【実施例】
【0065】
以下、本発明の効果について、実施例及び比較例を用いて説明する。
【0066】
(測定方法)
・乾燥皮膜の接触角:試料をガラスプレパラート(幅15mm、長さ70mm)にディップ塗装した後、3時間の風乾を施した後、80℃で30分間乾燥して乾燥皮膜を形成した。該乾燥皮膜の接触角を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、接触角計を用いて測定した。測定に際しては、JIS R3257に準じ、乾燥皮膜表面に水滴を落とし、水滴の広がりが平衡に達してところで、接触角計の拡大鏡に備え付けられている分定規を用いて測定した。
【0067】
・支持材の吸水性:バイレック法により吸水性を評価した。支持材から200×25mmの試験片を切り出し、試験片が垂直となるように上方を固定し、下端を水に浸漬させた。10分経過後の試験片内を水が上昇した高さを測定した。
【0068】
・支持材の防かび性:JIS Z 2911 繊維製品の試験法に準じて、防カビ試験を行った。
すなわち、試料を質量30gとなるように試験片を作成した。一方、寒天培地で培養したAspergillus niger NBRC 105649、Penicillium citrinum NBRC 6352、Chaetomium globosum NBRC 6347、Myrothecium verrucaria NBRC 6113の4種類のカビを寒天培地ごと採取して水に懸濁させた。そして、新しい寒天培地上に配置した試験片に前記懸濁液を垂らし、2週間後までのカビの発生状況を3段階で評価した。
評価点0:菌糸(カビ)の発育が認められない
評価点1:菌糸発育部分の面積が全体の1/3を超えない
評価点2:菌糸発育部分の面積が全体の1/3を超える
【0069】
・無機繊維マットの体積吸水率:無機繊維マットより100mm角の試験片を切り出し、試験片の寸法及び秤量した後に、水温20℃の水中に、水面下50mmとなるように浸漬した。浸漬開始後24時間後に試験片を取り出し、室温25℃で10分間金網の上に放置した後、試験片を秤量した。浸漬後の増量分を体積に対して、百分率で表し、これを体積吸水率とした。
【0070】
・床下結露試験:
図2に示すように、幅1000mm×奥行1000mm床用面材(大引き間は910mmとなるようにする)の上下に、透湿抵抗の高い材料であるポリスチレン発泡体を使用して密閉空間を作成した。床上部の空間は居住空間を想定した室温29℃、湿度68%に保ち、床下空間は結露を促進させるために、室温26℃、湿度は過飽和状態に保ち、床下断熱材下面(支持材表面)の結露状態を目視で判定した。
なお、試験片となる床用断熱材は、幅910mm奥行100mmに切断して、任意に10サンプルを選択して、試験片同士が順不同にてお互い接するように、大引きに支持材の耳部をタッカーで取付け、大引き間に充填した。
【0071】
[支持材の製造]
(製造例1−1)
ポリ酢酸ビニルエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値8.6のソルビタンモノラウレート15質量部、防かび剤として3−メチル−4−イソプロピルフェノール0.3質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤1を得た。処理剤1の乾燥皮膜の接触角は18°であった。
目付40g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤1を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.20g/m
2の付着量になるように塗布して支持材1を得た。支持材1の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は8.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0072】
(製造例1−2)
ポリ酢酸ビニルエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値19.4のポリエチレングリコールモノオレエート5質量部、防かび剤として2−n−オクチル‐4−イソチアゾリン−3−オン0.1質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤2を得た。処理剤2の乾燥皮膜の接触角は0°であった。
目付40g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤2を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.15g/m
2が付着するように塗布して支持材2を得た。支持材2の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は11.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0073】
(製造例1−3)
イソシアネートとして、2,4−トリレンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値12.5のポリオキシエチレンセチルエーテル10質量部、防かび剤としてベンジルデシルジメチルアンモニウムクロライド0.5質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤3を得た。処理剤3の乾燥皮膜の接触角は10°であった。
目付40g/m
2のポリアミド繊維の不織布に、処理剤3を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.50g/m
2が付着するように塗布して支持材3を得た。この支持材3の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は10.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0074】
(製造例1−4)
目付40g/m
2のアセテート繊維の不織布に、処理剤3を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に1.0g/m
2が付着するように塗布して支持材4を得た。支持材4の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は10.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0075】
(製造例1−5)
イソシアネートとして、2,4−トリレンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値13.4のポリオキシエチレンステアリルエーテル10質量部、防かび剤としてオキシン銅錯体0.6質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤4を得た。処理剤4の乾燥皮膜の接触角は0°であった。
目付40g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、断熱材の底面部に接着される部分に0.25g/m
2が付着するように塗布して支持材5を得た。支持材5の親水性処理部分のパイレック法による吸水性は12.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0076】
(製造例1−6)
イソシアネートとして、イソホロンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値15.6のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート8質量部、防かび剤としてヒノキチオール1.0質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤5を得た。処理剤5の乾燥皮膜の接触角は0°であった。
目付40g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤5を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.15g/m
2が付着するように塗布し、さらに、断熱材に貼り付け時の耳部に当たる部分に1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノールを0.05g/m
2が付着するように塗布して、支持材6を得た。支持材6の親水処理部分のパイレック法による吸水性は11.0mmであった。また、防かび試験の評価は0点であった。
【0077】
(製造例1−7)(未処理不織布)
目付40g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維の不織布を支持材7とした。支持材7のパイレック法による吸水性は2.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0078】
(製造例1−8)(親水剤、防かび剤を含有しない処理剤で不織布を処理)
ポリ酢酸ビニルエマルションをイオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤6を得た。処理剤6の乾燥皮膜の接触角は90°であった。
目付40g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤6を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.30g/m
2が付着するように塗布して支持材8を得た。支持材8の処理部分のパイレック法による吸水性は3.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0079】
(製造例1−9)(親水剤のHLBが8未満の処理剤で不織布を処理)
ポリ酢酸ビニルエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値2.8のグリセロールモノステアレート15質量部、防かび剤として2−n−オクチル‐4−イソチアゾリン‐3−オン0.1質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤7を得た。処理剤7の乾燥皮膜の接触角は60°であった。
目付40g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤7を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.20g/m
2が付着するように塗布して支持材9を得た。支持材9の処理部分のパイレック法による吸水性は3.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0080】
(製造例1−10)(親水剤のHLBが8未満で、防かび剤を含有しない処理剤で不織布を処理)
イソシアネートとして、イソホロンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値6.3のポリオキシエチレンアルキルアミン8質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤8を得た。処理剤8の乾燥皮膜の接触角は45°であった。
目付40g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤8を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.15g/m
2が付着するように塗布して支持材10を得た。支持材10の処理部分のパイレック法による吸水性は4.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0081】
(製造例1−11)(防かび剤を含有しない処理剤で不織布を処理)
イソシアネートとして、イソホロンジイソシアネートを使用したポリエステル系ポリウレタンエマルションの樹脂成分100質量部に対して、HLB値15.6のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート8質量部を混合した後、イオン交換水に希釈することにより樹脂成分3%の処理剤9を得た。処理剤9の乾燥皮膜の接触角は0°であった。
目付40g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維の不織布に、処理剤9を固形分として、断熱材の底面部に接着される部分に0.15g/m
2が付着するように塗布して支持材11を得た。支持材11の処理部分のパイレック法による吸水性は11.0mmであった。また、防かび試験の評価は2点であった。
【0082】
[無機繊維マットの製造]
(製造例2−1)
ポリカルボン酸としてポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量4,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分45%)を固形分換算で100質量部と、架橋剤としてジエタノールアミンを48.0質量部と、硬化促進剤として次亜リン酸ナトリウムを4.0質量部(架橋剤のイミノ基と水酸基の総モル量/ポリカルボン酸のカルボキシル基のモル量=1.0)と、γ―(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.2質量部を混合した後、25%アンモニア水で、pH=6.7に調整して樹脂組成物1を得た。そして、樹脂組成物1に、撥水剤として、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノール100質量部に、モノステアリン酸ポリエチレングリコール8質量部と、ヤシ油脂肪酸ソルビタン2質量部とを混合して調整したフッ素化合物のエマルション(フッ素化合物含有量27.3%)を、樹脂組成物1のポリアクリル酸固形分100質量部に対して5質量部添加し、水で希釈して固形分濃度を15%に調整して、バインダー1を得た。
遠心法により繊維化したガラス繊維に、バインダー1を所定の付与量になるようにスプレーで塗布した後、吸引装置で吸引しながら有孔コンベア上で集綿して、無機繊維断熱材の中間体を形成させた。該中間体を260℃の熱風中で3分間加熱して、バインダーを硬化させ、密度24kg/m
3、厚み100mm、バインダー付与量6.0%、体積吸水率5.5%の無機繊維マット1を製造した。
【0083】
(製造例2−2)
ポリカルボン酸としてポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量4,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分45%)を固形分換算で100質量部と、架橋剤としてジエタノールアミンを48.0質量部と、硬化促進剤として次亜リン酸ナトリウムを4.0質量部(架橋剤のイミノ基と水酸基の総モル量/ポリカルボン酸のカルボキシル基のモル量=1.0)と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部を混合した後、25%アンモニア水で、pH=6.7に調整し、樹脂組成物2を得た。そして、樹脂組成物2に、撥水剤として、オクタフルオロアジピン酸を、樹脂組成物2のポリアクリル酸固形分100質量部に対して5質量部添加し、水で希釈して固形分濃度を15%に調整して、バインダー2を得た。
バインダー2を用い、製造例2−1と同様にして、密度32kg/m
3、厚み35mm、バインダー付与量6.0%、体積吸水率3.5%の無機繊維マット2を製造した。
【0084】
(製造例2−3)
水に分散された、単量体10%以下、二量体80%以上、遊離フェノール1%以下のレゾール型フェノール樹脂を固形分換算で100質量部に対して、尿素を42.8質量部添加し、40℃にて3時間撹拌して、レゾール型フェノール‐尿素樹脂を得た。このレゾール型フェノール‐尿素樹脂の100質量部に、γ―(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを0.2質量部添加した後、25%アンモニア水でpH=8.5に調整して、樹脂組成物3を得た。そして、樹脂組成物3に、製造例2−1で使用したフッ素化合物のエマルションを、樹脂組成物3のポリアクリル酸固形分100質量部に対して5質量部添加し、水で希釈して固形分濃度を18%に調整して、バインダー3を得た。
バインダー3を用い、製造例2−1と同様にして、密度20kg/m
3、厚み120mm、バインダー付与量4.0%、体積吸水率1.5%の無機繊維マット3を製造した。
【0085】
(製造例2−4)
樹脂組成物2に、撥水剤として、ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル界面活性剤で乳化し、末端にエポキシ基を有し、エポキシ当量が3500eq/gのシリコーンエマルションを、樹脂組成物2のポリアクリル酸固形分100質量部に対して、シリコーン成分で5質量部を添加し、水で希釈して固形分濃度を15%に調整して、バインダー4を得た。
バインダー4を用い、製造例2−1と同様にして、密度16kg/m
3、厚み150mm、バインダー付与量4.0%、体積吸水率8.7%の無機繊維マット4を製造した。
【0086】
(製造例2−5)
製造例2−1において、樹脂組成物1に撥水剤を添加しなかった以外は製造例2−1と同様にしてバインダー5を製造した。
バインダー5を用い、製造例2−1と同様にして、密度24kg/m
3、厚み75mm、バインダー付与量4.0%、体積吸水率81.6%の無機繊維マット5を製造した。
【0087】
(製造例2−6)
製造例2−3において、樹脂組成物3に撥水剤を添加しなかった以外は製造例2−3と同様にしてバインダー6を製造した。
バインダー6を用い、製造例2−1と同様にして、密度32kg/m
3、厚み35mm、バインダー付与量6.0%、体積吸水率15.6%の無機繊維マット6を製造した。
【0088】
[床用断熱材の製造]
製造例2−1〜2−6で製造した無機繊維マットの底部に、製造例1−1〜1−10で製造した支持材をオレフィン系ホットメルト接着剤にて接着させて、幅910mmの床用断熱材を製造した。
【0089】
得られた床用断熱材について、床下結露試験を行い、床下結露の有無を評価した。結果を表1,2にまとめて記す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
上記結果から明らかなように、無機繊維マットの底面に、熱可塑性樹脂とHLB値が8以上の界面活性剤と防かび剤とを含む親水処理剤が付与された支持材が貼着された実施例1〜7の床用断熱材は、床下結露試験において床下結露がなく、結露水の乾燥性に優れていることが分かる。