特許第6037907号(P6037907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037907
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20161128BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20161128BHJP
   F24C 11/00 20060101ALI20161128BHJP
   F24C 15/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A47J37/06 361
   F24C7/02 511C
   F24C11/00 C
   F24C15/00 B
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-59655(P2013-59655)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-183901(P2014-183901A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(74)【代理人】
【識別番号】100166350
【弁理士】
【氏名又は名称】小銭 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】木下 広一
(72)【発明者】
【氏名】須永 隆司
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅弘
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−323187(JP,A)
【文献】 特開2002−177153(JP,A)
【文献】 実開昭57−137909(JP,U)
【文献】 特開2002−098348(JP,A)
【文献】 特表2007−501891(JP,A)
【文献】 実開平07−012804(JP,U)
【文献】 特開2005−164187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
F24C 7/02
F24C 11/00
F24C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱庫と、
前記加熱庫内に収容される調理物を加熱する加熱手段と
上縁部にフランジを有し、前記加熱庫内に収容される受皿とを備え、
前記加熱庫の内壁面の少なくとも一部には、水又は油に対する接触角が90°よりも大きい表面構造が形成されており、
前記加熱庫の内壁に、前記受皿の前記フランジが嵌る受皿嵌合溝を備え、
前記受皿嵌合溝よりも上側の前記加熱庫の内壁に、前記加熱庫の内側に向かって突出し、前記受皿嵌合溝と同じ方向に延びる突条部を備え、
前記突条部の先端は、前記受皿の前記フランジの外周縁よりも前記加熱庫の内側に突出しており、
前記フランジの上面は、前記受皿の外側から内側に向かって下降するように傾斜している
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記受皿嵌合溝が、前記加熱庫の左右の内壁面それぞれに設けられている
ことを特徴とする請求項記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記受皿嵌合溝が、前記加熱庫の後側の内壁面に設けられている
ことを特徴とする請求項記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記突条部が、前記加熱庫の左右の内壁面それぞれに設けられている
ことを特徴とする請求項〜請求項のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記突条部が、前記加熱庫の後側の内壁面に設けられている
ことを特徴とする請求項〜請求項のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記突条部の先端に、下向きに突出する突部を備えた
ことを特徴とする請求項〜請求項のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
加熱庫と、
前記加熱庫内に収容される調理物を加熱する加熱手段と、
上縁部にフランジを有し、前記加熱庫内に収容される受皿を備え、
前記加熱庫の内壁面の少なくとも一部には、水又は油に対する接触角が90°よりも大きい表面構造が形成され、
前記加熱庫の内壁に、前記受皿の前記フランジが嵌る受皿嵌合溝を備え
前記受皿は、前記受皿の左右の側壁と底面とが交わる辺で、前記加熱庫の内壁と接触する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項8】
前記受皿嵌合溝よりも上側の前記加熱庫の内壁に、前記加熱庫の内側に向かって突出し、前記受皿嵌合溝と同じ方向に延びる突条部を備え、
前記突条部の先端は、前記受皿の上縁部と前記フランジとの接続部分よりも前記加熱庫の内側に突出している
ことを特徴とする請求項記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記表面構造は、フラクタル構造である
ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記加熱庫は内面形状が箱状であり、前記加熱庫の内面の隅部が曲面状に形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記加熱庫は内面形状が箱状であり、前記加熱庫の隣接する内壁面同士が曲面で接続されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記受皿は、奥行き方向に延びる底辺の少なくとも一部が、前記加熱庫の内壁面と接触して摺動し、
前記加熱庫の内壁面のうち、前記受皿が摺動する際に接触する部分には、前記表面構造が設けられていない
ことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記加熱庫を収容する本体と、
前記本体の上に載置される天板と、
前記本体内に設けられ、前記天板の上に載置される被加熱物を加熱する加熱手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱庫内で調理物を加熱する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱庫内で食材等の調理物を加熱する加熱調理器が知られている。このような加熱調理器として、「箱状の加熱庫と、加熱庫の外側に配置されたコイルと、コイルに高周波電流を供給する電源回路と、加熱庫の内部にコイルから生じる一の高周波磁束と1回鎖交する電気的に閉じた閉ループを構成するヒータとを備え、ヒータの近傍であって加熱庫の内部に導電性部材を配置」した加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の加熱調理器は、コイルによって発生する磁束と鎖交するヒータに流れる高周波の大電流により、導電性部材が誘導加熱され、この導電性部材を介して加熱庫内の調理物が加熱される。そしてヒータは、何ら電気的接点を有さず加熱庫から着脱自在となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−94433号公報(第7頁、第8頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加熱庫内の調理物を加熱する加熱調理器においては、加熱された調理物から生じる油煙、調理物から生じる水、調理物からの飛散物等の汚れが加熱庫の内壁面に付着する。そのため、加熱庫の内壁面の汚れの清掃性を改善したいという要求がある。上記特許文献1に記載の加熱調理器では、ヒータは電気的接点を有さず加熱庫に対して着脱自在であるため、使用者は調理後にヒータを取り外して加熱庫の内壁面を容易に清掃できる。
【0005】
しかしながら、加熱庫の内壁面に付着した油分、水分、調理物からの飛散物等の汚れは、加熱庫の内壁面にこびり付きやすく、こびり付いた汚れを取り除くことは困難であるため、加熱庫をきれいに使うためには使用者はこまめな清掃が必要であった。このため、汚れにくい加熱庫を備えた加熱調理器が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたものであり、加熱庫の内壁面への汚れの付着を抑制して、使用者の清掃の手間を削減することのできる加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加熱調理器は、加熱庫と、前記加熱庫内に収容される調理物を加熱する加熱手段と、上縁部にフランジを有し、前記加熱庫内に収容される受皿とを備え、前記加熱庫の内壁面の少なくとも一部には、水又は油に対する接触角が90°よりも大きい表面構造が形成されており、前記加熱庫の内壁に、前記受皿の前記フランジが嵌る受皿嵌合溝を備え、前記受皿嵌合溝よりも上側の前記加熱庫の内壁に、前記加熱庫の内側に向かって突出し、前記受皿嵌合溝と同じ方向に延びる突条部を備え、前記突条部の先端は、前記受皿の前記フランジの外周縁よりも前記加熱庫の内側に突出しており、前記フランジの上面は、前記受皿の外側から内側に向かって下降するように傾斜しているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水又は油に対する接触角が90°よりも大きい表面構造が形成された加熱庫の内壁面への汚れの付着が抑制されるので、加熱庫の清掃の手間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る加熱調理器の分解斜視図である。
図2】実施の形態1に係る加熱庫の概略正面断面図である。
図3図2の受皿嵌合溝及び突条部の近傍の拡大図である。
図4】実施の形態2に係る加熱庫の概略正面断面図である。
図5】実施の形態3に係る加熱庫の概略正面断面図である。
図6】実施の形態4に係る加熱庫の概略側面断面図である。
図7】実施の形態5に係る加熱庫の突条部の近傍の概略正面断面図である。
図8】実施の形態6に係る受皿の底面側斜視図である。
図9】実施の形態6に係る加熱庫の概略正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る加熱庫を備えた加熱調理器を、天板上に載置される鍋等の被加熱物をコイルで誘導加熱するビルトイン型(組込み型)の誘導加熱調理器に適用した場合を例に説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通している。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器の分解斜視図である。加熱調理器100は、上面を開口した箱状の本体1と、本体1の上面の開口を覆い、鍋等の被加熱物が載置される天板2とを備える。天板2は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等の材料で構成されており、本体1の上面開口外周との間にゴム製パッキンやシール材を介して水密状態に固定される。本実施の形態1に係る加熱調理器100は、天板2上に3つの加熱口を備えている。天板2の下方であって本体1の内部には、各加熱口に対応した加熱手段として、加熱コイル3が設けられている。なお、加熱コイル3に代えてラジエントヒータ等の電気抵抗式の加熱手段を設けてもよく、また加熱口及び加熱手段の数も図示のものに限定されない。天板2の手前側には、火力設定、調理メニューの設定、加熱指示等の操作入力を受け付ける操作部、及び加熱調理器100の動作状態、操作部にて設定された情報、使用者へ報知すべき情報等を表示する表示部を有する操作表示部4が設けられている。
【0012】
本体1の内部は、加熱コイル3の下側において上下に仕切られており、仕切られた下側の空間には、加熱庫5が形成されている。加熱庫5は、前面を開口した概ね箱状の部屋であり、加熱庫5の前面の開口は扉6で開閉自在に覆われる。加熱庫5の扉6は、使用者が把持する取っ手を外面に有している。使用者は、この取っ手を把持して扉6を引き出しあるいは押し込むことで、加熱庫5の前面の開口を開け閉めすることができる。扉6にガラス等の透明な部材で構成された視認窓を設けてもよく、そのようにすることで使用者は加熱庫5の内部を外から視認できる。
【0013】
扉6の内面側には、加熱庫5内に収容される受皿7と、この受皿7の上に載置される焼網8が取り付けられている。受皿7の周壁71の上縁部には、受皿7の外方に向かって延びるフランジ72が設けられている。本実施の形態1では、受皿7は扉6に対して着脱自在に取り付けられており、使用者は受皿7を扉6から取り外して洗浄することができる。受皿7は扉6に取り付けられているので、扉6の開閉に伴って、受皿7が加熱庫5内に出し入れされる。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る加熱庫の概略正面断面図である。加熱庫5を形成する内壁のうち、左右の内壁を側壁51、後側の内壁を後壁52、上側の内壁を天井壁53、下側の内壁を底板54と称する。側壁51、後壁52、天井壁53、及び底板54が連なって加熱庫5が形成されている。加熱庫5の内部の上方には、加熱庫5内を上方から加熱する上ヒータ9が設けられている。また、加熱庫5の内部の下方には、焼網8と受皿7との間に、下ヒータ10が設けられている。本実施の形態1では、上ヒータ9及び下ヒータ10は、抵抗発熱体である。上ヒータ9及び下ヒータ10は、幅方向及び奥行き方向に複数回折り曲げられた形状を有しており、加熱庫5内の幅方向及び奥行き方向において広範囲に加熱することができる。上ヒータ9及び下ヒータ10の加熱の有無や加熱量は、制御手段によって制御される。
【0015】
なお、本実施の形態1では、加熱庫5内を加熱する加熱手段としてシーズヒータからなる上ヒータ9及び下ヒータ10を設ける例を示すが、シーズヒータに代えて、遠赤外線ヒータ、近赤外線ヒータ、又はカーボンヒータ等を用いてもよい。また、加熱庫5内の上方と下方の両方に加熱手段を設けるのではなく、いずれか一方に設けてもよい。また、加熱庫5内に加熱手段を設けるのではなく、加熱庫5の天井壁53の上側にフラットヒータや誘導加熱コイルを設け、これらにより加熱庫5の天井壁53を加熱してもよい。加熱庫5内の調理物を、放射又は空気の熱伝達で上方から加熱できる手段であれば、加熱手段として任意の構成を採用することができる。
【0016】
加熱庫5の内壁面、すなわち側壁51、後壁52、天井壁53、及び底板54の表面には、水又は油に対する接触角が90°よりも大きくなるような表面構造が施されている。この表面構造は、例えば、フラクタル構造である。また、加熱庫5の内壁面に、フッ素を塗布してもよい。このように、加熱庫5の内壁面に、水又は油に対する接触角が90°よりも大きくなるような表面構造を形成することで、当該表面構造が形成された部分への、水又は油の付着を抑制することができる。
【0017】
図2に示すように、左右の側壁51の下部にはそれぞれ、加熱庫5の内側から外側に向かって凹んだ一対の受皿嵌合溝55が設けられている。受皿7が加熱庫5内に収容された状態において、受皿嵌合溝55には、受皿7のフランジ72が嵌り込む。そして、フランジ72が受皿嵌合溝55に嵌り込むことで、受皿7が加熱庫5内において左右方向に位置決めされる。受皿嵌合溝55は、側壁51の奥行き方向に沿って形成されている。受皿嵌合溝55の奥行き方向の長さは、受皿7のフランジ72の奥行き方向の長さと概ね一致している。本実施の形態1では、受皿嵌合溝55は、加熱庫5の内側に向かって開口したコ字形状の溝であり、受皿嵌合溝55の下面及び上面はともに加熱庫5の底板54に概ね平行である。受皿嵌合溝55の下面が階段状に折れ曲がり、受皿嵌合溝55の下側の側壁51及び後述する奥行き底辺部57に連なっている。
【0018】
側壁51の受皿嵌合溝55の上側には、加熱庫5の外側から内側に向かって突出する突条部56が設けられている。突条部56は、上側に対して下側の方が加熱庫5の内側に突出するように傾斜した上面部561と、上面部561の下端部から加熱庫5の外側に向かって延び受皿嵌合溝55の上面に連なる下面部562とを有する。図2に示す例では、上面部561と下面部562とが鈍角に交わっており、突条部56の断面形状は三角形状である。突条部56は、受皿嵌合溝55と同様に、側壁51の奥行き方向に沿って形成されている。突条部56の奥行き方向の長さは、受皿嵌合溝55の奥行き方向の長さと概ね同じである。
【0019】
突条部56の具体的な製造方法は特に限定されないが、例えば、加熱庫5を形成する内壁とは別部材で突条部56を作製して、これを加熱庫5の側壁51に溶接等で取り付けてもよい。また、加熱庫5の側壁51にプレス加工を施す等して側壁51と一体的に突条部56を形成してもよい。
【0020】
加熱庫5の側壁51と底板54とが交わる部分を、奥行き底辺部57と称する。この奥行き底辺部57の内面形状は、曲面状に形成されている。つまり、隣接する内壁である側壁51と底板54とが、曲面状の奥行き底辺部57で接続されている。また、側壁51と後壁52とが交わる辺の内面形状、及び側壁51と天井壁53とが交わる辺の内面形状を、曲面状としてもよい。また、図示しないが、箱状の加熱庫5の隅部の内面形状も、曲面状に形成されている。具体的には、側壁51、後壁52、及び天井壁53で囲まれた隅部、及び側壁51、後壁52、及び底板54で囲まれた隅部の内面形状は、曲面状に形成されている。このように箱状の加熱庫5の内壁の辺及び隅部を曲面状にすることで、使用者は、当該部分を容易に拭き掃除することができ、また拭き掃除する際に辺及び隅部に汚れが入り込んで溜まるのを抑制することができる。加熱庫5の辺及び隅部の曲面の曲率半径Rは、使用者が指で加熱庫5の内壁面を撫でることのできる大きさ、例えば10R以上とするのが好ましい。このようにすることで、使用者が加熱庫5内を拭く際に、加熱庫5の辺又は隅部部分に入った汚れを容易に取り除くことができる。
【0021】
受皿7の、奥行き方向に延びる底辺である奥行き底辺部73は、加熱庫5の奥行き底辺部57の上に載置される。受皿7が奥行き方向に動かされると、奥行き底辺部73は、加熱庫5の奥行き底辺部57の上を摺動する。図2に示すように、加熱庫5の奥行き底辺部57の内面形状が曲面状であるのに対し、受皿7の奥行き底辺部73の外表面の形状は奥行き底辺部57よりも尖っていて、奥行き底辺部73は、辺で奥行き底辺部57と接する。このように、受皿7が加熱庫5と辺で接触するように構成して、受皿7と加熱庫5との接触面積を小さくすることで、受皿7を加熱庫5内に摺動自在に支持する別部材からなるレール構造を設けなくとも、加熱庫5内に受皿7を出し入れすることができる。つまり、受皿7の奥行き底辺部73と、これが当接する加熱庫5の内壁面とが、レールとして機能し、受皿7が円滑に加熱庫5内に出し入れされる。
【0022】
なお、加熱庫5の内壁面には、水又は油に対する接触角が90°よりも大きくなるような表面構造を形成することを述べたが、加熱庫5の内壁面のうち、受皿7が摺動する際に受皿7が接触する部分(奥行き底辺部57の一部)には、前記表面構造を形成しなくてもよい。受皿7が摺動する際に受皿7が接触する加熱庫5の内壁面に前記表面構造を施したとしても、受皿7が摺動を繰り返すとその表面構造が摺り落ちるおそれがあるためである。受皿7が摺動する際に受皿7が接触する加熱庫5の内壁面には、前記表面構造を設けずに加熱庫5の地肌を出しておくことで、加熱庫5内での調理のときに発生する油分が当該部分に浸透してくると、受皿7の摺動性が良好となる。このため、スムーズな受皿7の出し入れが可能となる。
【0023】
図3は、図2の受皿嵌合溝及び突条部の近傍の拡大図である。図3に示すように、突条部56の突出方向の先端、すなわち上面部561と下面部562とが交わる角部分は、受皿7の周壁71とフランジ72との接続部分よりも内側に位置している。つまり、突条部56の先端は、周壁71の内壁面の上縁部よりも距離X(図3参照)だけ内側に位置している。このため、突条部56の上面部561の上を流れる油分や水分等は、上面部561の下端、すなわち突条部56の先端から落下して、受皿7に受け止められる。したがって、油分や水分等が加熱庫5の底板54の上に落下することを抑制できる。
【0024】
次に、本実施の形態1に係る加熱調理器100の作用を説明する。加熱庫5の上ヒータ9及び下ヒータ10で、加熱庫5内の調理物が加熱されると、調理物から油分、水分、調理物の欠片等が飛散する。本実施の形態1では、加熱庫5の内壁面に、水又は油に対する接触角が90°よりも大きくなるような表面構造を形成することで、加熱調理の際に調理物から飛散した油分や水分等は、加熱庫5の内壁面に滞留することなく、流れ落ちる。このため、加熱庫5の内壁面に、油分や水分等の汚れが付着することを抑制できる。したがって、使用者の加熱庫5の清掃の手間を削減することができる。
【0025】
また、加熱庫5の内壁面を流れ落ちる油分や水分等は、側壁51に形成された加熱庫5の内側へ突出する突条部56の上面部561に案内されて、受皿7に流れ込む。したがって、加熱庫5の内壁面を流れる油分や水分等が、加熱庫5の底板54等の上に落下するのを抑制することができる。このように、加熱庫5の内面には汚れが付きにくいので、使用者は、通常は受皿7のみを洗えばよいので、清掃の負担が少ない。油分や水分、調理物の欠片等を受け止める受皿7は、加熱庫5から取り出すことができるので、使用者は、容易に受皿7の手入れを行うことができる。
【0026】
また、加熱庫5内の内面の辺と隅部とを曲面状に形成したので、油分や水分等が加熱庫5の内面に溜まることをさらに抑制できる。また、加熱庫5内の曲面状の辺と隅部は、使用者の指で拭きやすいため、加熱庫5内の清掃の手間が軽減される。
【0027】
また、受皿7は、奥行き底辺部73にて加熱庫5の内壁面(奥行き底辺部57)と辺で接するようにしたので、レール構造を別途設けることなく、受皿7を加熱庫5内の前後方向に摺動させることができる。レール構造を設けなくてよいため、加熱調理器100の部品数を減らすことができて製造コストを低減させることができ、また、加熱庫5内の内面形状を単純化できるので、加熱庫5内の清掃性を高めることができる。また、加熱庫5の底板54の上面全体を受皿7で覆うことができるので、焼網8の上に載置される調理物から落下又は飛散した油分や水分等を、受皿7で受け止めることができ、油分や水分等が加熱庫5の底板54の上に落下するのを抑制することができる。このため、加熱庫5内が汚れにくく、使用者の清掃の負担を低減することができる。
【0028】
実施の形態2.
本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。本実施の形態2で添え字Aを付けて示す符号は、実施の形態1から変更した構成である。
【0029】
図4は、実施の形態2に係る加熱庫の概略正面断面図である。前述の実施の形態1では、受皿嵌合溝55の上面及び下面が平行であり、受皿嵌合溝55Aの下面が階段状に折れ曲がって側壁51及び奥行き底辺部57に連なる構成であった。本実施の形態2では、受皿嵌合溝55Aの上面の外側端から奥行き底辺部57までが直線状に接続されており、底板54から受皿嵌合溝55Aに向かって加熱庫5の幅が広がっている。
【0030】
また、受皿7の周壁71Aは、下から上(フランジ72側)に向かって左右方向外側に広がるように傾斜している。すなわち、受皿7の左右の周壁71A間の幅は、上に向かうほど広がっている。周壁71Aの上縁部にフランジ72が設けられている点は、実施の形態2と同様である。
【0031】
受皿7のフランジ72が受皿嵌合溝55Aに嵌り込んだ状態において、突条部56の先端が、周壁71Aとフランジ72との接続部分よりも内側に位置しており、突条部56を流れる油分や水分等が落下して受皿7に受け止められるようになっている点は、実施の形態1と同様である。
【0032】
本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるほか、加熱庫5の受皿嵌合溝55Aの下部と奥行き底辺部57とを直線状に接続したので、加熱庫5の内壁面の凹凸が実施の形態1で示した例よりも少なく、加熱庫5の製造が容易である。また、加熱庫5の内壁面の凹凸が少ないので、使用者は加熱庫5内を拭きやすく、使用者の清掃の手間を削減することができる。
【0033】
また、本実施の形態2では、受皿7の周壁71Aを、下から上に向かって左右方向外側に広がるように傾斜させたので、例えば金属プレスや鋳造等の金型を用いた製造方法で受皿7を製造する場合には、容易に製造することができる。
【0034】
実施の形態3.
本実施の形態3では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。本実施の形態3で添え字Bを付けて示す符号は、実施の形態1から変更した構成である。
【0035】
図5は、実施の形態3に係る加熱庫の概略正面断面図である。本実施の形態3では、受皿7のフランジ72Bが、周壁71の上縁部から離れるにしたがって上に向かうように傾斜している。言い替えると、フランジ72Bは、受皿7の外側から内側に向かって下降するように傾斜している。
【0036】
本実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるほか、受皿7のフランジ72Bを、外側から内側に向かって下降するように傾斜させたので、突条部56の表面を流れる油分や水分等が、突条部56からフランジ72Bの上に落下した場合でも、その油分や水分等は傾斜したフランジ72Bの上を流れて受皿7に受け止められる。したがって、油分や水分等が加熱庫5の底板54の上に落下することを抑制でき、使用者の加熱庫5の清掃の手間を削減することができる。
【0037】
なお、本実施の形態3のようにフランジ72Bの上面を傾斜させる場合には、突条部56の先端は、フランジ72Bの外周縁よりも内側に位置していればよく、必ずしも周壁71よりも内側に位置していなくてもよい。
【0038】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4に係る加熱庫の概略側面断面図である。前述の実施の形態1〜3では、加熱庫5の側壁51に受皿嵌合溝55及び突条部56を設けることを説明したが、本実施の形態4では、それに加え、加熱庫5の後壁52にも、加熱庫5の幅方向に延びる受皿嵌合溝55及び突条部56を設ける。図6に例示する後壁52に設けられた受皿嵌合溝55及び突条部56は、実施の形態1で示したものと同様の構成であるが、実施の形態2、3に示した受皿嵌合溝及び突条部を後壁52に設けてもよい。
【0039】
このように本実施の形態4によれば、後壁52にも受皿嵌合溝55及び突条部56を設けたので、油分や水分等が後壁52に溜まることなく突条部56の表面を流れ、受皿7に受け止められる。したがって、油分や水分等が加熱庫5の底板54の上に落下することを抑制でき、使用者の加熱庫5の清掃の手間を削減することができる。
【0040】
実施の形態5.
本実施の形態5では、突条部56の変形例を説明する。図7は、実施の形態5に係る加熱庫の突条部の近傍の概略正面断面図である。図7に示すように、突条部56の先端には、下向きに突出する先端突部58が設けられている。このような先端突部58を設けることで、突条部56の上面部561の表面を下側に向かって流れる油分や水分等は、先端突部58の下方に向かう表面に沿って下へ落下する。このため、突条部56の上面部561から下面部562へと油分や水分等が回り込みにくく、油分や水分等が受皿嵌合溝55に入り込むことを抑制できる。なお、本実施の形態5の先端突部58は、他の実施の形態と組み合わせることができる。
【0041】
実施の形態6.
本実施の形態6では、受皿7の変形例を説明する。本実施の形態6で添え字Cを付けて示す符号は、実施の形態1から変更した構成である。
【0042】
図8は、実施の形態6に係る受皿の底面側斜視図である。本実施の形態6の受皿7は、奥行き方向に延びる底辺である奥行き底辺部73Cの一部に、奥行き底辺部73Cの表面よりも尖った当接部74が形成されている。奥行き底辺部73Cの外表面は、実施の形態1で示した奥行き底辺部73よりも曲率半径の大きい曲面で構成されており、当接部74の外表面は、奥行き底辺部73Cよりも曲率半径の小さい曲面又は角形状である。図8に示す例では、左右それぞれの奥行き底辺部73Cに、奥行き方向手前側と奥側との2箇所に当接部74が形成されている。なお、当接部74の数は図示のものに限定されず、受皿7を安定的に保持するために必要な数だけ設ければよい。
【0043】
図9は、実施の形態6に係る加熱庫の概略正面断面図である。図9に示すように、受皿7が加熱庫5内に収容された状態において、受皿7は、当接部74にて加熱庫5の奥行き底辺部57と当接する。受皿7が加熱庫5内を前後方向に移動する際には、当接部74が、奥行き底辺部57の上を摺動することとなる。このように、本実施の形態6では、奥行き底辺部73Cよりも長さの短い当接部74で加熱庫5の奥行き底辺部57と接触するようにしたので、受皿7が加熱庫5内を摺動する際の受皿7と加熱庫5との接触面積を小さくすることができ、接触抵抗を減らすことができる。したがって、使用者はより軽い力で受皿7を加熱庫5に出し入れすることができ、使用者の使い勝手を向上させることができる。なお、本実施の形態6は、他の実施の形態と組み合わせることができる。
【0044】
なお、上記説明では、本発明の加熱調理器を、ビルトイン型の誘導加熱調理器に適用した例を示したが、天板及び天板上の被加熱物を加熱する加熱手段を有さない魚焼きグリルや、ガスコンロを備えた加熱調理器等に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 本体、2 天板、3 加熱コイル、4 操作表示部、5 加熱庫、51 側壁、52 後壁、53 天井壁、54 底板、55、55A 受皿嵌合溝、56 突条部、561 上面部、562 下面部、57 奥行き底辺部、58 先端突部、6 扉、7 受皿、71、71A 周壁、72、72B フランジ、73、73C 奥行き底辺部、74 当接部、8 焼網、9 上ヒータ、10 下ヒータ、100 加熱調理器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9