特許第6037749号(P6037749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037749
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/24 20160101AFI20161128BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20161128BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20161128BHJP
【FI】
   H01M8/24 R
   H01M8/02 R
   !H01M8/12
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-213798(P2012-213798)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-67669(P2014-67669A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】後藤 征司
(72)【発明者】
【氏名】眞竹 徳久
(72)【発明者】
【氏名】松田 直彦
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−123706(JP,A)
【文献】 特開2005−340173(JP,A)
【文献】 特開2004−311279(JP,A)
【文献】 特開2004−111118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/02
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極と燃料極とが積層されて形成されている燃料電池セルを有する複数のセルスタックと、
複数のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流路を形成する酸化剤ガス流路形成部材と、
を備え、
前記セルスタックの燃料極側を流れる燃料ガスの流れの向きと、前記セルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流れの向きとは、逆向きであり、
複数の前記セルスタックには、前記酸化剤ガス流路の流れ方向の両端部に前記燃料電池セルが設けられていない非発電領域と、該流れ方向の中間部に該燃料電池セルが設けられている発電領域とが形成されており、
前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記酸化剤ガスの前記流れ方向の上流側の上流域では、複数の前記セルスタックのうちの内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積よりも小さい一方で、
前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域と対向する中流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積以上であり、
前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記流れ方向の下流側の下流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積以下であり、
複数の前記セルスタックが挿通され、複数の該セルスタックにおける前記発電領域の側と、前記流れ方向の上流側端部における前記非発電領域である上流非発電領域の側とに、複数の該セルスタックの前記空気極側の空間を仕切る上流仕切板をさらに備え、
前記上流仕切板には、複数の前記セルスタックの前記空気極側との間に隙間が形成されており、該上流仕切板が前記酸化剤ガス流路形成部材の一部を成し、該隙間が前記上流域の酸化剤ガス流路を形成する、
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
空気極と燃料極とが積層されて形成されている燃料電池セルを有する複数のセルスタックと、
複数のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流路を形成する酸化剤ガス流路形成部材と、
を備え、
前記セルスタックの燃料極側を流れる燃料ガスの流れの向きと、前記セルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流れの向きとは、逆向きであり、
複数の前記セルスタックには、前記酸化剤ガス流路の流れ方向の両端部に前記燃料電池セルが設けられていない非発電領域と、該流れ方向の中間部に該燃料電池セルが設けられている発電領域とが形成されており、
前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記酸化剤ガスの前記流れ方向の下流側の下流域では、複数の前記セルスタックのうちの内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積より小さく、
前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記流れ方向の上流側の上流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積より小さく、
前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域と対向する中流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積以上であり、
複数の前記セルスタックが挿通され、複数の該セルスタックにおける前記発電領域側と前記流れ方向の下流側端部における前記非発電領域である下流非発電領域側とに、複数の該セルスタックの前記空気極側の空間を仕切る下流仕切板をさらに備え、
前記下流仕切板には、複数の前記セルスタックの前記空気極側との間に隙間が形成されており、該下流仕切板が前記酸化剤ガス流路形成部材の一部を成し、該隙間が前記下流域の酸化剤ガス流路を形成する、
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項3】
空気極と燃料極とが積層されて形成されている燃料電池セルを有する複数のセルスタックと、
複数のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流路を形成する酸化剤ガス流路形成部材と、
を備え、
複数の前記セルスタックには、前記酸化剤ガス流路の流れ方向の両端部に前記燃料電池セルが設けられていない非発電領域と、該流れ方向の中間部に該燃料電池セルが設けられている発電領域とが形成されており、
前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域と対向する中流域では、複数の前記セルスタックのうちの外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が、内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積よりも小さく、
前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記流れ方向の上流側の上流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積より小さく、
前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記流れ方向の下流側の下流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積以下であり、
複数の前記セルスタックの前記発電領域と対向する位置であって、該セルスタックの前記空気極側に、該セルスタックと隙間をあけて配置されている中間流路形成部材をさらに備え、
前記中間流路形成部材が前記酸化剤ガス流路形成部材の一部を成し、前記隙間が前記中流域の酸化剤ガス流路を形成する、
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池モジュールにおいて、
前記酸化剤ガス流路形成部材は、断熱材である、
ことを特徴とする燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルを有する複数のセルスタックを備えている燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、低公害で発電効率が高いため、近年、各種分野での利用が期待されている。燃料電池は、一般的に、水素や炭化水素系ガス等を含む燃料ガスを触媒作用により改質する燃料極と、空気等の酸化剤ガスから酸素イオンを生成する空気極と、この空気極で生成された酸素イオンを燃料極に移動させる固体電解質とを有する。燃料極と固体電解質との界面付近では、燃料極で改質された燃料ガスと固定電解質からの酸素イオンとが電気化学反応して発電が行われる。この燃料電池は、排気ガスがクリーンであることから、例えば、病院や工場等の分散電源として利用されている。
【0003】
このような燃料電池を備えた燃料電池モジュールの一例として、例えば、以下の特許文献1に開示されているものがある。
【0004】
この燃料電池モジュールは、前述の燃料極と固定電解質と空気極とを有する電池セルを複数有している複数のセルスタックを備えている。セルスタックは、セルスタック自体の温度に応じて発電量が変化する。また、複数のセルスタックを備えている燃料電池モジュールでは、内側のセルスタックの温度が外側のセルスタックよりも高くなる。そこで、この燃料電池モジュールでは、複数のセルスタック毎にセルスタックの温度を計測し、複数のセルスタック毎に当該セルスタックの温度に応じて空気流量を調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−59359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の燃料電池モジュールでは、複数のセルスタック毎に温度計及び空気流量を調節する流量調節弁が必要であり、製造コストがかさむ、という問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、複数のセルスタックの温度均一化を図りつつも、製造コストを抑えることができる燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための発明の一態様としての燃料電池モジュールは、
空気極と燃料極とが積層されて形成されている燃料電池セルを有する複数のセルスタックと、複数のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流路を形成する酸化剤ガス流路形成部材と、を備え、
複数の前記セルスタックには、前記酸化剤ガス流路の流れ方向の両端部に前記燃料電池セルが設けられていない非発電領域と、該流れ方向の中間部に該燃料電池セルが設けられている発電領域とが形成されており、前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記酸化剤ガスの前記流れ方向の上流側の上流域では、複数の前記セルスタックのうちの内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積よりも小さい一方で、前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域と対向する中流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積以上であり、前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記流れ方向の下流側の下流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積以下であり、複数の前記セルスタックが挿通され、複数の該セルスタックにおける前記発電領域の側と、前記流れ方向の上流側端部における前記非発電領域である上流非発電領域の側とに、複数の該セルスタックの前記空気極側の空間を仕切る上流仕切板をさらに備え、前記上流仕切板には、複数の前記セルスタックの前記空気極側との間に隙間が形成されており、該上流仕切板が前記酸化剤ガス流路形成部材の一部を成し、該隙間が前記上流域の酸化剤ガス流路を形成することを特徴とする。
【0009】
当該燃料電池モジュールでは、外側のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流速及び流量と、内側のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流量及び流量とが異なることになる。このため、外側のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスとこの外側セルスタックの燃料極側を流れる燃料ガスとの間の熱交換率と、内側のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスとこの内側セルスタックの燃料極側を流れる燃料ガスとの間の熱交換率が異なってくる。
【0010】
ところで、複数のセルスタックが束になっている場合、放熱し易い外側のセルスタックの温度よりも放熱しずらい内側のセルスタックの温度の方が高くなる。当該燃料電池モジュールでは、外側のセルスタックにおける酸化剤ガスと燃料ガスとの間の熱交換率と、内側のセルスタックにおける酸化剤ガスと燃料ガスとの間の熱交換率とが異なっているため、外側のセルスタックの温度を相対的に高め、内側のセルスタックの温度を下げることができる。すなわち、当該燃料電池モジュールでは、内外のセルスタックの温度の均一化を図ることができる。
【0011】
よって、当該燃料電池モジュールでは、セルスタック毎に温度計及び流量調節弁を設けなくても、複数のセルスタックの温度均一化を図れるので、製造コストを抑えることができる。
【0014】
当該燃料電池モジュールでは、酸化剤ガス流路の上流域において、比較的温度の低い酸化剤ガスと比較的温度の高い燃料ガスとの間の熱交換率は、内側のセルスタックよりも外側のセルスタックの方が高くなる。よって、酸化剤ガス流路の中流域において、外側のセルスタック周りの酸化剤ガスの温度が相対的に高まり、内側のセルスタック周りの酸化剤ガスの温度が相対的に低下する。よって、当該燃料電池モジュールでは、外側のセルスタックの温度が相対的に高まり、内側のセルスタックの温度が相対的に下がって、内外のセルスタックの温度の均一化を図ることができる。
【0015】
上記目的を達成するための発明の第二態様としての燃料電池モジュールは、
空気極と燃料極とが積層されて形成されている燃料電池セルを有する複数のセルスタックと、複数のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流路を形成する酸化剤ガス流路形成部材と、を備え、
前記セルスタックの燃料極側を流れる燃料ガスの流れの向きと、前記セルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流れの向きとは、逆向きであり、複数の前記セルスタックには、前記酸化剤ガス流路の流れ方向の両端部に前記燃料電池セルが設けられていない非発電領域と、該流れ方向の中間部に該燃料電池セルが設けられている発電領域とが形成されており、前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記酸化剤ガスの前記流れ方向の下流側の下流域では、複数の前記セルスタックのうちの内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積より小さく、前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記流れ方向の上流側の上流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積より小さく、前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域と対向する中流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積以上であり、複数の前記セルスタックが挿通され、複数の該セルスタックにおける前記発電領域側と前記流れ方向の下流側端部における前記非発電領域である下流非発電領域側とに、複数の該セルスタックの前記空気極側の空間を仕切る下流仕切板をさらに備え、前記下流仕切板には、複数の前記セルスタックの前記空気極側との間に隙間が形成されており、該下流仕切板が前記酸化剤ガス流路形成部材の一部を成し、該隙間が前記下流域の酸化剤ガス流路を形成することを特徴とする。
【0017】
当該燃料電池モジュールでは、酸化剤ガス流路の下流域において、比較的温度の高い酸化剤ガスと比較的温度の低い燃料ガスとの間の熱交換率は、内側のセルスタックよりも外側のセルスタックの方が高くなる。このため、酸化剤ガス流路の中流域において、外側のセルスタックの燃料極側の燃料ガス温度が相対的に高まり、内側のセルスタックの燃料極側の燃料ガス温度が相対的に低下する。よって、当該燃料電池モジュールでは、外側のセルスタックの温度が相対的に高まり、内側のセルスタックの温度が相対的に下がって、内外のセルスタックの温度の均一化を図ることができる。
【0018】
上記目的を達成するための発明の第三態様としての燃料電池モジュールは、
空気極と燃料極とが積層されて形成されている燃料電池セルを有する複数のセルスタックと、複数のセルスタックの空気極側を流れる酸化剤ガスの流路を形成する酸化剤ガス流路形成部材と、を備え、
複数の前記セルスタックには、前記酸化剤ガス流路の流れ方向の両端部に前記燃料電池セルが設けられていない非発電領域と、該流れ方向の中間部に該燃料電池セルが設けられている発電領域とが形成されており、前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域と対向する中流域では、複数の前記セルスタックのうちの外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が、内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積よりも小さく、前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記流れ方向の上流側の上流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積より小さく、前記酸化剤ガス流路中で、複数の前記セルスタックの前記発電領域よりも前記流れ方向の下流側の下流域では、複数の前記セルスタックのうちの前記内側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積が前記外側のセルスタックに対する酸化剤ガス流路の断面積以下であり複数の前記セルスタックの前記発電領域と対向する位置であって、該セルスタックの前記空気極側に、該セルスタックと隙間をあけて配置されている中間流路形成部材をさらに備え、前記中間流路形成部材が前記酸化剤ガス流路形成部材の一部を成し、前記隙間が前記中流域の酸化剤ガス流路を形成することを特徴とする。
【0020】
当該燃料電池モジュールでは、酸化剤ガス流路の中流域において、酸化剤ガスと燃料ガスとの間の熱交換率は、外側のセルスタックよりも内側のセルスタックの方が高くなる。よって、当該燃料電池モジュールでは、外側のセルスタックの温度が相対的に高まり、内側のセルスタックの温度が相対的に下がって、内外のセルスタックの温度の均一化を図ることができる。
【0021】
また、以上のいずれかの燃料電池モジュールにおいて、前記酸化剤ガス流路形成部材は、断熱材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、セルスタック毎に温度計及び流量調節弁を設けなくても、複数のセルスタックの温度均一化を図れるので、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る第一実施形態における燃料電池モジュールの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明に係る第一実施形態におけるセルスタックの要部断面図である。
図3】本発明に係る第一実施形態におけるカートリッジの縦断面図である。
図4】本発明に係る第一実施形態におけるカートリッジの斜視図である。
図5図3におけるV‐V線断面図である。
図6】本発明に係る第二実施形態におけるカートリッジの縦断面図である。
図7図6におけるVII‐VII線断面図ある。
図8】本発明に係る第三実施形態におけるカートリッジの縦断面図である。
図9図8におけるIX‐IX線断面図ある。
図10】本発明に係る各実施形態の変形例における燃料電池モジュールの展開斜視図である。
図11図8におけるXI‐XI線断面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る燃料電池モジュールの各種実施形態及び各種変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
「第一実施形態」
まず、本発明に係る燃料電池モジュールの第一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
【0026】
本実施形態の燃料電池モジュールMは、図1に示すように、容器中心軸Avを中心として容器中心軸方向Dvに延びる円筒形状の圧力容器10と、この圧力容器10内に配置されている複数のカートリッジ201及び複数の各種配管300と、を備えている。
【0027】
配管300としては、燃料ガス供給源1からの燃料ガスGfを圧力容器10内の各カートリッジ201に導く燃料ガス供給配管310と、各カートリッジ201を通過した燃料ガスGfを圧力容器10外に導く燃料ガス排出配管320と、酸化剤ガス供給源2からの酸化剤ガスGoを圧力容器10内の各カートリッジ201に導く酸化剤ガス供給配管330と、各カートリッジ201を通過した酸化剤ガスGoを圧力容器10外に導く酸化剤ガス排出配管340とがある。
【0028】
燃料ガスGfとしては、例えば、水素、一酸化炭素、メタン等の炭化水素系ガス、石炭等の炭素質原料のガス化により得られたガス、又は、これらの2以上の成分を含むガス等が利用される。また、酸化剤ガスGoとしては、例えば、酸素を15〜30vol%含むガス等が利用される。代表的な酸化剤ガスGoとしては、空気であるが、燃焼排気ガスと空気との混合ガスや、酸素と空気との混合ガスを利用してもよい。
【0029】
圧力容器10は、例えば、内部の圧力が0.1MPa〜約5MPa、内部の温度が大気温度〜約550℃で運用される。このため、この圧力容器10は、耐圧性を考慮して、円筒形状の胴部11と、胴部11の中心軸方向における両端部に形成されている半球状の鏡部12とを有している。この圧力容器10は、全体として円筒形状を成し、その容器中心軸Avが上下方向に延びるよう設置されている。また、この圧力容器10は、耐圧性と共に、酸化剤ガスGo中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性も要求されるため、例えば、SUS304などのステンレス系材で形成されている。
【0030】
カートリッジ201は、複数のセルスタックの束で構成されている。図2に示すように、セルスタック101は、円筒形状(又は管形状)の基体管103と、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されているインターコネクタ107とを有する。燃料電池セル105は、燃料極112と固体電解質111と空気極113とが積層して形成されている。セルスタック101は、さらに、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105のうちで、基体管103の軸方向において最も端に形成されている燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されているリード膜115を有する。すなわち、基体管103の軸方向の両端部は、燃料電池セル105の替りにリード膜115が設けられている非発電領域121を成し、この基体管103の軸方向の中間部は燃料電池セル105が形成されている発電領域122を成す。
【0031】
本実施形態では、この円筒形状(又は管形状)のセルスタック101の内周側(燃料極側)に燃料ガスGfが通り、外周側(空気極側)に酸化剤ガスGoが通る。
【0032】
基体管103は、例えば、CaO安定化ZrO(CSZ)、Y安定化ZrO2(YSZ)、MgAl等のいずれかで形成されている多孔質体である。この基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持する役目を担っている。さらに、この基体管103は、内周側に供給された燃料ガスGfを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料電池セル105に拡散させる役目も担っている。
【0033】
燃料極112は、例えば、Ni/YSZ等、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で形成されている。この場合、燃料極112は、燃料極112の成分であるNiが燃料ガスGfに対して触媒として作用する。この触媒としての作用は、基体管103を介して供給された燃料ガスGf中に、例えば、メタン(CH)と水蒸気とが含まれている場合、これら相互を反応させ、水素(H)と一酸化炭素(CO)に改質する作用である。
【0034】
空気極113は、例えば、LaSrMnO系酸化物、又はLaCoO系酸化物で形成されている。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される酸化剤ガスGo中の酸素を解離させて酸素イオン(O2−)を生成する。
【0035】
固体電解質111は、例えば、主としてYSZで形成されている。このYSZは、ガスを通しにくい気密性と、高温下での高い酸素イオン導電性とを有している。この固体電解質111は、空気極113で生成された酸素イオン(O2−)を燃料極112に移動させる。
【0036】
前述の燃料極112では、固体電解質111との界面付近において、改質により得られた水素(H)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質111から供給された酸素イオン(O2−)とが反応し、水(HO)及び二酸化炭素(CO)が生成される。この燃料電池セル105では、この反応過程で酸素イオンから電子が放出されて、発電が行われる。
【0037】
インターコネクタ107は、例えば、SrTiO系などのM1−xTiO(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物で形成されている。このインターコネクタ107は、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとが混合しないように緻密な膜で、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極112とを電気的に接続する。つまり、このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105同士を電気的に直列接続する。
【0038】
リード膜115は、電子伝導性を有すること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、例えば、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で形成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により電気的に直列接続されている複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出する役目を担っている。
【0039】
カートリッジ201は、図3及び図4に示すように、複数のセルスタック101と、複数のセルスタック101の束の一方の端部を覆う第一カートリッジヘッダ220aと、複数のセルスタック101の束の他方の端部を覆う第二カートリッジヘッダ220bと、を有している。複数のセルスタック101は、互いに平行で且つその長手方向における互いの位置が揃って、全体として円柱形状を成している。また、第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、円柱形状を成している複数のセルスタック101の束の外径よりわずかに大きな外径の円筒形状を成している。このため、カートリッジ201は、全体として、セルスタック101の長手方向に長い円柱形状を成している。
【0040】
第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、いずれも、複数のセルスタック101の束の端部が開口228から内部に入り込む円筒形状のケーシング229a,229bと、ケーシング229a,229bの開口228を塞ぐ仕切板227a,227bと、ケーシング229a,229bの内部空間をセルスタック101の長手方向で2つの空間に仕切る管板225a,225bと、を有している。管板225a,225b等は、インコネル(ニッケル基合金に対するスペシャルメタルズ社の登録商標)等の高温耐久性のある金属材料で形成されている。また、仕切板227a,227bは、例えば、アルミナシリカ系の断熱材で形成されている。管板225a,225b及び仕切板227a,227bには、複数のセルスタック101の端部のそれぞれが挿通可能な貫通孔が形成されている。管板225a,225bは、その貫通孔に挿通されたセルスタック101の端部をシール部材又は接着剤237を介して支持する。このため、この管板225a,225bには貫通孔が形成されているものの、この管板225a,225bを基準にしてケーシング229a,229b内の一方の空間に対する他方の空間の気密性が確保されている。仕切板227a,227bの貫通孔の内径は、ここに挿通されるセルスタック101の外径よりも大きく形成されている。つまり、仕切板227a,227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されたセルスタック101の外周面との間には隙間235a,235bが存在する。
【0041】
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと管板225aとで形成されている空間は、燃料ガスGfが供給される燃料ガス供給室217を形成している。このケーシング229aには、燃料ガス供給配管310からの燃料ガスGfを燃料ガス供給室217に導くための燃料ガス供給孔231aが形成されている。この燃料ガス供給室217内には、複数のセルスタック101における基体管103の端部が位置し、ここで開放している。燃料ガス供給配管310から燃料ガス供給室217に導かれた燃料ガスGfは、複数のセルスタック101の基体管103の内部に流れ込む。この際、燃料ガスGfは、燃料ガス供給室217により、複数のセルスタック101の各基体管103に対してほぼ均等流量に配分される。このため、複数のセルスタック101における各発電量の均一化を図ることができる。
【0042】
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと管板225bとで形成されている空間は、セルスタック101の基体管103内を通過した燃料ガスGfが流れ込む燃料ガス排出室219を形成している。このケーシング229bには、燃料ガス排出室219に流れ込んだ燃料ガスGfを燃料ガス排出配管320に導くための燃料ガス排出孔231bが形成されている。この燃料ガス排出室219内には、複数のセルスタック101における基体管103の端部が位置し、ここで開放している。複数のセルスタック101の各基体管103内を通過した燃料ガスGfは、前述したように、燃料ガス排出室219に流入した後、燃料ガス排出配管320を通って、圧力容器10外へ排出される。
【0043】
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと仕切板(以下、上流仕切板という場合がある)227bと管板225bとで形成されている空間は、酸化剤ガス供給室216を形成している。このケーシング229bには、酸化剤ガス供給配管330からの酸化剤ガスGoを酸化剤ガス供給室216に導くための酸化剤ガス供給孔233bが形成されている。この酸化剤ガス供給室216内に導かれた酸化剤ガスGoは、上流仕切板227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235bから、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215へと流出する。すなわち、上流仕切板227bは、酸化剤ガス流路形成部材の一部を成し、上流仕切板227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235bは、酸化剤ガス流路の上流域を形成する。
【0044】
図5に示すように、上流仕切板227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間寸法d1,d2,d3は、複数のセルスタック101のうちで外側のものほど大きくなっている。具体的には、最も内側のセルスタック101aに対する隙間寸法d1よりも、それより外側のセルスタック101bに対する隙間寸法d2の方が大きく、このセルスタック101bに対する隙間寸法d2よりもさらに外側のセルスタック101cに対する隙間寸法d3の方が大きい。言い換えると、酸化剤ガス流路形成部材である上流仕切板227bが形成する酸化剤ガス流路の断面積、つまり、上流域における酸化剤ガス流路の断面積は、複数のセルスタック101のうちで外側のものほど大きくなっている。
【0045】
第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215には、図3に示すように、複数のセルスタック101の燃料電池セル105が配置されている。言い換えると、発電室215には、複数のセルスタック101の発電領域122が位置している。このため、この発電室215では、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとが電気化学的反応して、発電が行われる。なお、この発電室215は、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間であって、外周側が内側断熱材16で囲まれた空間である。
【0046】
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと仕切板(以下、下流仕切板という場合がある)227aと管板225aとで形成されている空間は、発電室215を通った酸化剤ガスGoが流入する酸化剤ガス排出室218を形成している。このケーシング229aには、酸化剤ガス排出室218に流れ込んだ酸化剤ガスGoを酸化剤ガス排出配管340に導くための酸化剤ガス排出孔233aが形成されている。発電室215中の酸化剤ガスGoは、下流仕切板227aの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235aから酸化剤ガス排出室218内に流入した後、酸化剤ガス排出配管340を通って、圧力容器10外へ排出される。
【0047】
発電室215での発電による高温化に伴って、各カートリッジヘッダ220a,220bの管板225a,225bが高温化する。第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bの仕切板227a,227bは、前述したように断熱材で形成され、この管板225a,225bが高温化による強度低下や酸化剤ガスGo中に含まれている酸化剤による腐食を抑える。さらに、この仕切板227a,227bは、管板225a,225bの熱変形も抑える。
【0048】
前述したように、発電室215中の酸化剤ガスGoと、この発電室215に配置されている複数のセルスタック101の内側を通る燃料ガスGfとは、セルスタック101における複数の燃料電池セル105で電気化学反応する。この結果、複数の燃料電池セル105で発電が行われる。
【0049】
複数の燃料電池セル105での発電で得られた直流電流は、複数の燃料電池セル105相互間に設けられているインターコネクタ107を経て、セルスタック101の端部側へ流れ、このセルスタック101のリード膜115に流れ込む。そして、この直流電流は、リード膜115から、集電板(不図示)を介して、カートリッジ201の集電棒(不図示)に流れ、カートリッジ201外部へ取り出される。複数の集電棒は、互いに直列及び/又は並列接続されている。集電棒のうち、最も下流側の集電棒は、例えば、図示されていないインバータに接続されている。カートリッジ201外部に取り出された直流電流は、直列及び/又は並列接続されている複数の集電棒を経て、例えば、インバータに流れ、ここで交流電流に変換されて、電力負荷へと供給される。
【0050】
円柱形状の複数のカートリッジ201は、図1に示すように、いずれも、カートリッジ中心軸Acが圧力容器10の容器中心軸Avと平行になるよう、圧力容器10内に配置されている。つまり、本実施形態では、カートリッジ中心軸Acは、容器中心軸Avと同様、上下方向に延びている。本実施形態において、所定数のカートリッジ201は、容器中心軸方向Dv(上下方向)における位置が互いに同じ位置になり、且つ容器中心軸Avに対して垂直な仮想面を含む方向で互いに隣接するよう配置されて、カートリッジ群200を構成している。本実施形態の燃料電池モジュールMは、このカートリッジ群200を2つ備えている。2つのカートリッジ群200は、圧力容器10内で容器中心軸方向Dvに並んでいる。
【0051】
セルスタック101の内周側を流れる燃料ガスGfとセルスタック101の外周側を流れる酸化剤ガスGoとは、このセルスタック101を介して熱交換する。第一カートリッジヘッダ220aの燃料ガス供給室217に供給された燃料ガスGfは、セルスタック101の内周側を第二カートリッジヘッダ220bの燃料ガス排出室219側へ向かうに連れて、その温度が、発電による熱と、発電室215内で加熱された酸化剤ガスとの熱交換とで次第に上昇し、セルスタック101の軸方向における中央部分で最高温度になる。この燃料ガスGfは、セルスタック101の軸方向における中央部分よりも第二カートリッジヘッダ220bの燃料ガス排出室219側に至ると、発電室215内であまり加熱されていない酸化剤ガスGoとの熱交換で次第に冷却されて、第二カートリッジヘッダ220bの燃料ガス排出室219内に至る。
【0052】
また、第二カートリッジヘッダ220bの酸化剤ガス供給室216に供給された酸化剤ガスGoは、セルスタック101の外周側を第一カートリッジヘッダ220aの酸化剤ガス排出室218側へ向かうに連れて、その温度が、発電による熱と、発電室215を通過する過程で加熱された燃料ガスGfとの熱交換とで次第に上昇し、セルスタック101の軸方向における中央部分で最高温度になる。この酸化剤ガスGoは、セルスタック101の軸方向における中央部分よりも第一カートリッジヘッダ220aの酸化剤ガス排出室218側に至ると、あまり加熱されていない燃料ガスガスGfとの熱交換で次第に冷却されて、第一カートリッジヘッダ220aの酸化剤ガス排出室218内に至る。
【0053】
具体的に、第一カートリッジヘッダ220aの燃料ガス供給室217に供給される燃料ガスGfの温度は、例えば、400〜500℃程度である。この燃料ガスGfは、セルスタック101の軸方向における中央部分で、例えば、800〜1000℃程度になる。そして、この燃料ガスGfの温度は、前述したように、次第に低下し、第二カートリッジヘッダ220bの燃料ガス排出室219から排出された直後で、例えば、400〜500℃程度になる。すなわち、燃料ガスGfは、第一カートリッジヘッダ220aの燃料ガス供給室217内に供給されたときの温度にほぼ戻る。
【0054】
また、第二カートリッジヘッダ220bの酸化剤ガス供給室216に供給される酸化剤ガスGoの温度も、例えば、400〜500℃程度である。この酸化剤ガスGoは、セルスタック101の軸方向における中央部分で、例えば、800〜1000℃程度になる。そして、この酸化剤ガスGoの温度は、前述したように、次第に低下し、第一カートリッジヘッダ220aの酸化剤ガス排出室218から排出された直後で、例えば、400〜500℃程度になる。すなわち、酸化剤ガスGoも、燃料ガスGfと同様、第二カートリッジヘッダ220bの酸化剤ガス供給室216内に供給されたときの温度にほぼ戻る。
【0055】
以上のように、酸化剤ガスGoと燃料ガスGfとが、セルスタック101の内外周側において、セルスタック101の軸方向で互いに逆向きに流れる場合、セルスタック101は、その軸方向における中央部分の温度が高くなる。また、複数のセルスタック101を束ねた場合、放熱し易い外側のセルスタック101c(図5参照)の温度よりも放熱しずらい内側のセルスタック101aの温度の方が高くなる。
【0056】
セルスタック101に設けられている燃料電池セル105は、基本的に温度が高い方が発電効率が高い。しかしながら、セルスタック101は、温度が極めて高くなると損傷する可能性が生じる。そこで、本実施形態では、放熱し易い外側のセルスタック101cの温度を相対的に高めて外側のセルスタック101cでの発電効率を高め、放熱しずらい内側のセルスタック101aの温度を相対的に低くして、内側のセルスタック101aの損傷を防いでいる。つまり、本実施形態では、カートリッジ201を構成する各セルスタック101による発電効率の向上と各セルスタック101の損傷防止との両立を図るために、カートリッジ201を構成する複数のセルスタック101の温度均一化を図っている。
【0057】
本実施形態では、カートリッジ201を構成する複数のセルスタック101の温度均一化を図るため、前述したように、上流仕切板227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間寸法d1,d2,d3を、複数のセルスタック101のうちで外側のものほど大きくしている。
【0058】
繰り返すことになるが、外側のセルスタック101c(図5参照)と、このセルスタック101cが挿通される上流仕切板227bの貫通孔との間の隙間寸法d3は、内側のセルスタック101aと、このセルスタック101aが挿通される上流仕切板227bの貫通孔との間の隙間寸法d1より大きい。このため、外側のセルスタック101cに対する上流仕切板227bの隙間235bを通る酸化剤ガスGoは、内側のセルスタック101aに対する上流仕切板227bの隙間235bを通る酸化剤ガスGoよりも、抵抗が少ないことから流速が高くなる上に流量も多くなる。よって、外側のセルスタック101cに対する上流仕切板227bの隙間235bを通る酸化剤ガスGoは、この外側のセルスタック101cの内周側を通る燃料ガスGfとの熱交換率が高まり、発電室215に流れ込んだ時点の温度が高くなる。逆に、内側のセルスタック101aに対する上流仕切板227bの隙間235bを通る酸化剤ガスGoは、この内側のセルスタック101aの内周側を通る燃料ガスGfとの熱交換率が低くなり、発電室215に流れ込んだ時点の温度があまり高くならない。このため、発電室215内での外側のセルスタック101cの温度が相対的に高くなり、発電室215内での内側のセルスタック101aの温度が相対的に低くなって、カートリッジ201を構成する複数のセルスタック101の温度が均一化される。
【0059】
したがって、本実施形態では、セルスタック101毎に温度計及び流量調節弁を設けなくても、複数のセルスタック101の温度均一化を図れるので、製造コストを抑えることができる。
【0060】
「第二実施形態」
次に、本発明に係る燃料電池モジュールの第二実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。
【0061】
本実施形態の燃料電池モジュールの基本構成は、第一実施形態の燃料電池モジュールと同じである。但し、本実施形態の燃料電池モジュールは、図6及び図7に示すように、第一カートリッジヘッダ220aにおける下流仕切板227aの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間寸法d5,d6,d7が、複数のセルスタック101のうちで外側のものほど大きくなっている。具体的には、最も内側のセルスタック101aに対する隙間寸法d5よりも、それより外側のセルスタック101bに対する隙間寸法d6の方が大きく、このセルスタック101bに対する隙間寸法d6よりもさらに外側のセルスタック101cに対する隙間寸法d7の方が大きい。言い換えると、本実施形態では、下流仕切板227aが形成する酸化剤ガス流路の断面積、つまり、下流域における酸化剤ガス流路の断面積は、複数のセルスタック101のうちで外側のものほど大きくなっている。すなわち、本実施形態において、下流仕切板227aは酸化剤ガス流路形成部材の一部を成している。
【0062】
前述したように、外側のセルスタック101cと、このセルスタック101cが挿通される下流仕切板227aの貫通孔との間の隙間寸法d7は、内側のセルスタック101aと、このセルスタック101aが挿通される下流仕切板227aの貫通孔との間の隙間寸法d5より大きい。このため、外側のセルスタック101cに対する下流仕切板227aの隙間235aを通る酸化剤ガスGoは、内側のセルスタック101aに対する下流仕切板227aの隙間235aを通る酸化剤ガスGoよりも、抵抗が少ないことから流速が高くなる上に流量も多くなる。よって、外側のセルスタック101cに対する下流仕切板227aの隙間235aを通る酸化剤ガスGoは、この外側のセルスタック101cの内周側を通る燃料ガスGfとの熱交換率が高まり、燃料ガスGfが発電室215側に流れ込んだ時点の温度が高くなる。逆に、内側のセルスタック101aに対する下流仕切板227aの隙間235aを通る酸化剤ガスGoは、この内側のセルスタック101aの内周側を通る燃料ガスGfとの熱交換率が低くなり、燃料ガスGfが発電室215側に流れ込んだ時点の温度があまり高くならない。このため、発電室215内での外側のセルスタック101cの温度が相対的に高くなり、発電室215内での内側のセルスタック101aの温度が相対的に低くなって、カートリッジ201を構成する複数のセルスタック101の温度が均一化される。
【0063】
したがって、本実施形態でも、第一実施形態と同様、セルスタック101毎に温度計及び流量調節弁を設けなくても、複数のセルスタック101の温度均一化を図れるので、製造コストを抑えることができる。
【0064】
「第三実施形態」
次に、本発明に係る燃料電池モジュールの第三実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
【0065】
本実施形態の燃料電池モジュールの基本構成は、第一実施形態及び第二実施形態の燃料電池モジュールと同じである。但し、本実施形態の燃料電池モジュールは、図8及び図9に示すように、発電室215内に配置されている中間流路形成部材130b,130cを備えている。この中間流路形成部材130b,130cは、例えば、アルミナシリカ系の断熱材で形成されている。この中間流路形成部材130b,130cは、酸化剤ガス流路形成部材の一部を成す。
【0066】
中間流路形成部材130b,130cは、発電室215内において、外側のセルスタック101cの周りに間隔をあけて配置され、内側のセルスタック101aの周りには配置されていない。すなわち、発電室215内では、酸化剤ガス流路の断面積が、内側のセルスタック101aに対する酸化剤ガス流路の断面積よりも小さくなっている。このため、発電室215内において、内側のセルスタック101aの周りを通る酸化剤ガスGoは、外側のセルスタック101cの周りを通る酸化剤ガスGoよりも、抵抗が少ないことから流速が高くなる上に流量も多くなる。よって、発電室215内において、内側のセルスタック101aの周りを通る酸化剤ガスGoは、この内側のセルスタック101aの内周側を通る燃料ガスGfとの熱交換率が高まる。逆に、発電室215内において、外側のセルスタック101cの周りを通る酸化剤ガスGoは、この外側のセルスタック101cの内周側を通る燃料ガスGfとの熱交換率が低くなる。よって、発電室215内での外側のセルスタック101cの温度が相対的に高くなり、発電室215内での内側のセルスタック101aの温度が相対的に低くなって、カートリッジ201を構成する複数のセルスタック101の温度が均一化される。
【0067】
したがって、本実施形態でも、第一及び第二実施形態と同様、セルスタック101毎に温度計及び流量調節弁を設けなくても、複数のセルスタック101の温度均一化を図れるので、製造コストを抑えることができる。
【0068】
「変形例」
以上の実施形態では、最も内側のセルスタック101a周りの酸化剤流路の断面積、それより外側のセルスタック101b周りの酸化剤ガス流路の断面積、さらに外側のセルスタック101c周りの酸化剤ガス流路の断面積を相互に異ならせている。つまり、以上の実施形態では、酸化剤ガス流路の断面積を3段階に変えている。しかしながら、酸化剤ガス流路の断面積を2段階に変えても、また、4段階以上に変えてもよい。
【0069】
また、第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態とのうちの、いずれか、二つの実施形態を適宜組み合わせてもよいし、また、以上の三つの実施形態を全て組み合わせてもよい。
【0070】
また、以上の実施形態における燃料電池モジュールMでは、いずれも、圧力容器10の容器中心軸Avに対して、各カートリッジ201の複数のセルスタック101が平行である。しかしながら、例えば、図10に示すように、圧力容器10の容器中心軸Avに対して、各カートリッジ201aの複数のセルスタック101が垂直であってもよい。また、以上の実施形態におけるカートリッジ201は、いずれも、円柱形状を成すものであるが、例えば、図10に示すように、カートリッジ201aは角柱形状であってもよい。すなわち、角柱形状のカートリッジ201aに対して、以上のいずれかの実施形態で示した酸化剤ガス流路形成部材を設けてもよい。例えば、角柱形状のカートリッジ201aに対して、第一実施形態で示した酸化剤ガス流路形成部材を設ける場合も、図11に示すように、酸化剤ガス流路形成部材を形成する上流仕切板227bの複数の貫通孔の内周面と、これら貫通孔に挿通されるセルスタック101の外周面との間の隙間寸法d1,d2,d3を、セルスタック101の位置に応じて変えてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:燃料ガス供給源、2:酸化剤ガス供給源、10:圧力容器、15:外側断熱材、k16:内側断熱材、101:セルスタック、103:基体管、105:燃料電池セル、121:非発電領域、122:発電領域、130b,130c:中間流路形成部材、200:カートリッジ群、201,201a:カートリッジ、215:発電室、216:酸化剤ガス供給室、217:燃料ガス供給室、218:酸化剤ガス排出室、219:燃料ガス排出室、220a:第一カートリッジヘッダ、220b:第二カートリッジヘッダ、227a:仕切板(又は下流仕切板)、227b:仕切板(又は上流仕切板)、235a,235b:隙間、300:配管、310:燃料ガス供給配管、320:燃料ガス排出配管、330:酸化剤ガス供給配管、340:酸化剤ガス排出配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11