【実施例1】
【0025】
図1は、実施例1に係る一軸多段型の遠心圧縮機の概略構成図である。
図1に示すように、遠心式流体機械として、一軸多段型の遠心圧縮機がある。遠心圧縮機1では、流体として、空気又は炭酸ガス等の各種ガスが適用され、吸い込んだガスを圧縮して排出している。なお、以下では、ガスとして空気を適用した場合について説明する。なお、実施例1では、遠心式流体機械として、一軸多段型の遠心圧縮機に適用して説明するが、この構成に限らない。例えば、遠心式流体機械として、一軸多段型の遠心ポンプに適用してもよい。
【0026】
遠心圧縮機1は、回転軸となるロータ5と、ロータ5の一方側(図示左側)に設けられる低圧段となる低圧圧縮部(低圧流体作動部)11と、ロータ5の他方側(図示右側)に設けられる高圧段となる高圧圧縮部(高圧流体作動部)12とを備えている。また、遠心圧縮機1は、ロータ5の軸方向において、低圧圧縮部11と高圧圧縮部12との間に設けられ、低圧圧縮部11と高圧圧縮部12とを仕切る仕切り壁13が設けられている。
【0027】
この遠心圧縮機1は、仕切り壁13を挟んで低圧圧縮部11と高圧圧縮部12とが背面合わせの構造、つまり、仕切り壁13を挟んでほぼ対称な構造となっている。このため、遠心圧縮機1は、ロータ5の軸方向に働く力(スラスト)を相殺している。そして、遠心圧縮機1は、低圧圧縮部11において空気を圧縮し、低圧圧縮部11で圧縮した圧縮空気を高圧圧縮部12に供給し、高圧圧縮部12において圧縮空気をさらに圧縮して、高圧の圧縮空気を排出する。
【0028】
ロータ5は、その軸方向が水平方向に延在して設けられている。このロータ5には、図示しない動力源が接続されており、動力源から伝達される動力によって回転可能となっている。このロータ5には、後述する低圧圧縮部11の低圧側インペラ21と、後述する高圧圧縮部12の高圧側インペラ41とが固定されている。
【0029】
低圧圧縮部11は、ロータ5に固定される複数の低圧側インペラ(低圧側羽根車)21と、複数の低圧側インペラ21の周囲に設けられる低圧側ハウジング22とを含んで構成されている。複数の低圧側インペラ21は、実施例1において、軸方向に沿って3段設けられており、軸方向の外側(図示左側)から順に、前段の低圧側インペラ21a、中段の低圧側インペラ21b、後段(最終段)の低圧側インペラ21cが設けられている。
【0030】
低圧側インペラ21は、ロータ5に固定されるハブ25と、ハブ25の周方向に所定の間隔を空けて設けられる複数の羽根26と、羽根26を挟んでハブ25の反対側に設けられるシュラウド27とを有している。そして、低圧側インペラ21は、ハブ25とシュラウド27との間が、空気が軸方向から径方向へ流れる内部流路28となっており、空気の流れ方向において、内部流路28の上流側が軸方向に延在して形成され、内部流路28の下流側が径方向に延在して形成され、内部流路28の中間が軸方向から径方向に湾曲して形成されている。このため、低圧側インペラ21が回転すると、軸方向から空気を吸い込んで圧縮し、圧縮した圧縮空気を径方向へ向けて吐出する。
【0031】
低圧側ハウジング22は、3段の低圧側インペラ21及びロータ5の一方側を、回転自在に格納している。この低圧側ハウジング22には、低圧側空気吸込み口31と、低圧側吸込み流路32と、複数の低圧側連通流路33と、低圧側吐出流路34と、低圧側空気吐出口35とが形成されている。なお、
図1では、ロータ5の図示下側において、低圧側ハウジング22に形成される各流路の図示を省略している。
【0032】
低圧側空気吸込み口31は、軸方向の外側(図示左側)に形成されており、ロータ5の径方向の外側から内側へ向かって延在するように形成されている。低圧側空気吸込み口31から吸い込まれた空気は、前段の低圧側インペラ21aへ向けて供給される。低圧側吸込み流路32は、その一方側が低圧側空気吸込み口31に接続され、その他方側が前段の低圧側インペラ21aの内部流路28の上流側に接続されている。
【0033】
低圧側連通流路33は、隣り合う各低圧側インペラ21の間をそれぞれ連通しており、3段の低圧側インペラ21に対して2つ形成されている。つまり、2つの低圧側連通流路33のうち、一方の低圧側連通流路33aは、前段の低圧側インペラ21aにおける内部流路28の下流側と、中段の低圧側インペラ21bにおける内部流路28の上流側とを接続している。また、他方の低圧側連通流路33bは、中段の低圧側インペラ21bにおける内部流路28の下流側と、後段の低圧側インペラ21cにおける内部流路28の上流側とを接続している。
【0034】
低圧側吐出流路34は、その一方側が後段の低圧側インペラ21cの内部流路28の下流側に接続され、その他方側が低圧側空気吐出口35に接続されている。低圧側空気吐出口35は、軸方向の内側(図示右側)に形成されており、ロータ5の径方向の内側から外側へ向かって延在するように形成されている。低圧側空気吐出口35は、後段の低圧側インペラ21cから、低圧側吐出流路34を介して吐出された圧縮空気を、高圧圧縮部12へ向けて供給している。
【0035】
高圧圧縮部12は、ロータ5に固定される複数の高圧側インペラ(高圧側羽根車)41と、複数の高圧側インペラ41の周囲に設けられる高圧側ハウジング42とを含んで構成されている。複数の高圧側インペラ41は、実施例1において、軸方向に沿って3段設けられており、軸方向の外側(図示右側)から順に、前段の高圧側インペラ41a、中段の高圧側インペラ41b、後段(最終段)の高圧側インペラ41cが設けられている。このように、3段の低圧側インペラ21と3段の高圧側インペラ41とは、軸方向において対称に配置されている。
【0036】
高圧側インペラ41は、低圧側インペラ21とほぼ同様の構成となっており、ロータ5に固定されるハブ45と、ハブ45の周方向に所定の間隔を空けて設けられる複数の羽根46と、羽根46を挟んでハブ45の反対側に設けられるシュラウド47とを有している。そして、高圧側インペラ41は、ハブ45とシュラウド47との間が、空気が軸方向から径方向へ流れる内部流路48となっており、空気の流れ方向において、内部流路48の上流側が軸方向に延在して形成され、内部流路48の下流側が径方向に延在して形成され、内部流路48の中間が軸方向から径方向に湾曲して形成されている。このため、高圧側インペラ41が回転すると、軸方向から空気を吸い込んで圧縮し、圧縮した圧縮空気を径方向へ向けて吐出する。
【0037】
高圧側ハウジング42は、3段の高圧側インペラ41及びロータ5の他方側を、回転自在に格納している。この高圧側ハウジング42には、高圧側空気吸込み口51と、高圧側吸込み流路52と、複数の高圧側連通流路53と、高圧側吐出流路54と、高圧側空気吐出口55とが形成されている。なお、
図1では、ロータ5の図示下側において、高圧側ハウジング42に形成される各流路の図示を省略している。
【0038】
高圧側空気吸込み口51は、軸方向の外側(図示右側)に形成されており、ロータ5の径方向の外側から内側へ向かって延在するように形成されている。高圧側空気吸込み口51には、低圧側空気吐出口35から排出された圧縮空気が流入する。高圧側空気吸込み口51に流入した圧縮空気は、前段の高圧側インペラ41aへ向けて供給される。高圧側吸込み流路52は、その一方側が高圧側空気吸込み口51に接続され、その他方側が前段の高圧側インペラ41aの内部流路48の上流側に接続されている。
【0039】
高圧側連通流路53は、隣り合う各高圧側インペラ41の間をそれぞれ連通しており、3段の高圧側インペラ41に対して2つ形成されている。つまり、2つの高圧側連通流路53のうち、一方の高圧側連通流路53aは、前段の高圧側インペラ41aにおける内部流路48の下流側と、中段の高圧側インペラ41bにおける内部流路48の上流側とを接続している。また、他方の高圧側連通流路53bは、中段の高圧側インペラ41bにおける内部流路48の下流側と、後段の高圧側インペラ41cにおける内部流路48の上流側とを接続している。
【0040】
高圧側吐出流路54は、その一方側が後段の高圧側インペラ41cの内部流路48の下流側に接続され、その他方側が高圧側空気吐出口55に接続されている。高圧側空気吐出口55は、軸方向の内側(図示左側)に形成されており、ロータ5の径方向の内側から外側へ向かって延在するように形成されている。高圧側空気吐出口55は、後段の高圧側インペラ41cから、高圧側吐出流路54を介して吐出された圧縮空気を排出している。
【0041】
従って、動力源により、ロータ5が回転すると、低圧側インペラ21及び高圧側インペラ41が回転する。低圧側インペラ21が回転すると、低圧側空気吸込み口31から空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、低圧側吸込み流路32を通って、前段の低圧側インペラ21aに流入する。前段の低圧側インペラ21aは、流入した空気を圧縮し、圧縮した圧縮空気を低圧側連通流路33aへ向けて吐出する。吐出された圧縮空気は、低圧側連通流路33aを通って、中段の低圧側インペラ21bに流入する。中段の低圧側インペラ21bは、流入した圧縮空気を圧縮し、圧縮した圧縮空気を低圧側連通流路33bへ向けて吐出する。吐出された圧縮空気は、低圧側連通流路33bを通って、後段の低圧側インペラ21cに流入する。後段の低圧側インペラ21cは、流入した圧縮空気を圧縮し、圧縮した圧縮空気を低圧側吐出流路34へ向けて吐出する。吐出された圧縮空気は、低圧側吐出流路34を通って、低圧側空気吐出口35に流入し、低圧側空気吐出口35から高圧側空気吸込み口51に供給される。
【0042】
高圧側インペラ41が回転すると、高圧側空気吸込み口51に供給された圧縮空気が吸い込まれる。吸い込まれた圧縮空気は、高圧側吸込み流路52を通って、前段の高圧側インペラ41aに流入する。前段の高圧側インペラ41aは、流入した圧縮空気を圧縮し、圧縮した圧縮空気を高圧側連通流路53aへ向けて吐出する。吐出された圧縮空気は、高圧側連通流路53aを通って、中段の高圧側インペラ41bに流入する。中段の高圧側インペラ41bは、流入した圧縮空気を圧縮し、圧縮した圧縮空気を高圧側連通流路53bへ向けて吐出する。吐出された圧縮空気は、高圧側連通流路53bを通って、後段の高圧側インペラ41cに流入する。後段の高圧側インペラ41cは、流入した圧縮空気を圧縮し、圧縮した圧縮空気を高圧側吐出流路54へ向けて吐出する。吐出された圧縮空気は、高圧側吐出流路54を通って、高圧側空気吐出口55に流入し、高圧側空気吐出口55から排出される。
【0043】
仕切り壁13は、低圧圧縮部11と高圧圧縮部12との間に設けられている。つまり、低圧側ハウジング22と仕切り壁13と高圧側ハウジング42とが一体となることで、遠心圧縮機1のハウジングを構成している。
【0044】
このとき、低圧側ハウジング22は、低圧側連結ボルト61により仕切り壁13に締結されることで一体となる。この低圧側連結ボルト61は、ロータ5の径方向において、低圧側インペラ21の外側に位置している。このため、低圧側ハウジング22は、ロータ5の径方向において、低圧側連結ボルト61により締結されている低圧側インペラ21の外側の部位が固定される。一方で、低圧側ハウジング22は、ロータ5の径方向において、低圧側連結ボルト61よりも内側の部位、つまり、低圧側インペラ21の間の部位が自由端となる。
【0045】
同様に、高圧側ハウジング42は、高圧側連結ボルト62により仕切り壁13に締結されることで一体となる。この高圧側連結ボルト62は、ロータ5の径方向において、高圧側インペラ41の外側に位置している。このため、高圧側ハウジング42は、ロータ5の径方向において、高圧側連結ボルト62により締結されている高圧側インペラ41の外側の部位が固定される。一方で、高圧側ハウジング42は、ロータ5の径方向において、高圧側連結ボルト62よりも内側の部位、つまり、高圧側インペラ41の間の部位が自由端となる。
【0046】
また、仕切り壁13も、ロータ5の径方向において、低圧側連結ボルト61及び高圧側連結ボルト62により締結されている、各インペラ21、41の外側の部位が固定される。一方で、仕切り壁13は、ロータ5の径方向において、低圧側連結ボルト61及び高圧側連結ボルト62よりも内側の部位、つまり、低圧側インペラ21と高圧側インペラ41との間の部位が自由端となる。
【0047】
この仕切り壁13は、軸方向において、低圧圧縮部11側(一方側:図示左側)の面が低圧側吐出流路34の一部を構成し、高圧圧縮部12側(他方側:図示右側)の面が高圧側吐出流路54の一部を構成している。つまり、低圧側吐出流路34は、仕切り壁13の一方側の面に沿って設けられ、ロータ5の径方向に延在して形成されている。同様に、高圧側吐出流路54は、仕切り壁13の他方側の面に沿って設けられ、ロータ5の径方向に延在して形成されている。
【0048】
この仕切り壁13は、一方側に低圧圧縮部11が設けられ、他方側に高圧圧縮部12が設けられることから、高圧側から低圧側へ向かって変形し易く、特に、自由端側が変形し易い。仕切り壁13が高圧側から低圧側へ向かって変形すると、高圧側吐出流路54は、広がるように変形する。このため、仕切り壁13は、高圧側吐出流路54が広がるように変形することを抑制すべく、
図2に示す構成となっている。
【0049】
次に、
図2を参照して、仕切り壁13及び高圧側吐出流路54周りの構成について説明する。
図2は、実施例1に係る遠心圧縮機の仕切り壁及び高圧側吐出流路周りの拡大図である。
図2に示すように、仕切り壁13は、壁体71と、流路変形抑制部材72と、付勢機構(付勢手段)73とを有している。先ず、仕切り壁13の説明に先立ち、高圧側吐出流路54について説明する。
【0050】
高圧側吐出流路54は、仕切り壁13と、軸方向において仕切り壁13と対向する高圧側ハウジング42を構成する流路形成部材64とで形成されている。この高圧側吐出流路54には、ディフューザ65とスペーサ66とが設けられている。ディフューザ65は、高圧側吐出流路54を通過する圧縮流体を、高圧側空気吐出口55に案内している。このディフューザ65は、軸方向における他方側(図示右側)が溶接等により流路形成部材64に固定されている。一方で、ディフューザ65は、軸方向における一方側(図示左側)が仕切り壁13に固定されておらず、仕切り壁13に対し離接可能となっている。スペーサ66は、仕切り壁13と高圧側ハウジング42との間を所定の隙間に維持することで、高圧側吐出流路54を所定の幅に維持している。なお、スペーサ66は、高圧側連結ボルト62に挿通されている。
【0051】
壁体71は、高圧圧縮部12側に、流路変形抑制部材72が収容される環状の収容空間75が形成されている。収容空間75は、径方向において、高圧側吐出流路54の吐出側から高圧側インペラ41の先端部との重複部分にかけて形成されている。
【0052】
流路変形抑制部材72は、環状に形成され、壁体71に形成された環状の収容空間75に収容されることで、壁体71と高圧側吐出流路54との間に設けられる。軸方向における流路変形抑制部材72と収容空間75との間には、スペーサ76が設けられている。スペーサ76は、流路変形抑制部材72と収容空間75との間に所定の隙間Cを形成している。このスペーサ76は、高圧側連結ボルト62に挿通されている。流路変形抑制部材72は、軸方向において高圧側吐出流路54側に移動可能となっており、高圧側吐出流路54の変形を抑制している。このように、高圧側連結ボルト62は、軸方向外側(図示右側)から順に、高圧側ハウジング42の流路形成部材64、スペーサ66、流路変形抑制部材72、スペーサ76及び壁体71を一体に連結している。
【0053】
付勢機構73は、隙間Cと高圧側吐出流路54とを連通する流入流路78と、隙間Cと後段の高圧側インペラ41cを収容するインペラ収容空間79とを連通する還流流路80とを含んで構成されている。流入流路78は、高圧側吐出流路54を通過する圧縮空気、つまり、後段の高圧側インペラ41cから吐出された圧縮空気を、隙間Cへ流入させる流路である。流入流路78は、その一方が隙間Cの径方向外側の端部に接続され、その他方が高圧側吐出流路54の出口側の端部、つまり、高圧側吐出流路54と高圧側空気吐出口55との接続部に接続されている。この流入流路78は、環状に形成され、その他方がディフューザ65の下流側に接続される。還流流路80は、隙間Cに流入した圧縮空気を、インペラ収容空間79へ還流させる流路である。還流流路80は、その一方が隙間Cの径方向内側の端部に接続され、その他方が高圧側インペラ41cのハブ45側のインペラ収容空間79に接続されている。この還流流路80は、環状に形成される。
【0054】
このように構成された仕切り壁13は、ロータ5が回転することで、低圧圧縮部11で空気が圧縮されると共に、高圧圧縮部12で空気が圧縮される。すると、
図2に示すように、仕切り壁13は、その壁体71が高圧側から低圧側に引っ張られるように変形しようとする(
図2の左側の矢印)。一方で、後段の高圧側インペラ41cからは、圧縮された圧縮空気が吐出される。吐出された圧縮空気は、高圧側吐出流路54を通過して高圧側空気吐出口55に流入する。このとき、高圧側吐出流路54を通過する圧縮空気の一部が、流入流路78を通って壁体71と流路変形抑制部材72との隙間Cに流入する。隙間Cに圧縮空気が流入すると、隙間Cの内圧が高まることにより、流路変形抑制部材72が高圧側吐出流路54へ向けて移動する(
図2の右側の矢印)。このため、仕切り壁13(の壁体71)が低圧側に変形しても、仕切り壁13の流路変形抑制部材72は高圧側吐出流路54側に移動する。高圧側吐出流路54側に移動する流路変形抑制部材72は、ディフューザ65によって移動が規制される。このため、高圧側吐出流路54は、ディフューザ65により所定の幅に維持される。このとき、壁体71の絶対軸座標系における変形量(移動量)、つまり変形前から変形後の壁体71の移動量と、流路変形抑制部材72の相対軸座標系における移動量、つまり、壁体71に対する流路変形抑制部材72の移動量とは、同じ移動量となっている。
【0055】
以上のように、実施例1の構成によれば、仕切り壁13が、低圧圧縮部11に引っ張られて変形しても、流路変形抑制部材72は、付勢機構73により高圧側吐出流路54へ向けて付勢される。このため、流路変形抑制部材72は、仕切り壁13の変形による高圧側吐出流路54の広がりを抑制することができることから、遠心圧縮機1の効率の低下を抑制することができる。
【0056】
また、実施例1の構成によれば、高圧圧縮部12から吐出される圧縮空気を、流入流路78を介して壁体71と流路変形抑制部材72との隙間Cへ流入させることで、流路変形抑制部材72を高圧側吐出流路54側に付勢することができる。このため、高圧圧縮部12から吐出される圧縮空気を利用できることから、高圧圧縮部12により圧縮空気の圧力が高くなるにつれて、付勢力も大きくすることができる。よって、流路変形抑制部材72をより確実に高圧側吐出流路54側に付勢することができる。
【0057】
また、実施例1の構成によれば、隙間Cへ流入した圧縮空気を、還流流路80を介して高圧側インペラ41へ還流することができるため、流入流路78へ流入する圧縮空気を排出することがない分、遠心圧縮機1の効率の低下を抑制することができる。
【0058】
なお、実施例1では、流入流路78の他方が、高圧側吐出流路54の出口側の端部に接続されていたが、これに限定されない。つまり、後段の高圧側インペラ41cから吐出される圧縮空気の一部を隙間Cへ流入可能であれば、流入流路78の他方がいずれの位置に接続されていてもよい。
【実施例4】
【0065】
次に、
図5及び
図6を参照して、実施例4に係る遠心圧縮機120について説明する。
図5は、実施例4に係る遠心圧縮機の仕切り壁及び高圧側吐出流路周りの拡大図である。
図6は、ロータの軸方向から見たときの回転軸流路及び吹出し流路周りの模式図である。なお、実施例4でも、実施例1から実施例3と重複する記載を避けるべく、実施例1から実施例3と異なる部分についてのみ説明する。実施例1から実施例3では、流路変形抑制部材72の収容空間75が、径方向において、高圧側吐出流路54の吐出側から高圧側インペラ41の先端部との重複部分にかけて形成されていた。このため、実施例1から実施例3において、収容空間75に収容される環状の流路変形抑制部材72は、軸方向から見て、高圧側インペラ41cと重複していた。これに対し、実施例4の遠心圧縮機120は、環状の流路変形抑制部材72の内側に、高圧側インペラ41が配置されている。以下、実施例4に係る遠心圧縮機120について説明するが、実施例4の遠心圧縮機120は、実施例2の遠心圧縮機100に基づく構成となっている。
【0066】
図5に示すように、実施例4に係る遠心圧縮機120では、壁体71に形成される収容空間75が、径方向において、高圧側インペラ41の径方向外側から高圧側吐出流路54の吐出側まで形成されている。
【0067】
流路変形抑制部材72は、環状に形成され、壁体71に形成された環状の収容空間75に収容されることで、壁体71と高圧側吐出流路54との間に設けられる。このため、高圧側インペラ41は、環状の流路変形抑制部材72の内側に配置される。つまり、環状の流路変形抑制部材72の内径は、高圧側インペラ41の外径よりも大きな径となっており、流路変形抑制部材72は、高圧側インペラ41の径方向外側に配置される。
【0068】
付勢機構73は、流入流路78と、還流流路80とを含んで構成されている。なお、流入流路78については実施例1と同様であるため、説明を省略する。還流流路80は、環状の流路変形抑制部材72が、高圧側インペラ41の径方向外側に配置されることから、その一方が隙間Cの径方向内側の端部に接続され、その他方が高圧側インペラ41cの径方向外側のインペラ収容空間79に接続される。そして、この還流流路80には、実施例2と同様に、周方向に亘って設けられるOリング等のシール部材101が設けられる。
【0069】
また、実施例4に係る遠心圧縮機120では、流路変形抑制部材72と流路形成部材64との間に設けられるディフューザ65が、軸方向における他方側(図示右側)が溶接等により流路形成部材64に固定され、軸方向における一方側(図示左側)が溶接等により仕切り壁13(の流路変形抑制部材72)に固定されている。
【0070】
さらに、実施例4に係る遠心圧縮機120では、仕切り壁13の壁体71に、ロータ5が挿通される挿通孔が形成されている。ロータ5と挿通孔との間には、ロータ5の外周面に沿って形成される回転軸流路121が設けられている。回転軸流路121は、ロータ5の全周に亘って形成されている。回転軸流路121は、軸方向の高圧圧縮部12側が、高圧側のインペラ収容空間79に連通している。回転軸流路121は、空気が流通しており、回転軸流路121内の圧力は、高圧側吐出流路54内の圧力に比して低圧となっている。
【0071】
図6に示すように、ロータ5が回転すると、回転軸流路121を流通する空気は、ロータ5の回転方向に向かう旋回流となる。ここで、
図5及び
図6に示すように、壁体71には、回転軸流路121と、壁体71と流路変形抑制部材72との隙間Cと、を連通する複数の吹出し流路122が形成されている。吹出し流路122は、隙間Cに流入する圧縮空気を回転軸流路121へ向けて吹き出している。複数の吹出し流路122は、回転軸流路121の周方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。また、吹出し流路122は、圧縮空気の吹出し方向が、回転軸流路121内を旋回する旋回流の旋回方向に対して対向するように、回転軸流路121の接線方向に沿って設けられている。このため、複数の吹出し流路122から吹き出された圧縮空気は、旋回流の旋回方向(ロータ5の回転方向)とは逆方向に吹き出されるため、旋回流を打ち消すことができる。
【0072】
以上のように、実施例4の構成によれば、ロータ5の径方向において、流路変形抑制部材72を、高圧側インペラ41よりも径方向外側に配置することができる。このため、仕切り壁13の壁体71に高圧側インペラ41を配置した後でも、径方向において、高圧側インペラ41と流路変形抑制部材72とが物理的に干渉しないため、流路変形抑制部材72を容易に配置することができる。
【0073】
また、実施例4の構成によれば、ディフューザ65により流路変形抑制部材72と流路形成部材64とを固定することにより、ディフューザ65、流路変形抑制部材72及び流路形成部材64を一体化することができる。このため、流路形成部材64が変形しようとしても、ディフューザ65を介して流路変形抑制部材72により変形が規制されるため、流路形成部材64の変形を抑制することができる。
【0074】
また、実施例4の構成によれば、回転軸流路121に、複数の吹出し流路122を接続することができるため、回転軸流路121内の旋回流を、吹出し流路122から吹き出される圧縮空気によって打ち消すことができ、旋回流によって生じるロータ5の振動等の影響を抑制することができる。なお、回転軸流路121及び複数の吹出し流路122は、低圧圧縮部11に設けてもよい。
【0075】
なお、実施例1から4において、付勢機構73,111は、隙間Cにおける圧力、または弾性部材112の付勢力により、流路変形抑制部材72を高圧側吐出流路54側に移動させたが、この構成に限定されない。つまり、流路変形抑制部材72を高圧側吐出流路54側に移動させることが可能な付勢手段であれば、いずれの構成であってもよい。
【0076】
また、実施例1から4の構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、実施例4の回転軸流路121と複数の吹出し流路122とを、実施例1に適用してもよい。また、実施例4の環状の流路変形抑制部材72の構成を、実施例3に適用してもよい。