(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の太陽電池パネルを直列に接続して構成されるストリングと、前記各太陽電池パネルで発生した直流電力を前記ストリングに接続された電力変換器により変換して負荷又は電力系統に供給する太陽光発電システムであって、該太陽光発電システムは、
前記ストリングの電流を計測するために前記ストリングに直列に接続された電流計測手段と、
前記ストリングと前記電力変換器との間に挿入され、前記ストリングの電圧を所定の割合だけ上昇させるための昇圧チョッパ回路とを備え、
前記昇圧チョッパ回路は、
前記ストリングの電流のスイッチングを行う素子が半導体スイッチであって、かつ、前記昇圧チョッパ回路を構成する直流コンデンサのマイナス端子が前記ストリングのプラス端子に接続されるとともに、
前記電流計測手段で計測された電流が所定の値以下の場合に、前記ストリングの電圧を所定の割合だけ上昇させるように前記半導体スイッチのゲートを制御する制御手段を備えたことを特徴とする太陽光発電システム。
複数の太陽電池パネルを直列に接続して構成されるストリングと、前記各太陽電池パネルで発生した直流電力を前記ストリングに接続された電力変換器により変換して負荷又は電力系統に供給する太陽光発電システムであって、該太陽光発電システムは、
前記ストリングの電流を計測するために前記ストリングに直列に接続された電流計測手段と、
前記ストリングの電圧を所定の割合だけ降下させるための降圧チョッパ回路とを備え、
前記降圧チョッパ回路は、
前記ストリングの電流のスイッチングを行う素子が半導体スイッチであって、かつ、前記降圧チョッパ回路を構成する直流コンデンサのプラス端子が前記ストリングのマイナス端子に接続され、さらに前記直流コンデンサのマイナス端子がグランドに接続されるとともに、
前記電流計測手段で計測された電流が所定の値以下の場合に、前記ストリングの電圧を前記所定の割合だけ降下させた電圧を前記ストリングに直列に付加するように前記半導体スイッチのゲートを制御する制御手段を備えたことを特徴とする太陽光発電システム。
前記半導体スイッチがMOSFETであって、少なくとも一方の前記MOSFETのドレイン−ゲート間を抵抗器で接続し、かつ、前記制御手段と前記ゲートとの間に機械接点スイッチを挿入し、
前記機械接点スイッチをオフした時に、前記ストリングの電圧によって前記MOSFETをオンすることにより前記ストリングを短絡することを特徴とする請求項5に記載の太陽光発電システム。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電設備は、大規模のものは広い場所に数千枚から数万枚の太陽電池パネル(以下「パネル」という。)を直列・並列に接続して置かれる。
一般に、パネルを多数直列に接続した太陽電池ストリング(以下「ストリング」という。)を並列に複数接続して太陽電池アレイを構成する場合、発電電圧等の規格が揃ったストリングを選択して使用することが行われている。
【0003】
このストリングを多数並列に接続することにより電流を増やして、ストリングの発電電力を、一括して交流へ変換するパワーコンデショナと呼ばれる連系インバータ装置により電力系へ出力する。
パワーコンディショナは、ストリングの直流電力を最適な電圧で変換できるように最大電力点追跡(Maximum Power Point Tracking、以下「MPPT」という。)制御によってストリングの電圧を変化させることができる。パワーコンディショナは、この電圧を昇降圧制御するためのDC/DCコンバータを備えており、外部電力系統へ連系するための交流電圧に変換するインバータの電圧源コンデンサに電圧を供給している。
【0004】
しかし、並列接続されているストリング全体としてパワーコンディショナへの入力電圧が共通に一つに決まってしまうため、個別のストリングでは必ずしも最大電力点になっているとは限らない。
各ストリングの最大電力点の電圧は、広いメガソーラサイトの中では同一ではなく、特に温度の変化には敏感に反応する。パネルが斜面に設置されている場合、高低の差、風の流れ等で、パネル間では表面温度で数十度(℃)の差が出るとも考えられる。
【0005】
例えば、日が陰ってパネルの温度が下がり、再び日が射してパネルの温度が上がる場合、その温度差は60度(℃)にもなるとの観測結果がある。最大電力点の電圧は1度の温度差で約0.5%変化するので、最悪の場合、過渡的ではあるが、同一のパネルにおいても約30%の電圧変化が生じることがある。従って、メガソーラサイトにおけるパネル配置は温度差の出ないように配置すべきである。
【0006】
また、ストリング内のパネル1枚が破損若しくは経年変化による性能劣化、又はパネル表面の汚れ、部分陰などによって出力が低下した場合も問題になる。その場合、そのストリングの電流は電流の一番小さいパネルの電流に等しくなるので、そのストリング全体としての出力が低下する。
各ストリングの電力を集めるパワーコンディショナの電圧は、他の正常なストリングの電圧に合わせるように動作しているので、出力が低下したストリングのMPPT制御はされなくなる。従って、各ストリング毎のMPPT制御が必要となる。
【0007】
この様な状況に鑑み、一部のパネルの性能劣化や環境変化に伴って出力が低下したストリングの動作点電圧が最大電力点電圧に近づくように、当該ストリングに電圧を補充して電流を回復させ、当該ストリングの回復した電流がパワーコンディショナに供給されるように制御することが必要となる。
このような場合に、ストリングを構成するパネル1枚毎に電圧検出手段とパネルから出力される電力量を検出する電力検出手段とを備え、さらに、検出されたパネル電圧と電力量に基づいて必要な電力を補充する電力補充手段を備えた太陽光発電システムが提案されている(特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための形態について、具体的に説明する。
【0014】
〔第1実施形態:
図1〕
図1は、本発明に係る太陽光発電システムの第1実施形態を示す図である。
図1に示す太陽光発電システムは、複数のパネル1を直列に接続して構成される複数のストリング2と、各パネル1で発生した直流電力をストリング2に接続された電力変換器3により変換して負荷に供給するものである。電力変換器3は、複数のストリングの電流を集めて最大の電力が得られる直流電圧になるように制御するDC/DCコンバータを介して電圧源コンデンサを充電し、電圧型パルス幅変調(Pulse Width Modulation、以下「PWM」という。)インバータにより三相交流に連系するものであり、パワーコンディショナと呼ばれている。
【0015】
この太陽光発電システムは、ストリング2の電流を計測するためにストリング2に直列に接続された電流計測装置4と、ストリング2の電流の逆流を防止するためにストリング2に直列に接続された逆流防止ダイオード5と、電圧供給スイッチ6を介して逆流防止ダイオード5と並列に接続され、ストリング2の電圧を所定の値だけ上昇させるための直流電源7とを備えている。
また、電流計測装置4で計測された電流が所定の値以下の場合に、電圧供給スイッチ6をオンして直流電源7からストリング2に所定値の電圧を補充するように制御する制御装置8も備えている。制御装置8としては専用の装置でもよいし、汎用のコンピュータの利用も可能である。
【0016】
なお、パネル1にはバイパスダイオード9及びコンデンサ10が並列に接続されている。
バイパスダイオード9は、日影になったり故障したりした太陽電池モジュールにおいて、電流をバイパスさせることにより、ストリング2の発電を維持する働きをする。また、コンデンサ10は、日光や温度変化による発電電圧の変化の影響を和らげ、パネルの発電電圧を安定化させる働きをするものである。
また、参照符号11で示すものは、ストリング2の電力変換器3への接続/遮断を切り換えるための接続/遮断スイッチであり、運転/保守の切り換えのためにある。
【0017】
パネルの部分陰、性能劣化や温度変化等、何らかの要因によって、特定のパネルの発電電流が減少すると、その不良パネルを含むストリングの電流が他のストリングの電流よりも異常に少なくなる。すなわち、そのストリングの電流は不良パネルの電流に等しくなるので、そのストリング全体としての電流が低下するからである。
図1に示す太陽光発電システムにおいて、直流電源7から所定の電圧を補充することによって、電流が低下したストリング2の電流を回復させることができる理由を、
図2を参照して説明する。
【0018】
図2は、性能が劣化したストリングに対して所定の電圧を補充することにより電流を回復させることができる理由を説明するための図である。
図2(A)は、多数のストリングを並列接続してアレイを構成するメガソーラにおいて、パネル温度の違いにより最大電力点のMPPT電圧が異なることを示している。
図からわかるように、25℃におけるMPPT電圧は約260Vであるのに対して、50℃におけるMPPT電圧は約210Vである。
【0019】
今、25℃であるストリングが急に50℃に温度上昇した場合、そのストリングのMPPT電圧は約210Vに下がるが、パワーコンディショナは並列接続されている他の正常なストリングと同じように、260Vでの制御を続けるため、出力低下したストリングの電力は約400Wにまで低下してしまう。
そこで、直流電源7から約20%(約50V)の電圧を直列に補充すれば、出力低下したストリングの電圧を約210V(=260V−50V)にすることができる。すなわち、出力低下したストリングをMPPT電圧で駆動することができることになるため、電力は約1600Wにまで回復する。
【0020】
なお、
図2(A)から分かるように、MPPT電圧の左側のカーブは緩やかであるので、補充する電圧は多少大きくても構わない。もちろん、補充する電力より得られる電力が大きい範囲で制御するのは当然である。
図2(B)は、ストリング2の中のパネルの一部が日陰に入ったような場合に、ストリングの最大電力点のMPPT電圧が下がることを示している。この場合、約50V(約20%)の電圧を補充すれば、電力は約600Wから約1600Wまで回復することを示している。
【0021】
図1に戻って、電流計測装置4で各ストリング2の電流を計測し制御装置8に送ると、制御装置8は、各ストリング2の電流値が所定の値以下であるか否かをチェックし、電流値が所定の値以下であるストリングを見つけ、そのストリングのスイッチ6をオンして、直流電源7からそのストリングに所定の電圧を注入する。所定の値は、例えば、通常の平均電流値の20%に設定しておき、それを下回ったストリングは異常と判断するようにしてもよい。
補充する電圧は、正常なストリングの最大出力点電圧の20%程度の発電電圧に相当する電圧であると効果が大きいと考えられる。
図2に示すように、補充する電圧は移動する最大電力点の電圧に依存し、非標準状態における最大電力点の移動の大きさは、メガソーラの設置条件、気象条件等によりメガソーラごとに異なると思われるため、実際に運転しながら決定する。
【0022】
この場合、電圧を注入すると、能力低下した不良パネルにはバイパスダイオード9をオンするだけの電圧が補充されることになるので、他の正常なパネルの電流は不良パネルのバイパスダイオード9を通って流れ、ストリング2は電流を回復する。
従って、電圧を補充してストリング2の電流が増加するか否かを観測し、増加する場合はそのまま電圧補充を継続する。ストリング2の電流が増加しない場合は、電圧補充を停止する。正常なストリングは電流が増加しないからであり、パワーコンディショナによるMPPT制御を妨害しない為でもある。
【0023】
なお、補充すべき電圧の最適値は存在するが、最適値を求めるのではなく、その電圧以上であれば構わないとするのが本発明の特徴でもある。その電圧というのは、約パネル1〜2枚分の電圧である。たとえ余分な電圧を注入したとしても、ストリング電流は各パネルの電流に制限されるので、それほど大きくはならず、また、余剰電力は損失にはならず、その電力はパワーコンディショナ3へ流れるだけなので問題は少ないと言える。
また、直流電源7は、パワーコンディショナ3から出力された交流電力を変圧器ダイオード整流器で作り出したものでも構わない。
【0024】
上記構成によれば、ストリング2毎の電流を電流計測装置4でモニターして、出力電流が異常に低下したストリングを選択して必要な電圧(パネル約1枚分の電圧)を補充することにより、当該ストリングの電流をパワーコンディショナに供給することができるので、ストリングの発電電力を有効に利用することができる。
以下の表1に示すのは、本発明による効果をPSIMを用いたシミュレーションによって表したものである。10枚のパネルから成るストリングのうちの一部のパネルが性能劣化した場合の各ケースについて、補充に要した電力と、それによって純増した電力(補充に要した電力を除く。)を対比して示したものである。これにより、本発明の効果が検証された。
【表1】
【0025】
〔第2実施形態:
図3〕
次に、本発明の第2実施形態について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明に係る太陽光発電システムの第2実施形態を示す図である。第2実施形態は、発電電流が低下したストリング2の発電電圧を昇圧チョッパによって昇圧することによって発電電流を回復させるものである。
図1の第1実施形態では、外部の直流電源7を用いて必要な電圧を補充したが、第2実施形態ではストリング2の発電電圧自体を昇圧させるために、昇圧チョッパ回路を用いる。
【0026】
図3において、昇圧チョッパ回路は、インダクタ12、ストリング2の電流のスイッチング動作を行う半導体スイッチ13、逆流防止ダイオード5、直流コンデンサ14を備えている。半導体スイッチ13のゲート電圧を制御してオンオフ制御を行う制御装置8を備えている。半導体スイッチは、例えば、MOSFETやIGBTが好適である。制御装置8はシステム全体として1個設けるか、ストリング毎に設けてもよい。ストリング毎に設ける場合、電流計測装置4で検出される電流を最大にする制御を行えばよい。電圧は、出力高圧DC母線で決まっているからである。このストリングのMPPTは電流計測のみの簡易な制御で足りるのも特徴である。
なお、ここでは一般的な昇圧チョッパ回路を利用しているので、その動作原理についての説明は省略する。
【0027】
図3において、制御装置8は、電流計測装置4が計測した各ストリング2の電流値を常時監視しており、制御装置8は、ストリング2の電流値が異常か否かを判断する。判断の基準は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
制御装置8がストリング2の電流値を異常であると判断すると、制御装置8は、半導体スイッチ13のゲートにオン/オフ信号を与えてPWM制御を行う。これにより、パワーコンディショナ3に接続されるストリング2の電圧は上昇し、ストリング2は電流を回復する。
【0028】
ストリング2の電圧の上昇分は20%程度(パネル約1〜2枚分の電圧)であるので、半導体スイッチ13のPWMのデューティ比(Duty)は20%程度である。
なお、制御装置8は、ストリング2の電流値を常に監視しているので、デューティ比を徐々に上げて行き、ストリング2の電流の増加が停止するところでデューティ比の増加を止めるように制御してもよい。電圧をそれ以上上昇させても、電圧が正常に戻れば、ストリングは電流が増加しないからであり、パワーコンディショナによるMPPT制御を妨害しない為でもある。
【0029】
なお、第2実施形態における昇圧チョッパ回路の直流コンデンサ14のマイナス端子はグランドではなく、ストリング2のプラス側に接続されている。従って、直流コンデンサ14にかかる電圧はパネル約1〜2枚分の電圧(約30〜100V)にしかならず、定格電圧の小さい小型のコンデンサが使用できる。
【0030】
また、第2実施形態における昇圧チョッパ回路の半導体スイッチ13をオンし続けるとストリング2を短絡するスイッチとしても利用することができる。
定電流的特性を持つパネルは、短絡しても最大電流以上は流れず、短絡することにより電圧が人体に危険の無い電圧になり、逆電流防止ダイオード5によって出力電流がゼロになるので、直流であっても、接続/遮断スイッチ11によって出力高電圧のDC母線からアークの発生無しに離脱することができる。
【0031】
〔第2実施形態の変形例:
図4、
図5〕
次に、本発明の第2実施形態の変形例について、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明に係る太陽光発電システムの第2実施形態の変形例を示す図である。
図4に示す第2実施形態の変形例は、
図3に示す第2実施形態における半導体スイッチ13を磁気エネルギー回生スイッチ(Magnetic Energy Recovery Switch、以下「MERS」という。)13で置き換えたものであり、それ以外は第2実施形態と同一である。
【0032】
図4において、MERS13は、MOSFET(S1)とダイオード(d1)の直列回路と、ダイオード(d2)とMOSFET(S2)の直列回路を並列に接続し、ダイオードd1のアノードとダイオードd2のカソード間に磁気エネルギーを回生する第二の直流コンデンサC1を接続して構成したものである。
制御装置8は、MOSFET(S1)とMOSFET(S2)を同時にオン/オフするように制御する。第2実施形態と同様にPWM制御を行うが、スイッチング損失やノイズが少ないソフトスイッチングであることが特長である。また、MERSは並列導通になるので、片方のMOSFETに不動作、開放等の故障があった場合でもスイッチングは可能であり、信頼性が上がる。
スイッチング損失をなくすためには、電圧ゼロ又は電流ゼロにオン又はオフをする必要があるが、MERS13はそれを実現することができる。
図5を用いてそれを説明する。
【0033】
図5は、MERSの動作を説明するための図である。
図5(A)は、MOSFET(S1)及びMOSFET(S2)がオンからオフになった時の状態を示している。S1及びS2が同時にオフになると、
図4のインダクタ12に蓄積されている磁気エネルギーは、
図5(A)の矢印の経路でコンデンサC1に充電される。磁気エネルギーが全てコンデンサC1に蓄積されると、それ以上電流が流れなくなり、電流はゼロになる。
【0034】
この状態でS1及びS2をオンすれば、
図5(B)の状態に遷移し、線路のインダクタンスにより電流ゼロからゆっくりと立ち上がるのでソフトスイッチングが実現する。この時、電流は矢印の方向に流れる。コンデンサC1から電荷が放電してコンデンサC1の電圧が略ゼロになると、ダイオードd1及びd2が順方向に導通する並列導通状態になり、
図5(C)の状態になる。
図5(C)の状態で完全にコンデンサC1の電圧がゼロになった後で、S1及びS2をオフすれば、オフした瞬間はコンデンサの電圧がゼロであるから、ハードなスイッチングでは発生していた遮断時のサージが発生せずにソフトなスイッチングが実現し、
図5(A)の状態になる。
図5(A)〜(C)のサイクルを繰り返すことにより、スイッチング損失のないソフトスイッチングが可能になる。
【0035】
MERSをDC/DC変換のスイッチに使うことにより、磁気エネルギーが抵抗に消費されることなく回生されるのが第一の利点であるが、ソフトなスイッチングは、太陽発電のDC/DC変換で問題になるスイッチング・ノイズが少なくなることも大きな利点である。スイッチング・ノイズを低減するMERSを適用することは、広い面積を占めるメガソーラがノイズを曝露して近隣の無線通信の妨害や電磁妨害:EMI(Electro-Magnetic Interference)となることを防ぐ効果がある。
【0036】
〔第3実施形態:
図6〕
次に、本発明の第3実施形態について、
図6を用いて説明する。
図6は、本発明に係る太陽光発電システムの第3実施形態を示す図である。
図1の第1実施形態では、外部の直流電源7を用いて必要な電圧を補充したが、第3実施形態ではストリング2の電圧を降圧チョッパで降圧して作り出した電圧(パネル約1〜2枚分の電圧)を補充用の電圧としてストリング2のグランド側に注入するものである。
【0037】
図6において、降圧チョッパ回路は、インダクタ12、半導体スイッチ13、逆流防止ダイオード5、直流コンデンサ14を備えている。また、半導体スイッチ13のゲート電圧を制御してオンオフ制御を行う制御装置8を備えている。半導体スイッチは、例えば、MOSFETやIGBTが好適である。制御装置8はシステム全体として1個設けるか、ストリング毎に設けてもよい。
なお、ここでは一般的な降圧チョッパ回路を利用しているので、その動作原理についての説明は省略する。
【0038】
また、補充する電圧値及び制御装置8の制御動作は第2実施形態と基本的に同じであるので説明は省略する。
また、直流コンデンサ14にかかる電圧はパネル約1〜2枚分の電圧(約30〜100V)にしかならず、定格電圧の小さい小型のコンデンサが使用できるのも、第2実施形態と同じである。
【0039】
また、第3実施形態における降圧チョッパ回路の半導体スイッチ13をオンし続けるとストリング2を短絡するスイッチとしても利用することができる。
定電流的特性を持つパネルは、短絡しても最大電流以上は流れずに電圧が人体に危険の無い電圧になり、逆流防止ダイオード5によって出力電流がゼロになるので、直流であっても、接続/遮断スイッチ11によって出力高電圧のDC母線から離脱することができる。
【0040】
〔第3実施形態の変形例:
図7〕
図7は、本発明に係る太陽光発電システムの第3実施形態の変形例を示す図である。
図7に示す第3実施形態の変形例は、
図6に示す第3実施形態における半導体スイッチ13をMERS13で置き換えたものであり、それ以外は第3実施形態と同一である。
また、MERS13の構成、動作及び特長については、第2実施形態の変形例と同じであるので説明を省略する。
【0041】
上述の通り、第2実施形態、第3実施形態及びそれらの変形例の方法は、チョッパ回路がストリング2と並列接続されるので、ストリング電圧を短絡保護するクローバースイッチ(crowbar switch)としても使え、ストリングの設置工事や保守時の安全に寄与する。
【0042】
〔第4実施形態:
図8〕
次に、本発明の第4実施形態について、
図8を用いて説明する。
図8は、本発明に係る太陽光発電システムの第4実施形態を示す図である。
第4実施形態は、第2実施形態及び第3実施形態(それらの変形例も含む。)において、ストリングの電圧によって半導体スイッチ13を短絡させるために、半導体スイッチ13のドレイン−ゲート間を抵抗器15で接続し、かつ、制御装置8とゲートとの間を遮断するために機械接点スイッチ16を備えたものである。
【0043】
図8(A)は、
図3に示す第2実施形態及び
図6に示す第3実施形態の半導体スイッチ13のドレイン−ゲート間を抵抗器15で接続し、かつ、制御装置8とゲートとの間を機械接点スイッチ16を介して接続した場合を示している。
また、
図8(B)は、
図4に示す第2実施形態の変形例及び
図7に示す第3実施形態の変形例のMERS13のMOSFET(S1)のドレイン−ゲート間を抵抗器15で接続し、かつ、制御装置8とゲートとの間を機械接点スイッチ16を介して接続した場合を示している。なお、S2の方に抵抗器15及び機械接点スイッチ16を接続しても構わない。
また、抵抗器15の抵抗値は、高速なPWM制御を行う制御装置8の動作に影響を与えない程度の抵抗値であればよく、具体的には、制御装置8の出力インピーダンスが100Ω程度以下であるから、その10〜100倍の1kΩ〜10kΩであればよい。
【0044】
10年以上の寿命を想定している太陽電池パネルは保守点検が必要である。その場合、ストリング毎に接続/遮断スイッチ11をオフにして、ストリング2を出力高電圧DC母線から切り離す必要があるが、ストリングの直流電力は数百V、数Aになっているため、これを接続/遮断スイッチ11により切り離すことは、アークの発生も考えられ、特殊な構造の直流遮断器を使用しなければ困難である。
そこで、ストリング2を短絡して危険のない電圧まで下げる必要がある。この場合、半導体スイッチ13のゲートを制御装置8からの信号によってオンし続けることにより半導体スイッチ13を短絡する方法もあるが、安全装置としての信頼性に欠ける。すなわち、制御装置8の電源の信頼性が問題になるからである。
【0045】
第4実施形態は、制御装置8からの信号によってゲートを駆動して半導体スイッチ13を短絡するのではなく、機械接点スイッチ16をオフすることにより、ゲートを制御装置8から切り離し、ゲート電圧をストリング電圧まで引き上げて半導体スイッチ13を短絡するものである。その結果、ドレイン−ソース間は低電圧のスレッショルド電圧になる。従って、ストリングに電圧が発生している限り、機械接点スイッチ16をオフすれば半導体スイッチ13を短絡することができるので、制御装置8の電源の信頼性は問題とならない。
【0046】
なお、スイッチ16を機械接点スイッチとしたのは、半導体スイッチであればゲートを駆動するための信号が必要となるが、機械接点スイッチであれば、手動スイッチ(例えば、押しボタンスイッチやトグルスイッチ等)が使用でき、ゲート駆動信号が不要だからである。
また、機械接点スイッチ16にはゲート制御用の電圧がかかるが、その電圧はわずかであり(15V以下)、電流もほとんど流れないため、微小電流用のスイッチでも構わない。
【0047】
以上説明したように、本発明に係る太陽光発電システムによれば、メガソーラにおける太陽電池パネルのストリング毎の電流を計測し、異常に低い電流値のストリングの電圧を直列に補充することで、補充した電力以上の電力増加があって、発電電力を増加させることができる。
また、ストリングのパネル1枚が破損などして修理・交換するまでの間、補充電圧源を挿入してそのストリングの発電を続けることができる。電圧源はパネル1〜2枚程度の電圧(約30〜100V)が出力可能な直流電源であればよいので、産業用の汎用電源でもよく、精度も要求しない。
以上で実施形態の説明を終了するが、以上説明した各実施形態、動作及び変形例の構成は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施可能であることはもちろんである。
本発明は、複数の太陽電池パネル1を直列に接続して構成されるストリング2と、各太陽電池パネルで発生した直流電力をストリング2に接続された電力変換器3により変換して負荷又は電力系統に供給する太陽光発電システムにおいて、ストリング毎に簡易な方法でMPPT制御を行うことを目的とする。
そのために、本発明の太陽光発電システムは、ストリング2の電流を計測するための電流計測装置4をストリング2に直列に接続し、ストリング2の電流の逆流を防止するために、ストリング2に直列に逆流防止ダイオード5を接続する。
さらに、スイッチ6を介して逆流防止ダイオード5と並列にストリング2の電圧を所定の値だけ上昇させるための直流電源7を接続し、電流計測装置4で計測された電流が所定の値以下の場合に、スイッチ6をオンして直流電源7からストリング2に所定値の電圧を供給するように制御する制御装置8を備える。