(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合部は、地板と保持部材の一方に設けられていて前記保持部材からの距離が異なる第一フック及び第二フックと他方に設けられていて前記保持部材からの距離が異なる第一係合部及び第二係合部とを備え、
前記第一係止手段は前記第一フックと第一係合部が係止した構成であり、前記第二係止手段は前記第二フックと第二係合部が係止した構成である請求項1に記載された時計部品組立体。
前記フックは前記保持部材に形成されたアームに設けられ、該アームには前記地板に設けられた第一係合部と第二係合部の間に形成されたガイド溝を相対移動可能なガイド部が設けられている請求項2に記載された時計部品組立体。
前記保持部材には第一アームと第二アームに分割されたアームが設けられ、前記第一アームには前記第一フックが設けられ、前記第二アームには前記第二フックが設けられた請求項3に記載された時計部品組立体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したジャンパばねを一体形成した裏物押さえを地板に固定する際に、特許文献1及び2に開示された固定構造を適用した場合には、裏物押さえと地板に隙間がある状態で仮固定(換言すれば、裏物押さえと地板に隙間がある状態を維持した状態を保つこと)できなかったため、ジャンパを歯車に係合することができなかった。
また、上述した他の従来例においても、手動組立方法では、ジャンパを弾性変形させて日星車の歯に係合させた状態で、手でジャンパを抑え込んで裏物押さえをねじ締めすることができるが、自動による機械組立方法では手で押さえることができず、外側からくさびを差し込んでジャンパを庇の下側に押し込んで日星車の歯に係合させ、その後に裏物押さえをねじ締めするため、ネジ締めまでの間にジャンパの圧力で裏物押さえが浮いてしまい組立困難になることがあった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みて、容易にジャンパを歯車に係合することを可能とした時計部品組立体、これを備えたムーブメント、そして時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による時計部品組立体は、地板と、間欠的に回転する歯車と、地板との間に歯車を保持する保持部材と、保持部材に設けられていて歯車に係合可能なジャンパと、保持部材に設けられていてジャンパの少なくとも一部を覆う庇部と、地板と保持部材とを係止させる係止手段とを備え、係止手段は、庇部と歯車との間からジャンパを挿入可能なように地板と保持部材とを係止させる第一係止手段と、歯車にジャンパを係合させた状態で地板と保持部材とを係合させる第二係止手段とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、ジャンパと歯車を係合させるに際し、第一係合部によって庇部と歯車との間からジャンパを挿入可能な位置に地板と保持部材とを係止させ、更に歯車にジャンパを係合させた状態で、第二係合部によってジャンパと歯車の係合が外れないように地板と保持部材とを係止させる。そのため、機械組立等によってもジャンパと歯車を容易に係止させて保持できる。
【0008】
また、係止手段は、地板と保持部材の一方に設けられたフックと他方に設けられていて保持部材からの距離が異なる第一係合部及び第二係合部とを備え、第一係止手段はフックと第一係合部が係止した構成であり、第二係止手段はフックと第二係合部が係止した構成であってもよい。
本発明によれば、フックと第一係合部が係止した状態で、庇部と歯車との間からジャンパを挿入可能なように地板と保持部材とを係止させ、フックと第二係合部が係合した状態で、ジャンパと歯車を係合させて両者の係合が外れないように地板と保持部材を係止させることができる。
【0009】
また、係止手段は、地板と保持部材の一方に設けられていて保持部材からの距離が異なる第一フック及び第二フックと他方に設けられた係合部とを備え、第一係止手段は第一フックと係合部が係止した構成であり、第二係止手段は第二フックと係合部が係止した構成であってもよい。
本発明によれば、第一フックと係合部が係止した状態で、庇部と歯車との間からジャンパを挿入可能なように地板と保持部材とを係止させ、更に第二フックと係合部が係合した状態で、ジャンパと歯車を係合させて両者の係合が外れないように地板と保持部材を係止させることができる。
【0010】
また、係合部は、地板と保持部材の一方に設けられた保持部材からの距離が異なる第一フック及び第二フックと他方に設けられていて保持部材からの距離が異なる第一係合部及び第二係合部とを備え、第一係止手段は第一フックと第一係合部が係止した構成であり、第二係止手段は第二フックと第二係合部が係止した構成であってもよい。
本発明によれば、第一フックと第一係合部が係止した状態で、庇部と歯車との間からジャンパを挿入可能なように地板と保持部材とを係止させ、第二フックと第二係合部が係合した状態で、ジャンパと歯車を係合させて両者の係合が外れないように地板と保持部材を係止させることができる。
【0011】
また、フックは保持部材に形成されたアームに設けられ、該アームには前記地板に設けられた第一係合部と第二係合部の間に形成されたガイド溝を相対移動可能なガイド部が設けられていてもよい。
保持部材または地板の押圧によって、フックを設けたアームをガイド溝に沿って相対移動させて、フックを第一係合部に係止させ、更にフックを第二係合部に係合させることができる。
【0012】
また、保持部材には第一アームと第二アームに分割されたアームが設けられ、第一アームには第一フックが設けられ、第二アームには第二フックが設けられていてもよい。
第一アームに設けた第一フックを係合部に係止させた状態で、庇部と歯車との間からジャンパを挿入可能なように地板と保持部材とを係合させ、更に第二アームに設けた第二フックを係合部に係止させた状態で、ジャンパと歯車を係合させて両者の係合が外れないように地板と保持部材を係止させることができる。
【0013】
なお、本発明によるムーブメントは、上述したいずれかの時計部品組立体を有する。
【0014】
また、本発明による時計は、上述したいずれかの時計部品組立体またはムーブメントを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による時計部品組立体、ムーブメント及び時計は、係合部の第一係合部と第二係合部によって地板と保持部材を段階的に接近させて係合することで、庇部と歯車との間からジャンパを挿入可能なように地板と保持部材とを係合させた段階と、ジャンパと歯車を係合させた状態でジャンパが外れないように地板と保持部材とを係合させた段階とを得て、ジャンパと歯車を係止させて固定できる。そのため、機械組立等によっても、地板と保持部材との間でジャンパと歯車を係合させる組立を容易且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態による時計ムーブメントの時計部品組立体の組立上がり状態を示す要部斜視図である。
【
図2】
図1に示す時計部品組立体の要部を示す平面図である。
【
図3】
図2に示すムーブメントの時計部品組立体の要部を示すA−A線断面図である。
【
図4】裏物押さえのフック部を有するアームと地板の第一及び第二係合部を示す組立前の斜視図である。
【
図5】
図4で示すアームと第一及び第二係合部の正面図である。
【
図6】フック部が第一係合部に係合した状態を示す時計部品組立体の要部斜視図である。
【
図7】
図6に示す時計部品組立体の要部平面図である。
【
図8】
図7に示す時計部品組立体の要部を示すB−B線断面図である。
【
図9】ジャンパ部を日星車に係合させた後のフック部が第一係合部に係合した状態を示す時計部品組立体の要部斜視図である。
【
図10】
図9に示す時計部品組立体の要部平面図である。
【
図11】
図10に示す時計部品組立体の要部を示すC−C線断面図である。
【
図12】本発明の第二実施形態によるムーブメントの時計部品組立体におけるアームと係合部を示す組立前の正面図である。
【
図13】アームのフック部を第一係合部に係合させた状態の正面図である。
【
図14】
図13に示すフック部と第一係合部の係合状態を示すD−D線縦断面図である。
【
図15】アームのフック部を第二係合部に係止させた状態の正面図である。
【
図16】
図15におけるフック部と係合部とを示す縦断面図であり、(a)は一方のフック部が第一係合部に係合した状態のE−E線断面図、(b)は他方のフック部が第二係合部に係合した状態のF−F線断面図である。
【
図17】本発明の第三実施形態によるムーブメントの時計部品組立体におけるアームと第一及び第二係合部を示す組立前の正面図である。
【
図18】第一フック部を第一係合部に係合させた状態の正面図である。
【
図19】
図18におけるフック部と第一係合部の係合状態を示すG−G線縦断面図である。
【
図20】第二フック部を第二係合部に係合させた状態の正面図である。
【
図21】
図20における第二フック部と第二係合部の係合状態を示すH−H線縦断面図である。
【
図22】本発明の第四実施形態によるムーブメントの時計部品組立体におけるフック部と係合部を示す平面図である。
【
図23】
図22における時計部品組立体の要部を示すI−I線断面図である。
【
図24】裏物押さえのアームとフック部を示す要部斜視図である。
【
図25】フック部と第一係合部との係合状態を示す平面図である。
【
図26】
図25におけるフック部と第一係合部との係合状態を示すJ−J線断面図である。
【
図27】フック部を第二係合部に係止させた状態を示す平面図である。
【
図28】
図27におけるフック部と第二係合部との係合状態を示すK−K線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態による時計部品組立体、これを備えたムーブメント及び時計を添付図面に基づいて説明する。
図1から
図11には、本発明の第一実施形態によるムーブメント1の要部が開示されている。
図1及び
図2に示すムーブメント1において、各構成部品が組み付けられる地板2はムーブメント1を構成する輪列等を組み込むベース部材である。この地板2と文字盤の裏側に位置する裏物押さえ3(本発明の保持部材の一例)との間には、1日所定角度回転して日を表示する日星車4(本発明の歯車の一例)が配設されている。
【0018】
裏物押さえ3に形成された孔部3aには、日星車4の歯4aに係合可能なジャンパ部6(本発明のジャンパの一例)が一体形成されている。そして、ジャンパ部6は、孔部3aの縁部(基部)から線状または棒状に延びていて弾性変形可能とされており、この基部から地板2に近接する方向に曲げられている。さらに、ジャンパ部6の先端角部6aは、地板2に近接する方向に屈曲され、いわゆるスプーン状に形成されている。これにより、先端角部6aは、庇部7に対して、地板2の厚さ方向に背離する位置に形成される(先端角部6aは、庇部7の下方に位置する)。
図3に示すように、ジャンパ部6は日星車4よりも厚みが小さいため、日星車4の歯4a間にジャンパ部6の先端角部6aを確実に嵌合できるように、ジャンパ部6には地板2側に突出する屈曲部6bが形成されている。
また、ジャンパ部6には日星車4の歯4aの方向に傾斜するように初期撓みを持たせており、常態においてジャンパ部6は日星車4の歯4aに一部載置された位置に設けられている(
図8参照)。更にジャンパ部6の近傍にはジャンパ部6を押さえつけるための庇部7が孔部3a内に突出して一体形成されている。
【0019】
更に、
図1、
図4及び
図5において、裏物押さえ3の一端部には地板2方向に延びるアーム9が形成され、その先端部にはアーム9の延長上に延びるガイド部10とアーム9の両側に延びるフック部11、12とが形成されている。
一方、地板2には、
図3に示すように、日星車4に当接する位置にジャンパ部6を支持するための受けプレート14が形成され、更に裏物押さえ3に当接して変位を規制する当接ピン15が設けられている。地板2において当接ピン15と反対側の面には電池13が収納されている。
【0020】
また、
図4及び
図5において、地板2にはアーム9の長手方向に沿ってガイド溝18が形成されており、このガイド溝18の両側にはアーム9のフック部11、12に係合可能な第一係合部16と第二係合部17が高さの異なる位置(地板2の径方向(平面方向)を基準に、地板2の厚み方向に対して、異なる高さ)にそれぞれ設けられている。
また、ガイド溝18の両側に位置する第一係合部16、16は裏物押さえ3側にテーパ面16a,16aが形成される。テーパ面16a,16aは、地板2の径方向外側へ突出する方向に、徐々に拡径するように形成された斜面である。
そして、裏物押さえ3を押圧してアーム9がガイド溝18に沿って第一係合部16方向に相対移動する際、各フック部11,12がテーパ面16a,16aに沿って、地板2の径方向外側へ、弾性変形しながら摺動することになる。
図3に示すように、第一係合部16は第二係合部17よりも外側に突出する位置に形成されている。
また、第二係合部17は、第一係合部16よりも、地板2の径方向を基準に、地板2の中心方向に近接した位置に形成される。換言すれば、第二係合部17は、地板2の径方向を基準に、縮径する方向に形成されている。
この様に形成されることにより、第一係合部16と第二係合部17によって、段差が形成されるようになっている。換言すれば、第一係合部16と第二係合部17は、裏物押さえ3側を向いた断面略矢印状に形成されている。
【0021】
第一係合部16は第二係合部17より裏物押さえ3に近接した位置にある。そして、ガイド溝18の両側に設けた第一係合部16、16にアーム9のフック部11,12が係合した状態で裏物押さえ3のジャンパ部6が日星車4の歯4aに当接する位置に保持され、しかも庇部7と日星車4との間にジャンパ部6が移動可能な間隙が形成されている(
図8参照)。また、第二係合部17、17にフック部11,12が係合した状態では裏物押さえ3のジャンパ部6を弾性変形させて日星車4の歯4aに嵌合させてジャンパ部6を庇部7で押圧して保持可能とされている(
図3参照)。
なお、アーム9のフック部11,12と第一係合部16、16は本発明の第一係止手段を、アーム9のフック部11,12と第二係合部17、17は第二係止手段の一例をそれぞれ示している。また、フック部11,12は、本発明の第一係合部及び第二係合部の一例でもある。
【0022】
本第一実施形態によるムーブメント1は上述の構成を備えており、次に機械組立による組立方法を
図1〜
図11に沿って説明する。
まず、裏物押さえ3は日星車4を挟んで地板2に被せており、初期段階でジャンパ部6は上述したように全体が地板2の方向へ曲げられて形成されているため、裏物押さえ3の庇部7より下側に保持されている。この段階でアーム9は
図4,5に示すようにフック部11,12が地板2の第一係合部16より裏物押さえ3側に位置している。
そして、
図6及び
図7において、裏物押さえ3を地板2側に押し込んで、アーム9のガイド部10を地板2のガイド溝18に沿って相対下降させ、
図8及び
図9に示すように、フック部11,12をテーパ面16aに沿って弾性変形させながら摺動させて乗り越えさせ、第一係合部16、16に係止させる。
この場合、弾性変形された各フック部11,12は、弾性変形の反作用として、地板2の径方向内側へ戻される力が働く。従って、各フック部11,12は、第一係合部16、16に係止されるのである。以下、各フック部11,12が第一係合部16、16に係止された状態を、仮固定と称する。
【0023】
この状態を第一段階として、裏物押さえ3は仮固定され、
図6乃至
図8に示すように、ジャンパ部6は日星車4の歯4aに当接されている。そして、
図7及び
図9に示すように、ジャンパ部6を日星車4の歯4aの上から外し、裏物押さえ3の径方向外側へ撓ませて弾性変形させ、
図9乃至
図11に示すように、ジャンパ部6を庇部7の下部に潜り込ませてジャンパ部6の先端角部6aを日星車4の歯4aに噛合させる。
なお、ジャンパ部6の先端角部6aは、地板2に近接する方向に屈曲されているため、地板2の厚さ方向において、先端角部6aと歯4aは、相互に嵌合しやすい高さに設定されることとなる。従って、この場合には、先端角部6aが歯4aをスリップすることなく、嵌合させることができる。
【0024】
次に、第二段階として、裏物押さえ3を更に地板2側に押圧し、アーム9のフック部11,12を第一係合部16,16から更に押し込んで第二係合部17,17に係止させる。すると、
図1乃至
図3に示すように、裏物押さえ3は地板2の当接ピン15に当接して位置決めされ、庇部7はジャンパ部6に当接する。ジャンパ部6は下面側の屈曲部6bが地板2に設けた受けプレート14に当接し、上面側は庇部7に当接して、弾性変形したジャンパ部6の先端角部6aを日星車4の歯4aに係合した状態に固定保持する。
第二係合部17は、地板2の径方向外側へ突出する方向に形成されている。従って、フック部11,12が第二係合部17,17に係止した状態では、第二係合部17,17によって、フック部11,12には、地板2の厚み方向へ引っ張られる方向へ力が働き、アーム9は、地板2の厚み方向へ弾性変形することとなる。
すると、各フック部11,12は、上述した引っ張られる力の反作用として、地板2の厚み方向へ戻される力が働く。従って、各フック部11,12は、第二係合部17,17に係止されるのである。
この状態で、裏物押さえ3はアーム9のフック部11,12が地板2の第二係合部17に係合状態に保持されるため、庇部7にジャンパ部6の弾性が付与されていても弾性変形しない。その後、裏物押さえ3をねじ締め固定することができる。
【0025】
上述のように本第一実施形態によるムーブメント1によれば、機械組立において、アーム9のフック部11,12を地板2の第一及び第二係合部16,17に段階的に係止させて、ジャンパ部6を日星車4の歯4aに係合させて更に庇部7によってジャンパ部6を押圧保持できるため、手動組立でなくても、確実且つ容易に組立できる。
そのため、ジャンパ部6を日星車4の歯4aに係合させた状態で裏物押さえ3をねじ締めするまでに裏物押さえ3が弾性で浮くことを防止できる。
【0026】
なお、本発明によるムーブメント1は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や置換等が可能である。次に本発明の他の実施形態について上述した実施形態と同一または同様な部品や部分には同一の符号を用いて添付図面により説明する。
【0027】
次に、
図12乃至
図16は本発明の第二実施形態によるムーブメント1Aを示すものである。
本第二実施形態によるムーブメント1Aは、
図12に示すように、地板2に設けた係合部21はガイド溝18の両側に同一高さ(地板2の径方向を基準に、地板2の厚み方向に対して、同一の高さ)に形成されている。これに対し、アーム22は、第一アーム23と第二アーム24とに二分割して形成され、第一アーム23には先端のガイド部23aと第一フック部25(本発明の第一係止手段の一例)が形成され、第二アーム24には先端のガイド部24aと第二フック部26(本発明の第二係止手段の一例)が形成されている。
第一フック部25と第二フック部26はその長手方向に位置がずれており、第一フック部25は裏物押さえ3からの距離が比較的長い第一段目とされ、第二フック部26は裏物押さえ23からの距離が比較的短い第二段目とされている。
【0028】
そのため、本第二実施形態によれば、
図13及び
図14に示す第一段階において、裏物押さえ3を地板2側に押圧して第一及び第二アーム23,24をガイド溝18に沿って相対移動させ、第一アーム23の第一フック部25を一方の係合部21に係止させる。なお、第二アーム24の第二フック部26は他方の係合部21に係止されていない。また、最初に第一アーム23を押し下げて第一フック部25を一方の係合部21に係止させる際、第二アーム24が他方の係合部21と干渉しないよう外側に初期撓みを持たせておくことが好ましい。
この段階で、第一実施形態と同様に、裏物押さえ3におけるジャンパ部6は日星車4の歯4aの上に当接させられており、次に、ジャンパ部6を裏物押さえ3の径方向外側へ撓ませて日星車4の歯4aの上から外し、ジャンパ部6の先端角部6aを日星車4の歯4aに係合させる。
【0029】
次に、
図15及び
図16に示す第二段階において、裏物押さえ3を更に地板2側に押圧すると、裏物押さえ3が地板2の当接ピン15に載置され、第一アーム23は第一フック部25が一方の係合部21から外れ、第二アーム24の第二フック部26が他方の係合部21に押し込まれて係止させられる。
この段階で、第一実施形態と同様に、裏物押さえ3は地板2の当接ピン15に当接して位置決めされ、庇部7はジャンパ部6に当接して弾性変形したジャンパ部6を日星車4の歯4aに係止した状態に固定保持する。その後、裏物押さえ3をねじ締め固定することができる。
【0030】
上述のように本第二実施形態によれば、地板2に設けた一対の係合部21を同一高さに形成し、アームを第一及び第二アーム23、24で二分割して第一フック部25と第二フック部26とで二段で形成したので、第一実施形態と比較して係合部21の突出量を小さくできる。
【0031】
なお、第二実施形態によるムーブメント1Aにおいて、アームを第一アーム23と第二アーム24とで二分割して構成したが、一体のアームとして形成し、アームの長さ方向の異なる位置に第一フック部25と第二フック部26を形成してもよい。
【0032】
次に本発明の第三実施形態によるムーブメント1Bを
図17乃至
図21により説明する。
本第三実施形態によるムーブメント1Bは、
図17に示すように、地板2に設けた第一係合部28はガイド溝18内に設けられており、ガイド溝18の両側に第二係合部29がそれぞれ形成されている。第一係合部28は第二係合部29よりわずかに裏物押さえ3からの距離が大きく設定されている。
これに対し、アーム30は、二つの分割された脚部30a,30aの先端部(
図17において下端部)が連結されて第一フック部31を形成し、脚部30a,30aには裏物押さえ3からの距離が第一フック部31よりも短い第二フック部32がそれぞれ形成されている。なお、第一係合部28と第二係合部29の距離の差は、第一フック部31と第二フック部32の距離の差より小さく設定されている。
【0033】
そのため、本第三実施形態によれば、
図18及び
図19に示す第一段階において、裏物押さえ3を地板2側に押圧してアーム30をガイド溝18に沿って相対移動させ、アーム30の第一フック部31をガイド溝18内の第一係合部28に係止させる。なお、第二フック部32は第二係合部29に係止されていない。
この第一段階で、第一実施形態と同様にジャンパ部6は日星車4の歯4aの上に当接させられており、次にジャンパ部6を裏物押さえ3の径方向外側へ撓ませ弾性変形させて日星車4の歯4aの上から外し、ジャンパ部6の先端角部6aを日星車4の歯4aに係合させる。
【0034】
次に、
図20及び
図21に示す第二段階において、裏物押さえ3を更に地板2側に押圧すると、裏物押さえ3が地板2の当接ピン15に載置され、アーム30は第一フック部31が第一係合部28から外れ、アーム30の両側の第二フック部32がガイド溝18の両側の第二係合部29にそれぞれ係合させられる。
この段階で、第一実施形態と同様に、裏物押さえ3の庇部7はジャンパ部6に当接して弾性変形したジャンパ部6を日星車4の歯4aに係止した状態に固定保持する。その後、裏物押さえ3をねじ締め固定することができる。
本第三実施形態においても、第一及び第二係合部28,29がガイド溝18とその両側にそれぞれ別個に設けられているため小さく且つ薄く形成できることになり、小型化できる。
【0035】
なお、第三実施形態によるムーブメント1Bにおいて、第一係止手段と第二係止手段として、アーム30の第一フック部31と第二フック部32、第一係合部28と第二係合部29を設けたが、変形例として、第一及び第二係合部28,29は高さの差が小さいので同一高さに設定して係合部としてもよい。この場合には、第一フック部31と第二フック部32を選択的にいずれかの第一、第二係合部28,29に係合させることで地板2と裏物押さえ3との二段階の距離設定を行う。
【0036】
次に本発明の第四実施形態によるムーブメント1Cを
図22乃至
図28により説明する。
本第四実施形態によるムーブメント1Cは、
図22〜
図24に示すように、地板2の端部に例えば略円柱状の係合部材34が裏物押さえ3の径方向外側に突出して形成されており、係合部材34には第一係合部35と第二係合部36が例えば階段状に形成されている。
【0037】
そして、日星車4を挟んで地板2に被せられる裏物押さえ3には係合部材34を挿通させるための長円状の孔部37が形成されている。孔部37は外側の周縁部が小幅で線状に延びて弾性を有するバネ部39によって仕切られており、このバネ部39の中央には下方に垂下するアーム40が形成されている。アーム40と交差するバネ部39の内側縁部には係合部材34の第一係合部35及び第二係合部36に係止させるためのフック部42が形成されている。
また、地板2には、アーム40の進退をガイドするガイド溝41が形成されている。
そして、バネ部39を弾性変形させることでその中央のアーム40を上下方向に変位させることができ、裏物押さえ3の押圧位置に応じてアーム40の上端のフック部42を係合部材34の第一係合部35と第二係合部36のいずれかに選択的に係止できるようになっている。
【0038】
そのため、本第四実施形態によるムーブメント1Cによれば、
図25及び
図26に示す第一段階において、裏物押さえ3を地板2側に押圧すると共にバネ部39を弾性変形させながらアーム40をガイド溝41に沿って移動させ、アーム40のフック部42を第一係合部35に係止させる。
この段階で、第一実施形態と同様にジャンパ部6は日星車4の歯4aの上に当接させられており、更にジャンパ部6を押動して弾性変形させて日星車4の歯4aの上から外し、庇部7との隙間からジャンパ部6を移動させて先端角部6aを日星車4の歯4a間に係止させる。
【0039】
次に、
図27及び
図28に示す第二段階において、裏物押さえ3を更に地板2側に押圧すると共に、バネ部39を弾性変形させながらアーム40を移動させてフック部42を第一係合部35から外し、第二係合部36に係止させる。
この段階で、第一実施形態と同様に、裏物押さえ3の庇部7はジャンパ部6に当接して弾性変形したジャンパ部6を日星車4の歯4a間に係合した状態に固定保持する。その後、裏物押さえ3をねじ締め固定することができる。
【0040】
上述のように、本第四実施形態においては、アーム40に設けたフック部42が両側のバネ部39で略下方に引っ張られて第一係合部35と第二係合部36のいずれかに係止できるため、高さ方向の占有スペースを小さくできて薄型化できる。
【0041】
なお、上述した各実施形態では、庇部7とジャンパ部6を裏物押さえ3である保持部材に一体形成したが、必ずしも一体形成である必要はなく、別部品として形成してねじ等で裏物押さえ3に連結固定するようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では裏物押さえ3にアーム9,30,40等を取り付け、地板2に係合部材34、または第一及び第二係合部16、28、35、17、29、36等を設けたが、これとは逆に、地板2にアーム9,30,40等を設け、裏物押さえ3に係合部材34、または第一及び第二係合部16、28、35、17、29、36等を設けてもよい。
なお、本発明において、裏物押さえ3は保持部材に含まれ、日星車4は歯車に含まれる。