特許第6037580号(P6037580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037580
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20161128BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20161128BHJP
   H05K 3/34 20060101ALN20161128BHJP
   G06T 1/00 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   H05K13/08 Q
   G01N21/956 B
   !H05K3/34 505B
   !H05K3/34 512B
   !H05K3/34 503A
   !G06T1/00 305B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-516778(P2015-516778)
(86)(22)【出願日】2013年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2013063331
(87)【国際公開番号】WO2014184855
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】野澤 辰次
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−104728(JP,A)
【文献】 特開2006−228789(JP,A)
【文献】 特開2003−218591(JP,A)
【文献】 特開2008−216140(JP,A)
【文献】 特開2009−252857(JP,A)
【文献】 特開2008−82714(JP,A)
【文献】 特開平11−198343(JP,A)
【文献】 特開平11−344449(JP,A)
【文献】 特開2002−298132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
G01N 21/956
G06T 1/00
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着ノズルに吸着した部品の下面をカメラで撮像して該部品の下面のバンプに転写された半田、フラックス、導体ペースト、接着剤のいずれかの流動物の転写状態を画像認識して検査する転写検査装置を備えた部品実装機において、
前記流動物の転写状態を検査する際に使用する転写検査データを作成する転写検査データ作成装置を備え、
前記転写検査データ作成装置は、
前記吸着ノズルに吸着した部品の下面のバンプに前記流動物を転写する前に該部品の下面を前記カメラで撮像する処理を複数のシャッタスピードで実行して、シャッタスピードの異なる複数の転写前の画像を取得し、転写前の各画像をグレー処理して転写前のバンプ部分の画素値を求めると共に、該部品の下面のバンプに前記流動物を転写した後に、該部品の下面を該カメラで撮像する処理を転写前と同じ複数のシャッタスピードで実行して、シャッタスピードの異なる複数の転写後の画像を取得し、転写後の各画像をグレー処理して転写後のバンプ部分の画素値を求める画像処理手段と、
前記転写後のバンプ部分の画素値に基づいて転写状態の検査に使用するシャッタスピードを決定するシャッタスピード決定手段と、
前記シャッタスピード決定手段で決定したシャッタスピードで撮像した画像の転写前後のバンプ部分の画素値に基づいて前記転写検査データを作成する転写検査データ作成手段と
を備えていることを特徴とする部品実装機。
【請求項2】
前記シャッタスピード決定手段は、前記転写後のバンプ部分の画素値の最小値が所定値以上となる画像を撮像したシャッタスピードのうちの最小のシャッタスピードに決定することを特徴とする請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記転写検査データ作成手段は、前記シャッタスピード決定手段で決定したシャッタスピードで撮像した画像の転写前のバンプ部分の画素値の最小値と転写後のバンプ部分の画素値の最大値との中間値を転写認識用の転写検査データとして算出し、
前記転写検査装置は、前記転写認識用の転写検査データを前記流動物の転写部分と転写されていない部分とを識別するしきい値として用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記転写検査データ作成手段は、前記シャッタスピード決定手段で決定したシャッタスピードで撮像した画像の転写後のバンプ部分の画素値の最小値よりも所定値だけ小さい値を画像処理エラー判定用の転写検査データとして算出し、
前記転写検査装置は、前記画像処理エラー判定用の転写検査データを画像処理エラーを判定するしきい値として用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の部品実装機。
【請求項5】
前記転写検査データ作成装置は、前記流動物を転写する部品を用いる生産を実行する場合に前記転写検査データが作成されていないときに前記転写検査データを作成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の部品実装機。
【請求項6】
前記転写検査データ作成装置は、前記流動物を転写する部品を用いる生産中に前記転写検査装置で転写不良又は画像処理エラーと判定されたときに前記転写検査データを再作成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ノズルに吸着した部品の下面をカメラで撮像して該部品の下面のバンプに転写された半田やフラックスの転写状態を画像認識して検査する機能を備えた部品実装機に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、下面にバンプ(導体の突起部、端子、電極)が形成された部品を、基板や先付け部品上に実装する場合、吸着ノズルに吸着した部品の下面のバンプに半田やフラックス(以下これらを「半田等」と総称する)を転写してから、該部品を実装する場合がある。この場合、バンプへの半田等の転写状態が不良であると、実装不良が発生するため、特許文献1(特開2008−216140号公報)に記載された部品実装機では、吸着ノズルに吸着した部品の下面をカメラで撮像して、その画像に写った部品下面のバンプ部分の画素値(輝度)を測定し、その画素値を転写検査データ(転写検査用のしきい値)と比較して、半田転写の良否を検査するようにしている。
【0003】
従来、転写検査データを作成する場合は、部品実装機の吸着ノズルに吸着した部品のバンプに半田等を転写する前と後の部品下面を、それぞれ部品実装機のカメラで撮像して、その画像を部品実装機の外部に設置されたオフラインデータ作成装置にダウンロードし、作業者がオフラインデータ作成装置を使用して目視で各バンプの画素値を確認しながらマニュアルで転写検査データを作成して、その転写検査データを部品実装機へ伝送して、部品実装機で転写検査データを用いて半田転写の良否を検査するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−216140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、部品下面を撮像した画像の画素値は、カメラのシャッタスピード(露光時間)と照明条件によって変化する。例えば、撮像対象が同じであれば、シャッタスピードが遅くなるほど、画素値が大きくなり、また、照明光が明るくなるほど、画素値が大きくなる。照明条件は、部品実装機毎にカメラの照明装置によって決まるため、部品実装機毎に転写状態を認識するのに最適なシャッタスピードを決める必要があり、そのシャッタスピードに応じて転写検査データも変更する必要がある。
【0006】
従来は、複数のシャッタスピードについてそれぞれ転写前後の画像をカメラで撮像して転写検査データを作成する場合に、1つのシャッタスピードで転写前後の画像を撮像する毎に、部品実装機を停止させて、転写前後の画像をオフラインデータ作成装置にダウンロードすると共に、撮像に使用した部品を廃棄し、次のシャッタスピードに変更して、新たな部品を吸着ノズルに吸着して転写前後の画像をカメラで撮像するという処理を繰り返すようにしている。このため、転写検査データの作成に多くの工数と時間がかかるだけでなく、シャッタスピードを変更する毎に部品を廃棄しなければならず、コストアップにつながる。しかも、部品実装機毎に照明条件のばらつきがあるため、その照明条件のばらつきを吸収するには、部品実装機毎に転写検査データを作成する必要がある。このため、転写検査機能を持つ部品実装機の台数が増えるほど、上述した転写検査データの作成に関する問題は、顕著な問題となる。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、転写検査データ作成の作業工数と時間を大幅に削減できると共に、転写検査データ作成時に使用した部品の廃棄数を0又は1個のみとすることができる部品実装機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、吸着ノズルに吸着した部品の下面をカメラで撮像して該部品の下面のバンプ(導体の突起部、端子、電極)に転写された半田、フラックス、導体ペースト、接着剤のいずれかの流動物の転写状態を画像認識して検査する転写検査装置を備えた部品実装機において、前記流動物の転写状態を検査する際に使用する転写検査データを作成する転写検査データ作成装置を備え、前記転写検査データ作成装置は、前記吸着ノズルに吸着した部品の下面のバンプに前記流動物を転写する前に該部品の下面を前記カメラで撮像する処理を複数のシャッタスピードで実行して、シャッタスピードの異なる複数の転写前の画像を取得し、転写前の各画像をグレー処理して転写前のバンプ部分の画素値を求めると共に、該部品の下面のバンプに前記流動物を転写した後に、該部品の下面を該カメラで撮像する処理を転写前と同じ複数のシャッタスピードで実行して、シャッタスピードの異なる複数の転写後の画像を取得し、転写後の各画像をグレー処理して転写後のバンプ部分の画素値を求める画像処理手段と、前記転写後のバンプ部分の画素値に基づいて転写状態の検査に使用するシャッタスピードを決定するシャッタスピード決定手段と、前記シャッタスピード決定手段で決定したシャッタスピードで撮像した画像の転写前後のバンプ部分の画素値に基づいて前記転写検査データを作成する転写検査データ作成手段とを備えた構成としたものである。
【0009】
この構成では、部品実装機に転写検査データ作成装置を設けて、該転写検査データ作成装置が転写状態の検査に使用するシャッタスピードを自動的に決定し、そのシャッタスピードで撮像した画像の転写前後のバンプ部分の画素値に基づいて転写検査データを作成するようにしたので、転写検査データ作成の作業工数と時間を大幅に削減できると共に、転写検査データの作成方法を知らない作業者でも簡単に転写検査データを作成することができる。しかも、転写検査データの作成に使用する1つの部品を廃棄せずに、シャッタスピードの異なる複数の転写前の画像と複数の転写後の画像を取得できると共に、転写検査データの作成に使用した部品をそのまま実生産でも使用することが可能であり、部品の廃棄数を0又は1個のみとすることができる。また、転写検査機能を持つ部品実装機の台数が増えても、部品実装機毎に照明条件のばらつきを吸収する転写検査データを簡単に作成することができる。
【0010】
本発明は、転写状態の検査に使用するシャッタスピードを決定する際に、転写後のバンプ部分の画素値の最小値が所定値以上となる画像を撮像したシャッタスピードのうちの最小のシャッタスピードに決定するようにすれば良い。このようにすれば、転写状態の認識性を確保できる範囲内でシャッタスピードを最小にすることができ、撮像処理の高速化の要求に対応できる。
【0011】
また、前記転写検査データ作成手段は、前記シャッタスピード決定手段で決定したシャッタスピードで撮像した画像の転写前のバンプ部分の画素値の最小値と転写後のバンプ部分の画素値の最大値との中間値を転写認識用の転写検査データとして算出し、前記転写検査装置は、前記転写認識用の転写検査データを前記流動物の転写部分と転写されていない部分(バンプが露出した部分)とを識別するしきい値として用いるようにすれば良い。このように、転写前のバンプ部分の画素値の最小値と転写後のバンプ部分の画素値の最大値との中間値を転写認識用の転写検査データとして用いれば、転写認識用の転写検査データと転写前後のバンプ部分の画素値のばらつき範囲との差を均等に大きくすることができ、流動物の転写部分と転写されていない部分とを精度良く識別することができる。
【0012】
また、前記転写検査データ作成手段は、前記シャッタスピード決定手段で決定したシャッタスピードで撮像した画像の転写後のバンプ部分の画素値の最小値よりも所定値だけ小さい値を画像処理エラー判定用の転写検査データとして算出し、前記転写検査装置は、前記画像処理エラー判定用の転写検査データを画像処理エラーを判定するしきい値として用いるようにしても良い。このようにすれば、画像処理エラーを判定する画像処理エラー判定用の転写検査データも自動的に作成することができる。
【0013】
また、前記転写検査データ作成装置は、前記流動物を転写する部品を用いる生産を実行する場合に、前記転写検査データが作成されていないときに転写検査データを作成するようにすると良い。これは、生産に必要な転写検査データが作成されていない場合に転写検査データを自動的に作成してから生産を開始できるようにするためである。
【0014】
或は、前記転写検査データ作成装置は、前記流動物を転写する部品を用いる生産中に前記転写検査装置で転写不良又は画像処理エラーと判定されたときに転写検査データを再作成するようにしても良い。これは、転写検査データのずれによって転写不良や画像処理エラーの誤判定が発生した場合は、転写検査データを再作成することで、転写検査データを修正して、転写不良や画像処理エラーの誤判定を回避できる場合があるためである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の一実施例の転写装置を部品実装機にセットした状態を示す側面図である。
図2図2は部品実装機の主要部の構成を概略的に示す平面図である。
図3図3は部品実装機の制御系の構成を示すブロック図である。
図4図4は転写検査データ自動作成生産モードのプログラムの処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
図5図5は転写検査データ自動作成生産モードのプログラムの処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
図6図6は転写前後のバンプ部分の画素値A,Bのばらつき範囲と転写認識用/画像処理エラー判定用の転写検査データH,Lとの大小関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1乃至図3を用いて部品実装機の構成を説明する。
【0017】
図1図2に示すように、部品実装機11のセット台12には、テープフィーダ、トレイフィーダ等の部品供給装置13と転写装置14とが隣接して着脱可能にセットされている。この転写装置14には、半田(流動物)を膜状に成形する皿状の回転テーブル15(転写テーブル)が着脱可能に装着され、この回転テーブル15がモータ(図示せず)によって回転駆動されるようになっている。
【0018】
図2に示すように、回転テーブル15の上方には、その半径とほぼ同じ長さのスキージ16が回転テーブル15の半径方向に沿って設けられ、回転テーブル15を回転させることで、回転テーブル15内の半田をスキージ16によって均一に押し広げて膜状に成形するようになっている。
【0019】
図1に示すように、部品実装機11の実装ヘッド17には、部品供給装置13から供給される部品18を吸着する吸着ノズル19が交換可能に保持されている。部品実装機11の稼働中は、吸着ノズル19に吸着した部品18が半田転写対象部品(BGA部品、チップ部品等)である場合に、該部品18を転写装置14の回転テーブル15の上方へ移動させて下降させることで、該部品18下面の各バンプ20(導体の突起部、端子、電極)を回転テーブル15内の半田膜に浸して各バンプ20に半田を転写する。
【0020】
図2に示すように、部品実装機11には、実装ヘッド17の吸着ノズル19が移動する経路の下方に位置する部位に、該吸着ノズル19に吸着した部品18を下面側から撮像する部品撮像用カメラ21が設けられている。その他、部品実装機11には、回路基板22を搬送するコンベア23と、実装ヘッド17をXY方向(基板搬送方向及びその直角方向)に移動させる実装ヘッド移動装置24(図3参照)等が設けられている。一方、実装ヘッド17には、回路基板22の基準位置マーク(図示せず)を撮像するマーク撮像用カメラ25(図3参照)が搭載されている。
【0021】
図3に示すように、部品実装機11の制御装置31には、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置32と、液晶ディスプレイ、CRT等の表示装置33と、後述する図4図5の転写検査データ自動作成生産モードのプログラムや各種データを記憶する記憶装置34等が接続されている。更に、制御装置31には、部品撮像用カメラ21やマーク撮像用カメラ25で撮像した画像を処理する画像処理ユニット35が内蔵されている。この画像処理ユニット35は、部品18下面の各バンプ20部分の半田転写状態を検査する転写検査データ作成装置36として機能すると共に、半田転写状態を検査する際に使用する転写検査データを作成する転写検査装置37としても機能する。
【0022】
制御装置31は、部品実装機11の稼働中に部品供給装置13から供給される部品18を吸着ノズル19に吸着して回路基板22に実装する動作を制御する。この際、吸着ノズル19に吸着した部品18がBGA部品等の半田転写対象部品である場合には、吸着ノズル19に吸着した部品18を転写装置14の回転テーブル15の上方へ移動させて下降させることで、該部品18下面の各バンプ20に半田を転写してから、該部品18を回路基板22に実装する。
【0023】
吸着ノズル19に吸着した部品18を回路基板22上へ移動させる途中(該部品18が半田転写対象部品である場合は半田転写後)に、該部品18を部品撮像用カメラ21で撮像し、この撮像画像を画像処理ユニット35で処理して該部品18の吸着姿勢や該部品18の有無等を判定する。この際、部品撮像用カメラ21で撮像した部品18が半田転写部品である場合には、半田転写後に部品撮像用カメラ21で撮像した画像をグレー処理して部品18下面の各バンプ20部分を認識して、各バンプ20部分の画素値(グレー値)を後述する転写認識用の転写検査データHと比較して、各バンプ20部分の画素値が転写認識用の転写検査データH以下であるか否かで、半田転写の良否を検査する。この検査時に、各バンプ20部分の画素値が後述する画像処理エラー判定用の転写検査データL以下である場合には、画像処理エラーと判定する。
【0024】
次に、画像処理ユニット35の転写検査データ作成装置36としての機能を説明する。この機能は、図4図5の転写検査データ自動作成生産モードのプログラムによって次のようにして実現される。図4図5の転写検査データ自動作成生産モードのプログラムは、生産モードが半田転写部品を実装する生産モードで且つ転写検査データ自動作成モードに設定されている場合に、画像処理ユニット35を含む制御装置31によって実行される。尚、吸着ノズル19に吸着した部品18下面の各バンプ20を画像認識するのに必要な画像処理用の部品データは、予め記憶装置34に記憶されているものとする。
【0025】
この転写検査データ自動作成生産モードのプログラムが起動されると、まず、ステップ101で、生産に使用する半田転写部品に関する転写認識用/画像処理エラー判定用の転写検査データH,Lが設定されているか否かを判定し、転写検査データH,Lが設定されていないと判定されれば、ステップ102以降の処理を実行して、次のようにして転写検査データH,Lを自動作成する。
【0026】
まず、ステップ102で、作業者が生産開始スイッチ38(図3参照)を操作したか否かを判定し、生産開始スイッチ38が操作されていないと判定されれば、それが操作されるまで待機する。その後、作業者が生産開始スイッチ38を操作した時点で、ステップ103に進み、吸着ノズル19に部品18を吸着して、該部品18を部品撮像用カメラ21の視野内へ移動させる。
【0027】
この後、ステップ104に進み、転写前の部品撮像・画像処理を複数回実行する。この転写前の部品撮像・画像処理では、吸着ノズル19に吸着した転写前の部品18の下面を部品撮像用カメラ21で撮像する処理を複数のシャッタスピードで実行して、シャッタスピードの異なる複数の転写前の画像を取得し、各画像をグレー処理して転写前のバンプ20部分の画素値を求めて記憶装置34に記憶する。この段階では、最適なシャッタスピードが不明であるため、シャッタスピードを初期値(下限又は下限のシャッタスピード)から一定間隔で上限又は下限のシャッタスピードまで順番に変化させていき、各シャッタスピード毎に部品撮像・画像処理を実行する。
【0028】
この後、ステップ105に進み、吸着ノズル19に吸着した部品18を転写装置14の回転テーブル15の上方へ移動させて下降させることで、該部品18下面の各バンプ20に半田を転写した後、該部品18を部品撮像用カメラ21の視野内へ移動させる。この後、ステップ106に進み、転写後の部品撮像・画像処理を複数回実行する。この転写後の部品撮像・画像処理では、吸着ノズル19に吸着した転写後の部品18の下面を部品撮像用カメラ21で撮像する処理を転写前と同じ複数のシャッタスピードで実行して、シャッタスピードの異なる複数の転写後の画像を取得し、各画像をグレー処理して転写後のバンプ20部分の画素値を求めて記憶装置34に記憶する。この段階でも、最適なシャッタスピードが不明であるため、シャッタスピードを初期値(下限又は下限のシャッタスピード)から一定間隔で上限又は下限のシャッタスピードまで順番に変化させていき、各シャッタスピード毎に部品撮像・画像処理を実行する。上記ステップ104と106の処理が請求の範囲でいう画像処理手段としての役割を果たす。
【0029】
この後も、吸着ノズル19に部品18を吸着した状態を保持しながら(ステップ107)、ステップ108に進み、転写後の複数の画像の中から転写後のバンプ20部分の画素値の最小値が所定値以上(例えば100以上)となる画像を選択し、それらの画像を撮像したシャッタスピードのうちの最小のシャッタスピードを求め、これを転写状態の検査に使用するシャッタスピードに決定する。このステップ108の処理が請求の範囲でいうシャッタスピード決定手段としての役割を果たす。
【0030】
この後、ステップ109に進み、上記ステップ108で決定したシャッタスピードで撮像した画像の転写前後のバンプ部分の画素値A,Bに基づいて転写認識用の転写検査データHと画像処理エラー判定用の転写検査データLを算出する。
【0031】
具体的には、上記ステップ108で決定したシャッタスピードで撮像した画像の転写前のバンプ20部分の画素値Aの最小値Amin と転写後のバンプ20部分の画素値Bの最大値Bmax との中間値を転写認識用の転写検査データHとして算出する。
転写認識用の転写検査データH=(Amin +Bmax )/2
【0032】
この転写認識用の転写検査データHは、半田の転写部分と転写されていない部分(バンプ20が露出した部分)とを識別するしきい値として用いられる。図6に示すように、転写前のバンプ20部分の画素値Aのばらつき範囲が転写後のバンプ20部分の画素値Bのばらつき範囲よりも大きくなるため、転写前のバンプ20部分の画素値Aの最小値Amin は、転写後のバンプ20部分の画素値Bの最大値Bmax よりも大きくなる。従って、画像の転写前のバンプ20部分の画素値Aの最小値Amin と転写後のバンプ20部分の画素値Bの最大値Bmax との中間値を転写認識用の転写検査データHとすれば、転写認識用の転写検査データHと転写前後のバンプ20部分の画素値A,Bのばらつき範囲との差を均等に大きくすることができ、半田の転写部分と転写されていない部分(バンプ20が露出した部分)とを精度良く識別することができる。
【0033】
また、上記ステップ108で決定したシャッタスピードで撮像した画像の転写後のバンプ20部分の画素値Bの最小値Bmin よりも所定値C(例えば15)だけ小さい値を画像処理エラー判定用の転写検査データLとして算出する。
画像処理エラー判定用の転写検査データL=Bmin −C
【0034】
この画像処理エラー判定用の転写検査データLは、画像処理エラーを判定するしきい値として用いられる。生産中に転写後のバンプ20部分の画素値が画像処理エラー判定用の転写検査データL以下である場合は、半田より暗い異物がバンプ20に付着しているか、部品18の下面を照明する照明光が暗いか、部品撮像用カメラ21が故障しているか、その他、何等かの異常が発生していることを意味するため、生産中に転写後のバンプ20部分の画素値が画像処理エラー判定用の転写検査データL以下であれば、これを画像処理エラーと判定するようにしたものである。上記ステップ109の処理が請求の範囲でいう転写検査データ作成手段としての役割を果たす。
【0035】
以上のようにして、転写認識用/画像処理エラー判定用の転写検査データH,Lを算出した後、ステップ110に進み、これらの転写検査データH,Lを記憶装置34に記憶する。この後、ステップ111に進み、転写検査データH,Lの作成に使用した部品18の廃棄がユーザにより指定されているか否かを判定し、部品18の廃棄が指定されていると判定されれば、ステップ112に進み、転写検査データH,Lの作成に使用した転写後の部品18を廃棄して、図5のステップ115へ進み、生産を開始する。
【0036】
これに対し、上記ステップ111で、部品18の廃棄が指定されていないと判定されれば、ステップ113に進み、転写検査データH,Lの作成に使用した転写後の部品18をそのまま回路基板22に実装して、図5のステップ115へ進み、生産を開始する。
【0037】
一方、本プログラムの起動後に、上記ステップ101で、転写認識用/画像処理エラー判定用の転写検査データH,Lが設定されていると判定されれば、図5のステップ114に進み、作業者が生産開始スイッチ38を操作したか否かを判定し、生産開始スイッチ38が操作されていないと判定されれば、それが操作されるまで待機する。その後、作業者が生産開始スイッチ38を操作した時点で、ステップ115へ進み、生産を開始する。まず、ステップ115で、吸着ノズル19に部品18を吸着して、該部品18を部品撮像用カメラ21の視野内へ移動させる。
【0038】
この後、ステップ116に進み、部品撮像用カメラ21のシャッタスピードを前記ステップ108で求めたシャッタスピードに設定して、吸着ノズル19に吸着した転写前の部品18の下面を部品撮像用カメラ21で撮像し、その画像をグレー処理して転写前のバンプ20部分の画素値を求めて記憶装置34に記憶する。
【0039】
この後、ステップ117に進み、吸着ノズル19に吸着した部品18を転写装置14の回転テーブル15の上方へ移動させて下降させることで、該部品18下面の各バンプ20に半田を転写した後、該部品18を部品撮像用カメラ21の視野内へ移動させる。この後、ステップ118に進み、上記ステップ116と同様に、部品撮像用カメラ21のシャッタスピードを前記ステップ108で求めたシャッタスピードに設定して、吸着ノズル19に吸着した転写後の部品18の下面を部品撮像用カメラ21で撮像し、その画像をグレー処理して転写後のバンプ20部分の画素値を求めて記憶装置34に記憶する。
【0040】
この後、ステップ119に進み、転写後のバンプ20部分の画素値を転写認識用の転写検査データHと比較して半田転写の良否を検査すると共に、転写後のバンプ20部分の画素値を画像処理エラー判定用の転写検査データLと比較して画像処理エラーの有無を判定し、次のステップ120で、半田の転写不良や画像処理エラーが発生したか否かを判定し、半田の転写不良や画像処理エラーが発生していないと判定されれば、ステップ122に進み、転写後の部品18を回路基板22に実装する。この後、上述したステップ115以降の処理を繰り返し実行して、生産を継続する。
【0041】
これに対し、上記ステップ120で、半田の転写不良や画像処理エラーが発生したと判定されれば、ステップ121に進み、転写後の部品18を廃棄する。この後、ステップ123に進み、半田の転写不良や画像処理エラーが発生した原因が転写検査データH,Lの再作成を必要とするものであるか否かを判定し、転写検査データH,Lの再作成を必要とすると判定されれば、前述した図4のステップ103以降の処理を再実行して、転写認識用/画像処理エラー判定用の転写検査データH,Lを再作成する。一方、上記ステップ123で、転写検査データH,Lの再作成を必要としないと判定されれば、上述したステップ115以降の処理を繰り返し実行して、生産を継続する。
【0042】
以上説明した本実施例によれば、部品実装機11に転写検査データ作成装置36としての機能を搭載して、該転写検査データ作成装置36が半田の転写状態の検査に使用するシャッタスピードを自動的に決定し、そのシャッタスピードで撮像した画像の転写前後のバンプ20部分の画素値に基づいて転写検査データH,Lを作成するようにしたので、転写検査データ作成の作業工数と時間を大幅に削減できると共に、転写検査データH,Lの作成方法を知らない作業者でも簡単に転写検査データH,Lを作成することができる。しかも、転写検査データH,Lの作成に使用する1つの部品18を廃棄せずに、シャッタスピードの異なる複数の転写前の画像と複数の転写後の画像を取得できると共に、転写検査データH,Lの作成に使用した部品18をそのまま実生産でも使用することが可能であり、部品18の廃棄数を0又は1個のみとすることができる。また、転写検査装置37を持つ部品実装機11の台数が増えても、部品実装機11毎に照明条件のばらつきを吸収する転写検査データH,Lを簡単に作成することができる。
【0043】
しかも、本実施例では、転写状態の検査に使用するシャッタスピードを決定する際に、転写後のバンプ20部分の画素値の最小値が所定値以上となる画像を撮像したシャッタスピードのうちの最小のシャッタスピードに決定するようにしたので、転写状態の認識性を確保できる範囲内でシャッタスピードを最小にすることができ、撮像処理の高速化の要求に対応できる。但し、本発明は、転写状態の認識性を確保できる範囲内で最小のシャッタスピードに決定する場合に限定されず、例えば、転写状態の認識性を確保できる範囲内で2番目又は3番目以上に小さいシャッタスピードに決定するようにしても良い。
【0044】
また、本実施例では、生産モードが半田転写部品を実装する生産モードで且つ転写検査データ自動作成モードに設定されている場合に、転写検査データH,Lが作成されていないときに転写検査データH,Lを作成するようにしたので、生産に必要な転写検査データH,Lが作成されていない場合に転写検査データH,Lを自動作成してから生産を開始できる。
【0045】
しかも、生産中に転写不良や画像処理エラーが発生したと判定されたときに、転写検査データH,Lを再作成するようにしたので、生産中に転写検査データH,Lのずれによって転写不良や画像処理エラーの誤判定が発生した場合は、転写検査データH,Lを再作成することで、転写検査データH,Lを修正して転写不良や画像処理エラーの誤判定を回避することが可能である。
【0046】
尚、部品18下面のバンプ20に転写する材料は、半田に限定されず、フラックス、導体ペースト、接着剤のいずれかの流動物であっても良い。また、部品実装機11に搭載する転写装置14は、図1に示すような回転テーブル15を備えた回転型転写装置に限定されず、転写テーブルを固定してスキージを水平方向に直線移動させたり、或は、スキージを固定して転写テーブルを水平方向に直線移動させる直動方式の転写装置を用いるようにしても良い。
【0047】
その他、本発明は、転写検査データの算出方法を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【符号の説明】
【0048】
11…部品実装機、12…セット台、13…部品供給装置、14…転写装置、15…回転テーブル(転写テーブル)、16…スキージ、17…実装ヘッド、18…部品、19…吸着ノズル、20…バンプ、21…部品撮像用カメラ、22…回路基板、31…制御装置、35…画像処理ユニット、36…転写検査データ作成装置(画像処理手段,シャッタスピード決定手段,転写検査データ作成手段)、37…転写検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6