(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037324
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ズームレンズ系
(51)【国際特許分類】
G02B 15/16 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
G02B15/16
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-3954(P2012-3954)
(22)【出願日】2012年1月12日
(65)【公開番号】特開2012-168510(P2012-168510A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2015年1月8日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0012464
(32)【優先日】2011年2月11日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500548884
【氏名又は名称】ハンファテクウィン株式会社
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TECHWIN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】沈 亨▲録▼
【審査官】
瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−248318(JP,A)
【文献】
特開2009−204942(JP,A)
【文献】
特開平09−146000(JP,A)
【文献】
特開平09−138347(JP,A)
【文献】
特開平09−133858(JP,A)
【文献】
特開平07−104218(JP,A)
【文献】
米国特許第06104432(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0176686(US,A1)
【文献】
特開平06−337353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側からイメージ側への順に、
少なくとも1枚のレンズと、光軸の経路を変換する屈折部材とを含み、正の屈折力を有する第1レンズ群と、
負の屈折力を有する第2レンズ群と、
第3レンズ群と、
第4レンズ群と、からなり、
前記第1レンズ群ないし第4レンズ群間の間隔を変化させてズーミングを行い、下記の式を満足するズームレンズ系であって、
【数19】
(ここで、Fno_wは、広角端でのFナンバを、f
Tは、望遠端での全体焦点距離を、f
Wは、広角端での全体焦点距離を、BFLは、ズームレンズ系の後焦点距離を、OALは、第1レンズ群の最も物体側にあるレンズの物体側の面の中心からイメージ面までの距離を示す。)
前記ズームレンズ系は、下記の式を満足し、
【数20】
(ここで、BFLは、広角端での後焦点距離を示す。)
前記第3レンズ群は、正の屈折力を有し、
前記第4レンズ群は、正の屈折力を有し、
前記第4レンズ群が、
物体側から順に、正レンズ及び負レンズの2枚のレンズを含み、
前記第4レンズ群の正レンズは、下記の式を満足するズームレンズ系。
【数21】
(ここで、Ndは、前記第4レンズ群の正レンズの屈折率を示す。)
【請求項2】
前記ズームレンズ系は、下記の式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ系。
【数22】
(ここで、BFLは、後焦点距離を、OALは、第1レンズ群の最も物体側にあるレンズの中心からイメージ面までの距離を示す。)
【請求項3】
前記ズームレンズ系は、下記の式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ系。
【数23】
(ここで、BFLは、広角端での後焦点距離を示す。)
【請求項4】
前記ズームレンズ系は、下記の式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ系。
【数24】
(ここで、OALは、第1レンズ群の最も物体側にあるレンズの中心からイメージ面までの距離を示す。)
【請求項5】
前記ズームレンズ系は、下記の式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ系。
【数25】
(ここで、Fno_wは、広角端でのFナンバを示す。)
【請求項6】
前記ズームレンズ系は、下記の式を満足する請求項1に記載のズームレンズ系。
【数26】
(ここで、f
Tは、望遠端での全体焦点距離を、f
Wは、広角端での全体焦点距離を示す。)
【請求項7】
広角端から望遠端へのズーミングの際に、前記第2レンズ群及び前記第4レンズ群は移動し、前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群は固定されることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ系。
【請求項8】
前記第1レンズ群は、少なくとも1面の非球面を含む請求項1に記載のズームレンズ系。
【請求項9】
前記第4レンズ群の最も物体側にあるレンズは、少なくとも1面の非球面を含むことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ系。
【請求項10】
前記第3レンズ群は、正レンズと負レンズとの接合レンズを含むことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ系。
【請求項11】
前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間に配置される絞りを含むことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ系。
【請求項12】
前記第2レンズ群に属したレンズのうち、物体側から順に配置された最初のレンズ及び2番目のレンズは、下記の式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ系。
【数27】
(ここで、f9は、前記第2レンズ群のうち、物体側から最初に置かれたレンズの焦点距離を、f11は、前記第2レンズ群のうち、物体側から2番目に置かれたレンズの焦点距離を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズ系に係り、さらに詳細には、4群ズームレンズ系に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(charge−coupled device)またはCMOS(complementary metal−oxide semiconductor)を利用して映像を具現する撮影装置では、デジタルに転換されることによって、保存容量が増加している。保存容量が増加するにつれて、デジタル撮影装置に採用されるレンズ系に係わる高い光学性能への要求、及び便宜上の理由によって、小型化への要求が次第に大きくなっている。
【0003】
レンズ系は、被写体が有する小さい情報まで鮮明に記録するために、画面周辺において発生する収差まで良好に補正できなければならない。しかし、高性能を実現するためには、小型化をなし難く、小型化のためには、製造コストの上昇が伴うので、高い光学性能と製造コストとを共に満足させ難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、小型であって、後焦点距離(BFL:back focal length)が長く、高い光学性能を有したズームレンズ系を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によれば、物体側からイメージ側への順に、少なくとも1枚のレンズと、光軸の経路を変換する屈折部材とを含み、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群と、第4レンズ群とを含み、前記第1レンズ群ないし第4レンズ群間の間隔を変化させてズーミングを行い、下記の式を満足するズームレンズ系を提供する。
【数1】
ここで、Fno_wは、広角端でのFナンバを、f
Tは、望遠端での全体焦点距離を、f
Wは、広角端での全体焦点距離を、BFLは、ズームレンズ系の後焦点距離(back focal length)を、OALは、第1レンズ群の最も物体側にあるレンズの物体側の面の中心からイメージ面までの距離を示す。
【0006】
本発明の一特徴によれば、前記ズームレンズ系は、下記の式を満足する。
【数2】
ここで、BFLは、後焦点距離を、OALは、第1レンズ群の最も物体側にあるレンズの物体側の面の中心からイメージ面までの距離を示す。
【0007】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記ズームレンズ系は、下記の式を満足する。
【数3】
ここで、BFLは、後焦点距離を示す。
【0008】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記ズームレンズ系は、下記の式を満足する。
【数4】
ここで、BFLは、広角端での後焦点距離を示す。
【0009】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記ズームレンズ系は、下記の式を満足する。
【数5】
ここで、OALは、第1レンズ群の最も物体側にあるレンズの物体側の面の中心からイメージ面までの距離を示す。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記ズームレンズ系は、下記の式を満足する。
【数6】
ここで、Fno_wは、広角端でのFナンバを示す。
【0011】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記ズームレンズ系は、下記の式を満足する。
【数7】
ここで、f
Tは、望遠端での全体焦点距離を、f
Wは、広角端での全体焦点距離を示す。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、広角端から望遠端へのズーミングの際に、前記第2レンズ群及び前記第4レンズ群は移動し、前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群は、固定されてもよい。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第3レンズ群は、正の屈折力を有してもよい。
【0014】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第4レンズ群は、正の屈折力を有してもよい。
【0015】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1レンズ群は、少なくとも1面の非球面を含んでもよい。
【0016】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第4レンズ群は、物体側から順に、正レンズ及び負レンズの2枚のレンズを含んでもよい。
【0017】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第4レンズ群の最も物体側にあるレンズは、少なくとも1面の非球面を含んでもよい。
【0018】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第4レンズ群の正レンズは、下記の式を満足する。
【数8】
ここで、Ndは、前記第4レンズ群の正レンズの屈折率を示す。
【0019】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第2レンズ群及び前記第3レンズ群のうち少なくともいずれか一つは、正レンズと負レンズとの接合レンズを含んでもよい。
【0020】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間に配置される絞りを含んでもよい。
【0021】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第2レンズ群に属したレンズのうち、物体側から順に配置された最初のレンズ及び2番目のレンズは、下記の式を満足する。
【数9】
ここで、f9は、前記第2レンズ群のうち、物体側から最初に置かれたレンズの焦点距離を、f11は、前記第2レンズ群のうち、物体側から2番目に置かれたレンズの焦点距離を示す。
【0022】
本発明のさらに他の側面によれば、物体側からイメージ側への順に、少なくとも1枚のレンズと、光の経路を変換する屈折部材とを含み、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを含み、前記第1レンズ群ないし第4レンズ群間の間隔を変化させてズーミングを行い、前記第1レンズ群ないし前記第4レンズ群を構成するレンズの総枚数は10枚以下であるズームレンズ系を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態によれば、ズーミングの際に、2個のレンズ群だけ移動させることによって、絞りを具備することができる空間を確保することが可能である。例えば、ズームレンズ系がCCTV(closed−circuit television)のような撮影装置に使われる場合、第2レンズ群と第3レンズ群との間に十分な空間を確保することによって、厚い絞りユニット(IRIS)を配置することができる。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、短い全長によって小型化を図ることができ、非球面レンズや高屈折レンズなどを使用することによって、高倍率及び高解像度を具現することができる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、高い光学的性能を有しつつ、後焦点距離を長く形成することができる。従って、ズームレンズ系の最もイメージ側にあるレンズとイメージ面との間での、フィルタの配置又は交換が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】本発明の一実施形態によるズームレンズ系を広角端で示した図面である。
【
図1B】本発明の一実施形態によるズームレンズ系を中間端で示した図面である。
【
図1C】本発明の一実施形態によるズームレンズ系を望遠端で示した図面である。
【
図2】Aは
図1Aに図示されたズームレンズ系の広角端での縦方向球面収差を示し、Bは非点収差を示し、Cは歪曲に係わる収差度を示す。
【
図3】Aは
図1Bに図示されたズームレンズ系の中間端での縦方向球面収差を示し、Bは非点収差を示し、Cは歪曲に係わる収差度を示す。
【
図4】Aは
図1Cに図示されたズームレンズ系の望遠端での縦方向球面収差を示し、Bは非点収差を示し、Cは歪曲に係わる収差度を示す。
【
図5】A〜Eは
図1Aに図示されたズームレンズ系の広角端でのコマ収差を示した図面である。
【
図6】A〜Eは
図1Bに図示されたズームレンズ系の中間端でのコマ収差を示した図面である。
【
図7】A〜Eは
図1Cに図示されたズームレンズ系の望遠端でのコマ収差を示した図面である。
【
図8A】本発明の他の実施形態によるズームレンズ系を広角端で示した図面である。
【
図8B】本発明の他の実施形態によるズームレンズ系を中間端で示した図面である。
【
図8C】本発明の他の実施形態によるズームレンズ系を望遠端で示した図面である。
【
図9】Aは
図8Aに図示されたズームレンズ系の広角端での縦方向球面収差を示し、Bは非点収差を示し、Cは歪曲に係わる収差度を示す。
【
図10】Aは
図8Bに図示されたズームレンズ系の中間端での縦方向球面収差を示し、Bは非点収差を示し、Cは歪曲に係わる収差度を示す。
【
図11】Aは
図8Cに図示されたズームレンズ系の望遠端での縦方向球面収差を示し、Bは非点収差を示し、Cは歪曲に係わる収差度を示す。
【
図12】A〜Eは
図8Aに図示されたズームレンズ系の広角端でのコマ収差を示した図面である。
【
図13】A〜Eは
図8Bに図示されたズームレンズ系の中間端でのコマ収差を示した図面である。
【
図14】A〜Eは
図8Cに図示されたズームレンズ系の望遠端でのコマ収差を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の利点、特徴及びそれらを達成する方法は、添付される図面と共に、詳細に述べる実施形態を参照すれば、明確になる。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現され、ただ本実施形態は、本発明の開示を完全なものにし、本発明が属する技術分野において当業者に、発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるのみである。一方、本明細書において使われた用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定しようとするものではない。本明細書において、単数形は、文言で特別に言及しない限り、複数形も含む。明細書において使われる「包含する(comprise)」及び/または「包含するところの(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作及び/または素子が、一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除するものではないことを示す。第1、第2などの用語は、多様な構成要素について説明するのに使われるが、構成要素は、用語によって限定されるものではない。用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使われるのみである。
【0028】
図1Aないし
図1C、及び
図8Aないし
図8Cは、それぞれ広角端、中間端及び望遠端での本発明の実施形態によるズームレンズ系を図示した図面である。
【0029】
図1Aないし
図1Cを参考にすれば、ズームレンズ系は、物体O側からイメージI側への順に、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4を含む。
【0030】
第1レンズ群G1は、正の屈折力を有する。例えば、第1レンズ群G1は、第1レンズ11、111、及び前記第1レンズ11、111を透過した光線の光路を変更する屈折部材12、13、112、113、及び第2レンズ14、114を含んでもよい。第1レンズ11、111は、負レンズであって、第2レンズ14、114は、正レンズであってもよい。屈折部材12、13、112、113は、第1レンズ11、111を透過した光線を90°折り曲げることができる(
図1Aないし
図1C、及び
図8Aないし
図8Cには、透過光線が90°折り曲げられるとは示されていないが、90°折り曲げ可能であることが望ましい)。例えば、反射ミラー、プリズムまたは光ファイバなどが屈折部材12、13、112、113として使われる。屈折部材12、13、112、113は、光軸を基準として、入射光を90°屈折させて、本発明の実施形態によるズームレンズ系を具備した撮影装置を小型化させることができる。
【0031】
第1レンズ11、111は、例えば、凸面が物体O側に向くメニスカス・レンズであってもよい。第2レンズ14、114は、両凸レンズであってもよい。
【0032】
第1レンズ群G1は、少なくとも1面以上の非球面を含んでもよい。非球面を含むことによって、望遠端において発生する球面収差を補正することができる。
【0033】
第2レンズ群G2は、負の屈折力を有する。例えば、第2レンズ群G2は、第3レンズ21、121、第4レンズ22、122、及び第5レンズ23、123の3枚を含んでもよい。第3レンズ21、121と第4レンズ22、122は、負レンズであって、第5レンズ23、123は、正レンズであってもよい。第4レンズ22、122と第5レンズ23、123とは、互いに接合されて接合レンズをなしてもよい。接合レンズは、ズーミング時に発生しうる倍率色収差を補正することができる。
【0034】
第3レンズ群G3は、正の屈折力を有する。例えば、第3レンズ群G3は、第6レンズ31、131、第7レンズ32、132及び第8レンズ33、133を含んでもよい。第6レンズ31、131と第7レンズ32、132とは、正レンズであって、第8レンズ33、133は、負レンズであってもよい。第7レンズ32、132と第8レンズ33、133とは、互いに接合されて接合レンズをなしてもよい。接合レンズは、ズーミング時に発生しうる倍率色収差を補正することができる。第3レンズ群G3と第2レンズ群G2との間には、絞りSTが含まれてもよい。
【0035】
第4レンズ群G4は、正の屈折力を有する。例えば、第4レンズ群G4は、第9レンズ41、141及び第10レンズ42、142の2枚を含んでもよい。第9レンズ41、141は、正レンズであって、第10レンズ42、142は、負レンズであってもよい。
【0036】
第4レンズ群G4は、少なくとも1面以上の非球面を含んでもよい。一実施形態では、第4レンズ群G4の最も物体O側にあるレンズである第9レンズ41、141が、少なくとも1面以上の非球面を含んでもよい。非球面を含むことによって、ズーミング時に発生しうる非点収差を効果的に補正することができる。例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、第4レンズ群G4の第9レンズ41、141の両面を非球面によって構成することによって、非点収差をさらに効果的に補正することができる。
【0037】
本発明の実施形態によるズームレンズ系は、ズーミング時に、第2レンズ群G2と第4レンズ群G4とが移動しうる。そして、ズーミング時、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは、移動せずに固定されてもよい。従って、ズーミング時、ズームレンズ系の全長が変わらない。
【0038】
第2レンズ群G2は、ズーミング時に倍率を担当する。例えば、第2レンズ群G2は、物体O側からイメージI側に移動することにより、広角端から望遠端への倍率を具現する。第2レンズ群G2の移動により、広角端から望遠端へのズーミング時、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔は狭まり、第2レンズ群G2と第1レンズ群G1との間隔は増大する。
【0039】
第4レンズ群G4は、ズーミングの際に、焦点を調節するフォーカシング機能を行う。例えば、広角端から望遠端へのズーミングの際に、第4レンズ群G4は、物体O側に移動した状態から、イメージI側に移動する放物線軌跡を示すことができる。ズーミング時にフォーカシング機能を行う第4レンズ群G4の移動軌跡は、全体的に放物線状を呈するが、その移動量は、多様な変化が可能である。例えば、後述する第2実施形態の場合、広角端から望遠端へのズーミングの際に、望遠端での第4レンズ群G4は、物体O側にさらに近く位置するように移動する。参考までに、第2実施形態を示す
図8には、十分に図示されていないが、広角端から望遠端へのズーミングの際に、実際に第4レンズ群G4の軌跡は、放物線を描く。
ズーミング時、2個のレンズ群だけを移動させることによって、絞りSTが備わる空間を確保することができる。例えば、ズームレンズ系が、CCTV(closed−circuit television)のような撮影装置に使われる場合、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に、十分な空間を確保することによって、厚い絞りユニットを配置できるという長所がある。
【0040】
本発明の実施形態によるズームレンズ系は、下記の式を満足する。
【数10】
ここで、Fno_wは、広角端でのFナンバを示す。本発明の実施形態は、広角端でのFナンバが2.0以下である明るいズームレンズ系を提供することができる。例えば、本発明の実施形態によるズームレンズ系のFナンバは、広角端において、1.7〜2.0の範囲であってもよい。
【数11】
ここで、f
Wは、広角端での全体焦点距離を、f
Tは、望遠端での全体焦点距離を示す。本発明の実施形態は、倍率が約5.5倍以上である高倍率ズームレンズ系を提供することができる。例えば、本発明の実施形態によるズームレンズ系は、約5.5〜7.5倍の倍率を有してもよい。
【数12】
ここで、BFLは、後焦点距離(back focal length)を、OALは、第1レンズ11、111の物体O側の面の中心からイメージI面までの距離を示す。
【0041】
数式3は、ズームレンズ系の全長(OAL:over all length)に対する後焦点距離を定義したものであり、本発明の実施形態は、BFLが長いズームレンズ系を提供することができる。BFLが、ズームレンズ系の全長に対して約7.5%以上になるように、さらに望ましくは、13.7%以上になるようにする。監視用カメラ(CCTV)のような撮影装置の場合、昼間だけではなく、夜間にも映像を撮影しなければならない。監視用カメラは、高画質の映像を得るために、昼間撮影及び夜間撮影に適したフィルタを具備することができる。本発明の実施形態によるズームレンズ系は、全長に比べてBFLが比較的大きい値を有するので、昼間用フィルタと夜間用フィルタとの交換が容易になる。例えば、下記の数式4及び数式5のように、ズームレンズ系のBFLは、6mm以上、望ましくは8mm以上になってもよい。
【数13】
【数14】
また、ズームレンズ系の全長(OAL)は、下記の式を満足する。
【数15】
ここで、OALは、第1レンズ11、111の物体O側の面の中心からイメージI面までの距離を示す。数式6を参照すると、本発明の実施形態によるズームレンズ系の全長は、約65mm以下であり、撮影装置を小型化することができる。
【0042】
本発明の実施形態による第4レンズ群G4の正レンズは、下記の式を満足する。
【数16】
ここで、Ndは、第4レンズ群G4に含まれた正レンズのd線の屈折率を示す。第4レンズ群G4に低屈折力のレンズを具備させることによって、長いBFLを確保することができる。
【0043】
本発明の実施形態による第2レンズ群G2は、下記の式を満足する。
【数17】
ここで、f9は、前記第2レンズ群G2において、物体O側から最初に置かれたレンズの焦点距離を、f11は、前記第2レンズ群G2において、物体O側から2番目に置かれたレンズの焦点距離を示す。例えば、f9は、第3レンズ21、121の焦点距離を、f11は、第4レンズ22、122と、第5レンズ23、123とが接合された状態である接合レンズの焦点距離を示す。
【0044】
本発明の実施形態に示される非球面の定義について述べれば、次の通りである。
【0045】
本発明の実施形態によるズームレンズの非球面形状は、光軸方向をx軸とし、光軸方向に対して垂直な方向をy軸とするとき、光線の進行方向を正として、次のような数式で示すことができる。ここで、xは、レンズの頂点から光軸方向への距離を、yは、光軸に対して垂直な方向への距離を、kは、コニック定数(conic constant)を、A、B、C、Dは、非球面係数を、cは、レンズの頂点における曲率半径の逆数(1/R)をそれぞれ示す。
【数18】
【0046】
次に、本発明の実施形態によるレンズ系の設計データを示す。
【0047】
以下、Fは、焦点距離を、Fnoは、Fナンバを、D8、D13、D19、D23は、可変距離を示す。また、Rは、曲率半径を、Dnは、レンズの中心厚、またはレンズとレンズとの間隔を、ndは、素材の屈折率、vdは、素材のアッベ数(Abbe’s number)を、ASPは、非球面を示す。
【実施例1】
【0048】
表1は、
図1Aないし
図1Cに図示された一実施形態によるズームレンズ系の設計データを示す。また、表1において、第10レンズ42とイメージI面との間にフィルタ50、60のような光学素子がさらに備わってもよい。表1でRn(n=1、2、…、27)は、
図1に示された各レンズの面Sm(m=1、2、…、27)の曲率半径を示す。
F=3.8〜25.2995
Fno=1.81〜3.47
BFL=8.787
OAL=63.899
【表1】
【0049】
表2は、
図1に図示されたズームレンズ系での非球面係数を示し、表3は、可変距離を、広角端、中間端及び望遠端に関してそれぞれ示した表である。
【表2】
【表3】
【0050】
図2Aないし
図4Cは、
図1Aないし
図1Cに図示されたズームレンズ系の広角端、中間端及び望遠端での縦方向球面収差(longitudinal spherical aberration)、非点収差(astigmatism aberration)及び歪曲収差(distortion)を示している。像面湾曲についての
図2Bを参考にすれば、非点収差フィールド曲線(astigmatic field curve)において点線は、子午(tangential)非点収差を、実線は、球欠(sagittal)非点収差を示す。縦方向球面収差は、約656.28nm、587.56nm、546.07nm、486.13nm、435.84nmの波長を有する光について図示され、非点収差と歪曲収差は、約546.07nm波長を有する光について図示されたものである。
【0051】
図5Aないし
図7Eは、ズームレンズ系の広角端、中間端及び望遠端でのコマ収差を示している。
図5Aないし
図5E、
図6Aないし
図6E及び
図7Aないし
図7Eにおいて、左側のグラフは、子午(tangential)コマ収差を、右側のグラフは、球欠(sagittal)コマ収差を示す。一方、コマ収差は、ズームレンズ系に入射する光の入射角が33.17°、24.20°、17.55°、10.62°、0°である際のコマ収差を示す。
【実施例2】
【0052】
表4は、
図8Aないし
図8Cに図示された一実施形態によるズームレンズ系の設計データを示す。また、表4において、第10レンズ142とイメージI面との間に、フィルタ150、160のような光学素子がさらに備わってもよい。表4において、Rn(n=1、2、…、27)は、
図8に示された各レンズの面Sm(m=101、102、…、127)の曲率半径を示す。
F=3.803〜25.2914
Fno=1.81〜3.47
BFL=8.826
OAL=63.799
【表4】
【0053】
表5は、
図8Aないし
図8Cに図示されたズームレンズ系での非球面係数を示し、表6は、可変距離を、広角端、中間端及び望遠端に関してそれぞれ示した表である。
【表5】
【表6】
【0054】
図9Aないし
図11Cは、
図8Aないし
図8Cに図示されたズームレンズ系の広角端、中間端及び望遠端での縦方向球面収差(longitudinal spherical aberration)、非点収差(astigmatism aberration)及び歪曲収差(distortion)を示している。像面湾曲についての非点収差フィールド曲線(astigmatic field curve)において、点線は、子午(tangential)非点収差を、実線は球欠(sagittal)非点収差を示す。縦方向球面収差は、約656.28nm、587.56nm、546.07nm、486.13nm、435.84nmの波長を有する光について図示され、非点収差と歪曲収差は、約546.07nm波長を有する光について図示されたものである。
【0055】
図12Aないし
図14Eは、ズームレンズ系の広角端、中間端及び望遠端でのコマ収差を示している。
図12Aないし
図12E、
図13Aないし
図13E、
図14Aないし
図14Eにおいて、左側のグラフは、子午(tangential)コマ収差を、右側のグラフは、球欠(sagittal)コマ収差を示す。一方、コマ収差は、ズームレンズ系に入射する光の入射角が、33.17°、24.20°、17.55°、10.62°、0°である際のコマ収差を示す。
【0056】
次に、前記第1実施形態及び第2実施形態が、それぞれ前記数式1ないし数式8を満足するところを示す。
【表7】
【0057】
本発明について、前記言及された望ましい実施形態と関連して説明したが、発明の要旨と範囲から外れることなく、多様な修正又は変形を施すことが可能である。従って、特許請求の範囲は、本発明の要旨に属する限り、かような修正や変形を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のズームレンズは、映像具現、特にCCTV関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
11、111 第1レンズ
12、13、120、130 光学部材
14、114 第2レンズ
21、121 第3レンズ
22、122 第4レンズ
23、123 第5レンズ
31、131 第6レンズ
32、132 第7レンズ
33、133 第8レンズ
41、141 第9レンズ
42、142 第10レンズ
50、60、150、160 フィルタ
100 ズームレンズ系
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
I イメージ
O 物体
ST 絞り