(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037610
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】プラスチックボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20161128BHJP
B65D 1/42 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/42
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-272967(P2011-272967)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-124115(P2013-124115A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】松岡 建之
【審査官】
高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/028571(WO,A1)
【文献】
特開2008−296920(JP,A)
【文献】
特表2009−532288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D1/00−1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が正多角形の胴部を備え、前記胴部の上下方向の途中にくびれ部を有するプラスチックボトルにおいて、
前記くびれ部は、
前記正多角形の内接円よりも小さい正円の横断面形状のピンチ部と、
前記ピンチ部の上側及び下側にある前記正多角形の胴壁部分と当該ピンチ部とをつなぐ傾斜部と、を有し、
前記傾斜部と前記胴壁部分とをむすぶ稜線は、前記ピンチ部から遠い距離にある山部と前記ピンチ部から近い距離にある谷部とが周方向に繰り返す湾曲した線で形成されており、
前記山部は、前記正多角形の角に相当する位置にあり、
前記谷部は、前記正多角形の角と角との間の部分に相当する位置にあり、
前記胴壁部分には、前記谷部に沿って凹部が形成されており、前記凹部は、前記谷部の曲線に沿った円弧部と、前記円弧部の両端を繋ぎ前記山部の頂部と略同一の高さレベルに位置する直線部と、で構成されている、プラスチックボトル。
【請求項2】
前記ピンチ部は、
中央に周方向にわたって配置されたリング状部と、
前記リング状部の上側に周方向にわたって形成された、断面視、横向きのV字状の第1溝と、
前記リング状部の下側に周方向にわたって形成された、断面視、横向きのV字状の第2溝と、
前記第1溝と前記傾斜部との上側境界に周方向にわたって形成された第1段部と、
前記第2溝と前記傾斜部との下側境界に周方向にわたって形成された第2段部と、を備える請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記稜線は、前記傾斜部と前記胴壁部分とをむすぶつなぎ部分のRが3以下である、請求項1又は2に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
前記傾斜部の角度は、横断面に対し30°〜60°である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部がくびれ部を有するプラスチックボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用のPETボトルとしてプラスチックボトルが広く用いられている。プラスチックボトルの製造には各種の成形法をとり得るが、主には、二軸延伸ブロー成形法を用いてプリフォームからボトル形状に成形することが行われている。ボトル形状を大別すると、胴部の横断面形状が円形の丸型ボトルと、胴部の横断面形状が方形の角型ボトルとがある。角型ボトルは、丸型ボトルと比べて積載効率・収納効率が良いというメリットがあるが、サイズが大きくなると、対角方向が持ちづらいというデメリットがある。実用化されている角型ボトルでは、胴部にくびれ部を形成し、持ち易さが改善されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、胴部に指スポット付きのくびれ部を形成した長方形の角型ボトルを開示している。この角型ボトルを把持する場合、消費者は、指スポットに指を入れ、くびれ部を中心にボトルを掴むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−247393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ボトルの持ち易さとは、くびれ部の有無だけで決まるものではなく、ボトル強度とも関連する。くびれ部があったとしても、ボトル強度が低いと、消費者にとっては、柔らかくて掴みにくいと感じてしまう。とりわけ、1リットルを超えるような大型サイズのボトルの場合、消費者はボトルを掴んで飲料をコップに注ぐため、持ち易さ・注ぎ易さを実感するようなボトル強度を確保することが重要である。
【0006】
ところが、近年では、省資源化の観点から、ボトルの軽量化に伴う薄肉化が進められており、薄肉化によって全体的に低下するボトル強度を確保することが難しい。
この点、特許文献1の角型ボトルのように、胴部とくびれ部とが同様の横断面形状であるボトルについて、ある程度の肉厚とする場合には、把持したときにたわまないようにすることができる。しかし、このようなボトルについてより一層の薄肉化を図った場合、胴部に対するくびれ部の横断面形状の変化が小さいために、持ち易さ・注ぎ易さが実感されるような十分な強度をくびれ部に確保するのには限界がある。
【0007】
もっとも、胴部に対するくびれ部の横断面形状の変化を大きくすれば、くびれ部の強度向上については期待することができるが、断面形状の変化が大きくなるため、プリフォームからの成形(例えば二軸延伸ブロー成形)が難しくなる。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量化が図られた大型サイズの角型ボトルの場合にも、その成形性を損なうことなく、持ち易さ・注ぎ易さが実感されるような強度をくびれ部に確保することができるプラスチックボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するべく、本発明のプラスチックボトルは、横断面形状が正多角形の胴部を備え、胴部の上下方向の途中にくびれ部を有するプラスチックボトルにおいて、くびれ部は、正多角形の内接円よりも小さい正円の横断面形状のピンチ部と、ピンチ部の上側及び下側にある正多角形の胴壁部分とピンチ部とをつなぐ傾斜部と、を有する。傾斜部と胴壁部分とをむすぶ稜線は、ピンチ部から遠い距離にある山部とピンチ部から近い距離にある谷部とが周方向に繰り返す湾曲した線で形成されており、山部は、正多角形の角に相当する位置にあり、谷部は、正多角形の角と角との間の部分に相当する位置にあるものである。
【0010】
本発明によれば、全体としては角型ボトルであるが、くびれ部のピンチ部の横断面形状が正円であるため、くびれ部と胴壁部分との間で横断面形状の変化が大きくなる。これにより、くびれ部と胴壁部分とを同様の横断面形状にする場合と比べて、軽量化による強度低下を抑制することができる。このため、くびれ部を掴んだときの撓むような変形を抑制することができ、持ち易さ・注ぎ易さが実感されるような強度をくびれ部に確保することができる。
【0011】
また、くびれ部の傾斜部と胴壁部分とをむすぶ綾線を上述の湾曲線としているため、対角方向ではくびれ部の高さが比較的高くなる。これにより、消費者がくびれ部を掴んだときに、例えば手の親指と人差し指との間の付け根が胴壁部分の角にあたらないかあるいはあたりにくくなるため、本来持ちづらい対角方向の部位によって邪魔されることが抑制される。よって、消費者にとっては、くびれ部に手がかけ易いと実感されるものとなり、くびれ部を中心とした持ち易さ・注ぎ易さを向上することができる。
【0012】
加えて、くびれ部に傾斜部があるので、正多角形を基調とする胴壁部分に正円のピンチ部を形成するに際して、その成形性を向上することができる。とりわけ、傾斜部と胴壁部分とをむすぶ綾線を上述の湾曲線とすることで、傾斜部は、ピンチ部に近いところでは正円の横断面形状となる一方で、胴壁部分に近づいたあるところでは、胴壁部分の正多角形の角に相当する位置にのみ正円の一部(4つの角に対応して4つの円弧)が存在する横断面形状となる。よって、胴壁部分とくびれ部のピンチ部との間で横断面形状の変化を大きくしつつも、その変化を傾斜部でつなぐことができ、しかも対角方向が急な傾斜角度とならないようにすることができるため、成形のし易さを確保することができる。
【0013】
好ましくは、胴壁部分には、谷部に沿って凹部が形成されているとよい。
【0014】
この構成によれば、胴壁部分に変化した部位(凹部)が形成されるため、胴壁部分の面強度を向上することができる。特に、凹部が谷部に沿って形成されるため、胴壁部分の面強度が効果的に向上され、くびれ部を掴んだときの変形を抑制する上でも有用となる。
【0015】
好ましくは、稜線は、傾斜部と胴壁部分とをむすぶつなぎ部分のRが3以下であるとよい。
【0016】
この構成によれば、綾線のRが比較的小さいため、傾斜部と胴壁部分とのつなぎ部分が比較的硬くなる。それゆえ、消費者がくびれ部を掴んだとき、指がしっくりとかかるようになり、消費者の持ち易さ・注ぎ易さを向上することができる。
【0017】
好ましくは、傾斜部の角度は、横断面に対し30°〜60°であるとよい。
【0018】
この構成とは異なり、30°未満であると、例えば二軸延伸ブロー成形を用いる際に傾斜部を急激に延伸することになるため、対角方向の部分が白化し易い。一方、60°を超えると、傾斜部が胴壁部分とピンチ部とをなだらかにつなぐことになるため、十分な強度を確保し難い。よって、上記の範囲とすることで、成形性の確保と強度の確保とを両立し易い。
【0019】
好ましくは、ピンチ部には、周方向に溝が形成されているとよい。
【0020】
この構成によれば、溝がリブとして機能するため、ピンチ部の強度をより向上することができる。
【0021】
好ましくは、溝は、断面視、横向きのV字状に形成されているとよい。
【0022】
この構成によれば、ボトルに上下方向の力が作用した場合にも、その力をスプリングのように吸収することができる。これにより、ボトルの縦方向のつぶれを抑制することができる。なお、ボトルがスプリング効果で縮むと、内圧が上がるので、ボトルの強度が高くなる。
【0023】
好ましくは、溝は、ピンチ部の上下部分にそれぞれ形成されているとよい。
【0024】
この構成によれば、ピンチ部の強度及び上述のスプリング効果をより一層向上することができる。
【0025】
好ましくは、ピンチ部には、溝と傾斜部との境界に段部が形成されているとよい。
【0026】
こうすることで、段部という簡易な構成によって、くびれ部全体の強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1(a)及び(b)は、実施形態に係るプラスチックボトルをそれぞれ別の角度から見た斜視図である。
【
図3】
図2のプラスチックボトルを45度ずらした角度から見た側面図である。
【
図4】
図2のIV−IV線で切断した縦断面図であり、ハッチングを省略して切断箇所の輪郭を示すものである。
【
図5】
図3のV−V線で切断した縦断面図であり、ハッチングを省略して切断箇所の輪郭を示すものである。
【
図6】
図2のVI−VI線で切断した横断面形状の端面図である。
【
図7】
図2のVII−VII線で切断した横断面形状の端面図である。
【
図8】
図2のVIII−VIII線で切断した横断面形状の端面図である。
【
図9】
図9(a)及び(b)は、それぞれ、他の実施形態に係るプラスチックボトルをそれぞれ別の角度から見た斜視図である。
【
図10】
図9のプラスチックボトルの正面図である。
【
図11】
図9のプラスチックボトルを45度ずらした角度から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係るプラスチックボトルを説明する。
以下の説明では、ボトル口部が存在する方を上側とし、ボトル底部が存在する方を下側とする。高さとは、ボトルの中心軸の方向(上下方向)に沿った長さを意味する。横断面形状とは、ボトルの中心軸に直交する平面(すなわち横断面)における断面形状を意味する。
【0029】
図1〜3に示すように、プラスチックボトル1(以下、「ボトル1」という。)は、上側から順に、口部2、肩部3、胴部4及び底部5を有する。これらの部分(2,3,4及び5)は、一体に形成され、内部に飲料を貯留するための有底筒状のボトル壁を構成する。飲料としては、水、緑茶、ウーロン茶、ブレンド茶、スポーツドリンク又は果汁等の非炭酸飲料を貯留するのに適している。他の実施態様では、ゼリー飲料又はソース等の食品を貯留することもできる。
【0030】
ボトル1は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を主材料として、二軸延伸ブロー成形等の延伸成形法により成形される。
ボトル1の製造工程の一例を説明する。先ず、金型内に熱可塑性樹脂を射出し、プリフォームを射出成形する。プリフォームは、口部2と同形状の口部と、その下側に連なる有底の筒状部と、で構成される。射出成形後は、プリフォームをブロー成形機にセットして、プリフォームの筒状部を加熱する。そして、延伸ロッドによって筒状部を縦方向に延伸させると共に、圧縮空気を吹き込んで筒状部を横方向に延伸させる。延伸させた筒状部の部位を金型の内面に押し付け、その後固化させる。これにより、肩部3、胴部4及び底部5が成形され、ボトル1の一連の成形が完了する。
【0031】
口部2は、上端が開口しており、飲料の注ぎ口として機能する。口部2の開口は、図示省略したキャップにより開閉される。肩部3は、横断面が下方にかけて徐々に拡大してなり、ボトル1において最小径の口部2を、ボトル1において最大幅を構成する胴部5の上端に連続させる。底部5は、底壁21及び周壁22で構成される。周壁22は、下方にかけて僅かにすぼめられてなり、胴部4の下端を底壁21に連続させる。口部2、肩部3及び底部5の形状は、特に限定されるものではなく、適宜設計することができる。
【0032】
胴部4は、正方形の横断面形状を基調とする角筒状の部分である。詳細には、
図6に示すように、胴部4の正方形の横断面形状は、正方形の計4つの角部31が円弧からなり、隣り合う角部31,31の間に直線部33を有する。直線部33は、胴部4の平坦な外表面を構成する。なお、横断面形状として正方形を例にしたが、もちろん6角形、8角形、10角形など他の正多角形を採用してもよい。また、正方形又は正多角形の横断面形状とは、角部31を直角としていないように、角部にRをつけることを排除するものではない。
【0033】
胴部4は、その上下方向の途中にくびれ部40を有している。
図3に示すように、胴部4を上下方向に3つのエリアで区分けすると、胴部4は、くびれ部40と、くびれ部40の上側にある上側胴部42と、くびれ部40の下側にある下側胴部44と、からなる。上側胴部42及び下側胴部44は、上述のように、横断面形状が正方形の胴壁部分を構成するものである。上側胴部42及び下側胴部44には、それぞれ、周方向に延びる複数の連続溝50及び複数の断続溝52が上下方向に交互に形成されている。
【0034】
くびれ部40は、胴部4において最もくびれているピンチ部60と、ピンチ部60を上側胴部42につなぐ上側傾斜部62と、ピンチ部60を下側胴部44につなぐ下側傾斜部64と、を有している。くびれ部40は、ピンチ部60を中心に上下対称に形成されている。ただし、他の実施態様では、くびれ部40は、ピンチ部60を中心に上下非対称に形成されてもよい。すなわち、上側傾斜部62と下側傾斜部64とは、互いに、高さ、傾斜方向への長さ、傾斜角度及び厚みの少なくとも一つの性状が異なってもよい。
【0035】
ピンチ部60は、
図7に示すように、正円の横断面形状で構成されている。ここで、横断面形状に関し、ピンチ部60の正円は、上側胴部42及び下側胴部44の正方形の内接円66(参照:
図6に仮想線で示す。)よりも小さいものとなっている。一例を挙げると、ピンチ部60の正円の直径は75mmであり、内接円66の直径は85mmである。なお、内接円66の直径は、胴部4の正方形の一辺の長さに相当するものであり、ボトル1の最大幅に等しい。
【0036】
ピンチ部60には、
図3に示すように、上下一対の溝70,72が形成されている。このため、溝70,72の間にあるピンチ部60の中央部分は、リング状の部位となっている。溝70,72は、ピンチ部60の周方向に亘って形成されており、断面視、横向きのV字状に形成されている。また、ピンチ部60には、溝70と上側傾斜部62との境界に段部74が形成されていると共に、溝72と下側傾斜部64との境界に段部76が形成されている。段部74,76は、ピンチ部60の周方向に亘って形成されている(参照:
図4及び
図5)。
【0037】
上側傾斜部62及び下側傾斜部64は、ピンチ部60から遠ざかるにつれて徐々に径方向に拡大するように形成されている。上側傾斜部62及び下側傾斜部64の傾斜角度αは、互いに同じである(参照:
図4)。また、この傾斜角度αは、上下方向の位置及び周方向の位置で異なるものではなく、一定の角度となっている。傾斜角度αは、成形性及び強度の観点によれば、横断面に対して30°〜60°の範囲にあることが好ましい。その理由は以下のとおりである。
【0038】
二軸延伸ブロー成形の際、ピンチ部60から延伸されるようにして上側傾斜部62及び下側傾斜部64が形成される。このとき、傾斜角度αが30°未満であると、ピンチ部60から急激な角度に延伸させることになる。その結果、上側傾斜部62及び下側傾斜部64の対角面(すなわち、胴部4の正方形横断面形状における角部31に相当する面。)が白化し易い。一方、傾斜角度αが60°を超えると、上側傾斜部62及び下側傾斜部64がピンチ部60と胴壁部分(すなわち上側胴部42及び下側胴部44)とをなだらかにつなぐことになるため、十分な強度を確保し難い。したがって、傾斜角度αを上記の範囲とすることで、成形性と強度の両方を確保することができる。より好ましくは、傾斜角度αは45°であるとよい。こうすることで、二軸延伸ブロー成形の際に延伸していく部位が金型の内面に追随し易い上、成形後の持ち易さにとっても有利となる。
【0039】
図1〜3に示すように、上側傾斜部62と上側胴部42とをむすぶ綾線80、並びに、下側傾斜部64と下側胴部44とをむすぶ綾線81は、いずれも、山部82と谷部84とが周方向に交互に4回繰り返す湾曲した線で形成されている。山部82は、谷部84と比べてピンチ部60から遠い距離にあり、しかも、胴部4の正方形横断面形状における角部31に相当する位置にある。換言すると、谷部84は、山部82と比べてピンチ部60から近い距離にあり、しかも、胴部4の正方形横断面形状における直線部33に相当する位置にある。綾線80は、全体として周方向に延びる正弦波状の曲線となっており、山部82と谷部84との境界点(正弦波における線の変曲点)が、胴部4の正方形横断面形状において、直線部33から角部31に変化する位置に相当する位置にある。
【0040】
このように構成された上側傾斜部62及び下側傾斜部64は、
図8に示すように、基本的には、ピンチ部60と同様に正円の横断面形状からなり、ピンチ部60から遠ざかるにつれて正円の半径が大きくなっている。ただし、正弦波状の綾線80,81から明らかなように、上側胴部42及び下側胴部44に近づいた谷部84の位置からは、上側傾斜部62及び下側傾斜部64の横断面形状は、胴部4の正方形の4つの角部31に相当する位置にのみ、円弧状の部位が存在することになる。この4つの円弧状の部位は、ある一つの正円の軌道上にあり、上側胴部42及び下側胴部44に向かうにつれて徐々に短くなっていき、最終的に上側胴部42及び下側胴部44に達すると存在しなくなる。
【0041】
隣り合う山部82と山部82との間にある胴壁部分(上側胴部42及び下側胴部44の各部位)には、谷部84に沿って弓状の凹部90が形成されている。
図2に示すように、弓状の凹部90は、谷部84の曲線に沿った円弧部92と、円弧部92の両端をつなぐ直線部94と、で構成されている。円弧部92は、谷部84の曲線と平行に延びている一方、直線部94は、連続溝50と平行に延びている。また、直線部94は、山部82の頂部と同じ又は同程度の高さレベルに位置している。
【0042】
綾線80は、
図4及び
図5に示すように、上側傾斜部62と上側胴部42とをむすぶつなぎ部分のRが周方向で一定となっている。同様に、綾線81は、下側傾斜部64と下側胴部44とをむすぶつなぎ部分のRが周方向で一定となっており、綾線80のRと同じ値となっている。ここで、綾線80,81のRは、3以下とすることが好ましく、本実施形態では0.5となっている。Rが3を超えると、綾線80,81のRが比較的大きくなり、綾線80,81が構成するつなぎ部分が柔らかくなる。これに対し、Rが3以下であれば、綾線80,81のRが比較的小さいため、当該つなぎ部分が硬くなり、強度が向上する。それゆえ、消費者がくびれ部40を掴んでボトル1を把持したときに、くびれ部40に指がしっくりかかるようになる。
【0043】
以上説明したボトル1のサイズ及び寸法の一例を挙げる。本実施形態のボトル1は、容量が1リットルを超えるような大型サイズのボトルに適したものであり、例えば、1.5リットル又は1.25リットルのボトルとすることができる。1.5リットルのボトルの場合には高さを約300mmとし、1.25リットルのボトルの場合には高さを約250mmとし、両者の間ではくびれ部40の高さ位置のみを変更すればよい。くびれ部40の高さ位置は、ボトル1の持ち易さの観点からすれば、ボトル1に飲料を満充填させたときの重心の近傍又は重心の僅かに下側に設定するとよい。また、くびれ部40の高さは、一般的な大人の指が少なくとも一本はくびれ部40に挿入できる程度の高さを有すればよく、例えば、最大高さ(綾線80の山部82の頂部と綾線81の山部82の頂部との距離)を約40mmとすることができる。
【0044】
以上説明した本実施形態のボトル1の作用効果を説明する。
【0045】
1.持ち易さ・注ぎ易さ
ボトル1にくびれ部60があるため、指をひっかけることができ、持ちやすくなる。また、ボトル1の胴部4の横断面形状が正方形と正円との組合せで構成されているため、持ったときに全体的に変形しにくい。
【0046】
具体的に説明すると、胴部4の基本的な横断面形状は正方形であるのに対し、くびれ部40のピンチ部60の横断面形状は正円であるため、くびれ部40と上側胴部42との間及びくびれ部40と下側胴部44との間で横断面形状の変化が大きい。これにより、両者を同様の横断面形状にする場合に比べて、軽量化した場合の強度低下が抑制され、くびれ部40を掴んだときの撓むような変形が抑制される。よって、角型ボトルを軽量化した場合であっても、持ち易さ・注ぎ易さが実感されるような強度をくびれ部40に確保することができる。
【0047】
また、くびれ部40に関する綾線80,81を山部82と谷部84との組合せとし、対角方向ではくびれ部40の高さを大きくしている。これにより、消費者がくびれ部40を掴んだときに、対角方向の部位に邪魔されることが抑制される。よって、消費者にとっては、くびれ部40に手がかけ易いと実感されるものとなる。すなわち、本来持ちにくい対角方向が持ち易くなり、くびれ部40を中心とした持ち易さ・注ぎ易さを向上することができる。
【0048】
さらに、くびれ部40及びその周辺部位の強度も向上されている。具体的には、ピンチ部60に形成された溝70,72はリブとして機能するため、ピンチ部60の強度を向上することができる。また、ピンチ部60に形成された段部74,76もリブのような効果を奏するため、ピンチ部60と傾斜部72、74とのつなぎ部分の強度が向上され、くびれ部40全体の強度を向上することができる。さらに、くびれ部40の直近に形成された凹部90もリブとして機能するため、くびれ部40の直近の胴壁部分の面強度が向上する。しかも、凹部90の態様を弓状に形成し、凹部90の部位を谷部84及び連続溝50の両者と平行に延びるように凹部90を形成しているため、胴壁部分の面強度が効果的に向上される。このようなくびれ部40及びその周辺部位の強度の向上は、くびれ部40を掴んだときの変形がより一層抑制される上で有用であり、ボトル1の持ち易さ・注ぎ易さの向上につながる。
【0049】
2.成形性
くびれ部40に、ピンチ部60から延びる上側傾斜部62及び下側傾斜部64を形成しているので、正多角形を基調とする胴壁部分に正円のピンチ部60を形成するに際して、その成形性を向上することができる。特に、くびれ部40に関する綾線80,81を山部82と谷部84との組合せとした上述の態様とし、対角方向では対辺方向よりも上側傾斜部62及び下側傾斜部64の長さを長くして、傾斜角度αを一定にしている。これにより、プリフォームを二軸延伸ブロー成形する際に、くびれ部40について対角方向の成形性を確保することができる。
【0050】
次に、
図9ないし
図11を参照して、他の実施形態に係るボトル100について説明する。上記した実施形態のボトル1との相違点は、ピンチ部60から溝70,72を除いた点と、上側胴部42及び下側胴部44から弓状の凹部90を除いた点である。
【0051】
このようなボトル100によれば、ボトル1に比べてくびれ部40及びその周辺部位の強度が劣るものの、ボトル1と同様に、軽量化が図られた大型サイズの場合にも、その成形性を損なうことなく、持ち易さ・注ぎ易さが実感されるような強度をくびれ部40に確保することは可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:ボトル、 4:胴部、 40:くびれ部、 42:上側胴部、 44:下側胴部、 60:ピンチ部、 62:上側傾斜部、 64:下側傾斜部、 70,72:溝、 74,76:段部、 80,81:稜線、 82:山部、 84:谷部、 90:凹部