特許第6037797号(P6037797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037797
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/36 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   H05B6/36 A
   H05B6/36 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-258563(P2012-258563)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-107091(P2014-107091A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基裕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 満
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭52−031449(JP,Y1)
【文献】 米国特許第05197081(US,A)
【文献】 実開昭59−074696(JP,U)
【文献】 実開平06−062499(JP,U)
【文献】 特開平11−309587(JP,A)
【文献】 特開平11−219778(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102661006(CN,A)
【文献】 特開2002−361353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状にコイル導体を巻回して構成された誘導加熱コイルと、耐熱性の絶縁材で形成された複数の棒状の支持部材を、周上に等間隔で長さ方向を垂直にして配置して構成したコイル支持部とを備え、前記誘導加熱コイルを前記コイル支持部により支持するとともに、前記誘導加熱コイルの内側において前記コイル支持部の支持部材間に、耐熱繊維材で形成された柔軟性を有する袋体に細粒状の無機断熱材を詰め込んで変形の自由な構成にした耐熱性断熱材を挟み込んで断熱部を形成したことを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
前記コイル支持部の各持部材の内外方向の幅を1つ置きに内側へ広くし、この幅を広くした支持部材の間に前記耐熱断熱材を挟み込んで断熱部を形成することを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記誘導加熱コイルの外側に前記コイル支持部の支持部材間に磁気遮蔽板を挟み込んで磁気遮蔽部を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記磁気遮蔽板としてタイル状の小片の磁気遮蔽板を用い、この小片の磁気遮蔽板を、前記コイル支持部の各支持部材の間に間隔を置いて1列に配置し、各列の磁気遮蔽板を互い違いに配列して全体を千鳥格子状に配列したことを特徴とする請求項に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記コイル支持部によって支持されたコイル導体の間隔が誘導加熱コイルの上下端部において狭くなり、中間部において広くなるようにコイル導体を巻回したことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
前記誘導加熱コイルの内周側に配置される被加熱物である金属部品が複数に分割された構造の場合、前記複数の金属部品はそれぞれ隙間を設けて配置することを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属部品や鋳鍛造用の金型等を誘導加熱により加熱するための誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品の、表面の改質や熱歪の除去のための加熱および鋳鍛造用金型の予熱のための加熱は、一般に、これらの被加熱物をガス燃焼炉に入れて行なわれている。しかし、このようなガス燃焼炉による加熱は、高温空気の流れが均一でなく、金型等の金属部品の全体を均一に加熱することが困難であること、加熱時間が長いことおよび加熱効率が悪いこと等の問題がある。
【0003】
これに対して、特許文献1および2に示されるように、鋳鍛造用金型のような金属部品の周囲にこれを取り囲む誘導加熱コイルを配置し、この誘導加熱コイルに高周波電流を通電して金属部品を誘導加熱するようにすれば、金型等の金属部品の全体を均一な温度に加熱することができるとともに、効率よく加熱することができるので、このような問題を解決することができる。
【0004】
このような金型等の金属部品を加熱に使用する誘導加熱装置においては図6に示すように、円筒状に巻回したコイル導体11を耐熱セメント製の円筒状の支持体12に埋め込んで構成した誘導加熱コイルが従来から使用されている。なお、13,14はコイル導体を高周波電源に接続するための接続端子である。この装置によれば、誘導加熱コイル10の中空の空所内に金型などの金属部品を入れて、誘導加熱するので、金属部品の全体を短時間で、均一に加熱することができる。しかしながら、この構造では、コイル導体11を耐熱セメントで構成した支持体12で保持するので、重量が重くなり、取扱いが不便となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05-076978号公報
【特許文献2】特開2002-361353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、前記の従来装置における問題を解決するために、誘導加熱コイルの支持構造を改良して、誘導加熱コイルの重量が軽量で、取扱いが容易であり、かつ、周囲への漏れ磁束を低減することのできる誘導加熱装置を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、この発明は、筒状にコイル導体を巻回して構成された誘導加熱コイルと、耐熱性の絶縁材で形成された複数の棒状の支持部材を、周上に等間隔で長さ方向を垂直にして配置して構成したコイル支持部とを備え、前記誘導加熱コイルを前記コイル支持部により支持するとともに、前記誘導加熱コイルの内側において前記コイル支持部の支持部材間に、耐熱繊維材で形成された柔軟性を有する袋体に細粒状の無機断熱材を詰め込んで変形の自由な構成にした耐熱性断熱材を挟み込んで断熱部を形成したことを特徴とする。
【0008】
この発明においては、コイル支持部の各持部材の内外方向の幅を1つ置きに内側へ広くし、この幅を広くした支持部材の間に前記耐熱断熱材を挟み込んで断熱部を形成することができる。
【0009】
また、この発明においては、前記誘導加熱コイルの外側に前記コイル支持部の支持部材間に磁気遮蔽板を挟み込んで磁気遮蔽部を形成することができ、前記磁気遮蔽板は、タイル状の小片の磁気遮蔽板を互いに間隔を置いて1列に配列し、各列の配列を互い違いとして全体が千鳥格子状の配列となるようにすることができる。
【0010】
さらに、前記誘導加熱コイルは、誘導加熱コイル内の磁束部分布を均一化するために、コイル導体の間隔が誘導加熱コイルの上下両端部において狭くなるように巻回すのがよい。
【0011】
さらにまた、前記誘導加熱コイルの内側に配置される被加熱物である金属部品が複数に分割された構造の場合、前記複数の金属部品はそれぞれ隙間を設けて配置するのがよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、耐熱性の絶縁材で形成された複数の棒状の支持部材により誘導加熱コイルを支持して、誘導加熱コイルの内側に断熱部を形成するので、誘導加熱装置の重量が軽量となり取扱いが容易となるとともに、誘導加熱コイルの外周側で前記支持部材間に磁気遮蔽板を挟み込んで磁気遮蔽部を形成することにより、周囲への漏れ磁束を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施例による誘導加熱装置の平面図。
図2】同正面図。
図3図1におけるIII‐III線に沿う縦断面図。
図4図1におけるIV−IV線に沿う縦断面図。
図5図3におけるV−V線に沿う横断面図。
図6】従来の誘導加熱装置の誘導加熱コイルの断面を含む斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【実施例】
【0015】
図1図5にこの発明の実施例による誘導加熱装置の各部の構成を示す。
【0016】
これらの図において、10は誘導加熱コイルであり、リッツ線等のコイル導体11を円筒状に水平または螺旋状に巻回して構成している。円筒状に巻回されたコイル導体11は、例えばエンジニアリングプラスチック等の強度に優れ、非磁性の耐熱性絶縁材で形成した平角棒状の複数のコイル支持部材16a、16bにより支持される。各支持部材16a、16bは、誘導加熱コイル10と同心の円周上に等間隔で長さ(高さ)方向を垂直(縦)にして配置してコイル支持部16を構成する。円周上に配置された複数の支持部材には、半径方向の幅WをWaとした幅の広い支持部材16aと、幅WをWbとした幅の狭い支持部材16bとがあり、これらの幅の広い支持部材16aと幅の狭い支持部材16bとが、交互に配置され、全ての支持部材の外周端の位置が同一円周上にそろえられる(図1図5参照)。
【0017】
また、各支持部材16a、16bの内周端側には、複数のコイル導体11を保持するための複数の保持溝16c、16dが設けられている。コイル導体11の支持位置が同じになるように、幅の広い支持部材16aの保持溝16cは、内周端面から深く形成され、幅の狭い支持部材16bの保持持溝16d内周端面から浅く形成される。コイル導体11は、これらの保持溝16c、16dの最奥の周壁に接する位置まで押しんで保持される。このように支持部材16a,16bの保持溝16c、16dにコイル導体11を挿入することによって支持された誘導加熱コイル10は、コイル導体11の間隔が、高さ方向の上下端部で狭く、中間部で広くなるように巻回されている(図4参照)。
【0018】
ここで、コイル導体11を螺旋状に巻回すると各支持部材16a、16bの保持溝16c、16dはコイル導体11に合わせて高さ(垂直)方向に間隔を変えて設けられるが、コイル導体11を水平巻回することにより、各支持部材16a、16bはそれぞれ保持溝16c、16dの高さ位置が同一寸法(同一高さ)となり、支持部材16a、16bの加工コストを低減することができる。
【0019】
コイル導体11を支持する複数の支持部材16a、16bは、上端と下端をこの支持部材と同様の非磁性の耐熱性絶縁材で形成された円環状の端板17a,17bに嵌合結合して、相互に連結され、一体化される(図4参照)。
【0020】
さらに、誘導加熱コイル10の外周側には、各支持部材16a,16bの間に、例えばフェライトによりタイル状の小片に刑された複数の磁気遮蔽板18を所定の間隔で嵌装し、接着剤等で接着することにより支持部材16a、16bにより支持される。各列の磁気遮蔽板18は、隣接する列の磁気遮蔽板18と互い違いに配列され、全体としては、図2に示すように千鳥格子状の配列となる。なお、図2においては、空所と磁気遮蔽板18との区別を明瞭にするため、磁気遮蔽板18には、断面を示ものではないが、ハッチングを付している。
【0021】
磁気遮蔽板18は、このように誘導加熱コイル10の外周に千鳥格子状に配置されるので、図2示すように上下端部で、磁気遮蔽板18の欠けている部分が生じる。このように誘導加熱コイル10の上下端部において磁気遮蔽板18の欠けた部分の上の上、下端板17a、17b上には、フェライト等で形成された磁気遮蔽板19を配設する。これにより誘導加熱コイル10の上下端部における磁束の分布をより均一化するとともに、磁束の外部への漏洩を低減することができる。また、コイル導体11を水平巻回すれば、コイルの上下端の損失を低減できる。
【0022】
誘導加熱コイル10の内周側には、各幅の広い支持部材16aの間にそれぞれ、耐熱性の例えばガラス繊維等の繊維材で形成した柔軟性を有する袋体の中に、細粒状の無機断熱材を充填して構成した比較的変形の自由な非磁性の断熱部材21を挟み込んで固定することにより断熱壁を形成する。これにより、誘導加熱コイル10の内部が断熱された加熱処理空間20となる(図5参照)。断熱部材21を断熱性の繊維材製の袋体に細粒状の無機断熱材を充填して構成するようにすると、断熱部材21の変形の自由度が高められるため、コイル支持部材間に挟み込む作業が容易となる。
【0023】
このように構成されたこの発明の誘導加熱コイル10を備えた誘導加熱装置においては、誘導加熱コイル10内の加熱処理空間20内に被加熱物である鋳鍛造用金型等の金属部品を挿入、配置し、接続端子13、14を高周波電源に接続して、誘導加熱コイル10に高周波電流を供給することにより、加熱処理空間20内の金属部品に誘導電流を流して加熱することができる。
【0024】
金属部品は誘導電流で加熱されるため、全体を均一に、かつ効率よく加熱することができる。そして、加熱処理空間20は、外周が、断熱部材21と支持部材16により断熱されているため、この空間からの外部への放熱を抑えることができるので、熱効率を高めることができる。
【0025】
ここで、誘導加熱コイル10内の加熱処理空間20内にセットされる被加熱物である金型等の金属部品が複数に分割された構造(例えば2つ割構造)で構成される場合には、2つの金属部品をわずかに離して配置するようにする。このように2つの金属部品間に隙間を設けることにより、それぞれの金属部品に誘導電流が流れ、2つの金属部品の全体を均一な温度に加熱することができる。なお、2つの金属部品を接触させて配置した場合には、接触している部分に誘導電流が集中し、スパークして溶着する等のトラブルが発生する可能性がある。
【0026】
また、この発明の誘導加熱コイル10は、耐火セメントで包み込まれることなく、複数の耐熱絶縁材により形成した支持部材16により支持され、内周側の各支持部材間には、それぞれ無機断熱材を耐熱繊維材で構成した柔軟な袋体に詰めて構成した断熱部材を嵌装し、外周側は各支持部材間にはタイル状の磁気遮蔽板を嵌装して構成され、コイル支持部材が誘導加熱コイルの支持だけでなく、断熱部、磁気遮蔽部の支持を兼ね合わせるので、誘導加熱装置を小形、軽量に構成することができる。このため、耐火セメントで誘導加熱コイルを包み込んで構成した従来の誘導加熱装置に比して重量を大幅に軽減でき、取扱いが容易となる。
【0027】
さらに、誘導加熱コイル10から外部へ漏洩する磁束は、外周部に配置した磁気遮蔽板18,19によって吸収され、外部への漏洩磁束を低減することができる。この磁気遮蔽板18は千鳥格子状に配置されているので、誘導加熱コイル10の外周には多くの空所が形成され誘導加熱コイル10を形成するコイル導体11が直接外気に触れて冷却されるので、誘導加熱コイルの冷却効果が高められ、誘導加熱コルの容量を増大することができる。
【0028】
前記のこの発明の実施例においては、コイル導体を支持する平角棒状のコイル支持部材16a、16bの内周面側にコイル導体を支持する支持溝16c、16d設けているが、これは外周面に設け、コイル導体11を内周側から支持することもできる。
【0029】
また、上記実施例では、誘導加熱コイル10は、円筒状に巻回されたコイル導体11を例にして説明したが、四角筒状等の多角形の筒状に巻回されたコイル導体により誘導加熱コイル10を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10:誘導加熱コイル
11:コイル導体
13、14:接続端子
16(16a、16b):コイル支持部材
18、19:磁気遮蔽板
20:加熱処理空間
21:断熱部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6