特許第6037714号(P6037714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037714
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ドッキングコネクタ
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/18 20060101AFI20161128BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20161128BHJP
   H01R 13/66 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G06F1/18 E
   G06F1/16 312K
   G06F1/16 312E
   H01R13/66
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-177623(P2012-177623)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-35711(P2014-35711A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯川 久仁彦
(72)【発明者】
【氏名】筒井 隆史
【審査官】 塩澤 如正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−097880(JP,A)
【文献】 特開平09−017518(JP,A)
【文献】 特開2012−094178(JP,A)
【文献】 特開2007−172513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/00
G06F 1/16 − G06F 1/18
H01R 13/56 − H01R 13/645
H01R 13/648 − H01R 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面に電極を有する扁平柱状のチップコンデンサと、
前記チップコンデンサを保持する上面及び底面を有する絶縁性のハウジングと、を備え、
前記上面底面方向を高さ方向とし、前記高さ方向に直交する方向を軸方向及び、前記高さ方向、軸方向ともに直交する方向を幅方向とするときに、
前記チップコンデンサの前記電極のうち少なくとも前記上面側の電極は、前記ハウジングの面上に露出する態様で前記軸方向又は前記幅方向に沿って規則的に整然と保持され、
このように露出する前記電極のうち少なくとも前記上面側の電極は、弾力性を有する導電性部材を備えるところに特徴を有するドッキングコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングが前記上面に前記チップコンデンサを収容するための開口部、この開口部に連設された収容室を備え、
前記ハウジングに組み込まれ、前記チップコンデンサの反開口部側にある電極に接続する接続部、この接続部につながる前記ハウジングの底面に露出する実装部、を備えた導電性部材を備えるところに特徴を有する請求項1記載のドッキングコネクタ。
【請求項3】
前記開口部はカバーを備え、
前記カバーは、平坦な弾力性のある外部電極を備えるとともに、前記チップコンデンサの前記電極を前記外部電極に接続するための接続手段を備えるところに特徴を有する請求項2記載のドッキングコネクタ。
【請求項4】
前記カバーが弾力性のある導電性部材からなり、この導電性部材は前記チップコンデンサの開口部側の電極に電気的に接続し、前記カバーの外面は外部電極を形成するところに特徴を有する請求項3記載のドッキングコネクタ。
【請求項5】
前記導電性部材がカーボン粒子を合成樹脂材に分散してなる導電性樹脂である請求項4記載のドッキングコネクタ。
【請求項6】
前記カバーが導電性樹脂であり、
前記ハウジングの前記収容室に前記チップコンデンサが収容された状態で、前記カバーを2次成形するところに特徴を有する請求項5記載のドッキングコネクタ。
【請求項7】
前記チップコンデンサが50nF〜200nF(ナノファラド)の容量を有するところに特徴を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載のドッキングコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドッキングステーションに組み込まれるドッキングコネクタに関し、特にチップコネクタが組み込まれたドッキングコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブルパーソナルコンピュータ(以下、ノートPCという)のような携帯型の電子機器は、ケースが薄くコンパクトに設計されているので、ディスクドライブ装置や複数の拡張機能が省かれている。そのために、これら機能拡張を可能にするドッキングステーションが用意されている。ノートPCをドッキングステーションに接続することで機能を拡張することができる。
ノートPCの接続は、薄い箱形のドッキングステーションの載置面に突出するドッキングコネクタと、ノートPCの底面に備わる拡張コネクタとの嵌合によって成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−067141号公報
【特許文献2】特開平06−168062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、信号伝送量が増えてコネクタの極数が多くなるとノートPCをドッキングステーションに接続するための操作が困難になってくる。たとえば、コネクタの嵌合に要する力が増加することで電子機器の損壊のおそれも生じてくる。また、ドッキングコネクタは、ドッキングステーションの載置面に穴が穿設されその穴に臨む態様で備わるので、ここで生じる隙間を通してドッキングステーション内部にほこりや水滴が進入するおそれも生じる。また、ドッキングコネクタは、平坦に広がる載置面上に対して比較的高さをもって突起状に備わるものなので、着脱時電子機器との衝突が生じ、双方に損壊が生じるおそれもある。また、極数の増加によってノイズを除去するために配線基板上に組まれるコンデンサに要するスペースも増大する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的のひとつは、ノートPCの挿脱操作に要する力の軽減を図ることができるドッキングコネクタを提供することにある。また別の目的は、ドッキングステーションの面上に穴や隙間が生じることのないドッキングコネクタを提供することにある。さらに別の目的は、ドッキングステーションの表面が平坦になるドッキングコネクタを提供することにある。さらに別の目的は、配線基板上に組まれるコンデンサに要するスペースを軽減することができるドッキングコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のドッキングコネクタは、(1)両端面に電極を有する扁平柱状のチップコンデンサと、前記チップコンデンサを保持する上面及び底面を有する絶縁性のハウジングと、を備え、前記上面底面方向を高さ方向とし、前記高さ方向に直交する方向を軸方向及び、前記高さ方向、軸方向ともに直交する方向を幅方向とするときに、前記チップコンデンサの前記電極のうち少なくとも前記上面側の電極は、前記ハウジングの面上に露出する態様で前記軸方向又は前記幅方向に沿って規則的に整然と保持され、このように露出する前記電極のうち少なくとも前記上面側の電極は、弾力性を有する導電性部材を備えるところに特徴を有するものである。
【0007】
この発明によれば、ドッキングコネクタは、チップコンデンサを内蔵し、チップコンデ
ンサの平坦な電極が少なくともハウジングの上面側に露出し、その電極の表面には導電性部材がコートされている。これにより、導電性部材がコートされたチップコンデンサの平坦な電極をドッキングコネクタの電極として使用できる。したがって、平坦で弾力性のあるドッキングコネクタの電極が得られるので、たとえば、ノートPC側の拡張コネクタがその底面に対して平坦な弾力性のある電極を備えていて、その電極の位置(配置)と、このドッキングコネクタの電極の位置(配置)とを合わせておけば、ドッキングステーションの所定の場所にノートPCを置くだけで電気的な接続をおこなうことができる。これにより、ノートPCのドッキングステーションとの挿脱操作に要する力の軽減を図ることができる。
【0008】
チップコンデンサの電極がハウジングの上面側だけでなく、底面側にも露出する形態であってもよく、この場合、チップコンデンサの平坦な電極は、弾力性のある導電性部材でコートされていてもよく、あるいは導電性部材でコートされていない本来の金属の電極であってもよい。
【0009】
導電性部材は、合成樹脂に添加されたカーボン粒子により導電性が付与された導電性樹脂であってよく、また、たとえばシリコーンゴムに導電性が付与された導電性ゴムであってもよい。さらに、弾力性を有する樹脂である導電性エラストマであってもよい。また、カーボンの代わりに銀フィラー等の金属粒子で導電性が付与されたものであってよく、樹脂ビーズの表面が金メッキされた導電性粒子が添加されたものであってもよい。
【0010】
この発明によれば、ドッキングコネクタは、チップコンデンサを内蔵するので、その容量を選択することで必要な周波数のみを通過させるフィルタ機能を備えるものである。したがって、比較的低い周波数帯のノイズ成分を除くハイパスフィルタを構成することも可能である。これにより、配線基板上にコンデンサを装着する必要がなくなるので、そのためのスペースを有効利用できる。
【0011】
チップコンデンサは、一般に市場で入手可能なセラミック積層チップコンデンサ、チップタンタル電解コンデンサ、あるいはチップアルミ電解コンデンサなどから選択してよい。これらチップコンデンサは、素子が熱硬化性樹脂等で封止されたブロック体で、両端面にリン青銅等の銅系合金や42アロイ等の鉄系合金で電極が形成されたものであってよい。
【0012】
ハウジングへのチップコンデンサの埋め込みは、いわゆるインサート成形による方法であってよい。すなわち、チップコンデンサをハウジング成形金型内の所定の位置にセットし、この状態のキャビティに母材を鋳込む方法である。この方法によれば、ハウジングの成形と同時にチップコンデンサの埋め込みが行なわれるので、作業効率の向上が図られる。また、チップコンデンサにセラミック積層コンデンサを選択すると、このコンデンサ自体が一般的に千数百度の温度で焼成されているので、成形温度で素子の劣化が生じるおそれはない。
【0013】
ハウジング材料は、絶縁性の合成樹脂、シリコーンやウレタン等の合成ゴム、あるいは柔軟性のあるエラストマであってよい。ゴムやエラストマを選択すると薄く柔軟性を有するシート状のドッキングコネクタが得られる。
【0014】
さらに好ましくは、本発明のドッキングコネクタは、(2)前記ハウジングが前記一方の面に前記チップコンデンサを収容するための開口部、この開口部に連設された収容室を備え、前記ハウジングに組み込まれ、前記チップコンデンサの反開口部側にある電極に接続する接続部、この接続部につながる前記ハウジングの底面に露出する実装部、を備えた導電性部材を備えるところに特徴を有する(1)記載のものである。
【0015】
この発明によれば、チップコンデンサは完成されたハウジングに成形後組まれるので、ハウジングの成形を効率よく行なうことができる。ハウジングは、底面にチップコンデンサの電極と配線基板とを接続するための導電性部材を備える。導電性部材にたとえば板状銅合金を使用する場合、ドッキングコネクタをドッキングステーションに接続する手段として半田リフロー方式をとることができる。
【0016】
導電性部材は、カーボン粒子により導電性が付与された導電性樹脂、あるいは導電性ゴムであってよい。さらに、弾力性を有する樹脂である導電性エラストマであってもよい。また、金属粒子で導電性が付与されたものであってよく、樹脂ビーズの表面が金メッキされた導電性粒子が添加されたものであってもよい。
【0017】
さらに好ましくは、本発明のドッキングコネクタは、(3)前記開口部はカバーを備え、前記カバーは、平坦な弾力性のある外部電極を備えるとともに、前記チップコンデンサの前記電極を前記外部電極に接続するための接続手段を備えるところに特徴を有する(2)記載のものである。
【0018】
この発明によれば、ドッキングコネクタは、平坦な弾力性のある電極を備えたカバーでハウジングの開口部が封止されているので、ドッキングステーションのノートPCの載置面上にドッキングコネクタ用の凹部を穿ち、その凹部にドッキングコネクタを嵌め込むことで載置面と面一でドッキングコネクタを装着することができる。これにより、載置面に突状部が生じないドッキングコネクタを組み付けることができる。
【0019】
この発明によれば、ドッキングコネクタは、ドッキングステーションの載置面に穿たれた凹部に嵌め込まれる。ドッキングコネクタは、内部にブロック状のチップコンデンサを収容するための収容室と、上下面に平坦な電極を備える構造であるので、その外形は、たとえばシンプルな矩形状をとることができる。これにより、比較的隙間なくドッキングコネクタを凹部に嵌め込むことができ、ほこりや水滴の進入を抑制することができる。
【0020】
さらに好ましくは、本発明のドッキングコネクタは、(4)前記カバーが弾力性のある導電性部材からなり、この導電性部材は前記チップコンデンサの開口部側の電極に電気的に接続し、前記カバーの外面は外部電極を形成するところに特徴を有する(3)記載のものである。
【0021】
この発明によれば、カバーは弾力性のある導電性部材からなるので、カバー自体がチップコンデンサの電極を外部電極に接続するための接続手段を備えるものである。これにより、カバーの構造がよりシンプルになり、ドッキングステーションの載置面との面一性や凹部との隙間の軽減が一層行ないやすくなる。
【0022】
導電性部材は、導電性樹脂、導電性エラストマ、導電性ゴム、あるいは、特定方向に電気を流す性質を備えた異方性導電シートであってよく、これらは、母材に添加されたカーボン粒子、銀や金など金属粒子、あるいはこれらのめっき粒子によって導電性が付与されたものであってよい。勿論、カバーが金属で成形されたものであってもよい。
【0023】
さらに好ましくは、本発明のドッキングコネクタは、(5)前記導電性部材がカーボン粒子を合成樹脂材に分散してなる導電性樹脂である(4)記載のものである。
【0024】
この発明によれば、カバーがカーボン添加による導電性樹脂からなるので、耐食性の優れたドッキングコネクタが得られる。
【0025】
さらに好ましくは、本発明のドッキングコネクタは、(6)前記カバーが導電性樹脂であり、前記ハウジングの前記収容室に前記チップコンデンサが収容された状態で、前記カバーを2次成形するところに特徴を有する(5)記載のものである。
【0026】
この発明によれば、カバーが導電性樹脂であり、チップコンデンサを収容した状態で2次成形するので、封止作業が容易になるとともに、型通りのカバーの外形が得られる。これにより、一層ドッキングステーションの載置面に対して平坦な面が得られる。また凹部との隙間も軽減される。
【0027】
さらに好ましくは、本発明のドッキングコネクタは、(7)前記チップコンデンサが50nF〜200nF(ナノファラド)の容量を有するところに特徴を有する(1)〜(6)のいずれか1つに記載のものである。
【0028】
この発明によれば、50nF〜200nFのチップコンデンサを内蔵するので、比較的低い10kHz以下の周波数がカットされるハイパスフィルタが構成される。これにより、ノイズ成分が軽減された高周波信号が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は本発明の実施形態に係るドッキングコネクタの外観斜視図及び一部分解組み付け図である。
図2図2は同ドッキングコネクタの底面から見た外観斜視図である。
図3図3図1におけるIII−III線に沿った断面図である。
図4図4は本発明の実施形態に係るドッキングコネクタのコンタクトの外観斜視図である。
図5図5は同ドッキングコネクタのチップコンデンサの外観斜視図である。
図6図6は同ドッキングコネクタのカバーの外観斜視図である。
図7図7は同ドッキングコネクタの実装方法を示す断面図である。
図8図8は同ドッキングコネクタが組み込まれたドッキングステージと、ノートパソコンとの接続方法を示す外観斜視図である。
図9図9図7のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で実施することができる。図1は本発明の実施形態に係るドッキングコネクタの外観斜視図及び一部分解組み付け図である。図2は同ドッキングコネクタの底面から見た外観斜視図である。図3図1におけるIII−III線に沿った断面図である。図4は本発明の実施形態に係るドッキングコネクタのコンタクトの外観斜視図である。図5は同ドッキングコネクタのチップコンデンサの外観斜視図である。図6は同ドッキングコネクタのカバーの外観斜視図である。なお、説明中の指示方向は、断りのない限り図面中で定義する方向指示に従う。
【0031】
〈ドッキングコネクタの概要〉
本発明の実施形態に係るドッキングコネクタ1は、図1に示されるように、ハウジング10に二列配置で備わるポケット状の収容室101に、チップコンデンサ40を収容し、その開口部102がカバー20で封止されたものである。カバー20は導電性樹脂からなり電極の機能も備えている。ハウジング10は、合成樹脂の射出成形品でPBTやナイロンなどを使用してよい。
【0032】
〈ハウジング〉
ハウジング10は、図1に示されるように、ブロック状のチップコンデンサ40を両側
面に備わる電極軸方向に沿って収容し、チップコンデンサ40が穿孔から露出しない程度の深さを有する底壁、及びチップコンデンサ40の外周に干渉しない程度のクリアランスを有する側壁からなる収容室101を備えている。収容室101は断面矩形で、前後方向に延びる形状のハウジング10に等間隔で二列に亘り備わる。
【0033】
ハウジング10の上面10aは、図1に示されるように、収容室101を画定する前後左右に延びる仕切り壁で組まれ、その間に収容室101に連通する開口部102を備える。ハウジング10上面は、開口部102による凹みを除けば平坦面で構成されている。ハウジング10は、前面10c、後面10d、及び左右側面10e、10fを備え、これらは全て概ね平坦である。
【0034】
ハウジング10の底面10bは、図2に示されるように、短手方向(左右方向)中央部に長手方向(前後方向)に延びる突条部105を備える。突条部105は台地状でハウジング10の底面10bに対して所定の高さを有する平坦面を備えている。突条部105は、ドッキングコネクタ1を半田実装するとき、コンタクト30の実装部301の厚みによって生じるハウジング10中央部の浮き上がりを、この部分を膨出させることで安定化させるものである。
【0035】
ハウジング10は、図2に示されるように、底面10bの左右側端に備わる窪み部106にコンタクト30の実装部301を等間隔で配置している。実装部301は、平面視矩形の板状体でハウジング10の底面10bに対してやや張り出している。実装部301の板面は、実装状態を考慮して突条部105の平坦面よりも僅かに外(下)に張り出している。
実装部301は、図3に示されるように、ハウジング10の底面10bの側縁からやや内側より下方に延出し、底面10bに接する姿勢で側面方向に延びる。実装部301は、ハウジング10内部で屈曲し他端が接続部302を構成し収容室101底壁に延びる。
【0036】
〈コンタクト〉
コンタクト30は、図4に示されるように、板状金属を階段状に屈曲したもので、それぞれ平坦部に実装部301、及び接続部302を備える。本実施形態の場合、コンタクト30は、階段状に加工された状態でハウジング10の成形金型にセットされ、ここに合成樹脂が流し込まれてハウジング10に組み込まれるものである。このようにして事前に組み付ける利点は、後から組み付ける負担がなくなることと併せて、コンタクト30とハウジング10との界面の密着性がよくなり、そこに隙間が生じにくくなることである。勿論、成形されたハウジング10にコンタクト30を後から組み付ける、たとえば圧入方式であってもよい。
【0037】
コンタクト30は、剛性のある金属が好ましく、リン青銅、無酸素銅などの銅合金や42アロイ等の鉄合金を使用してよい。コンタクト30は、優れた耐食性が求められる場合は、表面を錫あるいは金でめっきしてもよい。このように表面をめっきすることで半田付け性や接続の信頼性を向上させることができる。
【0038】
〈チップコンデンサ〉
チップコンデンサ40は、図5に示されるように、平面視方形のブロック状で、上面、及び下面に電極402、403を備えている。本実施形態のチップコンデンサ40は、セラミックの薄膜を誘電体に用いる積層型コンデンサであって、小型で100nF(ナノファラド)のものである。勿論、チップコンデンサ40の種類、容量をこの仕様に限定するものではなく、目的に応じて適宜選択が可能である。
【0039】
チップコンデンサ40は、内部にセラミックの積層体を抱え、周囲が合成樹脂で覆われ
た構造で、対向する上下面全体が電極402、403を構成する。電極402、403は錫あるいは金等でめっきされている。電極402、403を必要な回路に接続することによって特定の周波数のみを通過させるフィルタ回路が構成される。本発明は、コネクタの接続によって生じる低周波域のノイズを回路からカットするためにコンデンサを用いるものである。なお、チップコンデンサの構造を本実施形態の構造のものに限定するものではない。
【0040】
〈カバー〉
カバー20は、図6に示されるように、上面の全周に亘ってフランジ201が備わる。カバー20は導電性樹脂の成形体である。本実施形態の場合は、2次成形によってハウジング10の開口部102を封止するものである。カバー20は開口部102を封止した状態で表面が電極20aとして機能する。なお、特許請求の範囲で用いた外部電極は、本段落で使用する電極20aを含むものである(以下同様)。
本実施形態の場合、導電性樹脂は、エポキシ系の樹脂にカーボンフィラーを分散添加したものであり、2次成形のキュア条件は、150〜200℃、数分〜数十分である。カーボン系の導電性樹脂は、金属系のものに比べて耐食性の面で優れている。
【0041】
〈ドッキングコネクタの組み立て〉
ドッキングコネクタ1の組み立ては、図3に示されるように、インサート成形でコンタクト30を予めハウジング10に組み付け、このハウジング10の収容室101にチップコンデンサ40を組み込み、その開口部102をカバー20で封止することで完成する。図3では、封止の手順が理解し易いように、所定の形状をもったカバー20が開口部102を封止する態様が示されているが、導電性樹脂の2次成形によってカバー20が形成される態様であってよい。このように導電性樹脂の2次成形を利用することで、カバー20に別途係合構造を設けることなく、ハウジング10の開口部102に密着させることができ、成形品では困難な厚みの薄いカバー20で開口部102を封止することができる。カバー20の表面は、電極20aとして機能する。
【0042】
ハウジング10の収容室101の底壁101aには、図3に示されるように、コンタクト30の接続部302が露出している。接続部302は平坦で概ね底壁101a全面を覆う。接続部302の表面に半田ペースト50を塗布する。半田ペースト50は、チップコンデンサ40の電極403と接続部302とを電気的機械的に接続するものである。後に所定条件の熱を加えて硬化させる。
【0043】
半田ペースト50が塗布された接続部302にチップコンデンサ40の一方の電極403が接続するようにチップコンデンサ40を収容室101に挿入する。本実施形態で使用するセラミックコンデンサは無極性タイプなので、どちらの電極402、403を接続部302に接続させてもよい(図3では電極403が接続する)。チップコンデンサ40の外周面と収容室101の内周面との間には、チップコンデンサ40を不動状態に保持し、且つ容易に挿入できる程度のクリアランスが設けられている。
【0044】
収容室101にチップコンデンサ40が収容された状態で、図3に示されるように、収容室101の上端部に隙間が生じる。この隙間を埋めるようにカバー20で封止する。封止は導電性樹脂を使用する。導電性樹脂の封止は、金型を用いて2次成形で行なってよく、あるいは未硬化の導電性樹脂を隙間にポッティングにより充填しそれを硬化させる方法をとってもよい。何れの方法をとっても導電性樹脂をハウジング10の上面10aと面一、あるいはやや張り出した状態で成形することが望ましく、また、導電性樹脂の表面は平坦であることが望ましい。このようにすることでハウジング10の上面10aと面一で、且つ平坦な電極20aが得られる。これにより、対応するコンタクトとの電気的接続がとりやすくなる。
【0045】
カバー20(導電性樹脂)で開口部102が封止されたハウジング10は、図1に示されるように、薄い板状の矩形体であり、上面10aは平坦面が広がり長手方向(前後方向)に沿って二列に亘り電極20a(導電性樹脂)が整然と配列された態様である。底面10bは、図2に示されるように、長手方向(前後方向)の両側縁に沿って実装部301が整然と配列されている。
【0046】
〈コネクタの実装〉
ドッキングコネクタ1の実装について図面に基づいて説明する。図7は同ドッキングコネクタ1の実装方法を示す断面図である。
【0047】
ドッキングコネクタ1の実装は、図7に示されるように、ドッキングステーションDSのドッキングコネクタ1を組み付ける位置にある配線基板P上に配置されたパッドP1と、ドッキングコネクタ1の実装部301との電気的機械的接続である。実装は半田リフロー方式で行なってよく、予め配線基板PのパッドP1面にペースト状の半田を塗布し、ドッキングコネクタ1、及び他の電子部品をパッドP1に対応した所定位置に載置する。ドッキングコネクタ1等が載置された配線基板Pを所定の温度プロファイルが組まれた、たとえばリフロー炉で加熱、冷却して配線基板Pにドッキングコネクタ1等を固着する。
【0048】
ドッキングコネクタ1を定位置に実装するために、ハウジング10の底面10bに備わる突条部105に仮止め用の接着剤を塗布し、予めこの部分を配線基板Pに結着させておいてもよい。このような用途を予定して、実装部301は突条部105よりも張り出す形状が好ましい。
【0049】
〈ドッキングステーション〉
ドッキングステーションDSと、ノートパソコンPCとの接続について図面に基づいて説明する。図8は同ドッキングコネクタ1が組み込まれたドッキングステーションDSと、ノートパソコンPCとの接続方法を示す外観斜視図である。図9図8のIX−IX線に沿った断面図である。
【0050】
ドッキングコネクタ1が実装されたドッキングステーションDSは、図8に示されるように、ドッキングコネクタ1部分が周囲の載置面DS3と面一で平坦に構成されている。また、ドッキングコネクタ1の周囲には、組み付け精度等を考慮した極めて僅かなクリアランスが設けられているのみで、ほこりや水滴の進入が高いレベルで抑制されている。より防塵、防水性を高めるために、このクリアランス部分をシリコーンゴムなどで成形されたシールド材で埋めてもよい。
【0051】
ドッキングステーションDSの載置面DS3には、図8に示されるように、載置されるノートパソコンPCの載置位置を特定するための位置決めピンDS2が備わる。また、載置されたノートパソコンPCが不用意な力で位置ズレが生じないように係合ピンDS1が備わる。これら位置決めピンDS2や、係合ピンDS1は、ノートパソコンPCの外形に対応した型枠を載置面DS3に備える態様で代用してもよい。このように、挿脱時、雌雄端子間の嵌合操作あるいは抜去操作を伴わないので、ノートパソコンPCの挿脱操作を容易に行なうことができる。
【0052】
ノートパソコンPCは、図8に示されるように、裏面の所定箇所に位置決め孔PC2、係合孔PC1、及び拡張コネクタPCCを備えている。
位置決め孔PC2で位置決めされたノートパソコンPCは、図9に示されるように、拡張コネクタPCCをドッキングコネクタ1の位置に合わせている。ドッキングコネクタ1の各電極20aは、拡張コネクタPCCの電極PCC1と対応する位置にあり、その場で
所定の電気的機械的接続がなされる。ノートパソコンPC側の電極PCC1は、金属の平板であってよく、屈曲部を有し接続時弾性的に変形する仕組みを有するものであってもよい。また、コイルバネを内部に組み込むプローブピンであってよい。あるいは接続部が導電性樹脂や導電性ゴムのように柔軟性のある材料で構成されていてもよい。
【0053】
〈効果〉本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
・本実施形態に係るドッキングコネクタ1は、電極20aが平板な導電性樹脂で構成されている。これにより、表面が平坦なドッキングコネクタ1が得られる。したがって、載置面DS3が平坦なドッキングステーションDSが得られる。
・本実施形態に係るドッキングコネクタ1は、電極20aが平板な導電性樹脂で構成されている。これにより、対応するノートパソコンPCの電極PCC1はこの平板な電極20aに対して押圧することで電気的機械的接続が得られる。したがって、挿脱操作が容易なドッキングステーションDS(ドッキングコネクタ1)が得られる。
【0054】
・本実施形態に係るドッキングコネクタ1は、外形はシンプルな矩形である。これにより、ドッキングステーションDSに組み込まれたドッキングコネクタ1の周囲に要するクリアランスを小さくできる。したがって、ドッキングコネクタ1の周囲の隙間から進入する塵や水滴を抑制できるドッキングステーションDSが得られる。
・本実施形態に係るドッキングコネクタ1は、チップコンデンサ40を内蔵する。これにより、ドッキングステーションDSに組まれる配線基板P上のチップコンデンサ40の実装スペースを省くことができる。したがって、小型化可能なドッキングステーションDSが得られる。
・本実施形態に係るドッキングコネクタ1は、完成された扁平なチップコンデンサ40を内蔵するので、小型大容量のコンデンサを扁平なハウジング10に組み込むことができる。これにより、比較的低い周波数帯のノイズをカットできる低背型のドッキングコネクタ1が得られる。
【0055】
・本実施形態に係るドッキングコネクタ1は、カーボンを導電成分とする導電性樹脂を電極20aに使用する。これにより、耐食性に優れたドッキングコネクタ1(ドッキングステーションDS)が得られる。
・本実施形態に係るドッキングコネクタ1は、50〜200nF(ナノファラド)のチップコンデンサ40を内蔵する。これにより、10kHz(キロヘルツ)以下の周波数をカットできるフィルタ機能を備えたドッキングコネクタ1(ドッキングステーションDS)が得られる。
・本実施形態に係るドッキングコネクタ1は、カートリッジ方式で、ドッキングステーションDSに組み込むことができる。これにより、チップコンデンサ40の容量が異なるドッキングコネクタ1を揃えることで、必要な用途に応じて選択可能なドッキングコネクタ1が得られる。
【0056】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、発明思想の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 ドッキングコネクタ
10 ハウジング
10a 上面
10b 底面
10c 前面
10d 後面
10e、10f 側面
101 収容室
101a 底壁
102 開口部
105 突条部
20 カバー
201 フランジ
20a 電極a
30 コンタクト
301 実装部
302 接続部
40 チップコンデンサ
401 本体
402、403 電極
50 半田ペースト
50a キュア後の半田ペースト
P 配線基板
P1 パッド
DS ドッキングステーション
DS1 係合ピン
DS2 位置決めピン
DS3 載置面
PC ノートパソコン
PCC 拡張コネクタ
PCC1 電極
PC1 係合孔
PC2 位置決め孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9