【実施例1】
【0030】
図1は、実施例1に係るガスタービンの概略構成図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機11とガスタービン燃焼器(以下、燃焼器という)12とタービン13と排気室14とを備えており、タービン13に図示しない発電機が連結されている。
【0031】
圧縮機11は、空気を取り込む空気取入口15を有し、圧縮機車室16内に複数の静翼17と複数の動翼18とが交互に配設されている。燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された圧縮空気(燃焼用空気)に対して燃料を供給し、バーナで点火することで燃焼可能となっている。タービン13は、タービン車室20内に複数の静翼21と複数の動翼22とが交互に配設されている。排気室14は、タービン13に連続する排気ディフューザ23を有している。また、圧縮機11、燃焼器12、タービン13、排気室14の中心部を貫通するようにロータ(タービン軸)24が位置しており、圧縮機11側の端部が軸受部25により回転自在に支持される一方、排気室14側の端部が軸受部26により回転自在に支持されている。そして、このロータ24に複数のディスクプレートが固定され、各動翼18,22が連結されると共に、排気室14側の端部に図示しない発電機の駆動軸が連結されている。
【0032】
従って、圧縮機11の空気取入口15から取り込まれた空気が、複数の静翼17と複数の動翼18とを通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器12にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給されることで燃焼する。そして、この燃焼器12で生成された作動流体である高温・高圧の燃焼ガスが、タービン13を構成する複数の静翼21と複数の動翼22とを通過することでロータ24を駆動回転させて、このロータ24に連結された発電機を駆動する。一方、ロータ24を駆動回転させた後の燃焼ガスである排気ガスは、排気室14の排気ディフューザ23で静圧に変換されてから大気に放出される。
【0033】
図2は、
図1のガスタービン燃焼器における拡大図である。
図3は、ガスタービン燃焼器の内部構成を概略的に示す図である。
図4は、ガスタービン燃焼器の各種バーナの配置を示す図である。燃焼器12は、燃焼器ケーシング30を有する。燃焼器ケーシング30は、外筒31の内部に配置された内筒32と、内筒32の先端部に連結された尾筒33とを有し、ロータ24の回転軸Iに対して傾斜した中心軸Sに沿って延在する。
【0034】
図2に示すように、外筒31は、圧縮機11からの圧縮空気が流入する車室34を形成する車室ハウジング27に締結されている。内筒32は、その基端部が外筒31に支持され、外筒31の内側に、外筒31から所定間隔をあけて配置されている。内筒32の中心部には、中心軸Sに沿ってパイロットバーナ40が配設されている。パイロットバーナ40の周囲には、パイロットバーナ40を取り囲むように等間隔にかつパイロットバーナ40と平行に複数のメインバーナ(燃焼バーナ)50が配設されている(
図4参照)。尾筒33は、その基端が円筒状に形成されて内筒32の先端に連結されている。尾筒33は、先端側にかけて断面積が小さくかつ湾曲して形成され、タービン13の1段目の静翼21に向けて開口している。尾筒33は、内部に燃焼室を形成する。
【0035】
図3に示すように、パイロットバーナ40は、パイロットコーン41と、パイロットコーン41の内部に、かつ、中心軸Sに沿って配置されたパイロットノズル42と、パイロットノズル42の外周部に設けられるパイロットスワラ43とを有する。メインバーナ50は、バーナ筒51と、バーナ筒51の内部に、かつ、中心軸Sと平行に配置されたメインノズル(燃料ノズル)52とを有する。パイロットノズル42には、燃料ポート44(
図2)を介して不図示のパイロット燃料ラインから燃料が供給される。メインノズル52には、燃料ポート54(
図2及び
図5)を介して不図示のメイン燃料ラインから燃料が供給される。
【0036】
図2において、圧縮機11からの高温高圧の圧縮空気は、燃焼器12の周囲の車室34に流入する。この圧縮空気は、尾筒33及び内筒32の外側を、尾筒33側から内筒32側へと流れ、内筒32の基端側から内筒32の内部に流入する。内筒32内に流入した圧縮空気は、パイロットバーナ40およびメインバーナ50で燃料と混合すると共に燃焼し、燃焼ガスとなる。
【0037】
すなわち、内筒32に流入した圧縮空気は、メインノズル52から噴射された燃料と混合し、予混合気の旋回流となってバーナ筒51から尾筒33内に流れ込む。このため、バーナ筒51は、予混合気を尾筒33へ向かって供給する予混合気流通通路として機能する。これとは別に、内筒32に流入した圧縮空気は、パイロットスワラ43で旋回され、パイロットノズル42から噴射された燃料と混合し、予混合気となって尾筒33内に流れ込む。パイロットノズル42からの予混合気は、図示しない種火により着火されて燃焼し、燃焼ガスとなって尾筒33内に噴出する。このとき、燃焼ガスの一部が尾筒33内に火炎を伴って周囲に拡散するように噴出する。これにより、各メインバーナ50のバーナ筒51から尾筒33内に流れ込んだ予混合気が着火され、燃焼する。
【0038】
このように、パイロットノズル42から噴射した燃料で拡散火炎させることにより、メインノズル52からの希薄予混合燃料の安定燃焼を行うための保炎を行うことができる。また、メインバーナ50でメインノズル52からの燃料と圧縮空気とを予混合させることにより、燃料濃度が均一化され、NOxを低減可能となっている。
【0039】
図5は、ガスタービン燃焼器の燃料通路を概略的に示す図である。
図5に示すように、ガスタービン燃焼器12には、燃料ポート54から複数のメインノズル52の内部に亘って、燃料通路Lが形成されている。つまり、燃料通路Lは、燃料ポート54が設けられる第1部材61と、第1部材61に隣接して設けられる第2部材62と、第2部材62に取り付けられる複数のメインノズル52とにより形成されている。このため、燃料通路Lは、第1部材61に形成されるポート側燃料通路L1と、メインノズル52に形成されるノズル側燃料通路L2とを含んで構成される。
【0040】
第1部材61は、中心軸Sを中心とする円柱状に形成されており、第2部材62が隣接する面とは反対側の面に、燃料ポート54が突出して設けられている。燃料ポート54には、図示しない燃料供給装置が接続されており、燃料供給装置から燃料が供給される。第1部材61は、その内部に円環状のポート側燃料通路L1が形成されている。このポート側燃料通路L1は、燃料ポート54に連通すると共に、複数のメインノズル52のノズル側燃料通路L2に連通する。第2部材62は、複数のメインノズル52を保持している。
【0041】
各メインノズル52は、ノズル棒65と、ノズル棒65の周囲に所定の間隔を空けて配置される複数の旋回翼(いわゆる、スワラ)66とを有する。ノズル棒65は、中心軸Sと同方向に延在して形成され、中心軸Sと平行に配置されている。ノズル棒65は、その中心に、ノズル側燃料通路L2の一部が、つまり、ノズル側燃料通路L2の燃料の流れ方向の上流側の部分が形成されている。このノズル棒65は、燃料の流れ方向の上流側となる基端部が、第2部材62に取り付けられている。また、ノズル棒65は、燃料の流れ方向の下流側となる先端部に、複数の旋回翼66が設けられている。
【0042】
複数の旋回翼66は、バーナ筒51を流通する空気が通過することで、空気と燃料とを混合させて予混合気とし、この予混合気を尾筒33へ向けて旋回させる。各旋回翼66は、その内部に、ノズル側燃料通路L2の他の一部が、つまり、ノズル側燃料通路L2の燃料の流れ方向の下流側の部分が形成されている。また、各旋回翼66は、燃料が噴射される噴射孔71が複数形成されている。この噴射孔71は、ノズル側燃料通路L2に連通している。なお、複数の噴射孔71は、例えば、4つ形成されている。4つの噴射孔71のうち、2つの噴射孔71は、燃料の流れ方向の下流側に形成されると共にノズル棒65側に寄せた位置に形成されている。残りの2つの噴射孔71は、燃料の流れ方向の上流側に形成されると共にノズル棒65から離れた位置に形成されている。
【0043】
従って、燃料ポート54から燃料が供給されると、燃料は、ポート側燃料通路L1を流通することで、複数のメインノズル52へ向けて供給される。各メインノズル52にポート側燃料通路L1から燃料が供給されると、燃料は、ノズル側燃料通路L2を流通する。ノズル側燃料通路L2を流通する燃料は、ノズル棒65の基端側から先端側へ向かって流れ、この後、ノズル棒65から旋回翼66へ向かって流れる。旋回翼66に流入した燃料は、噴射孔71からバーナ筒51内に噴射されることで、バーナ筒51内を流通する空気と混合される。
【0044】
このように構成されたガスタービン燃焼器12は、燃料通路L内の燃圧が、ガスタービン1の発電機負荷に応じて変化する。つまり、ガスタービン燃焼器12において、噴射孔71から噴射される燃料の噴射量は、所定の割合となるように調整される。このため、発電機負荷を上げれば、燃料の噴射量を多くすべく、燃料供給装置によって燃料通路L内の燃圧を高くする。一方で、発電機負荷を下げれば、燃料の噴射量を少なくすべく、燃料供給装置によって燃料通路L内の燃圧を低くする。
【0045】
このとき、ガスタービン1の発電機負荷が低い場合としては、ガスタービン1が起動し、ガスタービン燃焼器12が着火してから定格運転に到達するまでの運転である部分負荷運転を行う場合である。
【0046】
ここで、ガスタービン1が定格運転を行う場合、ガスタービン燃焼器12において、メインノズル52(燃料通路L)の燃圧と、バーナ筒51内の圧力との差である燃料差圧は高くなっている。つまり、燃料通路Lの燃圧が高くなれば、燃料差圧も高くなる。燃料差圧が高い場合、バーナ筒51内における燃料の濃度分布、すなわち、予混合気の燃料成分の分布は、均一の濃度分布に形成されることが好ましい。
【0047】
一方で、ガスタービン1が部分負荷運転を行う場合、ガスタービン燃焼器12において、燃料差圧は低くなっている。つまり、燃料通路Lの燃圧が低くなれば、燃料差圧も低くなる。ここで、
図6は、燃圧が低いときの理想となる燃料の濃度分布を示す図である。燃料差圧が低い場合、バーナ筒51の流出側における燃料の濃度分布は、
図6に示すように形成されることが好ましい。つまり、バーナ筒51の流出側における燃料の濃度分布は、パイロットバーナ40側における燃料の濃度が、パイロットバーナ40の反対側における燃料の濃度に比して濃くなる分布に形成されることが好ましい。
【0048】
そこで、実施例1では、燃料差圧に適した燃料の濃度分布を形成するために、メインノズル52に、燃圧に応じて作動する噴射切替機構75を設けている。以下、
図7及び
図8を参照して、噴射切替機構75について説明する。
図7は、実施例1の燃圧が低いときのメインノズルの状態を示す断面図である。
図8は、実施例1の燃圧が高いときのメインノズルの状態を示す断面図である。
【0049】
噴射切替機構75は、燃料通路Lの燃圧が低い場合、複数の旋回翼66のうち、一部の旋回翼66の噴射孔71から燃料を噴射させる一方で、燃料通路Lの燃圧が高い場合、複数の旋回翼66の全ての噴射孔71から燃料を噴射させている。噴射切替機構75の説明に先立ち、複数の旋回翼66について具体的に説明する。
【0050】
複数の旋回翼66は、燃圧が低い場合に、燃料を噴射する旋回翼66aと、燃料を噴射しない旋回翼66bとに分けられる。このとき、旋回翼66aに形成された噴射孔71が、低圧噴射孔71aとして機能する。また、旋回翼66bに形成された噴射孔71が、高圧噴射孔71bとして機能する。そして、複数の旋回翼66のうち、パイロットバーナ40とは反対側に位置する一部の旋回翼66が、旋回翼66aとなっており、パイロットバーナ40側に位置する他の旋回翼66が、旋回翼66bとなっている。
【0051】
このため、燃料通路Lの燃圧が低い場合、パイロットバーナ40とは反対側に位置する旋回翼66aは、その低圧噴射孔71aから燃料を噴射する。このとき、噴射された燃料と圧縮空気との予混合気は、バーナ筒51内を旋回することで、予混合気の燃料成分がパイロットバーナ40側に移動する。このため、バーナ筒51から尾筒33へ流出する燃料の濃度分布は、パイロットバーナ40側における燃料の濃度が、パイロットバーナ40の反対側における燃料の濃度に比して濃くなる分布に形成される。
【0052】
一方で、燃料通路Lの燃圧が高い場合、旋回翼66aの低圧噴射孔71a、及び旋回翼66bの高圧噴射孔71bから燃料が噴射される。このとき、噴射された燃料と圧縮空気との予混合気は、その燃料成分が均等に分布している。このため、予混合気がバーナ筒51内を旋回しても、バーナ筒51から尾筒33へ流出する燃料の濃度分布は、均一の濃度分布に形成される。
【0053】
ノズル側燃料通路L2は、ノズル棒65の内部のノズル側燃料通路L2である棒燃料通路Laと、旋回翼66aの内部のノズル側燃料通路L2である低圧側翼燃料通路Lbと、棒燃料通路Laと低圧側翼燃料通路Lbとを連通する低圧側連通通路Lcとを有する。また、ノズル側燃料通路L2は、旋回翼66bの内部のノズル側燃料通路L2である高圧側翼燃料通路Ldと、棒燃料通路Laと高圧側翼燃料通路Ldとを連通する高圧側連通通路Leとを有する。そして、低圧側連通通路Lcは、高圧側連通通路Leに比して、燃料の流れ方向の上流側に位置している。
【0054】
続いて、噴射切替機構75について説明する。噴射切替機構75は、仕切り板76と、弾性部材77と、パージ孔78とを有する。パージ孔78は、棒燃料通路Laとノズル棒65の外部とを連通しており、高圧側連通通路Leに比して、燃料の流れ方向の下流側に位置している。
【0055】
仕切り板76は、ノズル棒65の棒燃料通路Laに設けられる。仕切り板76は、棒燃料通路Laを閉止する形状に形成されており、棒燃料通路Laの燃料の流れ方向に沿って移動可能となっている。このとき、仕切り板76は、低圧側連通通路Lcの下流側と、パージ孔78の上流側との間で往復移動する。つまり、仕切り板76は、高圧側連通通路Leを挟んで上流側及び下流側に向けて往復移動する。
【0056】
弾性部材77は、仕切り板76と棒燃料通路Laの先端部との間に設けられる。つまり、弾性部材77は、パージ孔78と連通する空間に設けられる。弾性部材77は、例えば、圧縮バネであり、その一端が仕切り板76に連結され、その他端が棒燃料通路Laの先端部に連結されている。このため、弾性部材77は、仕切り板76を棒燃料通路Laの上流側へ向けて付勢している。弾性部材77は、燃圧が低い場合、棒燃料通路Laにおいて、仕切り板76が低圧側連通通路Lcと高圧側連通通路Leとの間に位置するような付勢力となっている。一方で、弾性部材77は、燃圧が高い場合、棒燃料通路Laにおいて、仕切り板76が高圧側連通通路Leとパージ孔78との間に位置するような付勢力となっている。なお、パージ孔78は、仕切り板76によって仕切られた弾性部材77が設けられる空間の変位を許容すべく、この空間とバーナ筒51の内部とで空気を流通させる。
【0057】
図7に示すように、上記のメインノズル52において、ガスタービン1が部分負荷運転を行うと、燃料通路Lの燃圧は、全負荷運転に比して低いものとなる。燃料通路Lの燃圧が低いと、噴射切替機構75の弾性部材77は、仕切り板76を低圧側連通通路Lcと高圧側連通通路Leとの間に位置させる。これにより、棒燃料通路Laと低圧側連通通路Lcとが連通する一方で、棒燃料通路Laと高圧側連通通路Leとが閉止される。このため、棒燃料通路Laを流通する燃料は、棒燃料通路Laから低圧側連通通路Lcを介して低圧側翼燃料通路Lbに流通する。よって、複数の旋回翼66のうち、旋回翼66aの低圧噴射孔71aからのみ燃料が噴射される。
【0058】
一方で、
図8に示すように、上記のメインノズル52において、ガスタービン1が全負荷運転を行うと、燃料通路Lの燃圧は、部分負荷運転に比して高いものとなる。燃料通路Lの燃圧が高いと、噴射切替機構75の弾性部材77は、仕切り板76を高圧側連通通路Leとパージ孔78との間に位置させる。これにより、棒燃料通路Laと低圧側連通通路Lcとが連通し、また、棒燃料通路Laと高圧側連通通路Leとが連通する。このため、棒燃料通路Laを流通する燃料は、棒燃料通路Laから低圧側連通通路Lcを介して低圧側翼燃料通路Lbに流通すると共に、棒燃料通路Laから高圧側連通通路Leを介して高圧側翼燃料通路Ldに流通する。よって、旋回翼66aの低圧噴射孔71a及び旋回翼66bの高圧噴射孔71bから、つまり、全ての旋回翼66の噴射孔71から燃料が噴射される。
【0059】
以上のように、実施例1の構成によれば、燃料通路L内の燃圧が低い場合、低圧噴射孔71aから燃料を噴射することができる。このため、バーナ筒51内を流通する予混合気の燃料の濃度分布は、低圧噴射孔71aから噴射された燃料によって形成することができる。つまり、低圧噴射孔71aから燃料を噴射することで、低い燃圧となる運転時(例えば、燃料差圧の低い部分負荷運転時)に最適な燃料の濃度分布とすることができる。一方で、燃料通路L内の燃圧が高い場合、低圧噴射孔71a及び高圧噴射孔71bから燃料を噴射することができる。このため、バーナ筒51内を流通する予混合気の燃料の濃度分布は、低圧噴射孔71a及び高圧噴射孔71bから噴射された燃料によって形成することができる。つまり、低圧噴射孔71a及び高圧噴射孔71bから燃料を噴射することで、高い燃圧となる運転時(例えば、燃料差圧の高い全負荷運転時)に最適な燃料の濃度分布とすることができる。以上から、バーナ筒51内の燃料の濃度分布を、燃料差圧に応じた最適な分布にすることができる。このため、予混合気を好適に燃焼させることができ、未燃成分の発生を抑制することができるため、燃焼安定性が向上する。
【0060】
また、実施例1の構成によれば、バーナ筒51の流出側の内部において、パイロットバーナ40側の燃料の濃度を濃くすることができる。このため、バーナ筒51を流通した予混合気の燃料成分を、パイロットバーナ40の燃焼によって燃焼させることができるため、未燃成分の発生をさらに抑制することができる。
【0061】
また、実施例1の構成によれば、燃料通路L内の燃圧が低い場合、低圧噴射孔71aが形成された旋回翼66aから燃料を噴射することができる。一方で、燃料通路L内の燃圧が高い場合、低圧噴射孔71aが形成された旋回翼66a、及び高圧噴射孔71bが形成された旋回翼66bから燃料を噴射することができる。このため、複数の旋回翼66のうち、燃圧に応じて、旋回翼66を選択することができることから、バーナ筒51の流出側の内部の燃料の濃度分布を、最適な分布にすることができる。
【0062】
なお、実施例1では、燃料通路L内の燃圧が高い場合、低圧噴射孔71aが形成された旋回翼66a、及び高圧噴射孔71bが形成された旋回翼66bから燃料を噴射したが、高圧噴射孔71bが形成された旋回翼66bからのみ燃料を噴射してもよい。このとき、噴射切替機構75は、燃圧が高い場合に、棒燃料通路Laと低圧側連通通路Lcとを閉止し、また、棒燃料通路Laと高圧側連通通路Leとを連通させる構成とすることが好ましい。
【実施例2】
【0063】
次に、
図9及び
図10を参照して、実施例2に係るメインノズル100について説明する。
図9は、実施例2の燃圧が低いときのメインノズルの状態を示す断面図である。
図10は、実施例2の燃圧が高いときのメインノズルの状態を示す断面図である。なお、実施例2では、実施例1と重複する記載を避けるべく、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。実施例1のメインノズル52では、噴射切替機構75により、燃圧に応じて、旋回翼66の燃料の噴射を切り替えていた。実施例2のメインノズル100では、噴射切替機構101により、燃圧に応じて、各旋回翼66における燃料の噴射位置を切り替えている。噴射切替機構101の説明に先立ち、複数の旋回翼66について具体的に説明する。
【0064】
図9及び
図10に示すように、実施例2に係るメインノズル100において、各旋回翼66には、燃料が噴射される複数の噴射孔71が形成されている。この噴射孔71は、燃料通路Lの燃圧が低い場合に、燃料を噴射する低圧噴射孔71aと、燃料を噴射しない高圧噴射孔71bとに分けられる。低圧噴射孔71aは、高圧噴射孔71bに比して、燃料の流れ方向の上流側に形成されている。つまり、低圧噴射孔71aは、各旋回翼66の上流側となる低圧噴射位置に形成され、高圧噴射孔71bは、各旋回翼66の下流側となる高圧噴射位置に形成されている。このため、低圧噴射孔71aと高圧噴射孔71bとは、異なる位置となっている。
【0065】
旋回翼66の内部のノズル側燃料通路L2は、低圧側翼燃料通路Lbと、高圧側翼燃料通路Ldとに区分けされている。旋回翼66の内部において、低圧側翼燃料通路Lbは、高圧側翼燃料通路Ldに比して、燃料の流れ方向の上流側に形成されている。このため、低圧噴射孔71aは、低圧側翼燃料通路Lbに連通し、高圧噴射孔71bは、高圧側翼燃料通路Ldに連通する。そして、低圧側連通通路Lcは、棒燃料通路Laと旋回翼66の低圧側翼燃料通路Lbとを連通する。また、高圧側連通通路Leは、棒燃料通路Laと旋回翼66の高圧側翼燃料通路Ldとを連通する。なお、低圧側連通通路Lcは、実施例1と同様に、高圧側連通通路Leに比して、燃料の流れ方向の上流側に位置している。
【0066】
続いて、実施例2に係る噴射切替機構101について説明する。噴射切替機構101は、仕切り板76と、弾性部材77と、パージ孔78とを有する。なお、仕切り板76、弾性部材77、及びパージ孔78は、実施例1とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0067】
図9に示すように、上記のメインノズル100において、ガスタービン1が部分負荷運転を行うと、燃料通路Lの燃圧は、全負荷運転に比して低いものとなる。燃料通路Lの燃圧が低いと、噴射切替機構101の弾性部材77は、仕切り板76を低圧側連通通路Lcと高圧側連通通路Leとの間に位置させる。これにより、棒燃料通路Laと低圧側連通通路Lcとが連通する一方で、棒燃料通路Laと高圧側連通通路Leとが閉止される。このため、棒燃料通路Laを流通する燃料は、棒燃料通路Laから低圧側連通通路Lcを介して低圧側翼燃料通路Lbに流通する。よって、複数の旋回翼66の低圧噴射孔71aからのみ燃料が噴射される。
【0068】
一方で、
図10に示すように、上記のメインノズル100において、ガスタービン1が全負荷運転を行うと、燃料通路Lの燃圧は、部分負荷運転に比して高いものとなる。燃料通路Lの燃圧が高いと、噴射切替機構101の弾性部材77は、仕切り板76を高圧側連通通路Leとパージ孔78との間に位置させる。これにより、棒燃料通路Laと低圧側連通通路Lcとが連通し、また、棒燃料通路Laと高圧側連通通路Leとが連通する。このため、棒燃料通路Laを流通する燃料は、棒燃料通路Laから低圧側連通通路Lcを介して低圧側翼燃料通路Lbに流通すると共に、棒燃料通路Laから高圧側連通通路Leを介して高圧側翼燃料通路Ldに流通する。よって、複数の旋回翼66の低圧噴射孔71a及び高圧噴射孔71bから、つまり、全ての旋回翼66の噴射孔71から燃料が噴射される。
【0069】
以上のように、実施例2の構成においても、燃料通路L内の燃圧が低い場合、低圧噴射孔71aから燃料を噴射することができる。一方で、燃料通路L内の燃圧が高い場合、低圧噴射孔71a及び高圧噴射孔71bから燃料を噴射することができる。このため、バーナ筒51内の燃料の濃度分布を、燃料差圧に応じた最適な分布にすることができる。このため、予混合気を好適に燃焼させることができ、未燃成分の発生を抑制することができるため、燃焼安定性が向上する。
【0070】
また、実施例2の構成によれば、燃料通路L内の燃圧が低い場合、各旋回翼66の低圧噴射孔71aから燃料を噴射することができる。一方で、燃料通路L内の燃圧が高い場合、各旋回翼66の低圧噴射孔71a及び高圧噴射孔71bから燃料を噴射することができる。このため、燃圧に応じて、各旋回翼66における燃料の噴射位置を選択することができることから、バーナ筒51内の燃料の濃度分布を、最適な分布にすることができる。
【0071】
なお、実施例2では、噴射切替機構101は、燃料通路L内の燃圧が高い場合、各旋回翼66の低圧噴射孔71a及び高圧噴射孔71bから燃料を噴射したが、各旋回翼66の高圧噴射孔71bからのみ燃料を噴射してもよい。このとき、噴射切替機構101は、燃圧が高い場合に、棒燃料通路Laと低圧側連通通路Lcとを閉止し、また、棒燃料通路Laと高圧側連通通路Leとを連通させる構成とすることが好ましい。
【実施例3】
【0072】
次に、
図11及び
図12を参照して、実施例3に係るガスタービン燃焼器110について説明する。
図11は、実施例3の燃圧が低いときのガスタービン燃焼器の燃料通路の状態を示す断面図である。
図12は、実施例3の燃圧が高いときのガスタービン燃焼器の燃料通路の状態を示す断面図である。なお、実施例3では、実施例1と重複する記載を避けるべく、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。実施例1及び2では、噴射切替機構75,101をメインノズル52,100に設けた。実施例3では、噴射切替機構111を、ガスタービン燃焼器110の燃料通路Lのポート側燃料通路L1とノズル側燃料通路L2との間に設けている。
【0073】
図11及び
図12に示すように、実施例3に係るガスタービン燃焼器110において、噴射切替機構111は、燃料通路Lの燃圧が低い場合、複数のメインバーナ50における複数のメインノズル52のうち、一部のメインノズル52から燃料を噴射させる一方で、燃料通路Lの燃圧が高い場合、複数のメインノズル52の全てから燃料を噴射させている。噴射切替機構111の説明に先立ち、複数のメインノズル52について具体的に説明する。
【0074】
複数のメインノズル52は、燃圧が低い場合に、燃料を噴射する低圧メインノズル(低圧燃料ノズル)52aと、燃料を噴射しない高圧メインノズル(高圧燃料ノズル)52bとに分けられる。このとき、低圧メインノズル52aの旋回翼66に形成された噴射孔71が、低圧噴射孔71aとして機能する。また、高圧メインノズル52bの旋回翼66に形成された噴射孔71が、高圧噴射孔71bとして機能する。低圧メインノズル52aは、複数のメインノズル52の個数の半分以下の個数となっている。このため、複数のメインノズル52が、例えば8個である場合、低圧メインノズル52aは、1〜4個のいずれかの個数となっており、また、高圧メインノズル52bは、7〜4個のいずれかの個数となっている。ここで、低圧メインノズル52aが複数である場合、複数の低圧メインノズル52aは、相互に隣接して設けられている。
【0075】
続いて、実施例3に係る噴射切替機構111について説明する。噴射切替機構111は、第1部材61のポート側燃料通路L1と高圧メインノズル52bのノズル側燃料通路L2との間の第2部材62に形成される切替用燃料通路L3に設けられている。切替用燃料通路L3は、ポート側燃料通路L1に連通すると共に、ノズル側燃料通路L2に連通している。
【0076】
噴射切替機構111は、仕切り板116と、弾性部材117と、パージ孔118とを有する。パージ孔118は、切替用燃料通路L3と外部とを連通している。このとき、切替用燃料通路L3は、その上流側にノズル側燃料通路L2が連通され、その下流側にパージ孔118が連通している。
【0077】
仕切り板116は、第2部材62の切替用燃料通路L3に設けられる。仕切り板116は、切替用燃料通路L3を閉止する形状に形成されており、切替用燃料通路L3の燃料の流れ方向に沿って移動可能となっている。このとき、仕切り板116は、ノズル側燃料通路L2を閉止する閉位置と、ノズル側燃料通路L2を切替用燃料通路L3と連通させる開位置との間で往復移動する。
【0078】
弾性部材117は、仕切り板116と切替用燃料通路L3の下流側の端部との間に設けられる。弾性部材117は、例えば、圧縮バネであり、その一端が仕切り板116に連結され、その他端が切替用燃料通路L3の下流側の端部に連結されている。このため、弾性部材117は、仕切り板116を切替用燃料通路L3の上流側へ向けて付勢している。弾性部材117は、燃圧が低い場合、切替用燃料通路L3において、仕切り板116が閉位置となるような付勢力となっている。一方で、弾性部材117は、燃圧が高い場合、切替用燃料通路L3において、仕切り板116が開位置となるような付勢力となっている。
【0079】
図11に示すように、上記のガスタービン燃焼器110において、ガスタービン1が部分負荷運転を行うと、燃料通路Lの燃圧は、全負荷運転に比して低いものとなる。燃料通路Lの燃圧が低いと、噴射切替機構111の弾性部材117は、仕切り板116を閉位置に位置させる。このため、高圧メインノズル52bのノズル側燃料通路L2と切替用燃料通路L3とが、仕切り板116により閉止される。これにより、ポート側燃料通路L1を流通する燃料は、ポート側燃料通路L1から低圧メインノズル52aのノズル側燃料通路L2に流通する。よって、複数のメインノズル52のうち、低圧メインノズル52aからのみ燃料が噴射される。
【0080】
一方で、
図12に示すように、上記のガスタービン燃焼器110において、ガスタービン1が全負荷運転を行うと、燃料通路Lの燃圧は、部分負荷運転に比して高いものとなる。燃料通路Lの燃圧が高いと、噴射切替機構111の弾性部材117は、仕切り板116を開位置に位置させる。このため、高圧メインノズル52bのノズル側燃料通路L2と、切替用燃料通路L3とが、仕切り板116により連通される。これにより、ポート側燃料通路L1を流通する燃料は、ポート側燃料通路L1から、低圧メインノズル52aのノズル側燃料通路L2と、高圧メインノズル52bのノズル側燃料通路L2とに流通する。よって、低圧メインノズル52a及び高圧メインノズル52bから、つまり、全てのメインノズル52から燃料が噴射される。
【0081】
以上のように、実施例3の構成に係るガスタービン燃焼器110によれば、燃料通路L内の燃圧が低い場合、低圧メインノズル52aから燃料を噴射することができる。一方で、燃料通路L内の燃圧が高い場合、低圧メインノズル52a及び高圧メインノズル52bから燃料を噴射することができる。このため、燃圧に応じて、メインノズル52を選択することができることから、尾筒33内の燃料の濃度分布を、最適な分布にすることができる。
【0082】
なお、実施例3では、噴射切替機構111は、燃料通路L内の燃圧が高い場合、低圧メインノズル52a及び高圧メインノズル52bから燃料を噴射したが、高圧メインノズル52bからのみ燃料を噴射してもよい。このとき、噴射切替機構111は、燃圧が高い場合に、仕切り板116によって低圧メインノズル52aのノズル側燃料通路L2を閉止し、また、仕切り板116によって高圧メインノズル52bのノズル側燃料通路L2を切替用燃料通路L3と連通させる構成とすることが好ましい。
【0083】
また、実施例1から3では、燃料通路Lの燃圧が低い場合として、ガスタービン1が部分負荷運転を行っている場合とし、燃料通路Lの燃圧が高い場合として、ガスタービン1が全負荷運転を行っている場合としたが、この構成に限定されない。例えば、燃料通路Lの燃圧が低い場合として、ガスタービン1が着火(起動)から全負荷の25%程度となる部分負荷に到達するまでの運転を行っている場合とし、燃料通路Lの燃圧が高い場合として、ガスタービン1が全負荷の25%程度となる部分負荷から全負荷までの運転を行っている場合としてもよい。つまり、燃料差圧に適した燃料の濃度分布が形成可能であれば、燃圧の高低は、ガスタービン1の運転状態がいずれの場合であってもよい。
【0084】
また、実施例1から3では、噴射切替機構75,111は、仕切り板76,116、弾性部材77,117及びパージ孔78,118を含む構成としたが、燃圧に応じて、燃料の噴射を切替可能な機構であれば、特に限定されない。