(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
プラズモン共鳴を利用した様々な装置が図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、装置の概念の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、単に本実施形態の原理を容易に理解させることを目的とする。したがって、本実施形態の原理は、これらに何ら限定されるものではない。
【0031】
<第1実施形態>
(検出装置)
図1は、検出装置100の概略図である。
図1を参照して、検出装置100が説明される。
【0032】
検出装置100は、対象物体TOの近傍で生じたプラズモン共鳴を利用して様々な特性を検出することができる。対象物体TOが、情報が記録された記録媒体であるならば、検出装置100は、記録媒体から情報を検出及び再生することができる。検出装置100は、対象物体TOの検査に用いられてもよい。検出装置100は、対象物体TOが特定の材料を含有するか否かを検出するために用いられてもよい。代替的に、検出装置100は、対象物体TOの形状を検出するために用いられてもよい。例えば、検出装置100は、対象物体TOの表面の形状的な特性を正確に検出することができる。
【0033】
検出装置100は、光源110と、導光部120と、散乱体130と、検出部140と、を備える。本実施形態において、光源110は、レーザ光LBを出射する。代替的に、散乱体130と対象物体TOとの間でプラズモン共鳴を引き起こすことができる光を出射することができる光学素子が光源110として用いられてもよい。本実施形態において、レーザ光LBは、出射光として例示される。
【0034】
光源110は、導光部120に向けてレーザ光LBを出射する。導光部120は、散乱体130へレーザ光LBを導く。導光部120は、コリメートレンズ、ミラーや対物レンズユニットを用いて形成された光学系であってもよい。代替的に、導光部120は、導波路や、レーザ光LBを散乱体130に向けて案内することができる他の光学的構造体であってもよい。
【0035】
散乱体130は、対象物体TOに近接して配置される。本実施形態において、散乱体130と対象物体TOとの間の距離は、散乱体130と対象物体TOとの間でプラズモン共鳴が生ずるように設定される。導光部120が、レーザ光LBを散乱体130へ導くと、対象物体TOと散乱体130との間で、プラズモン共鳴が引き起こされる。散乱体130は、レーザ光LBを反射し、反射光RF1を生成する。本実施形態において、反射光RF1は、第1反射光として例示される。
【0036】
検出部140は、反射光RF1を受光し、反射光RF1の位相の状態を検出する。検出部140は、位相の変化を、位相の状態として検出してもよい。代替的に、検出部140は、所定の閾値よりも大きな或いは小さな位相の値を、位相の状態として検出してもよい。反射光RF1の位相の状態は、プラズモン共鳴の強度の変化に応じて変動する。プラズモン共鳴の強度は、対象物体TOの状態に応じて変化する。したがって、検出装置100は、反射光RF1の位相の状態を検出することによって、対象物体TOの状態に関する情報を取得することができる。
【0037】
検出部140は、干渉光学系を含んでもよい。干渉光学系は、光源110から出射されたレーザ光LBの一部を分離し、参照光を生成してもよい。干渉光学系は、参照光と散乱体130からの反射光RF1とを干渉させ、干渉光を生成してもよい。検出部140は、干渉光を受ける受光部を含んでもよい。受光部は、干渉光を検出し、反射光RF1の位相の状態を見極めてもよい。受光部は、反射光RF1の位相の状態に応じた出力信号を生成及び出力してもよい。したがって、検出装置100は、干渉光学系から得られた干渉光を検出することによって、反射光RF1の位相の状態に関する情報を取得することができる。
【0038】
検出部140が、干渉光学系及び受光部を備えるならば、検出装置100は、干渉光の強度の変化に基づいて、反射光RF1の位相の状態を、精度よく且つ容易に検出することができる。
【0039】
<第2実施形態>
(光ピックアップ装置の構成)
図2は、検出装置として例示される光ピックアップ装置200の概略図である。光ピックアップ装置200は、第1実施形態に関連して説明された検出装置100の原理に従って、構築されている。
図1及び
図2を参照して、光ピックアップ装置200が説明される。
【0040】
光ピックアップ装置200は、レーザ光源210と、コリメートレンズ221と、ミラー222と、集光レンズ223と、受光素子224と、ビームスプリッタ225と、ミラー226と、検出レンズ248と、光検出素子249と、信号処理部250と、対物レンズユニット260と、を備える。対物レンズユニット260は、対物レンズ229と、基板270と、基板270に取り付けられた散乱体230と、を含む。レーザ光源210は、第1実施形態に関連して説明された光源110に対応する。対物レンズ229は、第1実施形態に関連して説明された導光部120に対応する。
図2に示される散乱体230は、
図1を参照して説明された散乱体130に対応する。検出レンズ248及び光検出素子249は、第1実施形態に関連して説明された検出部140に対応する。
【0041】
本実施形態において、光ピックアップ装置200は、記録媒体RMに記録された情報を再生する。或いは、光ピックアップ装置200は、記録媒体RMに情報を光学的に記録することができる。記録媒体RMは、第1実施形態に関連して説明された対象物体TOに対応する。
【0042】
レーザ光源210は、レーザ光LBをコリメートレンズ221に向けて出射する。本実施形態において、レーザ光LBは、出射光として例示される。
【0043】
コリメートレンズ221は、レーザ光LBを平行光にする。その後、レーザ光LBは、ミラー222に向かう。ミラー222は、レーザ光LBの一部をビームスプリッタ225に向けて反射する。ミラー222は、レーザ光LBの他の一部を透過させる。ミラー222を透過したレーザ光LBは、集光レンズ223によって、受光素子224に集光される。受光素子224は、受光に応じて、信号を出力する。受光素子224が出力した信号は、光ピックアップ装置200の駆動制御に用いられてもよい。
【0044】
ミラー222によって反射されたレーザ光LBは、ビームスプリッタ225に入射する。ビームスプリッタ225は、レーザ光LBの一部をミラー226に向けて反射させ、参照光RLを生成する。ビームスプリッタ225は、レーザ光LBの他の一部を透過させる。本実施形態において、ビームスプリッタ225は、参照光生成部として例示される。
【0045】
本実施形態において、レーザ光LBの一部が、参照光として利用される。代替的に、参照光の生成に専ら用いられる光源が用意されてもよい。したがって、参照光生成部は、導光部120の一部として形成されてもよく、或いは、導光部120とは異なる光学系として形成されてもよい。
【0046】
ビームスプリッタ225を透過したレーザ光LBは、対物レンズ229に入射する。基板270は、対物レンズ229に対向する第1対向面271と、第1対向面271とは反対側の第2対向面272と、を含む。第2対向面272は、記録媒体RMに対向する。散乱体230は、第2対向面272に取り付けられる。対物レンズ229は、散乱体230に向けてレーザ光LBを集光する。
【0047】
散乱体230は、金、銀、プラチナ、アルミニウム、クロムといった金属材料であってもよい。代替的に、散乱体230は、金、銀、プラチナ、アルミニウム、クロムといった金属材料を含有する合金であってもよい。更に代替的に、散乱体230は、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ、又は、記録媒体RMと協働してプラズモン共鳴を発生させることができる他の材料から形成されてもよい。
【0048】
本実施形態において、第2対向面272に穴部が穿設される。散乱体230は、第2対向面272に形成された穴部に埋設される。この結果、対物レンズユニット260が記録媒体RM上で移動する際に、散乱体230は、記録媒体RMと接触しにくくなる。したがって、散乱体230は、破損しにくくなり、且つ、第2対向面272から剥離しにくくなる。
【0049】
散乱体230にレーザ光LBが照射されると、散乱体230において、局在プラズモンが励起される。この結果、散乱体230の近くにおいて、光電場の強度が上昇する。
【0050】
本実施形態において、散乱体230として、直径約50nmの円柱体が用いられる。このとき、増強された光電場の領域は、円柱体の底面に対応する約50nmの直径の円形領域になる。
【0051】
散乱体230と記録媒体RMとの距離が、所定の値となるまで、散乱体230が記録媒体RMに近接されるならば、増強された光電場の円形領域において、情報が記録されることとなる。
【0052】
(光ピックアップ装置の再生動作)
図2を参照して、光ピックアップ装置200の再生動作が説明される。
【0053】
上述の如く、レーザ光源210から出射されたレーザ光LBは、散乱体230に到達する。散乱体230は、レーザ光LBを反射し、反射光RF1を生成する。反射光RF1は、対物レンズ229を通じて、ビームスプリッタ225に向かう。本実施形態において、反射光RF1は、第1反射光として例示される。
【0054】
上述の如く、ビームスプリッタ225は、レーザ光LBの一部を参照光RLに変換する。参照光RLは、ミラー226によって、反射され、再度、ビームスプリッタ225に向かう。ビームスプリッタ225は、ミラー226によって反射された参照光RLを透過させる一方で、散乱体230からの反射光RF1を検出レンズ248に向けて反射する。この結果、ビームスプリッタ225と検出レンズ248との間において、参照光RLと反射光RF1は合波され、干渉光ILになる。本実施形態において、ミラー226及びビームスプリッタ225は、干渉光学系として例示される。
【0055】
干渉光ILは、検出レンズ248に入射する。検出レンズ248は、光検出素子249に干渉光ILを集光する。光検出素子249は、干渉光ILに応じた電気信号を生成する。本実施形態において、検出レンズ248及び光検出素子249は、受光部として例示される。光検出素子249が生成した電気信号は、出力信号として例示される。
【0056】
光ピックアップ装置200が、散乱体230へのレーザ光LBを照射し、且つ、基板270を記録媒体RMに接近させると、記録媒体RMの表面に記録マークが形成される。記録媒体RMが回転している間、記録媒体RMに記録される情報に従って、レーザ光源210からのレーザ光の出射が制御されるならば、記録媒体RM上には、記録マークが形成された領域並びに記録マークが形成されていない領域が形成される。以下の説明において、記録マークが形成された領域の状態は、「記録状態」と称される。記録マークが形成されていない領域の状態は、「未記録状態」と称される。
【0057】
記録媒体RM上における記録状態及び未記録状態の生成は、実用化されている相変化ディスク(例えば、DVDやBlu−rayディスク)と同様の原理に従ってもよい。本実施形態において、記録媒体RMは、相変化膜を含む。相変化膜は、レーザ光LBの照射の有無に応じて、非結晶状態(アモルファス)と結晶状態との間で変化する。本実施形態において、結晶状態の領域が記録状態の領域として例示され、且つ、非結晶状態の領域が未記録状態の領域として例示されてもよい。代替的に、結晶状態の領域が未記録状態の領域として例示され、且つ、非結晶状態の領域が記録状態の領域として例示されてもよい。
【0058】
記録状態にある領域と散乱体230との間で生ずるプラズモン共鳴の強度は、未記録状態にある領域と散乱体230との間で生ずるプラズモン共鳴の強度と相違する。反射光RF1の位相は、プラズモン共鳴の強度に依存する。即ち、プラズモン共鳴の強度の変化は、反射光RF1の位相の変化となって現れる。反射光RF1の位相の変化は、干渉光ILの強度の変化として、光検出素子249によって検出される。光検出素子249は、干渉光ILの強度変化を表す電気信号を出力する。本実施形態の原理によれば、電気信号は、記録媒体RMの表面の記録状態の領域及び未記録状態の領域の分布を正確に表現することができる。信号処理部250は、光検出素子249からの電気信号を用いて、情報の再生処理を実行する。
【0059】
信号処理部250は、再生処理を通じて、光検出素子249からの電気信号を再生信号に変換する。再生信号は、記録媒体RMに記録された情報を、デジタル信号として表現する。
【0060】
図2に示される様々な要素は、薄膜を用いて形成されてもよい。薄膜として形成された要素と基板が一体化された光集積回路が用いられるならば、
図2を参照して説明された光ピックアップ装置200に対して小型の設計が達成される。
【0061】
(反射光の位相変化に関する原理)
図3は、散乱体330の概略的な斜視図である。散乱体330に関連する説明は、上述の散乱体130,230に適用可能である。
図1乃至
図3を参照して、反射光RF1の位相変化に関する原理が説明される。
【0062】
図3には、28nmの厚さ(
図3中、記号「t」で表される)及び80nmの幅(
図3中、記号「w」で表される)の断面を有する直方体の散乱体330が示されている。散乱体330の長さは、記号「L」で表される。散乱体330に入射するレーザ光LBの波長は、「780nm」である。レーザ光LBの偏光方向は、散乱体330の長さ「L」の方向に一致している。
【0063】
散乱体330で発生するプラズモン光は、特定の条件(以下、共鳴条件と称される)が満足された場合のみ、強く共鳴する。プラズモン光が共鳴状態にあるならば、散乱体330の近傍の所定の位置において、光電場が局所的に増強される。共鳴条件は、レーザ光LBの波長、レーザ光LBの偏光状態、散乱体330の構造、散乱体330の複素屈折率、散乱体330が取り付けられた基板(
図2中、基板270)、記録媒体(
図1中、対象物体TO:
図2中、記録媒体RM)の屈折率や記録媒体と散乱体330との間の距離(ギャップ間隔)に依存する。
【0064】
図4は、共鳴条件を定める様々なパラメータのうち散乱体330の長さ「L」が変化されたときにおけるレーザ光LB(入射光)に対する反射光RF1の位相変化と散乱体330での光強度のピーク値の変化とを表すグラフである。
図1乃至
図4を参照して、散乱体330の長さ「L」の変化に伴う反射光RF1の位相変化及び光強度のピーク値の変化が説明される。
【0065】
図4において、反射光RF1の位相変化は、折れ線で表されている。
図4において、光強度のピーク値の変化は、曲線で表されている。
図4に表されるピーク値は、レーザ光LBの強度を用いて、散乱体330における光強度分布のピーク値を規格化したピーク強度として表されている。尚、
図4に表されるピーク値は、FDTD法(Finite Difference Time Domain Method)に基づく数値計算の結果である。
図3に示される散乱体330の場合には、光強度分布のピークは、散乱体330が有する8つの頂点の近傍に現れる。尚、FDTD法は、マクスウェル方程式を差分化し、電磁界分布を数値計算するための用いられる手法である。FDTD法は、プラズモン共鳴といった現象を、コンピュータを用いて解析するために一般的に利用されている。
【0066】
図4に示されるピーク値の変化に関して、散乱体330の長さ「L」が変化すると、ピーク強度も変化する。散乱体330の長さ「L」が、「150nm」であるならば、ピーク強度の分布は、ピークに到達する。即ち、散乱体330の長さ「L」が、「150nm」であるならば、散乱体330において、大きなプラズモン共鳴が発生し、電磁界分布が局所的に増強されることとなる。
【0067】
図4に示される反射光RF1の位相変化に関して、プラズモン共鳴が大きくなる条件下(即ち、散乱体330の長さ「L」が、「150nm」である場合)において、反射光RF1の位相が大きく変化する。
【0068】
図2を参照して説明された如く、記録媒体RMの表面には、記録状態の領域並びに未記録状態の領域が形成される。散乱体230が近接する領域が記録状態であるか未記録状態であるかに応じて、散乱体230においてプラズモン共鳴が発生する条件及び散乱体230においてプラズモン共鳴が発生しない条件が作り出されることとなる。散乱体230におけるプラズモン共鳴の発生の有無に応じて、散乱体230からの反射光RF1の位相が変化する。
【0069】
図2を参照して説明された如く、光検出素子249は、干渉光ILの強度変化を通じて、散乱体230からの反射光RF1の位相の状態を検出することができる。この結果、信号処理部250は、記録媒体RMに記録された情報を読み取り、デジタル信号として出力することができる。
【0070】
本実施形態において、対象物体として用いられる記録媒体RMの所定の領域が、記録状態(記録マークが形成された状態)であるか、未記録状態(記録マークが未形成である状態)であるかに応じて、散乱体230と記録媒体RMとの間で生ずるプラズモン共鳴の強度が変化する。散乱体230からの反射光RF1の位相の状態の検出を通じて、記録媒体RMの所定の領域が、記録状態であるか、未記録状態であるかが見極められる。
【0071】
上述の反射光RF1の位相変化の検出が利用されるならば、記録媒体RMの所定領域の状態が、高感度且つ低ノイズ下で検出される。
【0072】
本実施形態の光ピックアップ装置200は、第1実施形態に関連して説明された検出装置100の原理を利用し、記録媒体RMに記録された情報を再生する。光ピックアップ装置200は、記録媒体RMの所定領域が記録状態であるか未記録状態であるかを正確に見極めることができるので、光ピックアップ装置200は、記録媒体RMに記録された情報を正確に再生することができる。
【0073】
<第3実施形態>
(集光光学系)
第2実施形態において、散乱体230に対する集光光学系として、対物レンズ229が用いられている。対物レンズ229は、基板270の第2対向面272に取り付けられた散乱体230にレーザ光LBを集光し、散乱体230でプラズモン光を生じさせている。本実施形態において、対物レンズ229に代えて利用可能な集光光学系が説明される。
【0074】
図5は、対物レンズ229に代えて利用可能な集光光学系300の概略図である。
図2及び
図5を参照して、集光光学系300が説明される。尚、第2実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、第2実施形態の説明が援用される。集光光学系300は、導光部として例示されてもよい。
【0075】
図5には、第2実施形態に関連して説明されたビームスプリッタ225に加えて、半球形状のレンズ229Aが示されている。第2実施形態と同様に、ビームスプリッタ225は、レーザ光LBの一部を透過させる。ビームスプリッタ225を透過したレーザ光LBは、レンズ229Aに入射する。
【0076】
レンズ229Aは、半球形状の輪郭を模る球面部271Aと、記録媒体RMに対向する平坦な取付面272Aと、を含む。散乱体230は、取付面272Aに埋設される。ビームスプリッタ225を透過したレーザ光LBは、球面部271Aに入射する。球面部271Aは、レーザ光LBを屈折させ、取付面272Aに埋設された散乱体230に集光する。
【0077】
本実施形態において、散乱体230は、レンズ229Aに一体化される。したがって、第1実施形態と異なり、集光機能を発揮するレンズ要素と散乱体230との間の位置的な調整は不要となる。したがって、集光光学系300は、簡便に設計されることとなる。
【0078】
<第4実施形態>
(集光光学系)
第2実施形態において、散乱体230に対する集光光学系として、対物レンズ229が用いられている。対物レンズ229は、基板270の第2対向面272に取り付けられた散乱体230にレーザ光LBを集光し、散乱体230でプラズモン光を生じさせている。本実施形態において、対物レンズ229に代えて利用可能な集光光学系が説明される。
【0079】
図6は、対物レンズ229に代えて利用可能な集光光学系300Bの概略図である。
図2及び
図6を参照して、集光光学系300Bが説明される。尚、第2実施形態及び第3実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、第2実施形態及び第3実施形態の説明が援用される。集光光学系300Bは、導光部として例示されてもよい。
【0080】
図6には、第2実施形態に関連して説明されたビームスプリッタ225及び第3実施形態に関連して説明された半球形状のレンズ229Aに加えて、集光レンズ229Bが示されている。集光レンズ229Bは、ビームスプリッタ225とレンズ229Aとの間に配置される。集光レンズ229B及びレンズ229Aは、ソリッドイマージョンレンズとして機能する。
【0081】
半球形状のレンズ229Aの屈折率が、記号「n」で表されるならば、集光レンズ229Bによって作り出される集光スポットは、レンズ229A内において、「1/n」に縮小される。尚、レンズ229Aは、超半球形状であってもよい。
【0082】
超半球形状のレンズ229Aの半径が、記号「r」で表されるならば、平坦な取付面272Aから測定されるレンズ229Aの厚さ「LT」は、以下の数式を用いて表される。
【0084】
したがって、レンズ229Aが、超半球形状であるならば、集光レンズ229Bによって作り出される集光スポットは、レンズ229A内において、「1/(n×n)」に縮小される。
【0085】
小さな集光スポットは、迷光を低減するので、光の利用効率が増加する。したがって、再生信号中の光ノイズ成分も少なくなる。
【0086】
第2実施形態及び第3実施形態において、様々な集光光学系300,300Bが示されている。集光光学系300,300Bは、散乱体230へレーザ光LBを導くために用いられる。集光光学系300,300Bに代えて、光導波路が用いられてもよい。光導波路がレーザ光LBを散乱体230に導き、且つ、散乱体230が反射した反射光RF1或いは散乱体230を透過した透過光を光検出素子249に導くならば、上述の様々な実施形態の原理に従って、再生信号は適切に検出される。
【0087】
<第5実施形態>
(散乱体)
第2実施形態において、散乱体230は、円柱体である。本実施形態において、形状において第2実施形態と異なる様々な散乱体が説明される。
【0088】
図7は、基板270に取り付けられた散乱体230Aの概略的な斜視図である。
図2及び
図7を参照して、散乱体230Aが説明される。尚、第2実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、第2実施形態の説明が援用される。
【0089】
図7に示される散乱体230Aは、第1対向面271に向けて尖った錐体と第2対向面272に向けて尖った錐体とを重ね合わせた立体である。散乱体230Aは、菱形形状又は矩形状の断面を有する。この結果、散乱体230Aは、第2実施形態に関連して説明された散乱体230よりも大きな反射面積を有することとなる。したがって、散乱体230Aから反射される反射光RF1の光量は比較的大きくなる。
【0090】
図8は、基板270に取り付けられた散乱体230Bの概略的な斜視図である。
図8を参照して、散乱体230Bが説明される。尚、第2実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、第2実施形態の説明が援用される。
【0091】
図8に示される散乱体230Bは、第2対向面272に向けて尖った錐体である。散乱体230Bは、三角形状の断面を有する。第2対向面272上或いは近傍に配置された散乱体230Bの頂部の近傍において、プラズモン共鳴による電界振幅のピークが集中する。この結果、再生信号に対する検出感度が向上する。
【0092】
図9は、基板270に取り付けられた散乱体230Cの概略的な斜視図である。
図2及び
図9を参照して、散乱体230Cが説明される。尚、第2実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、第2実施形態の説明が援用される。
【0093】
図9に示される散乱体230Cは、基板270内に配置された円柱体と第2対向面272に向けて尖った錐体とを重ね合わせた立体である。散乱体230Cは、五角形状の断面を有する。この結果、散乱体230Cは、第2実施形態に関連して説明された散乱体230よりも大きな反射面積を有し、且つ、第2対向面272の近傍の頂点における電界振幅のピークの集中が得られる。
【0094】
上述の様々な実施形態において、散乱体230乃至230Cは、円柱形状、菱形形状、三角形状や五角形状といった様々な断面形状を有する。代替的に、散乱体は、他の断面形状を有するように設計されてもよい。プラズモン共鳴による電磁場の増強が必要とされない頂点部分において、散乱体の頂部は、丸みを帯びるように設計されてもよい。この結果、不必要な電磁場の集中が生じにくくなる。
【0095】
<第6実施形態>
(光ピックアップ装置の構成)
図10は、検出装置として例示される光ピックアップ装置200Dの概略図である。光ピックアップ装置200Dは、第1実施形態に関連して説明された検出装置100の原理に従って、構築されている。
図1及び
図10を参照して、光ピックアップ装置200Dが説明される。尚、第2実施形態及び第5実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、上述の説明が援用される。
【0096】
本実施形態において、光ピックアップ装置200Dは、記録媒体RMDから情報を再生する。記録媒体RMDの表面には、多数の微小構造体MSが形成されている。微小構造体MSは、例えば、5〜100ナノメートルサイズの粒子状の相変化材料である。微小構造体MSは、結晶状態と非結晶状態(アモルファス)との間で相変化する。結晶状態と非結晶状態との間での微小構造体MSの相変化を利用して、記録媒体RMDに情報(デジタル信号)が記録されている。本実施形態において、微小構造体MSは、
図1を参照して説明された対象物体TOに対応する。
【0097】
光ピックアップ装置200Dは、第2実施形態と同様に、レーザ光源210と、コリメートレンズ221と、ミラー222と、集光レンズ223と、受光素子224と、対物レンズ229と、検出レンズ248と、光検出素子249と、信号処理部250と、を備える。光ピックアップ装置200Dは、第5実施形態に関連して説明された散乱体230Cを更に備える。
【0098】
光ピックアップ装置200Dは、第1ビームスプリッタ321と、第2ビームスプリッタ322と、第3ビームスプリッタ323と、反射鏡324と、光ファイバ335と、集光レンズ336と、コリメートレンズ337と、を更に備える。
【0099】
レーザ光源210から出射されたレーザ光LBの一部は、ミラー222によって反射され、第1ビームスプリッタ321に向かう。第1ビームスプリッタ321は、ミラー222によって反射されたレーザ光LBを透過させる。レーザ光LBは、その後、反射鏡324へ向かう。
【0100】
反射鏡324は、対物レンズ229に向けて、レーザ光LBを反射させる。対物レンズ229は、散乱体230C及び記録媒体RMD上の微小構造体MSにレーザ光LBを集光する。散乱体230Cは、レーザ光LBを反射し、反射光RF1を生成する。微小構造体MSは、レーザ光LBを反射し、反射光RF2を生成する。本実施形態において、対物レンズ229は、導光部として例示される。散乱体230Cからの反射光RF1は、第1反射光として例示される。微小構造体MSからの反射光RF2は、第2反射光として例示される。
【0101】
散乱体230Cの形状や散乱体230Cと記録媒体RMDとの間の距離といった散乱体230C及び微小構造体MSに関する様々な設計は、微小構造体MSが結晶であるならば、散乱体230Cと微小構造体MSとの間でプラズモン共鳴が生じ、且つ、微小構造体MSがアモルファス状態であるならば、散乱体230Cと微小構造体MSとの間でのプラズモン共鳴が生じないように定められる。第2実施形態と同様に、散乱体230Cと微小構造体MSとの間でプラズモン共鳴が生じている間の反射光RF1の位相は、散乱体230Cと微小構造体MSとの間でプラズモン共鳴が生じていない間の散乱体230Cからの反射光RF1の位相とは相違する。
【0102】
散乱体230Cと微小構造体MSとの間のプラズモン共鳴の有無に応じて位相変調する反射光RF1は、対物レンズ229に向かう。微小構造体MSからの反射光RF2も、反射光RF1と同様に対物レンズ229に向かう。対物レンズ229は、反射光RF1,RF2を平行光に変換する。その後、反射光RF1,RF2は、反射鏡324によって反射され、第1ビームスプリッタ321へ向かう。
【0103】
第1ビームスプリッタ321は、反射光RF1,RF2を第2ビームスプリッタ322に向けて反射する。第2ビームスプリッタ322は、反射光RF1,RF2を第1検出光DL1と第2検出光DL2とに分ける。
【0104】
第1検出光DL1は、第2ビームスプリッタ322を透過し、集光レンズ336へ向かう。光ファイバ335は、入射端338と、入射端338とは反対側の出射端339と、を含む。集光レンズ336は、第1検出光DL1を入射端338に集光する。入射端338を通じて光ファイバ335に入射した第1検出光DL1は、出射端339から出射される。
【0105】
コリメートレンズ337は、出射端339から出射された第1検出光DL1を平行光に変換する。コリメートレンズ337を通過した第1検出光DL1は、第3ビームスプリッタ323に向かう。第1ビームスプリッタ321によって生成された第2検出光DL2は、第1ビームスプリッタ321から第3ビームスプリッタ323へ直接的に向かう。第3ビームスプリッタ323において、第1検出光DL1の伝搬は、第2検出光DL2に対して、光ファイバ335の長さの分だけ遅延されている。本実施形態において、第1検出光DL1の伝搬を遅らせるために光ファイバ335が用いられている。代替的に、第1検出光DL1の伝搬を遅らせることができる他の光学素子が光ファイバ335に代えて用いられてもよい。
【0106】
第3ビームスプリッタ323は、第1検出光DL1と第2検出光DL2とを合波する。検出レンズ248は、合波された第1検出光DL1及び第2検出光DL2を光検出素子249に集光する。光検出素子249は、合波された第1検出光DL1及び第2検出光DL2から反射光RF1,RF2の位相の状態を検出する。
【0107】
光検出素子249は、合波された第1検出光DL1及び第2検出光DL2の強度に応じて、電気信号を生成する。電気信号は、光検出素子249から信号処理部250へ出力される。信号処理部250は、電気信号に応じて、再生信号を生成する。
【0108】
(再生信号の生成原理)
図11は、微小構造体MS上を通過する散乱体230Cを概略的に表す。
図10及び
図11を参照して、再生信号の生成原理が説明される。
【0109】
図11には、微小構造体MSとして、微小構造体MS1及び微小構造体MS2が示されている。微小構造体MS2は、微小構造体MS1の隣に配置されている。散乱体230Cは、微小構造体MS1上を通過した後、微小構造体MS2上を通過する。
【0110】
図11には、散乱体230Cが微小構造体MS1の中心上を通過してから散乱体230Cが微小構造体MS2の中心上を通過するまでの期間「T」が表されている。
図10を参照して説明された光ファイバ335は、第1検出光DL1の伝搬を、第2検出光DL2に対して、期間「T」だけ遅延させるように設計される。この結果、微小構造体MS2の状態が、微小構造体MS1と同一であるか否かに応じて、第3ビームスプリッタ323から出射される干渉光の干渉状態が変化する。光検出素子249は、干渉状態の変化を、干渉光の光量として検出する。したがって、光ピックアップ装置200Dは、微小構造体MSの状態が変化したか否かを検出し、情報を再生することができる。
【0111】
図12は、記録媒体RMD上の例示的な記録パターンの概略図である。
図12を参照して、記録媒体RMD上の記録パターンが説明される。
【0112】
記録媒体RMDへ記録するために、微小構造体MSの組成や材質は、2値の信号に対応される。本実施形態において、微小構造体MSは、相変化材料から形成される。したがって、微小構造体MSの結晶状態及び非結晶状態(アモルファス)が、2値の信号に対応され、情報を記録媒体RMDに記録する。
図12には、結晶状態の微小構造体MSC並びに非結晶状態(アモルファス)の微小構造体MSAが微小構造体MSとして示されている。
【0113】
第2実施形態に関連して説明された如く、プラズモン共鳴の発生は、散乱体230Cに照射されたレーザ光LBの波長と散乱体230Cの長さとの関係に依存する。
図12に示される如く、散乱体230Cと微小構造体MSCとの間で生ずるプラズモン共鳴の発生条件(散乱体230Cの長さに関する条件)は、散乱体230Cと微小構造体MSAとの間で生ずるプラズモン共鳴の発生条件(散乱体230Cの長さに関する条件)とは相違する。したがって、散乱体230Cが近接する微小構造体MSの状態に応じて、散乱体230Cからの反射光RF1の位相が変化する。
【0114】
図13は、散乱体230Cからの反射光RF1の位相と散乱体230Cの長さとの間の関係を表す概略的なグラフである。
図12及び
図13を参照して、散乱体230Cからの反射光RF1の位相と散乱体230Cの長さとの間の関係が説明される。
【0115】
図13において、微小構造体MSC(結晶状態)に近接した散乱体230Cがプラズモン共鳴を引き起こすときの長さ(アンテナ長)は、記号「L1」で表されている。微小構造体MSA(非結晶状態)に近接した散乱体230Cがプラズモン共鳴を引き起こすときの長さ(アンテナ長)は、記号「L2」で表されている。
【0116】
図13において、微小構造体MSCに近接した散乱体230Cの長さと散乱体230Cからの反射光RF1の位相との関係は、曲線C1で表されている。微小構造体MSAに近接した散乱体230Cの長さと散乱体230Cからの反射光RF1の位相との関係は、曲線C2で表されている。曲線C2は、散乱体230Cの長さにおいて、曲線C1からシフトしている。
【0117】
散乱体230Cの長さが、「L1」であるならば、微小構造体MSCに近接した散乱体230Cから生じた反射光RF1の位相は、微小構造体MSAに近接した散乱体230Cから生じた反射光RF1の位相と異なることとなる。反射光RF1の位相差の検出に基づき、微小構造体MSの状態が見極められる。したがって、記録媒体RMDに記録された情報は正確に再生される。
【0118】
本実施形態において、対象物体として、記録媒体RMD上に形成された微小構造体MSが用いられる。微小構造体MSは、相変化材料を含むので、微小構造体MSは、結晶状態又は非結晶状態となる。本実施形態において、微小構造体MSは、構造体として例示される。
【0119】
微小構造体MSの状態(結晶状態又は非結晶状態)に応じて、微小構造体MSと散乱体230Cとの間の生ずるプラズモン共鳴の強度が変化する。本実施形態の光ピックアップ装置200Dは、散乱体230Cからの反射光RF1の位相の状態を検出し、微小構造体MSが結晶状態であるか非結晶状態であるかを見極めることができる。微小構造体MSの結晶状態は、記録状態及び未記録状態のうち一方に対応し、非結晶状態は、記録状態及び未記録状態のうち他方に対応する。したがって、光ピックアップ装置200Dは、微小構造体MSが結晶状態であるか非結晶状態であるかを検出することによって、微小構造体MSが記録状態であるか未記録状態であるかを見極めることができる。
【0120】
本実施形態の光ピックアップ装置200Dは、対象物体として用いられる微小構造体MSの状態を、高感度且つ低ノイズ下で検出することができる。本実施形態において、散乱体230Cが結晶状態の微小構造体MSに近接されたときプラズモン共鳴が生ずるように光ピックアップ装置200Dが設計されてもよい。この場合、散乱体230Cが非結晶状態の微小構造体MSに近接されるときにプラズモン共鳴が発生しないように光ピックアップ装置200Dが設計されてもよい。即ち、散乱体230Cと非結晶状態の微小構造体MSCとの間のプラズモン共鳴の強度が「0」となるように、光ピックアップ装置200Dが設計されてもよい。
【0121】
代替的に散乱体230Cが非結晶状態の微小構造体MSに近接されたときプラズモン共鳴が生ずるように光ピックアップ装置200Dが設計されてもよい。この場合、散乱体230Cが結晶状態の微小構造体MSに近接されるときにプラズモン共鳴が発生しないように光ピックアップ装置200Dが設計されてもよい。即ち、散乱体230Cと結晶状態の微小構造体MSCとの間のプラズモン共鳴の強度が「0」となるように、光ピックアップ装置200Dが設計されてもよい。
【0122】
光ピックアップ装置200Dの導光部(対物レンズ229)(
図10を参照)は、散乱体230Cだけでなく、対象物体として用いられる微小構造体MSにレーザ光LBを照射してもよい。この場合、検出部(検出レンズ248及び光検出素子249)(
図10を参照)は、散乱体230Cからの反射光RF1の位相の状態だけでなく、微小構造体MSからの反射光RF2の位相の状態も検出することができる。反射光RF1,RF2の相互作用により、光ピックアップ装置200Dは、反射光RF1の位相の状態を高感度に検出することができる。即ち、散乱体230Cからの反射光RF1だけでなく、微小構造体MSからの反射光RF2の位相も検出されるので、光ピックアップ装置200Dは、反射光RF1の位相の状態を高感度に検出することができる。
【0123】
本実施形態において、光ファイバ335(
図10を参照)が、第1検出光DL1の遅延に利用されている。光ファイバ335がもたらす第1検出光DL1の遅延時間は、散乱体230Cが微小構造体MSの中心上を通過する時間間隔に等しく設定されている。代替的に、光ファイバ335がもたらす第1検出光DL1の遅延時間及び微小構造体MSの配置間隔が既知であるならば、遅延を生じさせる光学的構成の代わりに、光量変化を表す信号に対する演算処理が行われてもよい。演算処理によって、微小構造体MSの状態が見極められてもよい。
【0124】
本実施形態において、散乱体230Cの長さは、結晶状態又は非結晶状態の微小構造体MSと協働してプラズモン共鳴が生ずるように設計されている。代替的に、散乱体230Cの長さは、
図13に示される寸法値「L1」,「L2」の中間値に設定されてもよい。このような設計の下においても、微小構造体MSの状態に応じて、検出される光の位相は変化するので、記録媒体RMDから情報が適切に再生される。
【0125】
本実施形態において、微小構造体MSは、相変化材料を含む。微小構造体MSの相状態の相違に基づき、情報が再生される。代替的に、微小構造体MS間の材質の違い(例えば、誘電体と金属)、微小構造体MS間の電気抵抗、屈折率や形状の相違が共鳴状態の変動を引き起こす因子として用いられてもよい。
【0126】
<第7実施形態>
(光ピックアップ装置の構成)
図14は、検出装置として例示される光ピックアップ装置200Eの概略図である。光ピックアップ装置200Eは、第1実施形態に関連して説明された検出装置100の原理に従って、構築されている。
図14を参照して、光ピックアップ装置200Eが説明される。尚、第2実施形態及び第6実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、上述の説明が援用される。
【0127】
光ピックアップ装置200Eは、第2実施形態と同様に、レーザ光源210と、コリメートレンズ221と、ミラー222と、集光レンズ223と、受光素子224と、対物レンズ229と、検出レンズ248と、信号処理部250と、を備える。光ピックアップ装置200Eは、第6実施形態と同様に散乱体230Cと、第1ビームスプリッタ321と、反射鏡324と、を更に備える。光ピックアップ装置200Eは、第1光検出素子241と、第2光検出素子242と、演算回路243と、を更に備える。
【0128】
第6実施形態と同様に、光ピックアップ装置200Eは、微小構造体MSを用いてデジタル情報が記録された記録媒体RMDから情報を再生する。散乱体230Cは、微小構造体MSの近くに配置される。情報の再生には、微小構造体MSと散乱体230Cとの間のプラズモン共鳴が利用される。尚、微小構造体MSは、5〜100ナノメートルサイズの粒子状の相変化材料であってもよい。微小構造体MSの状態(結晶状態又は非結晶状態(アモルファス))の相違を利用して、記録媒体RMDにデジタル信号情報が記録されている。
【0129】
第6実施形態と同様に、レーザ光源210は、レーザ光LBを出射する。ミラー222は、第1ビームスプリッタ321に向けてレーザ光LBの一部を反射する。第1ビームスプリッタ321は、ミラー222によって反射されたレーザ光LBを透過させる。この結果、レーザ光LBは、反射鏡324に到達する。反射鏡324は、対物レンズ229に向けてレーザ光LBを反射する。
【0130】
第6実施形態と同様に、対物レンズ229は、レーザ光LBを散乱体230Cと微小構造体MSとに照射する。散乱体230Cは、レーザ光LBを反射し、反射光RF1を生成する。微小構造体MSは、レーザ光LBを反射し、反射光RF2を生成する。プラズモン共鳴の強度に応じて、反射光RF1の位相は変化する。微小構造体MSが結晶状態であるならば、レーザ光LBの照射に応じて散乱体230Cと微小構造体MSとの間でプラズモン共鳴が発生するように、散乱体230C及び微小構造体MSは設計されている。微小構造体MSが非結晶状態(アモルファス)であるならば、散乱体230Cと微小構造体MSとの間においてプラズモン共鳴は発生しないように、散乱体230C及び微小構造体MSは設計されている。或いは、微小構造体MSが非結晶状態(アモルファス)であるならば、散乱体230Cと微小構造体MSとの間においてプラズモン共鳴が小さくなるように、散乱体230C及び微小構造体MSは設計されてもよい。本実施形態において、反射光RF1は、第1反射光として例示される。反射光RF2は、第2反射光として例示される。
【0131】
反射光RF1,RF2は、対物レンズ229によって平行光に変換される。反射光RF1,RF2は、その後、反射鏡324によって、第1ビームスプリッタ321に向けて反射される。第1ビームスプリッタ321は、検出レンズ248に向けて、反射光RF1,RF2を反射する。反射光RF1,RF2は、散乱体230C及び微小構造体MSから検出レンズ248に至るまでの経路において合波され、合成波CLになる。本実施形態において、合成波CLの伝搬経路上に配置された反射鏡324及び第1ビームスプリッタ321は、合波部として例示される。
【0132】
検出レンズ248は、第1光検出素子241及び第2光検出素子242を用いて形成された2分割検出素子に向けて合成波CLを集光する。合成波CLの光軸の傾斜は、散乱体230Cと微小構造体MSとの間のプラズモン共鳴の強度に応じて変化する。第1光検出素子241、第2光検出素子242及び演算回路243は、合成波CLの光軸の傾斜量を検出する。検出された傾斜量に基づき、反射光RF1の位相が検出される。本実施形態において、第1光検出素子241、第2光検出素子242及び演算回路243は、傾斜検出部として例示される。
【0133】
本実施形態の原理によれば、光ピックアップ装置200Eは、反射光RF1の位相の状態を表す合成波CLの光軸の傾斜量を検出するので、対象物体(微小構造体MS)の状態や対象物体に記録された情報は、高感度且つ低ノイズ下で検出される。
【0134】
図15A及び
図15Bは、合成波CLの光軸の傾斜量と、第1光検出素子241及び第2光検出素子242を用いた合成波CLの光軸の傾斜量の検出と、の関係を表す概略図である。
図14乃至
図15Bを参照して、合成波CLの光軸の傾斜及び合成波CLの光軸の傾斜量の検出が説明される。
【0135】
図15Aに示される微小構造体MSは、非結晶状態(アモルファス)である。このとき、散乱体230Cと微小構造体MSとの間において、プラズモン共鳴は発生しない。したがって、散乱体230Cからの反射光RF1の位相は、微小構造体MSからの反射光RF2の位相に一致する。このとき、第1ビームスプリッタ321及び検出レンズ248を通じて第1光検出素子241及び第2光検出素子242に到達する合成波CLは、第1光検出素子241と第2光検出素子242とに略均等に照射される。
【0136】
図15Bに示される微小構造体MSは、結晶状態である。このとき、散乱体230Cと微小構造体MSとの間において、プラズモン共鳴が引き起こされる。プラズモン共鳴の結果、散乱体230Cからの反射光RF1の位相と微小構造体MSからの反射光RF2の位相との間で差異が生ずる。
図15Bに示される反射光RF2の位相は、反射光RF1に対して遅れている。反射光RF1に対する反射光RF2の位相遅れの結果、合成波CLの光軸の傾きが変化する。したがって、第2光検出素子242が検出する光量は、第1光検出素子241によって検出される光量よりも多くなる。尚、プラズモン共鳴の結果、反射光RF1の位相が反射光RF2の位相よりも遅れることもある。この場合も、合成波CLの光軸の傾きは変化する。この結果、第1光検出素子241が検出する光量は、第2光検出素子242によって検出される光量よりも多くなる。
【0137】
上述の如く、合成波CLは、第1ビームスプリッタ321によって検出レンズ248に向けて反射される。検出レンズ248は、第1光検出素子241及び第2光検出素子242を用いて形成された2分割検出素子上に、合成波CLを収束させる。この結果、2分割検出素子上の集光スポットが形成される。
【0138】
図16A及び
図16Bは、2分割検出素子上の集光スポットの概略図である。
図14乃至
図16Bを参照して、合成波CLの光軸の傾斜量の検出原理が説明される。
【0139】
図16Aは、
図15Aに対応する。即ち、
図16Aは、散乱体230Cと微小構造体MSとの間でのプラズモン共鳴が生じていないときの集光スポットを表す。
図16Aに示される集光スポットは、2分割検出素子の表面の略中央に形成される。第1光検出素子241及び第2光検出素子242は、受光光量に応じた電気信号を演算回路243に出力する。演算回路243は、第1光検出素子241及び第2光検出素子242からの電気信号に対して、差分演算を行う。したがって、
図16Aに示される如く、集光スポットが、2分割検出素子の表面の略中央に形成されるならば、演算回路243からの差動出力は、略「0」となる。
【0140】
図16Bは、
図15Bに対応する。即ち、
図16Bは、散乱体230Cと微小構造体MSとの間でのプラズモン共鳴が生じているときの集光スポットを表す。
図16Bに示される集光スポットは、2分割検出素子の中心からずれ、第2光検出素子242は、比較的多くの合成波CLを受ける。この結果、第1光検出素子241及び第2光検出素子242からの電気信号に対する差分演算によって生成された差動出力は変化することとなる。
【0141】
上述の如く、合成波の光軸の傾きの変化に応じて、第1光検出素子241からの電気信号及び第2光検出素子242からの電気信号は変動する。演算回路243は、これらの電気信号に対して差分演算を行い、合成波CLの光軸の傾斜量を検出することができる。演算回路243は、合成波CLの光軸の傾斜量を表す信号を信号処理部250に出力する。信号処理部250は、演算回路243からの信号に応じて、再生信号を生成することができる。
【0142】
本実施形態の光ピックアップ装置200Eは、散乱体230Cからの反射光RF1と微小構造体MSからの反射光RF2とを用いて、合成波CLの傾きの変化を検出し、再生信号を生成する。代替的に、光ピックアップ装置は、散乱体からの透過光及び/又は微小構造体からの透過光の光軸の傾きの変化を検出し、再生信号を生成してもよい。
【0143】
<第8実施形態>
(光ピックアップ装置の構成)
図17は、検出装置として例示される光ピックアップ装置200Fの概略図である。光ピックアップ装置200Fは、第1実施形態に関連して説明された検出装置100の原理に従って、構築されている。
図17を参照して、光ピックアップ装置200Fが説明される。尚、第2実施形態及び第7実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、上述の説明が援用される。
【0144】
第2実施形態と同様に、光ピックアップ装置200Fは、レーザ光源210と、コリメートレンズ221と、ミラー222と、集光レンズ223と、受光素子224と、ビームスプリッタ225と、ミラー226と、検出レンズ248と、光検出素子249と、信号処理部250と、を備える。第7実施形態と同様に、光ピックアップ装置200Fは、反射鏡324と、対物レンズ229と、を更に備える。光ピックアップ装置200Fは、散乱体230Fを更に備える。
【0145】
レーザ光源210は、コリメートレンズ221に向けて、レーザ光LBを出射する。コリメートレンズ221は、レーザ光LBを平行光に変換する。その後、ミラー222は、レーザ光LBの一部を、ビームスプリッタ225へ向けて反射する。
【0146】
ビームスプリッタ225は、ミラー222によって反射されたレーザ光LBの一部を、参照光RLとして分離する。また、ビームスプリッタ225は、レーザ光LBの他の部分を透過させる。ビームスプリッタ225を透過したレーザ光LBは、反射鏡324によって、対物レンズ229に向けて反射される。対物レンズ229は、レーザ光LBを散乱体230Fに集光する。この結果、散乱体230Fにおいて、局在プラズモンが励起される。したがって、散乱体230Fの近傍において、光電場の強度が増加する。
【0147】
散乱体230Fは、レーザ光LBを反射し、反射光RF1を生成する。反射光RF1は、対物レンズ229によって平行光に変換される。その後、反射鏡324は、反射光RF1をビームスプリッタ225に向けて反射する。
【0148】
ビームスプリッタ225によって生成された参照光RLは、ミラー226によって、ビームスプリッタ225に向けて反射される。ビームスプリッタ225は、ミラー226から反射された参照光RLを透過させる。一方、ビームスプリッタ225は、反射鏡324から反射された反射光RF1を検出レンズ248に向けて反射する。参照光RL及び反射光RF1はともに、検出レンズ248に向かうので、ビームスプリッタ225と検出レンズ248との間で合波され、干渉光ILになる。干渉光ILは、検出レンズ248によって、光検出素子249に集光される。
【0149】
本実施形態において、光ピックアップ装置200Fは、記録媒体RMFから情報を再生する。反射光RF1の位相は、記録媒体RMFの表面に記録された記録マークとレーザ光LBとの相互作用によって生ずるプラズモン共鳴の強度に応じて変化する。したがって、干渉光ILの強度は、プラズモン共鳴の強度に応じて、大きく変化する。光ピックアップ装置200Fは、干渉光ILの強度の変化を検出し、記録媒体RMFから情報を再生する。
【0150】
干渉光ILの強度に応じて、光検出素子249が出力する電気信号は変動する。信号処理部250は、光検出素子249からの電気信号に応じて、再生信号を生成並びに出力する。したがって、光ピックアップ装置200Fは、記録媒体RMFに記録された情報をデジタル信号として正確に出力することができる。
【0151】
図18Aは、散乱体230F及び記録媒体RMFの概略的な正面図である。
図18Bは、散乱体230F及び記録媒体RMFの概略的な側面図である。
図17乃至
図18Bを参照して、散乱体230F及び記録媒体RMFが説明される。
【0152】
本実施形態の光ピックアップ装置200Fに用いられる散乱体230Fは、略三角形状である。散乱体230Fの長さ「L」(記録媒体RMFに対して直交する方向の寸法)は、120nmであり、散乱体230Fの厚さ「t」は、24nmである。散乱体230Fは、銀から形成される。散乱体230Fの頂角は、「45°」に設計されている。尚、散乱体230Fの各頂点は、12nmの曲率で湾曲している。
【0153】
記録媒体RMFは、円盤形状である。記録媒体RMFは、第1金属層MLY1と、第1金属層MLY1の下方に形成された第2金属層MLY2と、を含む。第1金属層MLY1は、厚さ8nmの銀薄膜である。第2金属層MLY2は、厚さ20nmの銀薄膜である。
【0154】
記録媒体RMFは、第1金属層MLY1上に形成された第1誘電体層DLY1と、第1金属層MLY1と第2金属層MLY2との間に介在された第2誘電体層DLY2と、第2金属層MLY2の下方に形成された第3誘電体層DLY3と、を含む。第1誘電体層DLY1は、厚さ32nmのSiO
2薄膜である。第2誘電体層DLY2は、厚さ4nmのSiO
2薄膜である。第3誘電体層DLY3は、厚さ数mmのSiO
2薄膜である。第3誘電体層DLY3は、基板として用いられる。
【0155】
第1誘電体層DLY1の内部には、微小構造体MSFが配置される。微小構造体MSFは、直径24nmの銀微粒子である。微小構造体MSFの有無によりデジタル信号が記録されている。
【0156】
散乱体230Fは、第1誘電体層DLY1から24nmの距離だけ離間するように位置的に制御されている。
【0157】
図17を参照して説明されたレーザ光源210から出射されるレーザ光LBの波長は、780nmである。ビームスプリッタ225の分岐比は、1:1に設定されている。対物レンズ229の開口数は、「0.7」に設定されている。記録媒体RMF上の検出対象領域に微小構造体MSFが存在しないならば、ミラー226から反射される参照光RLと、散乱体230Fからの反射光RF1と、から生成された干渉光ILの強度が最小となるように、ミラー226は、位置的に調整される。この結果、参照光RLの位相は、適切に調整されることとなる。
【0158】
図17を参照して説明された如く、レーザ光LBは、対物レンズ229を通じて、散乱体230Fに照射される。散乱体230Fは、レーザ光LBを反射し、反射光RF1を生成する。本発明者は、散乱体230Fでの反射によって得られた反射光RF1のパワー反射率を、FDTD法を用いてシミュレーションした。シミュレーションを通じた計算の結果、記録媒体RMFの検出対象領域に微小構造体MSFが存在しないならば、対物レンズ229を透過するレーザ光LBに対して、パワー反射率は、2.48%になった。記録媒体RMFの検出対象領域に微小構造体MSFが存在するならば、パワー反射率は、3.38%になった。
【0159】
本発明者は、FDTD法を用いたシミュレーションに基づき、ミラー226から反射される参照光RLと、散乱体230Fからの反射光RF1と、から生成された干渉光ILの位相を演算した。記録媒体RMFの検出対象領域に微小構造体MSFが存在しない条件と記録媒体RMFの検出対象領域に微小構造体MSFが存在する条件との間における干渉光ILの位相変化量は、8.62度であった。
【0160】
図17を参照して説明された光検出素子249での反射光RF1の光量Iは、以下の数式で表現される。
【0162】
ここで、「I
i」は、対物レンズ229に入射するレーザ光LBの入射光量である。「I
r」は、対物レンズ229から出射される反射光RF1の光量である。「φ」は、反射光RF1の位相である。
【0163】
微小構造体MSFが存在するならば、干渉光ILの位相φが、「φ=0」の関係を満たすように、光ピックアップ装置200Fは予め調整されている。したがって、微小構造体MSFが存在するならば、「I=51.69%」との関係が得られる。微小構造体MSFが存在しない場合、上述の如く、「φ=8.62°」との関係が得られる。したがって、微小構造体MSFが存在しないならば、「I=53.6%」との関係が得られる。結果として、微小構造体MSFの存在・不存在に応じて、パワー反射率は、「1.91%」だけ変化する。
【0164】
図17に関連して説明された光ピックアップ装置200Fからミラー226が除去された光学系と、光ピックアップ装置200Fと、の間でパワー反射率が比較された。ミラー226が除去された光学系によれば、反射率の変化のみに依存するパワー反射率の変化量が得られる。この場合、ビームスプリッタ225の分岐比が「1:1」であることを鑑みて、パワー反射率の変化量は、「0.45%」になることが容易に算出される。
【0165】
反射光RF1の位相変化を利用する信号検出技術は、反射光RF1の位相変化を利用しない信号検出技術と比べて、信号検出感度は、約4.2倍となる。したがって、反射光RF1の位相変化を利用することによって、検出感度は大幅に上昇することとなる。
【0166】
<第9実施形態>
(光ピックアップ装置の構成)
図19は、検出装置として例示される光ピックアップ装置200Gの概略図である。光ピックアップ装置200Gは、第1実施形態に関連して説明された検出装置100の原理に従って、構築されている。
図19を参照して、光ピックアップ装置200Gが説明される。尚、第8実施形態に関連して説明された要素と同一の要素に対して、同一の符号が付されている。同一の符号が付された要素に対して、上述の説明が援用される。
【0167】
第8実施形態に関連して説明された検出技術は、従来の検出技術と比べて、高い信号検出感度を達成する。しかしながら、第8実施形態に関連して説明された検出技術は、変調されない光成分が増大するという課題を包含する。即ち、第8実施形態に関連して説明された検出技術によれば、光成分のうち直流成分が増大し、信号のS/N比が低下することもある。
【0168】
本実施形態の光ピックアップ装置200Gは、ホモダイン法を用いて、位相の状態に応じた出力信号を出力する。この結果、光ピックアップ装置200Gは、高いS/N比を達成することができる。
【0169】
光ピックアップ装置200Gは、偏光差動検出技術を応用した信号検出技術を採用する。第8実施形態とは異なり、光ピックアップ装置200Gは、検出光を差動演算し、直流の光成分をキャンセルすることができる。
【0170】
第8実施形態と同様に、光ピックアップ装置200Gは、レーザ光源210と、コリメートレンズ221と、ミラー222と、集光レンズ223と、受光素子224と、ビームスプリッタ225と、ミラー226と、反射鏡324と、対物レンズ229と、散乱体230Fと、を備える。光ピックアップ装置200Gは、ビームスプリッタ225とミラー226との間に配置された4分の1波長板281と、干渉光ILの光路上に配置された偏光ビームスプリッタ282と、ビームスプリッタ225と偏光ビームスプリッタ282との間に配置された2分の1波長板283と、偏光ビームスプリッタ282によって生成された2つの光束のうち一方を受ける第1検出レンズ284と、偏光ビームスプリッタ282によって生成された2つの光束のうち他方を受ける第2検出レンズ285と、第1検出レンズ284によって集光された光束を受ける第1光検出素子241Gと、第2検出レンズ285によって集光された光束を受ける第2光検出素子242Gと、第1光検出素子241G及び第2光検出素子242Gからの電気信号に対して差動演算を行う演算回路243Gと、を更に備える。
【0171】
レーザ光源210は、コリメートレンズ221に向けて、レーザ光LBを出射する。コリメートレンズ221は、レーザ光LBを平行光に変換する。その後、ミラー222は、レーザ光LBの一部を、ビームスプリッタ225へ向けて反射する。
【0172】
ビームスプリッタ225は、ミラー222によって反射されたレーザ光LBの一部を、参照光RLとして分離する。また、ビームスプリッタ225は、レーザ光LBの他の部分を透過させる。ビームスプリッタ225を透過したレーザ光LBは、反射鏡324によって、対物レンズ229に向けて反射される。対物レンズ229は、レーザ光LBを散乱体230Fに集光する。この結果、散乱体230Fにおいて、局在プラズモンが励起される。したがって、散乱体230Fの近傍において、光電場の強度が増加する。
【0173】
散乱体230Fは、レーザ光LBを反射し、反射光RF1を生成する。反射光RF1は、対物レンズ229によって平行光に変換される。その後、反射鏡324は、反射光RF1をビームスプリッタ225に向けて反射する。第8実施形態に関連して説明された如く、散乱体230Fにおけるプラズモン共鳴の強度は、微小構造体MSFの有無に応じて変化する。この結果、反射光RF1の光量及び位相は、プラズモン共鳴の強度に応じて変化する。
【0174】
ビームスプリッタ225によって生成された参照光RLは、ミラー226によって反射される前及び後に、4分の1波長板281を通過する。この結果、参照光RLの偏光方向は、90°だけ回転する。その後、参照光RLは、ビームスプリッタ225に入射する。ビームスプリッタ225は、ミラー226から反射された参照光RLを透過させる。一方、ビームスプリッタ225は、反射鏡324から反射された反射光RF1を2分の1波長板283に向けて反射する。参照光RL及び反射光RF1はともに、2分の1波長板283に向かうので、ビームスプリッタ225と2分の1波長板283との間で合波され、干渉光ILになる。この結果、干渉光IL中の反射光RF1の偏光方向は、参照光RLの偏光方向に対して直交している。以下の説明において、反射光RF1の偏光方向は、「0度」として定義される。
【0175】
2分の1波長板283の光学軸は、22.5度の方向に設定されている。したがって、干渉光ILが2分の1波長板283を通過するとき、干渉光IL中の反射光RF1及び参照光RLの偏光方向は、45度だけ回転することとなる。
【0176】
偏光ビームスプリッタ282は、反射光RF1及び参照光RLの0度方向の成分を第1検出レンズ284に向けて出射する。偏光ビームスプリッタ282は、反射光RF1及び参照光RLの90度方向の成分を第2検出レンズ285に向けて出射する。第1検出レンズ284は、第1光検出素子241Gに向けて集光するので、第1光検出素子241Gは、0度方向の光成分に対応する電気信号を出力する。第2検出レンズ285は、第2光検出素子242Gに向けて集光するので、第2光検出素子242Gは、90度方向の光成分に対応する電気信号を出力する。演算回路243Gは、第1光検出素子241G及び第2光検出素子242Gからの電気信号に対して差動演算を行い、再生信号を出力する。
【0177】
再生信号の強度Isgは、以下の数式に従って算出される。尚、以下の数式は、非特許文献(映像情報メディア学会技術報告33(1),35−40,2009−01−15 「ホモダイン検出を用いた光ディスク信号の増幅」 三上秀治,黒川貴弘,島野健,宮本治一)の知見に基づく。
【0179】
ここで、「I
s」は、反射光RF1の強度である。「I
r」は、参照光RLの強度である。「η」は、第1光検出素子241G及び第2光検出素子242Gの変換効率である。
【0180】
プラズモン共鳴の発生条件下において、「cosφ=0」となるように、ミラー226は予め位置調整されている。この場合、プラズモン共鳴の発生時を基準として、信号出力は、「0」から変化するので、再生信号の出力中の直流成分はキャンセルされる。再生信号の強度Isgは、参照光RLの光量の平方根に比例するので、参照光RLの光量が多いならば、再生信号の出力変化量は大きくなる。したがって、再生信号のS/N比は、向上される。
【0181】
<第10実施形態>
(光ディスクドライブ装置の構成)
図20は、駆動装置として例示される光ディスクドライブ装置400の概略図である。光ディスクドライブ装置400には、第2実施形態に関連して説明された光ピックアップ装置200が搭載されている。光ピックアップ装置200に対して、第2実施形態の説明が援用される。
【0182】
光ピックアップ装置200に加えて、光ディスクドライブ装置400は、スピンドルモータ410と、ヘッド駆動部(図示せず)と、インターフェース420と、サーボ制御部430と、送りモータ(図示せず)と、システムコントローラ440と、アクチュエータ450と、を備える。
【0183】
サーボ制御部430は、スピンドルモータ410を制御する。スピンドルモータ410は、サーボ制御部430の制御下で、記録媒体RMを所定の回転数で回転する。本実施形態において、スピンドルモータ410は、駆動部として例示される。サーボ制御部430は、制御部として例示される。
【0184】
光ピックアップ装置200の散乱体230は、スピンドルモータ410によって回転される記録媒体RMに近接して配置される。記録媒体RMに近接した散乱体230からプラズモン光が発生する。光ピックアップ装置200は、プラズモン光を用いて、記録媒体RMの記録面に微細なマークを形成し、情報を記録してもよい。また、光ピックアップ装置200は、散乱体230からの反射光を用いて、記録媒体RMから情報信号を読み出すことができる。
【0185】
光ピックアップ装置200は、記録媒体RMの記録トラックに対して、垂直に移動するように支持される。光ピックアップ装置200は、送りモータ(図示せず)によって、記録媒体RMの記録トラックに対して垂直方向に駆動される。
【0186】
信号処理部250は、光ピックアップ装置200の光検出素子249が出力した信号に対して、様々な処理を行う。信号処理部250は、記録媒体RMから読み出された情報信号を再生するための再生システム及び情報信号を記録するための記録システムを含んでもよい。再生システムは、例えば、信号復調器(図示せず)及び誤り訂正回路(図示せず)を含んでもよい。記録システムは、例えば、信号復調器(図示せず)や他の回路を含んでもよい。記録媒体RMからの信号を再生する信号処理部250は、光ピックアップ装置200の光検出素子249から出力された信号(記録媒体RMから読み出された再生信号)を、信号復調器を用いて復調し、その後、訂正回路を用いて、誤り訂正処理を行ってもよい。
【0187】
インターフェース420は、外部から接続された電子機器(例えば、パーソナルコンピュータ)との間でデータを送受信する。光ディスクドライブ装置400が再生動作を行っている間、信号処理部250の信号復号器や誤り訂正回路といった処理要素によって処理された再生信号が、インターフェース420を介して、外部から接続された電子機器に送出される。
【0188】
アクチュエータ450は、対物レンズユニット260を保持する。アクチュエータ450として、2軸アクチュエータが例示される。サーボ制御部430は、アクチュエータ450をサーボ制御し、対物レンズユニット260をフォーカシング方向及びトラッキング方向に移動させる。加えて、サーボ制御部430は、光ピックアップ装置200を送り操作する送りモータ(図示せず)をサーボ制御してもよい。上述の如く、サーボ制御部430は、記録媒体RMを回転駆動するスピンドルモータ410も制御する。サーボ制御部430は、上述の様々な部位に対するサーボ制御を、システムコントローラ440からの制御信号に応じて実行する。システムコントローラ440は、光ディスクドライブ装置400の様々な部位を制御する。
【0189】
上述の如く、光ディスクドライブ装置400は、記録媒体RMから情報を再生することができる。この間、光ディスクドライブ装置400は、スピンドルモータ410によって回転される記録媒体RMから、光ピックアップ装置200を用いて、情報を読み出し、再生信号を生成することができる。光ディスクドライブ装置400は、信号処理部250の信号復調器を用いて、再生信号を復調し、訂正回路を用いて、誤り訂正処理を行うことができる。これらの信号処理の後、再生信号は、インターフェース420を通じて、外部から接続された電子機器に送出されてもよい。
【0190】
上述の如く、光ディスクドライブ装置400は、記録媒体RMへ情報を記録することができる。この間、光ディスクドライブ装置400は、信号処理部250の信号変調器を用いて、情報信号を変調してもよい。光ディスクドライブ装置400は、その後、変調された情報得信号に基づいて、所定のレーザ出力を有する記録用のレーザ光を生成してもよい。光ピックアップ装置200は、スピンドルモータ410によって回転される記録媒体RMに、記録用のレーザ光を照射してもよい。
【0191】
本実施形態において、光ディスクドライブ装置400には、第2実施形態に関連して説明された光ピックアップ装置200が搭載されている。代替的に、光ディスクドライブ装置は、第6実施形態乃至第9実施形態に関連して説明された様々な光ピックアップ装置200D、200E、200F、200Gのうちいずれかを利用してもよい。
【0192】
<第11実施形態>
(光ディスクドライブ装置の構成)
図21は、駆動装置として例示される光ディスクドライブ装置400Aの概略図である。光ディスクドライブ装置400Aには、第2実施形態に関連して説明された光ピックアップ装置200が搭載されている。光ピックアップ装置200に対して、第2実施形態の説明が援用される。光ディスクドライブ装置400Aは、第10実施形態に関連して説明されたスピンドルモータ410を用いて、記録媒体RMを回転させる。スピンドルモータ410に対して、第10実施形態の説明が援用される。
【0193】
光ピックアップ装置200及びスピンドルモータ410に加えて、光ディスクドライブ装置400Aは、スイングアーム460と、ボイスコイルアクチュエータ470と、制御回路480と、を備える。第2実施形態に関連して説明された如く、光ピックアップ装置200は、記録媒体RMに情報を記録するだけでなく、記録媒体RMから情報を再生することができる。光ピックアップ装置200は、スイングアーム460に固定される。ボイスコイルアクチュエータ470は、光ピックアップ装置200を、記録媒体RM上の任意の位置にシークすることができる。制御回路は、光ピックアップ装置200からの電気信号を処理し、再生信号並びに制御信号を出力する。制御信号は、ボイスコイルアクチュエータ470の位置制御に利用されてもよい。
【0194】
スピンドルモータ410は、記録媒体RMを高速に回転させる。ボイスコイルアクチュエータ470は、スイングアーム460を用いて、光ピックアップ装置200を、記録媒体RM上の所望の位置に移動させる。記録媒体RMの高速回転の結果、光ピックアップ装置200は、記録媒体RMから数nm〜数十nmだけ浮上している。光ピックアップ装置200と記録媒体RMとの間のギャップ間隔は、光ピックアップ装置200からのギャップエラー信号に基づいて、アクチュエータ(図示せず)を用いてフィードバック制御される。したがって、光ピックアップ装置200と記録媒体RMとの間のギャップ間隔は、略一定に保たれる。光ピックアップ装置200と記録媒体RMとの間のギャップ間隔の制御に用いられるアクチュエータとして、ピエゾ素子が例示される。
【0195】
光ディスクドライブ装置400Aは、1つの光ピックアップ装置200と、1つの記録媒体RMと、を備える。代替的に、光ディスクドライブ装置は、複数の記録媒体と、複数の記録媒体それぞれに対応して配置された光ピックアップ装置を備えてもよい。
【0196】
本実施形態において、光ピックアップ装置200は、スイングアーム460の先端に一体的に形成されている。代替的に、レーザ光源や散乱体からの反射光を検出する検出システムは、他の部位に設けられてもよい。
【0197】
本実施形態において、光ディスクドライブ装置400Aには、第2実施形態に関連して説明された光ピックアップ装置200が搭載されている。代替的に、光ディスクドライブ装置は、第6実施形態乃至第9実施形態に関連して説明された様々な光ピックアップ装置200D、200E、200F、200Gのうちいずれかを利用してもよい。
【0198】
<第12実施形態>
(光情報処理装置の構成)
図22は、光情報処理装置500の概略図である。光情報処理装置500には、第10実施形態に関連して説明された光ディスクドライブ装置400が搭載されている。光ディスクドライブ装置400に対して、第10実施形態の説明が援用される。
【0199】
光情報処理装置500は、記録媒体RMからの情報の再生及び/又は記録媒体RMへの情報の記録を行うことができる。光情報処理装置500は、光ディスクドライブ装置400に加えて、記録信号処理部510と、再生信号処理部520と、を備える。記録信号処理部510は、画像情報を、記録媒体RMへ記録される情報信号に変換する。記録信号処理部510によって生成された情報信号は、光ディスクドライブ装置400によって記録媒体RMに記録される。再生信号処理部520は、光ディスクドライブ装置400によって記録媒体RMから読み出された情報信号を画像情報に変換する。
【0200】
光情報処理装置500は、出力装置530を備えてもよい。出力装置530として、ブラウン管、液晶表示装置や画像情報を表示できる他の装置が例示される。
【0201】
本実施形態において、光情報処理装置500は、記録信号処理部510及び再生信号処理部520を備える。代替的に、光情報処理装置は、記録信号処理部及び再生信号処理部のうち一方のみを備えてもよい。
【0202】
本実施形態において、光情報処理装置500は、光ディスクドライブ装置400を備える。したがって、光情報処理装置500は、プラズモン光を用いて、情報の記録及び再生を記録媒体RMに対して行うことができる。したがって、光情報処理装置500は、様々な用途に利用可能である。
【0203】
本実施形態において、光情報処理装置500には、第10実施形態に関連して説明された光ディスクドライブ装置400が搭載されている。代替的に、光情報処理装置は、第11実施形態に関連して説明された光ディスクドライブ装置400Aを利用してもよい。
【0204】
<第13実施形態>
(情報再生装置の構成)
図23は、情報再生装置600の概略図である。情報再生装置600には、第1実施形態に関連して説明された検出装置100が搭載されている。検出装置100に対して、第1実施形態の説明が援用される。検出装置100の導光部120には、第2実施形態乃至第9実施形態に関連して説明された様々な導光技術が適用されてもよい。散乱体130には、第2実施形態乃至第9実施形態に関連して説明された様々な散乱体の形状、寸法や材料が適用されてもよい。検出部140には、第2実施形態乃至第9実施形態に関連して説明された様々な検出技術が適用されてもよい。
【0205】
情報再生装置600は、検出装置100に加えて、再生信号処理部610を備えてもよい。再生信号処理部610は、検出装置100から出力された信号を、所定の出力装置(例えば、ブラウン管、液晶表示装置や画像情報を表示できる他の装置)が再生可能な形式を有する再生信号を変換してもよい。情報再生装置600は、対象物体TOを検出装置100からのプラズモン光を用いて走査するための駆動機構を備えてもよい。
【0206】
本実施形態において、対象物体TOは、情報が記録された記録媒体である。情報再生装置600は、対象物体TO(例えば、上述の微小構造体)が記録状態であるか未記録状態であるかを検出してもよい。この結果、情報再生装置600は、記録媒体に記録された情報を再生することができる。
【0207】
本実施形態において、情報再生装置600は、散乱体130からの反射光RF1の位相変化を利用して、記録媒体に記録された情報を高感度且つ低ノイズ下で再生することができる。
【0208】
<第14実施形態>
(センサの構成)
図24は、センサ700の概略図である。センサ700には、第1実施形態に関連して説明された検出装置100が搭載されている。検出装置100に対して、第1実施形態の説明が援用される。検出装置100の導光部120には、第2実施形態乃至第9実施形態に関連して説明された様々な導光技術が適用されてもよい。散乱体130には、第2実施形態乃至第9実施形態に関連して説明された様々な散乱体の形状、寸法や材料が適用されてもよい。検出部140には、第2実施形態乃至第9実施形態に関連して説明された様々な検出技術が適用されてもよい。
【0209】
本実施形態において、対象物体TOが特定の材料を含むか否かに応じて、対象物体TOと散乱体130との間で生ずるプラズモン共鳴の強度が変化する。検出部140は、散乱体130からの反射光RF1の位相の状態を検出し、対象物体TOが特定の材料を含むか否かを見極める。
【0210】
センサ700は、検出装置100に加えて、検出信号処理部710を備える。検出信号処理部710は、検出装置100からの検出信号を処理する。例えば、検出信号処理部710は、検出装置100からの検出信号に応じて、対象物体TOが特定の材料を含むか否かを判定する判定処理を行ってもよい。センサ700は、対象物体TOを検出装置100からのプラズモン光を用いて走査するための駆動機構を備えてもよい。
【0211】
上述の特定の材料は、誘電率の実数部が負である材料であってもよい。特定の材料として、AgやAgの化合物、CuやCuの化合物が例示される。
【0212】
対象物体TOが、誘電率の実数部が負である材料を含むならば、散乱体130と対象物体TOとの間で強いプラズモン共鳴が発生する。一方、対象物体TOが、誘電率の実数部が負である材料を含まないならば、散乱体130と対象物体TOとの間で生ずるプラズモン共鳴は、比較的弱くなる。したがって、対象物体TOが、誘電率の実数部の符号が負である材料を含むか否かに応じて、プラズモン共鳴の強度が変化する。プラズモン共鳴の強度の変化は、散乱体130からの反射光RF1の位相の状態の変化に帰結する。センサ700は、これらの関係に基づき、散乱体130からの反射光RF1の位相の状態を検出し、対象物体TOが、誘電率の実数部の符号が負である材料を含むか否かを判定することができる。
【0213】
本実施形態において、センサ700は、散乱体130からの反射光RF1の位相変化を利用して、対象物体TOが、誘電率の実数部の符号が負である材料を含むか否かを、高感度且つ低ノイズ下で判定することができる。
【0214】
図25は、センサ700の概略図である。
図25を参照して、センサ700の他の用途が説明される。
【0215】
図25に示される対象物体TOの表面は、窪みRCが形成された領域、塵埃DBが付着した領域及び隆起部SWが形成された領域を含む。センサ700は、対象物体TOの形状を検出するためにも好適に利用可能である。
【0216】
散乱体130と対象物体TOとの間のプラズモン共鳴の強度は、窪みRCが形成された領域、塵埃DBが付着した領域及び隆起部SWが形成された領域の間で相違する。散乱体130の近傍に窪みRCが形成された領域が存在するならば、散乱体130と対象物体TOとの間の距離が長くなる。この結果、プラズモン共鳴の強度は低下する。一方、散乱体130の近傍に、塵埃DBが付着した領域や隆起部SWが形成された領域が存在するならば、散乱体130と対象物体TOとの間の距離は短くなる。この結果、プラズモン共鳴の強度は増大する。
【0217】
上述の如く、対象物体TOの形状に応じて、散乱体130と対象物体TOとの間のプラズモン共鳴の強度は変化する。プラズモン共鳴の強度の変化に応じて、散乱体130からの反射光RF1の位相の状態が変化する。センサ700は、散乱体130からの反射光RF1の位相の状態を検出し、対象物体TOの形状を見極めることができる。
図25に示されるセンサ700の用途において、検出信号処理部710は、検出装置100からの検出信号を処理し、対象物体TOの形状を特定するための信号処理や、対象物体TOの形状に関する欠陥を判定するための判定処理や、他の処理を行ってもよい。
【0218】
上述の如く、センサ700は、散乱体130からの反射光RF1の位相変化を利用して、対象物体TOの形状を、高感度且つ低ノイズ下で判定することができる。即ち、センサ700は、対象物体TO上に、窪みRCが形成された領域、塵埃DBが付着した領域や隆起部SWが形成された領域が存在するか否かを高感度且つ低ノイズ下で判定することができる。
【0219】
上述の実施形態に関連して説明された様々な技術は、以下の特徴を主に備える。
【0220】
上述の実施形態の一局面に係る検出装置は、出射光を出射する光源と、対象物体に近接して配置され、前記対象物体との間でプラズモン共鳴を引き起こす散乱体と、前記出射光を前記散乱体へ導き、前記散乱体から反射した第1反射光を生じさせる導光部と、前記第1反射光の位相の状態を検出する検出部と、を備える。
【0221】
上記構成によれば、導光部が光源からの出射光を散乱体に導くと、散乱体と対象物体との間で、プラズモン共鳴が引き起こされる。この間、散乱体は、出射光を反射し、第1反射光を生成する。検出部は、第1反射光の位相の状態を検出するので、検出装置は、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0222】
上記構成において、前記プラズモン共鳴の強度は、前記対象物体の状態に応じて変化してもよい。前記位相の前記状態は、前記プラズモン共鳴の前記強度の変化に応じて変化してもよい。
【0223】
上記構成によれば、検出部は、対象物体の状態を正確に検出することができる。
【0224】
上記構成において、前記導光部は、前記出射光を前記対象物体へ導き、前記対象物体から反射した第2反射光を生じさせてもよい。前記検出部は、前記第2反射光の位相の状態を検出してもよい。
【0225】
上記構成によれば、導光部は、散乱体だけでなく、対象物体へも出射光を導く。この結果、対象物体は、出射光を反射し、第2反射光を生成する。検出部は、第1反射光に加えて、第2反射光の位相の状態を検出するので、検出部は、対象物体の状態を正確に検出することができる。
【0226】
上記構成において、検出装置は、参照光を生成する参照光生成部を更に備えてもよい。前記検出部は、前記参照光及び前記第1反射光を干渉させ、干渉光を生成する干渉光学系と、前記干渉光を検出する受光部と、を含んでもよい。前記受光部は、前記干渉光に応じた出力信号を生成してもよい。
【0227】
上記構成によれば、干渉光学系は、参照光生成部からの参照光と散乱体からの第1反射光とを干渉させ、干渉光を生成する。受光部は、干渉光を検出するので、受光部が生成する出力信号は、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0228】
上記構成において、前記導光部は、前記出射光を前記対象物体へ導き、前記対象物体から反射した第2反射光を生じさせてもよい。前記検出部は、前記第1反射光と前記第2反射光とを合成し、合成波を生成する合成部と、前記合成波の光軸の傾斜量を検出する傾斜検出部と、を含んでもよい。該傾斜検出部は、前記傾斜量に基づいて、前記位相の前記状態を検出してもよい。
【0229】
上記構成によれば、導光部は、散乱体だけでなく、対象物体へも出射光を導く。この結果、対象物体は、出射光を反射し、第2反射光を生成する。第2反射光は、合成部によって、散乱体からの第1反射光と合成され、合成波になる。傾斜検出部は、合成波の光軸の傾斜量を検出する。位相の状態は、傾斜量に基づいて、検出されるので、検出部は、対象物体の状態を正確に検出することができる。
【0230】
上記構成において、前記対象物体は、情報記録媒体上に形成された構造体であってもよい。記録動作を受けた前記構造体は記録状態となる一方で、前記記録動作を受けない前記構造体は、未記録状態となってもよい。前記プラズモン共鳴の前記強度は、前記構造体が前記記録状態であるか前記未記録状態であるかに応じて変化してもよい。前記検出部は、前記位相の前記状態を検出することによって、前記構造体が前記記録状態であるか前記未記録状態であるかを検出してもよい。
【0231】
上記構成によれば、プラズモン共鳴の強度は、構造体が前記記録状態であるか未記録状態であるかに応じて変化して変化するので、検出部は、位相の状態の検出を通じて、構造体が記録状態であるか未記録状態であるかを正確に検出することができる。
【0232】
上記構成において、前記構造体は、結晶状態と非結晶状態との間で相変化する相変化材料を含んでもよい。前記結晶状態及び前記非結晶状態のうち一方は、前記記録状態に対応し、他方は、前記未記録状態に対応してもよい。
【0233】
上記構成によれば、検出部は、結晶状態と非結晶状態との間の相変化に応じて、構造体が記録状態であるか未記録状態であるかを正確に検出することができる。
【0234】
上述の実施形態の他の局面に係る情報再生装置は、上述の検出装置を備える。情報再生装置は、前記検出装置を用いて、前記構造体が前記記録状態であるか前記未記録状態であるかを検出することによって、前記情報記録媒体に記録された情報を再生する。
【0235】
上記構成によれば、検出装置は、構造体が記録状態であるか未記録状態であるかを正確に検出するので、情報記録媒体に記録された情報は正確に再生される。
【0236】
上述の実施形態の他の局面に係る駆動装置は、上述の検出装置と、情報記録媒体を駆動する駆動部と、前記検出装置が出力した出力信号に応じて、前記駆動部及び前記検出装置を制御する制御部と、を備える。
【0237】
上記構成によれば、制御部は、検出装置が出力した出力信号に応じて、駆動部及び検出装置を制御するので、駆動装置は、正確な駆動動作を行うことができる。
【0238】
上述の実施形態の他の局面に係るセンサは、上述の検出装置を備える。前記プラズモン共鳴の前記強度は、前記対象物体が特定の材料を含むか否かに応じて変化する。前記検出装置は、前記位相の前記状態を検出することによって、前記対象物体が前記特定の材料を含むか否かを検出する。
【0239】
上記構成によれば、センサは、上述の検出装置を備えるので、対象物体が特定の材料を含むか否かを正確に検出することができる。
【0240】
上述の実施形態の他の局面に係るセンサは、上述の検出装置を備える。前記プラズモン共鳴の前記強度は、前記対象物体の形状に応じて変化する。前記検出装置は、前記位相の前記状態を検出することによって、前記対象物体の前記形状を検出する。
【0241】
上記構成によれば、センサは、上述の検出装置を備えるので、対象物体の形状を正確に検出することができる。
【0242】
上記構成において、前記検出装置は、ホモダイン法に従って、前記位相の前記状態に応じた出力信号を出力してもよい。
【0243】
上記構成によれば、検出装置は、ホモダイン法に従って、位相の状態に応じた出力信号を出力するので、出力信号は、検出された位相の状態の直流成分の影響を受けにくくなる。
【0244】
上述の実施形態の他の局面に係る検出方法は、出射光を出射する工程と、前記出射光を対象物体に近接して配置された散乱体に導き、前記散乱体に前記出射光を反射させ、第1反射光を生成する工程と、前記対象物体と前記散乱体との間でのプラズモン共鳴に応じた前記第1反射光の位相の状態を検出する工程と、を含む。
【0245】
上記構成によれば、出射光が対象物体に近接して配置された散乱体に導かれると、散乱体は、出射光を反射し、第1反射光を生成する。その後、対象物体と前記散乱体との間でのプラズモン共鳴に応じた第1反射光の位相の状態が検出されるので、対象物体の特性は、低ノイズ下で検出される。