(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
種光生成用励起光を出射する種光生成用励起光源と、前記種光生成用励起光が入射し、前記種光生成用励起光により励起される活性元素が添加される種光生成用光ファイバと、前記種光生成用光ファイバに光学的に結合し、前記種光生成用光ファイバを伝播する特定波長の光の透過状態と非透過状態とを切り替える光スイッチと、を有し、前記光スイッチが非透過状態において前記種光生成用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くされ、前記光スイッチが透過状態において前記特定波長のパルス状の種光を出射する種光源と、
増幅用励起光を出射する増幅用励起光源と、前記種光及び前記増幅用励起光が入射し、前記増幅用励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバと、を有し、前記種光を増幅する増幅器と、
前記種光源及び前記増幅器を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記種光生成用励起光源から前記種光生成用励起光が出射されると共に、前記光スイッチが透過状態とされている状態で、前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光を出射させ、
前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光が出射している状態において、前記光スイッチを透過状態から非透過状態にし、前記種光を出射するときに前記光スイッチを再び透過状態にして、
前記増幅器から出射させる出力光のパルス幅が小さいほど前記光スイッチの非透過状態の期間が長くなるよう制御すると共に、前記出力光のピーク強度が所定の強度になるように前記増幅用励起光源から出射する増幅用励起光の強度を制御し、
前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを非透過状態にするまでの期間を前記増幅器から出射させる前記出力光のパルス幅に応じて変化させると共に、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを再び透過状態にするまでの期間を一定とする
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
種光生成用励起光を出射する種光生成用励起光源と、前記種光生成用励起光が入射し、前記種光生成用励起光により励起される活性元素が添加される種光生成用光ファイバと、前記種光生成用光ファイバに光学的に結合し、前記種光生成用光ファイバを伝播する特定波長の光の透過状態と非透過状態とを切り替える光スイッチと、を有し、前記光スイッチが非透過状態において前記種光生成用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くされ、前記光スイッチが透過状態において前記特定波長のパルス状の種光を出射する種光源と、
増幅用励起光を出射する増幅用励起光源と、前記種光及び前記増幅用励起光が入射し、前記増幅用励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバと、を有し、前記種光を増幅する増幅器と、
前記種光源及び前記増幅器を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記種光生成用励起光源から前記種光生成用励起光が出射されると共に、前記光スイッチが透過状態とされている状態で、前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光を出射させ、
前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光が出射している状態において、前記光スイッチを透過状態から非透過状態にし、前記種光を出射するときに前記光スイッチを再び透過状態にして、
前記増幅器から出射させる出力光のパルス幅が小さいほど前記光スイッチの非透過状態の期間が長くなるよう制御すると共に、前記出力光のピーク強度が所定の強度になるように前記増幅用励起光源から出射する増幅用励起光の強度を制御し、
前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを非透過状態にするまでの期間を一定とすると共に、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを再び透過状態にするまでの期間を前記増幅器から出射させる前記出力光のパルス幅に応じて変化させる
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
種光生成用励起光を出射する種光生成用励起光源と、前記種光生成用励起光が入射し、前記種光生成用励起光により励起される活性元素が添加される種光生成用光ファイバと、前記種光生成用光ファイバに光学的に結合し、前記種光生成用光ファイバを伝播する特定波長の光の透過状態と非透過状態とを切り替える光スイッチと、を有し、前記光スイッチが非透過状態において前記種光生成用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くされ、前記光スイッチが透過状態において前記特定波長のパルス状の種光を出射する種光源と、
増幅用励起光を出射する増幅用励起光源と、前記種光及び前記増幅用励起光が入射し、前記増幅用励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバと、を有し、前記種光を増幅する増幅器と、
前記種光源及び前記増幅器を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記種光生成用励起光源から前記種光生成用励起光が出射されると共に、前記光スイッチが透過状態とされている状態で、前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光を出射させ、
前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光が出射している状態において、前記光スイッチを透過状態から非透過状態にし、前記種光を出射するときに前記光スイッチを再び透過状態にして、
前記増幅器から出射させる出力光のパルス幅が小さいほど前記光スイッチの非透過状態の期間が長くなるよう制御すると共に、前記出力光のピーク強度が所定の強度になるように前記増幅用励起光源から出射する増幅用励起光の強度を制御し、
前記光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、前記種光が前記増幅用光ファイバに入射する際における前記増幅用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くなるよう前記増幅用励起光源を制御する
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
前記制御部は、前記増幅用励起光源から、前記増幅用励起光と同波長で前記増幅用励起光よりも強度が小さく、前記増幅用光ファイバに入射するアイドリング光を前記増幅用励起光が出射する前から出射させ、前記光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、前記アイドリング光の強度が大きくなるよう前記増幅用励起光源を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載のファイバレーザ装置。
種光生成用励起光を出射する種光生成用励起光源と、前記種光生成用励起光が入射し、前記種光生成用励起光により励起される活性元素が添加される種光生成用光ファイバと、前記種光生成用光ファイバに光学的に結合し、前記種光生成用光ファイバを伝播する特定波長の光の透過状態と非透過状態とを切り替える光スイッチと、を有し、前記光スイッチが非透過状態において前記種光生成用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くされ、前記光スイッチが透過状態において前記特定波長のパルス状の種光を出射する種光源と、
増幅用励起光を出射する増幅用励起光源と、前記種光及び前記増幅用励起光が入射し、前記増幅用励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバと、を有し、前記種光を増幅する増幅器と、
前記種光源及び前記増幅器を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記種光生成用励起光源から前記種光生成用励起光が出射されると共に、前記光スイッチが透過状態とされている状態で、前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光を出射させ、
前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光が出射している状態において、前記光スイッチを透過状態から非透過状態にし、前記種光を出射するときに前記光スイッチを再び透過状態にして、
前記増幅器から出射させる出力光のパルス幅が小さいほど前記光スイッチの非透過状態の期間が長くなるよう制御すると共に、前記出力光のピーク強度が所定の強度になるように前記増幅用励起光源から出射する増幅用励起光の強度を制御し、
前記光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、前記種光が前記増幅用光ファイバに入射する際における前記増幅用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くなるよう、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを非透過状態にするまでの期間を長くすると共に、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを再び透過状態するまでの期間を長くする
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
種光生成用励起光を出射する種光生成用励起光源と、前記種光生成用励起光が入射し、前記種光生成用励起光により励起される活性元素が添加される種光生成用光ファイバと、前記種光生成用光ファイバに光学的に結合し、前記種光生成用光ファイバを伝播する特定波長の光の透過状態と非透過状態とを切り替える光スイッチと、を有し、前記光スイッチが非透過状態において前記種光生成用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くされ、前記光スイッチが透過状態において前記特定波長のパルス状の種光を出射する種光源と、
増幅用励起光を出射する増幅用励起光源と、前記種光及び前記増幅用励起光が入射し、前記増幅用励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバと、を有し、前記種光を増幅する増幅器と、
前記種光源及び前記増幅器を制御する制御部と、
前記種光源と前記増幅器との間において、前記増幅器から前記種光源に進行する光の強度を検出する光検出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記種光生成用励起光源から前記種光生成用励起光が出射されると共に、前記光スイッチが透過状態とされている状態で、前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光を出射させ、
前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光が出射している状態において、前記光スイッチを透過状態から非透過状態にし、前記種光を出射するときに前記光スイッチを再び透過状態にして、
前記増幅器から出射させる出力光のパルス幅が小さいほど前記光スイッチの非透過状態の期間が長くなるよう制御すると共に、前記出力光のピーク強度が所定の強度になるように前記増幅用励起光源から出射する増幅用励起光の強度を制御し、
前記光検出部で検出される光の強度に基づき、前記種光が前記増幅用光ファイバに入射する際における前記増幅用光ファイバの前記活性元素が所望の励起状態となるよう前記増幅用励起光の強度を制御する
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
種光生成用励起光を出射する種光生成用励起光源と、前記種光生成用励起光が入射し、前記種光生成用励起光により励起される活性元素が添加される種光生成用光ファイバと、前記種光生成用光ファイバに光学的に結合し、前記種光生成用光ファイバを伝播する特定波長の光の透過状態と非透過状態とを切り替える光スイッチと、を有し、前記光スイッチが非透過状態において前記種光生成用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くされ、前記光スイッチが透過状態において前記特定波長のパルス状の種光を出射する種光源と、
増幅用励起光を出射する増幅用励起光源と、前記種光及び前記増幅用励起光が入射し、前記増幅用励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバと、を有し、前記種光を増幅する増幅器と、
前記種光源及び前記増幅器を制御する制御部と、
前記種光源と前記増幅器との間において、前記増幅器から前記種光源に進行する光の強度を検出する光検出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記種光生成用励起光源から前記種光生成用励起光が出射されると共に、前記光スイッチが透過状態とされている状態で、前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光を出射させ、
前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光が出射している状態において、前記光スイッチを透過状態から非透過状態にし、前記種光を出射するときに前記光スイッチを再び透過状態にして、
前記増幅器から出射させる出力光のパルス幅が小さいほど前記光スイッチの非透過状態の期間が長くなるよう制御すると共に、前記出力光のピーク強度が所定の強度になるように前記増幅用励起光源から出射する増幅用励起光の強度を制御し、
前記光検出部で検出される光の強度が出射させる種光のパルス幅に応じた所定の値になるときに、前記光スイッチを非透過状態とする
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
前記種光源と前記増幅器との間に設けられ、前記パルス状の種光が出射しない期間に前記種光源から出射する光を波長変換せず、前記パルス状の種光を波長変換する波長変換器と、
前記波長変換器と前記増幅器との間に設けられ、前記種光源から出射する光の内、前記波長変換器で波長変換された光を透過し、前記波長変換器で波長変換されない光の透過が抑制される波長選択フィルタと、
を更に備える
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のファイバレーザ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のファイバレーザ装置では、レーザダイオードに印加されるパルス状の電圧が制御されることにより、光ファイバに入射する励起光としてのレーザ光の強度が制御され、このレーザ光による光ファイバの励起状態に応じて光ファイバから出射する光のパルス幅が決定される。具体的には、レーザ光の強度を大きくすると、光ファイバの励起状態が高くなり、共振器内を伝播する光の損失よりも利得が大きくなる時間が長くなるために、光ファイバから出射する光のパルス幅は大きくなる。
【0006】
しかし、このような方法によりファイバレーザ装置から出射する光のパルス幅を正確に制御するためには、光ファイバの励起状態を正確に制御する必要があるが、現実的にはレーザダイオードの時定数の影響等に起因した、レーザダイオードから出射するレーザ光の過渡特性によって、光ファイバの励起状態を正確に制御できず、パルス幅を正確に制御することが困難であった。
【0007】
また、ファイバレーザ装置からパルス状の出力光を連続して出射する前に、このパルス状の出力光を1パルス分だけ出射させて出力光のテストを行い、この出力光のテストの結果から、連続して出射させるパルス状の出力光のパルス幅や強度を調整したいという要請がある。このような場合、1パルスの出力光を出射するときにおける出力光のパルス幅と、パルス状の出力光を連続して出射するときのそれぞれの出力光のパルス幅とが、略同じ幅であることが望ましい。このため、光ファイバから出射する光のパルス幅を正確に制御することができるファイバレーザ装置が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、上記を踏まえてなされたものであり、出射する出力光のパルス幅を正確に制御し得るファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のファイバレーザ装置は、種光生成用励起光を出射する種光生成用励起光源と、前記種光生成用励起光が入射し、前記種光生成用励起光により励起される活性元素が添加される種光生成用光ファイバと、前記種光生成用光ファイバに光学的に結合し、前記種光生成用光ファイバを伝播する特定波長の光の透過状態と非透過状態とを切り替える光スイッチと、を有し、前記光スイッチが非透過状態において前記種光生成用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くされ、前記光スイッチが透過状態において前記特定波長のパルス状の種光を出射する種光源と、増幅用励起光を出射する増幅用励起光源と、前記種光及び前記増幅用励起光が入射し、前記増幅用励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバと、を有し、前記種光を増幅する増幅器と、前記種光源及び前記増幅器を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記種光生成用励起光源から前記種光生成用励起光が出射されると共に、前記光スイッチが透過状態とされている状態で、前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光を出射させ、前記増幅用励起光源から前記増幅用励起光が出射している状態において、前記光スイッチを透過状態から非透過状態にし、前記種光を出射するときに前記光スイッチを再び透過状態にして、前記増幅器から出射させる出力光のパルス幅が小さいほど前記光スイッチの非透過状態の期間が長くなるよう制御すると共に、前記出力光パルスが所定のピーク強度になるように前記増幅用励起光源から出射する増幅用励起光の強度を制御することを特徴とするものである。
【0010】
このようなファイバレーザ装置によれば、種光源の光スイッチが非透過状態なる期間を制御することで、種光生成用光ファイバの活性元素の励起状態を制御することができる。すなわち、光スイッチが非透過状態では、種光生成用光ファイバを伝播する特定波長の光が光スイッチにより遮られるため、種光生成用励起光により活性元素の励起状態が高くされる。そして、活性元素が高く励起された状態で、光スイッチが透過状態とされることで、種光生成用光ファイバ内を伝播する特定波長の光が増幅され、強度の大きなパルス状の種光を出射することができる。このような種光源としては、例えば、共振型のファイバレーザ装置を利用した光源、ファイバリング型のファイバレーザ装置を利用した光源を挙げることができる。このようなパルス状の種光を出射する制御において、光スイッチの非透過状態の期間が長い場合には、光スイッチの非透過状態の期間が短い場合よりも、活性元素の励起状態がより高くされ、この結果、種光源から出射する種光のパルス幅が小さくなる。続いて、種光が入射する増幅器からは、入射した種光のパルス幅に応じたパルス幅を有する出力光が出射する。このように本発明のファイバレーザ装置では、光スイッチの非透過状態の期間を制御することにより、出力光のパルス幅を制御することができるのである。種光生成用光ファイバに入射する種光生成用励起光の強度を制御するよりも、光スイッチの時間的な制御を行う方が格段に正確に制御することができるため、より正確に出力光のパルス幅を制御することができる。
【0011】
更に、本発明のファイバレーザ装置によれば、増幅器から出射する出力光のピーク強度が所定のピーク強度になるように、増幅部の増幅用励起光源から出射する増幅用励起光の強度が制御される。従って、本発明のファイバレーザ装置によれば、増幅器から出射する出力光のパルス幅とピーク強度を独立に制御することができるのである。
【0012】
なお、このように出力光のパルス幅とピーク強度とを独立して制御できることにより、ファイバレーザ装置からパルス状の出力光を連続して出射する前に、出力光を1パルス分だけ出射させて出力光のテストを行う場合において、1パルスの出力光のパルス幅とピーク強度を、パルス状の出力光を連続して出射させる場合と略同じ強度とすることができる。従って、パルス状の出力光を連続して出射する際に、出力光を1パルス分だけ出射させるテスト結果を反映することができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを非透過状態にするまでの期間を前記増幅器から出射させる前記出力光のパルス幅に応じて変化させると共に、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを再び透過状態にするまでの期間を一定とすることが好ましい。
【0014】
光スイッチがこのように制御されることで、種光のパルス幅によらず、種光を出射するタイミングを略同じにすることができる。従って、出力光のパルス幅によらず、出力光を出射するタイミングを略同じにすることができる。なお、制御部は、上記のように、増幅器から出射させる出力光のパルス幅が小さいほど光スイッチの非透過状態の期間が長くなるように種光源を制御する。このため、制御部は、出力光のパルス幅が小さいほど、増幅用励起光を出射させてから光スイッチを非透過状態にするまでの期間が短くなるように、種光源を制御することになる。
【0015】
或いは、前記制御部は、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを非透過状態にするまでの期間を一定とすると共に、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを再び透過状態にするまでの期間を前記増幅器から出射させる前記出力光のパルス幅に応じて変化させることとしても良い。
【0016】
また、前記制御部は、前記光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、前記種光が前記増幅用光ファイバに入射する際における前記増幅用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くなるよう前記増幅用励起光源を制御することが好ましい。
【0017】
上述のように光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、種光源から出射する種光のパルス幅が大きくなる。ところで、種光を増幅する増幅用光ファイバの活性元素の励起状態が同じ場合、パルス幅が小さい種光ほどピーク強度の大きな出力光が出射し、パルス幅が大きい種光ほどピーク強度の小さな出力光が出射する。しかし、上記の構成によれば、光スイッチの非透過状態の期間が短く、種光のパルス幅が大きいほど、増幅用光ファイバの活性元素の励起状態が高くされるため、種光のパルス幅に起因して、増幅器から出射する出力光のピーク強度が変動することを抑制することができる。従って、出力光のパルス幅を正確に制御することができるほか、出力光のピーク強度を安定して制御することができる。
【0018】
このように前記制御部が、前記光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、前記種光が前記増幅用光ファイバに入射する際における前記増幅用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くなるよう前記増幅用励起光源を制御する場合、前記制御部は、前記光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、前記増幅用励起光の強度が大きくなるよう前記増幅用励起光源を制御することが好ましい。
【0019】
このように制御することで、種光が増幅用光ファイバに入射する際における増幅用光ファイバの活性元素の励起状態を高くすることができる。特に上記のように、制御部が増幅用励起光を出射させてから光スイッチを非透過状態にするまでの期間を一定とする場合、出射すべき種光のパルス幅を大きくしようとする程、光スイッチが透過状態となる期間が短くなるように制御されることに起因して、種光が出射するタイミングが早くなり、増幅用光ファイバの活性元素が励起される時間が短くなる。このように増幅用光ファイバの活性元素が励起される時間が短くなるにもかかわらず、パルス幅の大きい種光を出射する場合ほど、上記のように出力光のピーク強度が高くされづらい。しかし、上記の構成ように光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、増幅用励起光の強度が大きくなるよう増幅用励起光源が制御されて増幅用光ファイバの活性元素の励起状態が高くされることにより、増幅器から出射する出力光のピーク強度が変動することを抑制することができる。
【0020】
或いは、前記制御部が、前記光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、前記種光が前記増幅用光ファイバに入射する際における前記増幅用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くなるよう前記増幅用励起光源を制御する場合、前記制御部は、前記増幅用励起光源から、前記増幅用励起光と同波長で前記増幅用励起光よりも強度が小さく、前記増幅用光ファイバに入射するアイドリング光を前記増幅用励起光が出射する前から出射させ、前記光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、前記アイドリング光の強度が大きくなるよう前記増幅用励起光源を制御することが好ましい。
【0021】
活性元素が添加される増幅用光ファイバを用いた増幅器では、出力光を出射するタイミングを早めるために、ASE光による発振が生じない程度で、増幅用励起光よりも強度の小さいアイドリング光を増幅用光ファイバに入射して、増幅用光ファイバの活性元素を予備励起することがある。この場合、アイドリング光の強度を大きくして、予備励起状態を高くすることで、増幅用励起光の入射時における増幅用光ファイバの励起状態の変化率を高くすることができる。このようにして種光のパルス幅が大きいほど増幅用励起光の入射時における増幅用光ファイバの励起状態の変化率を大きくすることで、種光の強度に関わらず同じ強度の増幅用励起光が入射する場合であっても、増幅用光ファイバの活性元素の励起状態を高くして、出力光のピーク強度が変動することを抑制することができる。
【0022】
また或いは、前記制御部は、前記光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、前記種光が前記増幅用光ファイバに入射する際における前記増幅用光ファイバの前記活性元素の励起状態が高くなるよう、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを非透過状態にするまでの期間を長くすると共に、前記増幅用励起光を出射させてから前記光スイッチを再び透過状態するまでの期間を長くすることが好ましい。
【0023】
このように制御することで、種光のパルス幅が大きいほど、増幅用光ファイバの活性元素が励起される期間を長くすることができる。従って、パルス幅の大きい種光を出射する場合ほど、増幅用光ファイバの活性元素の励起状態を高くして、増幅器において利得が変動することを抑制することができる。
【0024】
また、前記種光源と前記増幅器との間において、前記増幅器から前記種光源に進行する光の強度を検出する光検出部を更に備え、前記制御部は、前記光検出部で検出される光の強度に基づき、前記種光が前記増幅用光ファイバに入射する際における前記増幅用光ファイバの前記活性元素が所望の励起状態となるよう前記増幅用励起光の強度を制御することが好ましい。
【0025】
種光源と増幅器との間において、増幅器から種光源に進行する光の強度を検出することにより、増幅用光ファイバから出射されるASE光の強度を検出することができ、これにより増幅用光ファイバの活性元素の励起状態を把握することができる。従って、増幅用光ファイバの活性元素の励起状態に応じて、増幅用励起光源から出射する増幅用励起光の強度を正確に制御することができる。例えば、上述のように、光スイッチの非透過状態の期間が短いほど、種光が増幅用光ファイバに入射する際における増幅用光ファイバの活性元素の励起状態が高くなるよう増幅用励起光源を制御する場合においては、増幅用励起光の強度を正確に高くして、種光のパルス幅により、出射する出力光のピーク強度がばらつくことをより抑制することができる。
【0026】
また、前記種光源と前記増幅器との間において、前記増幅器から前記種光源に進行する光の強度を検出する光検出部を更に備え、前記制御部は、前記光検出部で検出される光の強度が出射させる種光のパルス幅に応じた所定の値になるときに、前記光スイッチを非透過状態とすることが好ましい。
【0027】
上記のように種光源と増幅器との間において、増幅器から種光源に進行する光の強度を検出することにより、増幅用光ファイバの活性元素の励起状態を把握することができる。そこで、このように制御することで、種光が出射する時刻における増幅用光ファイバの活性元素の励起状態を略把握することができ、当該励起状態が所望の状態で、種光を増幅用光ファイバに入射することができる。従って、ファイバレーザ装置がおかれる環境により、当該励起状態が高く成りづらい状況であっても、所望のピーク強度の出力光を出射することができる。
【0028】
また、前記種光源と前記増幅器との間に設けられ、前記パルス状の種光が出射しない期間に前記種光源から出射する光を波長変換せず、前記パルス状の種光を波長変換する波長変換器と、前記波長変換器と前記増幅器との間に設けられ、前記種光源から出射する光の内、前記波長変換器で波長変換された光を透過し、前記波長変換器で波長変換されない光の透過が抑制される波長選択フィルタと、を更に備えることが好ましい。
【0029】
本発明のように光スイッチを用いてパルス状の種光を出射する種光源からは、出射する種光と種光との間に、強度の小さい連続光が出射する傾向がある。しかし、上記構成によれば、この連続光は、波長変換されずに波長選択フィルタにより増幅器への入射が抑制される。従って、パルス間において、不要な連続光が出射することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、出射する出力光のパルス幅を正確に制御し得るファイバレーザ装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るファイバレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0034】
図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、種光を出射する種光源MOと、種光源MOから出射する種光を増幅する増幅器PAと、種光源MOと増幅器PAとの間に設けられる波長変換器61と、波長変換器61と増幅器PAとの間に設けられる波長選択フィルタ62と、種光源MOと増幅器PAとの間に設けられる光検出部50と、種光源MO及び増幅器PAを制御する制御部70と、と主な構成として備える。このようにファイバレーザ装置1は、種光源MOが、Master Oscillatorとされ、増幅器PAがPower Amplifierとされる、いわゆるMO−PA型のファイバレーザ装置である。
【0035】
<種光源MOの構成>
種光源MOは、種光生成用励起光を出射する種光生成用励起光源10と、種光生成用励起光源10から出射する種光生成用励起光が入射し、種光生成用励起光により励起される活性元素が添加される種光生成用光ファイバ20と、種光生成用光ファイバ20の一端に接続される第1光ファイバ15と、第1光ファイバ15に設けられる第1ミラーとしての第1FBG(Fiber Bragg Grating)21と、種光生成用励起光を第1光ファイバ15に入射するためのコンバイナ18と、種光生成用光ファイバ20の他端に接続される第2光ファイバ25と、第2光ファイバ25に設けられる第2ミラーとしての第2FBG22と、第1FBG21と第2FBG22との間に設けられる光スイッチ23と、を主な構成として備える。このように種光源MOは、共振器型のファイバレーザ装置から成る。
【0036】
種光生成用励起光源10は、複数のレーザダイオード11から構成され、種光生成用光ファイバ20に添加される活性元素を励起する波長の種光生成用励起光、例えば波長が
915nmの光を出射する。つまり種光生成用励起光は、種光生成用光ファイバ20の活性元素を励起する励起光である。本実施形態において、この光は連続光とされる。また、種光生成用励起光源10のそれぞれのレーザダイオード11は、光ファイバ12に接続されており、レーザダイオード11から出射する光は、光ファイバ12を伝播する。光ファイバ12としては、例えば、マルチモードファイバが挙げられ、この場合、種光生成用励起光は光ファイバ12をマルチモード光として伝播する。
【0037】
種光生成用光ファイバ20は、コアと、コアの外周面を隙間なく囲むクラッドと、クラッドの外周面を被覆する樹脂クラッドと、樹脂クラッドの外周面を被覆する被覆層とから構成されている。種光生成用光ファイバ20のコアを構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム等の元素、及び、種光生成用励起光源10から出射する種光生成用の光により励起されるイッテルビウム(Yb)等の活性元素が添加された石英が挙げられる。このような活性元素としては、希土類元素が挙げられ、希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)等が挙げられる。また、種光生成用光ファイバ20のクラッドを構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英が挙げられる。また、種光生成用光ファイバ20の樹脂クラッドを構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂が挙げられ、種光生成用光ファイバ20の被覆層を構成する材料としては、例えば、樹脂クラッドを構成する樹脂とは異なる紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0038】
第1光ファイバ15は、コアの直径が種光生成用光ファイバ20のコアの直径と同様とされ、クラッドの外径が種光生成用光ファイバ20のクラッドの外径と同様とされる光ファイバであり、例えば、シングルモードファイバとされる。そして、第1光ファイバ15は、コアの中心軸が種光生成用光ファイバ20のコアの中心軸と合わされて、種光生成用光ファイバ20に接続されている。従って、種光生成用光ファイバ20のコアと第1光ファイバ15のコアとが光学的に結合し、種光生成用光ファイバ20のクラッドと第1光ファイバ15のクラッドとが光学的に結合している。さらに、コンバイナ18において、第1光ファイバ15のクラッドに光ファイバ12のコアが接続している。こうして、種光生成用励起光源10と接続される光ファイバ12と、種光生成用光ファイバ20とは、第1光ファイバ15を介して、光学的に結合している。
【0039】
また、第1光ファイバ15のコアには、第1FBG21が設けられている。こうして第1FBG21は、種光生成用光ファイバ20の一端側に設けられている。第1FBG21は、第1光ファイバ15の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、この周期が調整されることにより、励起状態とされた種光生成用光ファイバ20の活性元素が放出する光の内、特定波長の光を反射するように構成されている。第1FBG21は、上述のように種光生成用光ファイバ20に添加される活性限度がイッテルビウムである場合、例えば波長が1070nmの光の反射率が、例えば100%とされる。
【0040】
第2光ファイバ25は、コアの直径が種光生成用光ファイバ20の直径と同様とされており、第2光ファイバ25は、軸が種光生成用光ファイバ20の軸と合わされて、種光生成用光ファイバ20の他端に接続されている。従って、種光生成用光ファイバ20のコアと第2光ファイバ25のコアとが光学的に結合している。
【0041】
また、第2光ファイバ25のコアには、第2FBG22が設けられている。こうして第2FBG22は、種光生成用光ファイバ20の他端側に設けられている。第2FBG22は、第2光ファイバ25の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG21が反射する光と同じ波長の光を第1FBG21よりも低い反射率で反射するように構成され、例えば、第1FBG21が反射する光と同じ波長の光を50%の反射率で反射するように構成されている。
【0042】
光スイッチ23は、第2光ファイバ25に設けられ、ONとOFFとを繰り返すようにスイッチング制御される。光スイッチ23がONの状態(透過状態)は、第1FBG21、第2FBG22で反射する波長の光が低損失な状態であり、この状態では、光スイッチ23に入射する光の略全てが光スイッチ23を透過する。一方、光スイッチ23がOFFの状態(非透過状態)は、第1FBG21、第2FBG22で反射する波長の光が高損失な状態であり、光スイッチ23に入射する光の内、第1FBG21、第2FBG22で反射する特定波長の光の殆どが損失する。このような光スイッチ23としては、例えば、AOM(Acoustic Optical Modulator)を挙げることができ、その他にマイクロマシン方式光スイッチやLN変調機等を挙げることができる。
【0043】
<増幅器PAの構成>
増幅器PAは、種光源MOの第2光ファイバ25に接続される入射用光ファイバ35と、増幅用励起光を出射する増幅用励起光源30と、種光源MOから出射する種光、及び、増幅用励起光源30から出射する増幅用励起光が入射する増幅用光ファイバ40と、種光及び増幅用励起光を増幅用光ファイバ40に入射するためのコンバイナ38と、を主な構成として備える。
【0044】
入射用光ファイバ35は、種光源MOの第2光ファイバ25と同様の構成とされ、第2光ファイバ25のコアと入射用光ファイバ35のコアとが、波長変換器61及び波長選択フィルタ62を介して、光学的に結合している。
【0045】
増幅用励起光源30は、複数のレーザダイオード31から構成され、後述の増幅用光ファイバ40に添加される活性元素を励起する波長の励起光、例えば波長が915nmの励起光を出射する。また、増幅用励起光源30のそれぞれのレーザダイオード31は、光ファイバ32に接続されており、レーザダイオード31から出射する増幅用励起光は、光ファイバ32を伝播する。光ファイバ32としては、例えば、マルチモードファイバが挙げられ、この場合、増幅用励起光は光ファイバ32をマルチモード光として伝播する。
【0046】
増幅用光ファイバ40は、種光源MOの種光生成用光ファイバ20と略同様の構成とされるが、長さや、各構成の径や、添加されるドーパントの種類が種光生成用光ファイバ20と異なっていても良い。この増幅用光ファイバ40は、増幅用励起光により励起される活性元素が、コアを伝播する光により誘導放出を起こすことで、コアを伝播する光を増幅する。
【0047】
コンバイナ38は、入射用光ファイバ35及びそれぞれの光ファイバ32と、増幅用光ファイバ40の入射端とを接続している。具体的には、コンバイナ38において、入射用光ファイバ35のコアが、増幅用光ファイバ40のコアに接続されており、さらにそれぞれの光ファイバ32のコアが、増幅用光ファイバ40のクラッドに接続されている。従って、種光源MOから出射する種光は、増幅用光ファイバ40のコアに入射してコアを伝播し、増幅用励起光源30から出射する増幅用励起光は、増幅用光ファイバ40のクラッドに入射しクラッドを主に伝播する。従って、増幅用光ファイバ40を伝播する種光は、上述のように増幅されて増幅用光ファイバ40から出射する。
【0048】
<その他の構成>
波長変換器61は、入射する光の強度が所定の強度より大きい場合、入射する光をより波長の長い光に変換して出射し、入射する光の強度が所定の強度より小さい場合、入射する光の波長を変換せずそのまま出射する。
【0049】
このような波長変換器61としては、誘導ラマン散乱を起こす光ファイバを挙げることができる。この誘導ラマン散乱を起こす光ファイバとしては、コアに非線形光学定数を上昇させるドーパントが添加される光ファイバが挙げられる。このようなドーパントとしては、ゲルマニウムやリンが挙げられる。この波長変換器61が波長変換する光の強度の閾値は、コアの直径、ドーパントの添加濃度、長さ等によって変えることができる。
【0050】
波長選択フィルタ62には、種光源MOから出射する光が波長変換器61を介して入射する。そして、波長変換器61において波長変換された光が入射する場合、この光を透過し、波長変換器61において波長変換されない光が入射する場合に、この光の透過が抑制されて、この光は消滅する。従って、種光源MOから強度の大きい光が出射し、波長変換器61でこの光の波長が変換される場合、波長選択フィルタ62に入射する光は、波長選択フィルタ62を透過する。一方、種光源MOから強度の小さな光が出射し、波長変換器61において光の波長が変換されない場合、波長選択フィルタ62に入射する光は、波長選択フィルタ62の透過が抑制される。このような波長選択フィルタ62としては、例えば、誘電体多層膜フィルタを挙げることができる。
【0051】
光検出部50は、入射用光ファイバ35の途中に設けられる光分離部51、及び、光分離部51により分離された光の強度を電気的信号に変換する光電変換部52とから構成される。光分離部51は、例えば、光カプラ等から構成され、増幅器PAから種光源MOに向かって進行する光の一部を分離して、光電変換部52に入射する。従って、光検出部50は、増幅器PAの増幅用光ファイバ40において発生して、種光源MOに向かって出射するASE光の強度を検出することができる。また、光電変換部52は、例えばフォトダイオード等の光電変換素子から構成され、光分離部51から入射する光を光電変換し、光分離部51から入射する光の強度に基づいた電気的信号を制御部70に出力する。
【0052】
制御部70は、光源制御部71、及び、光電変換部52から入力する信号の電圧と基準電圧とを比較する比較器72を有している。比較器72は、光電変換部52から入力される信号と基準電圧とを比較して、その結果を示す信号を光源制御部71に出力する。光源制御部71は、論理ゲートや、CPU(Central Processing Unit)等で構成されており、比較器72からの信号に基づいて、制御信号を生成する。生成された制御信号は、種光源MOの種光生成用励起光源10や光スイッチ23、及び、増幅器PAの増幅用励起光源30に入力される。種光生成用励起光源10では、種光生成用励起光の出射の有無が主に制御され、光スイッチ23では、スイッチング動作が主に制御される。また、増幅用励起光源30では、増幅用励起光の出射の有無や、出射する増幅用励起光の強度が主に制御される。
【0053】
次に、このようなファイバレーザ装置1の動作について説明する。
【0054】
<基本動作>
図2は、
図1のファイバレーザ装置1の基本動作を模式的に示すタイミングチャートである。具体的には、ファイバレーザ装置1のアイドリング状態と、出力光を出射させるための出射信号の状態と、種光生成用励起光源10から出射する種光生成用励起光の強度と、種光源MOの種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態(MO)と、光スイッチ23のON/OFFの状態と、種光源MOから出射する種光の強度と、増幅器PAの増幅用励起光源30から出射する増幅用励起光の強度と、増幅器PAの増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態(PA)と、ファイバレーザ装置1から出射する出力光の強度とを示している。
【0055】
なお、
図2では、アイドリングが高い状態が、ファイバレーザ装置1がアイドリング状態であることを示し、出射信号が高い状態が出射信号がONの状態を示し、種光生成用励起光が高い状態ほど種光生成用励起光源10から出射する種光生成用励起光の強度が大きい状態を示し、励起状態(MO)が高いほど、種光源MOの種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態が高いことを示し、光スイッチ23が高い状態が光スイッチ23がONの状態を示しており、種光が高い状態ほど種光源MOから出射する種光の強度が大きい状態を示し、増幅用励起光が高い状態ほど増幅器PAの増幅用励起光源30から出射する増幅用励起光の強度が大きい状態を示し、励起状態(PA)が高いほど、増幅器PAの増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高いことを示し、出力光が高い状態ほどファイバレーザ装置1から出射する出力光の強度が大きい状態を示している。なお、
図2において、種光生成用励起光及び増幅用励起光の高さや、種光及び出力光のピークの高さが同等に記載されているが、
図2では、これら光の状態を模式的に示しているため、実際に出射する種光生成用励起光及び増幅用励起光や、種光及び出力光の強度が同じであることを示しているわけではない。
【0056】
まず、ファイバレーザ装置1が動作可能な状態において、時刻T1にファイバレーザ装置1の図示しないアイドリングスイッチがONとされると、ファイバレーザ装置1がアイドリング状態となる。
【0057】
ファイバレーザ装置1がアイドリング状態になると、制御部70は、種光源MOの種光生成用励起光源10を制御して、種光生成用励起光を出射させる。種光生成用励起光源10から種光生成用励起光が出射し始めて、間もなく種光生成用励起光は十分な強度となる。種光生成用光ファイバ20に種光生成用励起光が入射すると、種光生成用光ファイバ20に添加される活性元素の励起状態が徐々に高くなる。種光生成用光ファイバ20に添加される活性元素の励起状態が高くなるにつれ、種光生成用光ファイバ20の活性元素からASE光が放出される。このASE光は、ピーク強度が小さく広い波長帯域を有する光である。ところで、
図2に示すように、光スイッチ23は、定常状態がONとされている。従って、光スイッチ23に入射する光の略全てが光スイッチ23を透過する。このため、このASE光のうち第1FBG21及び第2FBG22で反射する特定波長の光が、種光生成用光ファイバ20を挟む第1FBG21と第2FBG22との間で共振して、一部の光が第2FBG22から出射して、種光源MOの第2光ファイバ25から出射する。この光は、種光生成用光ファイバ20に添加される活性元素の励起状態が然程高くないことから然程増幅されておらず、強度の小さな連続光となる。このように光スイッチ23がONの状態では、共振する光により、種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態は、然程高くない状態で一定になる。
【0058】
なお、このとき種光源MOから出射する連続光は、上記のように強度が小さいため、波長変換器61において、波長変換されない。従って、このときに波長変換器61から出射した光は、波長選択フィルタ62を透過することができずに消滅する。
【0059】
その後、時刻T2に、制御部70において出射信号がONとされる。この出射信号は、ファイバレーザ装置1に備わる図示しない出射スイッチがONとされることにより、ONとされても良く、制御部70において自動的にONとされても良い。例えば、パルス状の出力光を1パルス分だけ出射するような場合には、ファイバレーザ装置1に備わる上記の出射スイッチのON信号に応じて出射信号がONとされ、パルス状の出力光を連続して出射する場合には、制御部70が有するプログラムにより、出射される出力光の間隔に合わせて、上記のように制御部70において自動的に出射信号がONとされる。
【0060】
出射信号がONとされると、制御部70は、増幅器PAの増幅用励起光源30を制御して、増幅用励起光源30から増幅用励起光を出射させる。増幅用励起光源30から増幅用励起光が出射し始めて、間もなく増幅用励起光は十分な強度となる。出射した増幅用励起光は、増幅用光ファイバ40に添加される活性元素に吸収され、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が徐々に高くなる。
【0061】
そして、時刻T2から所定の期間が経過した時刻T3において、制御部70は、光スイッチ23をOFFとする。従って、それまで種光生成用光ファイバ20上で共振していた特定波長の光が、光スイッチ23において損失する。このため、種光生成用光ファイバ20における光の共振動作が停止する。この光の共振動作の停止により、種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態が更に高くなる。また、この間も増幅器PAの増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態は、飽和しない限り徐々に高くなり続ける。
【0062】
次に、時刻T3から所定の期間経過後の時刻T4において、制御部70は、光スイッチ23が再びONにする。従って、第1FBG21と第2FBG22とで挟まれた種光生成用光ファイバ20において、再び特定波長の光の共振が生じる。このとき、種光生成用光ファイバ20の活性元素は、光スイッチ23がOFFの期間において、高い励起状態をされているため、共振する光を強度の大きな光に増幅する。そして、増幅された光が、第2FBG22を透過し、
図2に示すようにパルス状の種光として、種光源MOの第2光ファイバ25から出射する。
【0063】
種光源MOから出射した種光は、強度が大きいため波長変換器61において、長波長側に波長変換されて波長変換器61から出射する。波長変換器61から出射した種光は、波長選択フィルタ62を透過する。
【0064】
そして、入射用光ファイバ35から増幅器PAに入射する。このとき、
図2に示すように増幅用光ファイバ40の活性元素は、適度に高い励起状態とされている。そして、増幅器PAに入射した種光は、増幅用光ファイバ40のコアを伝播する。励起状態とされた増幅用光ファイバ40の活性元素は、コアを伝播する種光により誘導放出を生じて、この誘導放出により種光が増幅されて、増幅された種光が出力光として増幅用光ファイバ40から出射する。こうして、ファイバレーザ装置1から出力光が出射する。
【0065】
その後、出射信号は、OFFとなる。出力光を1パルスのみ出射する場合には、出射信号は、次の動作を行うまでOFFのままとされる。一方、パルス状の出力光を連続して出射する場合には、出力光が出射されるべき周期に合わせて、再び出射信号がONとされる。
【0066】
なお、増幅器PAの増幅用光ファイバ40の活性元素を励起する過程において、この活性元素の励起状態をモニタしながら、増幅用励起光源30から出射する増幅用励起光の強度を調整しても良い。この調整は次のように行う。すなわち、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高くなると、ASE光が発生する。このASE光は、種光源MOからの光が増幅用光ファイバ40に入射しない限り発生し続け、増幅用光ファイバ40の両端から出射する。従って、増幅用光ファイバ40の入射端から出射するASE光は、入射用光ファイバ35に入射する。そして、増幅器PAから種光源MOに向かって入射用光ファイバ35を伝播するASE光は、光検出部50の光分離部51において、少なくとも一部が分離されて、光電変換部52に入射する。光電変換部52は、光分離部51から入射した光の強度に基づいた信号を制御部70に出力する。
【0067】
制御部70では、光電変換部52から信号が入力されると、比較器72において、この信号の電圧と、基準電圧Vccとを比較する。そして、光分離部51に入射する光の強度が小さく、光電変換部52から出力する信号の電圧が、基準電圧Vccより低い場合、比較器72は、光電変換部52からの信号の電圧が低い旨の信号を光源制御部71に出力する。例えばこの信号は、電圧の低い信号とされる。この場合、光源制御部71は、増幅用光ファイバ40から出射するASE光の強度が小さく、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が低いと判断して、増幅用励起光源30を制御して、増幅用励起光源30から出射する増幅用励起光の強度を大きくする。
【0068】
一方、光分離部51に入射する光の強度が大きく、光電変換部52から出力する信号の電圧が、基準電圧Vccより高い場合には、比較器72は、光電変換部52からの信号の電圧が高い旨の信号を光源制御部71に出力する。例えばこの信号は、電圧の高い信号とされる。この場合、光源制御部71は、増幅用光ファイバ40から出射するASE光の強度が大きく、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高いと判断して、増幅用励起光源30を制御して、増幅用励起光源30から出射する増幅用励起光の強度を小さくする。
【0069】
このように、基準電圧Vccを設定して、増幅用光ファイバ40から出射するASE光の強度をモニタし、ASE光の強度に応じて増幅用励起光の強度を調節することにより、種光が入射するときにおける増幅用光ファイバ40の活性元素が所望の励起状態とすることができる。また、このようにASE光をモニタすることにより、増幅用光ファイバ40に活性元素が過度に励起されて、増幅用光ファイバ40において発振が生じることを未然に防止することができる。
【0070】
<パルス幅を制御する動作>
次に、出射する出力光のパルス幅を制御する場合のファイバレーザ装置1の動作について
図3を用いて説明する。なお、本説明において、
図2を用いて説明した内容と同様である説明については、その説明を省略する場合がある。
【0071】
図3は、ファイバレーザ装置1から出射する出力光のパルス幅が大きい場合及び小さい場合のタイミングチャートを
図2と同様の方法で示す図である。なお、出力光のパルス幅が大きくされる場合と小さくされる場合とで、異なるタイミングチャートとなる部分については、出力光のパルス幅が大きくされるタイミングチャートを破線で示している。また、
図3において、時刻T3lは、出力光のパルス幅が大きくされる場合に光スイッチ23をOFFとするタイミングを示し、時刻T3sは、出力光のパルス幅が小さくされる場合に光スイッチ23をOFFとするタイミングを示し、時刻T3l及び時刻T3sは、上記説明の時刻T3に相当する。
【0072】
図3に示すように、ファイバレーザ装置1がアイドリング状態になると、制御部70の制御により、種光生成用励起光源10から種光生成用励起光が出射して、種光生成用光ファイバ20に添加される活性元素の励起状態が徐々に高くなる。ただし、光スイッチ23がOFFとならない限り、
図2を用いた説明と同様にして、種光生成用光ファイバ20に添加される活性元素の励起状態が然程高くない。
【0073】
その後、時刻T2において、制御部70において出射信号がONとされると、制御部70の制御により、増幅用励起光源30から増幅用励起光が出射する。このとき、出力光のパルス幅を大きくする場合には、後述する種光のパルス幅による出力光のピーク強度の変化を考慮して、出力光のパルス幅を小さくする場合よりも、強度の大きな増幅用励起光を出射する。出射した増幅用励起光は、増幅用光ファイバ40に添加される活性元素に吸収されるため、出力光のパルス幅を大きくする場合の方が、出力光のパルス幅を小さくする場合よりも、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高くなる。
【0074】
そして、時刻T2から所定の期間が経過した後、制御部70は、光スイッチ23をOFFとするが、出力光のパルス幅を大きくする場合と小さくする場合とで、異なる時刻で光スイッチ23をOFFとする。具体的には、制御部70は、出力光のパルス幅を大きくする場合に光スイッチ23をOFFとする時刻T3lは、出力光のパルス幅を小さくする場合に光スイッチ23をOFFとする時刻T3sよりも遅い時刻とする。
【0075】
光スイッチ23がOFFとされると、種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態が更に高くなる。ただし、上述のように、出力光のパルス幅が大きくされる場合は、出力光のパルス幅が小さくされる場合よりも、光スイッチ23がOFFとされる時刻が遅いため、光スイッチ23がOFFとされている間のある特定の時刻では、出力光のパルス幅が大きくされる場合の方が、出力光のパルス幅が小さくされる場合によりも、種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態が低くなる。
【0076】
そして、制御部70は、出力光のパルス幅を大きくする場合と小さくする場合とで、同じ時刻T4において、光スイッチ23を再びONとする。光スイッチ23がONとされると、種光生成用光ファイバ20において、特定波長の光の共振が生じて、共振する光が増幅され、種光が出射される。このとき、活性元素の励起状態が低いほど、パルス幅が大きい種光が出射し、活性元素の励起状態が高いほど、パルス幅が小さい種光が出射する。つまり、光スイッチ23のOFFの期間が短くされることで、種光源MOの第2光ファイバ25からパルス幅が大きい種光が出射し、光スイッチ23のOFFの期間が長くされることで、種光源MOの第2光ファイバ25からパルス幅が小さい種光が出射する。
【0077】
種光源MOから出射したパルス状の種光は、波長変換器61、及び、波長選択フィルタ62を介して、入射用光ファイバ35から増幅器PAに入射する。このとき、本動作では、
図3に示すように増幅用光ファイバ40の活性元素は、出力光のパルス幅が大きくされる場合の方が、出力光のパルス幅が小さくされる場合によりも、高い励起状態とされている。ところで、パルス状の光が活性元素が添加された増幅用光ファイバで増幅される場合、パルスの幅が小さい光の方が、ピーク強度が小さな光に増幅される傾向がある。その点、本動作では、出力光のパルス幅が大きい場合、すなわち、光スイッチ23のOFFの期間が短く、パルス幅の大きな種光である場合ほど、上記のように増幅用励起光の強度が大きくなるよう増幅用励起光源30は制御され、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態は高くされる。従って、増幅用光ファイバ40において、出力光のパルス幅を大きくするため種光のパルス幅が大きい場合ほど、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高くされることと、パルスの幅が大きい方がピーク強度の小さな光に増幅され易いこととにより、種光のパルス幅により、増幅用光ファイバ40から出射する出力光のピーク強度が変動することを抑制することができる。そして、種光のパルス幅に応じたパルス幅の出力光が増幅用光ファイバ40から出射する。
【0078】
なお、種光のパルス幅の違いにより増幅用光ファイバ40から出射する出力光のピーク強度が同じになるように抑制するためには、増幅用励起光源30が出射する増幅用励起光の強度及び時間と、種光のパルス幅に応じた出力光のピーク強度に係るデータを制御部70が有しており、このデータに基づいて、増幅用光ファイバ40から出射する出力光のピーク強度が一定になるように、増幅用励起光源30が出射する増幅用励起光の強度が定められれば良い。
【0079】
こうしてパルス幅が制御された出力光が、ファイバレーザ装置1から出射する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態のファイバレーザ装置1によれば、種光源の光スイッチ23がOFFなる期間T3〜T4を制御することで、種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態を制御して、パルス状の種光のパルス幅を制御している。このように光スイッチ23がOFFとなる期間を制御することは、種光生成用光ファイバ20に入射する種光生成用励起光の強度を制御するよりも、正確に制御をすることができる。従って、本実施形態のファイバレーザ装置1によれば、正確に種光のパルス幅を制御することができる。こうして正確にパルス幅が制御されることにより、出射する出力光のパルス幅を正確に制御することができる。
【0081】
また、本実施形態のファイバレーザ装置1においては、出力光のパルス幅に応じて、増幅用励起光を出射させてから光スイッチ23をOFFにするまでの期間を変化させると共に、増幅用励起光を出射させてから光スイッチ23を再びONにするまでの期間を一定としている。従って、出力光のパルス幅によらず、出力光が出射するタイミングを略同じにすることができる。
【0082】
また、制御部70は、光スイッチ23のOFFの期間が短いほど、種光が増幅用光ファイバ40に入射する際における増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高くなるよう増幅用励起光源30を制御している。従って、出力光のパルス幅を正確に制御しつつ、パルス幅による出力光のピーク強度のばらつきを抑えることができ、出力光のピーク強度を安定させることができる。
【0083】
<パルス幅を制御する他の動作>
次に、出射する出力光のパルス幅を制御する場合のファイバレーザ装置1の他の動作について
図4を用いて説明する。なお、本説明において、
図2、
図3を用いて説明した上記内容と同様である説明については、その説明を省略する場合がある。
【0084】
図4は、本動作におけるファイバレーザ装置1から出射する出力光のパルス幅が大きい場合及び小さい場合のタイミングチャートを
図3と同様の方法で示す図である。
【0085】
本動作では、ファイバレーザ装置1がアイドリング状態となると、増幅器PAの増幅用励起光源30から増幅用励起光と同波長で増幅用励起光よりも強度が小さいアイドリング光が出射する。別言すれば、増幅用励起光源30から強度の小さな増幅用励起光がアイドリング光として出射する。このアイドリング光は、増幅用光ファイバ40に入射して、増幅用光ファイバ40の活性元素を励起する。ただし、強度が小さいため、増幅用光ファイバ40で発生するASE光と釣り合い、増幅用光ファイバ40の活性元素は、発振が生じるような高い励起状態とはされない。つまり、増幅用光ファイバ40の活性元素は、アイドリング光により予備励起される。
【0086】
そして、本動作では、制御部70は、出射する出力光のパルス幅を大きくする場合には、出力光のパルス幅を小さくする場合よりも、強度の大きなアイドリング光を出射する。従って、出力光のパルス幅が大きくされる場合の方が、出力光のパルス幅が小さくされる場合よりも、増幅用光ファイバ40の活性元素の予備励起状態が高くされる。
【0087】
次に時刻T2において、制御部70において出射信号がONとされると、制御部70の制御により、増幅用励起光源30は増幅用励起光を出射する。このとき出射する増幅用励起光の強度は、出射する出力光のパルス幅に関係なく一定とされる。そして、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が徐々に高くなる。ところで、増幅用光ファイバに添加された活性元素が励起光により励起される場合において、励起光が入射する際に活性元素が予備励起されている場合には、励起光が入射する際における活性元素の励起状態が高いほど、励起光による活性元素の励起状態が急激に高くなる傾向がある。従って、本動作では、上述のように出力光のパルス幅が大きくされる場合の方が、出力光のパルス幅が小さくされる場合よりも、増幅用光ファイバ40の活性元素の予備励起状態が高いため、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態は、同じ強度の増幅用励起光で励起されても、出力光のパルス幅が大きくされる場合の方が、出力光のパルス幅が小さくされる場合よりも急激に高くなる。つまり、
図4の励起状態(PA)において、破線で示す出力光のパルス幅が大きくされる場合の励起状態の方が傾きが急になる。
【0088】
そして、
図3を用いて説明した動作と同様にして、出力光のパルス幅が大きくされる場合に光スイッチ23をOFFとする時刻T3lが、出力光のパルス幅が小さくされる場合に光スイッチ23をOFFとする時刻T3sよりも遅い時刻とされて、それぞれのパルス幅の場合に応じて、光スイッチ23がOFFとされる。次に、
図3を用いて説明した動作と同様にして、出射する出力光のパルス幅に関係なく時刻T4で、光スイッチ23がONとされ、出射する出力光のパルス幅に応じた種光が出射し、増幅器PAの増幅用光ファイバ40に入射する。
【0089】
増幅用光ファイバ40に入射したパルス状の種光は、増幅されて出射する。このとき増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態は、出力光のパルス幅が大きくされる場合、すなわち、光スイッチ23のOFFの期間が短く、パルス幅の大きい種光である場合ほど、上記の予備励起状態の違いにより、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高くされている。従って、本動作においても、
図3を用いたファイバレーザ装置1の動作の説明と同様にして、種光のパルス幅の違いによる出力光のピーク強度が変動することを抑制できる。そして、種光のパルス幅に応じたパルス幅の出力光が増幅用光ファイバ40から出射する。
【0090】
なお、種光のパルス幅の違いにより増幅用光ファイバ40から出射する出力光のピーク強度が同じになるように抑制するためには、増幅用励起光源30が出射するアイドリング光及び増幅用励起光のそれぞれの強度及び時間と、種光のパルス幅に応じた出力光のピーク強度に係るデータを制御部70が有しており、このデータに基づいて、増幅用光ファイバ40から出射する出力光のピーク強度が一定になるように、増幅用励起光源30が出射するアイドリング光及び増幅用励起光の強度が定められれば良い。
【0091】
こうしてパルス幅が制御された出力光が、ファイバレーザ装置1から出射する。
【0092】
強度の大きな出力光を出射するために、増幅用励起光源30から出射できる限界の強度の増幅用励起光を増幅用励起光源30から出射する場合がある。この場合、増幅用励起光源30から出射する増幅用励起光の強度は、ファイバレーザ装置1から出射する出力光のパルス幅によらず一定となる。しかし、本ファイバレーザ装置1の動作によれば、このように増幅用励起光の強度が一定である場合であっても、制御部70がアイドリング光の強度を制御することで、種光のパルス幅が大きいほど、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態を高くして、出力光のピーク強度が変動することを抑制することができる。
【0093】
<パルス幅を制御する更に他の動作>
次に、出射する出力光のパルス幅を制御する場合のファイバレーザ装置1の更に他の動作について
図5を用いて説明する。なお、本説明において、
図2、
図3を用いて説明した上記内容と同様である説明については、その説明を省略する場合がある。
【0094】
図5は、本動作におけるファイバレーザ装置1から出射する出力光のパルス幅が大きい場合及び小さい場合のタイミングチャートを
図3と同様の方法で示す図である。
【0095】
本動作では、ファイバレーザ装置1のアイドリング状態で、時刻T2において、制御部70において出射信号がONとされると、制御部70の制御により、増幅用励起光源30から増幅用励起光が出射する。このとき本動作においては、出力光のパルス幅に関係なく一定の強度の増幅用励起光が出射される。従って、本動作では、出力光のパルス幅に関係なく増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が同じように高くなる。
【0096】
そして、時刻T2から所定の期間が経過した後、制御部70は、出力光のパルス幅が大きい場合と小さい場合とで、異なる時刻で光スイッチ23をOFFとする。本動作においても、出力光のパルス幅が大きくされる場合に光スイッチ23をOFFとする時刻T3lが、出力光のパルス幅が小さくされる場合に光スイッチ23をOFFとする時刻T3sよりも遅い時刻とされる。ただし、本動作では、後述のように、種光のパルス幅を大きくするために、光スイッチ23がOFFの期間が短くされても、出力光のパルス幅が大きくされる場合の方が、再び光スイッチ23をONとする時刻が遅くなるように時刻T3sを遅い時刻とする。
【0097】
光スイッチ23がOFFとされると、種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態が更に高くなる。ただし、上述のように、出力光のパルス幅が大きくされる場合は、出力光のパルス幅が小さくされる場合によりも、光スイッチ23がOFFとされる時刻が遅いため、出力光のパルス幅が大きくされる場合の方が、出力光のパルス幅が小さくされる場合によりも、種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態が低くなる。
【0098】
そして、出力光のパルス幅が小さくされる場合、時刻T4sにおいて、光スイッチ23が再びONとされ、出力光のパルス幅が大きくされる場合、時刻T4lにおいて、光スイッチ23が再びONとされる。この時刻T4sは、時刻T4lよりも早い時刻とされる。ただし、出力光のパルス幅を大きくするために種光のパルス幅を大きくする場合の方が、出力光のパルス幅を小さくするために種光のパルス幅を小さくする場合よりも、光スイッチ23がOFFの期間を短くなるようにする。つまり、制御部70は、時刻T3l〜時刻T4lの方が、時刻T3s〜時刻T4sよりも短くなるようにしつつ、時刻T4lが時刻T4sよりも遅い時刻となるように制御する。光スイッチ23がONとされると、
図2を用いた説明と同様にして、種光が出射する。このとき、光スイッチ23のOFFの期間が短いほど、出射する種光のパルス幅が大きくなる。
【0099】
種光源MOから出射した種光は、波長変換器61、及び、波長選択フィルタ62を介して、入射用光ファイバ35から増幅器PAに入射する。このとき、
図5に示すように、種光が早い時刻で増幅器PAに入射する程、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が低く、遅い時刻で増幅器PAに入射する程、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高い。従って、パルス幅が大きい種光の方が、パルス幅の小さい種光よりも、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高い状態で、増幅用光ファイバ40に入射する。
【0100】
増幅用光ファイバ40に入射したパルス状の種光は、増幅されて出力光として出射するが、本動作においても、
図3を用いたファイバレーザ装置1の動作の説明と同様にして、種光のパルス幅の違いにより増幅用光ファイバ40から出射する出力光のピーク強度が変動することが抑制できる。そして、種光のパルス幅に応じたパルス幅の出力光が増幅用光ファイバ40から出射する。
【0101】
なお、種光のパルス幅の違いにより増幅用光ファイバ40から出射する出力光のピーク強度が同じになるように抑制するためには、増幅用励起光源30が出射する増幅用励起光の強度及び時間と、種光のパルス幅に応じた出力光のピーク強度に係るデータを制御部70が有しており、このデータに基づいて、増幅用光ファイバ40から出射する出力光のピーク強度が一定になるように光スイッチ23がOFFになる時刻T3s,T3l、及び、光スイッチ23がONになる時刻T4s,T4lが定められれば良い。
【0102】
また、制御部70は、光検出部50で検出される光の強度が、出射させる種光のパルス幅に応じた所定の値になるときに、光スイッチ23をOFFとするよう制御しても良い。本動作では、この所定の値は、パルス幅が大きい種光を出射させる場合が、パルス幅が小さい種光を出射させる場合よりも大きな値となる。このような制御であっても、パルス幅が大きい種光を出射させる場合の光スイッチ23がOFFとなる時刻T3lは、パルス幅が小さい種光を出射させる場合の光スイッチ23がOFFとなる時刻T3sよりも遅いタイミングとなり上記説明と整合する。このような制御によれば、何らかの原因により、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が高くなりにくい場合であっても、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が所望の励起状態となった状態で、種光を増幅用光ファイバ40に入射することができる。つまり、ファイバレーザ装置のおかれる環境からの影響を低減して、所望のピーク強度の出力光を出射することができる。なお、このような制御においても、上記のように、増幅用励起光源30が出射する増幅用励起光の強度及び時間と、種光のパルス幅に応じた出力光のピーク強度に係るデータを制御部70が有していれば、種光のパルス幅の違いにより増幅用光ファイバ40から出射する出力光のピーク強度が同じになるように、出射させる種光のパルス幅に応じて、上記の所定の値を正確に定めることができる。
【0103】
こうしてパルス幅が制御された出力光が、ファイバレーザ装置1から出射する。
【0104】
本ファイバレーザ装置1の動作によれば、このように増幅用励起光の強度が一定である場合であっても、種光のパルス幅が大きいほど、出射する種光の時刻を遅くすることにより、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態を高くして、増幅器PAから出射する出力光のピーク強度が変動することを抑制することができる。
【0105】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
例えば、上記実施形態のファイバレーザ装置1において、波長変換器61及び波長選択フィルタ62が無くても良い。ただし、上記実施形態のように波長変換器61及び波長選択フィルタ62が備わっていれば、増幅器PAに入射するパルス状の種光と種光との間に、連続した光が入射することを防止でき、波長変換器61及び波長選択フィルタ62が無い場合と比べて、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態が光スイッチ23のON,OFFの期間に関わらず安定する観点から好ましい。
【0107】
また、光検出部50が無くても良い。この場合、例えば、種光の種光のパルス幅や増幅用光ファイバ40に入射する増幅用励起光の強度等と、出力光のピーク強度との関係を示す情報が、制御部70にあらかじめ記憶されて、制御部70がこの情報を基に増幅用励起光の強度を調整すれば良い。ただし、上記実施形態のように光検出部50が備わっており、光検出部50の出力により、制御部70が増幅用励起光の強度を制御すれば、増幅用光ファイバ40の活性元素の励起状態をより適切に制御することができるため好ましい。
【0108】
また、上記実施形態では、出射する出力光のパルス幅に応じて、種光が増幅器PAに入射する際における増幅用光ファイバ40の励起状態を変え、種光のパルス幅によって増幅用光ファイバ40で利得が変動することを抑制した。しかし、ファイバレーザ装置1の出力光のピーク強度が然程問題とならない場合には、出射する出力光のパルス幅に応じて、増幅用光ファイバ40の励起状態を変えなくても良い。
【0109】
また、上記実施形態では、種光源MOが共振型のファイバレーザ装置から構成されるとされたが、種光源MOは、種光生成用光ファイバ20を伝播する特定波長の光の透過状態と非透過状態とを切り替える光スイッチ23を有し、光スイッチ23が非透過状態において種光生成用光ファイバ20の活性元素の励起状態が高くされ、光スイッチ23が透過状態において特定波長のパルス状の種光を出射するものであれば、特に制限されるわけではない。従って、種光源MOは、例えば、ファイバリング型のファイバレーザ装置から構成されても良い。
【0110】
また、
図3、
図4を用いた動作の説明において、出射する出力光のパルス幅が大きい場合の方が、パルス幅が大きい場合よりも、光スイッチ23がOFFとなる時刻を遅くし、パルス幅に関係なく光スイッチ23がONになる時刻を一定とした。つまり、時刻T3sの方が時刻T3lよりも早い時刻とした。しかし、出射する出力光のパルス幅が大きい場合の方が、パルス幅が小さい場合よりも、光スイッチ23がOFFとなる期間が長ければ良いため、例えば、出射する出力光のパルス幅に関係なく、光スイッチ23がOFFとなる時刻を同じにして、出射する出力光のパルス幅が大きい場合の方が、パルス幅が小さい場合よりも、光スイッチ23がONとなる時刻を早くしても良い。