(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の液体流入孔は、それぞれ管の内側から外側に向かうにつれて電極側の端部へ向かうよう傾斜して前記気体排出導管に設けられている請求項2に記載の電解水生成装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための実施形態を一例として説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明中において、重力方向をZ方向とし、このZ方向と交差する方向をそれぞれX方向およびY方向として規定したが、本発明の権利範囲を減縮するものでないことは言うまでもない。
【0019】
≪第1実施形態≫
図1は、本発明の第1実施形態に係る電解水生成貯留装置100の全体構成図である。
本実施形態の電解水生成貯留装置100は、水を貯留する容器1内に少なくとも一部が配置され、この貯留された水を電気分解して電解水を生成する機能を有している。より具体的に電解水生成貯留装置100は、上側電極31、下側電極32、隔膜33、気体排出導管40、および制御装置50を含む電解水生成装置を有して構成されている。なお、以下で詳述する構成以外については、例えば特開2016−000376号公報や特開2015−188797号公報等の公知の装置構成を適宜参照してもよい。
【0020】
容器1は、電気分解される液体(水などが例示できる。以下では一例として水を用いて説明する。)を収容可能な容器であり、例えばガラスやプラスチックなどから形成されている。本実施形態においては、容器1の下側は開口となっておりそして当該開口にはネジ11が形成されている。なお容器1の外形は円筒状となっているが、開口部分が円筒状であればそれ以外は角柱状となっていてもよい。この容器1の内部に、後述する電極部30の少なくとも一部や気体排出導管40が収容される。
【0021】
下側容器2は、容器1のネジ11と噛み合う雌ネジ21が上部に形成された容器である。この下側容器2は、例えばガラス、プラスチックなどの樹脂材料あるいは金属材料で形成されている。本実施形態では、電極部30が傾斜支持部23aおよび固定部材(固定ネジ36)を介して下側容器2に設置される。
また、下側容器2には、後述する制御装置50と、電源51としての二次電池が収容されている。この制御装置50および電源51は、
図2を用いて後述するとおり、電極部30とは隔離された状態で下側容器2に収容されており、これにより容器1に貯留された水が制御装置50および電源51に侵入することは防止されている。
【0022】
また、下側容器2の外周面には外部接続コネクタ22が形成されている。
外部接続コネクタ22は、外部の電源から給電を受けるためのインターフェースであり、例えばUSB(ユニバーサルシリアルバス)などが例示される。なお、外部接続コネクタ22を介して給電を行うのみに限られず、例えば外部の端末(PCや携帯電子機器など)からの制御信号を受信するように構成されていてもよい。これにより外部の端末を操作して電解水生成貯留装置200を駆動させることが可能となる。
【0023】
気体排出導管40は、後述する電極部30の一端と接続されるとともに、隔膜33と下側電極32との間の第1空間で発生する気体を容器1の上部へ排出する機能を有している。本実施形態の気体排出導管40は、例えばゴムやプラスチックなどの樹脂材料やガラス、金属材料などで形成可能であるが、可撓性を有して安価であることが望ましいことから樹脂材料が好適である。なお、気体排出導管40と電極部30との接続部の詳細については、
図3を後いて後述する。また、気体排出導管40の長さは任意の値を取り得るが、例えば容器1の許容水位よりも若干上側に端部が位置できる長さが好ましい。
【0024】
制御装置50は、電源51を搭載するとともに、この電源51を介して上記した上側電極31および下側電極32に所定の電圧を付与する機能を有している。このように本実施形態の制御装置50は不図示のCPUが搭載された基板であり、このCPU内のメモリに記憶された各種プログラムを実行することが可能となっている。
電源51は、本実施形態では高容量・高出力の観点からリチウムイオン二次電池が適用される。しかしながら電源51はリチウムイオン二次電池に限られず、例えば鉛蓄電池やニッケル・水素蓄電池など公知の他の二次電池を適用してもよい。
【0025】
なお電源51は制御装置50に搭載されずに独立して下側容器2に配置されていてもよい。
また、本実施形態では充放電可能な電源51を用いて上側電極31および下側電極32に所定の電圧を付与しているが、電源51として一次電池を用いてもよい。この場合には、下側容器2から一次電池を容易に取り換え可能なように、下側容器2の底面が開閉可能に構成されていることが好ましい。
さらには、電源51は省略して外部接続コネクタ22を介して外部電源(商用電源など)から直接給電を受けるように構成してもよい。
【0026】
次に
図2を用いて本実施形態の電極部30について詳述する。
図2に示すとおり、電極部30は、上側電極31、下側電極32、隔膜33、上部保護枠34および下部保護枠35を含んで構成されている。そして本実施形態では、電極部30のうち少なくとも隔膜33(の主面)が、気体排出導管40が固定される側の第1端部(端部42)が高位となるよう重力方向に対して傾いて配置されている。なお、上部保護枠34および下部保護枠35は必須ではなく、適宜これらを省略してもよい。また、上側電極31、隔膜33および下側電極32は、互いに平行となるように配置されることが望ましい。
【0027】
上側電極31は、例えば金属などの導電性材料で構成されて、Z方向に関して隔膜33よりも上方に配置される。本実施形態の上側電極31は、表面積を確保するためメッシュ状(格子状)になっており、固定ネジ36を介して電源51と電気的に接続される。したがって
図2に示すとおり、上側電極31にはネジ孔31aおよび31bが形成されており、ネジ孔31aには固定ネジ36aが挿通されるとともにネジ孔31bには固定ネジ36bが挿通されることになる。
【0028】
なお後に
図8を用いて説明するとおり、固定ネジ36bと上側電極31は電気的に接続されておらず、絶縁リング38b(
図8参照)を介して固定ネジ36bは上側電極31を固定している。一方で、固定ネジ36aと上側電極31は電気的に接続されており、制御装置50の制御の下で固定ネジ36aを介して上側電極31に所望の極性が付与される。これにより、容器1に収容された水を電気分解する際には、上側電極31は陽極または陰極として機能する。
【0029】
下側電極32は、例えば金属などの導電性材料で構成されて、Z方向に関して隔膜33よりも下方に配置される。本実施形態の下側電極32は、上側電極31と平行に対向して配置され、上側電極31と同じ形状のメッシュ状(格子状)となっている。また、下側電極32は、固定ネジ36を介して電源51と電気的に接続される。より具体的に
図2に示すとおり、下側電極32にはネジ孔32aおよび32bが形成されており、ネジ孔32aには固定ネジ36aが挿通されるとともにネジ孔32bには固定ネジ36bが挿通されることになる。
【0030】
また、後に
図8を用いて説明するとおり、固定ネジ36aと下側電極32は電気的に接続されておらず、絶縁リング38a(
図8参照)を介して固定ネジ36aは下側電極32を固定している。一方で、固定ネジ36bと下側電極32は電気的に接続されており、制御装置50の制御の下で固定ネジ36bを介して下側電極32に所望の極性が付与される。これにより、容器1に収容された水を電気分解する際には、下側電極32は上側電極32の対極となって陰極または陽極として機能する。
【0031】
なお、上記した上側電極31および下側電極32の形状は必ずしも格子状である必要はなく、例えば平板状としてもよいし、スリット状としてもよい。
また、下側電極32の外形は、上側電極31の外形とほぼ同じであることが望ましいが、いずれか一方の外形が他方の外形より大きくなるように形成してもよい。
また、本実施形態では、固定ネジ36は、電源51と上側電極31または下側電極32とを電気的に結ぶ配線として機能している。しかしながら固定ネジ36を配線として利用する形態に限られず、例えば公知の金属配線などを別途設けてもよい。
【0032】
隔膜33は、上側電極31と下側電極32の間に介在するように配置される。本実施形態の隔膜33は、公知の中性隔膜が適用可能である。しかしながら隔膜33は中性である必要はなく、例えばイオン交換膜を用いてもよい。なお、隔膜33の外形は、上記した上側電極1および下側電極32の外形より若干大きな外径で、かつ上側電極1および下側電極32とは相似の形状となっている。しかしながら隔膜33は、上側電極31と下側電極32とが接触しない限りにおいて、上側電極31や下側電極32と相似形状とされておらずともよい。
【0033】
また、上側電極31や下側電極32と同様、隔膜33にはネジ孔33aおよび33bが形成されており、ネジ孔33aには固定ネジ36aが挿通されるとともにネジ孔33bには固定ネジ36bが挿通されることになる。
図2に示すとおり、本実施形態では、上側電極31と下側電極32は、隔膜33を介して互いに平行となるように配置されることが望ましい。これにより電極間距離が一定となり、平面方向における各電極の表面からまんべんなく気体が発生することが可能になる。
【0034】
上部保護枠34は、例えばプラスチックなどの樹脂で形成されており、電極部30のカバーとして機能している。本実施形態の上部保護枠34は、出来るだけ上側電極31が容器1内の水と接触できるようになっていれば特に形状の制限はなく、例えばハブ&スポーク状などのように肉抜きされた形態となっていてもよい。また、上部保護枠34も、上側電極31や下側電極32などと同様に、ネジ孔34aおよび34bを有し、このネジ孔34aには固定ネジ36aが挿通されるとともにネジ孔34bには固定ネジ36bが挿通されることになる。
【0035】
下部保護枠35は、上部保護枠34と同様に例えばプラスチックなどの樹脂で形成されており、電極部30のカバーとして機能している。本実施形態の下部保護枠35は、特にその形状に制限はなく、例えば上部保護枠34と同じ形態となっていてもよい。また、下部保護枠35も、上部保護枠34などと同様に、ネジ孔35aおよび35bを有し、このネジ孔35aには固定ネジ36aが挿通されるとともにネジ孔35bには固定ネジ36bが挿通されることになる。
【0036】
そして
図2に示すとおり、上記した下部保護枠35、下側電極32、隔膜33、上側電極31および上部保護枠34は、この順でZ方向下側から積層されて、下側容器2の電極収容部23内に配置される。
なお、上側電極31と隔膜33の間、および下側電極32と隔膜33の間の少なくとも一方に、補強などを目的として樹脂などで形成された保護枠を更に追加してもよい。
電極収容部23は、下側容器2内に設けられるとともに、上記した電極部30が内部に収容される。そして本実施形態では、電極部30が傾斜して電極収容部23に収容されるように、電極収容部23には傾斜支持部23aが設けられている。
【0037】
また、傾斜支持部23aには不図示の雌ネジが形成されており、
図1または
図2に示すように、固定ネジ36bがこの雌ネジにねじ込まれることで、電極部30は重力方向に対して傾斜して設置可能となっている。一方で、電極収容部23内には固定ネジ36aに対応する雌ネジ(不図示)も設けられており、電極部30が電極収容部23内に収容された後にこの雌ネジに対して固定ネジ36aがねじ込まれる。
なお電極収容部23内における傾斜支持部23aの高さは適宜設定が可能であるが、電極部30(本実施形態では、上側電極31、下側電極32および隔膜33)が水平方向(XY平面)に対して5°〜30°程度傾斜するほどの高さであることが好ましい。
【0038】
次に電極部30と気体排出導管40との接続関係について、
図3を用いて詳述する。
同図に示されるとおり、気体排出導管40のうち一方の端部42は、傾斜した電極部30のうちZ方向に関して高位の側で接続されている。
ここで、電極部30のうち隔膜33と下側電極32との間の第1空間は、密閉部材37で周囲が覆われており、これにより流入口37aから気体排出導管40にかけて流路が形成されている。
【0039】
密閉部材37は、例えばビニールなどの非透過性樹脂膜で形成されており、上記した第1空間内で発生する気体を気体排出導管40へ導く機能を有している。
図3に示すように、本実施形態の密閉部材37は、上側電極31と下側電極32との間に配置されている。
そして密閉部材37と気体排出導管40の端部42とは、例えばヒートシールなどによって接着されている。なお、密閉部材37と気体排出導管40の端部42との接続態様は、ヒートシールに限られず、例えば難溶性の接着剤を介して接着されていてもよい。
なお、密閉部材37の材質は上記に限られず、例えばプラスチックや薄板状の金属板で構成されていてもよい。
【0040】
このように本実施形態では、隔膜33と下側電極32との間を密閉部材37で覆うことで流路を形成し、且つこの流路の一方の端部を開口(流入口37a)としつつ他方の端部を気体排出導管40の端部42と接続させている。これにより、重力方向に対して傾斜した電極部30のうち第1空間(隔膜33と下側電極32の間)で発生した気体は、電極30から容器1内の水中へ拡散せずに(換言すれば密閉性を維持して)気体排出導管40へ排出されることが可能となっている。
【0041】
なお本実施形態では、
図3に示すとおり、気体排出導管40の端部42は隔膜33と下側電極32の間で接続されているが、この接続態様に限定されない。
例えば
図4に示すとおり、気体排出導管40の端部42が固定ネジ36aを覆うように接続する形態としてもよい。
すなわち、
図4(1)に示すとおり、固定ネジ36bとネジ孔33b、31bおよび34bとの密閉度合いを緩めることで、このときに生じる隙間から気体が上方へ移動可能なように構成できる。
【0042】
したがって、上記した第1空間で発生する気体は、傾斜した電極部30の作用でネジ孔33bへと移動するとともに、各層におけるネジ孔と固定ネジ36bとの隙間を通過して固定ネジ36bの上方へと移動する。
そして電極30の外(上部保護枠34の上部)へ出た気体は、そのまま気体排出導管40へと導かれて上方へと移動していくことになる。
【0043】
なお
図4(2)に示すとおり、この例では上部保護枠34のうち気体排出導管40の端部42が接続される部位は非メッシュ状とされている。また、上部保護枠34と気体排出導管40とは、例えばヒートシールなどによって接着されているが、この接続態様はヒートシールに限られず例えば難溶性の接着剤を介して接着する形態でもよい。
また、上部保護枠34は、少なくとも気体排出導管40の端部42が密閉性を維持して接続可能であればメッシュ状でもよく、この場合は気体排出導管40の端部42との接続部位周辺だけメッシュが細かい仕様となっていてもよい。
この
図4に示す態様によっても、電極30の外で意図せず気体が漏えいしないので、隔膜33と下側電極32の間の第1空間の密閉が維持されて気体が気体排出導管40へと排出されると言うことができる。
【0044】
図3に戻り、気体排出導管40の詳細な説明を継続する。
同図のとおり、気体排出導管40には、長さ方向(管の伸長方向)に沿ってその外周面には内外を貫通する細孔(液体流入孔41)が複数形成されている。これにより本実施形態では、容器1内の水を電気分解する際に、容器1内の水のうちアルカリ性が強まった水(水素が溶解した水)が液体流入孔41から気体排出導管40の内部へ侵入することが可能となっている。
【0045】
より具体的な液体の流入態様について、
図5に基づいて説明する。
<気体排出導管40への液体流入作用>
まず電極部30に所定の電圧が印加されると、容器1内の水が電気分解されることで、上側電極31と下側電極32とでそれぞれ気体が発生する。例えば上側電極31を陰極とし、下側電極32を陽極となるように制御装置50が制御すれば、陰極では水素が発生するとともに陽極では酸素が発生する。
このうち、陰極としての上側電極31で発生した水素は、そのまま上方へと浮上して容器1内の水に溶解することでアルカリ水が生成される。
【0046】
一方、陽極としての下側電極32で発生した酸素は、上述のとおり気体排出導管40へと導かれて気体排出導管40内を上昇していく。
このとき、
図5に示すように、気体排出導管40内ではエアーリフト作用が発生し、矢印で示す液体と気体の流れが形成される。
ここで本実施形態の液体流入孔41は、
図5に示すように、それぞれ管の内側から外側に向かうにつれて電極側の端部へ向かうよう傾斜して気体排出導管40に設けられている。
したがって、気体排出導管40内を上昇する気体(酸素)は液体流入孔41へは侵入せずに上昇を続ける一方で、この液体流入孔41を介して外側から水(アルカリ水)が気体排出導管40内へと流入することとなる。
【0047】
このように、気体排出導管40内は、電極部30で発生した酸素やオゾンが溶解した水が通過していくが、この酸素・オゾン溶解水に対して液体流入孔41を介してアルカリ水が流入することになる。したがって、容器1内でアルカリ水となった水の一部が気体排出導管40内へと流入するため、アルカリが過度に強まることが抑制される。
さらに本実施形態によれば、電極部30で発生した酸素は気体排出導管40を介して容器1の上方へと導かれるため、容器1内の水にオゾン臭が付与されてしまうことも抑制することが可能となっている。
【0048】
次に
図6を用いて、上記した電気分解の際における容器1内の水の流れを説明する。なお、説明の便宜上、
図6においてはいくつかの部材が省略されている。また、
図6においては隔膜33には後述する空気溜まり33cが形成されているが、この空気溜まり33cは省略してもよい。
図5で説明したとおり、上側電極31に−の電位が付与されるとともに下側電極32に+の電位が付与された場合、容器1内の水が電気分解されて陰極では水素Hが発生し、陽極では酸素Oが発生する。
【0049】
このうち水素Hはそのまま上方へ浮上するのは既述のとおりであるが、陽極で発生した酸素Oは隔膜33の存在によって上昇が遮られて隔膜33の傾斜に沿って移動する。このとき、移動の過程で細かい気泡であった酸素Oは互いが結びつくことで大きな気泡として成長していく。
隔膜33の端部から気体排出導管40へと入った酸素Oの気泡はエアーリフト作用を発揮しながら気体排出導管40内を上昇する。
【0050】
一方で、第1空間(隔膜33と下側電極32の間の空間)に存在する水(酸素やオゾンが溶解した中性の水)は、上記したエアーリフト作用によって第1空間から気体排出導管40への流れ込むことになる。このように、第1空間に存在する水が気体排出導管40へ排出されるに伴って、新たな水が流入口37aを介して第1空間へと流れ込むことになる。
なお、気体排出導管40の上端(Z方向における最高位)まで流れた水は、そのままあふれて容器1内の水と合流することとなるが、このときはすでにある程度アルカリ水(水素が溶解した水)となっている。
このように本実施形態によれば、電極部30で発生する気体にエアーリフト作用を発揮させることで、容器1内の水を循環させることが可能となっている。
【0051】
次に、
図7を用いて本実施形態の制御装置50による制御の一例を説明する。
上記したとおり、容器1内の水を電気分解する際は、上側電極31を陰極にするとともに下側電極32を陽極とする制御を行う。
しかしながら本実施形態では、上側電極31が常時陰極となる制御をせずに、電極表面の洗浄などを目的として間欠的に電極の極性を反転する制御を行ってもよい。
【0052】
すなわち、
図7に示すとおり、まず時刻t1で容器1内の水の電気分解が開始される。時刻t1からしばらくは、上側電極31には電圧−V
1が印加されて陰極として機能するとともに、下側電極32には電圧V
1が印加されて陽極として機能する。
そして時刻t2となったとき、制御装置50の制御の下で、上側電極31と下側電極32の極性が反転され、この状態が時刻t3まで継続される。これにより、水に含まれるミネラル分が電極に付着するのを抑制することが可能となる。
【0053】
そして時刻t3では、再び制御装置50の制御の下で、上側電極31には電圧−V
1が印加されるとともに下側電極32には電圧V
1が印加されて、上記した上側電極31を陰極とした電気分解が再開される。
なお、時刻t1〜t2および時刻t3〜t4の間隔としては、例えば数分〜数時間が好ましい。また、時刻t2〜t3の間隔としては、数秒〜数分程度が好ましい。
また、上記した再開後の電圧は、再開前の電圧と等しくしてもよいし、例えば再開後は相対的に低くするなど再開前とは異なる電圧としてもよい。
また、極性反転のタイミングとしては、1時間に数回〜数十回、一日に数回〜数十回など任意の回数を設定してもよい。いずれにしても、上側電極31を陰極とした電気分解を行う時間のほうが、極性反転した際の時間よりも多くなるように制御装置50によって電圧印加が制御されることが好ましい。
【0054】
<電極部30と電源との電気的な接続態様>
次に、
図8を用いて電極部30における電気的接続について説明する。
図8は、本実施形態における電極部30を構成する上側電極31および下側電極32と電源としての電源51との電気的接続を示す模式図である。
上述したとおり、上側電極31および下側電極32が配置される空間(容器1内)と、制御装置50および電源51が配置される空間とは隔離されている。
【0055】
そして電極を固定する固定ネジ36は、それぞれ制御装置50および電源51が配置される空間まで延伸している。したがって本実施形態では、電源51の+極は配線L
1を介して固定ネジ36bと電気的に接続される一方で、電源51の−極は配線L
2を介して固定ネジ36aと電気的に接続される。
このとき、下側電極32は、絶縁リング38aを介して固定ネジ36aで固定されるため、下側電極32によってショートしてしまうことが防止されている。同様に、上側電極31は、絶縁リング38bを介して固定ネジ36bで固定されるため、上側電極31によってショートしてしまうことも防止されている。
【0056】
なお、
図8では電源51の向きは上記のとおりであるが、制御装置50の制御の下でこれらの極性が任意に反転可能であることは既述したとおりである。
また、本実施形態では、外部接続コネクタ22を介して電源51に給電が可能となっているが、この電源51を省略して制御装置50が外部コネクタ22から直接的に上側電極31と下側電極32に所望の電位を付与する制御を行ってもよい。
【0057】
≪第2実施形態≫
図9は、本発明の第2実施形態に係る電解水生成装置200の全体構成図である。この電解水生成装置200は、上記第1実施形態の電解水生成貯留装置100に比して容器1および下側容器2が省略され、把持部内に制御装置が収容されることで携帯可能とされた点に主な特徴がある。
したがって、以下では相違点について主として説明し、第1実施形態と同じ構成及び機能を有する要素については同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0058】
図9に示すとおり、本実施形態の電解水生成装置200は、電極部30(上部保護枠34、上側電極31、隔膜33、下側電極32、下部保護枠35および密閉部材37)、気体排出導管40および把持部60を含んで構成されている。なお、少なくとも上部保護枠34と下部保護枠35は、省略することが可能である。また、後述するとおり本実施形態の電解水生成装置200は把持部60を手で把持して操作することが可能であるため、第1空間内の水の流れを手動で起こすようにすれば、密閉部材37を省略してもよい。
【0059】
把持部60は、気体排出導管40のうち下側電極32側の端部とは反対側に設けられている。本実施形態ではコップや水筒などの飲料容器に電解水生成装置200を装着するため、人が把持部60を手で把持することが可能となっている。
なお、把持部60の材質としては特に制限はないが、例えばプラスチックや硬質ゴムなどの樹脂材料が好適である。
【0060】
本実施形態では、把持部60は中空の形状となっており、この把持部60内には制御装置63が収容されている。
制御装置63には、CPUなどの制御部62と、リチウムイオン二次電池などの電源部62が含まれている。なお電源部62はリチウムイオン二次電池に限られず他の二次電池でもよいし、二次電池に代えて一次電池を用いてもよい。
【0061】
なお、電源部62は省略が可能であり、その場合には外部接続コネクタ22を介して外部から直接給電してもよい。また、制御部62には不図示のメモリが搭載されて各種のプログラムが実行可能とされている。したがって、上記した洗浄処理を含む水の電気分解処理が実行可能となっている。
また、把持部60に押圧式ボタンまたはタッチパネル型液晶表示装置などを設置して、このボタンを押圧することで上記した電極への電圧印加による電気分解処理や極性反転による洗浄処理を実行させるようにしてもよい。
【0062】
また、
図9に示すとおり、電源62から配線64および配線65が引き出されており、気体排出導管40に沿って延伸してそれぞれ電極と電気的に接続される。より具体的には、配線64を介して電源62の陰極が上側電極31と電気的に接続される一方で、配線65を介して電源62の陽極が下側電極32と電気的に接続される。
これにより、制御装置63の制御の下で、電源62から所望の電位を上側電極31と下側電極32とに付与することが可能となっている。
【0063】
さらに本実施形態では、気体排出導管40の上端(電極部30とは反対側)は開放されておらず流れ止め部67が形成されている。さらにこの流れ止め部67の手前において、気体排出導管40には排出口66が形成されている。
したがって、電極部30からエアーリフト作用で上昇した水や気体は、この流れ止め部67でせき止められるとともに排出口66を介して外部へ排出される。
【0064】
この第2実施形態に係る電解水生成装置200によれば、コップや水筒などの飲料容器に電極部30および気体排出導管40の少なくとも一部を含浸させた状態で容器内の水を電気分解することが可能となる。
換言すれば、把持部60を人が把持することで、いわば容器内の水にスプーンを浸すがごとき態様で容器内の水をアルカリ水(水素が溶解した水)に変化させることが可能となっている。
なお、容器内の水を電気分解している最中には、排出口66から酸素やオゾンが溶解した水および酸素が排出されるが、酸素はそのまま大気中に拡散され、酸素やオゾンが溶解した水は気体排出導管40を伝わって容器へと還流される。
【0065】
上記した各実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、各実施形態に適宜適用が可能な変形例について説明する。なお、以下の変形例においては既述の構成と同じ機能・作用を奏するものはその記載を省略するか同じ参照番号を付け、更にその説明も適宜省略する。
≪変形例1≫
図10は変形例1を説明する図であり、主面が平らな電極および隔膜に代えて、中央が凹んだ上側電極31、隔膜33および下側電極32を用いてもよい。より具体的には、変形例1にかかる上側電極31、隔膜33および下側電極32は、中央が窪んだ円錐状となっていてもよい。
【0066】
この場合、
図10に示すとおり、紙面両側(X方向側)の端部には一対の気体排出導管40が接続されている。換言すれば、変形例1にかかる電極部30は、複数の気体排出導管40を有していると言える。
一方で、隔膜33と下側電極32との間の第1空間は密閉部材37(不図示)で覆われており、さらには紙面を貫く側(Y方向側)の端部には一対の流入口37a(不図示)が設けられている。換言すれば、変形例1にかかる電極部30は、X方向の端部にそれぞれ気体排出導管40を有するとともに、Y方向の端部にはそれぞれ流入口37aを有していると言える。
【0067】
なお、変形例1の電極部30は、複数の気体排出導管40を備えずともよく、単一の気体排出導管40を備えるようにしてもよい。また、変形例1の電極部30は、複数の流入口37aを備えずともよく、単一の流入口37aを備えるようにしてもよい。あるいは、変形例1の電極部30は、1つの気体排出導管40に対して複数の流入口37aを備えていてもよいし、逆に1つの流入口37aに対して複数の気体排出導管40を備えていてもよい。
【0068】
≪変形例2≫
図11は変形例2を説明する図であり、変形例1と同様に、主面が平らな電極および隔膜に代えて、中央が凹んだ上側電極31、隔膜33および下側電極32を用いてもよい。そして変形例1にかかる電極部30では下側に凸となるように円錐状の上側電極31、隔膜33および下側電極32が設置されていたが、本変形例2にかかる電極部30では上側に凸となるように円錐状の上側電極31、隔膜33および下側電極32が設置されている。
【0069】
また、変形例2においては、電極部30のうち凸部の頂点(円錐の頂点でありZ方向において最も高位の箇所)に気体排出導管40が接続されている。より具体的には、電極部30を構成する上側電極31と隔膜33のうち凸部の頂点付近には気体排出導管40を挿入する挿入孔があいており、この挿入孔に気体排出導管40が挿入されることで第1空間(下側電極32と隔膜33の間の空間)と気体排出導管40とが挿通される。
一方で、隔膜33と下側電極32との間の第1空間は密閉部材37(不図示)で覆われており、さらには円錐状の周方向における側面には1又は複数の流入口37a(不図示)が設けられている。
【0070】
なお、隔膜33の中央に設けられる挿入孔と気体排出導管40は密着されることが望ましいが、上側電極31の中央に設けられる挿入孔は所定の間隙を有して気体排出導管40が挿入されてもよい。これにより、上側電極31のうち底面側(
図11で隔膜33と対向する側)で発生する気体が、電極部30の内部に滞留せずに上記間隙を介して上方へ移動することが可能となる。
また、上記説明では、上側電極31と隔膜33の中央に挿入孔が形成される例を説明したが、下側電極32の中央にも貫通孔が形成されていてもよい。これにより、下側電極32のうち底面側(
図11で隔膜33とは反対側)で発生する気体が、下側電極32における凸部の先端(頂点)で滞留せずに上記貫通孔を介して気体排出導管40へ移動することが可能となる。
【0071】
≪変形例3≫
図12は変形例3を説明する図である。
本変形例3にかかる電極部30では、上側電極31、隔膜33および下側電極32のうち重力方向に関して高位となる側に空気溜まりを有する点に特徴がある。この空気溜まりはZ方向上側に向かって凸となるように窪んだ部位であり、電極で発生した気体がいったん空気溜まりに貯留されることで大きな気泡へと成長することが可能となる。
【0072】
より具体的には、
図12に示すように、下側電極32のうち上記した高位側には空気溜まり32cが形成され、隔膜33のうち上記した高位側には空気溜まり33cが形成され、上側電極31のうち上記した高位側には空気溜まり31cが形成されている。
なお、気体排出導管40へ排出される気体(本例では酸素)が少なくとも空気溜まりに貯留されればよい観点から、少なくとも隔膜33に空気溜まり33cが形成されていればよい。しかしながら電極間距離を一定にするとともに電極部30の構造を安定させる観点からは、隔膜33の空気溜まりに対応するよう上側電極31および下側電極32にも上記した空気溜まりが形成されていることが望ましい。
【0073】
この変形例3によれば、密閉部材37(不図示)で覆われた第1空間を移動する気体(酸素)は、空気溜まり33cで一時的に貯留することで比較的大きな気泡となり、その後に気体排出導管40へと排出されることになる。
これにより、上記実施形態や変形例などに比して大きなエアーリフト作用を奏することが可能となる。
【0074】
≪変形例4≫
上記第1実施形態、第2実施形態、および変形例1〜3は、容器内の液体(水)に水素を溶存させる一方で、陽極から発生する酸素は気体排出導管を介して排出する構成となっていた。
しかしながら本発明は上記に限定されず、容器内の液体(水)に酸素を溶存させる一方で、陽極から発生する水素は気体排出導管を介して排出する構成としてもよい。
すなわち、上記した各実施形態および各変形例において、電極部30における陽極と陰極が反対の構成とすることができる。この場合においては、
図7で説明した極性反転の制御についても、それぞれ陽極と陰極が反対の構成となる。
【0075】
より具体的には、本発明における電解水生成装置の制御装置は、電極部30のうち上側電極31が陽極となる一方で下側電極32が陰極となるように、それぞれの電極に電位を付与する制御を行ってもよい。
これにより、容器1や飲料容器内の水を酸素が多く溶存した水に変化させることができる。なお、かような酸素が多く溶存した水は、人に限られず、植物や動物に用いる水としても発育上において有効となる。
【0076】
以上で説明した各実施形態および各変形例は適宜組み合わせて電解水生成装置や電解水生成貯留装置を構成してもよい。
また、上記では容器に注入される液体として水を用いて説明したが、この水には食塩など公知の種々の添加剤が添加されていてもよい。
【解決手段】本発明の電解水生成装置は、上側電極と、前記上側電極と平行に対向して配置される下側電極と、前記上側電極と前記下側電極との間に配置される隔膜と、前記下側電極と前記隔膜との間の第1空間で発生する気体を流通させる気体排出導管と、前記第1空間を覆う密閉部材と、電源から電力を受けることによって、前記上側電極と前記下側電極との間に所定の電圧を印加する制御を行う制御装置と、を具備し、少なくとも前記隔膜は、前記気体排出導管が固定される側の第1端部が高位となるよう重力方向に対して傾いて配置され、且つ、前記密閉部材により第1空間の密閉が維持されて前記気体が前記気体排出導管へ排出されることを特徴とする。