特許第6037807号(P6037807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037807
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】植物成長促進剤
(51)【国際特許分類】
   C05B 17/00 20060101AFI20161128BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20161128BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20161128BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20161128BHJP
   C05C 11/00 20060101ALI20161128BHJP
   C05D 1/00 20060101ALI20161128BHJP
   C05D 9/00 20060101ALI20161128BHJP
   C01B 33/141 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   C05B17/00
   A01N25/04 102
   A01N59/00 Z
   A01P21/00
   C05C11/00
   C05D1/00
   C05D9/00
   C01B33/141
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-266025(P2012-266025)
(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-111512(P2014-111512A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】西田 広泰
(72)【発明者】
【氏名】小松 通郎
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−081317(JP,A)
【文献】 特開2009−137806(JP,A)
【文献】 特開2007−144417(JP,A)
【文献】 特開2007−216109(JP,A)
【文献】 特許第4328935(JP,B2)
【文献】 特開2014−009152(JP,A)
【文献】 特開平05−078189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B 1/00− 21/00
C05C 1/00− 13/00
C05D 1/00− 11/00
C05F 1/00− 17/02
C05G 1/00− 5/00
A01N 1/00− 65/48
A01P 1/00− 23/00
C01B33/00− 33/193
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルであって、次の1)、2)、3)及び4)の条件を満たすシリカゾルを含有してなる植物の成長促進剤。
1)該シリカゾルにシリカ微粒子がSiO2換算濃度で10〜40質量%含まれる。
2)該シリカ微粒子の10〜80質量%が、モノケイ酸及び重合度2〜8のポリケイ酸からなる可溶性シリカである。
3)該可溶性シリカの30〜80質量%が、モノケイ酸である。
4)N、P、K、Ca、O、H、C、Mg、S、Fe、Mn、B、Zn、Mo、Cu及びClからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む肥料成分を含む。
【請求項2】
該シリカ微粒子の50〜80質量%が、モノケイ酸及び重合度2〜8のポリケイ酸からなる可溶性シリカである、請求項1に記載の植物の成長促進剤。
【請求項3】
該可溶性シリカの40〜80質量%が、モノケイ酸である、請求項1または2に記載の植物の成長促進剤。
【請求項4】
シリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルであって、次の1)、2)及び3)の条件を満たすシリカゾルの製造方法であって、ヒュームドシリカと、メタケイ酸ナトリウムとを水系溶媒中で混合した原料スラリーを調製し、該原料スラリーを水熱処理する工程を含むシリカゾルの製造方法。
1)該シリカゾルにシリカ微粒子がSiO2換算濃度で10〜40質量%含まれる。
2)該シリカ微粒子の10〜80質量%が、モノケイ酸及び重合度2〜8のポリケイ酸からなる可溶性シリカである。
3)該可溶性シリカの30〜80質量%が、モノケイ酸である。
【請求項5】
前記原料スラリーに水酸化ナトリウムを含むことを特徴とする請求項4に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項6】
前記原料スラリーを130〜150℃にて水熱処理することを特徴とする請求項4又は5に記載のシリカゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で環境負荷が少なく、植物の成長に効果的な可溶性シリカを多く含む植物成長促進剤とその製造方法を提供するものである。ここで、以下、「可溶性シリカ」は、モノケイ酸及び重合度2〜8のポリケイ酸を表すものとする。
【背景技術】
【0002】
近年、人口増加と水資源問題により地球が食糧と環境の危機に向かっているとの報告が国連から発表され、これらの問題を解決するために農業技術の向上が必要不可欠であるとの見解が示された。水資源の豊富な日本においてもその例外ではなく、より効率的かつ環境負荷の少ない農作物及び植物の育成方法が望まれている。
【0003】
植物の育成で、肥料は育成効率を高める重要な因子であり、植物の必須元素であるN、P、K、Ca、Mg、S、Fe、Mn、B、Zn、Mo、Cu、Clを含む化学肥料が数多く提案されている。これらの化学肥料は植物の育成に大きな効果がある一方で、使用過多による土壌の酸性化や河川への流出によるアオコや赤潮の発生といった環境への負荷が問題となっている。
【0004】
そこで、環境への負荷が少なく植物の成長促進効果のある元素としてSiに注目が集まっている。Siは植物の成長を助ける有用成分として知られており、植物の細胞壁の強化、光合成の促進、根の活性化、耐倒伏性の向上、病害や虫害への抵抗力増加といった効果が認められている。またSiはケイ酸として自然の水の中に普遍的に存在しており、環境負荷が少なく、食物、飲料水に含まれていても無害である。さらにSiの地殻埋蔵量は酸素に次いで2番目に多く、コストパフォーマンスも非常に高い。これらの特徴から、特許文献1又は特許文献2といったSiを含む種々の植物成長促進剤が提案されている。
【0005】
非特許文献1によると、植物が最もSiを吸収しやすいケイ素化合物の形態はモノケイ酸Si(OH)4であることが報告されており、モノケイ酸はポリケイ酸から下記式[1]に示す平衡反応により生成する。
【0006】
【化1】
【0007】
非特許文献2及び非特許文献3によると、ポリケイ酸の溶解度はpH、粒子の大きさによって変化し、pHは9以上の時に溶解度が大きくなり、pHが同じ場合は粒子サイズが小さいほど溶解度が高くなると報告されている。また、非特許文献4によると共存塩類の種類や濃度によっても増減する。特許文献3では、共存塩の種類及びモル比を調整することにより、モノケイ酸をSiO2換算で100ppm以上含むケイ酸水溶液の製造方法を提案している。しかし、この方法ではケイ酸濃度を高くするとケイ酸が溶解せず沈降するため100〜300ppmの範囲で使用することが推奨されており、高濃度での使用ができないという問題があった。これに対して、特許文献4では植物成長促進剤中に含まれるシリカコロイド粒子のサイズを調整することで、粒子の沈降を抑制しかつケイ酸の溶解度を高めた植物の成長促進剤が提案されており、固形分濃度として10000ppm以下で使用することが可能とされている。しかし、植物の成長促進効果において必ずしも満足できるものではなく、成長促進効果を高めるために粒子サイズを小さくして溶解度を高めても、平均粒子径が3nm以下になるとコロイド溶液として不安定でゲル化を起こし、植物への吸収が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−73771号公報
【特許文献2】特開2005−67996号公報
【特許文献3】特開平7−69764号公報
【特許文献4】特開平8−81317号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】高橋英一著「日本土壌肥料科学雑誌」49巻5号、p.357、1978年発行
【非特許文献2】M.E.Nordberg著 「Journal of the AmericanCeramic Society」Vol.41、p.517、1958年発行
【非特許文献3】G.B.Alexamder著「The Journal of PhysicalChemistry」Vol.61、p.1563、1957年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、環境負荷が少なく、安価で植物の成長促進効果の高い植物の成長促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意努力を重ねた結果、粒子径が小さく溶解度の高い可溶性シリカが全シリカ量に対して10〜80質量%存在し、更に可溶性シリカに対してモノケイ酸が30〜80質量%安定に存在するシリカゾルを植物に作用させることで、顕著な植物の成長促進効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物の細胞壁の強化、光合成の促進、根の活性化、耐倒伏性の向上、病害や虫害への抵抗力増加といった植物成長効果の高い植物の成長促進剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における植物の成長促進剤は、シリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾル(シリカ微粒子濃度10〜40質量%)であって、該シリカ微粒子の全シリカ量(SiO2換算)に対して可溶性シリカをSiO2換算で10〜80質量%含有し、かつ、該可溶性シリカは、モノケイ酸及び重合度2〜8のポリケイ酸からなり、該可溶性シリカの全量(SiO2換算)に対して該モノケイ酸をSiO2換算で30〜80質量%含有すること特徴とするものである。
【0014】
前記植物は、イネ科植物、特に、芝属植物であることが好ましい。
【0015】
前記分散媒は、例えば、純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。前記分散媒中に、有機溶媒やキレート剤などの有機物を含む場合は、例えば水田などで使用する際、BODの増加を招く可能性がある。
【0016】
前記シリカゾルに含まれるシリカ微粒子の濃度は、SiO2換算で10〜40質量%、好ましくは20〜40質量%の範囲内にあることが望ましい。固形分濃度が10質量%未満の場合は、保存容器が大型化し運搬費用が高額となるため、実用的でない。また、固形分濃度40質量%超の場合は、シリカ微粒子が重合して保存時に沈殿物やゲルが生成しやすく、乾燥時にスケールがつきやすいといった問題があるので好ましくない。
【0017】
前記シリカゾルに含まれるモノケイ酸はSi(OH)4であり、植物が最もSiを吸収しやすいケイ素化合物の形態であることが非特許文献1に示されている。本発明において可溶性シリカ成分の全量に対して30〜80質量%、好ましくは40〜80質量%の範囲にあることが好ましい。モノケイ酸の含有率が低すぎると、Siの植物への吸収が悪くなるため、期待する植物の成長促進効果は得られない。また、モノケイ酸の含有率が高すぎると、シリカ微粒子が重合して沈殿物やゲルが生成しやすいといった問題があるので好ましくない。
【0018】
前記シリカゾルに含まれる可溶性シリカは、モノケイ酸及び重合度2〜8のポリケイ酸からなる。本発明において、植物が最もSiを吸収しやすいケイ素化合物はモノケイ酸であり、式[1]に示す平衡反応により生成される。この平衡反応は水を必要とする反応であり、シリカ微粒子と水が接触する部分から反応が起こるため、シリカ微粒子は粒子径が小さく表面積が大きいことが好ましい。つまり、粒子径の小さいシリカ微粒子を多く含むシリカゾルは、モノケイ酸を生成しやすく、植物の成長促進剤として有効である。シリカ微粒子の粒子径は、ポリケイ酸の重合度が小さくなるにつれて小さくなり、ポリケイ酸の重合度の小さい粒子を多く含むことでモノケイ酸を効率的に生成させることができる。また、ポリケイ酸の重合度が大きすぎると、重合度が大きくなるにつれて粒子径が大きくなるため、モノケイ酸を効率的に生成させることができず好ましくない。しかし重合度の小さい粒子は、動的光散乱法やレーザー回折法といった一般的な粒度分布測定方法で検出することは困難であり、トリメチルシリル化法(日本金属学会誌、第44巻、p352)といった方法で検出される。
前記シリカゾルに含まれる可溶性シリカは、シリカ微粒子の全シリカ量に対して10〜80質量%、好ましくは50〜80質量%の範囲にあることが好ましい。可溶性シリカ成分が低すぎると、モノケイ酸の生成量が少なくなる。モノケイ酸量が少なくなると、Siの植物への吸収が悪くなるため、期待する植物の成長促進効果は得られない。また、可溶性シリカ成分が高すぎると、シリカ微粒子が重合して沈殿物やゲルが生成しやすいといった問題があるので好ましくない。
【0019】
前記シリカゾルは、シリカ粉末とケイ酸塩を水系溶媒中で混合し得られたスラリーを水熱処理し、必要によってイオン交換、濃縮の操作を行うことにより調製することが可能である。水熱処理は130〜150℃にて行うことが好ましい。
【0020】
前記シリカ粉末は、ヒュームドシリカであることが好ましい。特に疎水性のヒュームドシリカであることが好ましく、AEROSIL(登録商標):RX300などが好適である。
【0021】
前記ケイ酸塩は、溶解度の高い物質が好ましく、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどが好適である。
【0022】
前記シリカゾルは、前記製造方法の他にも種々の方法により調製することが可能であるが、前記所定の要件を満たすシリカゾルの製造が可能であれば、本発明に使用することができる。代表的には次の製法を挙げることができる。
1)アルカリ金属ケイ酸塩、第3級アンモニウムケイ酸塩、第4級アンモニウムケイ酸塩またはグアニジンケイ酸塩から選ばれる水溶性ケイ酸塩を、脱アルカリすることにより得られるケイ酸液をアルカリ存在下で加熱することによりケイ酸を重合する工程を含むシリカゾルの製造方法。
2)ケイ酸塩を酸で中和して得られるシリカヒドロゲルを洗浄して、塩類を除去し、アルカリを添加した後、加熱することによりシリカヒドロゲルを解膠する工程を含むシリカゾルの製造方法。
3)ヒュームドシリカとケイ酸塩を水溶媒中で混合し得られたスラリーを水熱処理する工程を含むシリカゾルの製造方法。
なお、市販のシリカゾルであって、前記所定の要件を満たすシリカゾルであれば、本発明に使用することができる。
【0023】
本発明では、植物の成長促進剤と共に、肥料成分を混合又は併用することができる。
【0024】
肥料成分は、植物の必須元素であるN、P、K、Ca、O、H、C、Mg、S、Fe、Mn、B、Zn、Mo、Cu、Clの供給源となる無機物又は有機物を使用することができる。そのような無機物としては、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、石灰窒素、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、焼成リン肥、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、ケイ酸カリウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられるが、特に物質を限定するものではない。また、有機物としては、例えば、鶏糞、牛糞、バーク堆肥、ペプトン、ミエキ、発酵エキス、有機酸のカルシウム塩などが挙げられるが、特に物質を限定するものではない。これらの肥料成分と混合又は併用することで、より顕著な植物の成長効果を得ることができる。
【0025】
前述の植物の成長促進剤は、使用する際に土壌に適量を投入し十分混和した後、植物を植え付けてもよいし、あるいは、植物の根に直接使用することもできる。また、その際前述の肥料成分と併用することもできる。散布量は培地に対して、0.5g/m2程度であることが望ましい。
【0026】
前述の植物の成長促進剤は、適当な固形分濃度に水で希釈して使用することができる。市販されているシリカゾルの固形分濃度は、通常、10〜60質量%であるが、本発明の植物の成長促進剤の場合は、固形分濃度を1質量%以下、好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲に水で希釈して使用することが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例及び比較例における分析又は定量の方法を以下に示す。
【0029】
[シリカ微粒子濃度測定方法]
シリカゾル10gに50体積%硫酸水溶液2mlを加え、白金皿上にて蒸発乾固し、得られた固形分を1000℃にて1時間焼成後、冷却して秤量する。次に、秤量した固形物を微量の50体積%硫酸水溶液にとかし、更にフッ化水素酸20mlを加えてから、白金皿上にて蒸発乾固し、1000℃にて15分焼成後、冷却して秤量する。これらの重量差によりシリカゾル中のシリカ微粒子の濃度を求めた。
【0030】
[可溶性シリカ含有量及びモノケイ酸含有量測定方法]
トリメチルシリル3mlに、CaOにて脱水したメタノール6mlを加えて撹拌した後、ヘキサメチルジシロキサン9mlを添加して、5分撹拌した。撹拌を維持しつつ、シリカゾルを100ml添加し、20分以上撹拌した。作成したサンプルを全量回収し、上澄み液を分離した後、イオン交換樹脂(Amberlite15(登録商標))を2g添加して1.5時間撹拌した。得られたサンプルから前記イオン交換樹脂を分離した後、水洗を行い、再度、同様のイオン交換樹脂を2g添加して1.5時間撹拌した。得られたサンプルから前記イオン交換樹脂を分離し、ガスクロマトグラフィー用の試料とした。
次に、検出器として水素炎イオン化検出器を用いたガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、試料の分析を行った。カラムは直径2mm、長さ1mのステンレス管に充填剤としてDexsil400(登録商標)及びクロモソルブWを充填したものを使用し、キャリヤーガスはアルゴンを使用し、試料導入部及び検出器の温度は400℃に設定した。カラムの温度は70℃から350℃まで0.125℃/sの速度で昇温しながら分析を行った。
分析の結果について、表1の検出温度及び質量電荷比m/eからモノケイ酸及び可溶性シリカのピーク帰属を行い、得られた全ピークの総面積からそれぞれのピーク面積の比率を求めることで、試料中のモノケイ酸量及び可溶性シリカ量を算出した。
【0031】
[シリカ微粒子濃度測定方法]及び[可溶性シリカ量及びモノケイ酸量測定方法]から得られた値を用いて、可溶性シリカ量/全シリカ量、及びモノケイ酸量/可溶性シリカ量の値を算出した。
【0032】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0033】
[実施例1]
[散布液の調製]
水995gに市販のシリカ粉末(AEROSIL(登録商標):RX300)70gと、メタケイ酸ナトリウム100g及び水酸化ナトリウム5gを混合して、SiO2換算濃度8.3質量%の溶液を調製した。この溶液を150℃で5時間加熱し、減圧蒸発装置にてSiO2換算濃度が40質量%となるまで濃縮を行い、植物の成長促進剤を得た。該植物の成長促進剤100gについて、可溶性シリカ成分含有量及びモノケイ酸含有量を測定した結果、全シリカ量は40gで、可溶性シリカ量は31.7gで、可溶性シリカ量中のモノケイ酸量は15.5gであった。また、シリカゾルを室温で60日保管したが、沈殿物の生成及びゲル化は見られなかった。該シリカゾル50gと肥料(商標:微粉ハイポネックス)12gを水5938gと混合し、散布液とした。
【0034】
[植物育成試験]
ベント芝の株を値切りして、畑地土壌からなる培地に植えつけた。芝を植えつけた日に、該散布液を、SiO2の散布量が各培地の芝に対して0.5g/m2となるように散布した。植付け日から30日後に、再度、該散布液肥を散布した他は、水だけを毎日1回散布した。
【0035】
[育成効果の確認]
上記のようにして育成したベント芝の成長量を、芝の植付け日から60日後に測定した。測定に当たり、先ず10cm×10cmの芝を10個切り取り、付着物を水洗除去して、地上部の草丈と根長を測定した。次いで、室温で1日中乾燥後、葉部と根部を切り離し、それぞれの重量を測定した。さらに、切り離した葉部と根部を酸に溶解した後、誘導結合プラズマ発光分析法にてSiの含有量を測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。なお、各測定値は平均値である。
【0036】
[実施例2]
水995gに市販のシリカ粉末(AEROSIL(登録商標):RX300)70gと、メタケイ酸ナトリウム100g及び水酸化ナトリウム5gを混合して、SiO2換算濃度8.3質量%の溶液を調製した。この溶液を150℃で5時間加熱し、減圧蒸発装置にてSiO2換算濃度が20質量%となるまで濃縮を行い、シリカゾルを得た。該シリカゾル100gについて、可溶性シリカ成分含有量及びモノケイ酸含有量を測定した結果、全シリカ量は20gで、可溶性シリカ量は15.7gで、可溶性シリカ量中のモノケイ酸量は7.5gであった。また、シリカゾルを室温で60日保管したが、沈殿物の生成及びゲル化は見られなかった。該シリカゾル150gと肥料(商標:微粉ハイポネックス)12gを水5838gと混合し、散布液とした。[植物育成試験]及び[育成効果の確認]については、実施例1と同様の条件で実施した。
【0037】
[実施例3]
水1000gに市販のシリカ粉末(AEROSIL(登録商標):RX300)70gと、メタケイ酸ナトリウム100gを混合して、SiO2換算濃度8.3質量%の溶液を調製した。この溶液を150℃で5時間加熱し、減圧蒸発装置にてSiO2換算濃度が20質量%となるまで濃縮を行い、シリカゾルを得た。該シリカゾル100gについて、可溶性シリカ成分含有量及びモノケイ酸含有量を測定した結果、全シリカ量は20gで、可溶性シリカ量は11.0gで、可溶性シリカ量中のモノケイ酸量は、5.1gであった。また、シリカゾルを室温で60日保管したが、沈殿物の生成及びゲル化は見られなかった。該シリカゾル150gと肥料(商標:微粉ハイポネックス)12gを水5838gと混合し、散布液とした。[植物育成試験]及び[育成効果の確認]については、実施例1と同様の条件で実施した。
【0038】
[実施例4]
水1000gに市販のシリカ粉末(AEROSIL(登録商標):RX300)40gと、メタケイ酸ナトリウム160gを混合して、SiO2換算濃度8.3質量%の溶液を調製した。この溶液を150℃で5時間加熱し、減圧蒸発装置にてSiO2換算濃度が20質量%となるまで濃縮を行い、シリカゾルを得た。該シリカゾル100gについて、可溶性シリカ成分含有量及びモノケイ酸含有量を測定した結果、全シリカ量は20gで、可溶性シリカ量は12.2gで、可溶性シリカ量中のモノケイ酸量は9.5gであった。また、シリカゾルを室温で60日保管したが、沈殿物の生成及びゲル化は見られなかった。該シリカゾル150gと肥料(商標:微粉ハイポネックス)12gを水5838gと混合し、散布液とした。[植物育成試験]及び[育成効果の確認]については、実施例1と同様の条件で実施した。
【0039】
[実施例5]
水1000gに市販のシリカ粉末(AEROSIL(登録商標):RX300)100gと、メタケイ酸ナトリウム40gを混合して、SiO2換算濃度8.3質量%の溶液を調製した。この溶液を150℃で5時間加熱し、減圧蒸発装置にてSiO2換算濃度が20質量%となるまで濃縮を行い、シリカゾルを得た。該シリカゾル100gについて、可溶性シリカ成分含有量及びモノケイ酸含有量を測定した結果、全シリカ量は20gで、可溶性シリカ量は3.8gで、可溶性シリカ量中のモノケイ酸量は1.4gであった。また、シリカゾルを室温で60日保管したが、沈殿物の生成及びゲル化は見られなかった。該シリカゾル150gと肥料(商標:微粉ハイポネックス)12gを水5838gと混合し、散布液とした。[植物育成試験]及び[育成効果の確認]については、実施例1と同様の条件で実施した。
【0040】
[比較例1]
水1000gにメタケイ酸ナトリウム260gを混合して、SiO2換算濃度10質量%の溶液を調製した。この溶液を150℃で5時間加熱したところ、ゲル化した。
【0042】
比較例2
肥料(商標:微粉ハイポネックス)12gを水5988gと混合し、散布液とした。[植物育成試験]及び[育成効果の確認]については、実施例1と同様の条件で実施した。
【0043】
植物の成長促進剤を施用した実施例1の芝は、植物の成長促進剤を施用しなかった比較例の芝と比較して根の発育が顕著であり、葉の育成密度も高いことが明らかである。これらの効果は、表1に示す芝丈、根長、葉部重量、根部重量、葉部Si含有量、根部Si含有量からも確認されている。
【0044】
【表1】