(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の加熱システムを用いた本実施形態のホットプレス装置11について説明する。
図1に示されるように、ホットプレス装置11は、上側の固定盤12と下側の可動盤13の間に複数の熱板14が配設されている。成形材Pを少なくとも加熱可能な被加熱部材である熱板14は両面が平滑に形成された矩形の所定板厚の金属板であり、内部に熱媒の一種である熱媒油が流通される屈曲した内部通路15が形成されている。また熱板14には熱板14の温度を測定する温度センサである熱電対16が取付けられている(
図1では省略して下熱板14の熱電対16のみ記載)。ホットプレス装置11の可動盤13の下側には図示しない型締シリンダが配設され、型締シリンダのラムが可動盤13の背面に固定されている。そして型締シリンダの上昇により各熱板14上に載置された成形材Pが熱板14,14間で加圧・加熱されるようになっている。またホットプレス装置11の各熱板14を含む成形スペースは図示しないチャンバに収容されており外界と隔絶可能となっている。そしてチャンバの内部の成形スペースは、図示しない真空ポンプにより真空状態に制御可能となっている。
【0013】
次にホットプレス装置11の熱板14へ熱媒油を供給する熱媒供給機構17の概略を説明する。熱媒供給機構17の主管路18には、熱板14へ供給される熱媒油の供給用のポンプ19が設けられている。そして前記ポンプ19のモータ20は、制御装置21に接続されている。そして前記モータ20は、制御装置21のインバータによって回転数が可変に制御可能となっている。ホットプレス装置11の熱板14の熱媒供給側の側方に配設された供給側マニホールドパイプ23とポンプ19の間は、管路22により接続されている。そしてポンプ19から送られる熱媒油は前記供給側の管路22を介して供給側マニホールドパイプ23へ送られるようになっている。供給側マニホールドパイプ23は、各熱板14へ熱媒を分配するための部材であり、供給側マニホールドパイプ23と各熱板14の内部通路15のとの間は、耐熱ホースでそれぞれ接続されている。
【0014】
またホットプレス装置11の熱板14の熱媒排出側の側方には、排出側マニホールドパイプ24が設けられている。排出側マニホールドパイプ24は、各熱板14からの熱媒を集合させるための部材であり、排出側マニホールドパイプ24と各熱板14の内部通路15との間は、耐熱ホースでそれぞれ接続されている。また供給側マニホールドパイプ24と排出側マニホールドパイプ24には、温度センサである熱電対25がそれぞれ配設されている。
【0015】
排出側マニホールドパイプ24と熱媒供給機構17との間は、排出側の管路26が設けられている。そして前記管路26に接続される熱媒供給機構17には三方弁27が設けられている。三方弁27の先は主管路18と冷却装置28の導入口に接続される管路に分岐している。冷却装置28は公知のものであって、冷却水等を循環させ熱媒油の熱を奪って温度低下させる装置(オイルクーラー)である。冷却装置28の排出口側の管路は、再び主管路18と合流するように接続される。したがって主管路18と冷却装置28は並列状態に配置されている。また主管路18は、その先で蓄熱タンク34への管路31が分岐されている。
【0016】
蓄熱タンク34への管路31にはポンプ30が設けられている。そしてポンプ30のモータ31は電力供給装置を介して制御装置21に接続され、モータ20と同様に制御装置21のインバータ等により制御される。またポンプ30の先の管路30は蓄熱タンク34の導入口に接続されている。更に蓄熱タンク34の排出口に接続される管路35には三方弁36が設けられ、三方弁36の先は、主管路18に接続される管路33と、蓄熱タンク34への管路31に接続される循環管路37とに分岐されている。三方弁27、36は制御装置21に接続され、制御装置21からの信号により弁の開度が制御でき、それぞれ分岐した2つの管路18、37へ送る熱媒油の比率を制御できる。上記の構成により、ホットプレス装置11の熱媒供給機構17は、熱媒油を熱板14に循環供給可能となっている。
【0017】
蓄熱タンク34について詳しく説明すると、蓄熱タンク34はこれに限定されないが一例としてホットプレス11と熱媒供給機構17全体に使用される熱媒油のうち20〜95パーセントが貯留可能なタンクであり、蓄熱タンク34内の熱媒油を直接可能なヒータ38と、熱媒油の温度を測定可能な温度センサとして熱電対39が設けられている。ヒータ38についてはカートリッジヒータが用いられている。またヒータ38のスイッチは、マグネットスイッチが使用され、制御装置21からの信号によりスイッチがON・OFF制御される。また蓄熱タンク34は、加熱され貯留される熱媒油の温度の低下を抑制するためにタンクの周囲には断熱材が設けられている。
【0018】
上記の熱媒供給機構17および蓄熱タンク34は一例を示すものであって、同様の機能が果たせるものであれば上記のものに限定されない。加熱手段であるヒータ38は、別の種類の電気ヒータでもよく、蓄熱タンク34に設置されるヒータ38の数も限定されない。ヒータ38や制御区分が複数ある場合、ONにするヒータ38の数を制御するなどして昇温の程度を制御することも可能である。また加熱手段は、誘導加熱装置やボイラ等の別の手段でもよい。スイッチについてはPMW制御を行うもの等の別のスイッチであってもよく、それらの場合はON、OFFの回数自体がスイッチの寿命にさほど問題とならない場合も有り得る。熱媒油の加熱手段(ヒータ等)は蓄熱タンク34とは別の循環管路37等に設けてもよく、蓄熱タンク34の加熱手段に加えて、蓄熱タンク34外にも加熱手段を設けてもよい。更に蓄熱タンク34に熱媒油の圧力を上昇させる機構を設けてもよい。更にまた管路、弁、およびポンプの設置位置や種類、個数も上記に限定されない。
【0019】
制御装置21については、ホットプレス装置11の図示しない型締シリンダを制御するための油圧回路の各種バルブや各種センサ、真空度を制御するための真空ポンプや真空センサ等に接続されている。また制御装置21は、ホットプレス装置11の熱電対16,25にも接続されている。更に制御装置21は、熱媒供給機構17のポンプ19,32のモータ20,33や三方弁27,36等のバルブの他、冷却装置28等に接続されている。そして制御装置21は、型締シリンダの作動等のシーケンス制御を行うほか、熱媒油の供給および被加熱部材である熱板14の温度コントロールに関する制御を行う。更に制御装置は、図示しない表示画面にも接続され、設定入力や成形データ等の処理と表示を行う。
【0020】
次にホットプレス装置11の熱板14と蓄熱タンク34の温度制御方法について説明する。まず最初にホットプレス装置11には、表示装置から成形サイクルにおける熱板設定温度tp(加熱部材の設定温度)の温度制御パターンが入力される。温度制御パターンは、昇温工程の時間と温度から決定される昇温率、保持工程の時間、降温工程の時間と温度から決定される降温率等が入力される。なお実際の成形では昇温工程、保持工程、降温工程ともに一段に限定されない。
【0021】
次に
図2に示される設定画面から蓄熱タンク34内の熱媒油の温度制御プログラムをどのように行うか選択入力する。すなわち「省エネ制御」となっている部分で「有効」を選択すると本発明の第1のモードである変温許容制御が実施される。また「無効」を選択すると、第2のモードである等温制御が実施される。なお「有効」を選択した場合に、加熱システム稼動を開始して1回目の成形サイクルの昇温工程では前記第1のモードを行うか第2のモードを行うかを更に選択できるようにしてもよい。なお本実施形態では、「有効」を選択した場合に、1回目の成形サイクルの昇温工程のみは、前記第2のモードの等温制御を行い、その後に第1のモードの変温許容制御を行うように切換えられるよう設定されている。
【0022】
そしてまた
図2の設定画面では、「最高設定温度」と記載される最高設定温度tmを入力する。最高設定温度tmは、蓄熱タンク34内の熱媒油の設定温度の上限を規定する温度であり、成形サイクルにおける熱板設定温度tpの最高温度よりも僅かに高い温度(一例として5〜50℃高い温度)に設定される。なお最高設定温度tmは熱板設定温度tpの最高設定温度と関連づけて定めるようにしてもよい。具体的には最高設定温度tmは、熱板設定温度tpの最高設定温度に対するプラス幅を関連づけて入力するようにしてもよい。
【0023】
また
図2に示される設定画面において「省エネ制御」を「有効」を選択した場合は、設定画面では「蓄熱油温度プラス幅」と記載される加熱開始温度tsを設定入力する。加熱開始温度tsは、2回目以降(N+1=Nは1以上の整数)の成形サイクルにおいてヒータ38がONされる温度であって、被加熱部材である熱板14の熱板設定温度tpと関連づけて予め定められる。より具体的には蓄熱タンク34の熱媒油の温度toが熱板設定温度tp+α℃よりも低くなるか以下になった場合にヒータ38がONとなる。一例として加熱開始温度tsは、蓄熱タンク34の熱媒油の温度が熱板14の設定温度+100℃よりも低くなるとヒータがONとなるように設定される。この加熱開始温度tsは成形サイクルの昇温工程の昇温率、保持工程の最高温度、熱媒の種類、成形材Pの種類などによって相違するが一例として熱板設定温度tpの+30〜+150℃の範囲で予め関連づけて設定されることが好ましい。
【0024】
次に
図3のホットプレス装置の熱板設定温度、ヒータ作動状況、および蓄熱タンクの熱媒油の温度の関係を示す図と、
図4のフローチャートを参照して実際の加熱システムの稼動について説明する。例えば前日の成形から12時間が経過して朝に加熱システムを稼動開始する場合、1回目の成形サイクルの開始前には、蓄熱タンク34の熱媒油の温度toとは、前日の終了時に制御装置21およびヒータ38がOFFとなって熱媒油の温度toから自然放熱され、50〜150℃程度に降温された状態にある。そのためその当日の加熱システムが稼動開始(s1)され制御装置21等がONの状態となると、1回目の成形サイクルの開始前からの蓄熱タンク34の熱媒油の温度制御は、第2のモードである等温制御において行われる。従ってここでは1回目の成形サイクルでは、熱板設定温度tpと関連づけて蓄熱タンク34の熱媒油の加熱開始温度tsを決定する変温許容制御は行われない。
【0025】
そして1回目の成形サイクルの昇温工程の開始前に降温工程開始時間T1でないことを確認(s2)してから、ヒータ38をONにし(s3)、蓄熱タンク34の熱媒油の温度toを最高設定温度tmに向けて昇温させる。この際に昇温工程が開始される際は、熱媒油の温度toが最高設定温度tmになっているように蓄熱タンク34のヒータ38をONにする時間(熱媒油を加熱を開始する時間)が決定される。そして前記熱媒油の温度toが最高設定温度tmに到達するまではヒータ38はほぼONのまま制御される。このようにして熱板14の昇温前から蓄熱タンク34の熱媒油をヒータ38により昇温させておくことにより、ヒータの容量を小さくすることができ、ピーク電力を小さくすることができる。
【0026】
蓄熱タンク34の熱媒油の温度toが最高設定温度tmに到達したら(s4)、ヒータ38はOFFとなり(s5)、以後、ほぼ最高設定温度tm付近を保つようにヒータはOFFとONを繰り返す。この際のヒータ38が再びONとなる再昇温温度は、最高設定温度tmからヒステリシス値βを見込んだ分だけ下方の温度に設定される。一例として最高設定温度から1〜10℃低い温度がヒータ38をONする再昇温温度として設定される。従って熱媒油の温度toが最高設定温度ts−β℃を下回ると(s6)、再びヒータがONとなる(s3)。
【0027】
ホットプレス装置11が成形材Pの搬入の検出、真空チャンバの真空度の検出等の所定の他の条件を満たしたら1回目の成形サイクルの昇温工程を開始する。そして昇温工程の開始とともにポンプ19,32が駆動され、蓄熱タンク34から送られる加熱された熱媒油が三方弁36およびポンプ19を介して熱板14へ送られる。そして熱板14に送られた熱媒油は、熱板14を加熱する過程で熱が奪われて一部が管路26、三方弁27、主管路18、管路31、およびポンプ30を介して再び蓄熱タンク34に戻され、残りは主管路18からそのままポンプ19に送られる。この際、三方弁36の開度とポンプ32の吐出量が制御されることにより蓄熱タンク34からポンプ19に送られる熱媒油の量と熱板14から管路18のみを介して直接ポンプ19に送られる熱媒油の量の比率の調整が可能である。これら昇温工程の間は、上記したように、熱媒油は、熱板14により熱が奪われるので、ヒータ38はほぼ常時ONの状態を保つ。(ただし昇温工程の間に等温に保持される部分が長い場合や温度上昇カーブが緩やかな場合は、最高設定温度tmに到達してヒータ38がOFFになる場合も有り得る。)そして熱板14の温度は熱板設定温度tpに沿って昇温制御される。
【0028】
そして熱板14の温度の最高の設定温度tpまでの上昇および/または所定時間の経過の条件が満たされると、保持工程へ以降する。保持工程の初期に熱媒油の温度toが最高設定温度tmまで昇温されると、以後はs5、s6、s2、s3、s4・・・のステップによりヒータ38はON・OFF制御を繰り返し、熱媒油の温度を最高設定温度tm付近に維持する。また熱板14については、熱板設定温度tpに保たれるようにポンプ19を介して温度制御された熱媒油が供給される。
【0029】
制御装置21においては保持工程の経過中、降温制御を開始する降温工程開始時間T1であるか(s3)が反復判断され、降温工程開始時間T1となると(s3においてY)、ヒータ38はOFFとなり(s7)降温工程が開始される。なお従来は、
図6に示されるように降温制御工程の際も蓄熱タンクの熱媒油の温度toを最高設定温度tm付近に維持するためにヒータ38をON・OFFさせていたので電力消費量が大きかった。しかし本発明では、ここから第1のモードの変温許容制御が開始されるので省エネルギー化を図ることができる。
【0030】
降温工程開始時間T1以降の降温工程では、蓄熱タンク34の熱媒油は三方弁36を介して熱板14に送られないか送られたとしてもごく少量となる。他方、三方弁27を制御して冷却装置28に送られる熱媒油の量を調整し、ポンプ19を介して管路22から熱板14に送られる熱媒油の温度を降温制御する。そして熱板14の温度は熱板設定温度tpに沿って降温制御される。そして設定時間および/または熱板14の温度が設定温度になると)1回目の成形サイクルは完了する。そして降温工程が終了すると待機工程に
移行するが、待機工程でもヒータ38はOFFのまま維持される。
【0031】
その間、蓄熱タンク34内の熱媒油の温度toは、自然放熱により僅かづつ降温されるが、蓄熱タンク34内の熱媒油を最高設定温度tm付近に維持する制御のようにヒータ38のスイッチを頻繁にON・OFFしなので、省エネルギー化に繋がる。またヒータ38のスイッチがマグネットスイッチの場合は、スイッチの寿命が長くなるというメリットもある。
【0032】
次に
図4の右半分に記載されるホットプレス装置11の2回目の成形サイクルについて記載する。ホットプレス装置11の1回目の成形サイクルが終了すると、成形サイクル(N+1)が開始されるか(s8)が毎回判断され、2回目以降の成形サイクル(N+1)が開始されずに成形サイクルが終了する場合(s10でY)はそのまま加熱システムの稼動を終了する。一方2回目以降の成形サイクル(N+1)が開始されるときには(s8でY)、よほど長時間ホットプレス装置11が作動されない場合を除き、蓄熱タンク34の熱媒油の温度toは僅かに降温しているが加熱開始温度tsよりも高い、従って昇温工程の開始と同時にヒータ38はONとならない。昇温工程においては蓄熱タンク34から熱板14へ熱媒油が送られ、熱板14が加熱されるとともに熱を奪われた熱媒油が蓄熱タンク34に戻され続ける。その結果、熱電対39によって測定される蓄熱タンク34の熱媒油の温度toは、徐々に降温され、やがて熱板設定温度tpを所定温度だけ上回る加熱開始温度ts(熱板設定温度tpと関係づけて定められる温度)に到達する(s9)。
【0033】
蓄熱タンク34の熱媒油の温度toが、加熱開始温度tsとなると、再びヒータ38がONされる(s3)。そしてその後は、1回目の成形サイクルと同様に制御装置21から蓄熱タンク34の熱媒油の温度toの制御が行われ、昇温工程、保持工程、降温工程が行われる。ホットプレス装置11による1回の成形サイクルは、長いものでは数時間に及ぶので、1日の加熱システムの稼動中にける成形サイクルの回数はそれほど多くないが、3回目以降の成形を行う場合も2回目と同様に行われる。なお本実施形態のフローチャートは一例であって、同様の趣旨ものもなら他の制御方式であってもよい。一例として降温工程の開始と同時に(s9)の判断を開始するものでもよい。
【0034】
このように従来技術では1日の加熱システム稼動が開始されたら蓄熱タンク34の熱媒油を昇温しその後は最高設定温度tm付近に継続維持されていたのを、本発明では熱板設定温度との関係において変更されるようにしたので、省エネルギー化が達成できる。特に従来技術では、降温工程や待機工程の間も、蓄熱タンク34の熱媒油の温度toを最高設定温度tmに保つため、ヒータ38をON・OFF制御していたが、本発明では、前記降温工程や待機工程の間、ヒータ38はOFFとなるので、降温工程や待機工程の長さが長い場合ほど省エネルギー化が達成できる。何故なら本発明においても蓄熱タンクの熱媒油が温度低下した場合は、最高設定温度に昇温するためには相応のエネルギーを消費するが、従来のように最高設定温度付近を維持する場合と比較すると放熱量が少なくて済むので省エネルギー化の点で有利である。
【0035】
蓄熱タンク34を最高設定温度付近を維持する場合と温度低下を許容させる場合の熱損失について更に詳しく説明すると、蓄熱タンク34等の蓄熱装置の表面から流失する温度が熱損失として上げられる。一般的に固体−気体間の熱の移動は対流となり、対流の大きさを示す係数として熱伝導率h〔W/(m
2・K)〕がある。そして温度差θ〔K〕、表面積をA〔m
2〕としたときの熱損失は、
I=h・A・θ〔W〕
となる。つまり、蓄熱タンク34や熱媒装置を高い温度で維持するより、昇温させれば次回の成形時に間に合うように必要な熱量だけ持つようにコントロールした方が、蓄熱タンク34等の蓄熱装置表面から放出されるエネルギーを削減出来ることになる。
【0036】
次に
図5に示される別の実施形態について説明する。
図5に示される別の実施形態では、1回目の成形サイクルから第1のモードである変温許容制御を行う。そして蓄熱タンク34の熱媒の加熱開始温度tsと加熱終了温度teが加熱部材の設定温度tpとの関連において予め定められている。別の実施形態では、
図2に示される本実施形態の1回目の成形サイクルおよび
図6に示される従来技術のように、昇温工程が開始される前に蓄熱タンク34の熱媒油の温度toを最高設定温度tmまで上昇させておかない。そのため昇温工程開始前のヒータ38がONの時間を短くすることができ、また最高設定温度tm付近での放熱量を少なくすることができる。
【0037】
具体的には昇温工程開始時に熱板設定温度tpに対して蓄熱タンク34の熱媒油の温度toが所定温度上回るように1回目の成形サイクルの蓄熱タンク34の熱媒油の加熱を開始する。この際に熱板設定温度tpに対して熱媒油の温度toが所定温度以上(または所定温度より高温)となったらヒータ38をOFFにするように加熱終了温度teを設定する。一例として加熱終了温度teは熱板設定温度tp+105℃に設定される。そして一度はヒータ38がOFFになった場合も、熱板設定温度tpの上昇に対して熱媒油の温度toの上昇が追いつかなかったり熱媒油の温度toが下降したりして、別途設定された熱媒設定温度tp+所定温度を加えた加熱開始温度ts以下(または加熱開始温度tsより低温)となったらヒータ38を再びONにして蓄熱タンク34の熱媒油を加熱する。加熱開始温度tsは一例として熱板設定温度tp+100℃に設定される。
【0038】
このように昇温工程から蓄熱タンク34の熱媒油の温度toを熱板設定温度tpに関連づけて温度コントロールすることにより、熱媒油の温度toを必要以上に高温にする必要がなく、無駄な放熱を抑制することができる。なお別の実施形態において、保持工程、降温工程は、
図3に示される本実施形態と同様に行われる。2回目以降の成形サイクルについての蓄熱タンク34の温度制御は、加熱開始温度tsのみを設定する制御を行ってもよく、加熱開始温度tsと加熱終了温度teの両方を設定する制御を行ってもよい。
【0039】
なお上記において
図3の本実施形態の加熱開始温度tsおよび
図5の別の実施形態の加熱開始温度tsおよび加熱終了温度teは熱板設定温度tpとの関係において予め設定される例が記載されている。しかし熱板温度設定温度tsの昇温率等から、制御装置21において自動的に加熱開始温度tsおよび加熱終了温度te等が演算され、演算によって求められた値により制御を行うようにしてもよい。また加熱開始温度tsおよび加熱終了温度teは、熱板温度設定温度tsと関連づけて定められるものであれば他の方式で決定されるものでもよい。
【0040】
なおこれらの第1のモードと第2のモードの選択は自由に設定できるが、主に次の要因により決定される。即ち、成形における昇温工程の熱板設定温度の温度上昇率が大きい場合(
図2等の熱板設定温度の角度が急な場合)は、最初に蓄熱タンク34の熱媒油の温度toを上昇させておく第2のモードを選択することが望ましい。その他の場合は省エネルギーの観点から第1のモードを選択することが望ましい。なお最初から蓄熱タンク34のヒータ38の選定を行える場合は、ヒータの総容量を若干程度大きくしておけば第1のモードを選択できる幅が広がる。
【0041】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。本発明の蓄熱タンクに貯留した熱媒を用いて装置の被加熱部材の加熱を行う加熱システムは、各種材料のプレス成形を行うホットプレスを含むプレス装置に限定されず、熱硬化樹脂の硬化装置やキュア装置全般に使用される。また樹脂のアニーリング装置、主に大型の射出成形機やラミネータ装置、化学製品製造装置、半導体製造装置、各種の加熱炉や乾燥炉等において装置の被加熱部材(型、加熱筒、台盤、容器、炉本体、成形部等)を加熱する際に用いるものでもよい。
【0042】
またこれらの装置に取付けられる加熱システムの熱媒は、鉱油系、合成系、シリコン系などの熱媒油であることが望ましいが、水、フッ素系熱媒体など他の熱媒であってもよい。そして加熱媒体へ送られる際の状態は、一般的には液体として送られるが、気化状態(蒸気やガス)として送られるものでもよい。