【実施例】
【0015】
図1〜
図5にこの発明の実施例による誘導加熱装置の各部の構成を示す。
【0016】
これらの図において、10は誘導加熱コイルであり、リッツ線等のコイル導体11を円筒状に水平または螺旋状に巻回して構成している。円筒状に巻回されたコイル導体11は、例えばエンジニアリングプラスチック等の強度に優れ、非磁性の耐熱性絶縁材で形成した平角棒状の複数のコイル支持部材16a、16bにより支持される。各支持部材16a、16bは、誘導加熱コイル10と同心の円周上に等間隔で長さ(高さ)方向を垂直(縦)にして配置してコイル支持部16を構成する。円周上に配置された複数の支持部材には、半径方向の幅WをWaとした幅の広い支持部材16aと、幅WをWbとした幅の狭い支持部材16bとがあり、これらの幅の広い支持部材16aと幅の狭い支持部材16bとが、交互に配置され、全ての支持部材の外周端の位置が同一円周上にそろえられる(
図1、
図5参照)。
【0017】
また、各支持部材16a、16bの内周端側には、複数のコイル導体11を保持するための複数の保持溝16c、16dが設けられている。コイル導体11の支持位置が同じになるように、幅の広い支持部材16aの保持溝16cは、内周端面から深く形成され、幅の狭い支持部材16bの保持持溝16d内周端面から浅く形成される。コイル導体11は、これらの保持溝16c、16dの最奥の周壁に接する位置まで押しんで保持される。このように支持部材16a,16bの保持溝16c、16dにコイル導体11を挿入することによって支持された誘導加熱コイル10は、コイル導体11の間隔が、高さ方向の上下端部で狭く、中間部で広くなるように巻回されている(
図4参照)。
【0018】
ここで、コイル導体11を螺旋状に巻回すると各支持部材16a、16bの保持溝16c、16dはコイル導体11に合わせて高さ(垂直)方向に間隔を変えて設けられるが、コイル導体11を水平巻回することにより、各支持部材16a、16bはそれぞれ保持溝16c、16dの高さ位置が同一寸法(同一高さ)となり、支持部材16a、16bの加工コストを低減することができる。
【0019】
コイル導体11を支持する複数の支持部材16a、16bは、上端と下端をこの支持部材と同様の非磁性の耐熱性絶縁材で形成された円環状の端板17a,17bに嵌合結合して、相互に連結され、一体化される(
図4参照)。
【0020】
さらに、誘導加熱コイル10の外周側には、各支持部材16a,16bの間に、例えばフェライトによりタイル状の小片に刑された複数の磁気遮蔽板18を所定の間隔で嵌装し、接着剤等で接着することにより支持部材16a、16bにより支持される。各列の磁気遮蔽板18は、隣接する列の磁気遮蔽板18と互い違いに配列され、全体としては、
図2に示すように千鳥格子状の配列となる。なお、
図2においては、空所と磁気遮蔽板18との区別を明瞭にするため、磁気遮蔽板18には、断面を示ものではないが、ハッチングを付している。
【0021】
磁気遮蔽板18は、このように誘導加熱コイル10の外周に千鳥格子状に配置されるので、
図2示すように上下端部で、磁気遮蔽板18の欠けている部分が生じる。このように誘導加熱コイル10の上下端部において磁気遮蔽板18の欠けた部分の上の上、下端板17a、17b上には、フェライト等で形成された磁気遮蔽板19を配設する。これにより誘導加熱コイル10の上下端部における磁束の分布をより均一化するとともに、磁束の外部への漏洩を低減することができる。また、コイル導体11を水平巻回すれば、コイルの上下端の損失を低減できる。
【0022】
誘導加熱コイル10の内周側には、各幅の広い支持部材16aの間にそれぞれ、耐熱性の例えばガラス繊維等の繊維材で形成した柔軟性を有する袋体の中に、細粒状の無機断熱材を充填して構成した比較的変形の自由な非磁性の断熱部材21を挟み込んで固定することにより断熱壁を形成する。これにより、誘導加熱コイル10の内部が断熱された加熱処理空間20となる(
図5参照)。断熱部材21を断熱性の繊維材製の袋体に細粒状の無機断熱材を充填して構成するようにすると、断熱部材21の変形の自由度が高められるため、コイル支持部材間に挟み込む作業が容易となる。
【0023】
このように構成されたこの発明の誘導加熱コイル10を備えた誘導加熱装置においては、誘導加熱コイル10内の加熱処理空間20内に被加熱物である鋳鍛造用金型等の金属部品を挿入、配置し、接続端子13、14を高周波電源に接続して、誘導加熱コイル10に高周波電流を供給することにより、加熱処理空間20内の金属部品に誘導電流を流して加熱することができる。
【0024】
金属部品は誘導電流で加熱されるため、全体を均一に、かつ効率よく加熱することができる。そして、加熱処理空間20は、外周が、断熱部材21と支持部材16により断熱されているため、この空間からの外部への放熱を抑えることができるので、熱効率を高めることができる。
【0025】
ここで、誘導加熱コイル10内の加熱処理空間20内にセットされる被加熱物である金型等の金属部品が複数に分割された構造(例えば2つ割構造)で構成される場合には、2つの金属部品をわずかに離して配置するようにする。このように2つの金属部品間に隙間を設けることにより、それぞれの金属部品に誘導電流が流れ、2つの金属部品の全体を均一な温度に加熱することができる。なお、2つの金属部品を接触させて配置した場合には、接触している部分に誘導電流が集中し、スパークして溶着する等のトラブルが発生する可能性がある。
【0026】
また、この発明の誘導加熱コイル10は、耐火セメントで包み込まれることなく、複数の耐熱絶縁材により形成した支持部材16により支持され、内周側の各支持部材間には、それぞれ無機断熱材を耐熱繊維材で構成した柔軟な袋体に詰めて構成した断熱部材を嵌装し、外周側は各支持部材間にはタイル状の磁気遮蔽板を嵌装して構成され、コイル支持部材が誘導加熱コイルの支持だけでなく、断熱部、磁気遮蔽部の支持を兼ね合わせるので、誘導加熱装置を小形、軽量に構成することができる。このため、耐火セメントで誘導加熱コイルを包み込んで構成した従来の誘導加熱装置に比して重量を大幅に軽減でき、取扱いが容易となる。
【0027】
さらに、誘導加熱コイル10から外部へ漏洩する磁束は、外周部に配置した磁気遮蔽板18,19によって吸収され、外部への漏洩磁束を低減することができる。この磁気遮蔽板18は千鳥格子状に配置されているので、誘導加熱コイル10の外周には多くの空所が形成され誘導加熱コイル10を形成するコイル導体11が直接外気に触れて冷却されるので、誘導加熱コイルの冷却効果が高められ、誘導加熱コルの容量を増大することができる。
【0028】
前記のこの発明の実施例においては、コイル導体を支持する平角棒状のコイル支持部材16a、16bの内周面側にコイル導体を支持する支持溝16c、16d設けているが、これは外周面に設け、コイル導体11を内周側から支持することもできる。
【0029】
また、上記実施例では、誘導加熱コイル10は、円筒状に巻回されたコイル導体11を例にして説明したが、四角筒状等の多角形の筒状に巻回されたコイル導体により誘導加熱コイル10を構成するようにしてもよい。