特許第6037861号(P6037861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037861
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】シーム溶接装置およびシーム溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20161128BHJP
   B23K 11/06 20060101ALI20161128BHJP
   B23K 11/36 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B23K11/24 350
   B23K11/06 320
   B23K11/24 335
   B23K11/36
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-17023(P2013-17023)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-147948(P2014-147948A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】栗本 典子
(72)【発明者】
【氏名】金子 貢
(72)【発明者】
【氏名】河合 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】山足 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 晴彦
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−134280(JP,U)
【文献】 特開2004−122560(JP,A)
【文献】 特開2004−223557(JP,A)
【文献】 実開昭58−116171(JP,U)
【文献】 特開平11−104849(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0237197(US,A1)
【文献】 特開平10−071475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/24
B23K 11/06
B23K 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接装置本体と、
前記溶接装置本体に設けられ、少なくとも2枚以上の母材を積層したワークを挟み込んで転動する一対のローラ電極と、
前記溶接装置本体の前記一対のローラ電極よりも進行方向側に設けられ、前記ワークの一方の面を加熱する熱源と、
前記熱源による加熱位置と前記一対のローラ電極による挟持位置との間で、前記ワークの他方の面の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段で測定した前記ワークの他方の面の温度に基づき、前記ワーク内の前記母材間の隙間の大きさを推測し、前記隙間の大きさに応じて溶接条件を調整する制御手段と、を備えたことを特徴とするシーム溶接装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記隙間の大きさに応じて前記一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整することを特徴とする請求項1に記載のシーム溶接装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記隙間の大きさに応じて前記一対のローラ電極が通過するときの前記ワーク内の前記母材間の接触面積の大きさを推測し、前記接触面積の大きさに応じて前記一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整することを特徴とする請求項2に記載のシーム溶接装置。
【請求項4】
一対のローラ電極で少なくとも2枚以上の母材を積層したワークを挟持し、該一対のローラ電極を回転させながら加圧・通電することで抵抗溶接を行うシーム溶接方法であって、
前記一対のローラ電極による挟持位置よりも進行方向で、前記ワークの一方の面を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程での加熱位置と前記一対のローラ電極による挟持位置との間で、前記ワークの他方の面の温度を測定する測定工程と、
前記測定工程で測定した前記ワークの他方の面の温度に基づき、前記ワーク内の前記母材間の隙間の大きさを推測し、前記隙間の大きさに応じて溶接条件を調整する調整工程と、を含むことを特徴とするシーム溶接方法。
【請求項5】
前記調整工程は、前記隙間の大きさに応じて前記一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整することを特徴とする請求項4に記載のシーム溶接装置。
【請求項6】
前記調整工程は、前記隙間の大きさに応じて前記一対のローラ電極が通過するときの前記ワーク内の前記母材間の接触面積の大きさを推測し、前記接触面積の大きさに応じて前記一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整することを特徴とする請求項5に記載のシーム溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のローラ電極で少なくとも2枚以上の母材を積層したワークを挟持し、該一対のローラ電極を回転させながら加圧・通電することで抵抗溶接を行うシーム溶接装置およびシーム溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シーム溶接においてナゲットの温度を管理する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、溶接部の接合面におけるナゲット長さを、溶接部の接合面の長さで割ったナゲット比が、40〜60%の範囲内に収まるように溶接温度の溶接条件を設定して溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3575287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、少なくとも2枚以上の母材を積層したワークをシーム溶接する場合には、ワークが小型であったため、小型のワークを固定配置された一対のローラ電極に移動させてシーム溶接を実施していた。
しかし、近年、大型のワークをシーム溶接するために、一対のローラ電極が設けられた溶接装置本体をロボットに搭載し、ロボットによって溶接装置本体をワークに対して移動させてシーム溶接を実施する。
【0005】
このとき、ワークの各母材がプレス成形などによって個別に形成されているため、ワークの溶接対象部位ではワーク内の母材間の隙間の大きさが一定にならない。
ワークの溶接対象部位でワーク内の母材間の隙間の大きさが異なるときに、同一の溶接条件でシーム溶接を実施すると、溶接対象部位の溶接状態がばらつく場合がある。
例えばワーク内の母材間の隙間の大きさが異なるときにワークに供給する溶接電流値が同一である場合には、ワーク内の母材間の隙間が大きい程電気抵抗が高くナゲットが成長し易いため、溶接強度がばらつきシーム溶接の品質が低下する。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、ワーク内の母材間の隙間の大きさが異なる場合であっても、ナゲットを等しい大きさに成長させる溶接条件に適合させて溶接状態を一定に維持し、シーム溶接の品質を向上するシーム溶接装置およびシーム溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 溶接装置本体(例えば、後述の溶接装置本体20)と、前記溶接装置本体に設けられ、少なくとも2枚以上の母材(例えば、後述の母材W1,W2)を積層したワーク(例えば、後述のワークW)を挟み込んで転動する一対のローラ電極(例えば、後述の一対のローラ電極21)と、前記溶接装置本体の前記一対のローラ電極よりも進行方向(例えば、後述の進行方向A)前方に設けられ、前記ワークの一方の面(例えば、後述の上面Wa)を加熱する熱源(例えば、後述の熱源22)と、前記熱源による加熱位置と前記一対のローラ電極による挟持位置との間で、前記ワークの他方の面(例えば、後述の下面Wb)の温度(例えば、後述の温度Tb)を測定する温度測定手段(例えば、後述の第2温度センサ24)と、前記温度測定手段で測定した前記ワークの他方の面の温度に基づき、前記ワーク内の前記母材間の隙間の大きさ(例えば、後述のGAP)を推測し、前記隙間の大きさに応じて溶接条件(例えば、後述の溶接電流Iの値)を調整する制御手段(例えば、後述の制御装置30)と、を備えたことを特徴とするシーム溶接装置。
【0008】
(1)の発明によると、制御手段は、ワークの一方の面を加熱し、加熱位置の進行方向下流側でワークの他方の面の温度を測定し、測定したワークの他方の面の温度に基づき、ワーク内の母材間の隙間の大きさを推測し、当該隙間の大きさに応じて溶接条件を調整する。
すなわち、加熱位置で加熱された熱は、ワークの一方の面から他方の面に伝熱される。このとき、ワーク内の母材間の隙間が大きい程、熱はワークの他方の面へ伝熱され難くなる。つまり、ワークの一方の面から他方の面に伝熱される熱量とワーク内における母材間の隙間の大きさとは、反比例の相関関係を有する。
このため、ワークの一方の面から伝熱された他方の面の温度とワーク内における母材間の隙間の大きさとの相関関係を予め特定すると、加熱後のワークの他方の面の温度を測定することで、ワーク内の母材間の隙間の大きさを推測することができる。これにより、ワーク内の母材間の隙間の大きさに応じて溶接条件を調整することができる。
したがって、ワーク内の母材間の隙間の大きさが異なる場合であっても、ナゲットを等しい大きさに成長させる溶接条件に適合させて溶接状態を一定に維持し、シーム溶接の品質を向上することができる。
【0009】
(2) 前記制御手段は、前記隙間の大きさに応じて前記一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整することを特徴とする(1)に記載のシーム溶接装置。
【0010】
(2)の発明によると、制御手段は、ワーク内の母材間の隙間の大きさに応じて前記一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整する。
すなわち、ワーク内の母材間の隙間が大きい程、ワークの電気抵抗が高く、小さな溶接電流を供給するだけでナゲットが成長し、高い溶接強度を得ることができる。つまり、一定の溶接強度を得るために、ワーク内の母材間の隙間の大きさと溶接電流の大きさとは、反比例の相関関係を有する。
このため、ワーク内の母材間の隙間の大きさと溶接電流の大きさとの相関関係を予め特定すると、ワーク内の母材間の隙間の大きさに応じて一定の溶接強度を得るための溶接電流値を推測することができる。
これにより、ワーク内の母材間の隙間の大きさに応じて一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整し、ナゲットを等しい大きさに成長させる溶接条件に適合させることができる。
【0011】
(3) 前記制御手段は、前記隙間の大きさに応じて前記一対のローラ電極が通過するときの前記ワーク内の前記母材間の接触面積の大きさ(例えば、後述のCAS)を推測し、前記接触面積の大きさに応じて前記一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整することを特徴とする(2)に記載のシーム溶接装置。
【0012】
(3)の発明によると、制御手段は、ワーク内の母材間の隙間の大きさに応じて一対のローラ電極が通過するときのワーク内の母材間の接触面積の大きさを推測し、当該接触面積の大きさに応じて一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整する。
すなわち、ワーク内の母材間の隙間が大きい程、一対のローラ電極が通過するときのワーク内の母材間の接触面積が小さくなる。つまり、ワーク内の母材間の隙間の大きさとワーク内の母材間の接触面積の大きさとは、反比例の相関関係を有する。
そして、ワーク内の母材間の接触面積が大きい程、ワークの電気抵抗が低く、大きな溶接電流を供給しなければナゲットが成長せず、高い溶接強度を得ることができない。つまり、一定の溶接強度を得るために、ワーク内の母材間の接触面積の大きさと溶接電流の大きさとは、比例の相関関係を有する。
このため、ワーク内の母材間の隙間の大きさとワーク内の母材間の接触面積の大きさとの相関関係およびワーク内の母材間の接触面積の大きさと溶接電流の大きさとの相関関係を予め特定すると、ワーク内の母材間の隙間の大きさに応じて一定の溶接強度を得るための溶接電流値を推測することができる。
したがって、ワーク内の母材間の隙間の大きさに応じて一定の溶接強度を得るための溶接電流値を設定して溶接状態を一定に維持し、均一な溶接強度にしてシーム溶接の品質を向上することができる。
【0013】
(4) 一対のローラ電極(例えば、後述の一対のローラ電極21)で少なくとも2枚以上の母材(例えば、後述の母材W1,W2)を積層したワーク(例えば、後述のワークW)を挟持し、該一対のローラ電極を回転させながら加圧・通電することで抵抗溶接を行うシーム溶接方法であって、前記一対のローラ電極による挟持位置よりも進行方向(例えば、後述の進行方向A)で、前記ワークの一方の面(例えば、後述の上面Wa)を加熱する加熱工程(例えば、後述のステップS51,S53)と、前記加熱工程での加熱位置と前記一対のローラ電極による挟持位置との間で、前記ワークの他方の面(例えば、後述の下面Wb)の温度(例えば、後述の温度Tb)を測定する測定工程(例えば、後述のステップS54)と、前記測定工程で測定した前記ワークの他方の面の温度に基づき、前記ワーク内の前記母材間の隙間の大きさ(例えば、後述のGAP)を推測し、前記隙間の大きさに応じて溶接条件(例えば、後述の溶接電流Iの値)を調整する調整工程(例えば、後述のステップS55,S56,S57,S5a,S5b,S5c,S5d)と、を含むことを特徴とするシーム溶接方法。
【0014】
(4)の発明によると、(1)の発明と同様な作用・効果を奏することができる。
【0015】
(5) 前記調整工程は、前記隙間の大きさに応じて前記一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整することを特徴とする(4)に記載のシーム溶接装置。
【0016】
(5)の発明によると、(2)の発明と同様な作用・効果を奏することができる。
【0017】
(6) 前記調整工程は、前記隙間の大きさに応じて前記一対のローラ電極が通過するときの前記ワーク内の前記母材間の接触面積の大きさ(例えば、後述のCAS)を推測し、前記接触面積の大きさに応じて前記一対のローラ電極に供給する溶接電流値を調整することを特徴とする(5)に記載のシーム溶接方法。
【0018】
(6)の発明によると、(3)の発明と同様な作用・効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワーク内の母材間の隙間の大きさが異なる場合であっても、ナゲットを等しい大きさに成長させる溶接条件を適合させて溶接状態を一定に維持し、シーム溶接の品質を向上するシーム溶接装置およびシーム溶接方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るシーム溶接装置を示す概略構成図である。
図2】上記実施形態に係る溶接装置本体およびその周辺を示す斜視図である。
図3】上記実施形態に係る温度−GAP特性を示す図である。
図4】上記実施形態に係るGAP−溶接電流特性を示す図である。
図5】上記実施形態に係るシーム溶接装置を用いたシーム溶接を実施する手順を示すフローチャートである。
図6】上記実施形態に係るシーム溶接の詳細な手順を示すフローチャートである。
図7】上記実施形態に係る溶接条件の時間変化を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る温度−GAP特性を示す図である。
図9】上記実施形態に係るGAP−CAS特性を示す図である。
図10】上記実施形態に係るCAS−溶接電流特性を示す図である。
図11】上記実施形態に係るシーム溶接の詳細な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0022】
<第1実施形態>
先ず、図1図2を参照して、第1実施形態に係るシーム溶接装置1の構成について説明する。
図1は、シーム溶接装置1を示す概略構成図である。図2は、溶接装置本体20およびその周辺を示す斜視図である。
【0023】
シーム溶接装置1は、ロボット10と、溶接装置本体20と、制御装置30と、を備える。
【0024】
ロボット10は、多関節型のアーム11を有する産業用ロボットであり、アーム11の基端側に接続された基部12を工場などの床面に設置し、プログラム動作によって任意の姿勢に切り替わるとともにアーム11を任意の状態に変化させることができる。
ロボット10の基部12は、回転可能であり、ロボット10は、基部12の回転角度に対応した信号を出力する回転角度検出部13を有する
ロボット10のアーム11は、6軸の関節を有し、ロボット10は、アーム11の各関節の軸角度に対応した信号を出力する軸角度検出部14を有する。
【0025】
溶接装置本体20は、ロボット10のアーム11の先端に取り付けられる。
溶接装置本体20は、一対のローラ電極21と、熱源22と、第1温度センサ23と、第2温度センサ24と、を有する。
【0026】
一対のローラ電極21は、上方に配置された第1ローラ電極21aおよび下方に配置された第2ローラ電極21bから構成され、少なくとも2枚以上の母材W1,W2を積層したワークWを挟み込んで転動する。
【0027】
熱源22は、溶接装置本体20の一対のローラ電極21よりも溶接装置本体20の進行方向A前方に設けられ、ワークWの上面Waを加熱する。熱源22は、例えば、誘導加熱装置やコイルヒータなどの通電によって発熱する発熱体を用いる。
【0028】
第1温度センサ23は、熱源22による加熱位置と一対のローラ電極21による挟持位置との間で、ワークWの上面Waの温度Taを測定する。
【0029】
第2温度センサ24は、第1温度センサ23の下方に対向配置され、熱源22による加熱位置と一対のローラ電極21による挟持位置との間で、ワークWの下面Wbの温度Tbを測定する。
【0030】
第1温度センサ23および第2温度センサ24は、例えば、ワークWに非接触状態で温度を測定できる非接触型温度センサを用いる。
【0031】
図2に示すように、溶接装置本体20は、基部40と、第1支持ユニット50と、第2支持ユニット60と、移動機構70と、を更に有する。
【0032】
基部40は、ロボット10のアーム11の先端に保持され、熱源22、第1温度センサ23および第2温度センサ24を支持する。
第1支持ユニット50は、基部40に対して移動可能に構成され、第1ローラ電極21aを支持する。
第2支持ユニット60は、基部40に固定され、第2ローラ電極21bを支持する。
移動機構70は、第1支持ユニット50を移動させる。
【0033】
基部40は、溶接装置本体20の待機時の垂直方向(X方向)に延びて直方体状に形成された支柱41と、支柱41の上端部41aに設けられた保持板42と、保持板42の上面に固定された状態でロボット10のアーム11の先端に回転可能に取り付けられたマウント部43と、支柱41の一方の側面41bに設けられた溶接電源44と、を有する。
【0034】
保持板42は、上方にマウント部43が配置される平坦部42aと、支柱41の溶接電源44が設けられた側面41bと反対側の側面41cに沿って下方に屈曲する屈曲部42bと、屈曲部42bの下端から外方に向けて張り出した張出部42cと、を有する。
【0035】
支柱41は、保持板42の張出部42cが張り出した側面41cにおいて張出部42cの下方で第1支持ユニット50を移動可能に有するとともに、第2支持ユニット60を第1支持ユニット50の更に下方に固定して有する。第1支持ユニット50および第2支持ユニット60は、支柱41の当該側面41cにおいてX方向に並列して配置される。
【0036】
溶接電源44は、一対のローラ電極21に溶接電流を供給したり、熱源22に電流を供給したりするなど、溶接装置本体20で使用される電流を出力する。
【0037】
移動機構70は、支柱41の溶接電源44が設けられた側面41bと反対側の側面41cにおいて保持板42の屈曲部42bの下方でX方向に延びる一対のガイドレール71と、第1支持ユニット50に固定されたロッド部72と、張出部42cに設けられてロッド部72をX方向に駆動するシリンダ73と、を有する。
【0038】
第1支持ユニット50は、ロッド部72が固定された筐体51と、第1ローラ電極21aに設けられて溶接装置本体20の待機時の水平方向(Y方向)に延びる支軸部材52と、X方向およびY方向に直交する方向(Z方向)に第1ローラ電極21aを回動する支軸回動機構53と、第1ローラ電極21aを回転駆動する電極回転用モータ54と、を有する。
【0039】
筐体51は、一対のガイドレール71に係合する一対のガイド溝51aを有する。第1支持ユニット50は、筐体51の一対のガイド溝51aが一対のガイドレール71に係合することで、シリンダ73によるX方向の駆動に応じてX方向に円滑に移動することができる。
【0040】
支軸部材52は、図示しない、第1ローラ電極21aに固定された第1軸部と、電極回転用モータ54に接続する第2軸部と、第1軸部と第2軸部とを連結する自在継手と、を有する。自在継手は、例えば、等速ジョイントを用いることができる。
【0041】
支軸回動機構53は、筐体51内に位置する図示しない支軸支持部材と、支軸支持部材を回転駆動する支軸回動用モータ53aと、支軸回動用モータ53aの動力を支軸支持部材に伝達する図示しない動力伝達機構と、を有する。
【0042】
第2支持ユニット60は、基本的に第1支持ユニット50と同様な構成である。このため、第2支持ユニット60は、第1支持ユニット50と共通する構成に同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0043】
第2支持ユニット60は、第1支持ユニット50をX方向に反転させた状態で支柱41に固定される。このため、第2支持ユニット60は、筐体51のガイド溝51aを有しない。
第1支持ユニット50および第2支持ユニット60は、第1ローラ電極21aと第2ローラ電極21bとのX方向の位置を揃えて配置される。
【0044】
制御装置30は、ロボット制御部31と、熱源制御部32と、溶接電源制御部33と、電極回転用モータ制御部34と、支軸回動用モータ制御部35と、シリンダ制御部36と、記憶部37と、を有する。
【0045】
ロボット制御部31は、ロボット10の姿勢およびアーム11を変化させるようにロボット10を制御する。
熱源制御部32は、熱源22に供給する通電量を調整することで熱源22を制御する。
溶接電源制御部33は、溶接電源44を制御する。
電極回転用モータ制御部34は、電極回転用モータ54を制御する。
支軸回動用モータ制御部35は、支軸回動用モータ53aを制御する。
シリンダ制御部36は、シリンダ73を制御する。
【0046】
記憶部37は、ロボット10のティーチングデータおよび溶接制御データを記憶している。溶接制御データは、ロボット10のアーム11の先端に固定された溶接装置本体20の移動速度に関する移動速度データと、一対のローラ電極21の回転速度に関する回転速度データと、を含む。
【0047】
また、記憶部37は、図3に示す温度−GAP特性、図4に示すGAP−溶接電流特性を更に記憶している。
【0048】
図3は、温度−GAP特性を示す図であり、横軸は、ワークWの上面Waから伝熱された下面Wbの温度Tbを示し、縦軸は、ワークW内における母材W1,W2間の隙間の大きさ(以下、GAPという)を示す。例えば、GAPは、G0、G1、G2の3段階に規定される。なお、GAPを3段階以外に規定してもよい。
ここで、温度−GAP特性は、ワークWの上面Waから伝熱された下面Wbの温度Tbと、GAPとの、反比例の相関関係を規定する。温度−GAP特性は、ワークW内の母材W1,W2間のGAPが大きい程、ワークWの上面Waから伝熱された熱がワークWの下面Wbへ伝熱され難くなる相関性に基づいている。温度−GAP特性は、予め実験などにより設定される。
【0049】
図4は、GAP−溶接電流特性を示す図であり、横軸は、GAPを示し、縦軸は、溶接電流Iの大きさを示す。例えば、溶接電流Iは、Ia、Ib、Icの3段階に規定される。なお、溶接電流Iを3段階以外に規定してもよい。
GAP−溶接電流特性は、一定の溶接強度を得るための、GAPと溶接電流の大きさとの、反比例の相関関係を規定する。GAP−溶接電流特性は、ワークW内の母材W1,W2間のGAPが大きい程、ワークWの電気抵抗が高く、小さな溶接電流を供給するだけでナゲットが成長し、高い溶接強度を得ることができる相関性に基づいている。CAS−溶接電流特性は、予め実験などにより設定される。
【0050】
次に、図5図6を参照して、シーム溶接装置1を用いてシーム溶接を行う手順を説明する。
図5は、シーム溶接装置1を用いたシーム溶接を実施する手順を示すフローチャートである。図6は、シーム溶接の詳細な手順を示すフローチャートである。
【0051】
図5に示すように、先ず、ワークWを所定位置にセットする(ステップS1)。ワークWとしては、例えば自動車のボディなど、少なくとも2枚以上の母材W1,W2を積層した大型のワークを用いることができる。ワークW内の各母材W1,W2は、プレス成形などによって個別に形成され、母材W1,W2間の隙間の大きさが一定ではない。
【0052】
続いて、制御装置30は、ロボット10のティーチングデータを作成し(ステップS2)、その作成されたティーチングデータを記憶部37に記憶する。
【0053】
次に、ロボット制御部31は、ロボット10を制御し、ロボット10の姿勢およびアーム11を変化させて溶接装置本体20を溶接ポイントに移動させる(ステップS3)。具体的には、ロボット制御部31は、ワークWの溶接対象部位の溶接ポイントが一対のローラ電極21の間に位置するように溶接装置本体20を移動させる。
溶接ポイントに移動した溶接装置本体20は、下側の第2ローラ電極21bをワークWの下面Wbに接触させる。
【0054】
次に、シリンダ制御部36は、シリンダ73を制御し、第1支持ユニット50を下方の第2支持ユニット60側へ移動させ、一対のローラ電極21でワークWを挟持して加圧する(ステップS4)。
【0055】
続いて、制御装置30は、溶接ポイントに対してシーム溶接を実施する(ステップS5)。具体的には、制御装置30は、図6に示す後述するステップS50〜S58の処理を行ってシーム溶接を実施する。
【0056】
すなわち、電極回転用モータ制御部34は、電極回転用モータ54を駆動して一対のローラ電極21を回動させ、一対のローラ電極21を溶接ポイント内における一対のローラ電極21で通電する通電ポイントに移動させる(ステップS50)。
【0057】
続いて、熱源制御部32は、熱源22に通電して発熱させ、熱源22でワークWの上面Waを加熱する(ステップS51)。
【0058】
続いて、制御装置30は、第1温度センサ23でワークWの上面Waの温度Taを測定する(ステップS52)。ここで、第1温度センサ23がワークWの上面Waを測定する測定位置は、熱源22がワークWの上面Waを加熱する加熱位置よりも溶接装置本体20の進行方向Aの下流側である。
【0059】
続いて、熱源制御部32は、第1温度センサ23が測定したワークWの上面Waの温度Taが所定範囲内に収まるように、第1温度センサ23が測定したワークWの上面Waの温度Taに応じて熱源22に供給する通電量を調整する(ステップS53)。
【0060】
続いて、制御装置30は、第2温度センサ24でワークWの下面Wbの温度Tbを測定する(ステップS54)。ここで、第2温度センサ24がワークWの下面Wbを測定する測定位置は、熱源22がワークWの上面Waを加熱する加熱位置よりも溶接装置本体20の進行方向Aの下流側であり、第2温度センサ24は、ワークWの上面Waから下面Wbに伝熱された温度Tbを測定する。
【0061】
続いて、制御装置30は、記憶部37に予め記憶している図3に示す温度−GAP特性を用い、第2温度センサ24で測定したワークWの下面Wbの温度Tbに応じて求められるGAPを算出する(ステップS55)。ここで、算出されるGAPは、第2温度センサ24で測定した測定位置でのワークW内における母材W1,W2間の隙間の大きさであり、G0、G1、G2の3段階に分けられたものである。
【0062】
続いて、制御装置30は、記憶部37に予め記憶している図4に示すGAP−溶接電流特性を用いて、算出したGAPに応じて求められる溶接電流Iの値を算出する(ステップS56)。ここで、算出される溶接電流Iの値は、第2温度センサ24で測定した測定位置で、一定の溶接強度を得るために必要な溶接電流値であり、3段階に分けられたG0、G1、G2のGAPに対応して、Ia、Ib、Icの3段階に分けられたものである。
そして、制御装置30は、算出した第2温度センサで測定した測定位置での溶接電流Iの値を記憶部37に一旦記憶させる。
【0063】
続いて、溶接電源制御部33は、一対のローラ電極21に溶接電流を通電する(ステップS57)。ここで、一対のローラ電極21に通電される溶接電流は、記憶部37に一旦記憶させた過去に第2温度センサ24で測定した測定位置であって、現在一対のローラ電極21の挟持位置での溶接電流Iの値を供給する。これにより、一対のローラ電極21の挟持位置で一定の溶接強度が得られる抵抗溶接が実施される。
【0064】
そして、制御装置30は、溶接ポイントの全てについてシーム溶接が終了したか否かを判定する(ステップS58)。シーム溶接が終了していないと判定された場合(ステップS58→NO)には、ステップS50に進み、ステップS50以降の処理を実施する。
【0065】
一方、シーム溶接が終了したと判定された場合(ステップS58→YES)には、シリンダ制御部36は、シリンダ73を制御し、第1支持ユニット50を第2支持ユニット60から離れるように上方へ移動させ、一対のローラ電極21によるワークWの加圧を解除する(ステップS6)。
【0066】
次に、ロボット制御部31は、ロボット10を制御し、ロボット10の姿勢およびアーム11を変化させて溶接装置本体20を待機位置に移動させる(ステップS7)。
以上により、シーム溶接を行う手順が終了する。
【0067】
図7は、本実施形態に係る溶接条件の時間変化を示す図である。図7の横軸は、時間であり、縦軸は、第2温度センサ24で測定したワークWの下面Wbの温度Tbである。
図7に示すように、加熱後のワークWの下面Wbの温度Tbに応じてGAPを推測する。そして、GAPに応じて溶接電流Iの値を調整することができる。これにより、ワークW内の母材W1,W2間のGAPが異なるときにワークWに供給する溶接電流Iの値を最適に調整し、ナゲットを等しい大きさに成長させる溶接条件に適合させて溶接状態を一定に維持し、シーム溶接の品質を向上することができる。
【0068】
以上の本実施形態に係るシーム溶接装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0069】
(1)制御装置30は、一対のローラ電極21による挟持位置よりも進行方向Aで、熱源22でワークWの上面Waを加熱し、熱源22による加熱位置と一対のローラ電極21による挟持位置との間で、ワークWの下面Wbの温度Tbを測定し、測定したワークWの下面Wbの温度Tbに基づき、GAPを推測し、当該GAPに応じて溶接条件を調整する。
すなわち、加熱位置で加熱された熱は、ワークWの上面Waから下面Wbに伝熱される。このとき、ワークW内の母材W1,W2間の隙間が大きい程、熱はワークWの下面Wbへ伝熱され難くなる。つまり、ワークWの上面Waから下面Wbに伝熱される熱量とGAPとは、反比例の相関関係を有する。
このため、ワークWの上面Waから下面Wbに伝熱される熱量とワークW内における母材W1,W2間の隙間の大きさとの相関関係を予め特定すると、加熱後のワークWの下面Wbの温度Tbを測定することで、GAPを推測することができる。これにより、GAPに応じて溶接条件を調整することができる。
したがって、GAPが異なる場合であってもナゲットを等しい大きさに成長させる溶接条件に適合させて溶接状態を一定に維持し、シーム溶接の品質を向上することができる。
【0070】
(2)制御装置30は、GAPに応じて一対のローラ電極21に供給する溶接電流Iの値を調整する。
すなわち、GAPが大きい程、ワークWの電気抵抗が高く、小さな溶接電流Iを供給するだけでナゲットが成長し、高い溶接強度を得ることができる。つまり、一定の溶接強度を得るために、GAPの大きさと溶接電流Iの大きさとは、反比例の相関関係を有する。
このため、GAPの大きさと溶接電流Iの大きさとの相関関係とを予め特定すると、GAPの大きさに応じて一定の溶接強度を得るための溶接電流Iの値を推測することができる。
これにより、GAPの大きさに応じて一対のローラ電極21に供給する溶接電流Iの値を調整し、ナゲットを等しい大きさに成長させる溶接条件に適合させることができる。
【0071】
<第2実施形態>
第2実施形態では、シーム溶接の実行時の詳細な手順が第1実施形態と異なるが他の部分は同様である。そのため、その特徴部分を説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0072】
記憶部37は、図8に示す温度−GAP特性、図9に示すGAP−CAS特性、および図10に示すCAS−溶接電流特性を更に記憶している。
【0073】
図8は、温度−GAP特性を示す図であり、横軸は、ワークWの上面Waから伝熱された下面Wbの温度Tbを示し、縦軸は、ワークW内における母材W1,W2間の隙間の大きさ(以下、GAPという)を示す。
ここで、温度−GAP特性は、ワークWの上面Waから伝熱された下面Wbの温度Tbと、GAPとの、反比例の相関関係を規定する。温度−GAP特性は、GAPが大きい程、ワークWの上面Waから伝熱された熱がワークWの下面Wbへ伝熱され難くなる相関性に基づいている。温度−GAP特性は、予め実験などにより設定される。
【0074】
図9は、GAP−CAS特性を示す図であり、横軸は、GAPを示し、縦軸は、一対のローラ電極21が通過するときのワークW内の母材W1,W2間の接触面積の大きさ(以下、CASという)を示す。
ここで、GAP−CAS特性は、GAPと、CASとの、反比例の相関関係を規定する。GAP−CAS特性は、GAPが大きい程、CASが小さくなる相関性に基づいている。GAP−CAS特性は、予め実験などにより設定される。
【0075】
図10は、CAS−溶接電流特性を示す図であり、横軸は、CASを示し、縦軸は、溶接電流の大きさを示す。
ここで、CAS−溶接電流特性は、一定の溶接強度を得るための、CASと、溶接電流Iの大きさとの、比例の相関関係を規定する。CAS−溶接電流特性は、CASが大きい程、ワークWの電気抵抗が低く、大きな溶接電流を供給しなければナゲットが成長せず、高い溶接強度を得ることができない相関性に基づいている。CAS−溶接電流特性は、予め実験などにより設定される。
【0076】
次に、シーム溶接の実行時の詳細な手順を説明する。
制御装置30は、溶接ポイントに対してシーム溶接を実施する(ステップS5)。具体的には、制御装置30は、図11に示す後述するステップS50〜S58の処理を行ってシーム溶接を実施する。
なお、以下では、上記実施形態と異なるステップS5a〜S5dの処理について説明する。
【0077】
制御装置30は、記憶部37に予め記憶している図8に示す温度−GAP特性を用い、第2温度センサ24で測定したワークWの下面Wbの温度Tbに応じて求められるGAPを算出する(ステップS5a)。ここで、算出されるGAPは、第2温度センサ24で測定した測定位置でのワークW内における母材W1,W2間の隙間の大きさである。
【0078】
続いて、制御装置30は、記憶部37に予め記憶している図9に示すGAP−CAS特性を用い、算出したGAPに応じて求められるCASを算出する(ステップS5b)。ここで、算出されるCASは、第2温度センサ24で測定した測定位置での一対のローラ電極21が通過するときのワークW内の母材W1,W2間の接触面積の大きさである。
【0079】
続いて、制御装置30は、記憶部に予め記憶している図10に示すCAS−溶接電流特性を用いて、算出したCASに応じて求められる溶接電流Iの値を算出する(ステップS5c)。ここで、算出される溶接電流Iの値は、第2温度センサ24で測定した測定位置で、一定の溶接強度を得るために必要な溶接電流値である。
そして、制御装置30は、算出した第2温度センサ24で測定した測定位置での溶接電流Iの値を記憶部37に一旦記憶させる。
【0080】
続いて、溶接電源制御部33は、一対のローラ電極21に溶接電流を通電する(ステップS5d)。ここで、一対のローラ電極21に通電される溶接電流は、記憶部37に一旦記憶させた過去に第2温度センサ24で測定した測定位置であって、現在一対のローラ電極21の挟持位置での溶接電流Iの値を供給する。これにより、一対のローラ電極21の挟持位置で一定の溶接強度が得られる抵抗溶接が実施される。
【0081】
以上の本実施形態に係るシーム溶接装置1によれば、上記(1)、(2)の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0082】
(3)制御装置30は、GAPに応じてCASを推測し、当該CASに応じて一対のローラ電極21に供給する溶接電流Iの値を調整する。
すなわち、GAPが大きい程、CASが小さくなる。つまり、GAPとCASとは、反比例の相関関係を有する。
そして、CASが大きい程、ワークWの電気抵抗が低く、大きな溶接電流を供給しなければナゲットが成長せず、高い溶接強度を得ることができない。つまり、一定の溶接強度を得るために、CASと溶接電流の大きさとは、比例の相関関係を有する。
このため、GAPとCASとの相関関係およびCASと溶接電流の大きさとの相関関係を予め特定すると、GAPの大きさに応じて一定の溶接強度を得るための溶接電流Iの値を推測することができる。
したがって、GAPの大きさに応じて一定の溶接強度を得るための溶接電流Iの値を設定して溶接状態を一定に維持し、溶接強度にばらつきをなくしてシーム溶接の品質を向上することができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に包含される。
【0084】
上記実施形態では、熱源22および第1温度センサ23を固定して配置していた。しかしながら、例えば、熱源22および第1温度センサ23を第1支持ユニット50に搭載し、第1ローラ電極21aと同様に上下動させるものでもよい。
【0085】
上記実施形態では、ナゲットを等しい大きさに成長させる溶接条件として、一対のローラ電極21に供給する溶接電流Iの値を調整するものであった。しかしながら、一対のローラ電極21の加圧力や回動量なども調整してもよい。
【0086】
第1実施形態では、温度−GAP特性およびGAP−溶接電流特性において、3段階に分けられた値を用いていた。しかしながら、3段階以外に分けられた散在する値を用いてもよいし、第2実施形態のように連続的に変化する値を用いてもよい。また、第2実施形態では、温度−GAP特性、GAP−CAS特性およびCAS−溶接電流特性において、連続的に変化する値を用いていた。しかしながら、第1実施形態のように散在する値を用いてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…シーム溶接装置
20…溶接装置本体
21…一対のローラ電極
22…熱源
24…第2温度センサ
30…制御装置
Tb…ワークの下面の温度
I…溶接電流
W…ワーク
W1,W2…母材
GAP…ワーク内の母材間の隙間の大きさ
CAS…ワーク内の母材間の接触面積の大きさ
Wa…上面
Wb…下面
A…進行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11