特許第6037401号(P6037401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6037401電気機械共振器を有する測定システム、該システムを製造するための方法、および、少なくとも2つの電気機械共振器を読み取るための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037401
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】電気機械共振器を有する測定システム、該システムを製造するための方法、および、少なくとも2つの電気機械共振器を読み取るための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20161128BHJP
   H03H 3/007 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G01N5/02 A
   H03H3/007 Z
【請求項の数】18
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-501697(P2014-501697)
(86)(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公表番号】特表2014-510921(P2014-510921A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】FR2012050682
(87)【国際公開番号】WO2012172204
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年3月4日
(31)【優先権主張番号】1152774
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510225292
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】エリック、コリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、アンドレウッチ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン、デュラフル
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン、ヘンツ
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−142134(JP,A)
【文献】 特開2010−141889(JP,A)
【文献】 特開2004−304766(JP,A)
【文献】 特開2004−201320(JP,A)
【文献】 特表2006−506236(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0199638(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/02
H03H 3/007
H03B 5/30
G01D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定システムにおいて、
測定されるべき物理量にしたがって無負荷時共振周波数付近で変動する共振周波数をそれぞれが有する少なくとも2つの電気機械共振器(1021...102N;1902)であって、前記各共振器(1021...102N;1902)は、 励振信号(e)を受けるようになっている入力(1041...104N)と、 励振信号(e)に応じて出力信号(s1...sN)を供給するための出力(1061...106N)であって、前記出力信号(s1...sN)が前記共振器(1021...102N;1902)の共振周波数での共振を有する、出力(1061...106N)と、
前記無負荷時共振周波数を規定する機械的構造であって、無負荷時共振周波数が互いに異なるように前記共振器(1021...102N;1902)の前記機械的構造が互いに異なる、機械的構造と、
を含んでおり、前記共振器のすべての入力が互いに接続され、同じ励振信号(e)を受ける、少なくとも2つの電気機械共振器(1021...102N;1902)と、 前記出力信号(s1...sN)を1つの全出力信号(s)として加算するための手段(108)と、
前記共振器の無負荷時共振周波数に関連する無負荷時共振情報が前記各共振器ごとに記録されるメモリ(120;1201...120M;1906)と、
読み取りのために選択される1つの前記共振器の共振周波数を決定する、読み取りデバイス(110;15021...1502M;1802)と、 を備えており、
前記読み取りデバイス(110;15021...1502M;1802)は、前記全出力信号(s)を受けるように構成されており、
前記読み取りデバイス(110;15021...1502M;1802)は、前記全出力信号(s)に基づいて、励振信号(e;e1...eM)を前記共振器に供給するように構成された閉ループ(112;1121...112M;1803)を含んでおり、
前記選択された共振器の前記共振周波数を決定するために、前記読み取りデバイス(110;15021...1502M;1802)は、読み取り前に、前記選択された共振器のために格納された無負荷時共振情報から、前記閉ループ(112;1121...112M;1803)の少なくとも1つの要素を構成し、
前記選択された共振器の前記共振周波数を決定するために、前記構成された要素を有する前記閉ループ(112;1121...112M;1803)は、その後、前記選択された共振器の前記共振周波数に固定される、
測定システム。
【請求項2】
選択される複数の共振器の共振周波数を同時に決定するようになっている幾つかの読み取りデバイス(15021...1502M)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気機械共振器(1021...102N;1902)の前記入力(1041...104N)に全励振信号(e)を供給するために前記読み取りデバイスにより供給される励振信号(e1...eM;e(1)...e(5))を加算するための手段(1504;1918)を更に備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記各電気機械共振器(1021...102N;1902)ごとに異なる前記入力(1041...104N)および前記出力(1061...106N)が設けられた、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記各読み取りデバイス(110;15021...1502M;1802)は、単一の選択された共振器(1021...102N;1902)の共振周波数を決定するようになっている、請求項2又は請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記各読み取りデバイス(110;15021...1502M;1802)は、前記全出力信号(s)から、幾つかの選択された共振器(1021...102N;1902)の共振周波数を連続的に決定するようになっている、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記加算するための手段(108)は、前記共振器(1021...102N;1902)の前記出力(1061...106N)が接続されるノードを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記各共振器において、無負荷時共振情報が無負荷時共振周波数付近に及ぶ帯域幅であり、前記各読み取りデバイス(1802)は、読み取りのために選択される前記共振器の前記出力信号(s1...sM)のそれぞれを前記全出力信号(s)から抽出するようになっているデマルチプレクサ(1804)を備える少なくとも1つの自動振動ループ(1803)を備え、前記抽出は、読み取りのために選択される前記各共振器ごとに、この共振器に特有の帯域幅で行なわれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記各共振器に特有の無負荷時共振情報がこの共振器の無負荷時共振周波数である、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記読み取りデバイス(110;15021...1502M)は、単一の共振器の共振周波数を決定するようになっており、読み取りのために選択される前記共振器の無負荷時共振周波数を選択するための手段(122;1508;1908)を備えるとともに、読み取りの開始時に、選択された無負荷時共振周波数に等しい周波数を有する単一周波数励振信号(e;e1...eM;e(1)...e(5))を供給するようになっている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記読み取りデバイス(110;15021...1502M)が制御位相ループ回路(112;1121...112M)を備え、この制御位相ループ回路(112;1121...112M)は、読み取り開始後に、励振信号(e;e1...eM;e(1)...e(5))の周波数を、読み取りのために選択される前記共振器に対応する前記全出力信号(s)の共振ピークの周波数で固定して、その固定周波数を決定された共振周波数として供給するようになっている、請求項4を引用する請求項9または請求項4を引用する請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記各制御位相ループ回路(112;1121...112M)は、選択された無負荷時共振周波数での固定を開始するための手段(124;1241...124M;1914(1)...1914(5))を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気機械共振器(1021...102N;1902)がMEMS共振器またはNEMS共振器である、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記電気機械共振器(1021...102N;1902)が同じシリコンチップ(202)上にエッチングされるNEMS共振器(1021...102N)である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のシステムを製造するための方法であって、前記電気機械共振器(1021...102N;1902)の定寸のために、 前記各共振器ごとに、その無負荷時共振周波数付近でのその共振周波数の予期される最大変動範囲を決定するステップと、
重なり合わないように決定される間隔にわたって互いに十分に離れた無負荷時共振周波数を規定する前記共振器の機械的構造を選択するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
無負荷時共振周波数を規定する機械的構造をそれぞれが備える少なくとも2つの電気機械共振器(1021...102N;1902)を読み取るための方法であって、無負荷時共振周波数が互いに異なるように前記共振器(1021...102N)の前記機械的構造が互いに異なり、前記各共振器は、測定されるべき物理量にしたがって無負荷時共振周波数付近で変動する共振周波数を有し、前記各共振器(1021...102N)には、励振信号(e)を受けるようになっている入力(1041...104N)と、励振信号(e)に応じて出力信号(s1...sN)を供給するための出力(1061...106N)であって、前記出力信号(s1...sN)が前記電気機械共振器(1021...102N)の共振周波数での共振を有する、出力(1061...106N)とが設けられ、前記共振器のすべての入力が互いに接続され、同じ励振信号(e)を受け、前記出力信号(s1...sN)は、加算手段(108)により、1つの全出力信号(s)として加算され、前記方法は、前記共振器の無負荷時共振周波数に関連する無負荷時共振情報が前記各共振器ごとに記録されるメモリ(120;1201...120M;1906)と、前記全出力信号(s)を受けて該全出力信号(s)にしたがって前記共振器に励振信号(e;e1...eM)を供給するようになっている閉ループ(112;1121...112M;1803)とを備える読み取りデバイスを使用するとともに、 前記共振器(1021...102N;1902)から、読み取られるべき1つの共振器を選択するステップと、
前記選択された共振器の無負荷時共振情報を前記メモリ内に回収するステップと、 前記閉ループ(112;1121...112M;1803)を使用して、前記共振器に励振信号(e;e1...eM)を印加するステップと、
読み取り前に、前記選択された共振器のために格納された無負荷時共振情報から、前記閉ループの少なくとも1つの要素を構成して、前記構成された要素を有する前記閉ループ(112;1121...112M;1803)が、その後、前記選択された共振器の前記共振周波数に固定されるように、前記選択された共振器の前記共振周波数を決定するステップと、
決定された共振周波数と前記共振器の無負荷時共振周波数とから物理量を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
励振信号(e;e1...eM)を前記共振器(1021...102N;1902)に印加する前に、 前記共振器(1021...102N;1902)の無負荷時共振周波数を決定するステップと、
前記各共振器ごとに、この共振器の無負荷時共振情報をその無負荷時共振周波数から決定するステップと、
決定された前記無負荷時共振情報を前記メモリ(120;1201...120M;1906)内に記録するステップと、
を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記読み取りデバイスは複数の閉ループを含んでおり、各閉ループは励振信号を前記全出力信号(s)にしたがって前記共振器の前記入力に供給するように構成されており、
前記読み取りデバイスは、読み取り前に、選択された各共振器のために格納された無負荷時共振情報から、各閉ループの少なくとも1つの要素を構成して、読み出しのために選択された複数の共振器の共振周波数を決定し、
前記構成された要素を有する各閉ループが、その後、前記選択された各共振器の前記共振周波数に固定されるように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械共振器を有する測定システム、該システムを製造するための方法、および、少なくとも2つの電気機械共振器を読み取るための方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、ガスセンサおよび質量分析の分野、並びに、ボロメータの分野で適用される。
【背景技術】
【0003】
本発明との関連で、電気機械マイクロシステム(または、MEMS、“Micro Electro Mechanical System”)は、電気をエネルギー源として使用するとともに、その形態の少なくとも一部がセンサおよび/またはアクチュエータの機能を果たす機械的構造を備えるシステムとして規定され、前記機械的構造は、マイクロメートル寸法、すなわち、1ミリメートル未満の寸法を有する。
【0004】
電気機械ナノシステム(または、NEMS、“Nano Electro Mechanical System”)は、その機械的構造がナノメートル寸法、すなわち、1マイクロメートル未満の寸法を有することを除き、MEMSと同様である。
【0005】
電気機械測定システムは、通常、電気機械共振器、すなわち、機械的な動きを電気的機能と結びつける機能を有するデバイスを備える。これらのデバイスは、励振信号(機械的信号または電気的信号)を受け、それに応じて出力信号(一般的には電気信号)を供給するようになっており、出力信号は、電気機械共振器が晒される物理量にも依存する。これらのデバイスは、一般に特定の共振周波数に関して共振ピークを備える伝達関数を有し、この共振周波数は物理量と同時に変動する。以下では、測定されるべき物理量の不存在下で電気機械共振器により与えられる共振周波数を示すために、無負荷時共振周波数について語られる。
【0006】
しばしば使用される電気機械共振器は、MEMS共振器またはNEMS共振器である。
【0007】
用途に応じて、数百または更には数千のNEMS共振器のネットワークが必要な場合がある。
【0008】
FR2942681A1の番号により公開された特許出願は、適した相互接続技術を使用する各NEMS共振器の個々のアドレス指定を提案する。この手法は、各NEMS共振器の個別的な読み取り、および、各構造ごとの個別的な電子処理を行なうことができ、それにより、例えば任意の製造不確実性を補償できるようになるとともに、測定に影響を及ぼす任意のノイズ源のより良い無相関を与えることができるようになるという利点を有する。
【0009】
しかしながら、NEMS共振器は、その読み取り電子機器との接続のための少なくとも2つのピンを有する。このため、一例として個別に問い合わされるべき千個のNMES共振器を考えると、重要な技術的課題が課される。これは、その場合、少なくとも2千個の相互接続部を形成する必要があるからである。幾つかの用途において、例えば、NEMS共振器に基づくボロメータの用途、または、2009年6月21日にオンライン公開された機関紙Nature NanotechnologyにおけるNaikらによる論文“Towards single−molecule nanomechanical mass spectrometry”(DOI:10.1038/NNANO.2009.152)で提示される質量分析検出の用途においては、システムの性能を向上させるために100000個を上回るNEMS共振器から成る超高密マトリクスを有することが絶対に不可欠である。したがって、相互接続の課題は、これらのシステムにおいて重大である。
【0010】
相互接続の技術的な実施の課題とは別に、各NEMS共振器ごとに個々の読み取り電子機器を形成するという課題も課される。これは、電子層がNEMS共振器の層の下側に位置される場合、および、各NEMS共振器が5μm×5μm(その相互接続ピンを伴うNEMS共振器の特徴的なサイズ)の表面積を占める場合に、集積処理が考慮されれば、読み取り電子機器が25μm未満の表面積を占めなければならないからである。現在のCMOS技術を用いると、この表面積の制約を満たしつつNEMS共振器の周波数の変化の動的な監視を確保できる電子機器の設計はほぼ不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、前述した課題および制約のうちの少なくとも一部が存在しないようにし得る電気機械測定システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の主題は、電気機械共振器を有する測定システムであって、
測定されるべき物理量にしたがって無負荷時共振周波数付近で変動する共振周波数をそれぞれが有する少なくとも2つの電気機械共振器であり、各共振器には、
励振信号を受けるようになっている入力と、
励振信号に応じて出力信号を供給するための出力であって、出力信号が共振器の共振周波数での共振を有する、出力と、
が設けられ、
各共振器がその無負荷時共振周波数を規定する機械的構造を備え、無負荷時共振周波数が互いに異なるように共振器の機械的構造が互いに異なる、少なくとも2つの電気機械共振器と、
共振器の入力に接続され、前記入力に励振信号を供給するようになっている少なくとも1つの読み取りデバイスと、
を備え、
システムは、共振器の無負荷時共振周波数に関連する無負荷時共振情報が各共振器ごとに記録されるメモリを更に備え、
各読み取りデバイスは、読み取りのために選択される1つ以上の共振器の共振周波数を、選択された各共振器ごとに記憶される無負荷時共振情報から読み取りデバイスの少なくとも1つの要素を設定することにより決定するようになっている、
測定システムである。
【0013】
本発明により、また、様々な無負荷時共振周波数の賢明な選択により、電気機械共振器の出力を互いに並列に接続すること、すなわち、これらの出力を互いに接続することができる一方で、各電気機械共振器に特有の出力信号を常に区別することができる。したがって、本発明によれば、接続数が少ない測定システムを得ることができる。
【0014】
随意的に、システムは、複数の出力信号を1つの全出力信号の状態へと加算するための手段を更に備える。
【0015】
随意的に、各読み取りデバイスは、全出力信号から、単一の選択された共振器の共振周波数を決定するようになっている。
【0016】
随意的に、各読み取りデバイスは、全出力信号から、幾つかの選択された共振器の共振周波数を連続的に決定するようになっている。
【0017】
随意的に、加算手段は、共振器の出力が接続されるノードを備える。
【0018】
随意的に、各共振器において、無負荷時共振情報が無負荷時共振周波数付近に及ぶ帯域幅であり、各読み取りデバイスは、読み取りのために選択される共振器の出力信号のそれぞれを全出力信号から抽出するようになっているデマルチプレクサを備える少なくとも1つの自動振動ループを備え、抽出は、読み取りのために選択される各共振器ごとに、この共振器に特有の帯域幅で行なわれる。
【0019】
随意的に、各共振器に特有の無負荷時共振情報は、この共振器の無負荷時共振周波数である。
【0020】
随意的に、各読み取りデバイスは、単一の共振器の共振周波数を決定するようになっており、読み取りのために選択される共振器の無負荷時共振周波数を選択するための手段を備えるとともに、読み取りの開始時に、選択された無負荷時共振周波数に等しい周波数を有する単一周波数励振信号を供給するようになっている。
【0021】
随意的に、各読み取りデバイスが制御位相ループ回路を備え、この制御位相ループ回路は、読み取り開始後に、励振信号の周波数を、読み取りのために選択される共振器に対応する全出力信号の共振ピークの周波数で固定して、その固定周波数を決定された共振周波数として供給するようになっている。
【0022】
随意的に、各制御位相ループ回路は、選択された無負荷時共振周波数での固定を開始するための手段を備える。
【0023】
随意的に、システムは、選択される複数の共振器の共振周波数を同時に決定するようになっている幾つかの読み取りデバイスを備える。
【0024】
随意的に、システムは、電気機械共振器の入力に全励振信号を供給するために、読み取りデバイスにより供給される励振信号を加算するための手段を更に備える。
【0025】
随意的に、電気機械共振器がMEMS共振器またはNEMS共振器である。
【0026】
随意的に、電気機械共振器が同じシリコンチップ上にエッチングされるNEMS共振器である。
【0027】
先に規定されたシステムを製造するための方法も提案され、この方法は、電気機械共振器の定寸のために、
各共振器ごとに、その無負荷時共振周波数付近でのその共振周波数の予期される最大変動範囲を決定するステップと、
重なり合わないように決定される間隔にわたって互いに十分に離れた無負荷時共振周波数を規定する共振器の機械的構造を選択するステップと、
を含む。
【0028】
また、無負荷時共振周波数を規定する機械的構造をそれぞれが備える少なくとも2つの電気機械共振器を読み取るための方法であって、無負荷時共振周波数が互いに異なるように共振器の機械的構造が互いに異なり、各共振器は、測定されるべき物理量にしたがって無負荷時共振周波数付近で変動する共振周波数を有し、各共振器には、励振信号を受けるようになっている入力と、励振信号に応じて出力信号を供給するための出力であって、出力信号が電気機械共振器の共振周波数での共振を有する、出力とが設けられる、方法も提案され、方法は、共振器の無負荷時共振周波数に関連する無負荷時共振情報が各共振器ごとに記録されるメモリを備える読み取りデバイスを使用するとともに、
共振器から、読み取られるべき1つ以上の共振器を選択するステップと、
読み取りのために選択される各共振器の無負荷時共振情報を前記メモリ内に回収するステップと、
共振器に励振信号(e)を印加するとともに、読み取りのために選択される各共振器の共振周波数を、この共振器の無負荷時共振情報から読み取りデバイスの少なくとも1つの要素を設定することにより決定するステップと、
選択された各共振器ごとに、決定された共振周波数と共振器の無負荷時共振周波数とから物理量を決定するステップと、
を含む。
【0029】
随意的に、方法は、励振信号を共振器に印加する前に、
共振器の無負荷時共振周波数を決定するステップと、
各共振器ごとに、この共振器の無負荷時共振情報をその無負荷時共振周波数から決定するステップと、
決定された前記無負荷時共振情報を前記メモリ内に記録するステップと、
を更に含む。
【0030】
本発明は、単なる一例として与えられて添付図面に関連してなされる以下の説明によってより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明を実施する第1の電気機械測定システムの簡略図である。
図2図1におけるシステムの電気機械共振器のネットワークの簡略図である。
図3図2におけるネットワークの電気機械共振器の写真である。
図4図2のネットワークにおける電気機械共振器の接続の簡略図である。
図5図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図6図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図7図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図8図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図9図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図10図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図11図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図12図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図13図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図14図2における電気機械共振器のネットワークの特性を示すグラフである。
図15】本発明を実施する第2の電気機械測定システムの簡略図である。
図16図1図15におけるシステムで使用され得る電気機械共振器のネットワークの簡略図である。
図17図1図15におけるシステムで使用され得る電気機械共振器のネットワークの簡略図である。
図18】本発明を実施する第3の電気機械測定システムの簡略図である。
図19】本発明を実施する第4の電気機械測定システムの簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照すると、本発明を実施する電気機械測定システム100の一例は、まず第1に、電気機械共振器102....102のネットワークを備える。記載される例では、これらがNEMS共振器である。
【0033】
各NEMS共振器102...102には、励振入力104...104および出力106...106が設けられる。各NEMS共振器102...102は、その励振入力104...104で印加される励振信号eに応じてその出力106...106で出力信号s...sを供給するようになっている。また、各NEMS共振器102...102は、測定されるべき物理量にしたがって無負荷時共振周波数F...F付近で変動する共振周波数F...Fも有する。したがって、各NEMS共振器102...102において、出力信号s...sは、NEMS共振器に印加されて共振周波数F...F付近でかなり増幅される励振信号に対応する。無負荷時共振周波数F...Fは互いに異なる。“異なる”とは、各無負荷時共振周波数F...Fがその下位の隣の無負荷時共振周波数からその値の少なくとも1%だけ間隔を隔てられることを意味する。例えば、電気機械共振器が1MHzの無負荷時共振周波数Fを有する場合には、その前の無負荷時共振周波数Fi−1との差は少なくとも10KHzである。
【0034】
また、システム100は、出力信号s...sを全出力信号sとして加算するためのデバイス108も備える。
【0035】
また、システム100は、全出力信号sからNEMS共振器102...102の共振周波数F...Fを選択的に決定するようになっている、NEMS共振器102...102を読み取るためのデバイス110も備える。
【0036】
記載される例において、読み取りデバイス110は、励振信号eを供給するようになっているとともに、励振信号eを全ての励振入力104...104に同時に供給するべく全ての励振入力104...104に接続される。
【0037】
記載される例において、読み取りデバイス110は、励振信号eの周波数Fを全出力信号sの共振ピークの周波数で固定してその固定周波数を決定された共振周波数として供給するようになっている制御位相ループ回路112を備える。
【0038】
この目的を達成するために、制御位相ループ回路112は電圧制御発振器114を備え、この電圧制御発振器114は、電圧Fによって制御されるとともに、NEMS共振器102...102の入力104...104に接続されて、それらの入力に対して、周期的で且つ電圧Fに対応する周波数をもつ単一周波数の励振信号eを供給する。記載の残りの部分では、電圧Fが励振信号eの周波数と同じである。
【0039】
制御位相ループ回路112は位相比較器116も備え、この位相比較器116は、全出力信号sを受けるために加算デバイス108に接続されるとともに、全出力信号sと励振信号eとの間の位相差dΦを決定して供給するようになっている。
【0040】
制御位相ループ回路112はコントローラ118も備え、このコントローラ118は、位相比較器116に接続されるとともに、位相差dΦから電圧Fを決定して電圧制御発振器114へ供給するようになっている。
【0041】
読み取りデバイス110はメモリ120も備え、このメモリには、第1に、NEMS共振器102...102の無負荷時共振周波数F...Fが記録され、第2に、各NEMS共振器102...102ごとの初期位相差dΦ...dΦが記録される。
【0042】
読み取りデバイス110は、記録された無負荷時共振周波数F...Fのそれぞれと記録された初期位相差dΦ...dΦのそれぞれとを選択するための手段122も備える。
【0043】
また、制御位相ループ回路112は、いずれも手段122により選択される無負荷時共振周波数および初期位相差での固定を開始するための手段124を備える。
【0044】
図2を参照すると、記載される例において、NEMS共振器102...102のネットワークは、容量性作動およびピエゾ抵抗検出を伴うとともに同じシリコンチップ202上にエッチングされるNEMS102...102から成る。NEMS共振器102...102は、例えば、l×J=N個のNEMS共振器の行列を成して編成される。
【0045】
図3を参照すると、ネットワーク内の各NEMS共振器は、第1の埋め込み端304と第2の自由端306とを有する梁302を備える。各NEMS共振器は、埋め込み端304付近に、梁302の両側に配置されるピエゾ抵抗材料から形成される2つの歪みゲージ308,310も備える。また、各NEMS共振器は、梁の両側に配置されて梁302を作動させるための2つの電極312,314も備える。そのようなNEMS共振器の目的は、周囲ガスの重さを測定することであり、これらのNEMS共振器は、約10−21グラム、すなわち、1ゼプトグラムの質量の加算を測定することができる。
【0046】
図4を参照すると、NEMS共振器102...102の2つの歪みゲージ308,310が定電位E,−Eにそれぞれ接続される。また、NEMS共振器の梁の埋め込み端304は、出力信号s...sを供給するとともに、全てが全出力信号sを供給する同じノード402への接続によって接続され、それにより、単一の情報伝送バスが規定される。したがって、これらの接続およびこのノード402が加算手段108を形成する。また、NEMS共振器102...102の2つの電極312,314は、それぞれが互いに接続されるとともに、励振信号eおよびその反対の信号−eをそれぞれが受ける。先と同様に、この形態は単一の励振バスを規定する。
【0047】
記載される例では、梁301...302が互いに異なる長さL...Lを有し、それらの梁の他の幾何学的特徴は同一である。各NEMS共振器102...102の無負荷時共振周波数F(n=1...N)は以下のように規定される。
【数1】
【数2】
【数3】
【0048】
ここで、Eは、NEMS共振器を構成する材料のヤング率であり、“ρ”はその材料の密度であり、Iは共振器のその材料の慣性モーメントであり、sはその材料の断面積であり、wはその材料の振動幅であり、eはその材料の厚さである。
【0049】
したがって、NEMS共振器102...102は、確かに、互いに異なる無負荷時共振周波数F...Fを有する。
【0050】
NEMS共振器102...102の定寸は、予期される最大共振周波数変動範囲を各NEMS共振器ごとに決定して、重なり合わないように決定される範囲にわたって互いに十分に異なる無負荷時共振周波数を規定する機械的構造(記載される例では、梁長さ)を選択することによって達成される。想定し得る製造のばらつきを考慮に入れるために、更なるマージンがとられることも好ましい。
【0051】
そのような定寸により、ネットワークのNEMS共振器102...102の情報を適切に分離できるようになる。
【0052】
図5図9は、梁の長さが100nmのステップで4.2mmから5.5μmへと変化する14個のNEMS共振器のケースを示している。この場合、w=300nmであり、e=160nmである。
【0053】
図5は、梁の長さにしたがった無負荷時共振周波数を示している。
【0054】
図6は、対象のNEMS共振器(“NEMS#”)に係る視聴チャネル幅(“チャネル周波数幅”)、すなわち、2つの連続する共振周波数間の差を示している。
【0055】
図7は、各NEMS共振器(“NEMS#”)の1ゼプトグラム当たりの感度(ヘルツ)を示しており、この場合、NEMS共振器は質量センサとして使用される。
【0056】
図8は、各NEMS共振器(“NEMS#”)における帯域幅を示しており、帯域幅はF/Qによって規定され、この場合、FはNEMS共振器の無負荷時共振周波数であり、QはNEMS共振器の性質係数である。
【0057】
図9は、14個のNEMS共振器のこのネットワークのボード線図、すなわち、周波数に応じたスペクトルの大きさおよびスペクトルの位相である。
【0058】
図10図14は、梁の長さが60nmのステップで4.5mmから5.2μmへと変化する14個のNEMS共振器のケースにおける図5図9と同一の図である。この場合、w=300nmであり、e=160nmである。
【0059】
ここで、システム100の機能について説明する。
【0060】
較正作業中、無負荷時共振周波数F...Fおよび初期位相差dΦ...dΦが、例えば、電圧制御発振器114によって周波数の間隔を開ループで掃引することによって決定される。その後、これらのデータはメモリ120に記録される。
【0061】
機能時、NEMS共振器102を読み取る作業中、選択手段122は、その読み取りが必要とされるNEMS共振器102に対応する無負荷時共振周波数Fおよび初期位相差dΦを選択する。その後、開始手段124は、これらの値を制御位相ループ112に入れて、制御位相ループ112をNEMS共振器102の共振周波数に固定させるようにする。したがって、一般に約50μsの固定時間後、固定周波数FがNEMS共振器102の共振周波数に対応する。
【0062】
その後、読み取り作業が他のNEMS共振器に関して繰り返され、それにより、NEMS共振器の全てを1つずつ読み取ることができる。
【0063】
その後、その測定値が電気機械共振器の読み取りによって探し求められる物理量が、電気機械共振器の共振周波数および無負荷時共振周波数から、例えばその共振周波数とその無負荷時共振周波数との間の差から決定される。
【0064】
図15を参照すると、本発明を実施する電気機械測定システム1500の第2の例は、特にそれが幾つかの読み取りデバイス1502...1502を備えるという事実により図1のシステムとは異なり、これらの各読み取りデバイスは、図1の読み取りデバイス110と同一であり、それぞれの励振信号e...eを供給するようになっている。各読み取りデバイス1502...1502の要素は、読み取りデバイス110と同じ参照符号を有するが、それらの要素が属する読み取りデバイス1502...1502を示す添え字1...Mを更に伴っている。
【0065】
また、システム1500は、NEMS共振器102...102の入力104...104に印加される全励振信号eを供給するようになっている励振信号e...eを加算するための手段1504も備える。したがって、各読み取りデバイス1502...1502の励振信号e...eがMEMS102...102の入力104...104に印加される。
【0066】
また、図1の選択手段122は、記録された無負荷時共振周波数F...Fのそれぞれと記録された初期位相差dΦ...dΦのそれぞれとを各読み取りデバイス1502...1502ごとに選択する選択手段1506に取って代えられ、それにより、各手段124...124は、対応する読み取りデバイス1502...1502に関して選択される無負荷時共振周波数および初期位相差での固定を開始することができる。
【0067】
図15において、各読み取りデバイス1502...1502はそのメモリ120...120を有する。しかしながら、勿論、これらのメモリを全ての読み取りデバイス1502...1502に共通の単一のメモリ120に置き換えることもできる。
【0068】
したがって、最大でM個のNEMS共振器102...102を同時に読み取ることができる。
【0069】
ここで、システム1500の機能について説明する。
【0070】
較正作業中、無負荷時共振周波数F...Fおよび初期位相差dΦ...dΦが、例えば、電圧制御発振器114のうちの1つによって周波数の間隔を開ループで掃引することによって決定される。その後、これらのデータは1または複数のメモリに記録される。
【0071】
機能時、読み取り作業中、選択手段1506は、対象の読み取りデバイスによりその読み取りが必要とされるNEMS共振器102に対応する無負荷時共振周波数Fおよび初期位相差dΦをM個の読み取りデバイス1502...1502のそれぞれに関して選択する。その後、各読み取りデバイス1502...1502の開始手段124...124は、これらの値を対応する制御位相ループ112...112に入れて、制御位相ループ112...112のNEMS共振器102の共振周波数への関与を確保する。
【0072】
その後、加算手段1504が励振信号eを供給し、それにより、各NEMS共振器102...102のそれぞれが励振信号e...eを受ける。したがって、その共振周波数が励振信号e...eのうちの1つの周波数に近い各NEMS共振器が大きな出力信号を供給し、他のNEMS共振器の出力信号は小さい。
【0073】
したがって、一般に約50μsの固定時間後、読み取りデバイス1502...1502の固定周波数F...Fは、その読み取りが必要とされるNEMS共振器、すなわち、無負荷時共振周波数Fおよび初期位相差dΦが手段1504によって選択されたNEMS共振器の共振周波数に対応する。
【0074】
したがって、幾つかのNEMS共振器が同時に読み取られる。
【0075】
その後、読み取り作業がネットワークの他のNEMS共振器に関して繰り返され、それにより、NEMS共振器の全てをMのグループを単位として読み取ることができる。
【0076】
その後、物理量が、読み取られた各電気機械共振器の共振周波数および無負荷時共振周波数から、例えば共振周波数と無負荷時共振周波数との間の差から決定される。
【0077】
図16を参照すると、変形実施形態では、容量性作動およびピエゾ抵抗検出を伴うNEMS共振器102...102が容量性作動および容量性検出を伴うNEMS共振器に取って代えられてもよい。各NEMS共振器は、2つの電極(それぞれ高電極および低電極と称される)を有するキャパシタと、電極間に配置されて連続的な電位に維持される梁とを備える。高電極が互いに接続され、また、低電極が互いに接続される。励振信号eは高電極に印加される電圧であり、一方、出力信号sは誘導電流である。
【0078】
図17を参照すると、変形実施形態では、容量性作動およびピエゾ抵抗検出を伴うNEMS共振器102...102が熱弾性作動およびピエゾ抵抗検出を伴うNEMS共振器に取って代えられてもよい。この場合、各NEMS共振器は、2つの端子(それぞれ高端子および低端子と称される)を有する可変抵抗器を備える。高端子が互いに接続され、また、低端子が互いに接続される。励振信号eは高端子と低端子との間に印加される電圧であり、一方、出力信号は誘導電流である。
【0079】
図18を参照すると、本発明を実施する第3の電気機械測定システム1800は、特にここでは参照符号1802が付される読み取りデバイスが幾つかの自動振動ループ1803を備えるという事実により図1におけるシステムと異なる。読み取りデバイス1802は、特に、全出力信号sを受けて、全出力信号sからM個の数の出力信号s...sを抽出するデマルチプレクサ1804を備える。また、デマルチプレクサ1804は、抽出された出力信号s...sを解析してそれらの出力信号の共振周波数F...Fを決定するようになっている。デバイスは、どの信号が抽出されなければならないのかをデマルチプレクサ1804に示すようになっている制御手段(図示せず)を備え、これらの信号は、その読み取りが必要とされる電気機械共振器に対応する。デマルチプレクサによる信号の抽出を可能にするために、例えば、読み取りのために選択される各共振器ごとに、対象の共振器の無負荷時共振周波数付近に及ぶ帯域幅に対応し且つメモリ(図示せず)に記録される情報を使用することができる。また、読み取りデバイス1802はM個の移相器1806...1806を備え、各移相器は、対応する自動振動ループのためのゼロ入力/出力位相差を得るために、それぞれの抽出された出力信号s...sの位相をずらすようになっている。また、読み取りデバイス1802は、抽出された出力信号s...sをそれらの位相がずらされた後に加算してeで示される加算信号を供給するようになっているマルチプレクサ1808も備える。また、読み取りデバイス1802は、加算信号eを受けて励振信号eを供給するようになっている増幅器1810も備える。したがって、励振信号eおよび出力信号sは、自動振動に入るための初期時間後、読み取られるべきM個の電気機械共振器の共振周波数に対応するM個の周波数ピークを備える。
【0080】
ここで、図19を参照して、第4の電気機械測定システム1900について説明する。この第4の電気機械測定システム1900は図15のシステムとの多くの類似性を有する。特に、第4の電気機械測定システムは、読み取りのために選択される共振器の共振周波数をそれらの無負荷時共振周波数を発端として決定するための幾つかの制御位相ループ回路を使用する。
【0081】
電気機械測定システム1900は、まず第1に、全体的な参照符号1902を有する電気機械共振器のネットワークを備える。記載される例において、電気機械共振器1902は、数が50個であり、図3および図4に示される電気機械共振器と同様である。これらの図の説明で既に示されるように、同じ励振信号eおよび同じバイアス信号Eが各共振器1902に印加される。また、全ての共振器1902の出力−図4にs,s,s,...で示される局所出力信号を有する−が、共通の出力(図4において参照符号402を有する)に一緒に接続され、したがって全出力信号sを有する。記載される例では、全出力信号sがアナログ電圧である。
【0082】
また、電気機械測定システム1900は、共振器1902から選択される1つ以上の共振器を“読み取る”、すなわち、この共振器またはこれらの共振器の共振周波数を決定するようになっている読み取りシステム1904も備える。記載される例において、読み取りシステム1904は、5つの共振器を同時に読み取るようになっており、このため、5つの制御位相ループ回路を備える。
【0083】
まず第1に、読み取りシステム1904はメモリ1906を備え、このメモリ内には、共振器1902の無負荷時共振周波数が記録される。
【0084】
また、読み取りシステム1904は、メモリ1906内で、読み取りシステム1904が読み取るようになっている各共振器ごとに、対象の共振器の無負荷時共振周波数を選択するようになっている選択デバイス1908も備える。記載される例では、選択された無負荷時共振周波数がFs(1)...Fs(5)で示される。
【0085】
また、読み取りシステム1904は、第1に、選択デバイス1908により供給される選択された1または複数の無負荷時共振周波数Fs(1)...Fs(5)を使用して、また、第2に、cf(1)...cf(5)で示されて以下で説明されるシステムにより供給される1つ以上の周波数補正を使用して、各共振器1902へ、特にその読み取りが必要とされる共振器へ励振信号eを供給するようになっている励振システム1910も備える。したがって、励振システム1910は、選択された1または複数の共振周波数から設定される。
【0086】
また、励振システム1910は周波数補正デバイス1912も備え、この周波数補正デバイス1912は、第1に、選択デバイス1908により供給される無負荷時共振周波数Fs(1)...Fs(5)を使用して、また、第2に、対象の共振器における周波数補正cf(1)...cf(5)を使用して、読み取りシステム1904が読み取るようになっている各共振器ごとに、補正された周波数fc(1)...fc(5)を供給するようになっている。記載される例では、周波数補正デバイス1912が加算器である。
【0087】
また、励振システム1910は、読み取りシステム1904によって読み取られるようになっている各共振器ごとに、対象の共振器のための補正周波数fc(1)...fc(5)に等しい周波数を有する単一周波数励振信号e(1)...e(5)を発生させるようになっている単一周波数信号を発生させるためのデバイス1914(1)...1914(5)も備える。記載される例において、単一周波数信号発生デバイス1914(1)...1914(5)はデジタル制御される発振器である。
【0088】
また、励振システム1910は、単一周波数信号発生デバイス1914(1)...1914(5)によって供給される1または複数の励振信号e(1)...e(5)をデジタル励振信号e’として加算するようになっている加算器1916も備える。
【0089】
また、励振システム1910は、デジタル励振信号e’をアナログ励振信号eへと変換するようになっているデジタル―アナログ変換器1918も備え、アナログ励振信号eは各共振器1902へ供給される。
【0090】
また、読み取りシステム1904は、全出力信号sから、読み取りシステム1904により読み取られるようになっている各共振器ごとに、周波数補正デバイス1912に供給される周波数補正cf(1)...cf(5)を供給するようになっている補正システム1920も備える。
【0091】
補正システム1920は、まず第1に、読み取りシステム1904により読み取られるようになっている各共振器ごとに、位相差決定デバイス1922を備え、この位相差決定デバイス1922は、読み取りシステム1904により読み取られるようになっている各共振器ごとに、対象の共振器の局所出力信号(図4の参照符号s,s,s...)の位相Phi(1)...Phi(5)を決定するようになっている。
【0092】
位相差決定デバイス1922は、まず第1に、全出力信号sを増幅して増幅全出力信号Sを供給するようになっている低雑音増幅器1924を備える。
【0093】
また、位相差決定デバイス1922は、増幅全出力信号Sをデジタル増幅全出力信号S’へ変換するようになっているアナログ―デジタル変換器1926も備える。
【0094】
また、補正システム1920はメモリ1928も備え、このメモリ1928には、読み取りシステム1904が読み取るようになっている共振器の数に等しい数に合わせて、周波数df1...df5が記録される。周波数df1...df5は任意に選択される。しかしながら、読み取りシステム1904の正確な機能のため、周波数間の差が後述するフィルタ1934のカットオフ周波数の少なくとも10倍に等しくなることが必要である。そのような差は、例えば、フィルタ1934の動作周波数帯域内の周波数スペクトルエイリアシングを回避できるようにする。例えば、これらのフィルタのカットオフ周波数が1kHzである場合には、差が少なくとも10kHzである必要がある。記載される例では、記録される周波数が10kHzから100kHzにまで及ぶ範囲内にある。
【0095】
また、位相差決定デバイス1922は、読み取りシステム1904により読み取られるようになっている各共振器ごとに、デジタル制御発振器1930(1)...1930(5)も備える。これらの発振器は、メモリ1928内に記録されたそれぞれの周波数df1...df5を受けて、いずれも受信周波数df1...df5で互いに直角位相を成す2つの単一周波数信号をそれぞれ供給するようになっている。
【0096】
また、位相差決定デバイス1922は、読み取りデバイス1904が読み取るようになっている各共振器ごとに、信号S’と直角位相を成す信号を混ぜ合わせるようになっているミキサ1932(1)...1932(5)も備える。
【0097】
また、位相差決定デバイス1922は、読み取りデバイス1904が読み取るようになっている各共振器ごとに、対応するミキサ1932(1)...1932(5)により供給される信号をフィルタ処理するようになっているローパスフィルタ1934(1)...1934(5)も備える。したがって、各ローパスフィルタは、対象の共振器の出力信号(図4では、出力信号に参照符号s,s,s...が付される)を表わす複合信号を供給する。
【0098】
また、位相差決定デバイス1922は、読み取りデバイス1904が読み取るようになっている各共振器ごとに、この共振器に対応する出力信号の位相を決定するようになっている位相計算デバイス1936も備える。したがって、記載される例では、位相計算デバイス1936がPhi(1)...Phi(5)で示される5つの位相を供給するようになっている。
【0099】
また、補正システム1920はメモリ1938も備え、このメモリ1938には各共振器の無負荷共振時の位相が記録される。
【0100】
また、補正システム1920は比較器1940も備え、この比較器1940は、読み取りデバイス1904が読み取るようになっている各共振器ごとに、位相決定デバイス1922により決定される位相Phi(1)...Phi(5)と対象の共振器に関してメモリに記録される無負荷時共振位相とを比較して、比較によりもたらされる位相差d Phi(1)...d Phi(5)を供給するようになっている。記載される例では、比較器1940が減算器である。
【0101】
また、補正システム1920は、サンプリング周波数を減少させるために供給される位相差d Phi(1)...d Phi(5)を再サンプリングするようになっているサンプラ1950を備え、これにより、サンプラ1950の後の計算が簡略化される。記載される例では、位相差d Phi(1)...d Phi(5)が100キロヘルツで再サンプリングされる。これは、ローパスフィルタ1934(1)...1934(5)の不正確さに起因して高いサンプリング周波数が不要だからである。
【0102】
また、補正システム1920は、読み取りデバイス1904が読み取るようになっている各共振器ごとに、1または複数の周波数補正cf(1)...cf(5)を決定するようになっている補正フィルタ1952(1)...1952(5)も備える。記載される例では、補正フィルタ1952(1)...1952(5)がローパスフィルタである。
【0103】
図19の実施形態では、共振器のバイアス電位(図4においてEで示され、図19においてもEで示される)がこのとき可変である。したがって、読み取りシステム1904は、バイアス電位Eを供給するようになっているバイアスシステム1954も備える。
【0104】
記載される例において、バイアスシステム1954は、第1に、1または複数の補正周波数fc(1)...fc(5)から、第2に、周波数df1...df5から、全ての共振器1902に対して同じバイアス電位Eを供給するようになっている。
【0105】
まず第1に、バイアスシステム1954は比較器1956を備え、この比較器1956は、読み取りデバイス1904が読み取るようになっている各共振器ごとに、対象の共振器に対応する補正周波数と周波数df1...df5とを比較するとともに、オフセット補正周波数と称されてfcd(1)...fcd(5)で示されるこの比較結果を供給するようになっている。
【0106】
また、バイアスシステム1954は、読み取りシステム1904が読み取るようになっている各共振器ごとに、対象の共振器のオフセット補正周波数fcd(1)...fcd(5)に等しい周波数を有する局所バイアス信号E(1)...E(5)を発生させる発生器1958(1)...1958(5)も備える。
【0107】
また、バイアスシステム1954は、1または複数の局所バイアス信号E(1)...E(5)を加算してデジタル形式のバイアス信号E’を供給するようになっている加算器1960も備える。
【0108】
また、バイアスシステム1954は、デジタルバイアス信号E’を共振器1902のそれぞれに印加されるアナログバイアス信号Eへと変換するようになっているデジタル―アナログ変換器1962も備える。
【0109】
共振器1902および低雑音増幅器1924を除く前述した全ての要素は、記載される例では、原位置プログラマブルゲートアレイ(フィールドプログラマブルゲートアレイ、すなわち、FPGA)で実施される。
【0110】
なお、読み取りシステム1904が幾つかの読み取りデバイス(記載される例では、5つのデバイス)へと分けられてもよく、各読み取りデバイスは、それぞれの励振信号e(1)...e(5)を供給することにより共振器を読み取るようになっているとともに、制御位相ループを備える。例えば、第1の読み取りデバイスは、以下の要素、すなわち、1924,1926,1930(1),1932(1),1934(1),1936,1938,1940,1950,1952(1),1906,1908,1912,1914(1),1928,1956,1958(1),1960および1962を備える。図15のシステムの場合と同じようにして、励振信号eを供給するために、励振信号e(1)...e(5)が加算器1916で加算される。
【0111】
ここで、5つの共振器を読み取るための電気機械測定システム1900の機能の一例について説明する。
【0112】
共振器には、それらの共振周波数がそれらの無負荷時共振周波数からオフセットされるようにストレスがかけられる。
【0113】
読み取りシステム1904は、読み取るべき5つの共振器を選択する。
【0114】
選択デバイス1908は、選択された5つの共振器の5つの無負荷時共振周波数Fs(1)...Fs(5)を供給する。
【0115】
読み取りの開始時、周波数補正cf(1)...cf(5)はゼロである。したがって、補正周波数fc(1)...fc(5)が無負荷時共振周波数Fs(1)...Fs(5)に等しく、また、励振信号eが読み取られた5つの共振器の5つの無負荷時共振周波数Fs(1)...Fs(5)を備える。
【0116】
補正システム1920は、補正周波数fc(1)...fc(5)がそれぞれ読み取られた共振器の共振周波数に近づくように周波数補正cf(1)...cf(5)を決定する。
【0117】
その後、励振システム1910は、補正周波数を有する新たな励振信号eを供給する。
【0118】
その後、ループは、補正周波数がそれぞれ読み取られた共振器の共振周波数に等しくなるあるいはほぼ等しくなるまで再び続く。記載される例では、この収束が1ミリ秒未満を要する。したがって、1ミリ秒後、読み取りシステム1904は、読み取るべき5つの新たな共振器を選択する。したがって、記載される例では、全ての共振器を10ミリ秒で読み取ることができる。
【0119】
無負荷時共振情報(無負荷時共振周波数または無負荷時共振周波数付近の帯域幅)を使用すると、それが位置される機会が最も多い共振周波数、すなわち、無負荷時共振周波数付近の共振周波数の検索を開始できるようにすることによって読み取りを加速させることができる。したがって、この特徴は、幅広い範囲の周波数にわたる単純な“準連続”走査と比べて利点を有する。
【0120】
また、求められる測定周波数を与える位相差の“自動”検出を伴う制御位相ループに基づく実施形態は有益である。これは、それらの実施形態が特に開ループシステムと比べて測定速度をかなり増大させるからである。
【0121】
また、様々な周波数での読み取りを並行して行なうために幾つかの読み取りデバイスを並行して使用することも読み取り速度を加速させる。
【0122】
前述したような電気機械測定システムによって必要な読み取りデバイスの数および相互接続の複雑さを減らすことができるのは明らかである。
【0123】
また、本発明が前述した実施形態に限定されないことに留意すべきである。実際に、当業者であれば分かるように、当業者にここで開示されてきた教示内容に照らして、様々な改変を前述した実施形態に対して成すことができる。
【0124】
特に、NEMS共振器またはMEMS共振器以外の電気機械共振器を使用できる。
【0125】
また、読み取りデバイスの初期化は、その読み取りが必要とされる電気機械共振器の無負荷時共振周波数で行なわれず、電気機械共振器の無負荷時周波数に適応項目を加算する(または減算する)ことによって決定される近い周波数で行なわれてもよい。この適応項目は、例えば、無負荷時共振周波数の経時的なドリフト、または、温度ドリフト、あるいは、図3に記載される電気機械共振器の例の場合には、既に存在する質量に対して加えられる更なる質量の存在を考慮に入れる。
【0126】
また、加算手段は、それ自体知られる電子加算回路によって実施され得る。
【0127】
更に、加算手段は、全ての出力信号を入力として受けて1または複数の読み取りデバイスへ1つの出力として供給するスイッチと置き換えられ得る。選択的に、これらの出力信号のうちの1つ以上は、その読み取りが必要とされる1または複数の電気機械共振器に対応する。以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、この明細書本文で開示される実施形態に特許請求の範囲を限定するように解釈されてはならず、それらの形態に起因して且つその予測が当業者にここで開示されてきた教示内容の実施に対して当業者の一般的な知識を適用する当業者の範囲内に入ることに起因して特許請求の範囲が網羅しようとする全ての等価物を特許請求の範囲内に含むように解釈されなければならない。
【0128】
また、前述した読み取りデバイスの例は閉ループデバイスであるが、開ループ読み取りデバイスを使用することもできる。この場合も、メモリに記録される無負荷時共振周波数の情報により、共振器の共振周波数のより急速な検索を行なうことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
図16
図17
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図19