特許第6037612号(P6037612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037612
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】散薬分注装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 1/06 20060101AFI20161128BHJP
   B65B 1/34 20060101ALI20161128BHJP
   B65B 39/00 20060101ALI20161128BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B65B1/06
   B65B1/34
   B65B39/00 A
   A61J3/00 310F
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-280880(P2011-280880)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-129451(P2013-129451A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】皆川 栄一
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−029186(JP,A)
【文献】 特開昭59−026403(JP,A)
【文献】 特開平09−058614(JP,A)
【文献】 特開2006−188361(JP,A)
【文献】 特開2003−237710(JP,A)
【文献】 特開平05−277165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 1/00−3/36
B65B39/00
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の散薬ユニットと、
前記複数の散薬ユニットを交換可能に保持する複数の保持部を有するラックと、
前記ラックに保持された前記複数の散剤ユニットの中から選択された対象散薬ユニットに対して位置決められ、当該対象散薬ユニットから排出された散薬を受け入れる容器と、
を含み、
前記各散薬ユニットは、
前記散薬を収容する収容部と、
前記収容部における排出開口を開閉する機構であって、前記排出開口の開口度を可変可能な開閉機構と、
を含み、
前記各散薬ユニットにおける前記開閉機構の動作を制御する制御部であって、前記対象散薬ユニット内の前記散薬についての流れ易さに関する物理的性質としての凝集性が低い場合には、前記凝集性が高い場合に比べて当該対象散薬ユニットにおける前記排出開口の開口度を小さくする制御を行う制御部が設けられた、
ことを特徴とする散薬分注装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記開閉機構は
複数の第1開口を有する第1プレートと、
前記第1プレートに重合配置され、複数の第2開口を有する第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間の相対的スライド量を可変するスライド機構と、
を含み、
前記相対的スライド量が前記排出開口の開口度を規定する、ことを特徴とする散薬分注装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記第1プレートは、前記複数の第1開口としての円周方向に放射状に並んだ複数の第1スリットを有する円形プレートであり、
前記第2プレートは、前記複数の第2開口としての円周方向に放射状に並んだ複数の第2スリットを有する円形プレートであり、
前記第1プレートに対する前記第2プレートの相対的スライド回転量に応じて前記排出開口の開口度がゼロから最大まで変化する、ことを特徴とする散薬分注装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記各第1スリット及び前記各第2スリットは、中央部から径方向外側にかけて円周方向幅が徐々に広がった形態を有し、
前記収容部内には頂点から周囲外側へ傾斜した円錐面を有する傘部材が設けられた、ことを特徴とする散薬分注装置。
【請求項5】
複数の散薬ユニットと、
前記複数の散薬ユニットを交換可能に保持する複数の保持部を有するラックと、
前記ラックに保持された前記複数の散剤ユニットの中から選択された対象散薬ユニットに対して位置決められ、当該対象散薬ユニットから排出された散薬を受け入れる容器と、
を含み、
前記各散薬ユニットは、
前記散薬を収容する収容部と、
前記収容部における排出開口を開閉する機構であって、前記排出開口の開口度を可変可能な開閉機構と、
を含み、
前記開閉機構は、
複数の第1開口を有する第1プレートと、
前記第1プレートに重合配置され、複数の第2開口を有する第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間の相対的スライド量を可変するスライド機構と、
を含み、
前記相対的スライド量が前記排出開口の開口度を規定し、
前記第1プレートは、前記複数の第1開口としての円周方向に放射状に並んだ複数の第1スリットを有する円形プレートであり、
前記第2プレートは、前記複数の第2開口としての円周方向に放射状に並んだ複数の第2スリットを有する円形プレートであり、
前記第1プレートに対する前記第2プレートの相対的スライド回転量に応じて前記排出開口の開口度がゼロから最大まで変化し、
前記複数の第1スリット及び前記複数の第2スリットはそれぞれ交互に配列された複数の長いスリット及び複数の短いスリットで構成され、
前記各長いスリットは前記各短いスリットに対して径方向の長さが長く、
前記第1プレート及び前記第2プレートの中央部において前記各長いスリットの内側端が前記各短いスリットの内側端よりもより中心に近い位置まで到達している、
ことを特徴とする散薬分注装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置において、
前記各散薬ユニットは、前記排出開口に対して直接的に又は間接的に振動を伝達するバイブレータを含む、ことを特徴とする散薬分注装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記各散薬ユニットは、前記開閉機構を駆動する駆動部を含み、
前記各散薬ユニットにおいて前記排出開口を間において前記バイブレータと前記駆動部とが対称の位置に設けられた、ことを特徴とする散薬分注装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置において、
前記各散薬ユニットは係合片及びそれを受け入れて保持する係合溝の内の一方を有し、
前記各保持部は前記係合片及び前記係合溝の内の他方を有する、
ことを特徴とする散薬分注装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置において、
前記制御部は、1回の散薬分注工程において前記排出開口の開口度を段階的に又は連続的に小さくすることにより排出速度を低下させる機能を備える、ことを特徴とする散薬分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は散薬分注装置に関し、特に、複数の散薬を分注可能な散薬分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調剤薬局、病院の薬剤部等においては、処方箋に従って散薬(粉薬、散剤又は粉状薬剤とも称される)が処方される。具体的には、薬剤師による散薬の計量、分包等の作業が実施される。一般に、散薬の計量に当たっては天秤が利用されており、その作業は自動化されていない。分包作業においては、通常、分包装置が利用され、計量後の散薬が所定個に分割(小分け)され、それらが複数の薬包内に収容される。分包前に複数の散薬が調剤用の鉢を用いて手作業で混合されることもある。いずれにしても、個々の散薬を正確に計量することが非常に重要であり、その自動化が要望されている。
【0003】
特許文献1には粉体充填装置が開示されている。当該装置は静電荷像現像用トナーなどの粉体を排出するものである。同文献の従来技術の欄に開示された粉体充填装置は、粉体を収容したタンクと、タンク内において垂直中心軸回りに回転するオーガ(螺旋状送りねじ)と、タンク下部に設けられたシャッタ機構と、振動を生じさせるバイブレータと、を有する。シャッタ機構は重合配置された2枚の円板体を有する。各円板体には粉体の通路をなす複数の扇状開口が放射状に形成されており、一方の円板体に対する他方の円板体の相対回転の有無によって粉体通路が開閉される。しかし、同文献には散剤の扱いについては一切記載されていない。同文献に記載された装置ではタンクは固定設置されるものであり、また充填対象となる粉体は常に一定であると解される。上記のシャッタ機構は文字通り粉体を出すか出さないかを切り替えるものであると理解され、開口量可変については記載されていない。ちなみに、同文献の実施形態に係る粉体充填装置は、シャッタ機構がメッシュで構成され、メッシュへの振動伝達の有無を切り替えることにより粉体の流出のオンオフが制御されている。なお、本願に関連する未公開の先願として特願2011−155020号がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−234501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調剤施設においては、例えば80種類もの散剤が常備されている。各散剤の物理的性質は区々であり、凝集性(あるいは付着性)の高いものから低いものまで、比重の高いものから低いものまで、その他諸々の性質をもったものが存在する。計量を自動化するに当たっては、多種多様の性質をもった散剤につき、指定量を正確に処方用容器内に移すための特別な仕組みが求められる。ちなみに、工場内の機械設備として、同じ粉体(粉粒体)を常に同じ条件で所定量ずつ吐出して別の容器へ移す装置は周知である。しかし、上記のような背景もあって、様々な薬剤を自動的に吐出、計量する散薬分注装置は実現されていないのが現状である。
【0006】
本発明の目的は、様々な散薬の分注を正確に行える散薬分注装置を実現することにある。本発明の他の目的は、元容器内における散薬の量によらずに安定して散薬の分注を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る散薬分注装置は、複数の散薬ユニットと、前記複数の散薬ユニットを交換可能に保持する複数の保持部を有するラックと、前記ラックに保持された前記複数の散剤ユニットの中から選択された対象散薬ユニットに対して位置決められ、当該対象散薬ユニットから排出された散薬を受け入れる容器と、を含み、前記各散薬ユニットは、前記散薬を収容する収容部と、前記収容部における排出開口を開閉する機構であって、前記排出開口の開口度を可変可能な開閉機構と、を含む。
【0008】
上記構成によれば、ラックにおいて、複数の散薬ユニットが交換可能に保持される。望ましくは、ラックには複数の保持位置が定められ、各保持位置に保持部が設けられる。各保持部は、保持構造あるいは保持手段を構成するものである。保持された複数の散薬ユニットの中から、分注対象となる対象散薬ユニットが指定され、対象散薬ユニットに対して容器が位置決められ、その状態で散薬分注つまり散薬の移送が実施される。望ましくは、対象散薬ユニットの直下に容器が位置決められ、対象散薬ユニットの排出開口を通じて落下した散薬が容器によって捕集される。その際、開閉機構によって排出開口の開状態と閉状態とが切り替えられる。また必要に応じて排出開口の開口度が調整される。凝集性の高いつまり流れ出にくい散薬の場合、排出開口の開口度を大きくし、凝集性の低いつまりさらさらの散薬の場合、排出開口の開口度を小さくしてもよい。散薬ユニット内における散薬量に応じて排出開口の開口度を可変することも可能である。あるいは、1回の散薬分注過程において、排出進行中に開口度を可変させて排出速度又は排出条件を可変するようにしてもよい。排出終了段階で開口度を小さくすれば、排出量の微調整が容易となる。あるいは、過剰排出という事態を効果的に回避可能である。開閉機構は、単に排出開口の開閉を行うだけでなく、排出開口の開口度を調整する機能を備えているので、対象や状況に応じて適切な排出制御を適用することが可能である。望ましくは、処方箋に基づく1又は複数の散薬について分注が完了した場合、容器が所定の取り出し位置に位置決められ、そこで使用者によって容器が取り出される。散薬分注装置に更に複数の散薬を混合、攪拌する機構を搭載するようにしてもよい。容器を支持する台座に重量センサを設け、分注量を実測するのが望ましい。
【0009】
望ましくは、前記開閉機構は、複数の第1開口を有する第1プレートと、前記第1プレートに重合配置され、複数の第2開口を有する第2プレートと、前記第1プレートと前記第2プレートとの間の相対的スライド量を可変するスライド機構と、を含み、前記相対的スライド量が前記排出開口の開口度を規定する。この構成によれば、2つのプレートの相対的スライド量を可変することにより、排出開口の開口度を可変することができる。すなわち、相対的なスライド量に応じて、複数の第1開口と複数の第2開口の相互の重合面積(その部分が排出開口を規定する)を変動させるものである。
【0010】
望ましくは、前記第1プレートは、前記複数の第1開口としての円周方向に放射状に並んだ複数の第1スリットを有する円形プレートであり、前記第2プレートは、前記複数の第2開口としての円周方向に放射状に並んだ複数の第2スリットを有する円形プレートであり、前記第1プレートに対する前記第2プレートの相対的スライド回転量に応じて前記排出開口の開口度がゼロから最大まで変化する。この構成によれば回転運動によって排出開口の開口度を可変できる。一方のプレートを固定プレートとし、他方のプレートを可動プレートとするのが望ましい。もちろん、2つのプレートの両者とも可動プレートとして構成することも可能である。
【0011】
望ましくは、前記各第1スリット及び前記各第2スリットは、中央部から径方向外側にかけて円周方向幅が徐々に広がった形態を有し、前記本体内には頂点から周囲外側へ傾斜した円錐面を有する傘部材が設けられる。傘部材の存在によって本体内において散薬は周辺部分により多く落下することになり、本体内において、排出開口の中央部付近に散薬が集中的に落ち込みあるいはそこに集積してしまうことを回避できる。各スリットの円周方向幅が外側にかけて広がっているので、本体内において、排出開口の周囲に散薬をより多く導けばスリットの詰まり等を効果的に防止しつつ散薬の円滑な排出を行える。
【0012】
望ましくは、前記複数の第1スリット及び前記複数の第2スリットはそれぞれ交互に配列された複数の長いスリット及び複数の短いスリットで構成され、前記各長いスリットは前記各短いスリットに対して径方向の長さが長く、前記第1プレート及び前記第2プレートの中央部において前記各長いスリットの内側端が前記各短いスリットの内側端よりもより中心に近い位置まで到達している。この構成によれば排出開口の中央部において隣接するスリット間の接触や連絡を防止しつつ、中央部においても一定の開口を形成して、中央部における散薬の滞留を防止できる。
【0013】
望ましくは、前記各散薬ユニットは、前記排出開口に対して直接的に又は間接的に振動を伝達するバイブレータを含む。本体に対して振動を与えればその内部におけるブリッジ(粉体が例えばアーチ状に連なって密集して崩れなくなるような態様)等の発生を防止又は軽減可能である。排出開口に振動を伝達すれば粉切れを良くでき、排出開口付近での詰まり等を防止できる。なお、開閉機構の下面側に付着している散薬等をすべて振動により落下させれば、容器移動後における不必要な散薬落下を防止できる。
【0014】
望ましくは、前記各散薬ユニットは、前記開閉機構を駆動する駆動部を含み、前記各散薬ユニットにおいて前記排出開口を間において前記バイブレータと前記駆動部とが対称の位置に設けられる。この構成によれば重量の不均衡を防止又は軽減して、各保持部に対して不必要なモーメントが及ぶことを防止できる。
【0015】
望ましくは、前記各散薬ユニットは係合片及びそれを受け入れて保持する係合溝の内の一方を有し、前記各保持部は前記係合片及び前記係合溝の内の他方を有する。この構成によれば係合溝に対して係合片を差し込むだけで散薬ユニットを位置決めることができるから作業性を良好にできる。散薬ユニットの両側に一対の係合構造を設けるのが望ましい。
【0016】
望ましくは、前記各散薬ユニットにおける前記開閉機構の動作を制御する制御部を含み、前記制御部は、1回の散薬分注工程において前記排出開口の開口度を段階的に又は連続的に小さくすることにより排出速度を低下させる機能を備える。
また、本発明に係る散薬分注装置は、複数の散薬ユニットと、前記複数の散薬ユニットを交換可能に保持する複数の保持部を有するラックと、前記ラックに保持された前記複数の散剤ユニットの中から選択された対象散薬ユニットに対して位置決められ、当該対象散薬ユニットから排出された散薬を受け入れる容器と、を含み、前記各散薬ユニットは、前記散薬を収容する収容部と、前記収容部における排出開口を開閉する機構であって、前記排出開口の開口度を可変可能な開閉機構と、を含み、前記各散薬ユニットにおける前記開閉機構の動作を制御する制御部であって、前記対象散薬ユニット内の前記散薬についての流れ易さに関する物理的性質としての凝集性が低い場合には、前記凝集性が高い場合に比べて当該対象散薬ユニットにおける前記排出開口の開口度を小さくする制御を行う制御部が設けられた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、様々な散薬の分注を正確に行える散薬分注装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る散薬分注装置の好適な実施形態を示す正面図である。
図2図1に示した散薬分注装置の側面図である。
図3】散薬ユニットの断面図である。
図4】傘部材の上面図である。
図5】他の傘部材を示す図である。
図6】開閉機構を構成するプレートの平面図である。
図7図1に示した装置の動作例を示すフローチャートである。
図8】他の実施形態に係る装置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本発明に係る散薬分注装置の好適な実施形態が示されており、図1はその要部構成を示す正面図である。この散薬分注装置は調剤薬局や病院の調剤部などに設置されるものであり、処方箋データに従って1又は複数の散薬についての分注処理を実行するものである。
【0020】
散薬分注装置10は、図1に示されるようにベース12から起立したラック14を備えている。ラック14上には、具体的には正面パネル上には複数の保持位置16が設定されている。各保持位置16に対して保持構造20が設けられ、それに対して着脱自在に各散薬ユニット18が装着される。図1においては上下2段の散薬ユニット列が示されているが、横方向の並び数および縦方向の並び数については任意に設定可能である。例えば合計で80個の散薬ユニット18が装着されるように構成してもよい。
【0021】
各散薬ユニット18について説明する。各保持位置16には上記の通りそれぞれ保持構造20が設けられている。保持構造20は、図1に示す例において、2つの保持アーム22A,22Bを有している。それらの保持アーム22A,22Bはラック14の正面から前方に突出した部材である。散薬ユニット18は散薬を収容する本体26を備えている。本体26の上部開口には蓋27が設けられている。上述したように散薬ユニット18を保持位置から取り外すことが可能であり、その取り外した状態において(あるいは散薬ユニット18をセットした状態において)蓋27が開けられ、上部開口を介して本体26内に所定の散薬が入れられる。
【0022】
本体26の下部は細くなっており、その底面には排出開口を開閉するための開閉機構28が設けられている。開閉機構28ついては後に図3等を用いて詳述する。プローブ32は開閉機構28の動作を行わせるものであり、駆動部32により発生した駆動力により開閉機構28が動作して排出開口の開口度がゼロから最大まで可変設定される。バイブレータ30は本体26の下部に取り付けられており、そこで生じた振動が本体26に伝達される。その振動は同時に開閉機構28にも伝達されている。
【0023】
以上のように、ラック14においては、例えばその上段に複数の保持位置16が設定され、それらに対して複数の散薬ユニット18が装着される。同様に、ラック14の下段には複数の保持位置16が設定されており、それらに対して複数の散薬ユニット18が装着される。その装着作業は使用者によって行われているが、それを自動化することも可能である。また各散薬ユニット18に対する散薬の供給を自動化することも可能である。
【0024】
図1には示されていないが、各散薬ユニット18にはRFタグが設けられており、一方、各保持位置18にはID読取機が設けられており、散薬ユニット18が装着されるとそのIDが自動的に読み取られ、各保持位置と各散薬ユニットの対応関係が図示されていないテーブルによって管理される。図示されていない制御部はそのようなテーブルを参照しつつ、上位システムから供給される処方箋データあるいは動作命令に従って1又は複数の散薬についての分注処理を実行する。その場合においては各散薬ユニット18における駆動部及びバイブレータが制御されることになる。
【0025】
可動体34は容器36を備えている。容器36は分注により取り出される散薬を収容する受け皿であり、容器36は分注対象となった散薬ユニットの直下に位置決められる。容器36の下部には可動ベース38が設けられ、可動ベース38と容器36との間には本実施形態において重量センサ40が設けられている。この重量センサ40によって分注実行中にリアルタイムで重量が検知され、これによって分注量が監視される。もちろんこのような重量センサによることなく光学的センサ等を利用して排出量のモニタリングを行うようにしてもよい。可動体34は容器36を水平方向および垂直方向に搬送するものであり、その搬送経路あるいはレールが符号42によって示されている。搬送経路42はX方向に伸長した経路42Aと、Z方向すなわち垂直方向に伸長した経路42Bと、更にその上端から水平方向に伸長した経路42Cと、で構成されている。もちろんそのような搬送経路は一例であり、ラック14上における複数の散薬ユニット18の配列に応じて必要な搬送経路を設定すればよい。
【0026】
本実施形態においては複数の散薬ユニット18が固定配列されている一方において、可動体34が駆動されていたが、容器36を固定して複数の散薬ユニット18を運動させることにより、両者の対応関係を定めるようにしてもよい。例えば円形のプレート上に複数の散薬ユニット18を円周上に並べ、その直下に固定配置された容器を設けるようにしてもよい。
【0027】
可動体34の搬送制御は上述した制御部により実行されている。制御部の制御により本実施形態においては複数の散薬についての分注処理を連続的に実行することが可能である。ちなみに、分注対象となった散薬ユニットから排出される散薬の全てが容器36内に収容されるように容器36側に吸引機構を設けることも可能であり、また分注対象となっていない散薬ユニットから自然落下する散薬を補集するための進退可能な皿部材等を設けるようにしてもよい。更に後に説明するように複数の散薬ユニットに対する異物混入等を防止するためのカバー等を設けるのが望ましい。
【0028】
可動体34に容器36を上下方向に駆動する機構を設けてもよく、例えば容器36の上部開口内に排出ユニットの排出開口すなわち下端を差し込みその状態で排出を行わせれば、散薬の飛散を防止できるという利点が得られる。
【0029】
図2には図1に示した散薬分注装置の側面図が概略的に示されている。上述したようにラック14には複数の保持位置が設定されており、各保持位置ごとに散薬ユニットがセットされる。各保持位置には一対の保持アーム22A,22Bが設けられ、それらの保持アーム22A,22Bにはその前側端にそれぞれ係合溝23A,23Bが形成されている。各係合溝23A,23Bは下側に向かって先細となったV形をした溝である。一方、保持ユニットの側面にはV形をした一対の係合片44A,44Bが形成されており、それらが一対の係合溝23A,23Bに上方から差し込まれ両者の嵌合状態が形成される。これによって保持ユニットのぐらつき等が防止され保持ユニットが安定的に保持される。ちなみに保持アーム22A,22Bを弾性部材等で構成し振動吸収作用を発揮させるようにしてもよい。すなわちバイブレータの駆動が行われている散薬ユニットから他の散薬ユニットへの振動の回り込みを防止する措置を講ずるのが望ましい。
【0030】
上述したように、可動体34は容器を搬送する可動ベース38を備えており、そこには重量センサ40が設けられている。可動ベース38は搬送アーム38A上に固定配置されており、搬送アーム38Aはラック14内に設けられた搬送機構に連結されている。その搬送機構によって可動体が水平方向及び垂直方向に搬送される。符号46は透明なカバーを示している。
【0031】
図3には、散薬ユニット18の断面図が示されている。本体26は本体ケース26Aを有する。その内部は収容空間48であり、それは大別して上部48A,中間部48B及び下部48Cからなる。そこには所定の散薬が上方から充填される。ちなみに上部開口には蓋27が取り付けられている。それは取り外し可能なものである。本体26内には傘部材50が設けられている。この傘部材50は本体26における中心軸上に設定される頂点50Aを有する円錐形状の部材であり、本実施形態においてはその下側においても円錐形状が採用されている。上から散薬が入れられると、この傘部材50の上面に散薬が当たり本体26の周辺部を通過して散薬が下方へ落下する運動を行う。このような部材により本体26における水平方向の中央部分に散薬が集積してしまうという問題を防止でき、集積量を水平方向に均一化することが可能であり、あるいは集積量を搬出開口の周辺部により多く配分することが可能となる。
【0032】
上述した上部48Aは大径部であり、下部48Cは小径部である。それらを連絡する中間部48Bはテーパー部を構成しており、図において符号70は漏斗状の斜面を示している。本体26の外側には上述した係合片44A,44Bが設けられ、それはアーム22A,22Bに形成された係合溝に係合している。
【0033】
下部48Cの底面が排出開口52を構成しており、そこには開閉機構28が設けられている。開閉機構28は本実施形態において、固定プレート54及び可動プレート56を有している。それらのプレート54及び56は相対的に回転運動する円形板であり、それぞれメッシュ構造を有している。ちなみに、符号58は固定プレート54に対して可動プレート56を回転運動させるためのベアリング構造を示している。
【0034】
駆動部32は、モータ60を有し、そのモータ軸62の回転運動がギア64に伝達され、そこに形成された歯車が可動プレート56の外側に形成された歯車にかみ合っており、すなわちモータ32の回転力が可動プレート56の回転運動として伝達されている。固定プレート54に対して可動プレート56を所定角度回転させることにより、排出開口52の開口量をゼロから最大まで可変することが可能である。これにより散薬の種類に応じて開口度合いを調整でき、あるいは散薬の流出速度を分注工程の進行度に応じて可変設定することが可能となる。
【0035】
バイブレータ30は振動を発生する部分であり、その振動は軸68を介して本体26に伝達されている。これによって本体26の内部において散薬が詰まったりブリッジ状の構造が生じてしまったりすることを防止でき、また開閉機構28における各開口に散薬が詰まってしまうような問題を効果的に防止できる。なお、開閉機構28を閉動作した後にバイブレータ30を動作させれば下側のプレートの下面側に付着している散薬を効果的にふるい落とすことが可能であり、不用意な散薬落下を防止できるという利点を得られる。但し、計量誤差が問題となる場合にはそのような事後的なふるい落としを行わない方がよい。
【0036】
本実施形態においては、排出開口52を間としてその一方側に駆動部32が設けられ、その他方側にバイブレータ30が対称の関係をもって設けられている。それらの部材は一定の重量を有しており、それらが左右に分かれて配置されることにより重量バランスを良好にできるという利点を得られる。これによって保持部に加わる不必要なモーメントを軽減できる。
【0037】
図4には上述した傘部材50の上面が示されている。符号50Aは頂点を示しており、そこを最高の高さとして周囲外側に向かって斜面が構成されており、その斜面は円錐面となっている。傘部材の周囲には図において4つの連結部分50Bが設けられ、それらの連結部分50Bによって傘部材50が本体内に設置されている。傘部材50と本体の内面との間には複数の円弧状スリットが形成されている。
【0038】
図5には傘部材の変形例が示されており、図示される例においては傘部材72がかなり高い頂点72Aを有しており、そこから急峻な円錐面が構成されている。例えばその傾斜角度は45度である。図5に示されるように、円錐面の周囲に形成されたスリットを介して散薬が落下し、その落下した散薬がテーパー面に衝突した上で下部へ落下して行くことになる。その結果排出開口の中央部よりも周辺部により多くの散薬を落下させることが可能となっている。もっとも、容器本体内に多量の散薬が入ったような場合には全ての隙間に散薬が充填されることになるが、上記構成によればそのような場合においても結果として積極的に排出開口の周囲に散薬を集積させることが可能となる。
【0039】
図6には、図3に示した固定プレート54の平面図が示されている。本実施形態において固定プレート54と可動プレート56は同一の構成を有しており、図6においてはそのうちで代表して固定プレート54が図示されている。図においてθは円周方向を示しており、rは径方向を示している。本実施形態においては円周方向に沿って複数のスリットが設けられており、それらのスリットは大別して長いスリット74と短いスリット76とからなる。すなわち長いスリット74と短いスリット76とが互い違いに配列されている。長いスリット74は径方向において短いスリット76よりも長い長さを有している。ただし両者の外側端は同じ位置にあり、内側端の位置がそれぞれ異なっている。長いスリット74の方が中央部78により入り込んでいる。長いスリット74は3つのスリット要素74a,74b,74cからなり、これと同様に、短いスリット76はスリット要素76a,76b,76cからなる。両者間においては最も内側のスリット要素74cと76cの長さがそれぞれ異なっており、長いスリットにおける最も内側のスリット要素がより伸長しており、その内側端が中央部78までより入り込んでいる。
【0040】
ちなみに、長いスリット及び短いスリットの円周方向の幅は同一であり、両者間の間隔も同一である。すなわち、図においてΔθ1,Δθ2,Δθ3はいずれも同一の角度である。もちろん、それぞれの角度を異ならせるようにしてもよい。同じスリットパーターンを有するプレートを互いに重ね合わせた上で、Δθ1の回転運動量をもって両者間における開口度をゼロから最大値まで可変することが可能である。
【0041】
本実施形態においては長いスリット74と短いスリット76の交互配列を採用したため、中央部78にまでできるだけ開口量を設定できるという利点が得られる。例えば仮に、同じ長さのスリットだけを配列した場合、中央部において隣接スリットがくっついてしまったり連絡してしまったりすることが危惧され、あるいは構造的に弱いものとなってしまうが、本実施形態によれば構造の強化を図りつつ中央部においてできるだけ開口量を設定することが可能である。その結果、当該部分における散薬の残留を軽減することが可能となる。ちなみに各プレート54,56は薄い金属プレートによって構成されるのが望ましい。
【0042】
図7には、図1に示した装置の動作例がフローチャートとして示されている。S10においては、分注対象となった散薬ユニットの下方に可動部が位置決められる。すなわち、分注対象散薬ユニットの直下に容器が位置決められる。S12においては開閉機構の制御により排出開口が全開とされる。これにより対象散薬ユニットの搬出開口から散薬が下方へ流れ出し、その流れ出した散薬が容器内に落下することになる。S14においてはバイブレータによる振動伝達が開始される。この振動開始は開閉機構を開動作せる前から行うようにしてもよい。S16においては重量センサの出力値に基づいて処方量よりも手前側に設定された所定量(中途目標量)に分注量が到達したか否かが判断される。到達していれば、S18において開閉機構が制御されて排出開口の開口度合いが例えば50%とされ、分注動作が継続される。このように排出速度を小さくすることにより、過剰排出を防止でき、また排出量の微調整を行うことが容易となる。
【0043】
S20においては、処方量(最終目標量)に分注量が到達したか否かが判断され、到達したならば、S22において開閉機構によって排出開口が完全に閉じられる。そしてS24において閉止動作の完了とともに振動動作が停止される。閉止動作前に振動を止めるようにしても良い。S26においては次の散薬についての分注を行うか否かが判断され、そのような分注を行う場合にはS10からの各工程が繰り返し実行される。そして最終的にS28において可動部が所定の取り出しポジションに位置決められ、その位置において容器がユーザーにより取り出される。そして新たな容器が可動部にセットされる。
【0044】
以上の動作例によれば、処方箋データに従って容器内に1又は複数の散薬を規定量ずつ正確に分注することが可能である。その場合において、開閉機構の制御及びバイブレータの制御により開口速度を可変しつつしかも詰まりを生じさせずに円滑に散薬の分注を行うことが可能である。本実施形態においては排出開口の開口度合いが2段階に制御されていたがより多数の段階をもって排出速度を制御するようにしてもよい。また凝集性のかなり低い散薬については最初から搬出開口の開口度合いを小さくするのが望ましく、そのような構成によれば過剰排出を未然に防止できるという利点が得られる。散薬ごとに粉体の性質が大きく異なるため、本実施形態においては上述した開閉機構を利用することにより粉体の性質に応じたあるいは環境に応じた適切な排出制御を実現することが可能である。その場合においても振動を併用しているため詰まりやブリッジ形成といった問題を未然に防止できる。
【0045】
図8には他の実施形態に係る要部構成が示されている。この実施形態においては駆動部及びバイブレータがラック14内に設置されている。具体的に説明すると、符号80は保持部を示しており、それは円筒形状を有している。散薬ユニット82は本体84を備え、その上部にはホルダ86が設けられている。ホルダ86は例えば弾性部材により構成され、そこを介した振動伝達が軽減されている。符号88は係合構造を示しており、例えば2つのピン等によってホルダ86が保持部80に装着される。
【0046】
本体84の下部には開閉機構90が設けられている。符号94はモータを示しており、その駆動力がシャフト96を介してまたカップリング98を介してシャフト100に伝達され、シャフト100の端部に設けられたギア102が回転運動を行う。これにより開閉機構90における回転プレートが回転運動を行う。カップリング98は散薬ユニット84側に設けられたシャフト100を受け入れる部材である。すなわちカップリング98が接続部材を構成している。ラック14内に設けられたバイブレータ92はシャフト92Aを有しており、その振動が容器84の下部に設けられた台座に与えられている。すなわち以上の構成によれば、散薬ユニット82を保持部80に装着する時に機械的な伝達が成立し、これによって回転駆動力の伝達及び振動の伝達が実現されている。
【符号の説明】
【0047】
10 散薬分注装置、14 ラック、16 保持位置、18 散薬ユニット、20 保持構造、34 可動体、36 容器、40 重量センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8