(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式ガソリンエンジンであり、複数の気筒1(
図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0012】
図2に、火花点火用の電気回路を示している。点火プラグ12は、点火コイル14にて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイル14は、半導体スイッチング素子であるイグナイタ13とともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0013】
内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0からの点火信号iをイグナイタ13が受けると、まずイグナイタ13が点弧して点火コイル14の一次側に電流が流れ、その直後の点火のタイミングでイグナイタ13が消弧してこの電流が遮断される。すると、自己誘導作用が起こり、一次側に高電圧が発生する。そして、一次側と二次側とは磁気回路及び磁束を共有するので、二次側にさらに高い誘導電圧が発生する。この高い誘導電圧が点火プラグ12の中心電極に印加され、中心電極と接地電極との間で火花放電する。
【0014】
ECU0は、燃料の爆発燃焼の際に気筒1の燃焼室内に発生するイオン電流を検出し、このイオン電流を参照して、燃焼状態の判定を行う。
【0015】
図2に示すように、本実施形態では、火花点火用の電気回路に、イオン電流を検出するための回路を付加している。この検出回路は、イオン電流を効果的に検出するためのバイアス電源部15と、イオン電流の多寡に応じた検出電圧を増幅して出力する増幅部16とを備える。バイアス電源部15は、バイアス電圧を蓄えるキャパシタ151と、キャパシタ151の電圧を所定電圧まで高めるためのツェナーダイオード152と、電流阻止用のダイオード153、154と、イオン電流に応じた電圧を出力する負荷抵抗155とを含む。増幅部16は、オペアンプに代表される電圧増幅器161を含む。
【0016】
点火プラグ12の中心電極と接地電極との間のアーク放電時にはキャパシタ151が充電され、その後キャパシタ151に充電されたバイアス電圧により負荷抵抗155にイオン電流が流れる。イオン電流が流れることで生じる抵抗155の両端間の電圧は、増幅部16により増幅されてイオン電流信号hとしてECU0に受信される。
【0017】
図3に、正常燃焼における、イオン電流(図中実線で示す)及び気筒1内の燃焼圧力(筒内圧。図中破線で示す)のそれぞれの推移を例示している。イオン電流は、点火のための放電中は検出することができない。正常燃焼の場合のイオン電流は、火花点火の終了後、化学反応により、圧縮上死点の手前で減少した後、熱解離によって再び増加する。また、燃焼圧がピークを迎えるのとほぼ同時にイオン電流も極大となる。
【0018】
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0019】
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0020】
本実施形態の内燃機関には、外部EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置2が付帯している。外部EGR装置2は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものであり、排気通路4における触媒41の上流側と吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流側とを連通するEGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における排気マニホルド42またはその下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所、具体的にはサージタンク33に接続している。
【0021】
内燃機関の運転制御を司るECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
【0022】
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、気筒1を内包するシリンダブロックの振動の大きさを検出するノックセンサから出力される振動信号d、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号e、機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号f、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号g、燃焼室内での混合気の燃焼に伴って生じるイオン電流を検出する回路から出力されるイオン電流信号h等が入力される。
【0023】
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l等を出力する。
【0024】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に充填される吸気量を推算する。そして、それらエンジン回転数及び吸気量等に基づき、要求される燃料噴射量、燃料噴射時期(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火時期、要求EGR率(または、EGR量)といった各種運転パラメータを決定する。運転パラメータの決定手法自体は、既知のものを採用することが可能である。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0025】
本実施形態において、ECU0は、イオン電流を検出するための回路を介して取得されるイオン電流信号h、または、ノックセンサを介して取得される振動信号dを参照し、気筒1におけるノッキングの有無を判定する。要するに、ノック判定方法が二つあり、ECU0は何れかの方法を選択してノック判定を行う。
【0026】
イオン電流信号hを参照したノック判定に関して述べる。
図4に、気筒1での膨張行程中にノッキングが起こったときの、イオン電流の推移を例示する。ノッキングが起こる際、気筒1の燃焼室内では燃焼速度の速い、激しい燃焼が生じている。それ故、
図3に示した正常燃焼の場合と比較して、イオン電流が早期にピークを迎え、その後速やかに減衰する。そして、イオン電流信号hのピーク後の波形に、ノッキングに起因して発生する振動Sが重畳される。
【0027】
ノッキングの有無を判定するにあたり、ECU0は、点火後の燃焼期間に点火プラグ12の電極を流れるイオン電流を、イオン電流検出用の回路を介してサンプリングする。さらに、サンプリングしたイオン電流信号hを、ノッキングに起因して発生する信号Sが持つ周波数成分を通過させるバンドパスフィルタに入力し、当該信号Sの成分を抽出する。フィルタは、ノッキングに起因した信号S以外の成分を低減させるためのフィルタであって、例えば7kHzないし11.5kHzの周波数成分を通過させる。
【0028】
その上で、フィルタ処理した信号hを時間積分、換言すればサンプリング値の時系列を積算し、結果得られる積分値を所定のノック判定値と比較する。ノック判定値は、ECU0のメモリに記憶保持している。積分値がノック判定値を上回ったならば、当該気筒1にてノッキングが起こったものと判定する。逆に、積分値がノック判定値以下であるならば、当該気筒1にてノッキングは起こらなかったものと判定する。
【0029】
イオン電流検出回路は、各気筒1に装着されている各点火プラグ12に流れるイオン電流をそれぞれ検出可能である。即ち、気筒1毎に個別にイオン電流信号hを取得することができ、気筒1毎に個別にノッキングの有無の判定を行うことができる。
【0030】
一方、イオン電流信号hにノイズが混入すると、ノック判定を誤るおそれがある。ノイズの典型は、各種補機の稼働/非稼働を切り替えるために操作されるリレースイッチのON/OFF時に、イオン電流検出用回路に誘起されるスパイクノイズNである。また、気筒1にてノッキングが起こっていないにもかかわらず、
図4に示している信号Sに近い擬似ノック信号が、ノッキングの起こる時期よりも遅れて出現することもある。これらのノイズがイオン電流信号hに混入した場合、ノッキングが起こっていないにもかかわらずノッキングがあったものと誤判定しかねない。
【0031】
加えて、吸気量及び燃料噴射量の乏しい低負荷領域や、EGRガスの還流量の多い中負荷領域では、そもそも気筒1の燃焼室内に発生するイオンの量が少ないことから、イオン電流の検出レベルが低下する。よって、信号hのS/N比が減少し、誤判定を招くおそれが高まる。
【0032】
そこで、イオン電流信号hを参照したノック判定に誤りが生じやすい場合においては、イオン電流信号hではなく振動信号dを参照したノック判定を行う。
【0033】
振動信号dを参照したノック判定を行うのは、例えば以下の状況である。
・点火時期を内燃機関の出力トルクが最大となるMBTまたはその近傍に設定して運転できる場合。元来ノッキングを起こす危険の少ない運転領域
・低負荷領域やEGRガスの還流量が多い中負荷領域等、イオン電流信号hが低レベルとなる場合
・イオン電流検出用の回路を介したイオン電流の検出が不良である場合
因みに、イオン電流の検出が不良となる原因としては、フィルタにより排除できないノイズの混入や回路の短絡、断線、回路素子の劣化等の他、点火プラグ12の使用期間が長くなるにつれてその電極に燃料成分や潤滑油、添加剤等のデポジットが付着し堆積してゆくことが挙げられる。
【0034】
カーボンの如き導電性の物質を含むデポジットは、点火プラグ12の中心電極と接地電極との間を短絡するように働く。そして、気筒1の燃焼室内にイオン電流が発生せず、またはその発生量が少なくても、不当に高いイオン電流信号hを与えてしまう要因となる。
【0035】
二酸化ケイ素(シリカ)の如き絶縁性の物質を含むデポジットは、点火プラグ12の電極を流れるイオン電流を低減させる電気抵抗として働く。そして、気筒1の燃焼室内に十分な量のイオン電流が発生していても、不当に低いイオン電流信号hを与えてしまう要因となる。
【0036】
振動信号dを参照したノック判定に関して述べる。ノックセンサは、複数の気筒1を包有するシリンダブロックに取り付けられ、シリンダブロックの振動を振動信号dとして出力する既知のものである。
【0037】
ノッキングの有無を判定するにあたり、ECU0は予め、統計処理によりノック判定値を算定しておく。具体的には、ノッキングが起こっていないと思しき状況下、またはイオン電流信号hを参照したノック判定によりノッキングが起こっていないと判断されている状況下で、気筒1の膨張行程中のシリンダブロックの振動をノックセンサを介してサンプリングし、振動信号dを得る。そして、この振動信号dのサンプリング値のある期間内の時系列から、平均値及び標準偏差、ひいてはノック判定値を算出する。平均値をX、標準偏差をσとおくと、ノック判定値Jは、
J=X+Uσ
として求められる。上式における係数Uは、そのときの運転領域、即ちエンジン回転数及び要求負荷に応じて設定する。係数Uを、空燃比の高低に応じて変えるようにしてもよい。
【0038】
ノック判定値Jは、各気筒1毎に個別に求めてもよいし、全気筒1で共通のものとしてもよい。ノック判定値Jを各気筒1毎に個別のものとする場合、ある気筒1についてノック判定値Jを求めるときに、その気筒1の膨張行程中に検出された振動信号dのサンプリング値のみを基に平均値X及び標準偏差σを算出して、それらX及びσを上式に代入する。ECU0は、得られた係数U及びノック判定値Jを、メモリに記憶保持する。
【0039】
その上で、ノックセンサが出力する振動信号dの現在のサンプリング値(現在の振動の強度)を、ノック判定値Jと比較する。即ち、気筒1の膨張行程中にノックセンサを介して検出された振動信号dのサンプリング値がノック判定値Jを上回ったならば、当該気筒1にてノッキングが起こったものと判定する。逆に、振動信号dのサンプリング値がノック判定値J以下であるならば、当該気筒1にてノッキングは起こっていないものと判定する。
【0040】
尤も、膨張行程中の燃焼やノッキングに起因して発生するシリンダブロックの振動をノックセンサが検出する感度は、現在膨張行程にある気筒1に応じて異なる。ノックセンサは内燃機関のシリンダブロックに一個設置されており、複数の気筒1の各々で発生する振動をおしなべてこの一個のノックセンサで検出している。個々の気筒1とノックセンサとの相対的な位置関係、とりわけ各気筒1からノックセンサまでの距離は均一ではない。各気筒1からノックセンサに伝わる振動の伝搬特性も一様ではなく、気筒1によってノックセンサで検出される振動の強度に差が生じる。
【0041】
加えて、気筒1からノックセンサに伝わる振動の伝搬特性は、経年変化の影響を受ける。さらに、鋳物のシリンダブロックの特性は、製造地によっても微細に異なる。
【0042】
気筒1毎に振動の検出感度が異なり、その検出感度には先天的な個体差があり、しかもその検出感度が経年変化する。このような事情に鑑み、本実施形態では、気筒1毎にノッキングの有無を判定可能な手段であるイオン電流信号hを参照したノック判定の結果に基づき、ノックセンサを介して検出される振動信号dに加味するべき補正量を予め決定しておく。そして、振動信号dを参照したノック判定を行うにあたり、その補正量を加味した振動信号dをノック判定値Jと比較することで、ノックセンサを用いたノック判定の精度を高く保つようにしている。
【0043】
振動信号dに加味するべき補正量の決定は、イオン電流信号hを参照したノック判定を好適に行い得る状況の下で実施することが望ましい。
【0044】
補正量は、気筒1毎に個別のものである。ある気筒1についてノッキングの有無を判定するための補正量を決定する際には、当該気筒1の膨張行程中に点火プラグ12の電極を流れるイオン電流信号hを参照する。即ち、イオン電流信号hをバンドパスフィルタに入力して信号Sの成分を抽出して時間積分し、(イオン電流信号hを参照した判定用の)ノック判定値と比較される積分値を算出する。この積分値とノック判定値との比率Rがいわば、当該気筒1におけるノッキングの強さの度合いを表している。従って、当該気筒1の膨張行程中にノックセンサを介して検出された振動信号dのサンプリング値に補正量を加味したものと、(振動信号dを参照した判定用の)ノック判定値Jとの比率が、上記の比率Rに等しくなるように補正量を決定してやればよい。当該気筒1の膨張行程中にノックセンサを介して検出された振動信号dのサンプリング値をM、当該気筒1についての補正量をKとおくと、
KM/J=R
であり、補正量Kは、
K=RJ/M
として求められる。ECU0は、得られた補正量Kを、メモリに記憶保持する。
【0045】
補正量Kの決定は、三ヶ月程度に一度、または車両の走行距離で5000km程度に一度の頻度で(若しくは、そのような頻度に相当するトリップ数(イグニッションスイッチがONとなり機関を始動してからイグニッションスイッチがOFFとなって機関を停止するまでの期間を1トリップとする)毎に)実行すればよい。先天的な個体差や経年変化を吸収するためにはそれで十分であり、徒にECU0の演算負荷を大きくする必要はない。
【0046】
また、補正量Kの決定の際、補正していない振動信号dの強度Mとノック判定値Jとの比率M/Jと、イオン電流信号hを参照したノック判定の結果得られる比率Rとの差が所定以下である場合には、振動信号dを補正する必要性に乏しいということができる。この場合、当該気筒1についてのノック判定において振動信号dの補正を行わない、換言すれば当該気筒1に係る補正量Kを1とすることも許容される。
【0047】
ある気筒1でノッキングが起こったか否かを振動信号dを参照して判定するには、当該気筒1の膨張行程中に検出された振動信号dのサンプリング値Mに、当該気筒1に対応した補正量Kを乗じ、その値KMをノック判定値Jと比較する。KM>Jならば、当該気筒1にてノッキングが起こっており、KM≦Jならば、当該気筒1にてノッキングは起こっていない。
【0048】
ノック判定の結果、気筒1にてノッキングが起こっているのであれば、当該気筒1における次回以降の点火の時期を、ノッキングが起こらなくなるまで遅角化してゆく。ノッキングが起こっていないのであれば、当該気筒1における次回以降の点火の時期を、ノッキングが起こる直前まで進角化し、出力トルクを増大させて燃費の向上を追求する。
【0049】
本実施形態では、内燃機関のシリンダブロックの振動をノックセンサを介して検出し、検出した振動の信号dをノック判定値Jと比較することで、気筒1におけるノッキングの有無を判定するにあたり、ノックセンサとは別の、気筒1毎にノッキングの有無を判定可能な手段による判定結果Rに基づき、ノックセンサを介して検出される振動の信号dに加味するべき気筒1毎の補正量Kを予め決定しておき、補正量Kを加味した振動の信号dをノック判定値Jと比較することを特徴とする内燃機関の制御装置0を構成した。
【0050】
本実施形態によれば、振動式のノックセンサを用いて気筒1毎に個別にノッキングの有無を判定するノック判定の精度を高めることができる。そして、イオン電流信号hを参照したノック判定に誤りを生じやすい状況等において、振動信号dを参照してノック判定を行い、点火時期の制御を実行することが可能となる。従って、広範囲の運転領域で気筒1毎の点火時期を最適化でき、ノッキングを抑制しながら点火時期の過遅角を防止して燃費の向上に寄与し得る。
【0051】
補正量Kは、ノックセンサによる振動の検出感度が気筒1毎に異なり、その検出感度に先天的な個体差があり、しかも検出感度が経年変化する問題を解消する。内燃機関の製造地毎に適合試験を行い補正量を決定する必要がなくなるので、開発工数が削減され、コストの低減に資する。
【0052】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、振動信号dを参照したノック判定にあたり、振動信号dを補正してノック判定値Jと比較していたが、ノック判定値Jに補正量を加味した上で振動信号dと比較してもよい。この場合の補正量K’の決定手法は、上記実施形態と類似する。即ち、イオン電流信号hを参照したノック判定の結果得られる比率R、ノックセンサを介して検出された振動信号dのサンプリング値M、及びノック判定値Jについて、
M/(K’J)=R
の関係が成立するから、補正量K’は、
K’=M/(RJ)
として求められる。補正量K’もまた、気筒1毎に個別に決定する。
【0053】
補正量K、K’を決定する際に利用される、ノックセンサとは別のノック判定手段は、イオン電流信号hを参照するものには限定されない。例えば、各気筒1毎の筒内圧を検出する圧力センサが実装された内燃機関にあっては、イオン電流信号hに代えて、筒内圧センサを介して計測される筒内圧の推移(特に、膨張行程における筒内圧の極大値やその極大値の出現する時期)を参照してノック判定を実行することができる。あるいは、気筒1の筒内温度(燃焼温度)を検出する筒内温度センサが実装された内燃機関にあっては、イオン電流信号hに代えて、筒内温度センサを介して計測される筒内温度の推移(特に、膨張行程における筒内温度の極大値やその極大値の出現する時期)を参照してノック判定を実行することができる。
【0054】
その他、各部の具体的構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。