(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037341
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】映像をデコーディングするための方法
(51)【国際特許分類】
H04N 19/119 20140101AFI20161128BHJP
H04N 19/192 20140101ALI20161128BHJP
H04N 19/503 20140101ALI20161128BHJP
H04N 19/70 20140101ALI20161128BHJP
【FI】
H04N19/119
H04N19/192
H04N19/503
H04N19/70
【請求項の数】19
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-556183(P2013-556183)
(86)(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公表番号】特表2014-511628(P2014-511628A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】JP2012061296
(87)【国際公開番号】WO2012150693
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2013年9月3日
【審判番号】不服2015-12823(P2015-12823/J1)
【審判請求日】2015年7月6日
(31)【優先権主張番号】61/482,873
(32)【優先日】2011年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/169,959
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】コーエン、ロバート・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェトロ、アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】スン、ハイファン
【合議体】
【審判長】
藤井 浩
【審判官】
清水 正一
【審判官】
渡邊 聡
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/049119(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/028088(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/116869(WO,A1)
【文献】
Ken McCann, et al., “Samsung’s Response to the Call for Proposals on Video Compression Technology”, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT−VC) of ITU−T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 1st Meeting: Dresden, DE, 15−23 April, 2010, Document: JCTVC−A124, pp.1,7−10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 - 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像をデコーディングする、コンピュータによって実行される方法であって、
プロセッサにより、コーディングされた映像を含むビットストリームを復号して、変換木を生成するための分割フラグと、コーディング単位(以下、CUという)の予測単位(以下、PUという)への区画情報とを得る、復号するステップと、
プロセッサにより、前記分割フラグに従って複数のレベルの前記変換木を生成するステップであって、前記変換木内のノードは、前記CUに直接関連付けられた変換単位(以下、TUという)を表し、前記生成するステップは、
前記分割フラグが設定されている場合にのみ、前記TUを分割し、前記TUの分割に従って前記変換木を変更すること、
を更に含むステップと、
プロセッサにより、前記変換木に従って前記PUに関連付けられた前記TUを用いて、前記PUに含まれるデータを復号化するステップと、を含み、
前記生成するステップは、
正方形のTUが、複数の長方形のTUに分割されることと、
複数のTUを含む各PUについて、前記複数のTUをより大きなTUにマージすることと、
前記マージに従って前記変換木を変更することと、を含む、
方法。
【請求項2】
各TUのサイズが所定の最小値に等しくなるまで、前記分割することと、前記マージすることと、前記変更することとを繰り返すこと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繰り返すことは、特定のノードの前記TUが前記関連付けられたPU内に完全に包含されているとは限らない場合に続けられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ビットストリームは、暗黙的分割フラグを含み、前記暗黙的分割フラグが設定されていない場合、前記分割フラグは、前記変換木内の対応する前記ノードについて、前記ビットストリーム内に信号化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ビットストリームは、暗黙的分割フラグを含み、前記暗黙的分割フラグが設定され、かつ、あらかじめ規定された分割条件が満たされている場合にのみ、前記繰り返すことが実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
長方形のTUを前記分割することは、前記長方形のTUの長軸の方向に沿っている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分割することは、3つ以上のTUを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記TUの最大長又は最大幅が削減される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記PUは、任意の形状及びサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分割することは、長方形のTUを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記TUの水平方向及び垂直方向の寸法が、前記PUの水平方向及び垂直方向の寸法の特徴と整合される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記PUは、ビデオデータの一部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記PUは、予測プロセスから得られた残差データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記変換木はN分木である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
長方形のTUの前記分割は、短軸の方向に沿っている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
正方形又は長方形のTUが、より大きなTUにマージされる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記N分木のNの値は、前記変換木のノードが異なるごとに異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記TUは、複数のPUがインター予測される場合に、前記PUにまたがる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記TUは、前記変換木のリーフノードによって表される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、映像をコーディングすることに関し、より詳細には、映像を符号化及び復号化することに関連して、階層的な変換単位を用いて映像をコーディングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
H.264/MPEG−4AVCとして現在開発中の高効率ビデオコーディング(HEVC:High Efficiency Video Coding)規格の場合、残差ブロックへのTUの適用は、非特許文献1に記載されているような木によって表される。
【0003】
コーディング層
上記規格に定義されている階層的なコーディング層は、ビデオシーケンス層、映像層、スライス層、及び木ブロック層を含む。上位層は下位層を包含する。
【0004】
木ブロック
提案された規格によれば、映像は、スライスに区画化され、各スライスは、ラスター走査において連続して順序付けされた一連の木ブロック(TB:Treeblock)に区画化される。映像及びTBは、H.264/AVC等のこれまでのビデオコーディング規格におけるフレーム及びマクロブロックにそれぞれ広義で類似している。TBの最大許容サイズは、64×64ピクセルのルーマ(輝度)及び彩度(色)のサンプルである。
【0005】
コーディング単位
コーディング単位(CU:Coding Unit)は、イントラ予測及びインター予測に用いられる分割の基本単位である。イントラ予測は、単一の映像の空間領域において動作する一方、インター予測は、予測される映像と以前に復号化された映像のセットとの間の時間領域において動作する。CUは常に正方形であり、128×l28(LCU)ピクセル、64×64ピクセル、32×32ピクセル、16×16ピクセル、及び8×8ピクセルとすることができる。CUは、TBから開始して、サイズが等しい4つのブロックへの再帰的な分割を可能にする。このプロセスによって、TBと同じだけの大きさか、又は小さい場合で8×8ピクセルの大きさとすることができるCUブロックで構成されるコンテンツ適応コーディング木構造が得られる。
【0006】
予測単位(PU)
予測単位(PU:Prediction Unit)は、予測プロセスに関する情報(データ)を保有するのに用いられる基本単位である。一般に、PUは、区画化を容易にするために、形状が正方形であることに制限されず、形状は、例えば、映像内の実際の物体の境界に一致する。各CUは、1つ又は複数のPUを含むことができる。
【0007】
変換単位(TU)
図1に示すように、変換木100のルートノード101は、データブロック110に適用されるN×NのTU、すなわち「変換単位」(TU:Transform Unit)に対応する。TUは、変換プロセス及び量子化プロセスに用いられる基本単位である。提案された規格では、TUは、常に正方形であり、4×4ピクセルから32×32ピクセルまでのサイズを取ることができる。TUは、PUよりも大きくすることができず、CUのサイズを超えない。複数のTUを木構造(以下、変換木)に配列することができる。各CUは、1つ又は複数のTUを含むことができ、ここで、複数のTUは木構造に配列することができる。
【0008】
この例示の変換木は、4つのレベル0〜3を有する四分木である。この変換木が一度分割される場合、4つのN/2×N/2のTUが適用される。これらのTUのそれぞれは、その後、あらかじめ規定された限度まで分割することができる。イントラコーディングされた映像の場合、変換木は、イントラ予測残差データの「予測単位」(PU)にわたって適用される。これらのPUは、現在、サイズ2N×2Nピクセル、2N×Nピクセル、N×2Nピクセル、又はN×Nピクセルの正方形又は長方形として定義されている。イントラコーディングされた映像の場合、正方形のTUは、全体がPU内に包含されなければならず、そのため、許容される最大TUサイズは、通常、2N×2Nピクセル又はN×Nピクセルである。この変換木構造内のa〜jのTUとa〜jのPUとの間の関係は、
図1に示されている。
【0009】
図2に示すように、提案されたHEVC規格について、非特許文献2に記載されているような新たなPU構造が提案されている。このSDIP方法を用いると、PUは、1ピクセル又は2ピクセルの幅、例えばN×2ピクセル、2×Nピクセル、N×1ピクセル、又は1×Nピクセルほどの小さな細片又は長方形201とすることができる。そのような狭いPUに区画化された、イントラコーディングされたブロック上に変換木を重ね合わせるとき、変換木は、TUのサイズが2×2又は1×1のみとなるレベルに分割される。TUのサイズは、PUのサイズよりも大きくすることはできない。大きくした場合、変換プロセス及び予測プロセスが複雑になる。これらの新たなPU構造を利用する従来技術のSDIP方法は、例えば、1×N及び2×NのTUとして規定される。長方形のTUのサイズに起因して、この従来技術は、HEVC規格の現在の暫定仕様書にある変換木構造と適合していない。SDIPは、上記規格において要求されている変換木を用いず、その代わり、TUサイズは、PUのサイズによって暗黙的に定められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「Video Compression Using Nested Quadtree Structures, Leaf Merging,and Improved Techniques for Motion Representation and Entropy Coding」(IEEE Transactions on Circuits and Systems for Video Technology,vol.20,no.12,pp.1676−1687,December 2010)
【非特許文献2】Cao他「CE6.b1 Report on Short Distance Intra Prediction Method (SDIP)」(JCTVC−E278,March 2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、依然として、上記提案された規格によって定義されたTUの木構造を維持しながら、正方形及び長方形のTUを分割して、長方形、及び場合によっては非常に狭い長方形のPUに対して適用する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ビットストリームが、コーディングされた映像及び分割フラグ(split−flags)を含む。分割フラグは、変換木を生成するのに用いられる。実際には、このビットストリームは、コーディング単位(CU)を予測単位(PU)に区画化したものである。
【0013】
変換木は、分割フラグに従って生成される。変換木内のノードは、CUに関連付けられた変換単位(TU)を表す。
【0014】
対応する分割フラグが設定されている場合にのみ、生成によって、各TUが分割される。
【0015】
複数のTUを含む各PUについて、複数のTUが、より大きなTUにマージされ、変換木は、分割及びマージに従って変更される。
【0016】
その後、各PUに含まれるデータを、変換木に従ってそのPUに関連付けられたTUを用いて復号化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来技術による変換単位のための木分割の図である。
【
図2】従来技術による長方形の予測単位への分解の図である。
【
図3】本発明の実施の形態によって用いられる一例示の復号化システムの流れ図である。
【
図4】本発明による変換木生成の第1のステップの図である。
【
図5】本発明による変換木生成の第2のステップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態は、階層的な変換単位(TU)を用いて映像をコーディングするための方法を提供する。コーディングは、符号化(encoding)及び復号化(decoding)を包含する。一般に、符号化及び復号化は、コーデック(コーダーデコーダー(CODer−DECoder))において実行される。コーデックは、デジタルデータストリーム又はデジタル信号を符号化及び/又は復号化することができるデバイス又はコンピュータープログラムである。例えば、コーダーは、ビットストリーム又は信号を圧縮、送信、記憶、又は暗号化のために符号化し、デコーダーは、符号化されたビットストリームを再生又は編集のために復号化する。
【0019】
本方法は、依然として、高効率ビデオコーディング(HEVC)規格に定義された変換単位(TU)の階層的な変換木構造を維持しながら、正方形及び長方形のTUを、映像の長方形部分、及び場合によっては非常に狭い長方形部分に対して適用する。変換は、変換又は逆変換のいずれも指すことができる。好ましい実施の形態では、変換木は四分木(Q木)であるが、二分木(B木)及び八分木等、一般的にはN分木の他の木構造も可能である。
【0020】
本方法への入力は、予測単位(PU)に区画化されたN×Nのコーディング単位(CU)である。本発明は、TUをPUに対して適用するのに用いられる変換木を生成する。
【0021】
復号化システム
図3は、本発明の実施の形態によって用いられる一例示のデコーダー及び方法のシステム300を示している。すなわち、本方法のステップは、デコーダーによって実行され、このデコーダーは、当該技術分野において知られているように、ソフトウェア、ファームウェア、又はメモリ及び入出力インターフェースに接続されたプロセッサとすることができる。
【0022】
本方法(又はデコーダー)への入力は、コーディングされた映像、例えば、画像又はビデオにおける画像のシーケンスのビットストリーム301である。このビットストリームは、パースされて(310)、変換木を生成するための分割フラグ311が得られる。これらの分割フラグは、変換木221の対応するノードのTUと、処理されるデータ312、例えばN×Nのデータブロックとに関連付けられる。このデータは、コーディング単位(CU)を予測単位(PU)に区画化したものを含む。
【0023】
換言すれば、いずれのノードも、変換木内の所与の深さにおけるTUを表す。ほとんどの場合、リーフノードにおけるTUのみが実現される。しかしながら、コーデックは、変換木の階層における上位のノードにおけるTUを実施することができる。
【0024】
分割フラグは、変換木321を生成する(320)のに用いられる。次に、PU内のデータは、変換木に従って復号化され、復号化されたデータ302が生成される。
【0025】
生成ステップ320は、分割フラグ311が設定されている場合にのみ各TUを分割する(350)ことを含む。
【0026】
複数のTUを含む各PUについて、これらの複数のTUは、より大きなTUにマージされる。例えば、16×8のPUは、2つの8×8のTUによって区画化することができる。これらの2つの8×8のTUは、1つの16×8のTUにマージすることができる。別の例では、64×64の正方形のPUが、16個の8×32のTUに区画化される。これらのTUのうちの4つが、32×32の正方形のTUにマージされ、他のTUは、8×32の長方形のまま残る。マージすることによって、多くの非常に小さなTU、例えば1×1のTUを有する従来技術(非特許文献2参照)の問題が解決される。次に、変換木321は、分割及びマージに従って変更される(370)。
【0027】
分割、区画化、マージ、及び変更は、TUのサイズが所定の最小値380に等しくなるまで繰り返すことができる(385)。
【0028】
変換木が生成された(320)後、各PUに含まれるデータ312は、そのPUに関連付けられたTUを用いて復号化することができる。
【0030】
実施の形態1:
図4は、入力されたCUのPU312への区画化312と、分割フラグに従ったPUの反復的な分割350(又は反復的でない分割)と、その後のマージとを示している。
【0031】
ステップ1:変換木のルートノードは、N×NのPU312をカバーする最初のN×NのTUに対応する。
図3に示すようにデコーダー300によって受信されたビットストリーム301は、このノードに関連付けられている分割フラグ311を含む。分割フラグが設定されていない場合(401)、対応するTUは分割されず、このノードのためのプロセスは完了する。分割フラグが設定されている場合(402)、N×NのTUが複数のTUに分割される(403)。生成されるTUの数は、木の構造に対応し、例えば、四分木の場合は4つである。分割によって生成されるTUの数は変更することができることに留意されたい。
【0032】
次に、デコーダーは、PUが複数のTU(正:multiple TUs)を含むと判断する。例えば、長方形のPUは、複数のTU、例えば、それぞれサイズN/2×N/2の2つの正方形のTUを含む。この場合、そのPU内の複数のTUは、当該PUの寸法と整合したN×N/2のTU又はN/2×Nの長方形のTU405にマージされる(404)。長方形のPU及びTUは、長さに対応する長軸と、幅に対応する短軸とを含むことができる。正方形のTUをそれよりも長い長方形のTUにマージすることによって、従来技術(非特許文献2参照)のような長く狭い長方形が多くの小さな正方形のTUに分割される可能性がある問題が排除される。マージは、PU内のTUの数も削減する。
【0033】
多くの小さなTUを有することは、通例、少数のより大きなTUを有することよりも効果的でなく、特に、これらのTUの寸法が小さい場合、又は複数のTUが類似のデータをカバーする場合に効果的ではない。
【0034】
次に、変換木が変更される。第1のN/2×N/2のTU406と相応していた変換木の枝が、マージされた長方形のTUに対応するように再定義され、第2のマージされたTUに対応していた変換木の枝が除去される。
【0035】
ステップ2:ステップ1において生成された各ノードについて、TUのサイズがあらかじめ規定された最小値に等しい場合、このプロセスは、そのノードについては終了する。残りの各ノードは、関連付けられた分割フラグが設定されているとき、又はそのノードのTUがPU内に完全に包含されているとは限らない場合に更に分割される。
【0036】
一方、ステップ1とは異なり、ノードが分割される方法は、
図5に示すように、PUの形状に依存する。なぜならば、PUは、任意の形状及びサイズを有することができるからである。この分割は、以下のステップ2a又はステップ2bにおいて説明するように実行される。ビットストリーム内に分割フラグを捜すのか、又はTUが2つ以上のPUをカバーするときに分割するのかの決定は、事前に行うことができる。すなわち、システムは、分割フラグが、ビットストリーム内に信号化されるように、又は分割フラグが、最小若しくは最大のTUサイズ、若しくはTUが複数のPUにまたがるか否か等の判定基準に基づいて推論されるように規定される。
【0037】
暗黙的分割フラグ
代替的に、「暗黙的分割フラグ」をビットストリーム301からパースすることができる。暗黙的分割フラグが設定されていない場合、分割フラグが、その対応するノードについて信号化される。暗黙的分割フラグが設定されている場合、分割フラグは、このノードについて信号化されず、分割の決定は、あらかじめ規定された分割条件に基づいて行われる。これらのあらかじめ規定された分割条件は、TUが複数のPUにまたがるか否か又はTUのサイズ制限が満たされているか否か等の他の要因を含むことができる。この場合、暗黙的分割フラグは、分割フラグが含まれている場合には、この分割フラグの前に受信される。
【0038】
例えば、暗黙的分割フラグは、各ノードの前、各変換木の前、各画像若しくは各ビデオフレームの前、又は各ビデオシーケンスの前に受信することができる。イントラPUの場合、TUは、複数のPUにまたがることが可能ではない。なぜならば、PUは、近接したPUのセットから予測され、そのため、それらの近接したPUは、現在のPUを予測するのに用いられるように完全に復号化、逆変換、及び再構成されなければならないからである。
【0039】
別の例では、暗黙的フラグを設定することはできないが、あらかじめ規定されたメトリック又は条件が、分割フラグの存在を必要とすることなくノードを分割するか否かを決定するのに用いられる。
【0040】
ステップ2a:このノードのTUが正方形である場合、このプロセスは、ステップ1に戻り、このノードを新たなルートノードとして扱い、例えばサイズN/4×N/4の4つの正方形のTUに分割する。
【0041】
ステップ2b:このノードのTUが、長方形、例えばN/2×Nである場合、このノードは、N/4×NのTUに対応する2つのノードに分割される。同様に、N×N/2のTUが、N×N/4のTUに対応する2つのノードに分割される。次に、このプロセスは、これらのノードのそれぞれについてステップ2を繰り返し、長方形のTUが長軸の方向に沿って分割されることを確実にし、その結果、長方形のTUはより細くなる。
【0042】
実施の形態2:
この実施の形態では、ステップ2bが、長方形のTUに関連付けられたノードが複数のノード、例えば4つのノード及び4つのTUに分割されるように変更される。例えば、N/2×NのTUが、4つのN/8×NのTUに分割される。より多くの数のTUへのこの分割は、PU内のデータが、PU内の部分が異なるごとに異なる場合に有益となり得る。この実施の形態は、1つの長方形のTUを4つの長方形のTUに分割するのに二分木の2つのレベルを必要とするのではなく、1つのTUを4つの長方形のTUに分割するのに1つの四分木レベルしか必要とせず、したがって、1つの分割フラグしか必要としない。この実施の形態は、あらかじめ規定することもできるし、暗黙的フラグが信号化された方法と同様に、「複数分割フラグ」としてビットストリーム内に信号化することもできる。
【0043】
実施の形態3:
ここでは、ステップ1が、正方形のTUのサイズがあらかじめ規定された閾値よりも小さくなるまで、正方形のTUに関連付けられたノードが長方形になるようマージされないように変更される。例えば、閾値が4である場合、長方形の8×4のPUは、2つの4×4のTUによってカバーすることができる。一方、4×2のPUは、2つの2×2のTUによってカバーすることができない。この場合、実施の形態1が適用され、これらの2つのノードは、マージされて、4×2のPUをカバーするように4×2のTUを形成する。この実施の形態は、性能又は複雑度を考慮したことによって正方形のTUが好ましい場合に有用であり、長方形のTUは、正方形のTUがそれらの小さな寸法に起因して効果を失うときにのみ用いられる。
【0044】
実施の形態4:
この実施の形態では、ステップ2bが、長方形のTUに関連付けられたノードを分割して、3つ以上の正方形又は長方形のTUを形成することができるように変更される。この場合、分割は、必ずしも、長方形の長い方の寸法と整合していない。例えば、16×4のTUは、4つの4×4のTU又は2つの8×4のTUに分割することができる。正方形のTUに分割するのか又は長方形のTUに分割するのかの選択は、暗黙的フラグの場合と同様に、ビットストリーム内のフラグによって明示的に示すこともできるし、符号化/復号化プロセスの一部としてあらかじめ規定することもできる。
【0045】
この実施の形態は、通常、非常に大きな長方形のTU、例えば64×16に用いられ、その結果、8つの16×16のTUが2つの64×8のTUの代わりに用いられる。別の例は、64×16のTUを4つの32×8のTUに分割する。例えば、非常に長い水平のTUは、水平方向のリンギング等のアーティファクを生成する可能性があり、そのため、この実施の形態は、長方形のTUの最大長を低減することによってこれらのアーティファクトを低減する。この最大長も、ビットストリーム内に信号として含めることができる。同様に、最大幅を指定することができる。
【0046】
実施の形態5:
この実施の形態では、ステップ1が、N×NのTUが長方形のTU、すなわちサイズN/2×N/2以外に直接分割されるように変更される。例えば、N×NのTUは、4つのN/4×NのTUに分割することができる。この実施の形態は、PUが正方形であり得る場合であっても、正方形のTUを複数の長方形のTUに直接分割することができるという点で実施の形態2と異なる。
【0047】
この実施の形態は、PU内の特徴が水平又は垂直に配向しており、その結果、それらの特徴の方向と整合した水平又は垂直の長方形のTUが、PU内の配向したデータを分割する複数の正方形のTUよりも効果的であり得る場合に有用である。特徴は、色、エッジ、リッジ、コーナー、物体、及び他の関心のある点を含むことができる。上記で述べたように、この種の分割を行うか否かは、暗黙的分割フラグの場合と同様に、あらかじめ規定することもできるし、信号化することもできる。
【0048】
実施の形態6:
この実施の形態では、ステップ1が、TUが複数のPUにまたがることができるように変更される。これは、PUがインター予測されるときに起こる可能性がある。例えば、インター予測されるPUは、同じCU内から復号化されたデータからではなく、以前に復号化された映像からのデータを用いて予測される。したがって、変換は、CU内の複数のPUにわたって適用される可能性がある。