特許第6037654号(P6037654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6037654-床用断熱材 図000004
  • 特許6037654-床用断熱材 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037654
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】床用断熱材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   E04B1/80 A
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-110760(P2012-110760)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-238014(P2013-238014A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 顕
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/033185(WO,A1)
【文献】 特開平11−207881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床構造を構成する枠体間に装着されて、床用面材の下方に配置される床用断熱材において、
無機繊維に、熱硬化性樹脂及び撥水剤を含有するバインダーを付与してマット状に成形された無機繊維マットと、
前記無機繊維マットの底面に貼着されて、該無機繊維マットの幅方向両側に延出され、該無機繊維マットの両側面を覆い、更にフランジ状に延出して耳部を構成できる長さとされた、有機繊維を含む不織布からなるシート状の支持材とを備え、
前記支持材は、前記無機繊維マットの両側面を覆う部分及び前記耳部を構成する部分を除く部分であって、前記無機繊維マットの底面と接する面の反対側の面に、熱可塑性樹脂とHLB値が8以上の界面活性剤と防かび剤とを含む親水処理剤が付与されていると共に、前記無機繊維マットの両側面を覆う部分及び前記耳部を構成する部分であって、床構造を構成する枠体と接する側の面に、撥水剤を含む撥水処理剤が付与されていることを特徴とする床用断熱材。
【請求項2】
前記無機繊維マットの底面の全面に前記支持材が貼着されている請求項記載の床用断熱材。
【請求項3】
前記支持材が、ポリエステル繊維の不織布からなる請求項1又は2記載の床用断熱材。
【請求項4】
前記親水処理剤が、乾燥皮膜の23℃、湿度50%の環境下における水滴落下法による接触角が30°以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の床用断熱材。
【請求項5】
前記無機繊維マットは、24時間の水浸漬における体積吸水率が10%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の床用断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構造を構成する枠体間に装着されて、床用面材の下方に配置される床用断熱材に関し、更に詳しくは、無機繊維マットと、該無機繊維マットの底面に貼着されたシート状の支持材とを有する床用断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物の建設においては、省エネルギー及び居住の快適性の観点から、断熱施工が行われており、建物の床、壁、天井、屋根下地部に断熱材を敷設している。住宅等の床下の断熱施工においては、土台、大引き、根太等の床構造を構成する枠体間に断熱材を配置し、その上に床用面材(床板、床下地板)などを敷設している。
【0003】
床下の断熱施工に用いる床用断熱材として、特許文献1には、マット状の断熱材の底面に、断熱材の両側面を覆いフランジ状に延出して耳部を構成できる長さを有するシート状の支持材が貼着され、該支持材が透湿性を有し、且つ、該支持材の少なくとも一部に親水剤が付与されている床用断熱材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2012/033185号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
戸建住宅や集合住宅の建設においては、耐震性、経済性及び作業者の安全性の観点から、屋根及び壁を建設した後に、床を建設する工法である根太床工法から、先に床を建設して足場を確保した後に、屋根及び壁を建設する工法である剛床工法に変わりつつある。
【0006】
剛床工法では、屋根を建設する前に床を建設するため、床構造への雨水の侵入や、住宅基礎となるコンクリート打ち込みから放出される水分などにより、床下空間の湿度が高くなり、床下に施工した断熱材に結露水が付着して、カビが発生したり、断熱性能が損なわれる恐れがあった。
【0007】
特許文献1では、段落番号0052に記載されるように、支持材に親水性効果を発現し易くし、初期の性能を高めるために支持材の基材に親水剤を付与している。また、実施例においても、支持材の基材に親水剤を付与している。しかしながら、親水剤は、結露水等の水滴によって洗い流され易く、支持材の親水性が経時的に低下する傾向にあった。このため、支持材や無機繊維マットにカビ等が経時的に発生し易くなる恐れがあった。
【0008】
よって、本発明の目的は、支持材に付着した水分を速やかに除去でき、長期にわたってカビの発生を抑制できる床用断熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の床用断熱材は、床構造を構成する枠体間に装着されて、床用面材の下方に配置される床用断熱材において、無機繊維に、熱硬化性樹脂及び撥水剤を含有するバインダーを付与してマット状に成形された無機繊維マットと、前記無機繊維マットの底面に貼着されて、該無機繊維マットの幅方向両側に延出され、該無機繊維マットの両側面を覆い、更にフランジ状に延出して耳部を構成できる長さとされた、有機繊維を含む不織布からなるシート状の支持材とを備え、前記支持材は、前記無機繊維マットの両側面を覆う部分及び前記耳部を構成する部分を除く部分であって、前記無機繊維マットの底面と接する面の反対側の面に、熱可塑性樹脂とHLB値が8以上の界面活性剤と防かび剤とを含む親水処理剤が付与されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の床用断熱材によれば、無機繊維マットが、無機繊維に撥水剤を含有するバインダーを付与してマット状に成形してなるものであるので、雨水等が無機繊維マットの内部に侵入しても、速やかに外部に排水できる。
また、無機繊維マットの底面には、無機繊維マットの底面と接する面の反対側の面に、熱可塑性樹脂とHLB値が8以上の界面活性剤と防かび剤とを含む親水処理剤が付与された支持材が貼着されているので、支持材表面に上記雨水や結露水などの水滴が付着しても、水滴が支持材表面に薄く広がって空気との接触面積が大きくなり、これらの水滴を速やかに乾燥除去できる。
また、この親水処理剤は、熱可塑性樹脂と、HLB値が8以上の界面活性剤と、防かび剤とを含んでなるものであるので、支持材に強固に付着しており、雨水や結露水等により洗い流され難く、長期にわたって優れた親水性能を発揮できる。更には、防かび剤を含有するので、カビの発生を長期にわたって抑制できる。
そして、支持材の、無機繊維マットの両側面を覆う部分及び耳部を構成する部分には、親水処理剤が付与されていないので、根太や大引等の床構造を構成する枠体や、床用面材の吸水による劣化や、カビの発生を抑制できる。
【0011】
本発明の床用断熱材の前記支持材は、前記無機繊維マットの両側面を覆う部分及び前記耳部を構成する部分であって、床構造を構成する枠体と接する側の面に、撥水剤とを含む撥水処理剤が付与されていることが好ましい。この態様によれば、支持材の無機繊維マットの側面側に水滴が付着しても、支持材表面から水滴をはじいて除去できるので、枠体や床用面材の吸水による劣化や、カビの発生をより効果的に抑制できる。
【0012】
本発明の床用断熱材は、前記無機繊維マットの底面の全面に前記支持材が貼着されていることが好ましい。この態様によれば、支持材の中央部が垂れ下がって、無機繊維マットと支持材との間に隙間が生じることを防止でき、優れた断熱性能が得られる。
【0013】
本発明の床用断熱材は、前記支持材が、ポリエステル繊維の不織布からなることが好ましい。ポリエステル繊維は、適度に疎水性があって繊維自体が吸水し難く、また、親水処理剤の付着性が良好であるので、結露水を効率よく乾燥除去できる。
【0014】
本発明の床用断熱材は、前記親水処理剤が、乾燥皮膜の23℃、湿度50%の環境下における水滴落下法による接触角が30°以下であることが好ましい。この態様によれば、支持材に付着した水滴をより薄く広げて効率よく乾燥除去できる。
【0015】
本発明の床用断熱材の前記無機繊維マットは、24時間の水浸漬における体積吸水率が10%以下であることが好ましい。この態様によれば、無機繊維マットに侵入した水分を速やかに外部に排水できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の床用断熱材によれば、雨水が無機繊維マットに侵入しても、速やかに外部に排出できる。更には、支持材に該雨水や結露水等の水滴が付着しても速やかに乾燥除去でき、長期にわたってカビの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の床用断熱材を用いた床断熱構造の概略構成図である。
図2】床下結露試験の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の床用断熱材について、図面を参照して説明する。図1には、本発明の床用断熱材を用いた床断熱構造が示されている。
【0019】
図1に示すように、本発明の床用断熱材10は、床構造を構成する枠体1,1間に装着し、床用断熱材10上に床用面材2を配置して床断熱構造を形成する際に用いられる。以下、床用断熱材10について詳しく説明する。
【0020】
本発明の床用断熱材10は、無機繊維マット20と、シート状の支持材30とを備える。
【0021】
無機繊維マット20は、無機繊維に、熱硬化性樹脂と、撥水剤とを含有するバインダーを付与してマット状に成形されてなるものである。
【0022】
無機繊維としては、特に限定されず、グラスウール、ロックウール等を用いることができる。無機繊維の繊維化方法は、火焔法、吹き飛ばし法、遠心法(ロータリー法とも言う)などの各種方法を用いることができる。
【0023】
バインダーに用いる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。好ましくは、バインダーの硬化時にホルムアルデヒドの放出を抑制できるという理由から、アクリル樹脂が用いられる。
【0024】
アクリル樹脂は、酸価が350〜850mgKOH/g、重量平均分子量が1,000〜15,000であるものが好ましい。
【0025】
また、アクリル樹脂の架橋剤は、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルカノールアミンを少なくとも1種以上含有するものが好ましい。架橋剤には、ジアルカノールアミン以外のポリオールを更に併用してよい。かかるポリオールとしては、特に制限はないが、水溶性のポリオールであることが好ましく、具体的には、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)及びその二量体又は三量体、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)及びその二量体又は三量体、1,3−プロパンジオール、2,2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,3−プロパンジオール等の脂肪族ポリオール類;トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のトリアルカノールアミン類;グルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、マルチトール等の糖類、及び上記ポリオール類と、フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等のポリエステルポリオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル樹脂系ポリオール等が挙げられる。架橋剤としてジアルカノールアミンとポリオールを併用する場合、ジアルカノールアミン類100質量部に対して、ポリオールは200質量部未満が好ましく、100質量部未満がより好ましい。
【0026】
アクリル樹脂と架橋剤とのモル比は、アクリル樹脂中のカルボキシル基のモル数に対し、架橋剤中の水酸基とイミノ基との合計のモル数が、0.8〜1.5であることが好ましく、0.9〜1.2がより好ましく、0.95〜1.1が特に好ましい。
【0027】
バインダーに用いる撥水剤としては、特に限定は無く、従来公知のものを用いることができる。好ましくは、水酸基、アミノ基、エポキシ基及びカルボキシル基から選ばれた官能基(以下、反応性官能基という)を有するフッ素化合物及び/又はケイ素化合物である。
【0028】
フッ素化合物としては、上記反応性官能基と、フルオロアルキル基とを有するものが好ましい。このようなフッ素化合物としては、例えば、特許第3746455などに記載されたフッ素化合物などを用いることができる。
【0029】
ケイ素化合物としては、上記反応性官能基と、ジメチルシロキサン部位とを有するものが好ましい。このようなケイ素化合物としては、例えば、特許第2863585号等に記載されたケイ素化合物などを用いることができる。
【0030】
バインダー中の撥水剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。撥水剤の含有量が0.5質量部未満であると、無機繊維マットの撥水性が十分でないことがある。10質量部を超えても撥水性は向上しないので経済的でない。
【0031】
バインダーには、硬化促進剤が含まれていてもよい。硬化促進剤としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム等の次亜リン酸塩類;トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン等の有機リン化合物類;テトラエチルホスホニウム塩、トリエチルベンジルホスホニウム塩、テトラn‐ブチルホスホニウム塩、トリn−ブチルメチルホスホニウム塩等の4級ホスホニウム塩類;三フッ化ホウ素アミン錯体、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム等のルイス酸化合物類;チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ジルコニルアセテート等の水溶性有機金属化合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。なかでも、次亜リン酸カルシウム、及びトリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンは、少量でも硬化促進効果が高い上に、バインダー硬化物中に残存しても、バインダー硬化物の耐湿性を損なうことが少ないので好ましい。
【0032】
バインダーには、更に、シランカップリング剤が含まれていてもよい。シランカップリング剤を含有することで、バインダーと無機繊維との接着性が向上する。シランカップリング剤の官能基数、種類、構造などは特に限定されないが、バインダーの主成分である熱硬化性樹脂との反応性や相溶性の良さから、アミノシランカップリング剤及び/又はエポキシシランカップリング剤が好ましい。アミノシランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。エポキシシランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.01〜0.5質量部が好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.01質量部未満であると、添加効果が殆ど得られない。0.5質量部を越えても無機繊維とバインダーとの接着性は向上しないので経済的でない。
【0033】
無機繊維マット20は、24時間の水浸漬における体積吸水率が10%以下であることが好ましく、5%以下がより好ましい。体積吸水率が10%を超えると、無機繊維マットから水が抜けにくくなり、カビ等が発生し易くなる。無機繊維マット20の体積吸水率を10%以下にするには、前記撥水剤をバインダーと併用とすれば良い。
【0034】
なお、本発明において無機繊維マット20の体積吸水率は、無機繊維マット20より100mm角の試験片を切り出し、試験片の寸法及び秤量した後に、水温20℃の水中に、水面下50mmとなるように浸漬し、浸漬開始後24時間後に試験片を取り出し、室温25℃で10分間金網の上に放置した後、試験片を秤量し、浸漬後の増量分を体積に対して百分率で表し、これを体積吸水率とした。
【0035】
無機繊維マット20の底面には、接着剤25によって、有機繊維を含む不織布をシート状に成形した支持材30が貼着されている。接着剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などのホットメルト系接着剤、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム系接着剤、アクリル樹脂、ポリビニルアルコールなどの水溶性接着剤、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコールなどのエマルジョン系接着剤などが挙げられ、特に、接着に要する時間が短いことから、粘着系のホットメルト系接着剤が好ましく使用される。支持材30は、無機繊維マット20の底面全面に貼着されていることが好ましい。支持材30を無機繊維マット20の底面全面に貼着することで、床用断熱材10を、枠体1,1間に装着した際に、支持材30の中央部が垂れ下がって無機繊維マット20と支持材30との間に隙間が生じることを防止でき、断熱性の低下を抑制できる。
【0036】
支持材30を構成する有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、セルロース繊維、芳香族ポリアミド繊維、アセテート繊維、塩化ビニル繊維、アクリル繊維等が挙げられる。好ましくは、適度に疎水性があって繊維自体が吸水し難く、また、親水処理剤の付着性が良好であるという理由からポリエステル繊維である。なお、ナイロン繊維やセルロールの親水性の高い有機繊維は、繊維自体の吸水性が高いので、支持材30と枠体1とが接触する部分にて、支持材30が吸水した水分により枠体1が腐朽する恐れがある。
【0037】
支持材30の目付け量は、10〜200g/mが好ましく、20〜100g/mがより好ましい。目付け量が10g/m未満であると支持材としての強度が不足し、施工後の床用断熱材を保持できない場合があり、200g/mを超えると、支持材の強度が過剰であり、逆に柔軟性が損なわれ、断熱材施工が煩雑になる場合がある。
【0038】
図1に示すように、支持材30は、無機繊維マット20の底面21に貼着されて、該無機繊維マット20の底面21を覆う底面部31と、無機繊維マット20の幅方向両側に延出した延出部32とを有する。延出部32は、無機繊維マット20の両側面22,22を覆う側面部33,33と、側面部33からフランジ状に延出して耳部34を構成できる長さとされている。
【0039】
本発明の床用断熱材においては、支持材30の延出部32を除く部分、すなわち、支持材30の底面部31であって、無機繊維マット20の底面21と接する面の反対側の面31aに、熱可塑性樹脂とHLB値が8以上の界面活性剤と防かび剤とを含む親水処理剤が付与されている。
【0040】
支持材30の底面部31は、バイレック法による吸水性評価において、底面部31から200×25mmの試験片を切り出し、試験片が垂直となるように上方を固定し、下端を水に浸漬させ、10分経過後の試験片内を水が上昇した高さが、120mm以上であることが好ましく、150mm以上がより好ましく、180mm以上が特に好ましい。120mm以上であれば、支持材30の底面部31が十分に親水処理されているので、支持材30の底面部31に結露水等の水滴が付着しても、水滴を薄く広げて空気との接触面積を大きくでき、水滴を速やかに乾燥除去できる。
【0041】
親水処理剤に用いる熱可塑性樹脂としては、特に限定は無い。例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。好ましくは、経済性、あるいは経年使用時の耐水性という理由から、ウレタン樹脂あるいは酢酸ビニル樹脂である。
【0042】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、10000以上が好ましく、20000〜1000000がより好ましく、20000〜500000がより好ましい。重量平均分子量が10000未満であると、増膜後のフィルム強度が低く、施工時に生じる支持材の擦れ、あるいは曲げ加工により、容易に支持材から剥離、あるいは脱落する場合がある。また、1000000を超えると、塗工の際に何らかの溶媒が必要となるが、その固形分が低くなる傾向にあり、支持材への所望する塗布量に調節することが困難となり、支持材の親水性が得られない場合がある。上限は500000が好ましい。尚、上記熱可塑性樹脂は、水性エマルジョンの形態で使用することが好ましい。
【0043】
親水処理剤に用いる界面活性剤は、熱可塑性樹脂との相溶性が良いものであれば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤のいずれも好ましく用いることができる。
【0044】
カチオン系界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0045】
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
両性イオン界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0047】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド化物等のポリエチレングリコール型、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の多価アルコール型が挙げられる。
【0048】
親水処理剤中の界面活性剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましい。1質量部未満であると、支持材30の底面部31を十分に親水処理できないことがある。20質量部を超えても、親水性の向上が観察できず、親水処理フィルムからのブリードアウトが生じ易くなり、カビ発生の誘因となる場合がある。界面活性剤の含有量は、界面活性剤のHLBに合わせ調整することが好ましく、HLBが高くなるに伴い含有量を低減することがより好ましい。
【0049】
親水処理剤に用いる防かび剤は、特に限定は無いが、揮発性の高くないものが好ましく用いられる。具体的には、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、窒素及び硫黄よりなる複素環構造を有する有機窒素硫黄化合物(チアゾール、イソチアゾールなど)、ピロール環を有する有機化合物、含窒素有機化合物(4級アンモニウム塩、グアニジンなど)等が挙げられる。好ましくは、少量の含有量にて防カビ性が高いという理由から有機窒素硫黄化合物である。
【0050】
親水処理剤中の防かび剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.0001〜0.1質量部が好ましく、0.001〜0.05質量部がより好ましい。0.0001質量部未満であると、添加効果が殆ど得られない。0.1質量部を超えても効果は向上しないので経済的でない。
【0051】
親水処理剤は、乾燥皮膜の23℃、湿度50%の環境下における水滴落下法による接触角が30°以下が好ましく、0°がより好ましい。乾燥皮膜の接触角が30°以下であれば、支持材30の底面部31に結露水等の水滴が付着しても、水滴を薄く広げて空気との接触面積を大きくでき、水滴を速やかに乾燥除去できる。なお、上記接触角は、接触角計を用い、乾燥皮膜上に水滴を落下させた後、水滴の広がりが平衡に達したところで、接触角計の拡大鏡に備え付けられている分定規を用いて測定できる。
【0052】
支持材30の底面部31への親水処理剤の付与方法は、特に限定は無い。例えば、支持材30の底面部31に親水処理剤を噴霧、塗布又は含浸させる方法などにより付与できる。
【0053】
親水処理剤の付与量は、0.01〜5.0g/mが好ましく、0.1〜1.0g/mがより好ましい。付与量が0.01g/m未満であると、支持材30の底面部31を十分に親水処理できないことがある。5.0g/mを超えると親水性の向上が観察できないだけでなく、支持材の剛直となり、断熱材施工時の作業性が劣る場合がある。
【0054】
本発明の床用断熱材は、支持材30の延出部32には親水処理剤が付与されていないが、延出部32の、床構造を構成する枠体1と接する側の面に、撥水剤を含む撥水処理剤が付与されていてもよい。延出部32に撥水処理剤を付与して撥水処理することで、支持材30の側面部33や耳部34に結露水等の水滴が付着しても、水滴をはじいて、側面部33や耳部34から水滴を速やかに除去できる。このため、枠体1や床用面材2の吸水による劣化や、カビ等の発生をより効率的に防止できる。
【0055】
撥水処理剤に用いる撥水剤としては、特に限定は無い。無機繊維マットのバインダーに用いた撥水剤と同様のものを用いることができる。
【0056】
撥水処理剤には、撥水剤の他に熱可塑性樹脂等が含まれていてもよい。熱可塑性樹脂としては、特に限定は無い。親水処理剤に用いた熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。なお、撥水処理剤は、熱可塑性樹脂を用いることなく、撥水剤のみであってもよい。
【0057】
支持材30の延出部32への撥水処理剤の付与方法は、特に限定は無い。例えば、支持材30の延出部32に撥水処理剤を噴霧、塗布又は含浸させる方法などにより付与できる。
【0058】
撥水処理剤の付与量は、0.001〜1.0g/mが好ましく、0.005〜0.5g/mがより好ましい。付与量が0.001g/m未満であると、支持材30の延出部32を十分に疎水処理できないことがある。1.0g/mを超えると撥水性の向上もなく、不経済である。
【0059】
本発明の床用断熱材は、床構造を構成する枠体1の上方に床用断熱材10を配置し、床用断熱材10を上方から枠体1,1間に挿入する。枠体1,1の間としては、例えば土台と大引との間、大引どうしの間、土台及び大引の上に載せられる根太どうしの間などが挙げられる。このとき、無機繊維マット20の両側から延出した支持材30の延出部32を、床用断熱材10を枠体1,1間に挿入した際に、図1に示すように、無機繊維マット20の両側面22,22を覆い、かつ、フランジ状に延びる耳部34が枠体1の上面に当接するように配置する。
【0060】
こうして設置された床用断熱材10は、支持材30の耳部34を枠体1上に、釘、ネジ、接着剤等で固定することにより、床用断熱材10を枠体1,1間に保持することができる。
【0061】
本発明の床用断熱材によれば、施工時に雨水が浸入したとしても、無機線マット30が、無機繊維に撥水剤を含有するバインダーを付与してマット状に成形してなるものであるので、速やかに無機繊維マットの外へ排水できる。
【0062】
また、無機繊維マット20の底面21には、熱可塑性樹脂とHLB値が8以上の界面活性剤と防かび剤とを含む親水処理剤が付与された支持材30が貼着されているので、支持材30の底面部31に上記雨水や結露水などの水滴が付着しても、付着した水滴が支持材表面に薄く広がって空気との接触面積が大きくなり、これらの水滴を速やかに乾燥除去できる。
【0063】
また、支持材30に付与する親水処理剤は、支持材30に強固に付着しており、支持材に付着した水滴により洗い流され難く、長期にわたって優れた親水性能を発揮できる。更には、この親水処理剤は、防かび剤を含んでいるので、カビの発生を抑制できる。
【0064】
そして、支持材30の、側面部33と耳部34には、親水処理剤が付与されていないので、枠体1や床用面材2の吸水による劣化や、カビ等の発生を抑制できる。特に、側面部33及び耳部34を疎水処理した場合においては、支持材の側面部33や耳部34に水滴が付着しても、付着した水滴をはじいて速やかに除去できるので、枠体1や床用面材2の吸水による劣化をより効率的に防止できる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の効果について、実施例及び比較例を用いて説明する。
【0066】
(測定方法)
・乾燥皮膜の接触角:試料をガラスプレパラート(幅15mm、長さ70mm)にディップ塗装した後、3時間の風乾を施した後、80℃で30分間乾燥して乾燥皮膜を形成した。該乾燥皮膜の接触角を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、接触角計を用いて測定した。測定に際しては、JIS R3257に準じ、乾燥皮膜表面に水滴を落とし、水滴の広がりが平衡に達してところで、接触角計の拡大鏡に備え付けられている分定規を用いて測定した。
【0067】
・支持材の吸水性:バイレック法により吸水性を評価した。支持材から200×25mmの試験片を切り出し、試験片が垂直となるように上方を固定し、下端を水に浸漬させた。10分経過後の試験片内を水が上昇した高さを測定した。
【0068】
・支持材の防かび性:JIS Z 2911 繊維製品の試験法に準じて、防カビ試験を行った。
すなわち、試料を質量30gとなるように試験片を作成した。一方、寒天培地で培養したAspergillus niger NBRC 105649、Penicillium citrinum NBRC 6352、Chaetomium globosum NBRC 6347、Myrothecium verrucaria NBRC 6113の4種類のカビを寒天培地ごと採取して水に懸濁させた。そして、新しい寒天培地上に配置した試験片に前記懸濁液を垂らし、2週間後までのカビの発生状況を3段階で評価した。
評価点0:菌糸(カビ)の発育が認められない
評価点1:菌糸発育部分の面積が全体の1/3を超えない
評価点2:菌糸発育部分の面積が全体の1/3を超える
【0069】
・無機繊維マットの体積吸水率:無機繊維マットより100mm角の試験片を切り出し、試験片の寸法及び秤量した後に、水温20℃の水中に、水面下50mmとなるように浸漬した。浸漬開始後24時間後に試験片を取り出し、室温25℃で10分間金網の上に放置した後、試験片を秤量した。浸漬後の増量分を体積に対して、百分率で表し、これを体積吸水率とした。
【0070】
・床下結露試験:図2に示すように、幅1000mm×奥行1000mm床用面材(大引き間は910mmとなるようにする)の上下に、透湿抵抗の高い材料であるポリスチレン発泡体を使用して密閉空間を作成した。床上部の空間は居住空間を想定した室温29℃、湿度68%に保ち、床下空間は結露を促進させるために、室温26℃、湿度は過飽和状態に保ち、床下断熱材下面(支持材表面)の結露状態を目視で判定した。
なお、試験片となる床用断熱材は、幅910mm奥行100mmに切断して、任意に10サンプルを選択して、試験片同士が順不同にてお互い接するように、大引きに支持材の耳部をタッカーで取付け、大引き間に充填した。
【0071】
[支持材の製造]
(製造例1−1)
ポリ酢酸ビニルエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値8.6のソルビタンモノラウレート15質量部、防かび剤として3−メチル−4−イソプロピルフェノール0.3質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤1を得た。処理剤1の乾燥皮膜の接触角は18°であった。
目付40g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤1を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.20g/mの付着量になるように塗布して支持材1を得た。支持材1の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は8.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0072】
(製造例1−2)
ポリ酢酸ビニルエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値19.4のポリエチレングリコールモノオレエート5質量部、防かび剤として2−n−オクチル‐4−イソチアゾリン−3−オン0.1質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤2を得た。処理剤2の乾燥皮膜の接触角は0°であった。
目付40g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤2を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.15g/mが付着するように塗布して支持材2を得た。支持材2の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は11.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0073】
(製造例1−3)
イソシアネートとして、2,4−トリレンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値12.5のポリオキシエチレンセチルエーテル10質量部、防かび剤としてベンジルデシルジメチルアンモニウムクロライド0.5質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤3を得た。処理剤3の乾燥皮膜の接触角は10°であった。
目付40g/mのポリアミド繊維の不織布に、処理剤3を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.50g/mが付着するように塗布して支持材3を得た。この支持材3の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は10.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0074】
(製造例1−4)
目付40g/mのアセテート繊維の不織布に、処理剤3を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に1.0g/mが付着するように塗布して支持材4を得た。支持材4の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は10.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0075】
(製造例1−5)
イソシアネートとして、2,4−トリレンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値13.4のポリオキシエチレンステアリルエーテル10質量部、防かび剤としてオキシン銅錯体0.6質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤4を得た。処理剤4の乾燥皮膜の接触角は0°であった。
目付40g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、断熱材の底面部に接着される部分に0.25g/mが付着するように塗布して支持材5を得た。支持材5の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は12.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0076】
(製造例1−6)
イソシアネートとして、イソホロンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値15.6のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート8質量部、防かび剤としてヒノキチオール1.0質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤5を得た。処理剤5の乾燥皮膜の接触角は0°であった。
目付40g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤5を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.15g/mが付着するように塗布し、さらに、断熱材に貼り付け時の耳部に当たる部分に1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノールを0.05g/mが付着するように塗布して、支持材6を得た。支持材6の親水処理部分のパイレック法による吸水性は11.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0077】
(製造例1−7)(未処理不織布)
目付40g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布を支持材7とした。支持材7のパイレック法による吸水性は2.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0078】
(製造例1−8)(親水剤、防かび剤を含有しない処理剤で不織布を処理)
ポリ酢酸ビニルエマルションをイオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤6を得た。処理剤6の乾燥皮膜の接触角は90°であった。
目付40g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤6を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.30g/mが付着するように塗布して支持材8を得た。支持材8の処理部分のパイレック法による吸水性は3.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0079】
(製造例1−9)(親水剤のHLBが8未満の処理剤で不織布を処理)
ポリ酢酸ビニルエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値2.8のグリセロールモノステアレート15質量部、防かび剤として2−n−オクチル‐4−イソチアゾリン‐3−オン0.1質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤7を得た。処理剤7の乾燥皮膜の接触角は60°であった。
目付40g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤7を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.20g/mが付着するように塗布して支持材9を得た。支持材9の処理部分のパイレック法による吸水性は3.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0080】
(製造例1−10)(親水剤のHLBが8未満で、防かび剤を含有しない処理剤で不織布を処理)
イソシアネートとして、イソホロンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値6.3のポリオキシエチレンアルキルアミン8質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤8を得た。処理剤8の乾燥皮膜の接触角は45°であった。
目付40g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤8を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.15g/mが付着するように塗布して支持材10を得た。支持材10の処理部分のパイレック法による吸水性は4.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0081】
(製造例1−11)(防かび剤を含有しない処理剤で不織布を処理)
イソシアネートとして、イソホロンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値15.6のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート8質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤9を得た。処理剤9の乾燥皮膜の接触角は0°であった。
目付40g/mのポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤9を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.15g/mが付着するように塗布して支持材11を得た。支持材11の処理部分のパイレック法による吸水性は11.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0082】
[無機繊維マットの製造]
(製造例2−1)
ポリカルボン酸としてポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量4,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分45%)を固形分換算で100質量部と、架橋剤としてジエタノールアミンを48.0質量部と、硬化促進剤として次亜リン酸ナトリウムを4.0質量部(架橋剤のイミノ基と水酸基の総モル量/ポリカルボン酸のカルボキシル基のモル量=1.0)と、γ―(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.2質量部を混合した後、25%アンモニア水で、pH=6.7に調整して樹脂組成物1を得た。そして、樹脂組成物1に、撥水剤として、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノール100質量部に、モノステアリン酸ポリエチレングリコール8質量部と、ヤシ油脂肪酸ソルビタン2質量部とを混合して調整したフッ素化合物のエマルション(フッ素化合物含有量27.3%)を、樹脂組成物1のポリアクリル酸固形分100質量部に対して5質量部添加し、水で希釈して固形分濃度を15%に調整して、バインダー1を得た。
遠心法により繊維化したガラス繊維に、バインダー1を所定の付与量になるようにスプレーで塗布した後、吸引装置で吸引しながら有孔コンベア上で集綿して、無機繊維断熱材の中間体を形成させた。該中間体を260℃の熱風中で3分間加熱して、バインダーを硬化させ、密度24kg/m、厚み100mm、バインダー付与量6.0%、体積吸水率5.5%の無機繊維マット1を製造した。
【0083】
(製造例2−2)
ポリカルボン酸としてポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量4,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分45%)を固形分換算で100質量部と、架橋剤としてジエタノールアミンを48.0質量部と、硬化促進剤として次亜リン酸ナトリウムを4.0質量部(架橋剤のイミノ基と水酸基の総モル量/ポリカルボン酸のカルボキシル基のモル量=1.0)と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部を混合した後、25%アンモニア水で、pH=6.7に調整し、樹脂組成物2を得た。そして、樹脂組成物2に、撥水剤として、オクタフルオロアジピン酸を、樹脂組成物2のポリアクリル酸固形分100質量部に対して5質量部添加し、水で希釈して固形分濃度を15%に調整して、バインダー2を得た。
バインダー2を用い、製造例2−1と同様にして、密度32kg/m、厚み35mm、バインダー付与量6.0%、体積吸水率3.5%の無機繊維マット2を製造した。
【0084】
(製造例2−3)
水に分散された、単量体10%以下、二量体80%以上、遊離フェノール1%以下のレゾール型フェノール樹脂を固形分換算で100質量部に対して、尿素を42.8質量部添加し、40℃にて3時間撹拌して、レゾール型フェノール‐尿素樹脂を得た。このレゾール型フェノール‐尿素樹脂の100質量部に、γ―(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを0.2質量部添加した後、25%アンモニア水でpH=8.5に調整して、樹脂組成物3を得た。そして、樹脂組成物3に、製造例2−1で使用したフッ素化合物のエマルションを、樹脂組成物3のポリアクリル酸固形分100質量部に対して5質量部添加し、水で希釈して固形分濃度を18%に調整して、バインダー3を得た。
バインダー3を用い、製造例2−1と同様にして、密度20kg/m、厚み120mm、バインダー付与量4.0%、体積吸水率1.5%の無機繊維マット3を製造した。
【0085】
(製造例2−4)
樹脂組成物2に、撥水剤として、ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル界面活性剤で乳化し、末端にエポキシ基を有し、エポキシ当量が3500eq/gのシリコーンエマルションを、樹脂組成物2のポリアクリル酸固形分100質量部に対して、シリコーン成分で5質量部を添加し、水で希釈して固形分濃度を15%に調整して、バインダー4を得た。
バインダー4を用い、製造例2−1と同様にして、密度16kg/m、厚み150mm、バインダー付与量4.0%、体積吸水率8.7%の無機繊維マット4を製造した。
【0086】
(製造例2−5)
製造例2−1において、樹脂組成物1に撥水剤を添加しなかった以外は製造例2−1と同様にしてバインダー5を製造した。
バインダー5を用い、製造例2−1と同様にして、密度24kg/m、厚み75mm、バインダー付与量4.0%、体積吸水率81.6%の無機繊維マット5を製造した。
【0087】
(製造例2−6)
製造例2−3において、樹脂組成物3に撥水剤を添加しなかった以外は製造例2−3と同様にしてバインダー6を製造した。
バインダー6を用い、製造例2−1と同様にして、密度32kg/m、厚み35mm、バインダー付与量6.0%、体積吸水率15.6%の無機繊維マット6を製造した。
【0088】
[床用断熱材の製造]
製造例2−1〜2−6で製造した無機繊維マットの底部に、製造例1−1〜1−10で製造した支持材をオレフィン系ホットメルト接着剤にて接着させて、幅910mmの床用断熱材を製造した。
【0089】
得られた床用断熱材について、床下結露試験を行い、床下結露の有無を評価した。結果を表1,2にまとめて記す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
上記結果から明らかなように、無機繊維マットの底面に、熱可塑性樹脂とHLB値が8以上の界面活性剤と防かび剤とを含む親水処理剤が付与された支持材が貼着された実施例1〜7の床用断熱材は、床下結露試験において床下結露がなく、結露水の乾燥性に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0093】
1:枠体
2:床用面材
10:床用断熱材
20:無機繊維マット
30:支持材
31:底面部
32:延出部
33:側面部
34:耳部
図1
図2