(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に述べられている原理に従って試料の吸着特性を得るには、容器の容積Vと温度Tを一定として、試料にΔn
iの吸着質を供給し、吸着前後の圧力変化ΔPを測定しなければならない。ここで、容器の容積Vと温度Tを一定として圧力変化ΔPが生じる程度の吸着を生じさせるにはかなりの長時間を要する。ΔPの測定ができるまで、吸着特性測定装置はその試料のために独占され、次の試料についての吸着特性測定を行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、1つの試料についての吸着特性測定をしながら、次の試料についての吸着特性測定を行うことができる吸着特性測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吸着特性測定装置は、複数の試料管のそれぞれに収容される複数の試料に対し予め定められた吸着質を供給して吸着特性を測定する吸着特性測定装置であって、複数の試料管の開口部のそれぞれに設けられる複数の取付部と、吸着質を供給する吸着質供給部と、複数の取付部のそれぞれと試料管用の開閉弁を介し、吸着質供給部と吸着質用の開閉弁を介して接続されるマニホールドと、マニホールドの圧力を検出するマニホールド圧力計と、複数の試料管の内部圧力をそれぞれ独立に検出する複数の試料管圧力計と、測定制御部と、を備え、測定制御部は、複数の試料管用の開閉弁の全てを閉状態のままで吸着質用の開閉弁を閉状態から任意に定めた導入期間について開状態としてマニホールドに吸着質を導入する導入処理手順と、吸着質用の開閉弁を閉状態に戻した後、複数の試料管の中の任意の1つについて、その試料管用の開閉弁を閉状態から予め任意に定めた開弁期間について開状態としてその試料管に収容される試料に吸着質を供給する供給処理手順と、を繰り返し、導入期間と開弁期間の合計期間を繰り返し単位として、複数の試料管のそれぞれに順次吸着質を供給し、吸着質が供給されたそれぞれの試料管について、マニホールドの圧力とそれぞれの試料管の内部圧力とに基づいて吸着特性を測定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る吸着特性測定装置において、測定制御部は、複数の試料管用の開閉弁の全てを閉状態のままで吸着質用の開閉弁を閉状態から予め定めた導入期間について開状態としてマニホールドに吸着質を供給したときの導入期間終了時のマニホールドの圧力をP
Iiとして取得し、吸着質用の開閉弁を閉状態に戻した後、複数の試料管の任意の1つを測定対象試料管として、測定対象試料管用の開閉弁を閉状態から予め定めた開弁期間について開状態として測定対象試料管に収容される試料に吸着質を供給したときの開弁期間の終了時のマニホールドの圧力をP
Ii*として取得し、開弁期間終了後に測定対象試料管用の開閉弁を閉状態に戻し、測定対象試料管に対応する試料管圧力検出部が検出する圧力の時間変化を監視し、圧力低下が平衡状態となったときの測定対象試料管の内部圧力をP
i*として取得し、マニホールドの温度をT
Sとし容積をV
Sとして、測定対象試料管の温度をT
dとし死容積をV
diとして、気体定数Rを用いて、測定対象試料管の内部に導入された吸着質の導入量Δn
iを一般的には、Δn
i=(V
S/RT
S)×(P
Ii−P
Ii*)として算出し、測定対象試料管の死容積に残った吸着質残量Δn
diをΔn
di=(V
di/RT
s)×P
i*として算出し、測定対象試料管の内部の試料に吸着した吸着質の量V
iをV
i=(Δn
i−Δn
di)で求めることが好ましい。実際にはガスの非理想性を考慮したガスの実在気体状態方程式により計算することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る吸着特性測定装置において、複数の試料管について、それぞれの死容積V
diを予め求めておくことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る吸着特性測定装置において
、マニホールドの温度をT
Sとし容積をV
Sとして、測定対象試料管の温度をT
dとし死容積をV
diとして、気体定数Rを用いて、測定対象試料管の内部に導入された吸着質の導入量Δn
iを、Δn
i=(V
S/RT
S)×Σ(P
Iin−P
Iin*)として算出し、測定対象試料管の死容積に残った吸着質残量Δn
diをΔn
di=(V
di/RT
S)×P
i*として算出し、測定対象試料管の内部の試料に吸着した吸着質の量V
iをV
i=(Δn
i−Δn
di)で求めることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、吸着特性測定装置は、マニホールドに吸着質を導入する導入期間と、マニホールドから試料管に吸着質を供給する開弁期間の合計期間を繰り返し単位として、複数の試料管のそれぞれに順次吸着質を供給する。導入期間と開弁期間は吸着質を移す時間であるので、短時間で済み、各試料管に順次吸着質を供給した後、各試料管について吸着前後の圧力変化ΔPを測定する。各試料管には独立して試料管圧力検出部が設けられるので、ΔPの測定は時間がかかっても並行して行うことができる。このようにして、1台の吸着特性測定装置を用いて、1つの試料についての吸着特性測定をしながら、次の試料についての吸着特性測定を行うことができる。
【0012】
また、吸着特性測定装置は、導入期間終了時のマニホールドの圧力をP
Iiとして取得し、開弁期間終了時のマニホールドの圧力をP
Ii*として取得し、測定対象試料管について吸着による圧力低下が平衡状態となったときの圧力をP
i*として取得し、この3つの圧力から測定対象試料管の内部の試料に吸着した吸着質の量を求める。この3つの圧力の中でP
IiとP
Ii*は1つの圧力計で測定するが、短時間で取得できるので、順次直列的に処理してもあまり時間がかからない。もう1つのP
i*は長時間かかるがそれぞれの圧力計を用いるので、並列的に処理ができる。このようにして、1台の吸着特性測定装置を用いて、複数の試料についての吸着特性測定を効率的に行うことができる。
【0013】
また、吸着特性測定装置において、複数の試料管について、それぞれの死容積V
diを予め求めておくので、1台の吸着特性測定装置を用いて順次測定を行っても、各試料についての吸着特性測定の精度の向上を図ることができる。
【0014】
また吸着時、目的圧以下になった場合に、再度吸着質を導入することにより目的平衡圧に近い測定点を得ることができる。
【0015】
また、吸着量が目的吸着量許容量を超えて変動した場合は、測定点を細かく測定するために、上記ステップを飛ばし、吸着量測定点が離れることなく均等に測定できる。
【0016】
また、吸着量測定時の試料のある死容積が試料管の開閉弁を閉とする事により低減する。これにより従来の測定装置に比較し死容積を小さくすることが可能であり、それにより吸着量測定精度を向上することができる。
【0017】
複数の試料を同時に吸着特性測定ができることにより、吸着平衡に到達した試料から順次、次の測定点に移行できることによる測定全体時間の短縮ができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、吸着質として窒素ガスを述べるが、これは例示であって、これ以外の物質であってもよい。また、死容積の算出には、特許文献2のように、窒素吸着温度においても試料に吸着しないヘリウムガスを用いて行うものとするが、予め試料管の容積と試料の容積を測定し、その差容積を死容積として用いてもよい。
【0020】
以下では、連続して測定できる試料管の数を3として説明するが、これは例示であって、複数の試料管であればよく、その数を2としてもよく、4以上としてもよい。
【0021】
以下で述べる形状、寸法、材質等は例示であって、吸着特性測定装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。
【0022】
以下では、全ての図面において、一または対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、吸着特性測定装置30の構成図である。
図1には、吸着特性測定装置30の構成要素ではないが、3つの試料管10,12,14と、これらの内部に収容されている試料20,22,24が示されている。吸着特性測定装置30は、これら3つの試料管10,12,14を取り付けた後は、1つの試料についての吸着特性測定をしながら、次の試料についての吸着特性測定を並行して行うことができる機能を有する。
【0024】
吸着特性測定装置30は、3つの試料管10,12,14について吸着特性を測定するのに適した温度にするための冷媒32が満たされた冷媒容器34と、ヘリウムガス源36と、第1吸着質ガス源38と、第2吸着質ガス源40と、排気ポンプ42と、マニホールド44を含む配管部46と、測定制御部100を含んで構成される。
【0025】
3つの試料管10,12,14と3つの試料20,22,24は、吸着特性の測定処理が別個に行われることを除けば、同じ構成を有するので、試料管10と試料20に代表させて説明を続ける。
【0026】
試料管10は、一方端に端部開口を有する細長い管で、他方端である底部の内部空間が試料20を収容することができる収容部となっている試料容器である。試料管10の一方端の端部開口は、配管部46を介して、ヘリウムガス源36または第1吸着質ガス源38または第2吸着質ガス源40または排気ポンプ42と接続される。
【0027】
かかる試料管10としては、一様な外径と内径を有するガラス製の試験管が用いられる。試料管10の寸法の一例を上げると、内径1cm、長さ20cmである。測定の目的によっては、石英製の試験管、金属製の試験容器を試料管として用いてもよい。形状も測定の目的に適したものとしてよい。例えば、端部開口の部分が細く、収容部の部分が太い形状のものを用いてもよい。寸法も測定の目的に適したものとしてよい。3つの試料管10,12,14について、それぞれの形状、寸法、材質が異なってもよい。
【0028】
試料20は、吸着特性測定の対象物となる粉体である。粉体の比表面積や細孔分布等を評価するために、吸着質がどの程度吸着するかの粉体の吸着特性を測定する。試料20は、吸着特性測定の対象物であるので、測定の目的によって様々なものとなる。粉体の粒度等も様々であってよく、粉体以外の固体であってもよく、固体が有孔であってもよい。3つの試料20,22,24は、それぞれが異なるものであってもよく、同じものであってもよい。吸着質は、配管部46を介して、第1吸着質ガス源38または第2吸着質ガス源40から供給される。以下では、第1吸着質ガス源38からの窒素ガスを吸着質として説明を続ける。
【0029】
冷媒容器34は、内部空間に試料管10,12,14を配置し、その周囲を冷媒32で満たすことで、試料管10,12,14を所定の温度T
dに維持するためのデュアー瓶である。冷媒32の種類は、吸着質によって選定されるが、吸着質が窒素ガスのときは、冷媒32を液体窒素とすることがある。この場合、所定の温度T
dは77Kである。
【0030】
図1でHeと示されているヘリウムガス源36は、試料管10,12,14の死容積V
dを測定するためのヘリウムガスが充填されているガスボンベである。吸着質を窒素とした場合の死容積の測定には、試料20,22,24に窒素吸着温度においても吸着しない不活性物質を用いる必要があるが、ヘリウムガスはその目的に適したガスである。なお、死容積V
dは特許文献2で述べられている方法を用いて測定されるが、その詳細については後述する。
【0031】
第1吸着質ガス源38は、試料20,22,24に対する吸着特性を測定する対象物である吸着質を供給する吸着質供給部である。ここでは、吸着質は窒素ガスであるので、第1吸着質ガス源38は、窒素ガスボンベである。第2吸着質ガス源40は、予備の吸着質供給部であり、例えば、第1吸着質ガス源38とは異なる吸着質を供給するときに用いられる。
【0032】
排気ポンプ42は、試料管10,12,14のいずれか1とマニホールド44の内部を減圧するための排気装置である。排気ポンプ42としては、ロータリポンプを用いることができる。吸着特性測定の目的によっては、ターボ分子ポンプを用い、ロータリポンプを補助ポンプとして用いるものとしてよい。
【0033】
配管部46は、マニホールド44を介して、3つの試料管10,12,14、ヘリウムガス源36、第1吸着質ガス源38、第2吸着質ガス源40、排気ポンプ42、飽和蒸気圧管48をそれぞれ互いに接続するために設けられる複数の配管である。配管部46には、測定制御部100の制御の下で作動する複数の開閉弁54,64,74,82,86,90,92,96が設けられる。
【0034】
配管部46のうち、3つの試料管10,12,14とマニホールド44の間に設けられる配管には、それぞれ開閉弁54,64,74が接続配置される。試料管10で説明すると、試料管10の端部開口に取り付けられる取付部50を一端側とし、マニホールド44に設けられる接続ポートを他端側として、一端側と他端側の間に開閉弁54が直列に接続配置されて試料管10のための配管となる。圧力計56は、取付部50と開閉弁54の間の配管に接続され、試料管10の内部圧力P
1を検出する試料管圧力検出部である。
【0035】
同様に、試料管12の端部開口に取り付けられる取付部60とマニホールド44との間に、開閉弁64が直列に接続配置されて試料管12のための配管となる。圧力計66は、取付部60と開閉弁64の間の配管に接続され、試料管12の内部圧力P
2を検出する試料管圧力検出部である。また、試料管14の端部開口に取り付けられる取付部70とマニホールド44との間に、開閉弁74が直列に接続配置されて試料管14のための配管となる。圧力計76は、取付部70と開閉弁74の間の配管に接続され、試料管14の内部圧力P
3を検出する試料管圧力検出部である。
【0036】
配管部46のうち、ヘリウムガス源36とマニホールド44の間には、流量調節弁80と開閉弁82が直列に接続配置される。同様に、第1吸着質ガス源38とマニホールド44の間には、流量調整弁84と開閉弁86が直列に接続配置される。また、第2吸着質ガス源40とマニホールド44の間には、流量調整弁88と開閉弁90が直列に接続配置される。また、排気ポンプ42とマニホールド44との間には、開閉弁92が配置される。
【0037】
マニホールド44は、開閉弁54,64,74,82,86,90,92,96のそれぞれの一方端を互いに接続した流体管路である。圧力計94は、マニホールド44の内部圧力P
0を検出するマニホールド圧力検出部である。
図1では、マニホールド44は屈曲した管路で示されているが、開閉弁54,64,74,82,86,90,92,96の一方端が取り付けられた箱形状の容器を用いてもよい。
【0038】
マニホールド44の管路は、死容積V
diを測定するためにヘリウムガス源36からヘリウムガスを試料管10,12,14のいずれかに供給するときに、一旦ここに導入される空間として用いられる。また、マニホールド44の管路は、吸着特性を測定するために第1吸着質ガス源38から吸着質である窒素ガスを試料管10,12,14のいずれかに供給するときに、一旦ここに導入される空間として用いられる。すなわち、マニホールド44の管路の容積は、死容積の測定のためのヘリウムガス供給の際の基準容積V
Sであり、吸着特性測定のための窒素ガス供給の際の基準容積V
Sである。
【0039】
マニホールド44は、死容積の測定および吸着特性測定の際の基準容積V
Sを規定するので、マニホールド44を含む配管部46は、温度調整されたバスに収容され、所定の基準温度T
Sに維持される。温度調整が必要なのはマニホールド44と開閉弁54,64,74,82,86,90,92,96とその間を接続する配管であるので、場合によっては流量調整弁80,84,88を温度調整されるバスの外に出してもよい。
【0040】
飽和蒸気圧管48は、一方端に端部開口を有する細長い管で、他方端が底部を有する容器である。飽和蒸気圧管48の端部開口とマニホールド44との間には飽和蒸気圧管用の開閉弁96が設けられており、さらに飽和蒸気圧管48の端部開口と飽和蒸気圧管用の開閉弁96との間には飽和蒸気圧管用の圧力計98が設けられている。
【0041】
飽和蒸気圧管48は、過剰の吸着質が収容され飽和蒸気圧管48を冷媒32に浸漬したときの吸着質の飽和蒸気圧を実測するために用いられる。ここでは吸着質は窒素である。
図1では、飽和蒸気圧管48は試料管10より離れたところに配置されるが、実際は3本の試料管10、12,14に囲まれた中央部に置かれることが好適である。飽和蒸気圧管48の端部開口は配管部46を介して試料管10,12,14と、後述する第1,2吸着質ガス源38,40、排気ポンプ42と接続される。飽和蒸気圧管48は、内径2mmでその材質はステンレスとすることができる。
【0042】
測定制御部100は、配管部46の開閉弁54,64,74,82,86,90,92,96の開閉を制御し、圧力計56,66,76,94,98の検出値を用いて、吸着特性測定を行う機能を有する制御装置である。かかる測定制御部100は、適当なコンピュータで構成することができる。
【0043】
測定制御部100は、死容積算出手順102と、吸着質をマニホールド44の基準容積V
Sに導入する導入処理手順104と、基準容積V
Sに導入された吸着質を試料管10,12,14に移す供給処理手順106と、試料20,22,24について吸着量を算出する吸着量算出手順108を実行する機能を有する。
【0044】
ここでは、1つのマニホールド44を用いて、試料管10について導入処理手順104と供給処理手順106を一組として実行し、引き続いて試料管12について導入処理手順104と供給処理手順106を一組として実行し、引き続き試料管14について導入処理手順104と供給処理手順106を一組として実行する。導入処理手順104と供給処理手順106の実行は、第1吸着質ガス源38からマニホールド44への吸着質の供給、マニホールド44から試料管10,12,14への吸着質の供給であるので、短時間で終了する。試料管10,12,14へ供給された吸着質の量は、マニホールド44に設けられた1つの圧力計94が検出する圧力に基づいて行われるが、これらの圧力検出は、短時間のうちに順次行うことができる。
【0045】
これに対し、吸着量算出手順108の実行は、試料20,22,24に吸着質が十分吸着して平衡状態となるまでの時間を要するので、終了には長時間を要する。そこで、吸着量算出手順108は、試料管10用の圧力計56、試料管12用の圧力計66、試料管14用の圧力計76を用いてそれぞれ並行して実行される。このようにして、1台の吸着特性測定装置30を用いて、1つの試料についての吸着特性測定をしながら、次の試料についての吸着特性測定を並行して行うことができる。
【0046】
かかる機能は、ソフトウェアを実行することで実現できる。具体的には、多試料吸着特性測定プログラムを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実行するものとしてもよい。
【0047】
上記構成の作用、特に、測定制御部100の各機能について、
図2、
図3を用いて詳細に説明する。
図2は、吸着量測定のための動作手順を示すフローチャートである。
図3は、吸着量測定のための各開閉弁の開閉タイミングと各圧力計の検出値の変化を示すタイムチャートである。
【0048】
図2、
図3は、試料管10,12,14についての死容積V
diが算出された後の処理についてのものであるので、これらの説明の前に、死容積V
diの算出について説明する。
【0049】
まず、死容積V
diの算出のために、基準容積V
Sにヘリウムガスを導入してその圧力をP
Sとし温度をT
Sとし、基準容積V
Sに導入されたヘリウムガスを温度T
dの試料管10に導入したときの圧力P
diを求める。そしてこれらの値から、関係式P
SV
S=P
di(V
S+V
di)を用いて、死容積V
diを求めることができる。死容積V
diの算出処理は、試料管10,12,14のいずれについても同じであるので、以下では、試料管10に代表させて説明する。
【0050】
試料管10についての死容積V
d1は、開閉弁54から試料管10の容積を言う。一般的には試料管10の一部は冷媒32により低温にし、吸着質が試料20に吸着する温度に保つ。しかし、低温部分と室温部分は明確に切り分けることが出来ず、温度勾配がある。ここで言う死容積とは、マニホールド44の吸着質が試料管10に導入された時の圧力減少から計算される体積であり、吸着質が吸着しなければ圧力減少は同じとなる。すなわち、ここで言う死容積とは、もし試料管10がマニホールド44と同じ温度であったとした時の見かけの体積となる。この死容積は吸着量計算時、試料管10の温度環境を一定にすることにより、測定時の見かけの体積は同じであるとする事が出来る。
【0051】
図1において、初期状態は、試料20を内部に収容する試料管10の端部開口が取付部50に接続され、開閉弁54,64,74,82,86,90,92,96はすべて閉状態となっている。そして、冷媒容器34に冷媒32が満たされ、試料管10の温度はT
d、マニホールド44の温度はT
Sとなっている。この状態で、開閉弁54と開閉弁92が開状態とされ、排気ポンプ42が作動される。これによって、マニホールド44と、試料管10の内部は十分な減圧され真空に近い状態となる。その後、開閉弁54と開閉弁92が閉状態とされ、排気ポンプ42の作動が停止される。
【0052】
次に、開閉弁82が開状態とされ、ヘリウムガス源36からヘリウムガスがマニホールド44に導入される。適当な時期に開閉弁82が閉状態とされ、そのときのマニホールド44の圧力が圧力計94で検出される。検出された圧力をP
Sとすると、マニホールド44に導入されたヘリウムガスは、温度T
S、圧力P
Sで、その体積が基準容積V
Sである。
【0053】
次に、開閉弁54を開状態とし、圧力計56または圧力計94で試料管10およびマニホールド44の圧力を検出する。検出された圧力をP
d1とする。試料管10の温度はT
diであり、ヘリウムガスは窒素吸着温度以下においても試料20に吸着しないので、マニホールド44に導入されたヘリウムガスは、マニホールド44と試料管10にまたがって広がる。そこで、開閉弁54から試料20を内部に収容する試料管10についての死容積V
d1は、P
SV
S=P
d1(V
S+V
d1)の関係式を用いて算出される。
【0054】
死容積V
d1が算出されると、開閉弁92が開状態とされ、排気ポンプ42が作動される。これによって、マニホールド44と、試料管10の内部からヘリウムガスが外部に排出され、十分に減圧され真空に近い状態となる。その後、開閉弁54と開閉弁92が閉状態とされ、排気ポンプ42の作動が停止される。
【0055】
同様にして、試料22を内部に収容する試料管12についての死容積V
d2と、試料24を内部に収容する試料管14についての死容積V
d3が算出される。死容積V
d1、死容積V
d2、死容積V
d3は、必ずしも同じ値ではない。死容積の算出は、測定制御部100の死容積算出手順102によって実行される。死容積算出の精度を向上させるため、数回の死容積算出を行ってその平均値を用いるものとすることができる。
【0056】
死容積V
d1、死容積V
d2、死容積V
d3が算出されると、次に、吸着特性測定のための処理が
図2のフローチャート、
図3のタイムチャートに従って行われる。
【0057】
図2は、吸着特性測定のための手順を示すフローチャートで、各手順は、多試料吸着特性測定プログラムの各処理手順に対応する。
図3は、
図2に対応するタイムチャートで、横軸が時間、縦軸には、上段から下段に向かって、開閉弁86の開閉状態、開閉弁54の開閉状態、開閉弁64の開閉状態、開閉弁74の開閉状態、圧力計94が検出した圧力P
0、圧力計56が検出した圧力P
1、圧力計66が検出した圧力P
2、圧力計76が検出した圧力P
3がとられている。
【0058】
図2において、S10,S26,S28は測定対象試料管が複数の場合の繰り返し手順であることを示すものである。S10では、初期状態であることを示すために、繰り返しを計数するカウンタをi=1にセットする。このときの開閉弁54,64,74,82,86,90,92,96の状態はすべて閉状態、圧力計56,66,76,94が検出する圧力は、すべて十分に減圧され真空に近い圧力である。
【0059】
そして、試料管10について処理を始める。まず、導入処理が行われる(S12)。この処理手順は、測定制御部100の導入処理手順104によって実行される。導入処理は、開閉弁86が閉状態から開状態とされ、目標圧力到達後に再び閉状態に戻すことで行われる。
【0060】
図3では、時間t
1で開閉弁86が閉状態から開状態とされるので、このときに導入処理が開始されたことになる。開閉弁86が開状態になると、第1吸着質ガス源38から吸着質である窒素ガスがマニホールド44に導入され、マニホールド44の内部圧力が上昇する。
図3では、圧力計94が検出する圧力P
0が真空に近い圧力からP
I11に上昇したことが示される。その後、時間t
2で開閉弁86が閉状態に戻される。この時間t
2が導入期間の終了(S14)である。したがって、時間t
1から時間t
2の間の(t
2−t
1)の期間が導入期間である。導入期間において、試料管10に供給するための窒素ガスが、一旦、基準容積V
Sを有するマニホールド44に導入される。開閉弁86が開状態から閉状態とされた直後は圧力が揺らぐので数秒の待機時間を経て圧力計94によって圧力を検出させることが好ましい。導入期間において検出されたマニホールド44の内部圧力P
I11は測定制御部100に伝送されて取得される(S16)。
【0061】
時間t
2の後、適当な待ち時間をおいて、供給処理が行われる(S18)。この処理手順は、測定制御部100の供給処理手順106によって実行される。供給処理は、マニホールド44に導入された窒素ガスを試料管10に移す処理で、開閉弁54が閉状態から開状態とされ、任意に定めた開弁時間の経過後に再び閉状態に戻すことで行われる。
【0062】
図3では、時間t
2から適当な時間が経過した時間t
3において、開閉弁54が閉状態から開く状態とされるので、このときに供給処理が開始されたことになる。開閉弁54が開状態になると、マニホールド44の内部に密閉状態とされている窒素ガスがマニホールド44から試料管10に移され、マニホールド44の内部圧力が低下する。それと共に試料管12の内部圧力が上昇する。
図3では、圧力計94が検出する圧力P
0がP
I11から低下し、圧力計56が検出する圧力P
1が真空に近い圧力から上昇する様子が示される。その後、時間t
4で開閉弁54が閉状態に戻される。この時間t
4が開弁期間の終了(S20)である。したがって、時間t
3から時間t
4の間の(t
4−t
3)の期間が開弁期間である。
【0063】
開弁期間において、マニホールド44に導入された窒素ガスが試料管10に移されるが、マニホールド44の内部圧力が元の真空に近い圧力までは下がらないので、マニホールド44に導入された窒素ガスの全部が試料管10に移ったわけではない。マニホールド44に残った窒素ガスの量を示すものとして、開弁期間の終了時点のマニホールド44の内部圧力P
I1*が圧力計94によって検出され、測定制御部100に伝送されて取得される(S21)。
【0064】
開弁期間が終了すると、開閉弁54が閉状態となるので、試料管10の内部は密閉状態となり、試料20に対し窒素ガスの吸着が始まる。窒素ガスの吸着と共に試料管10の内部圧力は低下を始めるが、吸着は時間をかけてゆっくりと進むので、その圧力変化は緩やかである。試料20に窒素ガスの吸着が十分に行われて試料管10の内部圧力が平衡状態になるには長時間を有し、平衡状態になったか否かは、継続的な圧力変化の監視が必要である。そこで、開弁期間が終了すると、圧力計56が検出する圧力P
1の監視が開始する(S22)。検出された圧力P
1は測定制御部100に伝送されて取得され、適当な記憶装置に逐時的に記憶される。圧力P
1の取得間隔は、試料20の特性に応じてソフトウェアによって変更が可能である。試料20が吸着速度の大きい物質であるときは取得間隔を短くし、吸着速度が小さい物質であるときは取得間隔を長くする。
【0065】
また、吸着目的平衡圧P
tより圧力計56の検出した圧力P
1が著しく低いか否かが判断される(S24)。著しく低い場合には、吸着平衡を待たずに再度導入処理(S12)からP
I取得(S16)までの処理を繰り返し、併せて供給処理(S18)からPi監視(S22)までを繰り返して行い、測定平衡圧を吸着目的平衡圧P
tに近づけることが出来る。
【0066】
図3においては、導入処理をP
I11*からP
I12*、P
I13*と繰り返して行い、併せて開閉弁54の開閉を繰り返して試料管10の内部圧力P
1を監視することが示されている。この操作により測定点を希望するあるいは均等に取得することが可能となりかつ測定時間を短縮することが可能である。また同様に、吸着目的量V
tより試料20についての吸着量V
iの吸着量変化が大きいか否かの判断がなされ(S23)、大きいと判断がなされた場合には前述の処理(S24)をスキップし、均等な吸着量測定間隔を保つことが可能である。なお、
図3では、試料管10の試料20に対して吸着質導入処理を3回繰り返すことで吸着目的平衡圧P
tに到達し、試料管12の試料22と試料管14の試料24とに対しては吸着質導入処理を1回行うことで吸着目的平衡圧P
tに到達することが示される。
【0067】
P
1の監視は、密閉状態の試料管10に設けられる圧力計56が検出する圧力P
1について行われるので、これとは無関係に配管部46における開閉弁54以外の開閉弁の開閉を実行することができる。
【0068】
そこで、測定対象試料管が複数の場合には、繰り返しを計数するカウンタの計数値iを1つ繰り上げてi=i+1にセットする(S26)。S10でi=1であったので、i=i+1=2となる。次に、新しいiが繰り返し数の限度であるNを超えるか否かが判断される(S28)。ここでは、3つの試料管10,12,14について吸着特性を測定するので、N=3である。i=2であるので、S28の判断は否定され、S12に戻る。
【0069】
i=i+1=2となってS12に戻ると、今度は試料管12について上記で述べた処理を繰り返す。
図3で説明すると、時間t
12で試料管10について導入処理と供給処理が終了したので、時間t
12から適当な時間が経過した時間t
13から試料管12についての導入処理が開始される。
【0070】
すなわち、時間t
13で開閉弁86が閉状態から開状態とされ、第1吸着質ガス源38からマニホールド44に窒素ガスが導入される。これが試料管12についての導入処理の開始である(S12)。時間t
14で導入期間が終了(S14)し、時間t
14で開閉弁86が閉状態に戻され、圧力計94が検出する圧力P
I21が取得されて測定制御部100に伝送される(S16)。試料管12のための導入期間(t
14−t
13)は、試料管10について行われた導入期間(t
2−t
1)と同じとしてもよく、異なっても構わない。試料管12のときの圧力計94が検出する圧力P
I2は、試料管10のときの圧力計94が検出する圧力P
I1と必ずしも同じではない。
【0071】
時間t
14から適当な時間が経過した時間t
15で開閉弁64が閉状態から開状態とされ、マニホールド44から窒素ガスが試料管12に移される。これが試料管12についての供給処理の開始である(S18)。時間t
16で開弁期間が終了(S20)し、開閉弁64が閉状態に戻され、圧力計94が検出する圧力P
I21*が取得されて測定制御部100に伝送される(S22)。試料管12のための開弁期間(t
16−t
15)は、試料管10について行われた開弁期間(t
4−t
3)と同じとしてもよく、異なっても構わない。試料管12のときの圧力計94が検出する圧力P
I21*は、試料管10のときの圧力計94が検出する圧力P
I11*と必ずしも同じ値ではない。そして、試料管12の圧力計66が検出する圧力P
2の監視が開始する(S24)。
【0072】
そこで、繰り返しを計数するカウンタの計数値iを1つ繰り上げてi=i+1=3にセットし(S26)、新しいi=3が繰り返し数の限度であるN=3を超えるか否かが判断される(S28)。S28の判断は否定されるので、再びS12に戻る。
【0073】
i=i+1=3となってS12に戻ると、今度は試料管14について上記で述べた処理を繰り返す。
図3で説明すると、時間t
16で試料管12について導入処理と供給処理が終了したので、時間t
16から適当な時間が経過した時間t
17から試料管14についての導入処理が開始される。
【0074】
すなわち、時間t
17で開閉弁86が閉状態から開状態とされ、第1吸着質ガス源38からマニホールド44に窒素ガスが導入される。これが試料管14についての導入処理の開始である(S12)。時間t
18で導入期間が終了(S14)し、開閉弁86が閉状態に戻され、圧力計94が検出する圧力P
I31*が取得されて測定制御部100に伝送される(S16)。試料管14のための導入期間(t
18−t
17)は、試料管10について行われた導入期間(t
2−t
1)、試料管12について行われた導入期間(t
14−t
13)と同じとしてもよく、異なっても構わない。試料管14のときの圧力計94が検出する圧力P
I3は、試料管10,12のときの圧力計94が検出する圧力P
I1,P
I2と必ずしも同じ値ではない。
【0075】
時間t
18から適当な時間が経過した時間t
19で開閉弁74が閉状態から開状態とされ、マニホールド44から窒素ガスが試料管14に移される。これが試料管14についての供給処理の開始である(S18)。時間t
20で開弁期間が終了(S20)し、開閉弁74が閉状態に戻され、圧力計94が検出する圧力P
I31*が取得されて測定制御部100に伝送される(S22)。試料管14のための開弁期間(t
20−t
19)は、試料管10について行われた開弁期間(t
4−t
3)、試料管12について行われた開弁期間(t
16−t
15)と同じとしてもよく、異なっても構わない。試料管14のときの圧力計94が検出する圧力P
I31*は、試料管10,12のときの圧力計94が検出する圧力P
I11*,P
I21*と必ずしも同じ値ではない。そして、試料管14の圧力計76が検出する圧力P
3の監視が開始する(S24)。
【0076】
そこで、繰り返しを計数するカウンタの計数値iを1つ繰り上げてi=i+1=4にセットし(S26)、新しいi=4が繰り返し数の限度であるN=3を超えるか否かが判断される(S28)。S28の判断は肯定されるので、S12には戻らず、マニホールド44に対する吸着質導入処理は終了する。
【0077】
時間t
20からは試料管10,12,14の圧力計56,66,76の変化を監視し、圧力変化が一定の基準値以下、すなわち吸着平衡に達した時(S29)、平衡圧力P
1*,P
2*,P
3*が取得され(S30)、吸着量が計算される(S36)。
【0078】
このように、1つのマニホールド44を用いて、導入期間と開弁期間の合計期間を繰り返し単位として、複数の試料管のそれぞれに順次吸着質を供給することが行われる。
【0079】
2点目以降は、吸着平衡状態になったものから逐次窒素ガス導入処理に入っていくことが好ましい。これは測定が必ずしも試料管10,12,14の順に測定しなくてもよく、平衡終了した試料から逐次、次の測定点に移行し全体測定時間を短縮することが可能である。
【0080】
この間に、各試料管10,12,14については、それぞれの圧力計56,66,76が検出する圧力P
1,P
2,P
3の逐時的監視が継続される。そして、試料20,22,24に対する窒素ガスの吸着が十分に行われたか否かについて、圧力P
1,P
2,P
3の低下が平衡状態に達したか否かに基づいて判断される。
【0081】
圧力P
1,P
2,P
3の逐時的監視は、圧力計56,66,76が検出する圧力P
1,P
2,P
3を予め定めた取得間隔で取得することで行われる。圧力P
1,P
2,P
3の取得は、同じタイミングで3つの圧力P
1,P
2,P
3を同時に取得することができる。例えば、取得間隔を10分として、10分経過毎に、圧力P
1,P
2,P
3を同時に取得する。試料20,22,24の吸着特性がかなり異なるときには、P
1,P
2,P
3の取得間隔を相互に異なるものとできる。例えば、吸着速度が大きい試料に対して圧力の取得間隔を短くし、吸着速度が小さい試料に対しては圧力の取得間隔を長くする。
【0082】
圧力P
1,P
2,P
3の低下が平衡状態に達したか否か(S29)は、圧力の取得間隔における圧力値の変化が所定範囲以下となったか否かで判断することができる。例えば、圧力の取得間隔を判断間隔として、取得間隔が10分の場合、その10分間における圧力の変化率が1%以下となったときを平衡状態とすることができる。平衡状態に達したか否かに用いられる判断間隔および圧力の変化率は一例であって、試料20,22,24の特性に応じ、適宜変更することがよい。
【0083】
図3では、試料管10の試料20については、時間t
21において、圧力計56が検出する圧力P
1の低下が平衡状態となってP
1*となったことが示される。同様に、試料管12の試料22については、時間t
22において、圧力計66が検出する圧力P
2の低下が平衡状態となってP
2*となったことが示される。試料管14の試料24については、時間t
23において、圧力計76が検出する圧力P
3の低下が平衡状態となってP
3*となったことが示される。なお、
図3では、時間t
21、時間t
22、時間t
23がこの順序となって、試料20の吸着特性測定が一番先に終了し、次に試料22の吸着特性測定が終了し、最後に試料24の吸着特性測定が終了することになっているが、試料20,22,24の特性によっては、この順序は前後することになる。
【0084】
図2に戻り、平衡状態となった圧力P
1*,P
2*,P
3*は測定制御部100に伝送されて取得される(S30)。ここで、S16で取得されたP
I1,P
I2,P
I3、S21で取得されたP
I1*,P
I2*,P
I3*、S30で取得されたP
1*,P
2*,P
3*に基づいて、試料20,22,24の吸着量が算出される。なお、P
Iin,P
Iin*におけるnの値は導入及び供給処理の繰り返し回数を示すものであって、ここでは、P
I11,P
I12,P
I13をP
I1として示した。また、P
I21をP
I2、P
I31をP
I3とした。
【0085】
試料20,22,24の吸着量の算出手順はいずれも同じであるので、試料20に代表させて説明する。マニホールド44の温度をT
Sとし容積をV
Sとして、試料20が収容されている試料管10の温度をT
dとし死容積をV
d1として、気体定数Rを用いて、試料管10の内部に導入された吸着質の導入量Δn
1を、Δn
1=(V
S/RT
S)×(P
I1−P
I1*)として算出する(S32)。次に、試料管10の死容積V
d1に残った吸着質残量Δn
d1をΔn
d1=(V
d1/RT
d)×P
1*として算出する(S34)。
【0086】
また、吸着平衡圧を任意の圧力にて測定する為に、複数回の窒素ガス導入を行った場合は、マニホールド44の温度をT
Sとし容積をV
Sとして、試料20が収容されている試料管10の温度をT
dとし死容積をV
d1として、気体定数Rを用いて、試料管10の内部に導入された窒素ガスの導入量Δn
1を、Δn
1=(V
S/RT
S)×Σ(P
I1n−P
I1n*)として算出し、試料管10の死容積に残った窒素ガス残量Δn
d1をΔn
d1=(V
d1/RT
S)×P
1*として算出し、試料管10の内部の試料20に吸着した窒素ガスの量V
1をV
1=(Δn
1−Δn
d1)として算出する。
【0087】
このようにして、試料管10の内部に導入された窒素ガスの導入量Δn
1と、試料管10の死容積V
d1に残った窒素ガス残量Δn
d1が求まると、試料管10の内部の試料20に吸着した窒素ガスの量V
1は、V
1=(Δn
1−Δn
d1)で算出される(S36)。この手順は、測定制御部100の吸着量算出手順108によって実行される。
【0088】
試料22の吸着量についても、試料管12の死容積V
d2、P
I2、P
I2*、P
2*を用いて同様に算出される。試料24の吸着量についても、試料管14の死容積V
d3、P
I3、P
I3*、P
3*を用いて同様に算出される。死容積V
diは、試料20を収容した試料管10、試料22を収容した試料管12、試料24を収容した試料管14で必ずしも同じ値ではなく、P
IiとP
Ii*も試料管10,12,14について必ずしも同じ値ではない。
【0089】
このように、吸着特性測定装置30は、マニホールド44に吸着質を導入する導入期間と、マニホールド44から試料管に吸着質を供給する開弁期間の合計期間を繰り返し単位として、各試料管10,12,14のそれぞれに順次吸着質を供給する。導入期間と開弁期間は吸着質を移す時間であるので、短時間で済み、各試料管10,12,14に順次吸着質を供給した後、各試料管10,12,14について吸着前後の圧力変化ΔPを測定する。各試料管10,12,14には独立して圧力計56,66,76が設けられるので、ΔPの測定は時間がかかっても並行して行える。このようにして、1台の吸着特性測定装置30を用いて、1つの試料についての吸着特性測定をしながら、次の試料についての吸着特性測定を行うことができる。