(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る電子機器及びシールドケースを携帯端末装置に適用した場合の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施形態1)
まず、実施形態1の携帯端末装置1について説明する。
図1は、実施形態1における携帯端末装置1の外観を示す斜視図である。
【0020】
携帯端末装置1は、
図1に示すように、本体部となる筐体2を有する。筐体2は、表面2Aと、裏面2Bと、側面2Cと、を備える。
【0021】
表面2Aは、ユーザーに対向する面であって、ユーザーの入力操作を受付ける面である。表面2Aは、表側の面であり、裏面2B(後述)と対を成す面である。裏面2Bは、ユーザーの指や手のひらに対向して配置される面である。側面Cは、表面2Aと裏面2Bとをつなぐ面である。
【0022】
筐体2の表面2Aには、タッチスクリーンディスプレイ3、レシーバー4、及びマイク5が配置されている。また、筐体2の側面2Cには、インターフェース6、サイドキー7、及びスライドキー8が配置されている。また、筐体2の裏面2B側には、バッテリー(不図示)が収容されている。
【0023】
タッチスクリーンディスプレイ3は、文字及び図形を表示可能に構成される。タッチスクリーンディスプレイ3は、所定の機能に対応した文字及び図形等を表示可能に構成される。ここで、図形とは、アイコン、アプリケーションごとに設定された画面等を含む概念である。
【0024】
タッチスクリーンディスプレイ3は、ディスプレイと、タッチスクリーンとを有する(いずれも不図示)。
【0025】
ディスプレイは、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)、有機ELパネル(Organic Electro−Luminescence panel)、又は無機ELパネル(Inorganic Electro−Luminescence panel)等の表示デバイスを備える。ディスプレイは、文字及び図形等を表示する。
【0026】
タッチスクリーンは、タッチスクリーンディスプレイ3に対する指、又はスタイラスペン等の接触(例えば、ジェスチャー)を検出する。タッチスクリーンは、複数の指、又はスタイラスペン等がタッチスクリーンディスプレイ3に接触した位置を検出できる。タッチスクリーンの検出方式は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(又は超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式、及び荷重検出方式等の任意の方式でよい。
【0027】
レシーバー4は、コントローラ(不図示)から送信される音声信号を音声として外部へ出力する音声出力部である。
【0028】
マイク5は、ユーザー等の発した音声を音声信号へ変換して、コントローラへ送信する音声入力部である。
【0029】
インターフェース6は、外部機器と電気的に接続するためのコネクタとして機能する。インターフェース6は、不使用時には、IFカバー6aにより覆われている。インターフェース6は、使用時に、例えば、外部機器のコード端に設けられた接続用端子が接続される。
【0030】
サイドキー7は、所定の機能における動作がアサインされた操作入力部である。サイドキー7がユーザーにより押された場合に、所定の機能においてサイドキー7にアサインされた動作が実行される。
【0031】
スライドキー8には、位置に応じて、所定の機能の起動又は起動中の機能における所定の動作がアサインされた操作入力部である。
【0032】
また、筐体2の内部には、上述したタッチスクリーンディスプレイ3、レシーバー4、マイク5、バッテリーのほか、回路基板(後述)、通信ユニット、コントローラ等(いずれも不図示)が配置される。
【0033】
回路基板は、平板状の基板部と、基板部の表面に実装される電子部品及び各種回路ブロックと、を有する。基板部に実装される電子部品は、例えば、通信ユニットが送受信する信号を処理するICチップ等の電子部品である。
【0034】
通信ユニットは、基台と、基台に上に配置された所定形状のアンテナエレメント(いずれも不図示)と、を備えて構成される。アンテナエレメントは、帯状の板金により構成される。アンテナエレメントは、給電端子(不図示)を介して回路基板から給電される。これにより、アンテナエレメントは、給電端子を介して回路基板から給電されると共に、回路基板のICチップ等と接続される。
【0035】
コントローラは、例えば、CPU(Central Processing Unit)により構成される。コントローラは、携帯端末装置1の動作を統括的に制御するものであり、必要に応じて各種ドライバ回路(不図示)の動作を制御する。
【0036】
コントローラは、メモリ(不図示)に記憶されているデータを必要に応じて参照しつつ、メモリに記憶されているプログラムに含まれる命令を実行して、タッチスクリーンディスプレイ3及び各種ドライバ回路を制御する。
【0037】
コントローラは、メモリに記憶されている制御プログラムを実行することにより、タッチスクリーンディスプレイ3を介して検出されたジェスチャー等に応じて、ディスプレイに表示されている情報を変更する等の各種制御を実行する。コントローラは、タッチパネルドライバ(不図示)を介して、タッチスクリーンディスプレイ3の動作を制御する。
【0038】
メモリに記憶されるプログラムには、フォアグランド又はバックグランドで実行されるアプリケーションと、アプリケーションの動作を支援する制御プログラムと、が含まれる。アプリケーションは、例えば、ディスプレイに所定の画面を表示させ、タッチスクリーンによって検出されるジェスチャー等に応じた処理をコントローラに実行させる。制御プログラムは、例えば、オペレーティングシステムである。
【0039】
なお、携帯端末装置1は、上述した各構成部品のほか、ハードキー群、カメラ、近接センサー(いずれも不図示)等を備える。
【0040】
次に、実施形態1の携帯端末装置1における回路基板10及びシールドケース20の構成を、
図2〜
図5を参照しながら説明する。
【0041】
図2は、実施形態1における回路基板10及びシールドケース20を示す展開斜視図である。
図3及び
図4は、実施形態1における回路基板10及びシールドケース20を示す平面図である。
図5は、
図3のA−A線断面に相当する概略断面図である。なお、
図2〜
図4では、回路基板10及びシールドケース20の形状が簡略化されている。
【0042】
図2に示すように、回路基板10は、電子部品としてのW−CDMA送信回路11と、同じく電子部品としてのPHS受信回路12と、を備える。回路基板10は、ガラスエポキシ等により構成された誘電体基板である。W−CDMA送信回路11及びPHS受信回路12は、回路基板10の一方の面(
図2に図示されている側の面)に実装されている。
【0043】
W−CDMA送信回路11は、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式により無線通信を行う通信システムの送信回路である。W−CDMA送信回路11は、所定の送信周波数で駆動するICチップ(不図示)を備える。
【0044】
PHS受信回路12は、PHS(登録商標:Personal Handy−Phone System)方式により無線通信を行う通信システムの受信回路である。PHS受信回路12は、所定の受信周波数で駆動するICチップ(不図示)を備える。
【0045】
上述したW−CDMA送信回路11の送信周波数は、PHS受信回路12の受信周波数よりも高く設定されている。PHS受信回路12が待ち受け状態のときに、W−CDMA送信回路11によりデータの送信等が行われると、W−CDMA送信回路11で発生する電磁波の影響により、PHS受信回路12の受信性能が低下する。この場合に、PHS受信回路12から見ると、W−CDMA送信回路11はノイズ源となる。
【0046】
なお、回路基板10上には、W−CDMA送信回路11及びPHS受信回路12のほかにも、種々の電子部品が実装されているが、各図においては、それらの電子部品についての図示を省略する。
【0047】
回路基板10には、シールドケース20が設けられる。シールドケース20は、枠部材としてのフレーム210と、蓋部材としてのシールドカバー220と、を備える。フレーム210は、W−CDMA送信回路11及びPHS受信回路12を囲うように回路基板10の上に取り付けられる金属部材である。シールドカバー220は、フレーム210の上部を覆うように、フレーム210に取り付けられる。シールドカバー220については後述する。
【0048】
フレーム210は、外壁部211と、ブリッジ部212と、を備える。外壁部211は、W−CDMA送信回路11やPHS受信回路12等の電子部品を囲う部材である。外壁部211は、断面が矩形状に形成されている。なお、
図2、
図3及び
図7では、外壁部211の外縁を分かりやすくするため、複数の符号を付している。
【0049】
ブリッジ部212は、外壁部211の内側の領域を区画する部材である。ブリッジ部212は、外壁部211と同じく、断面が矩形状に形成されている。本実施形態では、回路基板10上に、3つのブリッジ部212が配置されている。そして、フレーム210の内部は、3つのブリッジ部212により4つの領域に区画されている。W−CDMA送信回路11及びPHS受信回路12は、ブリッジ部212により区画された異なる領域にそれぞれ配置されている。
【0050】
シールドカバー220は、フレーム210において、回路基板10と反対側を覆うように取り付けられる。シールドカバー220は、平板状の金属材料により構成される。シールドカバー220は、
図3に示すように、フレーム210に取り付けられた状態において、フレーム210をすべて覆うような形状を有する。すなわち、シールドカバー220は、フレーム210の外縁とほぼ同じ形状を有する。シールドカバー220は、フレーム210に対して、例えば、ネジ止めにより取り付けられる。なお、以下の説明において、シールドカバー220の上面側(
図2に図示されている側の面)を「第1面側」ともいい、その反対側を「第2面側」ともいう。
【0051】
シールドカバー220には、開口部としてのスリット221が形成されている。スリット221は、シールドケース20において、ノイズの遮蔽性を向上させる機能を有する。スリット221は、シールドカバー220を貫通するように形成されている。本実施形態のスリット221は、
図3に示すように、W−CDMA送信回路11とPHS受信回路12との間に位置するブリッジ部212(以下、「ブリッジ部212a」ともいう)に対応する領域Bに形成されている。具体的には、スリット221は、フレーム210に取り付けられたシールドカバー220を平面視した場合に、ブリッジ部212aと交差するように形成される。
【0052】
すなわち、スリット221は、フレーム210に取り付けられたシールドカバー220を平面視した場合に、一方の端部がブリッジ部212aの幅方向(延在方向と直交する方向)における一方の側に位置し、他方の端部がブリッジ部212の幅方向における他方の側に位置するように形成される。言い換えると、スリット221は、フレーム210に取り付けられたシールドカバー220を平面視した場合に、ブリッジ部212aを跨ぐように形成される。なお、スリット221の幅は、例えば、約1mmである。
【0053】
また、スリット221は、
図4に示すように、導電部としてのフレキシブル配線基板30が載置される領域とは異なる領域に形成される。また、スリット221は、フレキシブル配線基板30が載置される領域の外縁に沿って形成される。フレキシブル配線基板30は、例えば、タッチパネルとタッチパネルドライバ(不図示)との間を電気的に接続する部材である。フレキシブル配線基板30は、シールドカバー220の第1面側に載置される。
【0054】
次に、本実施形態におけるシールドケース20の作用を、
図3及び
図5を参照しながら説明する。なお、
図5では、ブリッジ部212(フレーム210)の断面形状が模式的に描かれている。また、
図5では、電磁波が伝播する様子を分かりやすくするため、ブリッジ部212とシールドカバー220との隙間、及びスリット221の間隔が実際よりも広く描かれている。また、
図3及び
図5における矢印Cは、電磁波が伝播する経路を模式的に示したものである。
【0055】
図5に示すように、W−CDMA送信回路11から電磁波が放射されると、その電磁波は、上部に配置されたシールドカバー220に伝播する。そして、シールドカバー220に伝播した電磁波は、
図3に示すように、シールドカバー220とブリッジ部212との間の隙間に沿って伝播する。ここで、シールドカバー220にスリット221が形成されていない場合、電磁波は、
図3の矢印Cに示すように、シールドカバー220とブリッジ部212aとの間の隙間に沿って伝播し、PHS受信回路12に到達する。
【0056】
しかし、本実施形態のシールドカバー220には、ブリッジ部212aに対応する領域Bにスリット221が形成されている。そのため、
図3に示すように、領域Bにおいて、シールドカバー220とブリッジ部212aとの間の隙間に沿った電磁波の伝播が遮断される。すなわち、本実施形態のシールドカバー220によれば、
図3に示すように、シールドカバー220とブリッジ部212aとの間の隙間に沿って伝播した電磁波が、領域Bよりも先へ伝播することが抑制される。このように、本実施形態のシールドケース20においては、W−CDMA送信回路11から放射された電磁波がPHS受信回路12に到達しにくくなるため、ノイズの遮蔽性が向上する。
【0057】
次に、本実施形態のシールドケース20によるノイズの遮蔽性について説明する。
図6は、ノイズ源となるW−CDMA送信回路11から放射された電磁波のPHS受信回路12への干渉度合いを示すグラフである。ここでは、スリットがないシールドカバーを備えたシールドケースを比較例とし、実施形態1のスリット(221)を有するシールドカバーを備えたシールドケースを実施例1とした。なお、
図6は、コンピューターシミュレーションにより得られたグラフである。
【0058】
図6において、横軸はW−CDMA送信回路11の送信周波数(MHz)、縦軸はPHS受信回路12における電磁波の干渉度合い(dB)を示す。また、
図5において、実線は実施例1のグラフ、破線は比較例のグラフを示す。なお、
図6では、電磁波の干渉度合い(縦軸)を絶対値で表している。
【0059】
図6に示すように、実施例1のシールドケースでは、比較例のシールドケースに比べて、600〜2000MHzの周波数範囲において、干渉度合いが平均して約15dB低減することが確認された。
【0060】
上述した実施形態1のシールドケース20によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
【0061】
実施形態1のシールドケース20は、ブリッジ部212aに対応する領域にスリット221が形成されたシールドカバー220を備える。これによれば、ブリッジ部212aとスリット221とが交差する領域において、シールドカバー220とブリッジ部212aとの間の隙間に沿った電磁波の伝播を遮断できる。そのため、W−CDMA送信回路11から放射された電磁波がPHS受信回路12へノイズとして混入する基板内干渉を抑制できる。
【0062】
従って、実施形態1のシールドケース20、及びこのシールドケース20を備えた携帯端末装置1においては、電磁波によるノイズの遮蔽性を向上させることができる。
【0063】
また、実施形態1のシールドケース20によれば、シールドカバー220に開口部としてのスリット221が形成される。そのため、実施形態1のシールドケース20においては、ノイズの遮蔽性を確保しつつ、シールドカバー220を軽量化できる。
【0064】
また、実施形態1のシールドケース20において、スリット221は、フレキシブル配線基板30が載置される領域とは異なる領域に形成される。仮に、スリット221の上部にフレキシブル配線基板30が載置されると、スリット221において、電磁波がフレキシブル配線基板30を介して伝播することが考えられる。しかし、実施形態1のシールドケース20において、スリット221は、フレキシブル配線基板30が載置される領域とは異なる領域に形成されるため、電磁波がフレキシブル配線基板30を介して伝播するのを抑制できる。
【0065】
また、実施形態1のシールドケース20において、スリット221は、フレキシブル配線基板30が載置される領域の外縁に沿って形成される。そのため、実施形態1のシールドケース20によれば、シールドカバー220上において、フレキシブル配線基板30を、ノイズの遮蔽性に影響を与えない最適な位置に載置できる。
【0066】
なお、上述した基板内干渉によるノイズの影響を低減するため、一般的なシールドケースにおいて、ノイズ源となるICチップと対向する位置に電磁吸収体等のノイズ吸収効果を有する部材(以下、「ノイズ吸収部材」ともいう)を貼り付ける構成が考えられる。
【0067】
しかし、このノイズ吸収部材は、シールドケースに両面テープ等の接着部材を介して固定される。そのため、経年劣化や振動により、ノイズ吸収部材がシールドケースから剥離することが考えられる。ノイズ吸収部材がシールドケースから剥離すると、電磁波によるノイズの抑制が難しくなるだけでなく、ノイズ吸収部材がICチップ等の回路部品と接触することにより、電気的な短絡(ショート)をもたらし、回路部品に悪影響を与えることが予想される。
【0068】
これに対して、実施形態1のシールドケース20は、ノイズ吸収部材及び接着部材を用いることがないため、経年劣化や振動によりノイズの遮蔽性が低下したり、電気的な短絡が発生して回路部品に悪影響を与えたりすることがない。
【0069】
(実施形態2)
次に、実施形態2のシールドケース20Aについて説明する。
図7は、実施形態2における回路基板10及びシールドケース20Aを示す平面図である。なお、
図7では、実施形態1のシールドケース20と共通する部分については、適宜に符号の図示及び説明を省略する。また、実施形態2のシールドケース20Aが内蔵される携帯端末装置1A(
図1参照)の全体構成は、実施形態1と同じであるため説明を省略する。
【0070】
図7に示すように、実施形態2のシールドケース20Aにおいて、シールドカバー220Aには、開口部としてのスリット222が形成されている。本実施形態のスリット222は、W−CDMA送信回路11とPHS受信回路12との間に位置するブリッジ部212(以下、「ブリッジ部212b」ともいう)に対応する領域Dに形成されている。具体的には、スリット222は、シールドカバー220の平面視でブリッジ部212bに対応する位置に形成されている。なお、スリット222は、好ましくは、
図7に示すように、ブリッジ部212bの延在方向に沿って形成される。
【0071】
また、本実施形態においても、スリット222は、フレキシブル配線基板30(不図示)が載置される領域とは異なる領域に形成される。また、スリット222は、フレキシブル配線基板30が載置される領域の外縁に沿って形成される。
【0072】
本実施形態において、W−CDMA送信回路11から電磁波が放射されると、その電磁波は、上部に配置されたシールドカバー220Aに伝播する。そして、シールドカバー220Aに伝播した電磁波は、
図7に示すように、シールドカバー220Aとブリッジ部212との間の隙間に沿って伝播する。ここで、シールドカバー220Aにスリット222が形成されていない場合、電磁波は、
図7の矢印Eに示すように、シールドカバー220Aとブリッジ部212(212b)との間の隙間に沿って伝播し、PHS受信回路12に到達する。
【0073】
しかし、本実施形態のシールドカバー220Aには、ブリッジ部212bに対応する領域Dにスリット222が形成されている。そのため、
図7に示すように、領域Dにおいて、シールドカバー220Aとブリッジ部212bとの間の隙間に沿った電磁波の伝播が遮断される。すなわち、本実施形態のシールドカバー220Aによれば、
図7に示すように、シールドカバー220Aとブリッジ部212bとの間の隙間に沿って伝播した電磁波が、ブリッジ部212bに対応して形成されたスリット222によって、領域Dにおいて遮断されることで、PHS受信回路12へ伝播することが抑制される。このように、本実施形態のシールドケース20Aにおいては、W−CDMA送信回路11から放射された電磁波がPHS受信回路12に到達しにくくなるため、ノイズの遮蔽性が向上する。
【0074】
次に、本実施形態のシールドケース20Aによるノイズの遮蔽性について説明する。
図8は、ノイズ源となるW−CDMA送信回路11から放射された電磁波のPHS受信回路12への干渉度合いを示すグラフである。ここでは、スリットがないシールドカバーを備えたシールドケースを比較例とし、実施形態2のスリット(222)を有するシールドカバーを備えたシールドケースを実施例2とした。なお、
図7は、実際の回路基板にシールドケースを取り付けてノイズの遮蔽性を測定することにより得られたグラフである。
【0075】
図8において、横軸はW−CDMA送信回路11の送信周波数(MHz)、縦軸はPHS受信回路12における電磁波の干渉度合い(dB)を示す。また、
図8において、三角形の記号は実施例のプロット点を示し、四角形の記号は比較例のプロット点を示す。なお、
図8では、電磁波の干渉度合い(縦軸)を相対値で表している。
【0076】
図8に示すように、実施例1のシールドケースでは、比較例のシールドケースに比べて、干渉度合いが最大で約20dB低減することが確認された。
【0077】
上述した実施形態2のシールドケース20Aにおいては、実施形態1のシールドケース20と同じく基板内干渉を抑制できる。従って、実施形態2のシールドケース20A、及びこのシールドケース20Aを備えた携帯端末装置1Aにおいては、電磁波によるノイズの遮蔽性をより向上させることができる。
【0078】
(実施形態3)
次に、実施形態3のシールドケース20Bについて説明する。
図9は、実施形態3における回路基板10及びシールドケース20Bの概略断面図である。
図9は、実施形態1の
図5に対応する概略断面図である。
図9では、回路基板10及びシールドケース20Bの形状が簡略化されている。また、
図9では、実施形態1のシールドケース20と共通する部分については、適宜に符号の図示及び説明を省略する。また、実施形態3のシールドケース20Bが内蔵される携帯端末装置1B(
図1参照)の構成は、実施形態1と同じであるため説明を省略する。
【0079】
図9に示すように、実施形態3のシールドケース20Bにおいて、シールドカバー220Bには、開口部としてのスリット223が形成されている。スリット223の形成される位置は、実施形態1に示す領域B(
図3参照)、又は実施形態2に示す領域D(
図7参照)のいずれであってもよい。
【0080】
また、シールドカバー220Bは、スリット223が形成される平板部230と、この平板部230におけるスリット223の縁部からシールドカバー220Bの第1面側に延設される延設部としての折り返し部240と、を有する。
【0081】
折り返し部240は、第1の部分としての立設部241と、第2の部分としての延設部242と、を有する。立設部241は、スリット223の縁部から平板部230と直交する方向(第1面側)に立設される部分である。延設部242は、立設部241から平板部230と平行に且つスリット223から遠ざかる側に延設される部分である。折り返し部240において、立設部241及び延設部242は、シールドカバー220Bの第1面側において、スリット223の周囲を覆うように形成される。
【0082】
延設部242における延在方向の長さWは、電子部品(例えば、W−CDMA送信回路11)が伝送する信号の周波数(送信周波数)に対応する波長λの1/4の奇数倍となる長さ(以下、「1/4λ」ともいう)に設定される。折り返し部240において、折り返し位置240aから1/4λ離れた部位は、開放端240bとなる。
【0083】
ここで、折り返し部240の電気的な特性について説明する。
図10は、折り返し部240の電気的な特性を説明するための模式図である。なお、
図10では、
図9に示す折り返し部240の一部を示すが、以下に説明する電気的な特性は、折り返し部240の全体に作用する。
【0084】
ノイズ源となるW−CDMA送信回路11(
図9参照)から電磁波が放射されると、
図10に示すように、シールドカバー220Bの第2面側にはノイズとなる電流I
1が流れる。この電流I
1は、シールドカバー220Bの第2面側に沿って、折り返し位置240aを経由し、開放端240bの断面、すなわち位置Fまで流れる。ここで、延設部242の長さW=1/4λの場合に、開放端240bから折り返し部の内側を見たときのインピーダンスZは無限大になる。そのため、電流I
1は、開放端240bから折り返し部の内側に進むことができなくなる。
【0085】
一方、シールドカバー220Bの位置F(折り返し位置240aから1/4λ離れた位置)から折り返し部240を見ると、開放端240bのインピーダンスZは無限大となる。ここで、接地電位に対するシールドカバー220Bの電位をVとすると、I
1=V/Zの式において、インピーダンスZが無限大となるため、電流I
1は、ほぼ0(ゼロ)とみなすことができる。すなわち、シールドカバー220Bの開放端240bにおいて電流I
1は流れなくなる。同様に、シールドカバー220Bの第1面側にノイズとなる電流I
2が流れた場合も、シールドカバー220Bの開放端240bにおいて電流I
2は流れなくなる。
【0086】
従って、ノイズ源となるW−CDMA送信回路11から電磁波が放射され、その電磁波による電流I
1がシールドカバー220Bの第2面側を流れても、その電流I
1の流れは、折り返し部240において遮断される。そのため、実施形態3のシールドケース20Bにおいては、W−CDMA送信回路11から放射された電磁波が外部へ放射され、近隣にある他の電子機器の動作に悪影響を与える、いわゆる不要輻射の影響を低減できる。
【0087】
また、外部で発生した電磁波が携帯端末装置1の内部に侵入し、その電磁波による電流I
2がシールドカバー220Bの第1面側を流れても、その電流の流れは、折り返し部240において遮断される。そのため、実施形態3のシールドケース20Bにおいては、外部から携帯端末装置1の内部に侵入した電磁波が、W−CDMA送信回路11やPHS受信回路12等の電子部品の動作に悪影響を与える、いわゆる外来ノイズの影響を低減できる。
【0088】
上述した実施形態3のシールドケース20Bにおいては、実施形態1、2と同じく基板内干渉を抑制できる。更に、実施形態3のシールドケース20Bにおいては、不要輻射及び外来ノイズの影響を低減できる。従って、実施形態3のシールドケース20B、及びこのシールドケース20Bを備えた携帯端末装置1Bにおいては、電磁波によるノイズの遮蔽性をより向上させることができる。
【0089】
(実施形態4)
次に、実施形態4のシールドケース20Cについて説明する。
図11は、実施形態4における回路基板10及びシールドケース20Cの概略断面図である。
図11は、実施形態1の
図5に対応する概略断面図である。
図11では、回路基板10及びシールドケース20Cの形状が簡略化されている。また、
図11では、実施形態1のシールドケース20と共通する部分については、適宜に符号の図示及び説明を省略する。また、実施形態4のシールドケース20Cが内蔵される携帯端末装置1C(
図1参照)の構成は、実施形態1と同じであるため説明を省略する。
【0090】
図11に示すように、実施形態4のシールドケース20Cは、蓋部材としてのシールドカバー220Cを備える。実施形態4のシールドケース20Cは、枠部材としてのフレーム210(
図2参照)を備えていないが、フレーム210を備えた構成としてもよい。その場合、スリット223及び折り返し部250(後述)は、ブリッジ部212bと接触しない位置に形成するとよい。
【0091】
シールドカバー220Cには、開口部としてのスリット223が形成されている。スリット223の形成される位置は、W−CDMA送信回路11とPHS受信回路12との間であれば、シールドカバー220Cのどの位置にあってもよい。
【0092】
また、シールドカバー220Cは、スリット223が形成される平板部230と、この平板部230におけるスリット223の縁部からシールドカバー220Cの第2面側に延設される延設部としての折り返し部250と、を有する。
【0093】
折り返し部250は、第1の部分としての立設部251と、第2の部分としての延設部252と、を有する。立設部251は、スリット223の縁部から平板部230と直交する方向(第2面側)に立設される部分である。延設部252は、立設部251から平板部230と平行に且つスリット223から遠ざかる側に延設される部分である。折り返し部250において、立設部251及び延設部252は、シールドカバー220Cの第2面側において、スリット223の周囲を覆うように形成される。
【0094】
延設部252における延在方向の長さWは、電子部品(例えば、W−CDMA送信回路11)が伝送する信号の周波数(送信周波数)に対応する波長λの1/4の奇数倍となる長さ(1/4λ)に設定される。折り返し部250において、折り返し位置250aから1/4λ離れた部位は、開放端250bとなる。
【0095】
実施形態4において、折り返し部250の電気的な特性は、実施形態3の折り返し部240と同じであるため説明を省略する。
【0096】
実施形態4のシールドケース20Cにおいて、ノイズ源となるW−CDMA送信回路11から電磁波が放射され、その電磁波による電流がシールドカバー220Cの第2面側を流れても、その電流の流れは、折り返し部250において遮断される。そのため、実施形態4のシールドケース20Cにおいては、不要輻射の影響を低減できる。
【0097】
また、外部で発生した電磁波が携帯端末装置1の内部に侵入し、その電磁波による電流がシールドカバー220Cの第1面側を流れても、その電流の流れは、折り返し部250において遮断される。そのため、実施形態4のシールドケース20Cにおいては、外来ノイズの影響を低減できる。
【0098】
上述した実施形態4のシールドケース20Cにおいては、実施形態1、2と同じく基板内干渉を抑制できる。更に、実施形態4のシールドケース20Cにおいては、不要輻射及び外来ノイズの影響を低減できる。従って、実施形態4のシールドケース20C、及びこのシールドケース20Cを備えた携帯端末装置1Cにおいては、電磁波によるノイズの遮蔽性をより向上させることができる。
【0099】
また、実施形態4のシールドケース20Cでは、シールドカバー220Cの第2面側に折り返し部250が形成される。そのため、ノイズ源となるW−CDMA送信回路11から放射された電磁波により、シールドカバー220Cの第2面側にノイズとなる電流(例えば、
図10に示す電流I
1)が流れても、その電流を折り返し部250において減衰させることができる。これによれば、シールドカバー220Cの第2面側を流れる電流がスリット223の隙間で結合して伝播することがないため、
図11に示すスリット223の間隔Dを、折り返し部250を形成しない場合よりも狭くできる。実施形態4のシールドケース20Cにおいて、スリット223の間隔Dを狭くした場合には、不要輻射及び外来ノイズの影響をより低減できる。
【0100】
なお、本発明は、上述した実施形態1〜4に制限されるものではなく、以下に示すように適宜に変更可能であり、それらも本発明の範囲に含まれる。
【0101】
例えば、1つのシールドカバーにおいて、その異なる領域に、実施形態1のスリット221(
図2参照)と、実施形態2のスリット222(
図7参照)とを形成してもよい。その場合に、少なくとも一方のスリットに、実施形態3の折り返し部240又は実施形態4の折り返し部250を形成してもよい。
【0102】
また、実施形態1〜4では、回路基板10に実装される電子部品として、W−CDMA送信回路11及びPHS受信回路12について説明した。しかし、本発明は、このような無線通信用のICチップに限らず、異なるクロック周波数で動作するICチップが実装された回路基板一般に適用できる。
【0103】
また、実施形態1〜4では、本発明に係る電子機器を携帯端末装置に適用した例について説明したが、本発明はこれに限らず、タブレット端末装置やPDA(Personal Digital Assistant)、ポータブルナビゲーション装置、ノートパソコン等の回路基板を備えた電子機器一般に適用できる。