特許第6037575号(P6037575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037575
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】蒸留ステーション
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/36 20060101AFI20161128BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20161128BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20161128BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20161128BHJP
   B01D 63/10 20060101ALI20161128BHJP
   B01D 3/32 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B01D61/36
   B01D3/14 Z
   B01D63/08
   B01D63/02
   B01D63/10
   B01D3/32 Z
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-530125(P2014-530125)
(86)(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公表番号】特表2014-530089(P2014-530089A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】EP2012064685
(87)【国際公開番号】WO2013037554
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】102011113314.7
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514032887
【氏名又は名称】アーアーアー ウォーター テクノロジーズ アクツィエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハインツェル ヴォルフガング
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−083138(JP,A)
【文献】 特表2004−521734(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0211725(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0264012(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0243549(US,A1)
【文献】 実開昭61−037202(JP,U)
【文献】 特表2009−514668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/36
B01D 3/14
B01D 3/32
B01D 63/02
B01D 63/08
B01D 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離ステージを各々なす複数の設備(14)を含む垂直精留器カラム(16)を備え、前記液体混合物(12)の成分を分離する蒸溜プラント(10)であって、
前記垂直精留器カラム(16)は液体混合物流入口(18)によってストリッパーカラム(20)及び濃縮カラム(22)に分離され、前記液体混合物流入口(18)は前記ストリッパーカラム(20)と前記濃縮カラム(22)との間に位置しており、
蒸発器(24)を備えるタワーサンプ(26)から立ち昇る前記液体混合物(12)からの蒸気の低沸点留分が前記ストリッパーカラム(20)において取り除かれ、前記蒸気は戻り液体(28)から抽出される低沸点留分を用いて前記濃縮カラムにおいて濃縮され、前記戻り液体はタワーヘッド(30)で除去された蒸気が凝縮器(32)内で少なくとも部分的に凝結され、前記精留器カラム(16)に戻されることで生成され、前記戻り液体(28)と2つの分離ステージ間で供給される前記液体混合物(12)とは垂直方向に互いに続いて互いに接続された前記複数の設備(14)に案内され、
前記複数の設備(14)の各々は少なくとも1つの液体通路(34)を備え、前記液体通路は両側部で蒸気透過性及び液密性の膜壁(36)によって少なくとも部分的に前記精留器カラム(16)の蒸気スペース(38)から分離され、
垂直方向に隣接した前記複数の設備(14)は戻り通路(40)を介して互いに接続され、前記戻り通路(40)は、液体の流れ方向(56)に見た上流の設備の液体通路(34)の下部領域に設けられたた液体出口(58)と下流の設備の液体通路の上部領域に設けられた液体入口(60)との間に配置され、前記上流の設備の前記液体出口(58)から開始して前記設備(14)の前記液体通路(34)の各々が液体で完全に満たされるように当該設備で少なくとも最上の可能な液体レベルまで上方へ最初に案内され、
前記戻り通路(40)はU字パイプのように構成され、
U字パイプのように構成された前記戻り通路(40)の流出部(62)の前記上部領域は更なる膜壁(66)によって少なくとも部分的に境界が形成されている通路部(64)を備え、前記更なる膜壁(66)は、両側部で蒸気透過性及び液密性を有し、一方で前記液体と接触し、他方で前記精留器カラム(16)の蒸気スペース(38)と接触することを特徴とする蒸留プラント(10)。
【請求項2】
前記蒸留プラント(10)は、前記設備(14)の前記液体通路(34)の前記膜壁(36)を通過する蒸気を増加させるために前記精留器カラム(16)の蒸気スペース(38)内の絶対圧が低下されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の蒸留プラント(10)。
【請求項3】
少なくとも1つの設備(14)は、少なくとも1つの平膜(36’)を有してほぼ垂直方向に延びた少なくとも1つの液体通路(34)を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の蒸留プラント(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの設備(14)は、螺旋状の膜巻線構造(70)を有する少なくとも1つの液体通路(34)を備え、前記螺旋状の膜巻線構造(70)は少なくとも2つの相互に反対側に設けられた両側部で前記蒸気透過性及び液密性の膜壁(36)によって境界が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載の蒸留プラント(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの設備(14)は、長手中空体(72)の形でぼ垂直方向に延びる少なくとも1つの液体通路(34)を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の蒸留プラント(10)。
【請求項6】
少なくとも1つの設備(14)は、並列に接続されかつ各々がほぼ垂直方向に延びる複数の液体通路(34)を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1記載の蒸留プラント(10)。
【請求項7】
並列に接続された前記複数の液体通路(34)は、互いに水平方向に隣接して配置されていることを特徴とする請求項6記載の蒸留プラント(10)。
【請求項8】
少なくとも1つの設備(14)は複数の液体通路(34)を備え、前記複数の液体通路(34)は、並列に接続され、互いに水平方向に隣接して配置され、平膜(36’)によって少なくとも2つの相互に反対側に設けられた両側部で前記精留器カラム(16)の蒸気スペース(38)から各々分離され、蒸気通路(68)との境界を側部に沿って付ける水平方向に隣接した液体通路(34)の各ペアは相互に対向した平膜(36’)を有し、前記タワーサンプ(26)から立ち昇る蒸気が前記蒸気通路(68)を介して前記精留器カラム(16)の蒸気スペース(38)内に又はそこを通って流れることを特徴とする請求項7記載の蒸留プラント(10)。
【請求項9】
少なくとも1つの設備(14)は複数の液体通路(34)を備え、前記複数の液体通路(34)は、並列に接続され、複数の長手中空体(72)の形で互いに水平方向に隣接して配置され、前記長手中空体(72)の各々の蒸気透過性及び液密性の膜壁(36)は前記タワーサンプ(26)から前記精留器カラム(16)の前記蒸気スペース(38)内に立ち昇る蒸気と接触することを特徴とする請求項7又は8記載の蒸留プラント。
【請求項10】
前記複数の長手中空体(72)は並列に接続され、x方向及びそれに直交するy方向に水平に分配され、前記液体がそれらの上部領域に設けられたx及びy方向のディストリビュータ(74及び76)を介して前記複数の長手中空体に供給され、前記複数の長手中空体から前記液体がそれらの下部領域に設けられたx及びy方向のコレクタ(78及び80)を介して導かれることを特徴とする請求項9記載の蒸留プラント(10)。
【請求項11】
前記タワーサンプ(26)と関連付けられた前記蒸発器(24)は、熱媒体通路(46)と少なくとも1つの液体通路(48)とを有する少なくとも1つの蒸発ユニット(24’)を備え、前記熱媒体通路(46)は熱媒体(42)を流通させ、熱伝導性、蒸気密性及び液密性の壁(44)によって少なくとも部分的に境界が付けられ、前記液体通路(48)は熱伝導性壁(44)に隣接し、前記精留器カラム(16)からの液体により作用され、前記熱伝導性壁(44)と反対側に設けられたその側部で蒸気透過性及び液密性の膜壁(50)によって、前記タワーサンプ(26)の蒸気スペース(52)から分離され、サンプ生成物(54)を前記液体通路(48)から除去することができることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1記載の蒸留プラント(10)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの蒸発ユニット(24’)は前記熱媒体通路(46)の少なくとも2つの相互に反対側に設けられた側部に各々の液体通路(48)を備え、当該液体通路(48)は、熱伝導性、蒸気密性及び液密性の壁(44)によって前記熱媒介通路(46)から分離され、前記精留器カラム(16)からの液体により作用され、前記熱伝導性壁(44)の反対側に設けられたその側部で蒸気透過性及び液密性の膜壁(50)によって、前記タワーサンプ(26)の前記蒸気スペース(52)から分離されていることを特徴と
する請求項11記載の蒸留プラント(10)。
【請求項13】
前記蒸発器(24)は、前記精留器カラムから供給された液体に対して並列に接続された複数の蒸発ユニット(24’)を備えることを特徴とする請求項11又は12記載の蒸留プラント(10)。
【請求項14】
々がほぼ垂直方向に延びる複数の蒸発ユニット(24’)は、互いに水平方向に隣接して配置され、水平方向に隣接する蒸発ユニット(24’)の各対は、互いに対向する平膜(36’)を有し、当該平膜(36’)によってこれらの隣接する蒸発ユニット(24’)の隣接する液体通路(48)は前記タワーサンプ(26)の前記蒸気スペース(52)から分離されていることを特徴とする請求項13記載の蒸留プラント(10)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、複数の設備によって個々の分離ステージに分けられ、また、液体混合物の流入によってストリッパーカラム及び濃縮カラムに分けられる垂直精留器カラムを備え、液体混合物の成分を分離する蒸溜プラントに関し、蒸発器を備えるタワーサンプから立ち昇る液体混合物からの蒸気の低沸点留分が取り除かれ、その蒸気は戻り液体から抽出される低沸点留分で濃縮カラムにおいて濃縮される。戻り液体はタワーヘッドで除去された蒸気が凝縮器内で少なくとも部分的に凝結され、精留器カラムに戻されることで生成され、戻り液体と好ましくは2つの分離ステージ間で供給される液体混合物とは互いに垂直に続いて互いに接続された設備に案内される。
【0002】
精留は、垂直精留器カラム内の蒸気と凝縮液の逆流による液体中の低沸点留分の濃縮である。原則として、蒸発器と凝縮器との間の精留器カラムでの精留は、蒸発器から立ち昇る蒸気が凝縮器から少しずつ出てくる液体とは逆に流れるということに基づいている。蒸気と液体との間に熱伝達及び物質移動がある。この点において、高沸点留分は蒸気から凝縮して液体に移行する。低沸点留分は放出されている凝縮熱のために液体から蒸発して蒸気に移行する。蒸気は低沸点留分で濃縮され、その温度は流れ方向に一定に減少する。液体は高沸点留分で濃縮され、その温度は流れ方向に一定に増加する。
【0003】
熱伝達及び物質移動は、精留器に備えられている設備によって、また、フェーズ境界面及び2つのフェーズの接触時間が増加されることによって強化される。精留器カラムはこれらの設備によって個々の分離ステージに分けられる。
【0004】
精留器カラムは更に液体混合物の流入によってストリッパーカラム及び濃縮カラムに分けられる。この点において、低沸点留分は蒸発器を含むタワーサンプから立ち昇る液体混合物からの蒸気からストリッパーカラムにおいて取り出されるが、その蒸気は戻り液体から抽出される低沸点留分で濃縮カラムにおいて濃縮される。この戻り液体は好ましくはタワーヘッドで除去された蒸気が凝縮器内で少なくとも部分的に凝結され、精留器カラムに戻されることで生成される。戻り液体と好ましくは2つの分離ステージの間で供給される液体混合物とは、互いに垂直に続いて互いに接続された設備に案内される。
【0005】
異なる蒸気圧を有する液体混合物の成分を精留器カラムで分離することができ、2つの液体成分の分離だけが常に可能である。混合物の蒸気中の低沸点留分と液体中の高沸点留分は、液体及び蒸気の逆流によって精留器カラムで濃縮される。加熱された蒸気は上昇するので、精留器カラムは垂直構造で設計されている。
液体混合物の成分を分離するための従来の蒸留プラントは、米国特許出願第2004/0211725A1によって公知である。米国特許出願2006/0213757A1及びドイツ特許出願102005053874A1は、膜蒸留のための装置及び方法を示している。
【0006】
特に物質移動を増加させ、分離効果と共に濃縮比を高めるために、タワーの高さ以上の可能な限り大きいエリアに亘ってできるだけ均一に液体及び蒸気を接触させることが全ての構造の目的である。
【0007】
従来の通常の蒸留プラントにおいては、トレータワーが使用され、その設備はバブルトレイ、トンネルトレイ、バルブトレイ及びスクリーントレイの形で提供される。特に、分離効果、圧力損失、構造物高さ及びプラントコストは設備の評価のための決定的事項である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、主に、上記した種類の改善した蒸留プラントを提供することであり、その蒸留プラントは少なくとも部分的にモジュラーとして構成され、より均一な液体配分、より大きなフェーズ境界面及び2つのフェーズのより長い接触時間が精留器内で、特に可能な限り低い圧力損失で達成される。
【0009】
この目的は、本発明によって、設備の各々が両側部で蒸気透過性及び液密性の膜壁によって精留器カラムの蒸気スペース(空間)から少なくとも部分的に分離されている少なくとも1つの液体通路を含むことにより満たされる。
【0010】
蒸留プラントの少なくとも部分的なモジュール設計は、この設計のために可能である。加えて、特に、より均一な液体配分、より大きなフェーズ境界面及び2つのフェーズのより長い接触時間が精留器カラム内の本発明による設備によって達成される。
【0011】
設備は、れらの液体通路が各々液体で完全に満たされるように互いに接続されている。
【0012】
これは、例えば、液体の流出が絞られ、水のヘッド(先頭)が作られることで明らかに達成され得る。しかしながら、水のヘッドは、精留器カラムの上部の低温領域より高い静圧の結果として、精留器カラムの下部の高温領域により高い圧力及び温度負荷に膜が晒されるという結果となる。
【0013】
本発明によれば、特に、圧力負荷の低減のために、垂直方向に隣接した設備は、各々、戻り通路を介して互いに接続され、戻り通路は液体の流れ方向に見た上流の設備の液体通路の下部領域に設けられたた液体出口と下流の設備の液体通路の上部領域に設けられた液体入口との間に配置され、上流の設備の液体出口から開始して当該設備で少なくとも最上の可能な液体レベルまで上方へ先ず案内される。
【0014】
各設備の液体案内の液体通路(又は複数の液体通路)が液体で完全に満たされることが少なくとも最上の可能な液体レベルへの上流の設備の液体出口で戻り通路の上方案内によって確保される。
【0015】
この点において、戻り通路はUパイプのように構成されている。この点において、本発明によれば、Uパイプのように構成された戻り通路の流出部の上部領域は、更なる膜壁によって少なくとも部分的に境界が形成されている通路部を含み、膜壁は両側部で蒸気透過性及び液密性を有し、一方で液体と接触し、他方で精留器カラムの蒸気スペースと接触する。よって、自由に流出する液体で、各タワー設備でタワー高さを越える液体のジャムを避ける一方、タワー設備の液体の表面位置レベルが常に最大でだけ各膜壁を溢れさせる。この点において、その関係は、高さyに依存する圧力p(y)に対して液体(ρ=一定)の非圧縮性を仮定して、静力学基本式に起因する。
p(h)=ρ・g・h+p(0)
ここで、ρ=液体の密度 g=重力加速度
h=y方向の液体の先頭位置レベル
p(y=0)=液体の先頭表面での圧力
精留器カラムの蒸気スペース内の絶対圧は、好ましくは、設備の液体通路の膜壁を通過する蒸気を増加させるためにそれに応じて低下される。両側部で蒸気透過性、液密性又は微孔性及び疎水性である膜壁で少なくとも部分的に境界とされた各設備において不活性ガスの一部が低減され、それにより蒸気通路は両方向に加速される。既に述べたように、各膜壁は蒸気通過のために両方向に開いている。
【0016】
少なくとも1つの設備は、好ましくは、ほぼ垂直方向に延び、かつ少なくとも1つの平膜を有する少なくとも1つの液体通路を含む。原理的には、設備の全ての液体通路は少なくとも1つのそのような平膜を含むことができる。
【0017】
しかしながら、少なくとも1つの設備は少なくとも1つの液体通路を有し、その液体通路は蒸気透過性及び液密性の膜壁によって少なくとも2つの互いに反対側に設けられた両側部で境界とされている螺旋状の巻線(ワインディング)構造を有する実施例が考えられる。一般的に、精留器カラムの全ての設備は、各々、そのような螺旋状の膜巻線構造を含むことができる。
【0018】
本発明による蒸留プラントの別の実施例によれば、少なくとも1つの設備は、好ましくは、中空膜スレッドの形でほぼ垂直方向に延びる少なくとも1つの液体通路を含むことができる。一般的に、精留器カラムの全ての設備は、各々、複数の中空膜スレッドの形で1つ以上のそのような液体通路を含むことができる。
【0019】
少なくとも1つの設備は、好ましくは、並列に接続されてほぼ垂直方向に延びる複数の液体通路を含んでいる。この点において、並列に接続された液体通路は、特に、互いに隣接して水平方向に配置することができる。一般的に、精留器カラムの全ての設備は、各々、並列に接続されて互いに隣接して水平方向に配置された液体通路を含むことができる。
【0020】
この点において、好ましくは複数の液体通路を含む少なくとも1つの設備が備えられ、その複数の液体通路は、並列に接続され、互いに隣接してほぼ水平方向に配置され、各々、平膜によって少なくとも2つの互いに反対側に設けられた両側部で精留器カラムの蒸気スペースから分離されている。この点において、水平方向に隣接した液体通路の各々対は、好ましくは互いに対向する平膜を有し、平膜はタワーサンプから立ち昇る蒸気が精留器カラムの蒸気スペース内に及びそれを介して流れる蒸気通路との境界をつけている。
【0021】
本発明による蒸留プラントの例示的な好都合な実施例によれば、複数の液体通路を含む少なくとも1つの設備が備えられ、複数の液体通路は並列に接続され、互いに水平方向に隣接して複数の中空膜スレッドの形で配置され、中空膜スレッド各々の蒸気透過性で液密性の膜壁は、タワーサンプから蒸留カラムの蒸気スペース内に立ち昇る蒸気と接触する。
【0022】
この点において、複数の中空膜スレッドを備えることができ、複数の中空膜スレッドは並列に接続され、x方向及びそれに直交するy方向に水平に分配され、液体がそれらの上部領域に設けられたx及びy方向のディストリビュータを介して複数の中空膜スレッドに供給され、それから液体がそれらの下部領域に設けられたx及びy方向のコレクタを介して導かれる。
【0023】
よって、蒸気透過性及び液密性の膜壁は、例えば、平膜、螺旋状膜巻線構造又は中空スレッドを含むことができ、その膜は蒸気通路に対して好適な方向を持っていない。それらは蒸気スペースから膜を介して液体に流れ、凝縮し、かつより高沸点留分を含む蒸気、また、その液体から生成され、かつより低沸点留分を含む蒸気の両方に対して開く。上述のように、蒸気透過性及び液密性の膜壁によって少なくとも2つの互いに反対側に設けられた両側部で各々境界となっている螺旋状膜巻線構造が考えられる。設備14は各々、精留器カラム15と同じ種類のものであっても良い。しかしながら、精留器カラム16は少なくとも部分的に異なる種類の設備を含むことも可能である。
【0024】
精留器カラムの設備は、少なくとも部分的に膜、特に、平膜を用いて単純なモジュール方式で構築することができる。
【0025】
また、少なくとも部分的にタワーサンプと関連付けられた蒸発器のモジュール式設計を可能にするために、本発明による蒸留プラントの好ましい実施例によれば、蒸発器は、熱媒体通路と液体通路とを有する少なくとも1つの蒸発ユニットを備え、熱媒体通路は熱媒体を流通させ、熱伝導性、蒸気密性及び液密性の膜壁によって少なくとも部分的に境界が付けられ、液体通路は熱伝導性壁に隣接し、精留器カラムからの液体により作用され、熱伝導性壁と反対側に設けられたその側部で蒸気透過性及び液密性の膜壁によって、タワーサンプの蒸気スペースから分離され、サンプ生成物を液体通路から除去することができる。
【0026】
この点において、熱媒体通路の少なくとも2つの互いに反対側に設けられた側部に各液体通路を含む少なくとも1つの蒸発ユニットが備えられ、液体通路は前記熱媒介通路から分離されており、精留器カラム又はその設備からの液体により作用され、更に、熱伝導性壁の反対側に設けられたその側部で蒸気透過性及び液密性の膜壁によって、タワーサンプの蒸気スペースから分離されている。
【0027】
蒸発器は、特に、精留器カラムから供給された液体に対して並列に接続された複数の蒸発ユニットを含むことができる。
【0028】
この点において、好ましくは、各々がほぼ垂直に延びる蒸発ユニットは、互いに水平方向に隣接して配置されている。水平方向に隣接する蒸発ユニットの各対は、例えば、互いに対向する平膜を有することができ、その平膜によってこれらの隣接する蒸発ユニットの隣接する液体通路はタワーサンプの蒸気スペースから分離されている。
【0029】
本発明による蒸留プラントは、少なくとも部分的にモジュール式フローシステムとして複数のフレーム要素によって構築することができ、タワーサンプと関連付けられた蒸発器の蒸発ユニットの各熱通路及び各液体通路と共に、特に、精留器カラムの設備の各液体通路等の異なる機能ユニットをそのようなフレーム要素の形で備えることができる。例えば、並列に接続された複数の液体通路を含むカラム設備を形成するために又は蒸発ユニットを形成するために、フレーム要素にはウェブ構造体を設けることができ、ウェブ構造体を介してフレーム要素を互いに接続することができる。フレーム要素は、少なくとも部分的に内部領域を含むことができ、内部領域は外枠(フレーム)によって囲まれ、好ましくは、スペーサ、特にグリッド状のスペーサを設けることができ、各チャネルを形成するために各機能面を少なくとも1つの側部に特に備えることができ、前記機能面はフィルムによって又は膜によって、特に平膜によって各々構成される。
【0030】
本発明は実施例について図面を参照して以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】蒸溜プラントの例示的な実施例の概略図である。
図2】U字パイプのように構成された戻り通路を有する精留器カラムの例示的な設備の概略図である。
図3】並列に接続された複数の液体通路を有し、好ましくは、各々がほぼ垂直方向に延びている精留器カラムの例示的設備の概略図である。
図4】螺旋状の膜巻線構造を有する少なくとも1つの液体通路を含む精留器カラムの例示的な設備の概略図である。
図5】並列に接続された複数の液体通路を有し、好ましくは、複数の中空膜スレッドの形でほぼ垂直方向に延びる精留器カラムの例示的な設備の概略図である。
図6】タワーサンプと関連付けられた蒸発器の例示的な実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は液体混合物12の成分を分離するための蒸留プラント10の例示的な実施例を概略図で示している。
【0033】
蒸留プラント10は垂直精留器カラム16を備え、垂直精留器カラム16は設備14によって個々の分離ステージに分割され、更に液体混合物流入18によってストリッパーカラム20及び濃縮カラム22に分割される垂直精留器カラム16を含む。
【0034】
この点において、蒸発器24を備えたタワーサンプ26から立ち昇る液体混合物からの蒸気から低沸点留分LSがストリッパーカラム20にて取り除かれる一方、濃縮カラム22内の蒸気が戻り液体28から抽出される低沸点留分で濃縮され、戻り液体28はタワーヘッド30で除去された蒸気が凝縮器32内で少なくとも部分的に凝結され、精留器カラム16に戻されることで生成される。
【0035】
戻り液体28と好ましくは2つの分離ステージ間に供給される液体混合物12とは、互いに垂直に続きかつ互いに接続された設備14に案内される。
【0036】
設備14各々は少なくとも1つの液体通路34を備え、液体通路34は両側部で蒸気透過性及び液密性の膜壁36によって精留器カラム16の蒸気スペース38から少なくとも部分的に分離される。
【0037】
図1において矢印LS及びSSによって示されたように、高沸点留分SSは蒸気から凝縮して液体に移行し、低沸点留分LSは放出されている凝縮熱を通して液体から蒸発して蒸気に移行する。
【0038】
設備14は、それらの液体通路34が液体で完全に満たされるように相互に適切に接続されている。この点において、垂直方向に隣接した設備14は図2を参照して以下により詳細に説明されるように、戻り通路40を介して互いに接続することができる。
【0039】
精留器カラム16の蒸気スペース38内の絶対圧は、設備14の液体通路34の膜壁36を介して蒸気を増大させるために適切に低下される。
【0040】
少なくとも1つの設備14は少なくとも1つの液体通路34を備えることができ、液体通路34は好ましくはほぼ垂直方向に延びかつ少なくとも1つの平膜36’を有する。図1による例示的な実施例では、精留器カラム16の全ての設備14は、各々、少なくとも1つの平膜36’を有するそのような少なくとも1つの液体通路34を含む。
【0041】
図4及び図5を参照して以下に更に説明されるように、螺旋状の巻線構造70の少なくとも1つの液体通路34を有する、又は中空膜スレッド72の形の少なくとも1つの液体通路34を有する少なくとも1つの設備14を備えることもできる。
【0042】
また、図1から分かるように、タワーサンプ26と関連付けられた蒸発器24は、熱媒体通路46と少なくとも1つの液体通路48とを有する少なくとも1つの蒸発ユニット24’を備えることができ、熱媒体通路46は熱媒体42を流通させ、熱伝導性、蒸気密性及び液体密性の膜によって部分的に境界とされ、液体通路48は熱伝導性の壁44に隣接し、精留器カラム16又はその設備14からの液体によって作用され、熱伝導性の壁44と反対側に設けられたその側部にて蒸気透過性及び液密性の膜壁50によってタワーサンプ26の蒸気スペース52から分離され、また、液体通路48からサンプ生成物54を取り去ることが可能である。蒸発器24が複数の蒸発ユニット24’を含む場合には、好ましくは共通の熱媒体回路を介してそれらの熱媒体通路46を提供することができる。
【0043】
既に述べたように、精留器カラム16の設備14は、それらの液体通路34が各々完全に液体で満たされるように互いに接続されている。この点において、戻り通路40(図2参照)を介して垂直方向に隣接した設備14を互いに接続することができ、戻り通路40は、液体の流れ方向に見て上流設備の液体通路34の下部領域に設けられた液体出口と、下流設備の液体通路の上部領域に設けられた液体入口60との間に配置され、上部設備の液体出口58から上方に開始して最初はこの設備の少なくとも可能な最上液体レベルにまで案内される。
【0044】
図2を参照して認識することができるように、戻り通路40をU字パイプのように構成することができる。この点において、そのようにU字パイプのように構成された戻り通路40の流出部62の上部領域は通路部64を含むことができ、通路部64は更なる膜壁66によって少なくとも部分的に境界をなし、膜壁66は好ましくはやはり両側部で蒸気透過性及び液密性であり、一方で液体と接触し、他方で精留器カラム16(図1参照)の蒸気スペース38と接触する。
【0045】
図3は並列に接続されかつ好ましくは各々がほぼ垂直方向に延びた複数の液体通路34を有する精留器カラム16の例示的な設備14を示している。この点において、並列に接続された液体通路34は、特に互いに隣接して水平方向に配置することができる。
【0046】
この点において、特に、複数の液体通路34を含む少なくとも1つの設備14が備えられ、複数の液体通路34は、並列に接続され、互いに隣接して水平方向に配置され、平膜36’によって互いに反対側に配置された少なくとも2つの側部で精留器カラム16(図1参照)の蒸気スペース38から各々分離され、水平方向に隣接した液体通路34の各対は好ましくは互いに対向した平膜36’を有し、平膜36’はタワーサンプ26から精留器カラム16の蒸気スペース38内に立ち昇る蒸気が流れる蒸気通路68と側部に沿って境界としている。
【0047】
また、図3を参照して認識することができるように、各設備14の並列に接続されかつ好ましくは垂直にある複数の液体通路34は、液体が並行して流れるように上部領域及び下部領域の両方において各場合に互いに接続することができる。並列に接続されかつ互いに隣接して水平方向に配置された複数の液体通路34を含むそのような設備14では、特に1番目の液体通路34の上部領域に液体入口60を設けることができ、特に最後の液体通路34の下部領域に液体出口58を設けることができる。
【0048】
下部領域又は上部領域における平膜36’には、例えば、各設備14の並列に接続されかつ互いに隣接して水平方向に配置された複数の液体通路34を接続するために対応する孔が設けられている。
【0049】
スタック(積み重ね)構造のような設備14が得られるように、少なくとも部分的に各々が膜の境界を設けている液体通路34を特に並列に接続された複数のフレーム要素から構成することができる。この点において、特に、U字パイプのように各戻り通路40をやはり垂直方向に隣接するスタック(図2参照)間に設けることができる。
【0050】
図4は螺旋状の膜巻線構造70を有する少なくとも1つの液体通路34を含む精留器カラム16の例示的な設備14を概略図において示し、構造70は蒸気透過性及び液密性の膜壁36によって互いに反対側に配置された少なくとも2つの側部で境界されている。図4では、そのような螺旋状の膜巻線構造70の例示的な実施例が平面図で示されている。相互に反対側に配置された少なくとも2つの側部で液体通路34の境界を付けている膜と共に、その螺旋を特に二重の螺旋として構成することができる。その膜通路を2つの端面で閉じることができる。戻り液体28(図1参照)は、この場合に螺旋状の膜巻線構造70に向けて上向きに流れ、一方、螺旋状の膜巻線構造70の下部領域で抜け出る。よって、本実施例では螺旋状の膜巻線構造70の上端の領域に液体入口60を設けることができ、一方、螺旋状の膜巻線構造70の下端の領域に液体出口58を設けることができる。
【0051】
螺旋状の膜巻線構造を各々備えた複数のそのような設備14を垂直方向に互いに上方に配置することができ、特にやはりU字パイプ(図2参照)のように戻り通路40を介して垂直方向に隣接した設備14を互いに接続することができる。
【0052】
精留器カラム16は、例えば、好ましくは、中空膜スレッド72(図5参照)の形でほぼ垂直方向に延びる少なくとも1つの液体通路34を有する少なくとも1つの設備14を含むことができる。
【0053】
図5は並列に接続されかつそのような複数の中空膜スレッド72の形で好ましくはほぼ垂直方向に各々延びる複数の液体通路34を有する精留器カラム16の例示的な設備14を概略図で示しており、蒸気透過性及び液密性の膜壁36はタワーサンプ26から精留器カラム16(図1参照)の蒸気スペース28内に立ち昇る蒸気に各々接触する。
【0054】
図5について認識することができるように、各設備14は特に複数の中空膜スレッド72を備えることができ、複数の中空膜スレッド72は、並列に接続され、x方向に及びそれに垂直なy方向に水平に分配され、液体は上部領域に各々設けられたx及びy方向のディストリビュータ74及び76を介して複数の中空膜スレッド72に供給され、複数の中空膜スレッド72から液体は下部領域に各々設けられたx及びy方向のコレクタを介して排出される。
【0055】
並列に接続されたそのような複数の中空膜スレッド72を備えるそのような複数の設備14を垂直方向に互いに上方に配置することができ、特にやはりU字パイプ(図2参照)のように戻り通路40を介して垂直方向に隣接した設備14を互いに接続することができる。
【0056】
タワーサンプ26と関連付けられた蒸発器24は少なくとも1つの蒸気ユニット24’を備え、蒸気ユニット24’は熱媒体通路46の互いに反対側に配置された少なくとも2つの側部に液体通路48を各々含み、液体通路48は熱伝導性、蒸気密性及び液密性の壁44によって熱媒体通路46から分離され、精留器カラム16又はその設備14からの液体によって作用され、蒸気透過性及び液密性がある膜壁50によって熱伝導性の壁44とは反対側に設けられた側部でタワーサンプ26の蒸気スペース52から分離されている。
【0057】
図6はそのような蒸発器24の例示的な実施例を概略図で示しており、蒸発器24はタワーサンプ26(図1参照)と関連付けられ、精留器カラム16又はその設備14からの供給液体に対して並列に接続された複数の蒸気ユニット24’を有する。
【0058】
図6に示された実施例において、好ましくは各々がほぼ垂直に延びる蒸発ユニット24’は、互いに隣接して水平方向に配置され、水平方向に隣接した蒸発ユニット24’の各組は好ましくは互いに対向する平膜36’を有し、それによってこれらの隣接した蒸発ユニット24’の隣接した複数の液体通路48がタワーサンプ26の蒸気スペース52から分離されている。
【0059】
蒸留プラント10は、少なくとも部分的にモジュール式フローシステムとして複数のフレーム要素によって構築することができ、タワーサンプ26と関連付けられた蒸発器24の蒸発ユニット24’の各熱媒体通路46及び各液体通路48と共に、特に、精留器カラム16の設備14の各液体通路34等の異なる機能ユニットをそのようなフレーム要素の形で備えることができる。例えば、並列に接続された複数の液体通路34を含むタワー設備14を形成するために(例えば、図3参照)又は蒸発ユニット24’を形成するために(例えば、図1及び図6参照)、フレーム要素にはウェブ構造体を設けることができ、ウェブ構造体を介してフレーム要素を互いに接続することができる。フレーム要素は、少なくとも部分的に内部領域を含むことができ、内部領域は外枠によって囲まれ、好ましくは、スペーサ、特にグリッド状のスペーサを設けることができ、各チャネルを形成するために各機能面を少なくとも1つの側部に特に備えることができ、前記機能面はフィルムによって又は膜によって、特に平膜36’によって各々構成される。
【符号の説明】
【0060】
10 蒸留プラント
12 液体混合物
14 精留器カラムの設備
16 精留器カラム
18 液体混合物流入
20 ストリッパーカラム
22 濃縮カラム
24 蒸発器
24’蒸気ユニット
26 タワーサンプ
28 戻り液体
30 タワーヘッド
32 凝縮器
34 液体通路
36 蒸気透過性及び液密性の膜壁
36’平膜
38 精留器カラム16の蒸気スペース
40 戻り通路
42 熱媒体
44 熱伝導性、蒸気密性及び液密性の壁
46 熱媒体通路
48 液体通路
50 蒸気透過性及び液密性の膜壁
52 タワーサンプの蒸気スペース
54 サンプ生成物
56 液体の流れ方向
58 液体出口
60 液体入口
62 流出部
64 通路部
66 更なる蒸気透過性及び液密性の膜壁
68 蒸気通路
70 螺旋状の膜巻線構造
72 中空膜スレッド(長手中空体)
74 x方向ディストリビュータ
76 x方向ディストリビュータ
78 y方向コレクタ
80 y方向コレクタ
LS 低沸点留分
SS 高沸点留分
図1
図2
図3
図4
図5
図6