(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程において、前記フラン化合物と水素とを、0〜50℃の温度範囲で接触させて、前記テトラヒドロフラン化合物を得る、請求項1に記載のテトラヒドロフラン化合物の製造方法。
前記フラン化合物が、フルフラール、5−メチルフルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、及び5−ホルミルフルフラールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載のテトラヒドロフラン化合物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水素化触媒を用いた合成方法では、反応条件を高温高圧としたり、水素化触媒や有機溶媒を大量に用いたりする必要があった。すなわち、従来の水素化触媒では、反応が十分に進行し難い状況にあった。また、Pd−Ni/SiO
2系触媒においては反応途中で反応液中にNiが溶出し、触媒寿命が短くなるという問題があった。さらに、反応を促進させるために、反応系に酢酸を使用しなければならないという問題もあった。これに加えて、従来の水素化触媒では、下記反応式に示すように、フラン化合物のフラン環内の二重結合及びフラン化合物におけるホルミル基が完全に還元されずに、不完全還元体が生じて中間生成物として蓄積してしまい、それによって重合物が生成し易いという問題があった。なお、下記反応式では、5−ヒドロキシメチル−2−ホルミルフランを出発原料とした反応を例示しているが、その際の不完全還元(中間生成物)としては、5−ヒドロキシメチル−2−ホルミルフラン(A)、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフラン(B)が生じる。
【0006】
【化1】
【0007】
このため、上述の問題点を解消して、フラン化合物からテトラヒドロフラン化合物を工業的に量産することが可能な製造技術を確立することが求められている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低温下においても、高い反応速度で、高収率且つ高選択的にフラン化合物からテトラヒドロフラン化合物を製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。また、低温下においても、高い反応速度で、高収率且つ高選択的にテトラヒドロフラン化合物を製造することが可能な水素化触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、種々の水素化触媒を調製して、反応性を検討した。その結果、パラジウム化合物と所定の金属元素を有する金属化合物とを組み合わせて用いることによって上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、パラジウム化合物と、構成元素として周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも1種を有する金属化合物と、を混合し還元処理して得た触媒の存在下、一般式(1)のフラン化合物と水素とを接触させて、一般式(2)のテトラヒドロフラン化合物を得る工程を有する、テトラヒドロフラン化合物の製造方法を提供する。
【0010】
【化2】
【0011】
式(1)中、Rはホルミル基又はヒドロキシメチル基を示し、R
1aは、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を示し、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。隣接する炭素に結合しているR
1a及びR
2並びにR
2及びR
3は、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。
【0012】
【化3】
【0013】
式(2)中、R
1bは水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基又はヒドロキシメチル基を示し、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。隣接する炭素に結合しているR
1b及びR
2並びにR
2及びR
3は、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。
【0014】
上記本発明のテトラヒドロフラン化合物の製造方法では、パラジウム化合物と所定の金属を有する金属化合物を混合し還元処理して得られた水素化触媒を用いていることから、フラン化合物の不完全な還元による副生物の生成が抑制されて、高収率且つ高選択的に目的生成物である一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物を得ることができる。この触媒を用いれば、低温下においても、高い反応速度で、テトラヒドロフラン化合物を生成させることができる。したがって、製造設備の複雑化を回避しつつ歩留まりを高くすることができる。このようなことから、本発明のテトラヒドロフラン化合物の製造方法は、工業スケールでの生産に好適に適用することができる。一般式(2)のようにヒドロキシメチル基を有するテトラヒドロフラン化合物は、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート及びポリウレタン等のポリマー原料、並びに、樹脂添加剤、医農薬中間体原料及び各種溶剤等として有用である。
【0015】
本発明のテトラヒドロフラン化合物の製造方法は、上記工程において、一般式(1)のフラン化合物と水素とを、0〜50℃の温度範囲で接触させて、一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物を得ることが好ましい。このように低温で合成を行うことによって、ハンドリングが一層容易となり、工業スケールでの生産に一層適したものとなる。
【0016】
上述の課題は、パラジウムを含む触媒の存在下、フラン化合物を所定温度未満で水素と接触させることによっても解決することができる。すなわち、本発明は、パラジウムを含む触媒の存在下、一般式(1)のフラン化合物と水素とを10℃未満の温度範囲で接触させて、一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物を得る工程を有する、テトラヒドロフラン化合物の製造方法を提供する。
【0017】
上記本発明のテトラヒドロフラン化合物の製造方法では、パラジウムを含む触媒とフラン化合物とを10℃未満で接触させている。これによって、フラン化合物の不完全な還元による副生物の生成が抑制されて、高収率且つ高選択的に目的生成物である一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物を得ることができる。この製造方法では、低温下で、テトラヒドロフラン化合物を生成させることができる。したがって、製造設備の複雑化を回避しつつ歩留まりを高くすることができる。このようなことから、本発明のテトラヒドロフラン化合物の製造方法は、工業スケールでの生産に好適に適用することができる。上述の触媒はパラジウム化合物を還元処理して得られたものであることが好ましい。
【0018】
本発明のテトラヒドロフラン化合物の製造方法で用いられるフラン化合物は、フルフラール、5−メチルフルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、及び5−ホルミルフルフラールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。これによって、有用なテトラヒドロフラン化合物を一層高収率で且つ高選択的に製造することができる。
【0019】
また、触媒は、(A)担体及び該担体に担持されたパラジウム有するもの、又は、(B)担体並びに該担体に担持されたパラジウム及び周期表第5族〜9族に属する金属を有するもの、であることが好ましい。このような固体触媒は、十分に高い活性を維持しつつ取扱い性に優れる。このため、工業規模にスケールアップすることが容易であり、且つ触媒寿命を長くすることができる。また、担体は、炭素、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものであることがより好ましい。このような固体触媒は、上述の特性を有しつつ、比較的低コストで製造することができ、触媒回収も容易である。このため、テトラヒドロフラン化合物の製造コストを低減することができる。
【0020】
本発明は、別の側面において、上記一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物合成用の水素化触媒の製造方法であって、パラジウム化合物と、構成元素として周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも1種を有する金属化合物と、を混合して還元処理し、パラジウムと上記金属とを有する水素化触媒を得る工程と、を有する、水素化触媒の製造方法を提供する。
【0021】
この製造方法によって得られる水素化触媒は、一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物の製造用途に適している。例えば、原料として、一般式(1)のフラン化合物を用いた場合、低温下においても、高い反応速度で、テトラヒドロフラン化合物を生成させることができる。したがって、製造設備の複雑化を回避しつつ歩留まりを高くすることができる。このようなことから、本発明の製造方法で得られる水素化触媒は、工業スケールでのテトラヒドロフラン化合物の生産に好適に使用することができる。
【0022】
本発明は、さらに別の側面において、上記一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物合成用の水素化触媒であって、パラジウム化合物と、構成元素として周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも1種を有する金属化合物と、を混合し還元処理して得られる、パラジウムと上記金属とを有する水素化触媒を提供する。
【0023】
この水素化触媒は、一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物の製造用途に適している。例えば、原料として、一般式(1)のフラン化合物を用いた場合、低温下においても、高い反応速度で、テトラヒドロフラン化合物を生成させることができる。したがって、製造設備の複雑化を回避しつつ歩留まりを高くすることができる。このようなことから、本発明の水素化触媒は、工業スケールでのテトラヒドロフラン化合物の生産に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低温下においても、高い反応速度で、高収率且つ高選択的にフラン化合物からテトラヒドロフラン化合物を製造することが可能な製造方法を提供することができる。また、低温下においても、高い反応速度で、高収率且つ高選択的にテトラヒドロフラン化合物を製造することが可能な水素化触媒及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
本実施形態のテトラヒドロフラン化合物の製造方法は、パラジウム化合物と、構成元素として周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも1種を有する金属化合物と、を混合して混合物を調製する混合工程と、混合物を還元処理して触媒を得る還元工程と、触媒の存在下、フラン化合物と水素とを接触させて、テトラヒドロフラン化合物を得る反応工程と、を有する。以下に各工程の詳細を説明する。
【0027】
混合工程は、触媒の原料となるパラジウム化合物と、構成元素として周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも1種を有する金属化合物と、を混合して混合物を調製する工程である。
【0028】
パラジウム化合物は、構成元素としてパラジウムを有する化合物であり、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム等のハロゲン化パラジウム;酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム酸塩;酸化パラジウム等が挙げられる。これらのパラジウム化合物の一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのパラジウム化合物のうち、パラジウムを効率よく担体に担持させる観点、及び製造コスト低減の観点から、好ましくはハロゲン化パラジウム、より好ましくは塩化パラジウムを用いる。パラジウム化合物は、水和物又は水溶液に溶解させた状態で用いてもよい。
【0029】
周期表第5族〜9族に属する金属(第二金属「M」ということもある)としては、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、タングステン、モリブデン、レニウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウムであり、より好ましくはタングステン、モリブデン、レニウムである。
【0030】
構成元素として上述の金属を有する金属化合物の形態は特に限定されない。例えば、金属合金、金属塩、金属錯体、金属酸化物等のいずれの形態であってもよく、水和物や有機化合物の付加体であってもよい。これらのうち、触媒活性を一層向上させる観点から、金属塩及び金属錯体が好ましい。なお、これらの金属化合物は、構成元素として、周期表第5族〜9族に属する金属を二種以上有するものであってもよい。また、各種形態の金属化合物の一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
構成元素として周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも一種を有する金属化合物の具体例としては、三塩化バナジウム、酸化バナジウム、三酸化二バナジウム、二酸化バナジウム、五酸化二バナジウム、五酸化二バナジウム、三臭化バナジウム、ピロバナジン酸カリウム、テトラオキソバナジン(V)酸カリウム、トリオキソバナジン(V)酸カリウム、トリオキソバナジン(V)酸ナトリウム、ピロバナジン酸ナトリウム、トリオキソバナジン(V)酸リチウム等のバナジウム化合物;五塩化モリブデン、テトラコサオキソヘプタモリブデン(VI)酸アンモニウム、テトラオキソモリブデン(VI)酸カリウム、テトラオキソモリブデン酸カルシウム、テトラオキソモリブデン(VI)酸ナトリウム、テトラオキソモリブデン(VI)酸マグネシウム、テトラオキソモリブデン(VI)酸リチウム、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等のモリブデン化合物;三塩化レニウム、五塩化レニウム、テトラオキソレニウム(VII)酸アンモニウム、テトラオキソレニウム(VII)酸カリウム、テトラオキソレニウム(VII)酸ナトリウム、六塩化レニウム三カリウム、六塩化レニウム二カリウム、二酸化レニウム、三酸化レニウム、七酸化二レニウム等のレニウム化合物;四塩化タングステン、六塩化タングステン、五臭化タングステン、ヘンテトラコンタオキソ十二タングステン(VI)酸アンモニウム等のタングステン化合物;三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、五塩化ルテニウム二アンモニウム、六塩化ルテニウム三アンモニウム、六塩化ルテニウム二カリウム、六塩化ルテニウム二ナトリウム、六臭化ルテニウム三カリウム、六臭化ルテニウム二カリウム等のルテニウム化合物;二塩化コバルト、二臭化コバルト、二ヨウ化コバルト、二フッ化コバルト、二硝酸コバルト、酸化コバルト、リン酸コバルト、二酢酸コバルト等のコバルト化合物;三塩化ロジウム、六塩化ロジウム三アンモニウム、六塩化ロジウム三カリウム、六塩化ロジウム三ナトリウム、三硝酸ロジウム等のロジウム化合物;三塩化イリジウム、三臭化イリジウム、四塩化イリジウム、四臭化イリジウム、イリジウム酸アンモニウム塩、ヘキサアンミンイリジウム三塩化物、ペンタアンミンクロロイリジウム二塩化物、六塩化イリジウム三アンモニウム、六塩化イリジウム三カリウム、六塩化イリジウム三ナトリウム、四塩化イリジウム二アンモニウム、六塩化イリジウム二アンモニウム、六塩化イリジウム二カリウム、六塩化イリジウム酸、及び六塩化イリジウム二ナトリウム等のイリジウム化合物が挙げられる。
【0032】
上述の金属化合物のうち、好ましくは、テトラコサオキソヘプタモリブデン(VI)酸アンモニウム、テトラオキソレニウム(VII)酸アンモニウム、七酸化二レニウム、三塩化ルテニウム、三塩化ロジウム、三塩化イリジウム、四塩化イリジウム、六塩化イリジウム酸が使用される。
【0033】
混合工程における混合方法に特に制限はない。ボールミルや乳鉢を用いて乾式で混合してもよいし、溶媒を加えて湿式で混合して懸濁液としてもよい。また、パラジウム化合物及び/又は金属化合物が溶液又は懸濁液の状態である場合は、そのまま混合して溶液又は懸濁液としてもよい。このようにして、パラジウム化合物と金属化合物とを含む混合物を調製することができる。
【0034】
パラジウム化合物に対する金属化合物の配合比率は、それぞれを金属元素に換算して、モル基準で好ましくは1〜200mol%であり、より好ましくは10〜100mol%であり、さらに好ましくは20〜80mol%である。このような配合比率とすることによって、製造コストの低減と反応活性とを高水準で両立することが可能な触媒を調製することができる。
【0035】
混合工程では、パラジウム化合物及び金属化合物以外に、触媒の担体となる成分を配合してもよい。使用される担体としては、多孔質の担体が好適に用いられるが、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、セリア、マグネシア、カルシア、チタニア、シリカ−チタニア、ジルコニア、活性炭、ゼオライト、及びメソ孔体(メソポーラスアルミナ、メスポーラスシリカ、メスポーラスカーボン)等が挙げられる。これらのうち、低い製造コストと長い触媒寿命を両立させる観点から、好ましくはシリカ、アルミナ、又は活性炭が使用される。上述の担体は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
パラジウム化合物、金属化合物及び担体を混合する場合、その混合順序は特に制限されない。これらの三成分を同時に混合して、担体にパラジウム化合物と金属化合物とを同時含浸してもよく、担体に、パラジウム化合物及び金属化合物をこの順又はその逆の順で逐次含浸してもよい。パラジウム及び金属が担体に固定化された形態の触媒を用いれば、後述する反応工程において得られる反応生成物から、触媒を取り除くことが容易となり、目的生成物を分離することが容易となる。
【0037】
担体を配合する場合、パラジウム化合物及び金属化合物の混合比率は、担体に対してパラジウムが0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%であり、周期表第5族〜9族に属する金属の合計量は、0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。このような比率で混合することによって、反応工程における反応速度を一層大きくすることができる。
【0038】
担体は、パラジウム化合物及び金属化合物と別に配合してもよいが、パラジウム化合物が担体に含浸された市販のパラジウム含浸物を用いてもよい。この場合、このパラジウム含浸物と周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも1種を構成元素として有する金属化合物とを混合すれば、担体に、パラジウム化合物と金属化合物とが逐次含侵されることとなる。また、金属化合物が担体に含浸された金属含浸物を用いてもよい。この場合、金属含浸物とパラジウム化合物とを混合すれば、担体に、金属化合物とパラジウム化合物とが逐次含侵されることとなる。このようにして、担体にパラジウム化合物及び金属化合物を固定化することができる。
【0039】
担体に、パラジウム化合物と金属化合物とが固定化された触媒原料(以下、「触媒前駆体」と称することもある)の調製法は、特に制限されず、含浸、沈殿、吸水等、調製における一般的な方法を適宜選択して採用することができる。調製法の例としては、パラジウム化合物を含む溶液又は分散液に担体粉末に加え、共沈法による同時担持法で調製する方法が挙げられる。
【0040】
上記触媒前駆体は焼成してもよいし、そのまま又は乾燥して次工程(還元工程)で還元処理を行ってもよい。焼成する場合の焼成雰囲気は、酸素を含んだガス(例えば、空気)であってもよく、窒素などの不活性ガスであってもよい。焼成温度は、パラジウム化合物の分解温度や焼成雰囲気などを考慮して適宜選択でき、焼成時間も0.5時間〜24時間の間で適宜選択できる。このようにして、混合工程では、パラジウム化合物と金属化合物とを含み、任意成分として担体を含む混合物が得られる。
【0041】
還元工程は、混合工程で調製された混合物を還元処理して、パラジウム及び周期表第5族〜9族に属する金属を有する触媒を得る工程である。
【0042】
この工程では、パラジウム化合物と金属化合物とを含み、任意成分として担体を含む混合物を還元処理して触媒を調製する。還元処理の方法としては、混合物と還元剤とを接触させる方法が挙げられる。還元剤としては、酸化状態にあるパラジウムを還元する能力を有する化合物であればいずれも使用できる。
【0043】
このような還元剤としては、例えば、エタノール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;ホルムアルデヒド等のアルデヒド類;ギ酸、アスコルビン酸等の酸類;ヒドラジン;水素;エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン等のオレフィン類が使用される。還元処理は、気相及び液相のどちらで行ってもよい。還元剤として水素を用いる場合、還元反応をより円滑に進行させる観点から、温度は、好ましくは40〜800℃、より好ましくは50〜500℃であり、水素分圧は、好ましくは常圧〜12MPaであり、より好ましくは常圧〜8MPaである。また還元した触媒を空気中に取り出す場合は、室温下でHe又は窒素で希釈した2モル%酸素でPassivation(不動態化処理)を行って取り出す。
【0044】
混合物が、先の方法で得られた触媒前駆体を含有する場合は、混合物を還元処理することによって、触媒を得ることができる。混合工程と還元工程は連続して行ってもよく、混合しながら還元処理する方法を採用することによって、混合工程と還元工程とを同時に行ってもよい。還元工程で得られる触媒は、パラジウム、及び周期表第5族〜9族に属する金属単体を有していてもよく、これらの一方又は双方を含む合金或いは化合物を有していてもよい。
【0045】
触媒において、パラジウムに対する周期表第5族〜9族に属する金属のモル比率(金属元素換算)は、好ましくは1〜200mol%であり、より好ましくは10〜100mol%であり、さらに好ましくは20〜80mol%である。このようなモル比率とすることによって、触媒の製造コストの低減と反応活性とを高水準で両立することができる。
【0046】
触媒が担体に担持された形態である場合、パラジウムの担持量は、担体に対して、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。このような範囲でパラジウムを含有することによって、触媒の製造コストの低減と反応活性とを一層高水準で両立することができる。また、周期表第5族〜9族に属する金属の合計担持量は、担体に対して、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。このような範囲で周期表第5族〜9族に属する金属を含有することによって、触媒の製造コストの低減と反応活性とを一層高水準で両立することができる。
【0047】
以上の混合工程及び還元工程によって得られる触媒は、水素化作用を有しており、還元作用を有することから還元触媒又は水素化触媒ということもできる。この触媒を用いれば、フラン化合物の内部オレフィンとともに、そのフラン環に結合したホルミル基を還元して、テトラヒドロフラン化合物を高選択率且つ高収率で製造することができる。
【0048】
反応工程では、還元工程で調製した触媒の存在下、フラン化合物と水素とを接触させて、テトラヒドロフラン化合物を得る工程である。本実施形態におけるフラン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であり、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を有する。
【0050】
一般式(1)中、Rはホルミル基又はヒドロキシメチル基を示し、R
1aは、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を示し、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。R
1aは、具体的には、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基である。なお、これらの基は、各種異性体を含む。隣接する炭素に結合しているR
1a及びR
2並びにR
2及びR
3は、それぞれ互いに結合して環(例えば、シクロヘキサン環等)を形成していてもよい。
【0051】
R
1aは、反応を一層円滑に促進させる観点から、好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基である。同様の観点から、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0052】
一般式(1)で示されるフラン化合物としては、例えば、フルフラール(2−ホルミルフラン)、5−メチルフルフラール、5−エチルフルフラール、5−プロピルフルフラール、5−ブチルフルフラール、5−ペンチルフルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、5−ホルミルフルフラール等が挙げられる。これらのうち、好ましくはフルフラール、5−メチルフルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、5−ホルミルフルフラールが使用される。
【0053】
反応工程において使用する触媒の使用量は、パラジウム原子換算で、フラン化合物1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.1モル、より好ましくは0.0005〜0.08モルである。この範囲とすることで、反応速度を十分に大きくしつつ、一層高い収率及び選択率でテトラヒドロフラン化合物を得ることができる。なお、触媒は、別々に調製された異なる成分を含有する複数種の触媒を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
反応工程において使用される水素は、水素を発生する化合物を用いて供給することができる。そのような化合物としては、水素ガス、アンモニアガス等の還元性ガス;水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ギ酸、酢酸、クロロギ酸等の有機酸類;塩酸、硫酸等の無機酸類が挙げられる。これらのうち、反応速度を一層大きくする観点から、好ましくは還元性ガス又は水素ガス、より好ましくは水素ガスが使用される。なお、上述の還元性ガスは、窒素、ヘリウム、又はアルゴン等の不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0055】
水素の量は、フラン化合物1モルに対して、水素原子に換算して、好ましくは5〜200モル、より好ましくは10〜160モルである。この使用量とすることで、十分な反応速度を得ながら、不完全な還元体で止めることなく、一層高い収率及び選択率でテトラヒドロフラン化合物を得ることができる。
【0056】
本実施形態におけるテトラヒドロフラン化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であり、ヒドロキシメチル基を有する。
【0058】
一般式(2)中、R
1bは水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基又はヒドロキシメチル基を示し、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。R
1bは、具体的には、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヒドロキシメチル基である。なお、これらの基は、各種異性体を含む。隣接する炭素に結合しているR
1b及びR
2並びにR
2及びR
3は、それぞれ互いに結合して環(例えば、シクロヘキサン環等)を形成していてもよい。
【0059】
本実施形態の反応工程では、溶媒を使用してもよいし使用しなくてもよい。溶媒としては、例えば、水;エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類等を使用することができる。これらのうち、水が好ましい。上述の溶媒は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
溶媒の使用量は、フラン化合物1gに対して好ましくは50g以下、より好ましくは25g以下とする。これによって、攪拌性が向上する。なお、溶媒には反応を阻害しない塩が含まれていてもよい。
【0061】
反応工程は、触媒の形態に応じて、回分式(バッチ式)又は連続式のどちらの方法でも行うことができる。また、触媒の性質により均一系又は不均一系(懸濁反応)のどちらの反応系でも実施することができる。触媒が担体と該担体に担持されたパラジウム及び周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも1種を有する固体触媒である場合、固定床を用いて連続的に反応を行うこともできる。
【0062】
反応工程では、例えば、フラン化合物、触媒及び必要に応じて溶媒を混合し、水素の存在下にて、攪拌しながら反応を進行させる。その際の反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは0〜100℃、さらに好ましくは0〜50℃、特に好ましくは0以上且つ10℃未満である。その際の反応圧力は、水素分圧として、好ましくは常圧〜20MPa、より好ましくは0.2〜15MPaである。反応温度及び反応圧力を上述の範囲とすることで、副生成物の生成が十分に抑制され、反応速度を一層大きくすることができる。これによって、テトラヒドロフランの収率と選択率とを一層高くすることができる。還元工程と反応工程は連続して行ってもよいし、還元工程で得られた触媒を一旦単離した後に、反応工程を行ってもよい。
【0063】
以上の工程によって、目的とするテトラヒドロフラン化合物を得ることができる。このテトラヒドロフラン化合物は、反応終了後に、得られた反応液から、例えば、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作によって単離・精製することができる。
【0064】
本実施形態のテトラヒドロフラン化合物の製造方法は、反応工程において、パラジウム化合物と、構成元素として周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも1種を有する金属化合物と、を含む混合物を還元処理して得られる、パラジウムと上記金属とを有する水素化触媒を用いている。この水素化触媒は、一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物の合成に適した水素化触媒である。このような水素化触媒は、上述の混合工程と還元工程とによって製造することができる。なお、混合工程と還元工程はこの順番で別々に行ってよく、混合しながら還元を同時進行する方法で行ってもよい。
【0065】
(第2実施形態)
本実施形態のテトラヒドロフラン化合物の製造方法は、パラジウム化合物を還元処理してパラジウムを有する触媒を得る還元工程と、触媒の存在下、上記一般式(1)のフラン化合物と水素とを10℃未満の温度範囲で接触させて、上記一般式(2)のテトラヒドロフラン化合物を得る反応工程と、を有する。
【0066】
還元工程は、パラジウム化合物を還元処理して、パラジウムを有する触媒を得る工程である。この還元工程は、構成元素として周期表第5族〜9族に属する金属の少なくとも一種を有する金属化合物を用いないこと以外は、第1実施形態と同様にして行うことができる。パラジウム化合物としては、第1実施形態と同様のものが用いられる。すなわち、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム等のハロゲン化パラジウム;酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム酸塩;酸化パラジウム等が挙げられる。これらのパラジウム化合物の一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのパラジウム化合物のうち、パラジウムを効率よく担体に固定化させる観点、及び製造コスト低減の観点から、好ましくはハロゲン化パラジウム、より好ましくは塩化パラジウムを用いる。パラジウム化合物は、水和物又は水溶液に溶解させた状態で用いてもよい。また、第1実施形態と同様に、担体とパラジウム化合物とを混合したうえで還元工程を行ってもよいし、担体にパラジウム化合物が固定化された触媒前駆体を還元処理してもよい。
【0067】
パラジウム化合物は、反応工程で得られるテトラヒドロフラン化合物を含む反応液からの濾別を容易にするために、担体に担持されていることが好ましい。担体としては、多孔質の担体が好ましく、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、セリア、マグネシア、カルシア、チタニア、シリカ−チタニア、ジルコニア及び活性炭(炭素)、ゼオライト、メソ孔体(メソポーラスアルミナ、メスポーラスシリカ、メスポーラスカーボン)等が挙げられる。これらのうち、より好ましくはシリカ、アルミナ、活性炭(炭素)が使用される。なお、これらの担体は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。既にパラジウム化合物が担持された市販品をそのまま又は適当な処理をして使用してもよく、別途調製して使用してもよい。
【0068】
担体にパラジウム化合物を担持する方法に特に制約はなく、含浸、沈殿、吸水等、一般的な方法を適宜選択して採用することができる。この調製方法の例としては、パラジウム化合物を含む溶液を担体粉末に加え、共沈法による同時担持法で調製する方法が挙げられる。焼成雰囲気は、通常は酸素を含んだガス(例えば、空気)である。また、窒素などの不活性ガスを用いてもよい。焼成温度は、用いるパラジウム化合物の分解温度や焼成雰囲気などを考慮して適宜選択できる。焼成時間は、0.5時間〜24時間の間で適宜選択できる。
【0069】
上述のパラジウム化合物、又は担体にパラジウム化合物が担持された触媒前駆体を、上記第1実施形態の還元工程と同様の方法で還元処理することによって、触媒を得ることができる。触媒におけるパラジウムの含量(担持量)は、反応工程における反応速度を十分に大きくする観点から、担体に対してパラジウムが好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。なお、このような触媒として市販品を用いてもよい。
【0070】
上述の還元工程によって得られる触媒は、水素化作用を有しており、還元作用を有することから還元触媒又は水素化触媒ということもできる。この触媒を用いれば、10℃未満の低温領域、好ましくは5℃未満の低温領域で、フラン化合物の内部オレフィンとともに、そのフラン環に結合したホルミル基を還元して、テトラヒドロフラン化合物を高選択率且つ高収率で製造することができる。
【0071】
反応工程は、周期表第5族〜9族に属する金属を有しない上述の触媒(還元触媒)を用いること以外は、第1実施形態と同様にして行うことができる。ここでは、重複する説明を省略する。反応工程において使用する触媒の使用量は、パラジウム原子に換算して、フラン化合物1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.1モル、より好ましくは0.0005〜0.08モルである。この使用量の範囲とすることで、反応速度を十分に大きくしつつ、一層高い収率及び選択率でテトラヒドロフラン化合物を得ることができる。なお、触媒は、別々に調製された異なる成分を含有する複数種の触媒を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
触媒の存在下、フラン化合物と水素とを接触させるときの温度範囲は、工業規模での生産設備を簡略化しつつ十分な反応速度を得る観点から、好ましくは−5〜8℃であり、好ましくは0〜5℃であり、より好ましくは0〜3℃である。その他の条件は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0073】
本実施形態のテトラヒドロフラン化合物の製造方法は、反応工程において、パラジウム化合物を還元処理して得られる、パラジウムを有する水素化触媒を用いている。この水素化触媒は、一般式(2)で表されるテトラヒドロフラン化合物の合成に適した水素化触媒である。このような水素化触媒は、上述の還元工程によって製造することができる。なお、還元工程と反応工程はこの順番で別々に行ってよく、還元しながら反応を同時進行させる方法で行ってもよい。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
[触媒の製造]
二塩化パラジウム33.3mg(0.188mmol)を1Nの塩酸0.7gに溶解して第1の水溶液を調製した。この第1の水溶液をシリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、商品名:CARiACT G−6)1.00gに含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥した。次にテトラコサオキソヘプタモリブデン(VI)酸アンモニウム4水和物16.6mg(モリブデン換算で0.0940mmol)を水0.7gに溶解させて、第2の水溶液を調製した。第1の水溶液を含浸後、乾燥させたシリカに、第2の水溶液を含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥させた。その後、空気雰囲気下、500℃で3時間焼成して紛体を得た。得られた粉体を水素気流下、500℃で0.5時間加熱してパラジウム化合物とモリブデン化合物を還元した。これによって、パラジウム及びモリブデンがシリカに対してそれぞれ2質量%及び0.9質量%担持された固体の触媒(以下、「Pd−Mo/SiO
2触媒(1)」と称することもある)1.10gを得た。なお、触媒の担持量は、仕込み量に基づく計算値である。
【0077】
[2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
上述の手順で得られたPd−Mo/SiO
2触媒(1)100mgと、0.5Mのフルフラール水溶液10mlとを、ガラス製内筒管を備えた内容積50mlのオートクレーブに入れた。そして、オートクレーブ内を水素で加圧して、8MPaの水素雰囲気下、2℃で4時間攪拌した。これによって下記反応式(3)に示す還元反応を行った。反応終了後、得られた反応液を、メンブランフィルター(0.45μm)を備えた注射器で濾過して濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、装置名:GC−2014)、以下の実施例においても同様)で分析したところ、フルフラールの転化率は99.6%であり、2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は93.6%であった。
【0078】
【化6】
【0079】
(実施例2)
[2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
活性炭に対してパラジウムが5質量%担持された市販の触媒(5質量%Pd/活性炭、和光純薬工業株式会社製)40.0mgと0.5Mのフルフラール水溶液10.0mlを、ガラス製内筒管を備えた内容積50mlのオートクレーブに導入した。そして、オートクレーブ内を水素で加圧して、8MPaの水素雰囲気下、2℃で2時間攪拌した。反応終了後、得られた反応液を、メンブランフィルター(0.45μm)を備えた注射器で濾過し、濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、フルフラールの転化率は99.6%であり、2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は91.9%であった。
【0080】
(実施例3)
[2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
反応時間を2時間から4時間に変えたこと以外は、全て実施例2と同様にして反応及び分析を行った。その結果、フルフラールの転化率は99.6%であり、2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は97.1%であった。
【0081】
(実施例4)
[還元触媒の製造]
活性炭に対してパラジウムが5質量%担持された市販の触媒(5質量%Pd/活性炭、和光純薬工業株式会社製)1.00gにテトラコサオキソヘプタモリブデン(VI)酸アンモニウム4水和物41.3mg(モリブデンが0.23mmol)を水0.7gに溶解させた水溶液を含侵させ、窒素雰囲気下、300℃で3時間乾燥した。このようにして、パラジウム及びモリブデンが、活性炭に対してそれぞれ5質量%及びモリブデンが2.2質量%担持された固体の触媒(以下、「Pd−Mo/C触媒」と称することもある)1.05gを得た。
【0082】
(2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成)
上記の手順で得られた「Pd−Mo/C触媒」40.0mgと0.5Mのフルフラール水溶液10.0mlを、ガラス製内筒管を備えた内容積50mlのオートクレーブに入れた。そして、オートクレーブ内を水素で加圧して、8MPaの水素雰囲気下、2℃で2時間攪拌した。反応終了後、得られた反応液を、メンブランフィルター(0.45μm)を備えた注射器で濾過して濾液を得た。この濾過をガスクロマトグラフィーで分析したところ、フルフラールの転化率は99.6%であり、2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は90.4%であった。
【0083】
実施例1〜4で用いた触媒の種類、原料の混合比、金属の担持量及び反応条件を表1に纏めて示す。また、実施例1〜4の合成反応に関わるデータを表2に纏めて示す。なお、表2中、THFAは2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランを、FOLはフルフラールアルコールを、THFALはテトラヒドロフルフラールを示す。Othersは、THFA,FOL,THFAL以外の成分の総計を示す。また、転化率は、投入した原料(フルフラール)に対して消費された原料のモル比率である。選択率は、反応生成物全体に対する各生成物のモル比率である。収率は、投入した原料に対する生成した目的生成物(2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフラン)のモル比率である。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
(実施例5)
[2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
実施例1で得られた「Pd−Mo/SiO
2触媒(1)」100mgと、0.5Mの5−ヒドロキシメチルフルフラール水溶液10mlを、ガラス製内筒管を備えた内容積50mlのオートクレーブに入れた。そして、オートクレーブ内を水素で加圧して、8MPaの水素雰囲気下、2℃で6時間攪拌した。これによって、下記反応式(4)に示す還元反応を行った。還元反応終了後、得られた反応液を、メンブランフィルター(0.45μm)を備えた注射器で濾過して濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−ヒドロキシメチルフルフラールの転化率は99.7%であり、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は93.5%であった。
【0087】
【化7】
【0088】
(実施例6)
[還元触媒の製造]
実施例1と同様にして第1の水溶液を調製した。この第1の水溶液をシリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、商品名:CARiACT G−6)1.00gに含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥した。その後、空気雰囲気下、500℃で3時間焼成して紛体を得た。得られた粉体を水素気流下、100℃で0.5時間加熱してパラジウム化合物を還元した。これによって、パラジウムがシリカに対して2質量%担持された固体の触媒(以下、「Pd/SiO
2触媒」と称することもある)1.10gを得た。
【0089】
[2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
実施例5で用いた「Pd−Mo/SiO
2触媒(1)」に代えて、実施例6で得られたPd/SiO
2触媒を用いるとともに反応時間を6時間から4時間に変えたこと以外は、実施例5と同様にして反応を行った。その結果、5−ヒドロキシメチルフルフラールの転化率は100%であり、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は90.7%であった。
【0090】
(実施例7)
[2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
活性炭に対してパラジウムが5質量%担持された市販の触媒(5質量%Pd/活性炭、和光純薬工業株式会社製)40.0mgと0.5Mの5−ヒドロキシメチルフルフラール水溶液10mlを、ガラス製内筒管を備えた内容積50mlのオートクレーブに入れた。そして、オートクレーブ内を水素で加圧して、8MPaの水素雰囲気下、2℃で4時間攪拌した。得られた反応液を、メンブランフィルター(0.45μm)を備えた注射器で濾過して濾液を得た。この濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−ヒドロキシメチルフルフラールの転化率は99.8%であり、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は94.8%であった。
【0091】
(実施例8)
[触媒の製造]
二塩化パラジウム20.0mg(0.113mmol)を1Nの塩酸0.7gに溶解して第3の水溶液を調製した。この第3の水溶液をシリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、商品名:CARiACT G−6)1.00gに含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥した。次に、三塩化ロジウム三水和物26.1mg(0.0991mmol)を水0.7gに溶解させて、第4の水溶液を調製した。第3の水溶液を含浸後、乾燥させたシリカに、第4の水溶液を含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥させた。その後、空気雰囲気下、500℃で3時間焼成して紛体を得た。得られた粉体を水素気流下、500℃で0.5時間加熱してパラジウム化合物とロジウム化合物を還元した。これによって、パラジウム及びロジウムがシリカに対してそれぞれ1.2質量%及び1.0質量%担持された固体の触媒(以下、「Pd−Rh/SiO
2触媒」と称することもある)1.07gを得た。なお、触媒の担持量は、仕込み量に基づく計算値である。
【0092】
[2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
実施例6で用いたPd/SiO
2触媒に代え、実施例8で得られたPd−Rh/SiO
2触媒を用い、反応温度を2℃から40℃へ、反応時間を4時間から1時間に変えたこと以外は、実施例6と同様にして反応を行った。その結果、5−ヒドロキシメチルフルフラールの転化率は99.4%であり、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は62.6%であった。
【0093】
(実施例9)
[触媒の製造]
実施例8と同様にして第3の水溶液を調製した。この第3の水溶液をシリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、商品名:CARiACT G−6)1.00gに含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥した。次に、三塩化ルテニウムn水和物(ルテニウム含量:41.5質量%)24.1mg(ルテニウム含量:0.0991mmol)を水0.7gに溶解させて、第5の水溶液を調製した。第3の水溶液を含浸後、乾燥させたシリカに、第5の水溶液を含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥させた。その後、空気雰囲気下、500℃で3時間焼成して紛体を得た。得られた粉体を水素気流下、500℃で0.5時間加熱してパラジウム化合物とルテニウム化合物を還元した。これによって、パラジウム及びルテニウムがシリカに対してそれぞれ1.2質量%及び1.0質量%担持された固体の触媒(以下、「Pd−Ru/SiO
2触媒」と称することもある)1.07gを得た。なお、触媒の担持量は、仕込み量に基づく計算値である。
【0094】
[2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
実施例8で用いたPd−Rh/SiO
2触媒に代えて、実施例9で得られたPd−Ru/SiO
2触媒を用いたこと以外は、実施例8と同様にして反応を行った。その結果、5−ヒドロキシメチルフルフラールの転化率は99.9%であり、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は65.6%であった。
【0095】
(実施例10)
[触媒の製造]
実施例8と同様にして第3の水溶液を調製した。この第3の水溶液をシリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、商品名:CARiACT G−6)1.00gに含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥した。次に、イリジウム酸クロライドn水和物(イリジウム含量:37.0質量%)51.5mg(イリジウム含量:0.0991mmol)を水0.7gに溶解させて、第6の水溶液を調製した。第3の水溶液を含浸後、乾燥させたシリカに、第6の水溶液を含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥させた。その後、空気雰囲気下、500℃で3時間焼成して紛体を得た。得られた粉体を水素気流下、500℃で0.5時間加熱してパラジウム化合物とイリジウム化合物を還元した。これによって、パラジウム及びイリジウムがシリカに対してそれぞれ1.2質量%及び1.9質量%担持された固体の触媒(以下、「Pd−Ir/SiO
2触媒」と称することもある)1.08gを得た。なお、触媒の担持量は、仕込み量に基づく計算値である。
【0096】
[2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
実施例8で用いたPd−Rh/SiO
2触媒に代えて、実施例10で得られたPd−Ir/SiO
2触媒を用いたこと以外は、実施例8と同様にして反応を行った。その結果、5−ヒドロキシメチルフルフラールの転化率は100%であり、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は65.7%であった。
【0097】
(実施例11)
[触媒の製造]
実施例8と同様にして第3の水溶液を調製した。この第3の水溶液をシリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、商品名:CARiACT G−6)1.00gに含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥した。次に、ヘンテトラコンタオキソ十二タングステン(VI)酸アンモニウム5水和物25.9mg(タングステン含量:0.0991mmol)を水0.7gに溶解させて、第7の水溶液を調製した。第3の水溶液を含浸後、乾燥させたシリカに、第7の水溶液を含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥させた。その後、空気雰囲気下、500℃で3時間焼成して紛体を得た。得られた粉体を水素気流下、500℃で0.5時間加熱してパラジウム化合物とタングステン化合物を還元した。これによって、パラジウム及びタングシテンがシリカに対してそれぞれ1.2質量%及び1.8質量%担持された固体の触媒(以下、「Pd−W/SiO
2触媒」と称することもある)1.07gを得た。なお、触媒の担持量は、仕込み量に基づく計算値である。
【0098】
[2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
実施例8で用いたPd−Rh/SiO
2触媒に代えて、実施例11で得られたPd−W/SiO
2触媒を用いたこと以外は、実施例8と同様にして反応を行った。その結果、5−ヒドロキシメチルフルフラールの転化率は98.2%であり、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は48.6%であった。
【0099】
(実施例12)
[触媒の製造]
実施例8と同様にして第3の水溶液を調製した。この第3の水溶液をシリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、商品名:CARiACT G−6)1.00gに含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥した。次に、テトラオキソレニウム(VII)酸アンモニウム26.6mg(レニウム含量:0.0991mmol)を水0.7gに溶解させて、第8の水溶液を調製した。第3の水溶液を含浸後、乾燥させたシリカに、第8の水溶液を含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥させた。その後、空気雰囲気下、500℃で3時間焼成して紛体を得た。得られた粉体を水素気流下、500℃で0.5時間加熱してパラジウム化合物とレニウム化合物を還元した。これによって、パラジウム及びレニウムがシリカに対してそれぞれ1.2質量%及び1.8質量%担持された固体の触媒(以下、「Pd−Re/SiO
2触媒」と称することもある)1.08gを得た。なお、触媒の担持量は、仕込み量に基づく計算値である。
【0100】
[2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
実施例8で用いたPd−Rh/SiO
2触媒に代えて、実施例12で得られたPd−Re/SiO
2触媒を用いたこと以外は、実施例8と同様にして反応を行った。その結果、5−ヒドロキシメチルフルフラールの転化率は99.4%であり、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は53.8%であった。
【0101】
(実施例13)
[触媒の製造]
実施例8と同様にして第3の水溶液を調製した。この第3の水溶液をシリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、商品名:CARiACT G−6)1.00gに含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥した。次にテトラコサオキソヘプタモリブデン(VI)酸アンモニウム4水和物17.5mg(モリブデン含量:0.0997mmol)を水0.7gに溶解させて、第9の水溶液を調製した。第3の水溶液を含浸後、乾燥させたシリカに、第9の水溶液を含侵させ、空気雰囲気下、110℃で7時間乾燥させた。その後、空気雰囲気下、500℃で3時間焼成して紛体を得た。得られた粉体を水素気流下、500℃で0.5時間加熱してパラジウム化合物とモリブデン化合物を還元した。これによって、パラジウム及びモリブデンがシリカに対してそれぞれ1.2質量%及び1.0質量%担持された固体の触媒(以下、「Pd−Mo/SiO
2触媒(2)」と称することもある)1.08gを得た。なお、触媒の担持量は、仕込み量に基づく計算値である。
【0102】
[2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの合成]
実施例8で用いたPd−Rh/SiO
2触媒に代えて、実施例13で得られた「Pd−Mo/SiO
2触媒(2)」を用いたこと以外は、実施例8と同様にして反応を行った。その結果、5−ヒドロキシメチルフルフラールの転化率は98.0%であり、2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランの収率は34.7%であった。
【0103】
実施例5〜13で用いた触媒の種類、原料の混合比及び金属の担持量を表3に纏めて示す。また、実施例5〜13の合成反応に関わるデータを表4に纏めて示す。なお、表3中、HMFは5−ヒドロキシメチルフルフラールを、BHTFは2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフランを、BHFは2,5−ジヒドロキシメチルフランを、HTFは5−ヒドロキシメチルテトラヒドロ−2−フルアルデヒドを示す。Othersは、BHTF,BHF,HTF以外の成分の総計を示す。Mは第二金属を示す。また、転化率は、投入した原料(フルフラール)に対して消費された原料のモル比率である。選択率は、反応生成物全体に対する各生成物のモル比率である。収率は、投入した原料に対する生成した目的生成物(2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフラン)のモル比率である。
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
上述の各実施例では、触媒の存在下でフラン化合物を水素還元することによって、テトラヒドロフラン化合物を、低温下、高い反応速度で、高収率且つ高選択的に製造できることが確認された。