特許第6037684号(P6037684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037684
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】蒸気タービン設備
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20161128BHJP
   F16J 15/08 20060101ALI20161128BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20161128BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F01D25/00 L
   F16J15/08 E
   F16J15/08 K
   F01D25/00 G
   F01D25/00 M
   F01D25/24 P
   F01D25/24 N
   F16K27/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-148725(P2012-148725)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-9662(P2014-9662A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西本 慎
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 雄久
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
(72)【発明者】
【氏名】篠原 種宏
(72)【発明者】
【氏名】赤松 哲郎
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−043590(JP,A)
【文献】 特開平04−203205(JP,A)
【文献】 特開2005−291496(JP,A)
【文献】 特開2003−120327(JP,A)
【文献】 特開2010−144707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/10
F01D 25/00、24
F16J 15/08
F16K 27/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
650℃以上の蒸気が用いられる蒸気タービン設備であって、
それぞれNi基合金、オーステナイト鋼、高クロム鋼の少なくとも一つからなる鋳造材で母材が構成され、前記蒸気が流通する空間を形成する第1部材及び第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられ、前記第1部材および前記第2部材に複数箇所で線接触するメタルガスケットと
前記第1部材および前記第2部材を締結する締結部材と、を備え、
前記第1部材及び前記第2部材には、それぞれ、少なくとも前記メタルガスケットと線接触する部分に前記母材よりも高硬度である第1高硬度層が設けられており、
前記第1部材は、前記メタルガスケットに線接触する第1シール面を有し、
前記第2部材は、前記第1シール面に対向するとともに、前記メタルガスケットに線接触する第2シール面を有し、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記締結部材によって締結されることで、互いに当接する部分を有し、
前記第1部材と前記第2部材とが互いに当接する部分には、前記母材よりも高硬度である第2高硬度層が設けられていることを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項2】
650℃以上の蒸気が用いられる蒸気タービン設備であって、
それぞれNi基合金、オーステナイト鋼、高クロム鋼の少なくとも一つからなる鋳造材で母材が構成され、前記蒸気が流通する空間を形成する第1部材及び第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられ、前記第1部材および前記第2部材に複数箇所で線接触するメタルガスケットとを備え、
前記第1部材及び前記第2部材には、それぞれ、少なくとも前記メタルガスケットと線接触する部分に前記母材よりも高硬度である第1高硬度層が設けられており、
前記メタルガスケットの外周側において、前記第1部材に設けられた環状凸部と前記第2部材に設けられた環状凹部とが嵌合しており、
前記メタルガスケットは、前記環状凸部に形成された凸シール面と前記環状凹部に形成された凹シール面とに挟まれて、前記凸シール面及び前記凹シール面にそれぞれ線接触しており、
前記メタルガスケットの外周は、前記環状凹部の外周縁を形成する前記第2部材の壁面に線接触しており、
前記第1高硬度層は、前記凸シール面、前記凹シール面及び前記壁面に設けられていることを特徴とする記載の蒸気タービン設備。
【請求項3】
前記メタルガスケットは、切欠きを有する断面形状であり、
前記メタルガスケットは、前記切欠きが前記空間側に面するように配置され、前記切欠き以外の部分が前記凸シール面、前記凹シール面及び前記壁面に線接触していることを特徴とする請求項2に記載の蒸気タービン設備。
【請求項4】
前記第1部材は、前記環状凸部及び前記環状凹部の嵌合位置よりも外周側における環状エリアにおいて前記第2部材に当接しており、前記環状エリアよりもさらに外周側に位置する締結エリアにおいて前記第2部材に締結されており、
前記環状エリアにおいて前記第1部材と前記第2部材とが当接する部分には、前記母材よりも高硬度である第2高硬度層が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の蒸気タービン設備。
【請求項5】
前記第1高硬度層はCo基合金で形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蒸気タービン設備。
【請求項6】
前記第1部材及び前記第2部材の一方が蒸気弁の弁ケーシングであり、
前記第1部材及び前記第2部材の他方が前記弁ケーシングに装着される前記蒸気弁のボンネットであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蒸気タービン設備。
【請求項7】
前記第1部材及び前記第2部材が、前記蒸気が流通する一対の配管同士のフランジ接続部を形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蒸気タービン設備。
【請求項8】
前記第1部材および前記第2部材の一方がタービン車室の上半部であり、
前記第1部材および前記第2部材の他方が前記タービン車室の下半部であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蒸気タービン設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、650℃以上の蒸気が用いられる蒸気タービン設備に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン設備では、ボイラから配管を介してタービン車室に蒸気を導いて、該蒸気によってタービンを駆動するようになっている。また、タービン車室に蒸気を供給するための蒸気管には蒸気弁(止め弁や加減弁)が設けられており、タービン車室に導入される蒸気を遮断したり、蒸気量を調節したりするようになっている。
【0003】
従来の蒸気タービン設備において、配管のフランジ接続部や蒸気弁などのシール部には、主として黒鉛系渦巻きガスケットが用いられていた。ここでいう黒鉛系渦巻きガスケットとは、金属製フープと黒鉛系材料のフィラーを交互に渦巻き状に巻いたセミメタルガスケットである。
例えば、特許文献1には、無機質系の酸化抑制剤を配合した膨張黒鉛テープをフィラー材として用い、酸素雰囲気中での使用限界を500〜600℃程度に高めた渦巻きガスケットが記載されている。
【0004】
ところが、蒸気タービン設備の性能向上の観点から蒸気の高温化が進められており、蒸気温度が650℃以上である蒸気タービン設備も普及しつつある。このような蒸気温度の条件が過酷な蒸気タービン設備の場合、特許文献1記載の黒鉛系渦巻きガスケットでは、黒鉛の酸化消失に起因したシール性の劣化が懸念される。
【0005】
そこで、特許文献2には、蒸気温度条件が過酷な蒸気タービン設備においても使用しうる自封式ガスケットが開示されている(特許文献2の段落0015参照)。この自封式ガスケットは、円環が切り欠かれた断面形状を有し、蒸気弁のケーシング及びボンネットに挟持され、これらに線接触することでケーシングとボンネット間のシールを行う。自封式ガスケットの使用時において、蒸気が切欠きを通って蒸気がガスケット内部に導入され、蒸気による内圧がガスケットに加わる。その結果、ケーシング及びボンネットの締め付け圧力が小さくても、高温高圧蒸気に対する優れたシール性を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−317894号公報
【特許文献2】特開2010−43590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、蒸気温度が650℃以上である蒸気タービン設備では、高温強度に優れたNi基合金等の鋳造材を用いて各部の母材を構成することがある。ここで、Ni基合金等の鋳造材は、一般に、高温強度だけでなく溶接性に優れ、低コストであるから、高温蒸気に曝される蒸気タービン設備の各部の母材として適切な材料ということができる。ところが、Ni基合金等の鋳造材は、降伏応力が低いという性質がある。
【0008】
したがって、特許文献1に記載の自封式ガスケットをNi基合金等の鋳造材を用いて各部の母材を構成した蒸気タービン設備に適用すると、ガスケットとの線接触部における高い面圧によって母材(Ni基合金等の鋳造材)が変形し、シール性が低下して蒸気漏れが生じるおそれがある。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、650℃以上の蒸気温度条件下においても、Ni基合金等の鋳造材で構成された部材間を適切にシールすることができる蒸気タービン設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービン設備は、650℃以上の蒸気が用いられる蒸気タービン設備であって、それぞれNi基合金、オーステナイト鋼、高クロム鋼の少なくとも一つからなる鋳造材で母材が構成され、前記蒸気が流通する空間を形成する第1部材及び第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に設けられ、前記第1部材および前記第2部材に複数箇所で線接触するメタルガスケットとを備え、前記第1部材及び前記第2部材には、それぞれ、少なくとも前記メタルガスケットと線接触する部分に前記母材よりも高硬度である第1高硬度層が設けられていることを特徴とする。
なお、第1高硬度層は、溶射、めっき、肉盛り溶接等の任意の手法で第1部材及び第2部材の母材上に形成された高硬度皮膜であってもよいし、第1部材及び第2部材の母材とは別体として形成されて前記母材に取り付けられた高硬度部材であってもよいし、窒化処理や浸炭焼入れ等の任意の手法によって硬化された第1部材及び第2部材の母材の表面層であってもよい。
少なくとも一実施形態において、第1高硬度層は、メタルガスケットとの線接触により生じる応力に耐えられる程度の硬度を有する。第1高硬度層の材料として、例えば、ステライトやトリバロイ(いずれも登録商標)に代表されるCo基合金、インコネル625やインコネル617(いずれも登録商標)に代表される高硬度Ni基合金、クロムカーバイト、タングステンカーバイト、セラミックス、サーメット等を用いることができる。
【0011】
この蒸気タービン設備では、黒鉛系渦巻きガスケットに替えてメタルガスケットを第1部材と第2部材との間に設けるようにしたので、650℃以上という過酷な蒸気温度条件下でも高いシール性を実現できる。また、少なくとも第1部材及び第2部材のメタルガスケットとの線接触部に母材(Ni基合金等の鋳造材)よりも高硬度である第1高硬度層を設けたので、メタルガスケットとの線接触部における高い面圧に起因する第1部材及び第2部材の変形を抑制し、シール性の低下を抑制できる。
したがって、650℃以上の蒸気温度条件下においても、Ni基合金等の鋳造材で構成された第1部材及び第2部材間を適切にシールすることができる。
【0012】
少なくとも一実施形態において、前記メタルガスケットの外周側において、前記第1部材に設けられた環状凸部と前記第2部材に設けられた環状凹部とが嵌合しており、前記メタルガスケットは、前記環状凸部に形成された凸シール面と前記環状凹部に形成された凹シール面とに挟まれて、前記凸シール面及び前記凹シール面にそれぞれ線接触しており、前記メタルガスケットの外周は、前記環状凹部の外周縁を形成する前記第2部材の壁面に線接触しており、前記第1高硬度層は、前記凸シール面、前記凹シール面及び前記壁面に設けられる。
このように、第1部材及び第2部材に対してメタルガスケットを合計3箇所(第1部材の凸シール面、第2部材の凹シール面、第2部材の環状凹部の外周縁を形成する壁面)で線接触させることで、蒸気漏れを効果的に抑制することができる。また、第1部材及び第2部材のメタルガスケットとの上記3箇所の線接触部に第1高硬度層を設けることで、メタルガスケットとの線接触部における高い面圧に起因する第1部材及び第2部材の変形を抑制できる。
【0013】
また、前記メタルガスケットは、切欠きを有する断面形状であり、前記メタルガスケットは、前記切欠きが前記空間側に面するように配置され、前記切欠き以外の部分が前記凸シール面、前記凹シール面及び前記壁面に線接触していてもよい。
このように、メタルガスケットを、その切欠きが前記空間(650℃以上の蒸気が流通する空間)側に面するように配置することで、切欠きを介してメタルガスケットの内部空間に蒸気が導入され、この蒸気によってメタルガスケットが高い面圧で第1部材及び第2部材との線接触部に押し付けられる。すなわち、上述のように構成したメタルガスケットは、蒸気の圧力を利用した自封機能(セルフシール機能)によって高いシール性を実現できる。
一方、蒸気圧力を利用してメタルガスケットの自封機能を発現しようとすると、第1部材及び第2部材のメタルガスケットとの線接触部により一層高い面圧が作用して第1部材及び第2部材が変形しやすくなる。しかし、上述のように第1部材及び第2部材のメタルガスケットとの線接触部に第1高硬度層を設けておけば、第1部材及び第2部材の変形を効果的に抑制できる。
【0014】
また、少なくとも一実施形態において、前記第1部材は、前記環状凸部及び前記環状凹部の嵌合位置よりも外周側における環状エリアにおいて前記第2部材に当接しており、前記環状エリアよりもさらに外周側に位置する締結エリアにおいて前記第2部材に締結されており、前記環状エリアにおいて前記第1部材と前記第2部材とが当接する部分には、前記母材よりも高硬度である第2高硬度層が設けられている。
このように、環状凸部と環状凹部との嵌合位置よりも外周側に設けられる環状エリアにおいて第1部材を第2部材に当接させることで、第1部材の凸シール面と第2部材の凹シール面との間隔が規定される。よって、締結エリアにて第1部材を第2部材に締結するだけで、第1部材の凸シール面と第2部材の凹シール面との間隔が適切に調節され、メタルガスケットによる所期のシール性が得られるとともに、メタルガスケットとの第1部材及び第2部材の線接触部における過度な面圧発生を防止できる。また、環状エリアにおける第1部材と第2部材とが当接する部分に第2高硬度層を設けることで、締結エリアにおける締め付け力が環状エリアに作用しても、環状エリアにおける第1部材及び第2部材の変形を抑制できる。
【0015】
なお、第2高硬度層は、第1高硬度層と同種の材料であってもよいし、第1高硬度層とは異なる材料であってもよい。少なくとも一実施形態において、第2高硬度層は、環状エリアにおける第1部材と第2部材との接触により生じる応力に耐えられる程度の硬度を有する。第2高硬度層は、例えば、ステライトやトリバロイ(いずれも登録商標)に代表されるCo基合金、インコネル625やインコネル617(いずれも登録商標)に代表される高硬度Ni基合金、クロムカーバイト、タングステンカーバイト、セラミックス、サーメット等を用いることができる。
【0016】
一実施形態において、前記第1部材及び前記第2部材の一方が蒸気弁の弁ケーシングであり、前記第1部材及び前記第2部材の他方が前記弁ケーシングに装着される前記蒸気弁のボンネットであってもよい。
【0017】
一実施形態において、前記第1部材及び前記第2部材が、前記蒸気が流通する一対の配管同士のフランジ接続部を形成してもよい。
【0018】
また一実施形態において、前記第1部材および前記第2部材の一方がタービン車室(外車室又は内車室)の上半部であり、前記第1部材および前記第2部材の他方が前記タービン車室の下半部であってもよい。
タービン車室は、ガスケット等のシール機構を設けることなく、上半部と下半部とを水平分割面においてメタルタッチさせたものが一般的である。その理由の一つは、従来から蒸気弁のシール機構として用いられてきた黒鉛系渦巻きガスケットは、体格が蒸気弁に比べて大きいタービン車室をシールできるようなサイズのものを製造することが困難な点にある。上述のメタルガスケットは、黒鉛系渦巻きガスケットに比べて大型に形成しやすいから、上述のメタルガスケットをタービン車室の上半部と下半部との間に設けることで、タービン車室のシール性を改善することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、黒鉛系渦巻きガスケットに替えてメタルガスケットを第1部材と第2部材との間に設けるようにしたので、650℃以上という過酷な蒸気温度条件下でも高いシール性を実現できる。また、少なくとも第1部材及び第2部材のメタルガスケットとの線接触部に母材(Ni基合金等の鋳造材)よりも高硬度である第1高硬度層を設けたので、メタルガスケットとの線接触部における高い面圧に起因する第1部材及び第2部材の変形を抑制し、シール性の低下を抑制できる。
したがって、650℃以上の蒸気温度条件下においても、Ni基合金等の鋳造材で構成された第1部材及び第2部材間を適切にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る蒸気タービン設備の全体構成を示す図である。
図2】蒸気タービン設備の蒸気弁の構成例を示す断面図である。
図3図2における領域Aの拡大図である。
図4図3とは異なる形状例のメタルガスケットを第1部材と第2部材との間に設けた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
図1は、一実施形態に係る蒸気タービン設備の全体構成を示す図である。
一実施形態において、蒸気タービン設備1は、超高圧タービン2、高圧タービン4、中圧タービン6及び低圧タービン8からなるタービン群と、該タービン群によって駆動される発電機9と、該タービン群に供給される蒸気を生成するためのボイラ10とを備える。
なお、超高圧タービン2、高圧タービン4、中圧タービン6及び低圧タービン8の各軸は、同一軸上にて互いに連結され、さらに発電機9の軸にも連結されていてもよい。
【0023】
超高圧タービン2には、ボイラ10に設置された過熱器12で生成された主蒸気が主蒸気管13を介して供給される。超高圧タービン2に流入した主蒸気は、膨張仕事を行った後に超高圧タービン2から排出され、ボイラ10に設置された第1再熱器14に流入する。第1再熱器14にて再熱された蒸気は、第1再熱蒸気管15を介して高圧タービン4に流入する。高圧タービン4に流入した再熱蒸気は、膨張仕事を行った後に高圧タービン4から排出され、ボイラ10に設置された第2再熱器16に流入する。第2再熱器16にて再熱された再熱蒸気は、第2再熱蒸気管17を介して中圧タービン6に流入する。中圧タービン6に流入した再熱蒸気は、膨張仕事を行った後に中圧タービン6から排出され、クロスオーバ管18を介して低圧タービン8に流入する。低圧タービン8に流入した蒸気は、膨張仕事を行った後に低圧タービン8から排出され、復水器20で復水され、ボイラ給水ポンプ22によりボイラ10に還流される。
【0024】
上記構成の蒸気タービン設備1では、主蒸気管13を介して超高圧タービン2に供給される主蒸気と、第1再熱蒸気管15を介して高圧タービン4に供給される再熱蒸気と、第2再熱蒸気管17を介して中圧タービン6に供給される再熱蒸気とは、650℃以上(例えば700℃程度)である。なお、主蒸気圧力は、30MPa以上、例えば35MPaに設定される。
【0025】
蒸気タービン設備1では、主蒸気管13、第1再熱蒸気管15及び第2再熱蒸気管17には、それぞれ、止め弁や加減弁等の蒸気弁が設けられる。
【0026】
図2は、蒸気タービン設備1の蒸気弁の構成例を示す断面図である。図3は、図2における領域Aの拡大図である。
【0027】
図2に示すように、蒸気弁30は、ボンネット32と弁ケーシング34とで形成された弁室36に弁体38が収納された構成を有する。ボンネット32及び弁ケーシング34は、Ni基合金、オーステナイト鋼、高クロム鋼(Cr含有率9〜12%)の少なくとも一つからなる鋳造材(以下、“Ni基合金等の鋳造材”という。)で構成される。ボンネット32は、締結部材33によって弁ケーシング34に締結されている。
弁体38は、主弁38Aおよび該主弁38Aに内包された副弁38Bにより構成される。主弁38Aは、弁ケーシング34の弁座35に対向して設けられる。副弁38Bには、弁棒40が取り付けられており、弁棒40を介して不図示のアクチュエータの駆動力が伝わるようになっている。弁棒40は、ボンネット32に設けられたガイドブシュ41内を摺動する。弁棒40に取り付けられた副弁38Bは、所定のリフト量までは単独で進退するが、所定のリフト量に達すると主弁38Aとともに進退するようになっている。なお、弁体38の外周には、蒸気に含まれる異物を除去するための円筒状のストレーナ42が設けられている。
【0028】
次に、図3を用いて、蒸気タービン設備1の各部において650℃以上の蒸気をシールするためのガスケットの構成について説明する。
【0029】
ここで、蒸気タービン設備1においては、650℃以上の蒸気が流通する部分をシールするためのガスケット周辺の構成は共通している。そのため、以下では、図3を参照してガスケット周辺の構成を説明する際、ボンネット32を「第1部材32」と一般化し、弁ケーシング34を「第2部材34」と一般化して説明する。
以下で説明するガスケットの周辺構成が適用可能な蒸気弁30以外の例として、蒸気タービン設備1における主蒸気管13、第1再熱蒸気管15、第2再熱蒸気管17等の蒸気管におけるフランジ接続部が挙げられる。この場合、第1部材32が一方の配管のフランジ部(第1フランジ部)であり、第2部材34が前記第1フランジ部に接続される他方の配管のフランジ部(第2フランジ部)である。なお、第1フランジ部と第2フランジ部は、フランジ接合面において合されて互いに締結され、内部に650℃以上の蒸気が流通する空間を形成する。
さらに別の例として、蒸気タービン設備1における超高圧タービン2,高圧タービン4,中圧タービン6等のタービン車室(外車室又は内車室)に、以下で説明するガスケットの周辺構成を適用してもよい。この場合、第1部材32及び第2部材34の一方がタービン車室の上半部であり、第1部材32及び第2部材34の他方がタービン車室の下半部である。なお、タービン車室の上半部と下半部は、水平分割面において合されて互いに締結され、内部に650℃以上の蒸気が流通する空間を形成する。
【0030】
図3に示すように、第1部材32に設けられた環状凸部50と第2部材34に設けられた環状凹部52とが嵌合している。第1部材32の環状凸部50の凸シール面51は、第2部材34の環状凹部52の凹シール面53に対向している。そして、凸シール面51と凹シール面53との間には、メタルガスケット60が設けられている。
【0031】
メタルガスケット60は、環状凸部50及び環状凹部52に沿って周方向に連続した環状であり、切欠き61が設けられた略C字形状の断面形状を有する。切欠き61は、メタルガスケット60の内周側に設けられており、第1部材32と第2部材34とで形成される空間(例えば蒸気弁30における弁室36)側に面している。そのため、前記空間(例えば弁室36)側から高圧の蒸気がメタルガスケット60の内部空間62に導入され、メタルガスケット60は内圧を受けて膨らむ。このように、切欠き61を介して内部空間62に導入された蒸気によって、メタルガスケット60は第2部材34及び第1部材32に押し付けられる。したがって、メタルガスケット60は、蒸気の圧力を利用した自封機能(セルフシール機能)によって高いシール性を実現できる。
なお、メタルガスケット60の材料は、650℃の蒸気条件下でも耐え得るものであれば特に限定されないが、例えば、高硬度Ni基合金をメタルガスケット60の材料として選択してもよい。メタルガスケット60は、典型的には、第1部材32及び第2部材34の母材(Ni基合金等の鋳造材)よりも高硬度の材料で形成される。
【0032】
上記構成のメタルガスケット60は、凸シール面51と凹シール面53との間に配置された状態で締結部材33を締め付けることで、凸シール面51と凹シール面53とによって挟圧されて高さ方向(図3の上下方向)に圧縮される。その結果、メタルガスケット60は横方向に膨張する。このとき、メタルガスケット60の外周は、環状凹部52の外周縁を形成する第2部材34の壁面55に当接する。
したがって、メタルガスケット60は、合計3箇所の線接触部64,66,68において、第1部材32又は第2部材34に線接触する。具体的には、線接触部64においてメタルガスケット60の上部が第1部材32側の凸シール面51に線接触し、線接触部66においてメタルガスケット60の下部が第2部材34側の凹シール面53に線接触し、線接触部68においてメタルガスケット60の外周が環状凹部52の外周縁を形成する第2部材34の壁面55に線接触している。
【0033】
このように、第1部材32及び第2部材34に対してメタルガスケット60を合計3箇所の線接触部64,66,68にて線接触させることで、メタルガスケット60を第1部材32及び第2部材34に確実に密着させ、蒸気漏れを効果的に抑制することができる。
【0034】
また、第1部材32及び第2部材34には、それぞれ、少なくともメタルガスケット60との線接触部(64,66,68)に第1高硬度層56が設けられている。これにより、メタルガスケット60との線接触部64,66,68における高い面圧に起因する第1部材32及び第2部材34の変形を抑制し、蒸気漏れを防止できる。
なお、第1高硬度層56は、図3に示すように、第1部材32側の凸シール面51および第2部材34側の凹シール面53の全体に亘って線接触部64,66を含む広い範囲で設けられていてもよい。また、各線接触部64,66,68に設けられる第1高硬度層56は、同種材料から構成されていてもよいし、異種材料から構成されていてもよい。
【0035】
第1高硬度層56は、第1部材32及び第2部材34の母材(Ni基合金等の鋳造材)よりも高硬度である材料で構成される。第1高硬度層56の材料として、例えば、ステライトやトリバロイ(いずれも登録商標)に代表されるCo基合金、インコネル625やインコネル617(いずれも登録商標)に代表される高硬度Ni基合金、クロムカーバイト、タングステンカーバイト、セラミックス、サーメット等を用いることができる。
なお、第1高硬度層56は、溶射、めっき、肉盛り溶接等の任意の手法で第1部材32及び第2部材34の母材上に形成された高硬度皮膜であってもよいし、第1部材32及び第2部材34の母材とは別体として形成されて前記母材に取り付けられた高硬度部材であってもよいし、窒化処理や浸炭焼入れ等の任意の手法によって硬化された第1部材32及び第2部材34の母材の表面層であってもよい。
【0036】
また、幾つかの一実施形態において、第1部材32は、図3に示すように、環状凸部50と環状凹部52との嵌合位置よりも外周側における環状エリア70において第2部材34と当接しており、環状エリア70よりもさらに外周側に位置する締結エリア72において締結部材33によって第2部材34に締結されている。
このように、環状凸部50と環状凹部52との嵌合位置よりも外周側に設けられる環状エリア70において第1部材32を第2部材34に当接させることで、環状エリア70の内周側に位置する凸シール面51と凹シール面53との間隔が規定される。よって、締結エリア72にて第1部材32を第2部材34に締結するだけで、第1部材32の凸シール面51と第2部材34の凹シール面53との間隔が適切に調節され、メタルガスケット60による所期のシール性が得られる。また、メタルガスケット60との第2部材34及び第1部材32の線接触部(64,66,68)における過度な面圧発生を防止できる。
【0037】
また、環状エリア70において第1部材32と第2部材34とが当接する部分には、それぞれ、第2高硬度層71を設けてもよい。第2高硬度層71は、第2部材34及び第1部材32の母材(Ni基合金等の鋳造材)よりも高硬度である材料で構成される。このように環状エリア70における第1部材32と第2部材34とが当接する部分に第2高硬度層71を設けることで、締結エリア72における締結部材33の締め付け力が環状エリア70に作用しても、環状エリア70における第1部材32と第2部材34の変形を抑制できる。
第2高硬度層71の材料として、例えば、ステライトやトリバロイ(いずれも登録商標)に代表されるCo基合金、インコネル625,617(いずれも登録商標)に代表される高硬度Ni基合金、クロムカーバイト、タングステンカーバイト、セラミックス、サーメット等を用いることができる。
なお、第2高硬度層71は、溶射、めっき、肉盛り溶接等の任意の手法で第1部材32及び第2部材34の母材上に形成された高硬度皮膜であってもよいし、第1部材32及び第2部材34の母材とは別体として形成されて前記母材に取り付けられた高硬度部材であってもよいし、窒化処理や浸炭焼入れ等の任意の手法によって硬化された第1部材32及び第2部材34の母材の表面層であってもよい。
【0038】
なお、締結エリア72周辺において、第1部材32又は第2部材34に段差部74を形成し、第1部材32と第2部材34との間に隙間75を設けてもよい。
このように、締結エリア72周辺に隙間75を設けることで、締結部材33の締め付け時にメタルガスケット60に大きな圧縮力が加わり、メタルガスケット60の線接触部64,66,68における第1部材32又は第2部材34への密着性が向上する。よって、メタルガスケット60のシール性を向上させることができる。
【0039】
以上説明したように、本発明の少なくとも一実施形態では、黒鉛系渦巻きガスケットに替えてメタルガスケット60を第1部材32と第2部材34との間に設けるようにしたので、650℃以上という過酷な蒸気温度条件下でも高いシール性を実現できる。また、少なくとも第1部材32及び第2部材34のメタルガスケット60との線接触部64,66,68に母材(Ni基合金等の鋳造材)よりも高硬度である第1高硬度層56を設けたので、メタルガスケット60との線接触部64,66,68における高い面圧に起因する第1部材32と第2部材34の変形を抑制し、シール性の低下を抑制できる。よって、蒸気漏れを防止して蒸気タービン設備1の信頼性向上を図るとともに、蒸気タービン設備1の長寿命化を図ることができる。
したがって、650℃以上の蒸気温度条件下においても、Ni基合金等の鋳造材で母材が構成された第1部材32及び第2部材34間を適切にシールすることができる。
【0040】
以上、本発明の幾つかの実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0041】
例えば、上述の幾つかの実施形態では、第1部材32に環状凸部50を設け、第2部材34に環状凹部52を設ける例について説明したが、第1部材32に環状凹部52を設け、第2部材34に環状凸部50を設けてもよい。
【0042】
また上述の幾つかの実施形態では、切欠き61が設けられた断面形状を有するメタルガスケット60を用いる例について説明したが、第1部材32と第2部材34との間に設けられるメタルガスケットの形状についてはこの例に限定されず、種々の形状のメタルガスケットを用いることができる。
【0043】
図4は、他の形状例のメタルガスケットを第1部材32と第2部材34との間に設けた様子を示す図である。なお、図4に示すメタルガスケット周辺の構成は上述の実施形態と同様であるから、上述の実施形態と共通する箇所は同一の符号を付して、ここではその説明を省略する。
図4に示すように、メタルガスケット80は、環状凸部50及び環状凹部52に沿って周方向に連続した環状であり、中空部82を有する中空Oリングである。メタルガスケット80は、凸シール面51と凹シール面53との間に配置された状態で締結部材33を締め付けることで、凸シール面51と凹シール面53とによって挟圧されて高さ方向(図4の上下方向)に圧縮される。その結果、メタルガスケット80は横方向に膨張する。このとき、メタルガスケット80の外周は、環状凹部52の外周縁を形成する第2部材34の壁面55に当接する。したがって、メタルガスケット80は、合計3箇所の線接触部84,86,88において、第1部材32又は第2部材34に線接触する。具体的には、線接触部84においてメタルガスケット80の上部が第1部材32側の凸シール面51に線接触し、線接触部86においてメタルガスケット80の下部が第2部材34側の凹シール面53に線接触し、線接触部88においてメタルガスケット80の外周が環状凹部52の外周縁を形成する第2部材34の壁面55に線接触している。
なお、メタルガスケット80の材料は、650℃の蒸気条件下でも耐え得るものであれば特に限定されないが、例えば、高硬度Ni基合金をメタルガスケット80の材料として選択してもよい。メタルガスケット80は、典型的には、第1部材32及び第2部材34の母材(Ni基合金等の鋳造材)よりも高硬度の材料で形成される。
【符号の説明】
【0044】
1 蒸気タービン設備
2 超高圧タービン
4 高圧タービン
6 中圧タービン
8 低圧タービン
9 発電機
10 ボイラ
12 過熱器
13 主蒸気管
14 第1再熱器
15 第1再熱蒸気管
16 第2再熱器
17 第2再熱蒸気管
18 クロスオーバ管
20 復水器
22 ボイラ給水ポンプ
30 蒸気弁
32 ボンネット(第1部材)
33 締結部材
34 弁ケーシング(第2部材)
35 弁座
36 弁室
38 弁体
38A 主弁
38B 副弁
40 弁棒
41 ガイドブシュ
42 ストレーナ
50 環状凸部
51 凸シール面
52 環状凹部
53 凹シール面
55 壁面
56 第1高硬度層
60 メタルガスケット
61 切欠き
62 内部空間
64 線接触部
66 線接触部
68 線接触部
70 環状エリア
71 第2高硬度層
72 締結エリア
74 段差部
75 隙間
80 メタルガスケット
82 中空部
84 線接触部
86 線接触部
88 線接触部
図1
図2
図3
図4