【実施例1】
【0010】
図1ないし
図5は本発明の実施例1を説明するための図である。
【0011】
各図において、1は本発明の実施例1に係る接合構造を有するバックドア2を備えた自動車である。前記自動車1のサイドパネル3は、サイドアウタパネル3aとこれに結合されたサイドインナパネル3bとを有し、該サイドインナパネル3bの内面にはドアトリム3cが配設されている。このドアトリム3cの内面が実質的なドア開口3dとなっている。なお、バックパネル31,ルーフパネル32についても同様である。
【0012】
前記バックドア2は、前記ドア開口3dを開閉するためのものである。該バックドア2は、樹脂製のインナパネル4と、該インナパネル4の、上部外面に接着されたウインドガラス5と、下部外面に接着された樹脂製のアウタパネル6と、上端部外面に接着された樹脂製のトップパネル7とを有する。前記インナパネル4は、本発明のインナ部材であり、前記ウインドガラス5,アウタパネル6及びトップパネル7は本発明のアウタ部材である。
【0013】
前記インナパネル4は、上部に位置する窓枠部8と、下部に位置するパネル部9とを有する。前記窓枠部8は,ウインドガラス5の、左,右縁部に位置する縦枠部10,10と、下縁部に位置する下横枠部11と、上縁部に位置する上横枠部12とを有する。
【0014】
なお、前記ウインドガラス5の前記窓枠部8を覆う部分(
図1に斜線を施した部分)には、セラミック塗装が施されており、前記窓枠部8は外方から見えないようになっている。
【0015】
前記縦枠部10は、
図2に示すように、横断面視で大略ハット状をなしており、ウインドガラス5の内,外の接合部5a,5a′に接着剤13aにより接着される内,外接合部10a,10a′と、該各接合部10a,10a′から屈曲して前記ウインドガラス5から離れる方向に延びる内,外壁部10b,10b′と、該両壁部10b,10b′を連結する連結壁部10cとを有する。なお、10dは前記連結壁部10cに沿って立設された補強用のリブである。
【0016】
前記内,外壁部10b,10b′は、外観を良好にするためのシボ加工等が施された意匠面aと、外方から見えることがなく、外観を考慮する必要のない非意匠面bとを有する。ここで、前記意匠面aの、樹脂成形時の型抜き角度はθ1に設定されている。この角度θ1は、前記シボ加工が施されても型抜き作業に支障が生じない程度の比較的大きな角度に設定されている。一方、前記非意匠面bのうち、前記接合部10a,10a′とのコーナ部b′の型抜き角度は、前記θ1より小さい角度θ2に設定されている。そのためコーナ部b′の厚さは他の部分より厚くなっている。なお、前記非意匠面bのうち前記コーナ部b′を除く部分の型抜き角度は前記意匠面aと同じθ1に設定されている。また、前記コーナ部b′の型抜き角度をθ2とする範囲cは、該コーナ部b′の厚さが樹脂成形性に支障を与えないように設定される。
【0017】
前記下横枠部11は、前記アウタパネル6の接合部6aの内面が接着剤13bにより接着される接合部11aと、該接合部11aから屈曲して前記アウタパネル6から離れる方向に延びる壁部11bと、該壁部11bと前記パネル部9とを連結する連結壁部11cとを有する。なお、前記アウタパネル6の接合部6aの外面には前記ウインドガラス5の下縁の接合部5bが接着剤13cにより接着されている。
【0018】
前記下横枠部11の壁部11bは、前記縦枠部10の内,外壁部10b,10b′と同様に、外観を良好にするためのシボ加工等が施された意匠面aと、外方から見えることがなく、外観を考慮する必要のない非意匠面bとを有する。そして前記意匠面aの、樹脂成形時の型抜き角度はθ1に設定されているのに対し、前記非意匠面bのうち、前記接合部11aとのコーナ部b′の型抜き角度は、前記θ1より小さい角度θ2に設定されている。
【0019】
前記上横枠部12は、前記トップパネル7の接合部7aの内面が接着剤13dにより接着される接合部12aと、該接合部12aから屈曲して前記トップパネル7から離れる方向に延びる壁部12bと、該壁部12bと前記トップパネル7とを連結する連結壁部12cとを有する。なお、前記トップパネル7の接合部7aの外面には前記ウインドガラス5の上縁の接合部5cが接着剤13eにより接着されている。
【0020】
前記上横枠部12の壁部12bは、前記縦枠部10の内,外壁部10b,10b′と同様に、外観を良好にするためのシボ加工等が施された意匠面aと、外方から見えることがなく、外観を考慮する必要のない非意匠面bとを有する。そして前記意匠面aの、樹脂成形時の型抜き角度はθ1に設定されているのに対し、前記非意匠面bのうち、前記接合部12aとのコーナ部b′の型抜き角度は、前記θ1より小さい角度θ2に設定されている。
【0021】
さらにまた前記パネル部9の左,右端部及び下端部には前記アウタパネル6の接合部6bの内面が接着剤13eにより接着される接合部9aと、該接合部9aから屈曲して前記アウタパネル6から離れる方向に延びる壁部9bと、該壁部9bと前記パネル部9とを連結する連結壁部9cとを有する。
【0022】
前記壁部9bは、前記縦枠部10の内,外壁部10b,10b′と同様に、外観を良好にするためのシボ加工等が施された意匠面aと、外方から見えることがなく、外観を考慮する必要のない非意匠面bとを有する。そして前記意匠面aの、樹脂成形時の型抜き角度はθ1に設定されているのに対し、前記非意匠面bのうち、前記接合部12aとのコーナ部b′の型抜き角度は、前記θ1より小さい角度θ2に設定されている。
【0023】
本実施例1では、インナパネル4の各壁部9b,10b,11b,12bのシボ加工等が施される意匠面aの樹脂成形用型抜き角度θ1より非意匠面bのコーナ部b′の樹脂成形用型抜き角度θ2を小さく設定したので、意匠面の型抜き角度と非意匠面の型抜き角度を同じにした場合に比較して、前記各壁部9b〜12bのコーナ部b′が厚肉となり、応力が集中し易いコーナ部分を補強でき、これによりインナパネル4の剛性を増大させることができる。そのため、必要な剛性を確保しつつインナパネル14の壁部を小型化でき、その結果、ウインドガラス5の可視範囲を拡大できる。
【0024】
具体的には、例えば、
図2において、前記コーナ部b′の厚肉化により窓枠部8全体の剛性が高くなるので、必要な剛性を従来通りとすれば、前記縦枠部10の接着面積を確保しつつ車幅方向寸法Aを狭くでき、それだけ縦枠部10をP方向に移動させることができ、その結果可視範囲Bが広くなる。
【実施例2】
【0025】
前記実施例1では、本発明をバックドアに適用した場合を説明したが、本発明は、
図6にその実施例2を示すようにサイドドアにも適用できる。
【0026】
図6において、20はサイドドアであり、該サイドドア20は、樹脂製のサイドアウタパネル22と、同じく樹脂製のサイドインナパネル21とを有し、該料パネル22,21は接着剤13gにより接合されている。
【0027】
前記サイドインナパネル21は、前記アウタパネル22の接合部22aに前記接着剤13gにより接着される接合部21aと、該接合部21aから屈曲して前記アウタパネル22から離れる方向に延びる壁部21bと、該壁部21b同士を接続するパネル部21cとを有する。なお、23a,23bは前記サイドドア20と前記サイドパネル3のドア開口3cとの間をシールするシール部材である。
【0028】
前記インナパネル21の壁部21bは、前記実施例1における縦枠部10の内,外壁部10b,10b′と同様に、外観を良好にするためのシボ加工等が施された意匠面aと、外方から見えることがなく、外観を考慮する必要のない非意匠面bとを有する。そして前記意匠面aの、樹脂成形時の型抜き角度はθ1に設定されているのに対し、前記非意匠面bのうち、前記接合部12aとのコーナ部b′の型抜き角度は、前記θ1より小さい角度θ2に設定されている。
【0029】
本実施例2では、壁部21bの意匠面aの型抜き角度θ1より非意匠面bのコーナ部b′の型抜き角度θ2を小さく設定したので、前記壁部21bのコーナ部b′が厚肉となり、応力が集中し易いコーナ部分を補強でき、これによりサイドドア20の剛性を増大できる。そのため、サイドドア20を大きくでき、その分、ドア開口を拡大でき、乗降性を改善できる。