶質化エネルギEwを有する非晶質化パルス光を、パルス光として、選択的に照射するので、相変化記録層は、結晶化又は非晶質化される。したがって、情報装置は、相変化記録層の結晶化及び非晶質化を利用して、記録媒体に光学的な情報処理を行うことができる。
【0152】
上記構成において、前記照射部は、前記結晶化パルス光を照射する第1照射部と、前記非晶質化パルス光を照射する第2照射部と、を含んでもよい。
【0153】
上記構成によれば、第1照射部は、結晶化パルス光を照射し、相変化記録層を局所的に結晶化することができる。第2照射部は、非晶質化パルス光を照射し、相変化記録層を局所的に非晶質化することができる。したがって、情報装置は、相変化記録層の結晶化及び非晶質化を利用して、記録媒体に光学的な情報処理を行うことができる。
【0154】
上記構成において、前記相変化記録層は、互いに独立した複数の微小領域を含んでもよい。前記所定領域は、前記複数の微小領域のうち1つの微小領域であってもよい。前記エネルギ設定部は、前記結晶化パルス光が前記1つの微小領域に与える前記結晶化エネルギEeを、前記非晶質化エネルギEwよりも大きく設定してもよい。
【0155】
上記構成によれば、エネルギ設定部は、結晶化パルス光が1つの微小領域に与える結晶化エネルギEeを、非晶質化エネルギEwよりも大きく設定するので、薄い相変化記録膜が適切に結晶化される。したがって、情報装置は、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0156】
上記構成において、前記照射部は、散乱体と、出射光を出射する出射部と、を含んでもよい。前記出射光を照射された前記散乱体と、前記所定領域との間で、プラズモン共鳴が生じてもよい。前記結晶化パルス光は、前記プラズモン共鳴よって生じた近接場光であってもよい。
【0157】
上記構成によれば、情報装置は、プラズモン共鳴に起因する近接場光を用いて、薄い相変化記録膜を適切に結晶化することができる。
【0158】
上記構成において、前記所定領域は、結晶化温度Txと、融点Tmと、によって規定される温度特性を有してもよい。前記結晶化温度Tx以上且つ前記融点Tm以下の温度範囲において、前記所定領域が結晶化するのに必要とされる最短期間は、期間tcであってもよい。前記結晶化エネルギ設定部によって設定される前記結晶化パルス光のパルス幅dT1は、前記期間tcよりも短くてもよい。
【0159】
上記構成によれば、結晶化エネルギ設定部によって設定される前記結晶化パルス光のパルス幅dT1は、所定領域が結晶化するのに必要とされる最短期間として定義される期間tcよりも短いので、薄い相変化記録膜が適切に結晶化される。したがって、情報装置は、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0160】
上記構成において、前記パルス幅dT1の前記結晶化パルス光の照射の下、前記所定領域が前記融点Tmよりも高い温度Tmaxになるように、前記結晶化エネルギ設定部は、前記結晶化パルス光の結晶化パワーPeを設定してもよい。前記所定領域が前記温度Tmaxから冷却される間において、前記所定領域が前記温度範囲にある期間Δtが、前記期間tc以上となってもよい。
【0161】
上記構成によれば、パルス幅dT1の結晶化パルス光が照射されると、所定領域は、融点Tmよりも高いTmaxになる。その後、所定領域が、温度Tmaxから冷却されると、所定領域は、期間Δtの間、結晶化温度Tx以上且つ融点Tm以下の温度範囲にある。期間Δtは、所定領域が結晶化するのに必要とされる最短期間として定義される期間tc以上であるので、薄い相変化記録膜が適切に結晶化される。したがって、情報装置は、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0162】
上記構成において、前記非晶質化エネルギ設定部は、前記非晶質化パルス光の非晶質化パワーPwを設定してもよい。前記結晶化パワーPeは、前記非晶質化パワーPwよりも大きくてもよい。
【0163】
上記構成によれば、結晶化パルス光の結晶化パワーPeは、非晶質化パルス光の非晶質化パワーPwよりも大きいので、薄い相変化記録膜が適切に結晶化される。したがって、情報装置は、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0164】
上記構成において、前記非晶質化エネルギ設定部は、前記非晶質化パルス光の非晶質化パワーPwと、前記非晶質化パルス光のパルス幅dT2と、を設定してもよい。前記結晶化パワーPeは、前記非晶質化パワーPw以下であってもよい。前記パルス幅dT1は、前記パルス幅dT2よりも長くてもよい。
【0165】
上記構成によれば、結晶化パルス光のパルス幅dT1は、非晶質化パルス光のパルス幅dT2よりも長いので、結晶化パルス光の結晶化パワーPeが非晶質化パルス光の非晶質化パワーPw以下であっても、薄い相変化記録膜が適切に結晶化される。したがって、情報装置は、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0166】
上記構成において、前記結晶化パルス光は、1μm以下の光スポット径であってもよい。
【0167】
上記構成によれば、結晶化パルス光は、1μm以下の光スポット径であるので、情報装置は、高密度の記録媒体に対して、光学的な情報処理を行うことができる。
【0168】
上記構成において、前記パルス幅dT1は、1ns以下であってもよい。
【0169】
上記構成によれば、結晶化パルス光のパルス幅dT1は、1ns以下であるので、薄い相変化記録膜が適切に結晶化される。したがって、情報装置は、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0170】
上記構成において、前記相変化記録層は、Ge、Sb、Te、Bi及びSnの群から選択される元素を含んでもよい。
【0171】
上記構成によれば、相変化記録層は、Ge、Sb、Te、Bi及びSnの群から選択される元素を含むので、情報装置は、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0172】
上記構成において、前記相変化記録層は、Ge−Sb、Ge−Sn−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Bi−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Sn−Bi−Sb−Teのいずれかで表されてもよい。
【0173】
上記構成によれば、相変化記録層は、Ge−Sb、Ge−Sn−Te、Ge−Bi−Te、Ge−Sb−Te、Ge−Sn−Bi−Te、Ge−Bi−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Te、Ge−Sn−Bi−Sb−Teのいずれかで表されるので、情報装置は、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0174】
上記構成において、前記微小領域は、100nm以下の直径を有してもよい。
【0175】
上記構成によれば、微小領域は、100nm以下の直径を有するので、情報装置は、高密度の記録媒体に対して、光学的な情報処理を行うことができる。
【0176】
上記構成において、前記相変化記録層は、20nm以下の厚さを有してもよい。
【0177】
上記構成によれば、情報装置は、20nm以下の厚さを有する薄い相変化記録層を結晶化し、光学的な情報処理を適切に行うことができる。
【0178】
上述の実施形態の他の局面に係る方法は、所定の非晶質化エネルギEwを有する非晶質化パルス光の照射によって、非晶質化される相変化記録層を有する記録媒体に対して光学的に情報処理を行うために用いられる。情報処理方法は、前記相変化記録層の所定領域に照射されるパルス光に対して、前記所定領域を結晶化するための結晶化エネルギEeを設定する設定工程と、前記所定領域に前記結晶化エネルギEeを有する前記パルス光を照射する照射工程と、を含む。前記設定工程は、前記パルス光当たりの前記結晶化エネルギEeを前記非晶質化パルス光当たりの前記非晶質化エネルギEwよりも大きく設定する段階を含む。
【0179】
上記構成によれば、エネルギ設定部が設定するパルス光当たりの結晶化エネルギEeは、非晶質化パルス光当たりの非晶質化エネルギEwよりも大きいので、薄い相変化記録膜が適切に結晶化される。したがって、相変化記録層の結晶化を利用して、記録媒体に対して、光学的な情報処理が適切に行われる。