(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037545
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】LEDパッケージ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/52 20100101AFI20161128BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20161128BHJP
【FI】
H01L33/52
H01L33/62
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-137903(P2012-137903)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-3177(P2014-3177A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和裕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政利
(72)【発明者】
【氏名】塚田 謙磁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅登
(72)【発明者】
【氏名】川尻 明宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良崇
【審査官】
工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−050911(JP,A)
【文献】
特開昭61−214444(JP,A)
【文献】
特開2007−311596(JP,A)
【文献】
特開2012−256769(JP,A)
【文献】
特開2013−115070(JP,A)
【文献】
特開2013−145852(JP,A)
【文献】
特開2008−021843(JP,A)
【文献】
特開2010−141293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/52
H01L33/62
H01L21/60−21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載部材上にLED素子が搭載され、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間の配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方が絶縁性樹脂で埋められていると共に、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を接続する配線が該配線経路上に形成されたLEDパッケージにおいて、
前記LED素子側の電極部の表面と前記搭載部材側の電極部の表面との両方又はどちらか一方に、前記絶縁性樹脂の液に対して撥液性のある撥液膜が厚さ100nm以下に薄く形成され、
前記配線経路上にプライマ樹脂層が線状又は帯状に形成され、
前記配線が前記プライマ樹脂層上と前記撥液膜上とに跨がって形成されて該配線が該撥液膜を介して前記電極部に導通していることを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項2】
搭載部材上にLED素子が搭載され、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間の配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方が絶縁性樹脂で埋められていると共に、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を接続する配線が該絶縁性樹脂上に形成されたLEDパッケージにおいて、
前記LED素子側の電極部の表面と前記搭載部材側の電極部の表面との両方又はどちらか一方に導電性材料膜が形成され、
前記導電性材料膜上に前記絶縁性樹脂の液に対して撥液性のある撥液膜が形成され、
前記配線の一部が前記撥液膜上に形成されて該配線が該撥液膜及び前記導電性材料膜を介して前記電極部に導通していることを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項3】
前記配線経路上にプライマ樹脂層が線状又は帯状に形成され、前記配線が前記プライマ樹脂層上と前記撥液膜上とに跨がって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のLEDパッケージ。
【請求項4】
搭載部材上にLED素子を搭載し、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間の配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を絶縁性樹脂で埋めると共に、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を接続する配線を該配線経路上に形成するLEDパッケージの製造方法において、
前記LED素子側の電極部の表面と前記搭載部材側の電極部の表面との両方又はどちらか一方に、前記絶縁性樹脂の液に対して撥液性のある撥液膜を厚さ100nm以下に薄く形成する工程と、
前記撥液膜の形成後に前記配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を前記絶縁性樹脂で埋めて該配線経路をなだらかにする工程と、
前記配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を前記絶縁性樹脂で埋めた後に、該配線経路上にプライマ樹脂層を線状又は帯状に形成する工程と、
前記配線を前記プライマ樹脂層上と前記撥液膜上とに跨がって形成することで該配線を該撥液膜を介して前記電極部に導通させる工程と
を含むことを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項5】
搭載部材上にLED素子を搭載し、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間の配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を絶縁性樹脂で埋めると共に、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を接続する配線を該配線経路上に形成するLEDパッケージの製造方法において、
予め前記絶縁性樹脂の液に対して撥液性のある撥液膜が厚さ100nm以下に薄く形成されたLED素子と予め電極部の表面に前記絶縁性樹脂の液に対して撥液性のある撥液膜が厚さ100nm以下に薄く形成された搭載部材との両方又はどちらか一方を使用し、
前記配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を前記絶縁性樹脂で埋めて該配線経路をなだらかにする工程と、
前記配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を前記絶縁性樹脂で埋めた後に、該配線経路上にプライマ樹脂層を線状又は帯状に形成する工程と、
前記配線を前記プライマ樹脂層上と前記撥液膜上とに跨がって形成することで該配線を該撥液膜を介して前記電極部に導通させる工程と
を含むことを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項6】
搭載部材上にLED素子を搭載し、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間の配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を絶縁性樹脂で埋めると共に、該LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を接続する配線を該配線経路上に形成するLEDパッケージの製造方法において、
前記LED素子側の電極部の表面と前記搭載部材側の電極部の表面との両方又はどちらか一方に導電性材料を塗布又は印刷して導電性材料膜を形成する工程と、
前記導電性材料膜上に前記絶縁性樹脂の液に対して撥液性のある撥液膜を形成する工程と、
前記撥液膜の形成後に前記配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を前記絶縁性樹脂で埋めて該配線経路をなだらかにする工程と、
前記配線を前記配線経路上と前記撥液膜上とに跨がって形成することで該配線を該撥液膜及び前記導電性材料膜を介して前記電極部に導通させる工程と
を含むことを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記配線を形成する前に前記撥液膜を焼成又は光照射することで該撥液膜の組成成分を分解・蒸発させて該撥液膜の膜厚を薄くすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項8】
前記配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を前記絶縁性樹脂で埋めた後に、該配線経路上にプライマ樹脂層を線状又は帯状に形成した後、該プライマ樹脂層上と前記撥液膜上とに跨がって前記配線を形成することを特徴とする請求項6に記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項9】
前記撥液膜を形成する前に前記LED素子側の電極部の表面と前記搭載部材側の電極部の表面との両方又はどちらか一方に導電性材料を塗布又は印刷して導電性材料膜を形成した後、該導電性材料膜上に前記撥液膜を形成することを特徴とする請求項4に記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項10】
前記配線を厚膜法で形成して焼成することを特徴とする請求項4乃至9のいずれかに記載のLEDパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載部材上に搭載した
LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を接続する配線の接続信頼性を向上させた
LEDパッケージ及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子の実装工程では、半導体素子を搭載部材(回路基板、リードフレーム等)にダイボンドした後に、該半導体素子側の電極部と搭載部材側の電極部との間をワイヤボンディングで配線するのが一般的である。
【0003】
しかし、特許文献1(特許第3992038号公報)に記載されているように、ワイヤボンディングを行うときの機械的なストレスによって不良が発生する可能性があるため、ワイヤボンディングに代わる接続信頼性の高い実装構造を低コストで実現することを目的として、配線基板上に搭載した半導体素子の周囲に樹脂材料の液をディスペンサで吐出して硬化させて、半導体素子の上面と配線基板の表面との間を傾斜面でつなぐ樹脂スロープを形成した後、半導体素子上面の電極部と配線基板の電極部との間を接続する配線の経路に沿ってインクジェット等の液滴吐出法で導電性インクを吐出して配線を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3992038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構造では、配線基板上に搭載した半導体素子の周囲に樹脂材料の液をディスペンサで吐出して樹脂スロープを形成する際に、吐出した樹脂材料の液が半導体素子上面の電極部上や配線基板の電極部上に濡れ広がって、該電極部の一部又は全部が樹脂材料で覆われてしまうことがあり、該電極部と配線との導通性を十分に確保できない場合がある。
【0006】
この対策として、樹脂材料の吐出量を少なめにして電極部上への樹脂材料の濡れ広がりを防止する必要があり、その結果、半導体素子の電極部と配線基板の電極部との間を接続する配線経路の段差を樹脂スロープで十分に小さくすることができず、該配線経路上に形成した配線が段差の角部で熱応力等により断線する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、搭載部材上に搭載した
LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を接続する配線の接続信頼性を向上できる
LEDパッケージ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、搭載部材上に
LED素子を搭載し、該
LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間の配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を絶縁性樹脂で埋めると共に、該
LED素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を接続する配線を該配線経路上に形成した
LEDパッケージ及びその製造方法において、前記配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を前記絶縁性樹脂で埋める前に前記
LED素子側の電極部の表面と前記搭載部材側の電極部の表面との両方又はどちらか一方に、前記絶縁性樹脂の液に対して撥液性のある撥液膜を厚さ100nm以下に薄く形成し、若しくは予め電極部の表面に前記撥液膜が形成された
LED素子と予め電極部の表面に前記撥液膜が形成された搭載部材との両方又はどちらか一方を使用し、前記配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を前記絶縁性樹脂で埋めた後に
、該配線経路上にプライマ樹脂層を線状又は帯状に形成して、前記配線を該
プライマ樹脂層上と前記撥液膜上とに跨がって形成することで該配線を該撥液膜を介して前記電極部に導通させたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、電極部の表面に、絶縁性樹脂の液に対して撥液性のある撥液膜を形成するため、配線経路の凹部
と段差
との両方又はどちらか一方を絶縁性樹脂で埋める際に、絶縁性樹脂の吐出量を適度に増やしても、絶縁性樹脂の液が電極部上に濡れ広がることを撥液膜によって防止できる。これにより、配線の断線の原因となる配線経路の凹部や段差を十分に絶縁性樹脂で埋めて配線経路を十分になだらかにすることができ、配線経路の段差による配線の断線を防止できると共に、配線と電極部との間の撥液膜を薄くすることで配線と電極部との導通性を確保することができ、配線の接続信頼性を向上できる。
【0010】
この場合、配線経路の凹部と段差との両方又はどちらか一方を絶縁性樹脂で埋めた後に、該配線経路上にプライマ樹脂層を
線状又は帯状に形成して該プライマ樹脂層上
と撥液膜上とに跨がって配線を形成するように
したので、プライマ樹脂層によって配線経路をより一層なだらかにすることがで
き、厚膜法(液滴吐出法や印刷法等)で配線をプライマ樹脂層上に形成しやすくなると共に、配線との密着性等を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、撥液膜を形成する前に
LED素子側の電極部の表面と搭載部材側の電極部の表面との両方又はどちらか一方に導電性材料を塗布又は印刷して導電性材料膜を形成した後、該導電性材料膜上に撥液膜を形成するようにしても良い。このようにすれば、電極部の表面に導電性材料膜を介して撥液膜を形成した構造となるため、導電性材料膜中の導電粒子が撥液膜中に浸透して該撥液膜の電気抵抗値が低下するようになり、電極部と配線との間の導通性を向上させることができる。
【0012】
また、配線経路の凹部
と段差
との両方又はどちらか一方を絶縁性樹脂で埋めた後に、配線を形成する前に撥液膜を焼成又は光照射することで該撥液膜の組成成分を分解・蒸発させて該撥液膜の膜厚を薄くするようにしても良い。このようにしても、電極部と配線との間の撥液膜の電気抵抗値を低下させて電極部と配線との間の導通性を向上させることができる。
【0014】
尚、配線は、薄膜法で形成しても良いし、厚膜法で形成して焼成しても良い。厚膜法で形成した配線を焼成すれば、配線中の有機成分等を分解・蒸発させて配線の電気抵抗値を低下させることができると共に、配線焼成時の熱により撥液膜の組成成分を分解・蒸発させて該撥液膜の膜厚を薄くすることができ、電極部と配線との間の導通性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明
に関連する参考例としての実施例1の素子搭載工程を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は本発明
に関連する参考例としての実施例1の撥液膜形成工程を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は本発明
に関連する参考例としての実施例1の絶縁性樹脂埋込み工程を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は本発明
に関連する参考例としての実施例1の配線形成工程を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は本発明の実施例2のLEDパッケージの構造を示す縦断面図である。
【
図6】
図6は本発明の実施例3のLEDパッケージの構造を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は本発明に関連する参考例としての実施例4のLEDパッケージの構造を示す縦断面図である。
【
図8】
図8は本発明に関連する参考例としての実施例4のLEDパッケージの製造工程を示す工程フローチャートである。
【
図9】
図9は本発明の実施例5のLEDパッケージの構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態をLEDパッケージに適用して具体化した
幾つかの実施
例を説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明
に関連する参考例としての実施例1を
図1乃至
図4に基づいて説明する。
まず、
図4を参照してLEDパッケージの構造を説明する。
【0018】
搭載部材10は、リードフレーム11に素子搭載凹部12を有するパッケージ本体13を絶縁性樹脂で成形して構成されている。このパッケージ本体13の素子搭載凹部12の底面中央部には、半導体素子であるLED素子14(発光素子)がダイボンディング(接合)されている。素子搭載凹部12の深さ寸法(高さ寸法)は、LED素子14の高さ寸法とほぼ同一に設定され、素子搭載凹部12内に搭載したLED素子14上面の電極部15がパッケージ本体13上面のリードフレーム11の電極部11aとほぼ同じ高さとなっている。
【0019】
LED素子14上面の電極部15とパッケージ本体13上面の電極部11aの表面には、それぞれ後述する絶縁性樹脂16の液に対して撥液性のある撥液膜17が厚さ所定値以下に薄く形成されている。この撥液膜17の形成方法は、厚膜法(インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法又は印刷法等)により、例えば、シラン化合物系、フッ素樹脂系等の撥液性材料の液を吐出又は印刷して、撥液膜17のパターンを描画して乾燥・硬化させれば良い。撥液膜17の膜厚は、後述する配線18と電極部15,11aとの間の導通性を確保できる所定値以下(例えば100nm以下)に形成されている。撥液膜17は、電極部15,11aの表面のみに形成しても良いし、電極部15,11aからその周辺部にはみ出すように形成しても良い。要は、少なくとも電極部15,11aの表面に撥液膜17を形成すれば良い。
【0020】
パッケージ本体13の素子搭載凹部12内のうちのLED素子14の周囲の隙間(凹部)に、透明な絶縁性樹脂16が充填されて透明な埋込み樹脂層が形成されている。これにより、LED素子14上面の電極部15とパッケージ本体13上面の電極部11aとの間をつなぐ配線経路は、素子搭載凹部12内のLED素子14の周囲の隙間に充填した絶縁性樹脂16により段差(凹凸)が小さくなってなだらかになっている。
【0021】
LED素子14上面の電極部15とパッケージ本体13上面の電極部11aとの間の配線経路には、配線18が電極部15,11a上の撥液膜17に重ねて形成され、該配線18が該撥液膜17を介して電極部15,11aに導通した状態となっている。この配線18の形成方法は、インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法又は印刷法により導電性のインク(Ag等の導体粒子を含むインク)を吐出又は印刷して配線18のパターンを描画し、これを乾燥して焼成すれば良い。
尚、搭載部材10の上側部分は、LED素子14と配線18を封止する透明な絶縁封止材でモールドされる。
【0022】
次に、上記構成のLEDパッケージの製造方法を説明する。
搭載部材10の形成後に、素子搭載工程に進み、
図1に示すように、パッケージ本体13の素子搭載凹部12の底面中央部に、LED素子14がダイボンディング(接合)する。
【0023】
この後、撥液膜形成工程に移行し、
図2に示すように、LED素子14上面の電極部15の表面とパッケージ本体13上面の電極部11aの表面に、厚膜法(インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法又は印刷法)により撥液性材料の液を吐出又は印刷して、各電極部15,11aの表面に撥液膜17のパターンを描画して乾燥させる。
【0024】
尚、LED素子14上面の電極部15の表面に撥液膜17を形成する工程は、LED素子14をパッケージ本体13の素子搭載凹部12にダイボンディングする前に行っても良い。
【0025】
また、LED素子14の製造工程や、搭載部材10の製造工程で、電極部15,11aの表面に撥液膜17を形成しても良い。つまり、電極部15,11aの表面に撥液膜17を形成する工程は、LED素子14の製造元や搭載部材10の製造元で行っても良く、これらの製造元から撥液膜17付きのLED素子14や搭載部材10を入手して、以下の工程を実行するようにしても良い。
【0026】
この後、撥液膜焼成工程に移行し、撥液膜17を所定温度で焼成して、該撥液膜17の組成成分を分解・蒸発させて該撥液膜17の膜厚を薄くする。この際、撥液膜17の焼成温度は、配線18の焼成温度又はそれ以下の温度とすれば良い。尚、撥液膜17の焼成に代えて、紫外線等の光を撥液膜17に照射することで、該撥液膜17の組成成分を分解・蒸発させて該撥液膜17の膜厚を薄くするようにしても良い。
この撥液膜焼成工程についても、LED素子14の製造元や搭載部材10の製造元で行っても良い。
【0027】
この後、絶縁性樹脂埋込み工程に移行し、
図3に示すように、パッケージ本体13の素子搭載凹部12内のうちのLED素子14の周囲の隙間(凹部)に、透明な絶縁性樹脂16の液をインクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法により充填して乾燥・硬化させて透明な絶縁性樹脂16の埋込み層を形成する。この際、素子搭載凹部12内に充填した絶縁性樹脂16の液の一部が素子搭載凹部12から溢れて各電極部15,11aの縁部にまで広がるように絶縁性樹脂16の吐出量を設定することで、LED素子14上面の電極部15とパッケージ本体13上面の電極部11aとの間の配線経路の段差をできるだけ小さくして該配線経路全体をなだらかにする。
【0028】
このとき、素子搭載凹部12から溢れた絶縁性樹脂16の液が各電極部15,11aの縁部にまで濡れ広がっても、各電極部15,11aの表面は撥液膜17で覆われているため、電極部15,11aの縁部まで濡れ広がった絶縁性樹脂16の液が電極部15,11a上の撥液膜17ではじかれて撥液膜17上に濡れ広がることが阻止される。
【0029】
この後、配線形成工程に移行し、
図4に示すように、LED素子14上面の電極部15とパッケージ本体13上面の電極部11aとの間の配線経路(絶縁性樹脂16の埋込み層上面)に、インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法又は印刷法により導電性のインク(Ag等の導体粒子を含むインク)を吐出又は印刷して配線18のパターンを描画し、これを乾燥して焼成する。この際、配線18の焼成温度は、200℃程度(例えば180℃以上)で、焼成時間は30分〜60分程度とすれば良い。配線18の焼成時の熱により撥液膜17の組成成分を分解・蒸発させて該撥液膜17の膜厚を薄くすることができ、電極部15,11aと配線18との間の導通性も向上させることができる。
【0030】
この後、封止工程に移行し、搭載部材10の上側部分を透明な絶縁封止材でモールドしてLED素子14と配線18を透明な絶縁封止材で封止する。
【0031】
以上説明した本実施例1によれば、LED素子14上面の電極部15の表面とパッケージ本体13上面の電極部11aの表面に、絶縁性樹脂16の液に対して撥液性のある撥液膜17を形成するようにしているため、両電極部15,11a間の配線経路の凹部や段差を絶縁性樹脂16で埋める際に、絶縁性樹脂16の吐出量を適度に増やしても、絶縁性樹脂16の液が電極部15,11a上に濡れ広がることを撥液膜17によって防止できる。これにより、配線18の断線の原因となる配線経路の凹部や段差を十分に絶縁性樹脂16で埋めて配線経路を十分になだらかにすることができ、配線経路の段差による配線18の断線を防止できると共に、配線18と電極部15,11aとの間の撥液膜17を薄くすることで配線18と電極部11aとの導通性を確保することができ、配線18の接続信頼性を向上できる。
【0032】
しかも、本実施例1では、配線18を形成する前に、撥液膜17を焼成(又は光照射)することで、該撥液膜17の組成成分を分解・蒸発させて該撥液膜17の膜厚を薄くするようにしたので、電極部15,11aと配線18との間の撥液膜17の電気抵抗値を低下させて電極部15,11aと配線18との間の導通性を向上させることができる。
【実施例2】
【0033】
次に、
図5を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、上記実施例1と実質的に同じ部分には同じ符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0034】
上記実施例1では、パッケージ本体13の素子搭載凹部12内に充填した絶縁性樹脂16の埋込み層上に配線18を直接形成するようにしたが、絶縁性樹脂16の埋込み層のみでは、LED素子14上面の電極部15とパッケージ本体13上面の電極部11aとの間の配線経路の段差を完全には埋めきれずに段差が少し残る場合がある。
【0035】
そこで、
図5に示す本発明の実施例2では、絶縁性樹脂埋込み工程の終了後に、配線18を形成する前に、絶縁性樹脂16の埋込み層上にプライマ樹脂層21を形成して、LED素子14上面の電極部15とパッケージ本体13上面の電極部11aとの間の配線経路の段差をプライマ樹脂層21で更に小さくして配線経路をより一層なだらかにした後、該プライマ樹脂層21上に配線18を形成する。
【0036】
この際、
本実施例2では、プライマ樹脂層21は、配線18を形成する部分のみに線状又は帯状に形成して
いる。要は、少なくとも配線18を形成する下地部分にプライマ樹脂層21を形成すれば良い。プライマ樹脂層21を広範囲に形成する場合は、プライマ樹脂層21がLED素子14の光の放射を遮らないように、透明な材料でプライマ樹脂層21を形成することが望ましい。
【0037】
このプライマ樹脂層21の形成方法は、インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法又は印刷法により、上記絶縁性材料のインクを配線経路上に吐出又は印刷して、プライマ樹脂層21のパターンを配線経路上に線状又は帯状に描画して乾燥・硬化させてプライマ樹脂層21を形成する。この際、プライマ樹脂層21の液が各電極部15,11aの縁部にまで濡れ広がっても、各電極部15,11aの表面は撥液膜17で覆われているため、電極部15,11aの縁部まで濡れ広がったプライマ樹脂層21の液が電極部15,11a上の撥液膜17ではじかれて撥液膜17上に濡れ広がることが阻止される。
【0038】
ここで、プライマ樹脂層21の材料としては、例えば、エポキシ樹脂系、ポリイミド樹脂系、ガラス(SiO
2 )系等の絶縁性材料があり、これらの絶縁性材料の中から、光透過性、耐湿性、絶縁性樹脂16の埋込み層及び配線18に対する密着性等を考慮して選択すれば良い。
【0039】
そして、プライマ樹脂層21の乾燥・硬化後に、インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法又は印刷法により導電性のインク(Ag等の導体粒子を含むインク)をプライマ樹脂層21上に吐出又は印刷して、配線18のパターンをLED素子14上面の電極部15上の撥液膜17とパッケージ本体13上面の電極部11a上の撥液膜17とに跨がってプライマ樹脂層21上に描画し、これを乾燥して焼成して、LED素子14上面の電極部15とパッケージ本体13上面の電極部11aとの間を配線18で接続する。
【0040】
以上説明した本実施例2では、両電極部15,11a間の配線経路の凹部や段差を絶縁性樹脂16で埋めた後に、該配線経路上にプライマ樹脂層21を形成して該プライマ樹脂層21上に配線18を形成するようにしたので、プライマ樹脂層21によって配線経路をより一層なだらかにすることができ、液滴吐出法や印刷法で配線18をプライマ樹脂層21上に形成しやすくなると共に、配線経路の段差による配線18の断線をより確実に防止できる。その他、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0041】
次に、
図6を用いて本発明の実施例3を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同じ部分には同じ符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0042】
上記実施例1,2では、各電極部15,11a上に撥液膜17を直接形成するようにしたが、
図6に示す本発明の実施例3では、撥液膜17を形成する前に、インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法又は印刷法により、各電極部15,11aの表面に導電性材料を塗布又は印刷して導電性材料膜22を形成する。この導電性材料膜22を形成する材料は、配線18を形成する材料と同じ導電性材料を用いれば良い。
【0043】
導電性材料膜22の形成後に、該導電性材料膜22上に、前記実施例1と同様の方法で、撥液膜17を形成する。この後、パッケージ本体13の素子搭載凹部12内に透明な絶縁性樹脂16の液を充填して透明な絶縁性樹脂16の埋込み層を形成した後、該絶縁性樹脂16の埋込み層上に配線18を形成する。或は、前記実施例2と同様に、絶縁性樹脂16の埋込み層上にプライマ樹脂層21を形成して該プライマ樹脂層21上に配線18を形成するようにしても良い。
【0044】
以上説明した本実施例3では、撥液膜17を形成する前に各電極部15,11aの表面に導電性材料を塗布又は印刷して導電性材料膜22を形成した後、該導電性材料膜22上に撥液膜17を形成するようにしたので、導電性材料膜22中の導電粒子が撥液膜17中に浸透して該撥液膜17の電気抵抗値が低下するようになり、電極部15,11aと配線18との間の導通性を向上させることができる。
【実施例4】
【0045】
次に、
図7及び
図8を用いて本発明
に関連する参考例としての実施例4を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同じ部分には同じ符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0046】
本実施例4では、前記実施例1と同様の方法で、素子搭載工程と撥液膜形成工程を実行して、各電極部15,11aの表面に撥液膜17を形成した後、絶縁性樹脂埋込み工程に移行し、パッケージ本体13の素子搭載凹部12内のうちのLED素子14の周囲の隙間(凹部)に、透明な絶縁性樹脂16の液を充填して透明な絶縁性樹脂16の埋込み層を形成する。この際、素子搭載凹部12から溢れた絶縁性樹脂16の液が各電極部15,11aの縁部にまで濡れ広がっても、各電極部15,11aの表面は撥液膜17で覆われているため、電極部15,11aの縁部まで濡れ広がった絶縁性樹脂16の液が電極部15,11a上の撥液膜17ではじかれて撥液膜17上に濡れ広がることが阻止される。
【0047】
尚、絶縁性樹脂埋込み工程後に、前記実施例2のように、絶縁性樹脂16の埋込み層上に透明なプライマ樹脂層21を形成するようにしても良い。
【0048】
この後、撥液膜除去工程に移行し、撥液膜17を焼成又は光照射することで該撥液膜17の組成成分をほぼ全て分解・蒸発させて該撥液膜17を除去した後に、配線形成工程に移行し、両電極部15,11a間の配線経路上に配線18を形成して該配線18を両電極部15,11aに直接接続する。この後、封止工程に移行し、搭載部材10の上側部分を透明な絶縁封止材でモールドして封止する。
【0049】
以上説明した本実施例4では、両電極部15,11a間の配線経路の凹部や段差を絶縁性樹脂16で埋める際に、絶縁性樹脂16の液が電極部15,11a上に濡れ広がることを撥液膜17によって防止しながら、配線18を形成する前に該撥液膜17を除去することができるため、電極部15,11aと配線18との間の導通性を向上させることができる。
【実施例5】
【0050】
次に、
図9を用いて本発明の実施例5を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同じ部分には同じ符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0051】
本実施例5では、素子搭載工程で、搭載部材である配線基板31上にLED素子14をダイボンディングする。この後、撥液膜形成工程に移行し、LED素子14上面の電極部15と配線基板31上面の電極部32の表面に、厚膜法(インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法又は印刷法)により撥液性材料の液を吐出又は印刷して、各電極部15,32の表面に撥液膜17のパターンを描画して乾燥させる。この後、撥液膜焼成工程に移行し、撥液膜17を所定温度で焼成して、該撥液膜17の組成成分を分解・蒸発させて該撥液膜17の膜厚を薄くする。
【0052】
この後、絶縁性樹脂スロープ形成工程に移行し、LED素子14の周囲に、透明な絶縁性樹脂33の液をディスペンサで吐出して、LED素子14上面の電極部15と配線基板31上面の電極部32との間の配線経路の段差を絶縁性樹脂33で埋めて該配線経路を傾斜面でなだらかにつなぐ透明な絶縁性樹脂33のスロープを形成する。この際、絶縁性樹脂33の液が各電極部15,32の縁部にまで濡れ広がっても、各電極部15,32の表面は撥液膜17で覆われているため、電極部15,32の縁部まで濡れ広がった絶縁性樹脂33の液が電極部15,32上の撥液膜17ではじかれて撥液膜17上に濡れ広がることが阻止される。尚、絶縁性樹脂33のスロープ形成後に、該絶縁性樹脂33のスロープ上に透明なプライマ樹脂層を形成するようにしても良い。
【0053】
この後、配線形成工程に移行し、両電極部15,32間の配線経路上(絶縁性樹脂33のスロープ上)に配線18を形成して該配線18を両電極部15,32に接続する。この後、封止工程に移行し、配線基板31の上側部分を透明な絶縁封止材でモールドしてLED素子14と配線18を透明な絶縁封止材で封止する。
【0054】
以上説明した本実施例5でも、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。
尚、上記各実施例1〜5では、配線17を厚膜法(液滴吐出法又は印刷法等)で形成したが、本発明は、これに限定されず、薄膜法又は導電性部材の貼付により形成しても良い。薄膜法は、例えば、ITO等の透明な導電性材料を用いた物理蒸着「PVD」(スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等)、化学蒸着「CVD」(プラズマCVD、熱CVD等)、溶射(プラズマ溶射、アーク溶射等)、めっき法のいずれかを用いて配線18のパターンを形成しても良い。配線18を透明な導電性材料で形成する場合は、線状や帯状に形成しても良いし、面状に形成しても良く、要は、他の導電物に接触してショートしない範囲内で、配線18の位置ずれ等を考慮して配線18の線幅を幅広に形成すれば良い。
【0055】
また、上記各実施例1〜5では、LED素子14上面の電極部15とパッケージ本体13(配線基板31)の上面の電極部11a(32)の両方に撥液膜17を形成したが、どちらか一方の電極部のみに絶縁性樹脂16(33)の液が濡れ広がりやすい構造のものでは、絶縁性樹脂16の液が濡れ広がりやすい方の電極部のみに撥液膜17を形成するようにしても良い。例えば、実施例5(
図9)の構造では、配線基板31上面の電極部32がLED素子14上面の電極部15よりも低い位置に存在するため、高い方のLED素子14上面の電極部15と比べて、低い方の配線基板31上面の電極部32に向かって絶縁性樹脂33の液が濡れ広がりやすい。この点を考慮して、配線基板31上面の電極部32のみに撥液膜17を形成するようにしても良い。
【0056】
その他、本発明は
、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
10…搭載部材、11…リードフレーム、11a…電極部、12…素子搭載凹部、13…パッケージ本体、14…LED素子(半導体素子)、15…電極部、16…絶縁性樹脂、17…撥液膜、18…配線、21…プライマ樹脂層、22…導電性材料膜、31…配線基板(搭載部材)