特許第6037465号(P6037465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037465
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】歯車装置及びこれを具えた電動昇降装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/22 20060101AFI20161128BHJP
   F16H 1/14 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F16H1/22
   F16H1/14
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-113840(P2014-113840)
(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公開番号】特開2015-227703(P2015-227703A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150800
【氏名又は名称】株式会社ツバキE&M
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(72)【発明者】
【氏名】徳田 裕
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−140656(JP,A)
【文献】 実開昭51−131576(JP,U)
【文献】 特開平09−004321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/22
F16H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに内蔵されている直交軸歯車を介してトルクが伝達され、該ハウジングから露出している複数の軸と、前記軸の少なくとも1つを軸支し、前記ハウジングに一端が取付けられているブラケットを具え、
前記軸が、ハウジングを貫通している出力軸を含み、
前記直交軸歯車と噛合う歯車を有するブレーキ軸を軸支し、前記ブラケットのいずれかと構成が共通で、前記ハウジングの面に一端が取付けられているブレーキブラケットと、前記ブレーキ軸を制動するブレーキ機構とで構成されるブレーキを具えることを特徴とする、
歯車装置。
【請求項2】
前記ハウジングが前記ブレーキブラケットの取付箇所を複数有する、請求項1の歯車装置。
【請求項3】
モータ、昇降装置、及び前記モータと昇降装置との間でトルクを伝達する歯車装置を含む電動昇降装置において、
前記歯車装置が、ハウジングと、前記ハウジングに内蔵されている直交軸歯車を介してトルクが伝達され、該ハウジングから露出している複数の軸と、前記軸の少なくとも1つを軸支し、前記ハウジングに一端が取付けられているブラケットを具え、
前記軸が、ハウジングを貫通している出力軸を含み、
前記直交軸歯車と噛合う歯車を有するブレーキ軸を軸支し、前記ブラケットのいずれかと構成が共通で、前記ハウジングの面に一端が取付けられているブレーキブラケットと、前記ブレーキ軸を制動するブレーキ機構とで構成されるブレーキを具えることを特徴とする、
電動昇降装置。
【請求項4】
前記ハウジングが前記ブレーキブラケットの取付箇所を複数有する、請求項3の電動昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキを有する歯車装置及びこれを具えた電動昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、電動昇降装置100を示す図である。電動昇降装置100は、モータM、内部に直交軸歯車を内蔵した歯車装置G1,G2,G3、及び昇降装置J1,J2,J3,J4を具えている。モータMからのトルクは、歯車装置G1によって二方向に分けられ、歯車装置G2,G3に伝達される。歯車装置G2,G3に伝達されたトルクは、歯車装置G2,G3によって、さらに、それぞれ二方向に分けられ、各昇降装置J1,J2,J3,J4に伝達される。そして、昇降装置J1,J2,J3,J4に伝達されたトルクはその歯車機構等によって垂直方向の運動に変換され、かくして、電動昇降装置100は、モータMの駆動によって、昇降対象物(図示省略。)を昇降させることができる。
【0003】
電動昇降装置100のような昇降装置には、通常、昇降装置J1,J2,J3,J4が昇降対象物の重量に耐えられずに、その歯車機構等が逆転して、昇降対象物が落下してしまうのを防止するために、ブレーキが設けられている。このブレーキは、モータMや歯車装置G1,G2,G3に予め設けられているのが一般的である。ここで、電動昇降装置に使用される歯車装置に関するものではないが、直交軸歯車を内蔵した歯車装置であって、ブレーキが予め設けられているものの例として、特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−336605号公報
【0005】
特許文献1には、1つの入力軸と、2つの出力軸を具え、入力軸から各出力軸に直交軸歯車を介してトルクが伝達される歯車装置が開示されている。出力軸の先には、それぞれ、車輪が取付けられており、車輪より内側には、ブレーキ機構である電磁ブレーキが備え付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術を用いれば、図5に示す電動昇降装置100の歯車装置G1,G2,G3にブレーキを設けることができる。具体的には、歯車装置G1,G2,G3の出力側ブラケットO1,O2,O3の部分に、電磁ブレーキを内蔵することが考えられる。これにより、電動昇降装置100において、モータMだけでなく、歯車装置G1,G2,G3もブレーキを具えた、いわゆるダブルブレーキ仕様の安全な電動昇降装置を実現することができる。
【0007】
しかし、既に特定の場所に設置されている電動昇降装置100の場合、歯車装置G1,G2,G3の出力側ブラケットO1,O2,O3の部分に、電磁ブレーキを付け加えることは困難である。何故ならば、出力側ブラケットO1,O2,O3の部分に、電磁ブレーキを付け加えた場合、電磁ブレーキの分、寸法が拡大し、その結果、電磁ブレーキを追加した歯車装置と、他の歯車装置、モータ、又は昇降装置との相互の位置関係、すなわち、取合いの調整が必要になるからである。当然、入力側ブラケットI1,I2,I3の部分に電磁ブレーキを付け加えようとした場合も、同様に、取合いの調整が必要になる。
【0008】
また、歯車装置に外付けの電磁ブレーキを設けることも考えられるが、既存の歯車装置に電磁ブレーキを設ける場合、電磁ブレーキ用の部品を新たに製造すると製造コストが掛かるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、連結対象物との取合いの調整が不要な、製造コストを抑えた、ブレーキを具える、或いは付加的にブレーキを具えることができる歯車装置、及びこれを具えた電動昇降装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに内蔵されている直交軸歯車を介してトルクが伝達され、該ハウジングから露出している複数の軸と、前記軸の少なくとも1つを軸支し、前記ハウジングに一端が取付けられているブラケットを具え、
前記軸が、ハウジングを貫通している出力軸を含み、
前記直交軸歯車と噛合う歯車を有するブレーキ軸を軸支し、前記ブラケットのいずれかと構成が共通で、前記ハウジングの面に一端が取付けられているブレーキブラケットと、前記ブレーキ軸を制動するブレーキ機構とで構成されるブレーキを具えることを特徴とする歯車装置、
又は、
モータ、昇降装置、及び前記モータと昇降装置との間でトルクを伝達する歯車装置を含む電動昇降装置において、
前記歯車装置が、ハウジングと、前記ハウジングに内蔵されている直交軸歯車を介してトルクが伝達され、該ハウジングから露出している複数の軸と、前記軸の少なくとも1つを軸支し、前記ハウジングに一端が取付けられているブラケットを具え、
前記軸が、ハウジングを貫通している出力軸を含み、
前記直交軸歯車と噛合う歯車を有するブレーキ軸を軸支し、前記ブラケットのいずれかと構成が共通で、前記ハウジングの面に一端が取付けられているブレーキブラケットと、前記ブレーキ軸を制動するブレーキ機構とで構成されるブレーキを具えることを特徴とする電動昇降装置によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、歯車装置に設けられているブレーキが、ブレーキ軸を軸支しているブレーキブラケットと、ブレーキ軸を制動するブレーキ機構とで構成され、ブレーキブラケットの一端がハウジングに取付けられ、且つ、ブレーキ軸に設けられている歯車が、ハウジングに内蔵されている、入力軸と出力軸の間でトルクを伝達する直交軸歯車と噛合うことにより構成されている。すなわち、入力軸又は出力軸とは別のブレーキ軸を設け、そのブレーキ軸を制動するので、入力軸又は出力軸の位置、入力軸側又は出力軸側の歯車装置の寸法に影響を与えることなく、ブレーキを設けることができる。これにより、モータ、昇降装置、及びモータと昇降装置との間でトルクを伝達する歯車装置を含む電動昇降装置において、当該歯車装置に本発明を適用すれば、その歯車装置と他の装置との取合いの調整をすることなく、歯車装置にブレーキを設けることができる。
【0012】
また、ブレーキブラケットとブラケットの構成が共通で、ブラケットをブレーキブラケットとして転用しているから、ブレーキブラケット用の部品を別途作製する必要がない。そして、ブレーキ軸に設けられている歯車がハウジングに内蔵されている直交軸歯車と噛合う構成のため、ブレーキ軸に入力軸又は出力軸からトルクを伝達させるための別途の歯車機構等を要しない。よって、部品点数の削減を図ることができ、製造コストや在庫コストを極力抑えることができる。
【0013】
また、ハウジングがブレーキブラケットの取付箇所を複数有する構成とすれば、ブレーキブラケットの取付位置の自由度が増し、また、事後的にハウジングに対するブレーキの位置を変更することができるので好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の正面図。
図2】本発明の実施形態の右側面図。
図3】本発明の実施形態の横断面図。
図4】本発明の実施形態のブレーキの縦断面図。
図5】電動昇降装置の例を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を図1〜5を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
まず、図1乃至3を参照して、本発明の実施形態に係る歯車装置10のブレーキ以外の基本的な構成について説明する。歯車装置10は、正面12a、右側面12b、背面12c、左側面12d、上面12e、及び底面12fの六面を有するハウジング12を具え、ハウジング12の底面12f側には、脚部18が取付けられている。また、歯車装置10は、軸13,14(便宜上、軸13を入力軸、軸14を出力軸とする。)を有し、入力軸13は、図3に示されているように、入力側ブラケット16内に嵌込まれている2つのベアリングBによって軸支され、出力軸14は、出力側ブラケット17a,17bに1つずつ嵌込まれているベアリングBによって軸支されている。入力側ブラケット16及び出力側ブラケット17a,17bは、図1,2に示されているように、複数のボルトによってその一端がハウジング12に取付けられている。ここで、入力軸13と出力軸14は、図3に示すように、直交軸歯車15、具体的には、入力軸13に設けられている入力側傘歯車15aと出力軸14に設けられている出力側傘歯車15bが噛合うことにより、これらの間でトルクが伝達される。出力軸14は、ハウジング12の正面12aから背面12cまで貫通しているので、入力軸13から伝えられたトルクは、正面12a側の第一出力部14aと背面12c側の第二出力部14bに伝達される。なお、ハウジング12内部には、直交軸歯車15を潤滑する潤滑油が封入される。
【0017】
次に、歯車装置10のブレーキについて説明する。図4に示すように、ブレーキ20は、ブレーキブラケット26と、ブレーキブラケット26の内部に嵌込まれている2つのベアリングBによって軸支されているブレーキ軸28と、ブレーキ軸28の回転を制動するためのブレーキ機構である電磁ブレーキ22とで構成されている。ブレーキ軸28の、電磁ブレーキ22が位置する方向と反対側の端部には、歯車29が形成されている。また、ブレーキ20には、必要に応じて、電磁ブレーキ22を被覆するカバー24が取付けられる。なお、ブレーキ機構として電磁ブレーキ22以外のものを適用できること、及びブレーキ軸28と歯車29を別体のものにできることは言うまでもない。
【0018】
図1,2に示すように、歯車装置10では、ブレーキ20は、ブレーキブラケット26の一端がハウジング12の上面12eに複数のボルトVによって締結されることにより取付けられている。図示は省略するが、この状態で、ブレーキ軸28の歯車29図4参照。)は、力側傘歯車15と噛合っている。よって、入力軸13又は出力軸14とブレーキ軸28との間でトルクが伝達されるので、ブレーキ軸28を制動することにより、入力軸13及び出力軸14を制動することができる。これにより、ブレーキ軸28に入力軸13又は出力軸14からトルクを伝達させるための別途の歯車機構等を要しないので、部品点数の削減を図ることができる。
【0019】
また、歯車装置10では、ブレーキブラケット26と入力側ブラケット16の構成が共通である。これにより、入力側ブラケット16をブレーキブラケット26として転用できるので、部品点数を削減することができる
【0020】
このように、歯車装置10では、入力軸13又は出力軸14とは別のブレーキ軸28を設け、ブレーキ軸28を電磁ブレーキ22によって制動するので、入力軸13又は出力軸14の位置、入力軸13側又は出力軸14側の歯車装置10の寸法に影響を与えることがない。また、上記に説明したとおり、歯車装置10では、ブレーキ20を設けるための部品点数を比較的削減することができるから、製造コストや在庫コストを極力抑えることができる。
【0021】
本発明は、ブレーキ軸28に設けられている歯車29を、歯車装置10に内蔵されている、入力軸13と出力軸14の間でトルクを伝達する直交軸歯車15の出力側傘歯車15bと噛合わせれば、結果として、入力軸13及び出力軸14を制動することができる。ブレーキ軸28の歯車29は、入力側傘歯車15aと出力側傘歯車15bの噛合部を除いて、入力側傘歯車15aのいずれか又は出力側傘歯車15bの周方向のいずれかの位置でこれらと噛合わせることができるので、ハウジング12に対するブレーキ20の取付位置を適宜決定することができる。なお、図1,2に示すように、入力軸13又は出力軸14に連結する対象物との関係でブレーキ20が妨げにならないように、入力軸13又は出力軸14が露出している面以外の面にブレーキブラケット26を取付けるのが好ましい。
【0022】
また、ハウジング12にブレーキブラケット26の取付箇所、すなわち、ブレーキブラケット26を取付けるためのボルト用孔を有する面を複数設けてもよい。歯車装置10の場合、この取付箇所は、上面12e以外に、左側面12d及び底面12fに設けることができる。要するに、ブレーキ軸28に設けられる歯車29を、入力軸13と出力軸14の間でトルクを伝達する直交軸歯車15に噛合わせることができるのであれば、ハウジング12の任意の位置にブレーキブラケット26の取付箇所を設けることができる。これにより、ブレーキブラケット26の取付位置の自由度が増し、また、事後的にハウジング12に対するブレーキ20の位置を変更することができる。
【0023】
なお、図示しての説明は省略するが、上記で説明した歯車装置10の他にも、例えば、出力側傘歯車15bに噛合う別の傘歯車を設け、左側面12dの方向へ軸を貫通させる等の構成としてもよい。要するに、軸を軸支するブラケットがハウジング12に取付けられており、且つ、ブレーキ軸28に設けられる歯車29を噛合わせるための直交軸歯車15を有する歯車装置であれば、様々な歯車装置に本発明を適用することができる。
【0024】
本発明の構成を用いれば、当初、ブレーキが設けられていなかった歯車装置にも、付加的にブレーキを設けることが容易に行える。具体的には、ブレーキ軸28に設けられる歯車29を、複数の軸間でトルクを伝達させる直交軸歯車に噛合わせることができるハウジングの任意の位置にブレーキブラケット26の取付箇所を事後的に設け、歯車29を当該直交軸歯車に噛合わせた状態で、ブレーキブラケット26をハウジングに取付ければよい。これにより、具体的な図示は省略するが、例えば、図5に示す電動昇降装置100において、モータM、歯車装置G1乃至G3、及び昇降蔵置J1乃至J4の相互の取合いの調整を要することなく、歯車装置G1,G2,又はG3に簡便にブレーキを付加的に設けることができる。
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、連結対象物との取合いの調整が不要な、製造コストを抑えた、ブレーキを具える、或いは付加的にブレーキを具えることができる歯車装置、及びこれを具えた電動昇降装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
10,G1,G2,G3 歯車装置
12 ハウジング
13,14 軸(入力軸、出力軸)
15 直交軸歯車
16,17a,17b ブラケット(入力側、出力側)
20 ブレーキ
22 ブレーキ機構
26 ブレーキブラケット
28 ブレーキ軸
29 歯車
100 電動昇降装置
M モータ
J1,J2,J3,J4 昇降装置
図1
図2
図3
図4
図5