(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037513
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】車両のベース構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/09 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
B62D21/09 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-15572(P2014-15572)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-140145(P2015-140145A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229900
【氏名又は名称】日本フルハーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】及川 和俊
(72)【発明者】
【氏名】黒▲崎▼ 哲
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−135680(JP,U)
【文献】
特開昭57−004476(JP,A)
【文献】
実開昭56−075075(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブが搭載される前端部から後方へ延びる左右1対のシャシフレームの前記キャブの後方領域において、前記シャシフレームの平面状の上面から部分的に突起部が突出するとともに、前記シャシフレームに構造物が搭載される車両のベース構造であって、
前記突起部の突出高さ以上の板厚を有し、前記シャシフレームの前記後方領域の前記上面に載置されて前後方向に延びる左右1対の樹脂製長板状のスペーサと、
前記スペーサの上面に載置されて前後方向に延び、前記シャシフレームに対して固定される左右1対のサブフレームと、を備え、
前記構造物は、前記左右のサブフレームに載置されて該サブフレームに結合され、
前記サブフレームの前端部が載置される前記スペーサの前端部の下面又は上面には、前記スペーサの前端から後斜め下方又は後斜め上方に傾斜する傾斜面が形成され、
前記スペーサの前端は、前記サブフレームの前端よりも後方に配置されている
ことを特徴とする車両のベース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のベース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貨物車両の既設のシャシフレーム上にサブフレームを一体的に結合し、サブフレーム上に重量の大な特装体を架装する車体フレーム構造が記載されている。このような車体フレーム構造において、サブフレームの前端縁では車体フレームの応力集中が発生するため、サブフレームの前端部の剛性を徐々に減少させるような形状にすべく、前端部に側面視で前端開放のホーク状の溝を設けたり、前端部下面に前上がりの傾斜面を設けたり、前端部上面に前上がりの傾斜面を設けるなどしている。
【0003】
【特許文献1】特許第4057836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造では、長尺で大型の重量物であるサブフレームの前端部に溝や傾斜面を形成しなければならず、加工が煩雑である。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、サブフレームの前端部からシャシフレームに作用する荷重の応力集中を、煩雑な加工を要することなく緩和することが可能な車両のベース構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、キャブが搭載される前端部から後方へ延びる左右1対のシャシフレームのキャブの後方領域において、シャシフレームの平面状の上面から部分的に突起部が突出するとともに、シャシフレームに構造物が搭載される車両のベース構造であって、左右1対の樹脂製長板状のスペーサと左右1対のサブフレームとを備える。
【0007】
各スペーサは、突起部の突出高さ以上の板厚を有し、シャシフレームの後方領域の上面に載置されて前後方向に延びる。各サブフレームは、スペーサの上面に載置されて前後方向に延び、シャシフレームに対して固定される。構造物は、左右のサブフレームに載置されてサブフレームに結合される。
【0008】
サブフレームの前端部が載置されるスペーサの前端部の下面又は上面には、スペーサの前端から後斜め下方又は後斜め上方に傾斜する傾斜面が形成され
、スペーサの前端は、サブフレームの前端よりも後方に配置されている。
【0009】
上記構成では、スペーサの前端部の下面又は上面に傾斜面が形成されているので、サブフレームの前端部からシャシフレームに作用する荷重の応力集中を傾斜面によって緩和することができる。
【0010】
また、サブフレームに比べて軽量なスペーサの前端部に傾斜面を形成すればよいので、加工が容易である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サブフレームの前端部からシャシフレームに作用する荷重の応力集中を、煩雑な加工を要することなく緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の車両のベース構造を示す側面図である。
【
図3】
図1のベース構造を前方から視た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態の車両のベース構造について、図面に基づいて説明する。なお、図中の矢印FRは車両前方を、矢印INは車幅方向内側を、矢印UPは上方をそれぞれ示している。
【0014】
図1及び
図2に示すように、トラックの車体フレームは、前後方向に直線状に延びる左右1対のシャシフレーム1を備える。各シャシフレーム(サイドフレーム)1は、上下方向に沿って立設された側壁2と、側壁2の下端から車幅方向内側へ延びる下壁3と、側壁2の上端から車幅方向内側へ延びる上壁4とを備えた略U状断面を有する。なお、シャシフレーム1は、矩形筒形状であってもよい。
【0015】
左右のシャシフレーム1の前端部にはキャブ30が搭載され、キャブ30の後方領域において、各シャシフレーム1の上壁4の平面状の上面には、シャシフレーム1に補強用の部材等を固定するためのリベットの頭部(突起部)15が部分的に突出している。リベットは、シャシフレーム1の前後方向の複数の所定位置にそれぞれ配置されている。
【0016】
キャブ30の後方領域において、左右のシャシフレーム1の上壁4の前後方向の略全域の上面上には、前後方向に直線状に延びる樹脂製長板状の左右1対のスペーサ31がそれぞれ載置される。各スペーサ31は、リベットの頭部15の突出高さ以上の板厚を有し、スペーサ31には、リベットの頭部15との干渉を回避するための加工が施されている。本実施形態のスペーサ31は、比較的硬質な樹脂材(例えば廃プラスチック)によって形成され、スペーサ31の下面には、リベットの頭部15との干渉を回避するための溝状の凹部32(
図3及び
図4参照)が前後方向の略全域に亘って形成されている。なお、スペーサ31を他の樹脂材(例えば比較的軟質な樹脂材)によって形成してもよく、また、スペーサ31にリベットの頭部15との干渉を回避するために他の加工(例えば孔の形成)を施してもよい。また、スペーサ31をシャシフレーム1の上面に接着剤等によって貼着してもよい。
【0017】
左右のスペーサ31の上面上には、前後方向に直線状に延びる左右1対のサブフレーム(縦根太)5がそれぞれ載置される。各サブフレーム5は、上下方向に沿って立設された側板6と、側板6の下端から車幅方向内側へ延びる下板7と、側板6の上端から下板7と対向して車幅方向内側へ延びる上板8とを備えた略U状断面を有する。スペーサ31が介在することによって、サブフレーム5がリベットの頭部15と干渉せずにシャシフレーム1に搭載される。サブフレーム5の前端は、前後方向と略直交する(側板6、下板7及び上板8と略直交する)ように切断されている。
【0018】
サブフレーム5は、両端に雄ネジ部を有するU状の鋼軸材(例えばUボルト)の両端を鋼板材(例えばワッシャ)に挿通し、雄ネジ部にナットを螺合し締め付けて複数の部材を拘束する締結部材9(
図4に示す)によってシャシフレーム1に結合される。締結部材9の拘束によって、スペーサ31がシャシフレーム1とサブフレーム5との間に強固に挟持される。
【0019】
キャブ30の後方領域において、左右のサブフレーム5の上板8の上面上には、サブフレーム5に跨って交叉する複数のクロスフレーム14が載置され、サブフレーム5とクロスフレーム14とは、アングルクリップ16を介して締結固定される。クロスフレーム14上には、荷台(構造物)10の床板(図示省略)が載置され固定される。
【0020】
図3及び
図4に示すように、サブフレーム5の前端部が載置されるスペーサ31の前端部の下面には、スペーサ31の前端から後斜め下方に傾斜する傾斜面33が形成されている。
【0021】
本実施形態によれば、スペーサ31の前端部の下面に傾斜面33が形成されているので、サブフレーム5の前端部からシャシフレーム1に作用する荷重の応力集中を傾斜面33によって緩和することができる。
【0022】
また、サブフレーム5の前端は、前後方向と略直交するように切断した状態のままであり、サブフレーム5の前端部には、荷重の応力集中を緩和するための特別な加工(例えばサブフレーム5の前端部に傾斜面を形成する加工等)を施しておらず、サブフレーム5に比べて軽量なスペーサ31の前端部に傾斜面33を形成すればよいので、加工が容易である。
【0023】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0024】
例えば、傾斜面33に代えて、
図5に示すように、サブフレーム5の前端部が載置されるスペーサ31の前端部の上面に、スペーサ31の前端から後斜め上方に傾斜する傾斜面34を形成してもよい。この場合も、サブフレーム5の前端部からシャシフレーム1に作用する荷重の応力集中を傾斜面34によって緩和することができる。
【0025】
また、サブフレーム5に載置されて結合される構造物は荷台30に限定されず、他の構造物(例えば箱形の荷室やタンクなど)であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 シャシフレーム
4 上壁
5 サブフレーム
7 下板
10 荷台(構造物)
15 リベットの頭部(突起部)
30 キャブ
31 スペーサ
33,34 傾斜面