(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037519
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】化石燃料発電所の多変数調節のための制御システム
(51)【国際特許分類】
F01D 17/04 20060101AFI20161128BHJP
F01D 17/00 20060101ALI20161128BHJP
F01D 17/10 20060101ALI20161128BHJP
F01D 17/20 20060101ALI20161128BHJP
F01D 17/08 20060101ALI20161128BHJP
F22G 1/02 20060101ALI20161128BHJP
G05B 17/02 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
F01D17/04
F01D17/00 L
F01D17/00 N
F01D17/00 P
F01D17/00 Q
F01D17/10 A
F01D17/20 A
F01D17/08 A
F22G1/02
G05B17/02
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-511910(P2014-511910)
(86)(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公表番号】特表2014-522461(P2014-522461A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】EP2012059898
(87)【国際公開番号】WO2012160206
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】1154589
(32)【優先日】2011年5月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】デュフォッセ、エーヴ
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−85442(JP,A)
【文献】
特開昭59−20507(JP,A)
【文献】
特表2010−507159(JP,A)
【文献】
特許第2563099(JP,B2)
【文献】
特開昭55−93906(JP,A)
【文献】
特開昭55−69707(JP,A)
【文献】
特開昭49−41817(JP,A)
【文献】
特開2004−245143(JP,A)
【文献】
特開昭50−124034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00 − 17/24
F22G 1/02
F22B 35/00 − 35/10
G05B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料から電気を生成するための化石燃料発電所の多変数調節のための制御システムであって、
‐前記発電所はアセンブリ(102)を備え、前記アセンブリ(102)は、ボイラー(103)と、前記ボイラー(103)の補助機関とを備え、作動流体回路への熱源として作用する燃料供給(GC)の対象を形成し、これによって、前記作動流体は前記回路の一部にわたって蒸気相にあり、
‐前記発電所はタービン(114)を備え、前記タービン(114)は蒸気圧(P)および温度(T)の前記蒸気を供給され、前記タービン(114)は電力(W)を生成する交流発電機(116)に機械的に接続され、前記タービン(114)の前記蒸気供給は、前記タービン(114)の上流に配置された調節弁の開度(SR)によって決定され、
‐前記制御システムは、制御変数および指令(PREF)を有する、蒸気圧(P)の調節ループ(200、300)を備え、
‐前記制御システムは、制御変数および指令(WREF)を有する、電力(W)の調節ループ(400)を備える
制御システムにおいて、
前記調節ループ(200、300、400)の少なくとも1つは内部モデル命令タイプに基づき、前記制御システムは制御されるべき物理プロセスの表現を含むということにおいて定義され、前記発電所の内部モデルのパラメータの1つのむだ時間要素τが考慮され、
前記調節ループ(200、300、400)のそれぞれについて、あるループのある変数が、他方のループ内で外乱影響として考慮され、
前記蒸気圧(P)の前記調節ループ(200、300)は、前記燃料供給(GC)と、前記燃料供給(GC)の前記蒸気圧(P)における寄与(P1)との間の伝達関数(HGC−P1)のモデル化チェーン(206、306)を含み、
前記モデル化チェーン(206、306)は、前記蒸気圧(P)の前記調節ループ(200、300)において外乱影響として考慮される電力(W)の前記調節ループ(400)の前記変数を考慮しない、
ことを特徴とする、制御システム。
【請求項2】
前記蒸気圧(P)の前記調節ループ(200、300)は、電力(W)を調節するための前記ループの変数を外乱影響として考慮するための、外乱影響の排除チェーン(202、302)を含む、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記蒸気圧(P)の前記調節ループ内で外乱影響として考慮される、前記電力(W)の前記調節ループ(400)の前記変数は、前記タービン(114)の上流の調節弁の開度(SR)である、請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記燃料供給(GC)と、前記燃料供給(GC)の前記蒸気圧(P)における寄与(P1)との間の前記伝達関数(HGC−P1)の前記モデル化チェーン(206、306)における前記蒸気圧(P)の前記調節ループ(200、300)において、前記むだ時間要素τが考慮される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記燃料供給(GC)と、前記燃料供給(GC)の前記蒸気圧(P)における寄与(P1)との間の伝達関数(HGC−P1)の前記モデル化チェーン(206)は、G1(s)・e−τsの形式であり、ただしG1(s)は一次の安定な関数である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記蒸気圧(P)の前記調節ループ(200)は、蒸気圧(PREF)指令からの外乱影響のない制御変数を決定するための外乱影響のない制御変数の決定チェーン(204)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記蒸気圧(P)の前記調節ループ(200)の前記制御変数は、外乱影響のない前記制御変数の決定チェーン(204)の出力から外乱影響の排除チェーン(202)の出力を減算したものによって達成される燃料供給(GC)である、請求項2を引用する場合の請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記システムは、
‐外乱影響のない制御変数の決定チェーン(204)と、
‐外乱影響の排除チェーン(202)と、
‐前記燃料供給(GC)と、前記燃料供給(GC)の前記蒸気圧(P)における寄与(P1)との間のG1(s)・e−τsの形式の伝達関数(HGC−P1)のモデル化チェーン(206)と
を含み、ただしG1(s)は一次の安定な関数であり、
‐前記外乱影響のない前記制御変数の前記決定チェーン(204)は、蒸気圧指令(PREF)を入力する伝達関数、G1−1(s)・F1(s)のタイプの関数によって構成され、ただしF1(s)はG1(s)の次数以上の次数のフィルタであり、
‐前記外乱影響の排除チェーン(202)は伝達関数G1−1(s)・F2(s)によって構成され、ただしF2(s)はG1(s)の次数以上の次数のフィルタである、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記蒸気圧(P)の前記調節ループ(300)は、遅延のない回帰ループ(316)を含み、
前記遅延のない回帰ループ(316)は、前記燃料供給(GC)の決定において、前記燃料供給(GC)と前記燃料供給(GC)の前記蒸気圧(P)における寄与(P1)との間の伝達関数の前記モデル化チェーン(306)のうち、前記むだ時間要素τから独立した部分を考慮するためのものである、
請求項4に記載の制御システム。
【請求項10】
前記電力(W)の前記調節ループ(400)において外乱影響として考慮される前記蒸気圧(P)の前記調節ループ(200、300)の前記変数は、前記蒸気圧(P)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項11】
前記電力(W)の前記調節ループ(400)は、積分比例調節器(402)と、外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測(404)とを含み、
前記外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測(404)は、前記蒸気圧(P)の前記調節ループ(200)の変数を外乱影響として考慮するためのものである、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記タービン(114)の上流の調節弁の開度(SR)は、前記積分比例調節器(402)の出力から、前記電力(W)の前記調節ループ(400)の外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測(404)の出力を減算したものによって達成される、請求項11に記載の制御システム。
【請求項13】
前記調節ループ(200、300)の、内部モデル命令タイプに基づくパラメータは、適応的調節方法によってオンラインで推定され、
前記適応的調節は、前記制御システムの変数(GC、SR、P)を入力する、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項14】
化石燃料発電所であって、
‐前記化石燃料発電所はアセンブリ(102)を備え、前記アセンブリ(102)は、ボイラー(103)と、前記ボイラー(103)の補助機関とを備え、作動流体回路への熱源として作用する燃料供給(GC)の対象を形成し、これによって、前記作動流体は前記回路の一部にわたって蒸気相にあり、
‐前記化石燃料発電所はタービン(114)を備え、前記タービン(114)は蒸気圧(P)および温度(T)の前記蒸気を供給され、前記タービン(114)は電力(W)を生成する交流発電機(116)に機械的に接続され、前記タービン(114)の前記蒸気供給は、前記タービン(114)の上流に配置された調節弁の開度(SR)によって決定される
化石燃料発電所において、
前記化石燃料発電所は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の制御システムを備えることを特徴とする、化石燃料発電所。
【請求項15】
化石燃料発電所の制御プロセスであって、
‐前記蒸気圧(P)は、蒸気圧(P)の調節ループ(200、300)によって調節され、
‐前記電力は、電力(W)の調節ループ(400)によって調節され、
前記調節ループ(200、300、400)の少なくとも1つは、前記発電所の内部モデルのパラメータの1つのむだ時間要素τを考慮する内部モデル命令タイプに基づき、
前記調節ループ(200、300、400)のそれぞれについて、あるループのある変数が、他方のループ内で外乱影響として考慮される
ことを特徴とする、請求項14に記載の化石燃料発電所の制御プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[概略的技術分野]
本発明は、燃料から電気を生成するための化石燃料発電所のための制御システムに関する。
【0002】
本発明は、より正確には、出力を監視し、過熱蒸気の状態のなんらかの基準が確実に尊重されるようにするための、上述のような発電所の制御装置と、そのようなシステムを備える発電所と、そのような制御システムの実行による発電所の制御プロセスとに関する。
【0003】
本発明は、たとえば石炭火力発電所に適用可能である。
【0004】
[先行技術]
化石燃料発電所の制御には、物理系のいくつかの変数を考慮に入れる必要がある。
【0005】
発電所(
図1はその概略を示す)は、燃料の供給を受ける熱源から電気を生成する。熱の生成は熱源の燃料供給GCによって制御される(ここではボイラー103)。この熱は、回路内を循環する作動流体を液体状態から気体状態に変化させ、回路の一部にわたって作動流体が蒸気相にあるようにするために、作動流体に伝達される。調整弁(その状態はそれらの開度SRによって定義される)は、タービン114の供給を調節可能である。その入力において、蒸気の状態は、ある圧力Pと、ある温度Tによって定義される。この蒸気は、交流発電機(alternator)116に機械的に接続されたタービン114の回転を可能にし、交流発電機116が電力Wを生成する。
【0006】
図1に示される発電所は、以下の記載においてより詳しく説明される。
【0007】
そのような発電所の命令を実現するための最も伝統的な手法は、整合された様々な、PI(積分比例(integral proportional))タイプの単変数調節器を用いることを含む。調節器PIは、指令値と測定値との間の誤差を調節することを可能にする閉ループ調節である。調節器PIは、誤差に、比例的かつ積分的な二重の作用を及ぼす。(すなわち、誤差に固定された係数、利得を乗算する。ある時間的スパンにわたって誤差を積分し、積分された値を別の固定された係数で除算する。)このように、システムの各可変調節器は入力および出力を有する。
【0008】
問題のシステムは、多変数の特性を有する(すなわち、少なくとも1つの入力が、いくつかの出力に影響を及ぼす)。上述のような単変数調節器を持つ多変数システムでは、時間とともに安定性が大きく影響を受ける。これと同じ多変数特性が、パラメータ化を困難にする。また、熱発電所の性能は、高い負荷と低い負荷との間で変化する。したがって、調節は、単変数調節器によって許容されない頑強性基準に応じなければならない。
【0009】
また、H∞タイプの多変数調節器を利用することも可能である。この方法は、線形なシステムの数学的基準に従って最適な指令を設計できるようにする。しかしながら、そのようなシステムによって制御される化石燃料発電所の性能は、完全に満足できるものではない。
【0010】
従来技術に存在する別の手法は、予測的指令を実行することを含む。このような制御は、二次のコスト関数の最小値をリアルタイムで計算することを必要とする。計算および記憶に必要な容量は、しばしば、既存の施設では利用不可能なものとなる。また、この手法は、導入するのに大量の手段を必要とする。
【0011】
したがって、本発明の目的のひとつは、これらの不利益を解消する発電所制御システムを提案することである。
【0012】
したがって、本発明の目的のひとつは、より正確には、良好なパワー力学(power dynamics)のための調節を提供する発電所制御システム(頑強性、安定性および迅速性の興味ある特性を持つもの)を提案することである。
【0013】
本発明の別の目的は、この制御システムが既存の化石燃料発電所に容易に導入可能であるということである。
【0014】
[発明の説明]
本発明は、これらの目的を達成することを提案する。
【0015】
この目的のために、第1の態様によって、燃料から電気を生成するための化石燃料発電所の多変数調節のための制御システムが提案され、
‐アセンブリを備え、前記アセンブリは、ボイラーとその補助機関とを備え、作動流体回路における熱源として作用する燃料供給の対象を形成し、これによって、後者は前記回路の一部にわたって蒸気相にあり、
‐タービンを備え、前記タービンは蒸気圧および温度の前記蒸気によって供給され、前記タービンは電力を生成する交流発電機に機械的に接続され、前記タービンの前記蒸気供給は、前記タービンの上流に配置された調節弁の開度によって決定され、
‐前記システムは、制御変数および指令を有し蒸気圧を調節するためのループを備え、
‐前記システムは、制御変数および指令を有し電力を調節するためのループを備え、
前記制御ループの少なくとも1つは内部モデル命令タイプに基づき、前記発電所の前記内部モデルのパラメータの1つのむだ時間要素(pure delay)τを考慮し、
前記調節ループのそれぞれについて、あるループのある変数が、他方のループ内で外乱影響として考慮される。
【0016】
前記第1の実施態様による本発明は、以下の特性(単独で、または技術的に可能な任意の組合せで)により有利に完成される。
‐前記蒸気圧調節ループは、電力を調節するための前記ループの変数を外乱影響として考慮するための、外乱影響の排除チェーンを含む。
‐前記蒸気圧の前記調節ループ内で外乱影響として考慮される、電力を調節するためのループの前記変数は、前記タービンの上流の調節弁の開度である。
‐前記蒸気圧の前記調節ループは、前記燃料供給と、前記燃料供給の前記蒸気圧における寄与との間の伝達関数のモデル化チェーンを含み、前記モデル化チェーンは、前記蒸気圧の前記調節ループにおいて外乱影響として考慮される電力を調節するためのループの前記変数を考慮しない。
‐前記燃料供給と、前記燃料供給の前記蒸気圧における寄与との間の前記伝達関数の前記モデル化チェーンにおける前記蒸気圧の前記調節ループにおいて、前記むだ時間要素τが考慮される。
‐前記燃料供給と、前記燃料供給の前記蒸気圧における寄与との間の伝達関数の前記モデル化チェーンは、G
1(s)・e
−τsの形式であり、ただしG
1(s)は一次の安定な関数である。
‐前記蒸気圧の前記調節ループは、蒸気圧指令からの外乱影響のない制御変数を決定するための外乱影響のない制御変数の決定チェーンを含む。
‐前記蒸気圧の前記調節ループの前記制御変数は、外乱影響のない制御変数の決定チェーンの出力から外乱影響の排除チェーンの出力を減算したものによって達成される燃料供給である。
‐前記システムは、
・外乱影響のない制御変数の決定チェーンと、
・外乱影響の排除チェーンと、
・G
1(s)・e
−τsの形式の前記燃料供給と前記燃料供給の前記蒸気圧における寄与との間の伝達関数のモデル化チェーンと
を含み、ただしG
1(s)は一次の安定な関数であり、
・前記外乱影響のない前記制御変数の前記決定チェーンは、蒸気圧指令を入力する伝達関数、G
1−1(s)・F
1(s)のタイプの関数によって構成され、ただしF
1(s)はG
1(s)の次数以上の次数のフィルタであり、
・前記外乱影響の排除チェーンは伝達関数G
1−1(s)・F
2(s)によって構成され、ただしF
2(s)はG
1(s)の次数以上の次数のフィルタである。
‐前記蒸気圧調節ループは、遅延のない回帰ループを含み、前記遅延のない回帰ループは、前記燃料供給の決定において、前記燃料供給と前記燃料供給の前記蒸気圧における寄与との間の伝達関数の前記モデル化チェーンのうち、前記むだ時間要素τから独立した部分を考慮するためのものである。
‐電力を調節するための前記ループにおいて外乱影響として考慮される前記圧力調節ループの前記変数は、前記蒸気圧である。
‐電力を調節するための前記ループは、積分比例調節器と、外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測とを含み、これは、前記蒸気圧の前記調節ループの変数を外乱影響として考慮するためのものである。
‐前記タービンの上流の調節弁の開度は、前記積分比例調節器の出力から、前記電力の前記調節ループの外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測の出力を減算したものによって達成される。
‐前記調節ループの、内部モデル命令タイプに基づくパラメータは、適応的調節方法によってオンラインで推定され、前記適応的調節は、前記制御システムの変数を入力する。
【0017】
第2の態様によれば、本発明は化石燃料発電所を提案し、
‐前記化石燃料発電所はアセンブリを備え、前記アセンブリは、ボイラーとその補助機関とを備え、作動流体回路への熱源として作用する燃料供給の対象を形成し、これによって、後者は前記回路の一部にわたって蒸気相にあり、
‐前記化石燃料発電所はタービンを備え、前記タービンは蒸気圧および温度の前記蒸気を供給され、前記タービンは電力を生成する交流発電機に機械的に接続され、前記タービンの前記蒸気供給は、前記タービンの上流に配置された調節弁の開度によって決定され、
‐前記化石燃料発電所は、前記第1の態様による制御システムを備える。
【0018】
第3の態様によれば、本発明は第2の態様による化石燃料発電所の制御プロセスを提案し、
‐前記蒸気圧は、蒸気圧を調節するためのループによって調節され、
‐前記電力は、電力を調節するためのループによって調節され、
前記調節ループの少なくとも1つは、前記発電所の内部モデルのパラメータの1つのむだ時間要素τを考慮する内部モデル命令タイプに基づき、
前記調節ループのそれぞれについて、あるループのある変数が、他方のループ内で外乱影響として考慮される。
【0019】
[図面の提示]
本発明の他の態様、目的および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。また、本発明は、添付の図面(非限定的な例示として与えられる)とともにこの説明が考慮されるときに、この説明に関連してより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】当業者に既知の化石燃料発電所の要約された略図である。
【
図2】本発明によるシステムの第1の実施形態による過熱蒸気圧Pの調節のためのダイヤグラムを例示する。
【
図3】本発明によるシステムの第2の実施形態による過熱蒸気圧Pのための調節ダイヤグラムを例示する。
【
図4】本発明によるシステムの2つの実施形態に対応して生成される電力Wの調節のためのダイヤグラムである。
【
図5】本発明によるシステムの第1の実施形態に対応する適応的調節のためのダイヤグラムである。
【
図6A】本発明の第1の実施形態による制御システムと、H∞タイプのシステムとの比較による、電力の生成の梯形(echelon)に応じたいくつかの大きさの時間的展開の曲線である。
【
図6B】本発明の第1の実施形態による制御システムと、H∞タイプのシステムとの比較による、電力の生成の梯形(echelon)に応じたいくつかの大きさの時間的展開の曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明は、特定の(ただし非限定的な)石炭火力発電所の制御システムの範囲内で、詳細に説明される。
【0022】
[詳細な説明]
図1は、化石燃料発電所100の要約され単純化されたダイヤグラムである。実線の矢印107は、液相および気相双方の作動流体の循環を表す。この作動流体は熱伝達流体であり、水であることが多い。したがって、単純化の利益のために、本明細書の記載において作動流体は水とする。単純化された動作原理は次のようなものである。
【0023】
燃料供給GCは、ボイラー103およびその補助機関を備えるアセンブリ102に燃料を向けさせる。燃料は処置を受け、その後それ自体が燃焼する。燃料の燃焼は熱を放出し(白い矢印105で表す)、これはとくに熱交換器104のチューブ内を循環する水に伝達される。この水は蒸気状態に変化する。バルーン106は液体の水を蒸気から分離し、蒸気は過熱器108のアセンブリ内にある(partant)。過熱器108は、水注入システム110を介して追加の水の注入を受けることができ、そのアクチュエータの1つにより過熱・過熱低減水Q
DSHTの注入の制御が可能になる。
【0024】
アセンブリ108の過熱器内で、水の温度および圧力は急激に上昇する。水は過熱蒸気状態に変化する。この蒸気は、タービンの第1ボディの上流に配置された調節弁112(その開度はパラメータSRにより定義される)を通過してタービン114へと運搬される。調節弁112とタービン114との間において、過熱蒸気は温度Tおよび圧力Pを有する。
【0025】
タービンの高圧ボディHPに入ると、蒸気は緩和(relaxation)を受け、この緩和はタービンホイールの回転を可能にする。その後、水は、平均圧力MPのボディに再合流する前に、再過熱器を介してシステム108に戻り、その後タービンの低圧ボディBP。ボディMPおよびBPの内部では、同様の緩和現象がタービンホイール114の回転を可能にする。このような回転が交流発電機116を駆動し、電力Wを生成する。緩和された蒸気がタービンを通過し終えると、凝縮器118へと許容され、そこで冷却される。その後、それは液体状態となり、新たなサイクルを開始可能である。
【0026】
本出願人は、化石燃料発電所は非線形方程式によって制御され、従来技術の制御システムはその不十分な線形近似を作成していることに気付いた。この非線形性は、とくに、制御されるべき大きさに対する燃料供給GCの効果に影響するむだ時間要素(pure delay)に起因する。
【0027】
また、燃料供給GCは強い電力要求の間に振動するので、ボイラー103と、ボイラー103の排気レベルにおいて存在する浄化要素とに大きなストレスを起こす。
【0028】
本出願人は、本発明が、ボイラーおよび浄化要素に過度のストレスを起こさない燃料供給を生成し、それらのサービス寿命を延長するということに気付いた。また、本発明は、燃料の、搬送、処理および起こり得る加熱の結果として生じる遅延の存在に固有の問題を回避する。
【0029】
石炭火力発電所の制御システムの事象における本発明の第1の実施形態は、
図2および4によって例示される。
【0030】
この実施形態によれば、制御システムは石炭火力発電所に関連し、その動作は上記の
図1に対応する。制御されるべきシステムは多変数タイプのものである。
【0031】
システムへの入力は、
‐タービン上流の調節弁の開度SR(t)
‐石炭供給GC(t)
‐過熱・過熱低減水の注入Q
DSHT(t)
である。
【0032】
システムの出力は、
‐生成される電力W(t)
‐過熱蒸気圧P(t)
‐過熱蒸気の温度T(t)
である。
【0033】
システムの動的性能の特定は、物理法則に基づく、線形化された、以下の各方程式から導出される。
【0034】
‐電力Wについて、W(t)=a・SR(t)+b・P(t)
【0035】
したがって、Wは調節弁の開度SRおよび蒸気圧P(本実施形態では過熱蒸気圧)に線形に依存する。係数aおよびbは、実験的考慮および発電所の特性に従い、かつ、安全性、効率、および設備のサービス寿命の考慮に従って定義される係数である。たとえば、aおよびbは、それぞれ、可能な値として0.77および3.4を持つ。
【0037】
T
1、K
1、T
2およびK
2と、むだ時間要素τは定数である。これらは、実験的考慮および発電所の特性に従い、かつ、安全性、効率、および設備のサービス寿命の考慮に従って定義される。たとえば、可能な例として、これらの定数の値は、それぞれ、T
1=190、K
1=1.8、T
2=193、K
2=−0.326、τ=100である。P
1(t)およびP
2(t)は、それぞれ、蒸気圧Pにおける燃料供給GCおよび調節弁の開度SRの寄与を表す。
【0038】
‐過熱蒸気の温度(T)について、
【数2】
【0039】
本発明のこの実施形態によれば、目的は内部モデル制御方法を発電所に適応させることであり、これは、発電所の制御システムが、制御されるべき物理プロセスの表現を含まなければならないということにおいて定義される。
【0040】
本発明の本実施形態は、
‐
図2に示される、過熱蒸気圧Pの調節ループ200
‐
図4に示される、電力Wの調節ループ400
を備える。
【0041】
調節ループ200および400のそれぞれについて、ループの1変数が、他方のループにおける外乱影響(disturbing influence)として考慮される。また、これらのループはそれぞれ制御変数を含み、この制御変数の動作が発電所の性能を調節する。
【0042】
図2は、説明される本発明の第1の実施形態に対応する過熱蒸気圧Pの調節ループ200を示す。調節ループ200は、外乱影響の排除チェーン202と、外乱影響のない制御変数の決定チェーン204と、伝達関数H
GC−P1(燃料供給GCと、燃料供給GCの蒸気圧Pに対する寄与P1との間のもの)のモデル化チェーン206とを含む。
【0043】
本記載における外乱影響の排除チェーンとは、調節ループにおいて入力変数を外乱影響として考慮し、これを排除することを目的とした調節ループ要素を意味する(すなわち、当該調節ループの制御変数の決定の上流でこれを考慮することにより影響を除外する)。
【0044】
調節ループ200の入力は、指令圧力としての基準圧力P
REFであり、その値は、とくに、発電所の特性に従い、かつ、安全性、効率、および設備のサービス寿命の考慮に従って固定される。調節ループ200の出力は過熱蒸気圧Pであり、タービン114の上流の調節弁の開度SRを、排除すべき外乱影響として考慮する。
【0045】
図2の機能ダイヤグラムは実チェーン208を示す。実チェーン208の伝達関数H
GC−P1およびH
SR−P2は、
図1に記載されるような発電所100の設備の実際の動作を表す。実チェーン208のこの表現は、過熱蒸気圧Pを2つの成分P1およびP2に分解する。圧力の第1の成分P1は、石炭供給GCに依存する成分であり、調節弁の開度SRを考慮しない。したがって、P1は、蒸気圧Pにおける燃料供給GCの寄与を表す。圧力の第2の成分P2は、調節弁の開度SRに依存する成分である。したがって、P2は、蒸気圧Pにおける調節弁SRの開度の寄与を表す。
【0046】
実チェーン208は、ここでは、2つの伝達関数を含む。伝達関数H
GC−P1は、燃料供給GCから蒸気圧Pにおける後者の寄与P1にリンクする関数である。伝達関数H
SR−P2は、調節弁の開度SRから蒸気圧Pにおける後者の寄与P2にリンクする関数である。
【0047】
モデル化チェーン206は、石炭供給GCと、石炭供給GCの蒸気圧Pにおける寄与P1との間の伝達関数H
GC−P1をモデル化する。このモデル化チェーン206は、出力Wの調節ループ400から来る調節弁の開度SRを考慮しない。
【0048】
蒸気圧Pの調節ループ200はむだ時間要素τを考慮する。石炭供給GCと圧力Pとの間のむだ時間要素τは、石炭供給GCと、燃料供給GCの蒸気圧Pにおける寄与P1との間の伝達関数H
GC−P1のモデル化チェーン206において考慮される。伝達関数H
GC−P1のモデル化は、G
1(s)・e
−τsの形式である。ただしG
1(s)は一次の安定な関数であり、可逆である。現時点では、当業者にとって、また本明細書の記載について、変数にsを持つこれらの関数はラプラス変換である。
【0049】
モデル化チェーン206の出力の大きさが蒸気圧Pから減算され、外乱影響の排除チェーン202の入力が取得される。
【0050】
外乱影響のない制御変数の決定チェーン204は、蒸気基準圧力P
REFの指令を入力する伝達関数と、G
1−1(s)・F
1(s)のタイプの関数とによって構成される。ただし、F
1(s)は
【数3】
のタイプのフィルタであり、λ
1>0であり、nはG
1−1(s)の次数より大きい。
【0051】
外乱影響の排除チェーン202は伝達関数G
1−1(s)・F
2(s)によって構成される。ただし、F
2(s)は
【数4】
のタイプのフィルタであり、λ
2>0であり、mはG
1−1(s)の次数より大きい。この結果は、外乱影響のない制御変数の決定チェーン204のものから減算され、石炭供給GCが取得される。
【0052】
要約すると、
図2に示すシステムにおいて、基準圧力指令P
REFは、G
1−1(s)・F
1(s)のタイプの伝達関数を通過し、その後、この伝達関数の出力から、外乱影響の排除チェーン202の出力が減算される。
【0053】
結果として得られる燃料供給GCは、その後、伝達関数H
GC−P1の入力として取得され、その出力が、調節弁の開度SRを入力とする伝達関数H
SR−P2の出力に加算される。
【0054】
P=P
1+P
2であるので、これらの出力(それぞれ、圧力Pにおける燃料供給GCおよび調節弁の開度SRの寄与P
1およびP
2を表す)の和は、これと同じ圧力Pとなる。G
1(s)・e
−τsのタイプのモデル化206の伝達関数は、燃料供給GCを入力として取り、その出力は圧力Pにおいて減算される。
【0055】
この減算の結果は、G
1−1(s)・F
2(s)のタイプの外乱影響の排除伝達関数202に対する入力であり、その出力は、上述のように基準圧力指令P
REFを入力するG
1−1(s)・F
1(s)のタイプの伝達関数204の出力から減算される。
【0056】
図4は、上述の実施形態に対応する電力Wの調節ループ400を示す。電力の調節ループ400は、積分比例調節器402と、外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測404とを含む。
【0057】
調節ループ400は、電力の指令W
REFを入力し、その値は、とくに、発電所負荷および電力需要の関数として、また、発電所の物理的特性の関数として、固定される。
【0058】
調節ループ400の出力は電力Wであり、過熱蒸気圧P(蒸気圧Pの調節ループ200の変数である)を外乱影響として考慮する。
図4の機能ダイヤグラムは実チェーン406を示し、その関数は、
図1に記載されるような発電所100の設備の実際の動作を、調節弁の開度SRと電力Wとの間の伝達関数H
SR−Wの形式で表す。
【0059】
積分比例調節器402は、電力の指令W
REFと、発電所が生成する電力Wとの間の差分εを入力する。
【0060】
外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測404は、電力の基準指令W
REFと、蒸気圧Pとを入力し、後者の変数は排除すべき外乱影響として考慮される。蒸気圧Pは、発電所の内部モデルの係数bによって乗算される。この係数bは、方程式W(t)=a・SR(t)+b・P(t)において、蒸気圧Pを電力Wに接続するものである。この結果は、電力の基準指令W
REFから減算される。
【0061】
この減算の結果は、発電所の内部モデルの係数aによって除算される。この係数aは、方程式W(t)=a・SR(t)+b・P(t)において調節弁の開度SRを電力Wに接続するものである。
【0062】
タービン114の上流の調節弁の開度SRは、積分比例調節器402の出力から、電力Wの調節ループ400の外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測404の出力を減算したものにおいて達成される。
【0063】
このように、調節ループ400によって示される電力Wの調節は、電力指令W
REFの予測と、過熱蒸気圧Pの予測とによって行われる。実際に、電力の性能を司る方程式は、動的な影響がないことを示す。
【0064】
要約すると、
図4に示すシステムにおいて、調節器PIは、電力の基準指令W
REFから電力Wを減算したものを入力する。この調節器は、電力Wのモデル化誤差を排除する。
【0065】
電力の基準指令W
REFから、蒸気圧Pにbを乗算したものを減算したものは、また、外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測404内の係数aによって除算される。
【0066】
この外乱影響の排除チェーンおよび指令フォローアップ予測404の結果は、調節器PIの出力から減算され、調節弁の開度SRを与える。
【0067】
調節弁の開度SRは、電力Wを出力する制御されるべきシステムの伝達関数H
SR−Wに対する入力である。
【0068】
上述のように、本発明によって記載される制御システムは、化石燃料発電所において用いられるプロセスのモデルに基づく。これらのモデルの様々なパラメータは、現場での測定値から導出できる。蒸気圧Pの調節ループ200の伝達関数H
GC−P1およびH
SR−P1を特定するために、たとえばStrejc法が適用可能である。生成される電力Wの伝達関数H
SR−Wについては、最小二乗法を用いることができる。
【0069】
本発明の追加の利点は、以下に
図5によって例示するように、蒸気圧Pの調節ループ200への適応的調節の適用を可能にすることである。パラメータのオンライン推定は、たとえばARX法(外部入力を伴う自己回帰モデルに対応する英語Auto Regressive model with eXternal inputsより)により実行可能である。
【0070】
温度の動的モデル化は信頼性がないので、過熱蒸気の温度制御TはH∞タイプの調節器により実行される。このように、調節器H∞の本質的な頑強性は、まさにこのケースにおいて興味深い。
【0071】
その場合、制御すべき大きさの調整された多変数調節を生成するために、様々な調節規則が関連付けられる。
【0072】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態において記載したものにおいて、
図2に示す蒸気圧Pの調節ループ200を
図3に示す蒸気圧Pの調節ループ300で置き換えたものと等価なシステムに対応する。
【0073】
図3は、以下に記載する本発明の第2の実施形態に対応する、過熱蒸気圧Pの調節ループ300を示す。調節ループ300は、外乱影響の排除チェーン302と、制御変数の決定チェーン304と、伝達関数H
GC−P1(燃料供給GCと、燃料供給GCの蒸気圧Pにおける寄与P1との間のもの)のモデル化チェーン306と、遅延のない回帰ループ316とを含む。
【0074】
調節ループ300は、基準圧力P
REFを圧力指令として入力する。その値は、とくに、発電所の特性に従い、かつ、安全性、効率、および設備のサービス寿命の考慮に従って固定される。
【0075】
調節ループ300は過熱蒸気圧Pを出力し、タービン114の上流の調節弁の開度SRを、排除すべき外乱として考慮する。
図3の機能ダイヤグラムは実チェーン308を示す。実チェーン308の関数H
GC−P1およびH
SR−P2は、
図1に記載されるような発電所100の設備の実際の動作を表す。実チェーン308のこの表現は、過熱蒸気圧Pを2つの成分P1およびP2に分解する。圧力の第1の成分P1は、石炭供給GCに依存する成分であり、調節弁の開度SRを考慮しない。圧力の第2の成分P2は、調節弁の開度SRに依存する成分であり、石炭供給GCを考慮しない。
【0076】
実チェーン308は、ここでは、2つの伝達関数からなる。伝達関数H
GC−P1は、燃料供給GCを、蒸気圧Pにおける後者の寄与P1にリンクする関数である。伝達関数H
SR−P2は、調節弁の開度SRを、蒸気圧Pにおける後者の寄与P2にリンクする関数である。
【0077】
モデル化チェーン306は、石炭供給GCと、石炭供給GCの蒸気圧Pにおける寄与P1との間のH
GC−P1をモデル化する。このモデル化チェーン306は、出力Wの調節ループ400から来る変数SRを考慮しない。
【0078】
蒸気圧Pの調節ループ300はむだ時間要素τを考慮する。むだ時間要素τは、燃料供給GCと、燃料供給GCの蒸気圧Pにおける寄与P1との間の伝達関数H
GC−P1をモデル化するチェーンであるモデル化チェーン306において考慮される。
【0079】
GCとP1との間の伝達関数H
GC−P1のモデル化は、G
1(s)・e
−τsの形式である。ただしG
1(s)は一次の安定な関数であり、可逆である。しかしながら、これは、2つの伝達関数G
1(s)およびe
−τsに分解され、G
1(s)はモデル化チェーン306においてe
−τsの上流に配置され、G
1(s)はむだ時間要素τから独立な要素であり、e
−τsはむだ時間要素に対応する要素である。モデル化チェーン306の出力の大きさは、蒸気圧Pにおいて減算され、外乱影響の排除チェーン302の入力が生成される。
【0080】
圧力Pの調節ループ300は、遅延のない回帰ループ316を含む。遅延のない回帰ループ316は、むだ時間要素τから独立したモデル化の要素に対応するモデル化チェーン306の伝達関数G
1(s)の出力における大きさを入力する。したがって、出力におけるこの大きさは、値G
1(s)・GC(s)を有する。後者の値は、遅延のない回帰ループ316によって、制御変数の決定チェーン304のレベルにおける過熱蒸気圧P
REFの指令から減算される。外乱影響の排除チェーン302は、蒸気圧Pにおいて適用される伝達関数R
2(s)をモデル化する。伝達関数R
2(s)は、外乱影響に対する応答を定義する。R
2(s)は、1−M(s)・e
−L・sの形式である。
【0081】
これは、次の条件を検証する:
‐関数1−M(s)・e
−L・sの各ゼロ点は、G
1(s)の最も遅い各極(the slowest poles)を補償しなければならない
‐M(0)=−1
‐M(s)の各極は、好ましい動力(preferred dynamic)を生成するために配置される。
【0082】
その結果は、過熱蒸気圧の指令P
REFから減算される。
【0083】
制御変数の決定チェーン304は、過熱蒸気圧の指令P
REFを入力する。外乱影響の排除チェーン302の結果と、遅延のない回帰ループ316の結果とが、過熱蒸気圧の指令P
REFから減算される。これらの比較の結果として得られる大きさに、伝達関数R
1(s)を適用することにより、燃料供給GCが達成される。この制御変数の決定チェーン306の伝達関数R
1(s)は、指令フォローアップの動力(dynamic)を定義するものであり、たとえばPID(比例積分微分)タイプの調節器であってもよい。
【0084】
要約すると、
図3に示すシステムにおいて、基準圧力指令P
REFから、外乱影響の排除チェーン302の出力が減算され、その後、遅延のないループ316の出力が減算される。これら2回の減算が完了した結果は、伝達関数R
1(s)を通過し、燃料供給GCを与える。
【0085】
この燃料供給GCは、制御されるべきシステムの伝達関数H
GC−P1を通過し、蒸気圧Pにおける燃料供給GCの寄与P
1を与える。
【0086】
調節弁の開度SRは、制御されるべきシステムの伝達関数H
SR−P2を通過し、蒸気圧Pにおける調節弁の開度SRの寄与P
2を与える。
【0087】
燃料供給GCおよび調節弁の開度Sそれぞれの寄与P
1およびP
2の和が、蒸気圧Pを与える。
【0088】
燃料供給GCは伝達関数G
1(s)を通過する。その出力は、上述のように、遅延のないループ316によって回帰されるとともに、伝達関数e
−τ・sの入力となる(その出力は過熱蒸気圧Pから減算される)。この減算の結果は外乱影響の排除チェーン302の伝達関数R
2(s)を通過し、その出力は上述のように基準圧力指令P
REFから減算される。
【0089】
図5は、第1の実施形態の範囲内で、当業者に既知の適応的調節を実行する可能性を示す。これは、蒸気圧Pの調節ループ200に対する適応的調節の、非限定的な可能な適用を提示する。
【0090】
図5は、システムの変数(蒸気圧Pの調節ループ200に存在する可能性があるもの。たとえば燃料供給GC、調節弁の開度SRおよび蒸気圧P)を入力する適応的調節を示す。
【0091】
これらの変数の測定値から、適応的調節は、蒸気圧Pの調節ループ200のパラメータのオンライン推定を実行することができる(たとえば、外乱影響の排除チェーン202、外乱影響のない制御変数の決定チェーン204、および、燃料供給GCと燃料供給GCの蒸気圧Pにおける寄与P1との間の伝達関数H
GC−P1のモデル化チェーン206の、各伝達関数に存在するもの)。入力変数の測定値は、定期的に着手され(undertaken)、適応的調節によってオンラインで推定されるパラメータによって取得された値を更新する。
【0092】
パラメータのオンライン推定は、たとえばARX法(外部入力を伴う自己回帰モデルに対応する英語Auto Regressive model with eXternal inputsより)により実行可能である。特定の特徴が
図3に示される本発明の第2の実施形態についても、等価な適応的調節が可能である。
【0093】
図6Aおよび6Bは、本発明の第1の実施形態による制御システムによって制御される石炭火力発電所からの応答と、H∞タイプの調節器による制御システムによるものとの間の比較を示す。
【0094】
図6Aは、生成される電力Wおよび蒸気圧Pについて、電力Wの指令の梯形に応じた、本発明による調節(実線)と、H∞タイプの調節(破線)との比較を示す。本発明によるシステムは、出力Wのより良好なフォローアップを可能にし、とくに迅速で、振動を抑制する。155バールの指令に対する振動がより小さいところでは、蒸気圧Pはより良好に調節されている。
【0095】
図6Bは、
図6Aと同じ電力の梯形に応じた燃料供給GCと調節弁の開度SRについての、本発明による調節(実線)と、H∞タイプの調節(破線)との比較を示す。
【0096】
本発明によるシステムは、燃料供給GCにおける振動の顕著な低減を可能にする。この制御品質は、ボイラー103およびその補助機関を備えるアセンブリ102に対するストレスを低減し、浄化要素の最適な活用を可能にする。発電所100の、本発明によるシステムによる調節は、より動的であり、ボイラー103のストレスを確実に低減する。
【0097】
第2の態様によれば、本発明は、化石燃料発電所であって、
‐前記化石燃料発電所はアセンブリ102を備え、前記アセンブリ102は、ボイラー103とその補助機関とを備え、作動流体回路への熱源として作用する燃料供給GCの対象を形成し、これによって、後者は前記回路の一部にわたって蒸気相にあり、
‐前記化石燃料発電所はタービン114を備え、前記タービン114は蒸気圧Pおよび温度Tの前記蒸気を供給され、前記タービン114は電力Wを生成する交流発電機116に機械的に接続され、前記タービン114の前記蒸気供給は、前記タービン114の上流に配置された調節弁の開度SRによって決定され、
‐前記化石燃料発電所は、前記第1の態様による制御システムを備える、
化石燃料発電所を提案する。
【0098】
第3の態様によれば、本発明は、第2の態様による化石燃料発電所の制御プロセスであって、
‐前記蒸気圧Pは、蒸気圧Pを調節するためのループによって調節され、
‐前記電力は、電力Wを調節するためのループによって調節され、
各前記調節ループは発電所の内部モデル制御に基づき、
前記調節ループの1つは、前記発電所の内部モデルのパラメータの1つのむだ時間要素τを考慮し、
前記調節ループのそれぞれについて、あるループのある変数が、他方のループ内で外乱影響として考慮される、化石燃料発電所の制御プロセスを提案する。
【0099】
より一般的には、本発明の第3の態様は、化石燃料発電所における第1の態様による任意の制御システムの実行と、第1の態様による制御プロセスによって実行される化石燃料発電所の任意の制御プロセスとに関連する。