特許第6037912号(P6037912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037912
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20161128BHJP
   A01F 12/60 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A01D41/127
   A01F12/60
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-67034(P2013-67034)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-187945(P2014-187945A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180507
【弁理士】
【氏名又は名称】畑山 吉孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】井上 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】高原 一浩
(72)【発明者】
【氏名】池田 博
(72)【発明者】
【氏名】松藤 和憲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝秀
【審査官】 中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−036193(JP,A)
【文献】 特開2005−087155(JP,A)
【文献】 特許第3186102(JP,B2)
【文献】 特開平10−056868(JP,A)
【文献】 特開2006−246849(JP,A)
【文献】 特開2006−081478(JP,A)
【文献】 特開2005−080549(JP,A)
【文献】 特開2009−044995(JP,A)
【文献】 特開2012−10680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D34/02−34/408
A01D41/127
A01D69/00
A01F12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体を支持する走行装置と、
前記走行機体に上下昇降可能に支持され、植立穀稈を刈取る刈取部と、
刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、
前記脱穀装置によって脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンクと、
前記穀粒タンクに貯留された穀粒の重量測定を行う重量測定部と、
前記刈取部の上下位置を検出する刈取高さセンサと、
重量測定信号を出力する測定指示部と、
前記走行装置、前記刈取部、及び前記脱穀装置の状態から、作業状態であるか非作業状態であるかの作業状態判定を行う作業状態判定部と、
前記重量測定信号に基づいて前記重量測定部に前記重量測定を指令する制御部と、が備えられ、
前記制御部は、前記測定指示部から前記重量測定信号が出力されると、前記作業状態判定部に前記作業状態判定を指令し
前記制御部は、前記作業状態判定部によって前記作業状態であることが判定されると、前記上下位置の高さに関わらず前記重量測定部に前記重量測定を指令せず、前記作業状態判定部によって前記非作業状態であることが判定されると、前記上下位置が所定の高さ以上である場合に前記重量測定部に前記重量測定を指令し、前記上下位置が前記所定の高さよりも低い場合に前記重量測定部に前記重量測定を指令しないコンバイン。
【請求項2】
前記走行機体の傾きを検出する姿勢検出部と、
前記走行機体の傾きが所定の傾斜許容範囲内にあるか否かの姿勢判定を行う姿勢判定部と、が備えられ、
前記制御部は、前記作業状態判定部によって前記非作業状態であることが判定されると、前記姿勢判定部に前記姿勢判定を指令し
前記制御部は、前記姿勢判定部によって前記走行機体の傾きが所定の傾斜許容範囲内にあることが判定された場合前記重量測定部に前記重量測定を指令し、前記姿勢判定部によって前記走行機体の傾きが前記傾斜許容範囲内にないことが判定された場合前記重量測定部に前記重量測定を指令しない請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記走行機体の左右傾斜姿勢を変更する左右姿勢変更部が備えられ、
前記姿勢検出部として、前記走行機体の左右傾斜角度を検出する左右傾斜角度検出部が備えられ、
前記制御部は、前記姿勢判定部によって前記左右傾斜角度が所定の左右傾斜許容範囲内にないことが判定された場合、前記重量測定部に前記重量測定を指令せずに、前記左右傾斜角度が前記左右傾斜許容範囲内になるように前記左右姿勢変更部を制御し、前記左右傾斜角度が前記左右傾斜許容範囲内になった後に、前記重量測定部に前記重量測定を指令する請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記走行機体の前後傾斜姿勢を変更する前後姿勢変更部が備えられ、
前記姿勢検出部として、前記走行機体の前後傾斜角度を検出する前後傾斜角度検出部が備えられ、
前記制御部は、前記姿勢判定部によって前記前後傾斜角度が所定の前後傾斜許容範囲内にないことが判定された場合、前記重量測定部に前記重量測定を指令しないと共に、前記前後傾斜角度が前記前後傾斜許容範囲内になるように前記前後姿勢変更部を制御し、前記前後傾斜角度が前記前後傾斜許容範囲内になった後に、前記重量測定部に前記重量測定を指令する請求項2または3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記走行装置の走行速度を検出する車速センサが備えられ、
前記作業状態判定部が前記非作業状態であることを判定する条件に、前記走行速度がゼロであることが含まれている請求項1から4の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記脱穀装置へ動力伝達を入り切りする脱穀クラッチが備えられ、
前記作業状態判定部が前記非作業状態であることを判定する条件に、前記脱穀クラッチが切り状態であることが含まれている請求項1から5の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記刈取部に設けられて刈取穀稈の存在を検出する穀稈センサが備えられ、
前記作業状態判定部が前記非作業状態であることを判定する条件に、前記刈取部に刈取穀稈が存在していないことが含まれている請求項1から6の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記穀粒タンクに接続された縦オーガ、及び、前記縦オーガに接続されて前記穀粒タンクに貯留された穀粒を一端から外部へ排出可能であると共に、上下揺動可能かつ収納位置と作業位置との間で旋回可能な横オーガを有するアンローダと、
前記横オーガを前記収納位置に支持するオーガ受けと、
前記横オーガが前記オーガ受けに収納されている収納状態であるか否かを検出する収納検出部と、が備えられ、
前記制御部は、前記作業状態判定部によって前記非作業状態であることが判定されると、前記収納検出部の検出結果を確認し
前記制御部は、前記収納検出部によって前記収納状態が検出されている場合に前記重量測定部に前記重量測定を指令し、前記収納検出部によって前記収納状態が検出されていない場合前記重量測定部に前記重量測定を指令しない請求項1から7の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項9】
前記横オーガを上下揺動させる上下揺動駆動部と、
前記横オーガを旋回させる旋回駆動部と、が備えられ、
前記制御部は、前記収納検出部によって前記収納状態が検出されていない場合、前記重量測定部に前記重量測定を指令しないと共に、前記収納状態となるように前記上下揺動駆動部及び前記旋回駆動部を制御し、前記収納状態になった後に、前記重量測定部に前記重量測定を指令する請求項8に記載のコンバイン。
【請求項10】
前記穀粒タンクに接続された縦オーガ、及び、前記縦オーガに接続されて前記穀粒タンクに貯留された穀粒を一端から外部へ排出可能であると共に、上下揺動可能かつ収納位置と作業位置との間で旋回可能な横オーガを有するアンローダと、
前記横オーガを上下揺動させる上下揺動駆動部と、
前記横オーガを前記収納位置に支持するオーガ受けと、が備えられ、
前記制御部は、前記作業状態判定部によって前記非作業状態であることが判定されると、前記上下揺動駆動部を制御して前記横オーガを所定時間下降させた後に、前記重量測定部に前記重量測定を指令する請求項1から7の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項11】
前記制御部は、前記重量測定部に前記重量測定を指令しない場合は、運転者に、測定に関する情報を報知する請求項1から10の何れか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体を支持する走行装置と、植立穀稈を刈取る刈取部と、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、脱穀装置によって脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンクと、が備えられ、貯留タンクの穀粒の重量を測定できるように構成されたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような従来のコンバインの一例が例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に示されたコンバインには、穀粒タンク(特許文献1では「グレンタンク」)に貯留された穀粒の重量測定を行う重量測定部(特許文献1では「ロードセル」)が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−164967号公報(段落番号[0009]、[0010]、[図1])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコンバインでは、コンバインが作業状態にあるときでも穀粒タンクに貯留された穀粒の重量測定を行えるようになっている。しかし、測定する際に、作業が行われていると、作業によって穀粒タンクが振動し、重量測定の結果にバラツキが生じるおそれがある。
【0005】
このような実情に鑑み、穀粒タンクに貯留された穀粒の重量を精度よく測定できるコンバインの提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンバインは
行機体を支持する走行装置と、
前記走行機体に上下昇降可能に支持され、植立穀稈を刈取る刈取部と、
刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、
前記脱穀装置によって脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンクと、
前記穀粒タンクに貯留された穀粒の重量測定を行う重量測定部と、
前記刈取部の上下位置を検出する刈取高さセンサと、
重量測定信号を出力する測定指示部と、
前記走行装置、前記刈取部、及び前記脱穀装置の状態から、作業状態であるか非作業状態であるかの作業状態判定を行う作業状態判定部と、
前記重量測定信号に基づいて前記重量測定部に前記重量測定を指令する制御部と、が備えられ、
前記制御部は、前記測定指示部から前記重量測定信号が出力されると、前記作業状態判定部に前記作業状態判定を指令し
前記制御部は、前記作業状態判定部によって前記作業状態であることが判定されると、前記上下位置の高さに関わらず前記重量測定部に前記重量測定を指令せず、前記作業状態判定部によって前記非作業状態であることが判定されると、前記上下位置が所定の高さ以上である場合に前記重量測定部に前記重量測定を指令し、前記上下位置が前記所定の高さよりも低い場合に前記重量測定部に前記重量測定を指令しないものである
【0007】
本発明によると、穀粒タンクに貯留された穀粒の重量測定を行うために、測定指示部から重量測定信号が出力されると、走行装置、刈取部、及び脱穀装置の状態から、作業状態であるか非作業状態であるかの作業状態判定が行われる。そして、作業状態であると判定されると、重量測定部による穀粒タンクに貯留された穀粒の重量測定は行われない。つまり、本発明によれば、穀粒タンクに振動が生じている作業状態のときには、重量測定部による穀粒タンクに貯留された穀粒の重量測定は行われないので、穀粒タンク内の穀粒の重量として正確性に欠く値が測定されてしまう可能性が排除され、結果として、穀粒タンクに貯留された穀粒の重量を精度よく測定できる。
さらに、本発明によると、非作業状態であって、刈取部の上下位置が、所定の高さよりも高い場合に、重量測定部による穀粒タンクに貯留された穀粒の重量測定が行われる。これにより、例えば、重量測定が行われる前に走行機体を水平化する制御が行われて走行機体が下降するような場合に、刈取部の先端等が不測に圃場に接触してしまうというような不都合を回避できる。
【0008】
上記構成において
記走行機体の傾きを検出する姿勢検出部と、
前記走行機体の傾きが所定の傾斜許容範囲内にあるか否かの姿勢判定を行う姿勢判定部と、が備えられ、
前記制御部は、前記作業状態判定部によって前記非作業状態であることが判定されると、前記姿勢判定部に前記姿勢判定を指令し
前記制御部は、前記姿勢判定部によって前記走行機体の傾きが所定の傾斜許容範囲内にあることが判定された場合前記重量測定部に前記重量測定を指令し、前記姿勢判定部によって前記走行機体の傾きが前記傾斜許容範囲内にないことが判定された場合前記重量測定部に前記重量測定を指令しないと好適である。
【0009】
走行機体が傾くことにより穀粒タンクも傾くので、走行機体が傾いた状態で測定される重量は正確でないおそれがある。しかし、本構成によれば、非作業状態であると判定された後に、さらに、走行機体の傾きが所定の傾斜許容範囲内にあると判定されてから重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量の測定が行われる。そして、走行機体の傾きが傾斜許容範囲内にないと判定されると重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量の測定が行われない。したがって、穀粒タンク内の穀粒の重量として正確性に欠く値が測定されてしまう可能性が排除され、結果として、穀粒タンクに貯留された穀粒の重量を精度よく測定できる。
【0010】
上記構成において
記走行機体の左右傾斜姿勢を変更する左右姿勢変更部が備えられ、
前記姿勢検出部として、前記走行機体の左右傾斜角度を検出する左右傾斜角度検出部が備えられ、
前記制御部は、前記姿勢判定部によって前記左右傾斜角度が所定の左右傾斜許容範囲内にないことが判定された場合、前記重量測定部に前記重量測定を指令せずに、前記左右傾斜角度が前記左右傾斜許容範囲内になるように前記左右姿勢変更部を制御し、前記左右傾斜角度が前記左右傾斜許容範囲内になった後に、前記重量測定部に前記重量測定を指令すると好適である。
【0011】
本構成によれば、走行機体の左右傾斜角度を検出する左右傾斜角度検出部が備えられており、左右の傾きが所定の左右傾斜許容範囲内にないと判定されると、まず、左右傾斜角度が左右傾斜許容範囲内になるように左右姿勢変更部が制御される。そして、左右傾斜角度が左右傾斜許容範囲内になってから、重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量の測定が行われる。このように、本構成であれば、走行機体の左右傾斜角度が大きなときは、自動的に左右傾斜角度の調整が行われるので、重量測定部による正確な重量測定をスムーズに実行できる。
【0012】
上記構成において
記走行機体の前後傾斜姿勢を変更する前後姿勢変更部が備えられ、
前記姿勢検出部として、前記走行機体の前後傾斜角度を検出する前後傾斜角度検出部が備えられ、
前記制御部は、前記姿勢判定部によって前記前後傾斜角度が所定の前後傾斜許容範囲内にないことが判定された場合、前記重量測定部に前記重量測定を指令しないと共に、前記前後傾斜角度が前記前後傾斜許容範囲内になるように前記前後姿勢変更部を制御し、前記前後傾斜角度が前記前後傾斜許容範囲内になった後に、前記重量測定部に前記重量測定を指令すると好適である。
【0013】
本構成によれば、走行機体の前後傾斜角度を検出する前後傾斜角度検出部が備えられており、前後の傾きが所定の前後傾斜許容範囲内にないと判定されると、まず、前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内になるように前後姿勢変更部が制御される。そして、前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内になってから、重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量の測定が行われる。このように、本構成であれば、走行機体の前後傾斜角度が大きなときは、自動的に前後傾斜角度の調整が行われるので、重量測定部による正確な重量測定をスムーズに実行できる。
【0014】
上記構成において
記走行装置の走行速度を検出する車速センサが備えられ、
前記作業状態判定部が前記非作業状態であることを判定する条件に、前記走行速度がゼロであることが含まれていると好適である。
【0015】
走行装置の走行速度がゼロ以外のとき、すなわち走行中は、穀粒タンクの振動が大きくなるため重量測定の誤差が大きくなるおそれがある。しかし、本構成によれば、車速センサにより検出される走行装置の走行速度がゼロ以外のときは、非作業状態とは判定されず、重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量の測定が行われない。したがって、穀粒タンク内の穀粒の重量として正確性に欠く値が測定されてしまう可能性が排除され、結果として、穀粒タンクに貯留された穀粒の重量を精度よく測定できる。
【0016】
上記構成において
記脱穀装置へ動力伝達を入り切りする脱穀クラッチが備えられ、
前記作業状態判定部が前記非作業状態であることを判定する条件に、前記脱穀クラッチが切り状態であることが含まれていると好適である。
【0017】
脱穀クラッチが入り状態のときは脱穀装置の作動により穀粒タンクへ振動が伝達される状態となるため重量測定の誤差が大きくなるおそれがある。しかし、本構成によれば、脱穀装置へ動力伝達を入り切りする脱穀クラッチが切り状態でないとき、すなわち脱穀クラッチが入り状態のときには、非作業状態とは判定されず、重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量の測定が行われない。したがって、穀粒タンク内の穀粒の重量として正確性に欠く値が測定されてしまう可能性が排除され、結果として、穀粒タンクに貯留された穀粒の重量を精度よく測定できる。
【0018】
上記構成において
記刈取部に設けられて刈取穀稈の存在を検出する穀稈センサが備えられ、
前記作業状態判定部が前記非作業状態であることを判定する条件に、前記刈取部に刈取穀稈が存在していないことが含まれていると好適である。
【0019】
刈取部に穀稈が存在しており穀稈センサによって刈取穀稈が検出されている状態のとき、つまり、刈取部が作動しているときは、作動する刈取部から穀粒タンクへ振動が伝達され、重量測定の誤差が大きくなるおそれがある。しかし、本構成によれば、少なくとも刈取部に刈取穀稈が存在していないことを非作業状態であると判定する条件としているので、穀粒タンク内の穀粒の重量として正確性に欠く値が測定されてしまう可能性が排除され、結果として、穀粒タンクに貯留された穀粒の重量を精度よく測定できる。
【0020】
【0021】
【0022】
上記構成において
記穀粒タンクに接続された縦オーガ、及び、前記縦オーガに接続されて前記穀粒タンクに貯留された穀粒を一端から外部へ排出可能であると共に、上下揺動可能かつ収納位置と作業位置との間で旋回可能な横オーガを有するアンローダと、
前記横オーガを前記収納位置に支持するオーガ受けと、
前記横オーガが前記オーガ受けに収納されている収納状態であるか否かを検出する収納検出部と、が備えられ、
前記制御部は、前記作業状態判定部によって前記非作業状態であることが判定されると、前記収納検出部の検出結果を確認し
前記制御部は、前記収納検出部によって前記収納状態が検出されている場合に前記重量測定部に前記重量測定を指令し、前記収納検出部によって前記収納状態が検出されていない場合前記重量測定部に前記重量測定を指令しないと好適である。
【0023】
アンローダの横オーガは縦オーガに片持ち支持されているものであり、横オーガがオーガ受けに適正に収納されている状態と、横オーガがオーガ受けに適正に収納されていない状態とでは、穀粒タンクにおける重心位置が変化して、重量測定の結果が異なるおそれがある。本構成によれば、非作業状態であると判定されてから、横オーガがオーガ受けに適正に収納されていると判定されると、重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量測定は行われる。しかし、非作業状態であると判定されたとしても、横オーガがオーガ受けに適正に収納されていないと判定されると、重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量測定は行われない。このように、横オーガがオーガ受けに適正に収納された安定状態のときに、重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量測定を行うので、正確性の高い重量の値を得ることができる。
【0024】
上記構成において
記横オーガを上下揺動させる上下揺動駆動部と、
前記横オーガを旋回させる旋回駆動部と、が備えられ、
前記制御部は、前記収納検出部によって前記収納状態が検出されていない場合、前記重量測定部に前記重量測定を指令しないと共に、前記収納状態となるように前記上下揺動駆動部及び前記旋回駆動部を制御し、前記収納状態になった後に、前記重量測定部に前記重量測定を指令すると好適である。
【0025】
本構成によれば、横オーガが収納位置のオーガ受けに適正に収納されていない場合、横オーガがオーガ受けに適正に収納されてから重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量の測定が行われる。このように、本構成であれば、自動的に横オーガが正しくオーガ受けに収納されて重量測定が行われるので、重量測定部による正確な重量測定をスムーズに実行できる。
【0026】
上記構成において
記穀粒タンクに接続された縦オーガ、及び、前記縦オーガに接続されて前記穀粒タンクに貯留された穀粒を一端から外部へ排出可能であると共に、上下揺動可能かつ収納位置と作業位置との間で旋回可能な横オーガを有するアンローダと、
前記横オーガを上下揺動させる上下揺動駆動部と、
前記横オーガを前記収納位置に支持するオーガ受けと、が備えられ、
前記制御部は、前記作業状態判定部によって前記非作業状態であることが判定されると、前記上下揺動駆動部を制御して前記横オーガを所定時間下降させた後に、前記重量測定部に前記重量測定を指令すると好適である。
【0027】
アンローダの横オーガは、旋回位置がずれるよりも、走行時の振動等によって上下位置がずれることの方が多い傾向にある。本構成によれば、横オーガが収納位置のオーガ受けに適正に収納されていない場合、横オーガを所定時間下降させてから重量測定部による穀粒タンク内の穀粒の重量の測定が行われる。このような場合には、横オーガを所定時間下降させれば、横オーガはオーガ受けに適正に収納される。このように、本構成であれば、自動的に横オーガが正しくオーガ受けに収納されて重量測定が行われるので、重量測定部による正確な重量測定をスムーズに実行できる。
【0028】
上記構成において
記制御部は、前記重量測定部に前記重量測定を指令しない場合は、運転者に、測定に関する情報を報知すると好適である。
【0029】
本構成によれば、重量測定部に重量測定を指令しない場合には、測定に関する情報、例えば、重量測定を行うことができない旨の情報を運転者に報知できる。これにより、運転者は、重量測定ができないことを速やかに確認でき、種々の対応をとり得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】コンバインの全体側面図である。
図2】コンバインの全体平面図である。
図3】制御構成を示すブロック図である。
図4】制御の概略を示すフローチャートである。
図5】リモコンの説明図である。
図6】ディスプレイへの表示例を示す説明図である。
図7】別実施形態におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[コンバインの概略構成]
コンバイン10は、クローラ走行式の自脱型コンバインであり、図1図3に示すように、コンバイン10には、走行機体11と、走行機体11を支持する左右一対のクローラ走行装置12と、植立穀稈を刈取る刈取部13と、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置14と、脱穀装置14によって脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンク15と、穀粒タンク15内の穀粒を外部に排出するアンローダ16と、運転者が搭乗する運転操縦部17と、が備えられている。
【0032】
走行機体11には、走行機体11の傾きを検出する姿勢検出部として、図3に示すように、左右傾斜センサ19(「左右傾斜角度検出部」に相当)と、前後傾斜センサ20(「前後傾斜角度検出部」に相当)と、が備えられている。左右傾斜センサ19は、走行機体11の左右傾斜角度を検出するように構成されている。前後傾斜センサ20は、走行機体11の前後傾斜角度を検出するように構成されている。
【0033】
図1図2に示すように、右側のクローラ走行装置12には、走行機体11に対して昇降自在なトラックフレーム21が備えられている。トラックフレーム21の前部側には、前リンク機構22の一端が横軸芯周りに回動自在に連結されている。前リンク機構22の他端には、第1油圧シリンダ23の一端が横軸心周りに回動自在に連結されている。第1油圧シリンダ23の他端は、走行機体11の一部に連結されている。第1油圧シリンダ23を伸長させると、走行機体11の右前部側が下降し、第1油圧シリンダ23を縮退させると、走行機体11の右前部側が上昇するように構成されている。トラックフレーム21の後部側には、後リンク機構25の一端が横軸芯回りに回動自在に連結されている。後リンク機構25の他端には、第2油圧シリンダ27の一端が横軸心周りに回動自在に連結されている。第2油圧シリンダ27の他端は、第1油圧シリンダ23が連結された部位とは異なる走行機体11の一部に連結されている。第2油圧シリンダ27を伸長させると、走行機体11の右後部側が上昇し、第2油圧シリンダ27を縮退させると、走行機体11の右後部側が下降するように構成されている。
【0034】
詳しく図示はしないが左側のクローラ走行装置12についても、右側のクローラ走行装置12と左右対称の構造になっている。ただし、左側のクローラ走行装置12には、第3油圧シリンダ29と、第4油圧シリンダ31と、が備えられている。第3油圧シリンダ29を伸長させると、走行機体11の左前部側が下降し、第3油圧シリンダ29を縮退させると、走行機体11の左前部側が上昇するように構成されている。第4油圧シリンダ31を伸長させると、走行機体11の左後部側が上昇し、第4油圧シリンダ31を縮退させると、走行機体11の左後部側が下降するように構成されている。
【0035】
第1油圧シリンダ23、第2油圧シリンダ27、第3油圧シリンダ29、第4油圧シリンダ31によって、走行機体11の前後傾斜姿勢を変更する「前後姿勢変更部」が構成されている。また、第1油圧シリンダ23、第2油圧シリンダ27、第3油圧シリンダ29、第4油圧シリンダ31によって、走行機体11の左右傾斜姿勢を変更する「左右姿勢変更部」が構成されている。
【0036】
また、コンバイン10には、走行速度を検出する車速センサ33が備えられている(図3参照)。
【0037】
図1図2に示すように、刈取部13は、走行機体11に支持され、昇降シリンダ34によって走行機体11の横軸P周りに上下昇降可能とされている。刈取部13には、株元センサ35(「穀稈センサ」に相当)が設けられている(図3参照)。株元センサ35は、刈取部13に取り込まれた刈取穀稈の株元を検出して、刈取部13における刈取穀稈の存在を検出するように構成されている。また、刈取部13には、刈取部13の上下位置を検出するように構成されている刈取高さセンサ36が備えられている(図3参照)。
【0038】
図1図2に示すように、脱穀装置14は、刈取部13の後方に配置されており、脱穀クラッチ37(図3参照)により動力伝達の入り切りが行われる。つまり、脱穀クラッチ37が入り状態にされると脱穀装置14が作動され、脱穀クラッチ37が切り状態にされると脱穀装置14は停止される。
【0039】
図1図2に示すように、穀粒タンク15は、脱穀装置14の横側に備えられており、脱穀装置14から流入される脱穀された穀粒が貯留される。穀粒タンク15の底部には、穀粒タンク15内に貯留された穀粒をアンローダ16へ送って外部へ排出するための排出オーガ38が備えられている。排出オーガ38は、不図示の排出クラッチを入り状態にすると作動して穀粒タンク15内に貯留された穀粒をアンローダ16へ送って外部へ排出し、不図示の排出クラッチを切り状態にすると停止される。穀粒タンク15の近傍には、ロードセル39(「重量測定部」に相当)が備えられている。ロードセル39は、穀粒タンク15の下方に配置されており、穀粒タンク15に貯留された穀粒の重量測定を行うことが可能に構成されている。
【0040】
図1図2に示すように、アンローダ16には、縦オーガ40と、横オーガ41と、が備えられている。縦オーガ40は、穀粒タンク15に接続されている。横オーガ41は、縦オーガ40に接続されて縦オーガ40に片持ち支持されており、穀粒タンク15に貯留された穀粒を一端から外部へ排出可能に構成されている。そして、横オーガ41は、上下揺動可能かつ収納位置と作業位置との間で旋回可能に構成されている。横オーガ41を収納する収納位置には、横オーガ41を受け止め支持するオーガ受け42が備えられている。アンローダ16には、図3に示すように、第1ポテンショメータ43と、第2ポテンショメータ44と、が備えられている。第1ポテンショメータ43は、横オーガ41の上下揺動角度を検出するように構成されている。第2ポテンショメータ44は、横オーガ41の旋回角度を検出するように構成されている。
【0041】
図1図2に示すように、横オーガ41を旋回させるモータ46(「旋回駆動部」に相当)と、横オーガ41を上下揺動させる揺動シリンダ47(「上下揺動駆動部」に相当)が備えられている。
【0042】
図1図2に示すように、運転操縦部17には、運転者が着座する運転座席48と、アンローダ16の操作等に用いられるリモコン49と、各種情報を表示可能なディスプレイ50と、音声を出力可能なスピーカ51等が備えられている。
【0043】
[リモコン]
図5に示すように、リモコン49には、自動左旋回スイッチ55、自動右旋回スイッチ56、自動後旋回スイッチ57、自動収納スイッチ58、排出スイッチ59、停止スイッチ60、上昇スイッチ62、下降スイッチ63、手動左旋回スイッチ64、手動右旋回スイッチ65、測定スイッチ66(「測定指示部」に相当)が備えられている。
【0044】
自動左旋回スイッチ55が押操作されると、横オーガ41が所定の左側排出位置まで自動で左旋回される。自動右旋回スイッチ56が押操作されると、横オーガ41が所定の右側排出位置まで自動で右旋回される。自動後旋回スイッチ57が押操作されると、横オーガ41が所定の後側排出位置まで自動で旋回される。自動収納スイッチ58が押操作されると、横オーガ41が自動的に旋回、上下揺動され、オーガ受け42に収納される。排出スイッチ59が押操作されると、排出クラッチが入り状態となり、排出オーガ38が作動されて穀粒タンク15からアンローダ16を介して穀粒が外部へ排出される。停止スイッチ60が押操作されると、排出オーガ38が停止されて、穀粒タンク15からの穀粒の排出が停止される。
【0045】
上昇スイッチ62が押操作されている間、横オーガ41は上昇する。下降スイッチ63が押操作されている間、横オーガ41は下降する。手動左旋回スイッチ64が押操作されている間、横オーガ41は左旋回する。手動右旋回スイッチ65が押操作されている間、横オーガ41は右旋回する。
【0046】
測定スイッチ66は、押操作されると、ロードセル39による穀粒タンク15内の穀粒の重量の測定を指示する『重量測定信号』を出力する。アンローダ16の姿勢変更や排出オーガ38の入り切りを指示するリモコン49上に、重量測定を指示する測定スイッチ66が備えられているので、同じ穀粒タンク15に関係する機器に対して指示を行うスイッチを集約配置でき、操作性が向上される。
【0047】
[ECU]
コンバイン10には、図3に示すように、重量測定の制御等を行うECU18が備えられている。ECU18には、作業状態判定部71と、姿勢判定部72と、収納検出部73と、刈取高さ検出部74と、重量測定決定部75(「制御部」に相当)と、重量取得部76と、演算記憶部77と、報知指令部78と、が備えられている。
【0048】
作業状態判定部71は、車速センサ33、株元センサ35、脱穀クラッチ37、重量測定決定部75、に接続されている。作業状態判定部71は、重量測定決定部75から作業状態判定の指令を入力すると、クローラ走行装置12、刈取部13、及び脱穀装置14の状態から、作業状態であるか非作業状態であるかの作業状態判定を行うように構成されている。
【0049】
作業状態判定部71は、重量測定決定部75から作業状態判定の指令を入力すると、車速センサ33により検出された走行速度がゼロ、脱穀クラッチ37が切り状態、株元センサ35が非検出状態、の全ての条件を満たすときに、非作業状態であると判定して、重量測定決定部75に『非作業信号』を出力する。一方、作業状態判定部71は、重量測定決定部75から作業状態判定の指令を入力しても、車速センサ33による検出された走行速度がゼロ、脱穀クラッチ37が切り状態、株元センサ35が非検出状態、のいずれかの条件が満たされていないときは、作業状態であると判定して、重量測定決定部75に『非作業信号』を出力しない。
【0050】
姿勢判定部72は、前後傾斜センサ20と、左右傾斜センサ19と、重量測定決定部75と、に接続されている。姿勢判定部72は、重量測定決定部75から姿勢判定の指令を入力すると、左右傾斜センサ19から入力される左右傾斜角度および前後傾斜センサ20から入力される前後傾斜角度に基づいて、走行機体11の傾きが所定の傾斜許容範囲内にあるか否かの姿勢判定を行うように構成されている。
【0051】
姿勢判定部72は、重量測定決定部75から姿勢判定の指令を入力した際に、左右傾斜センサ19から入力される左右傾斜角度が左右傾斜許容範囲内にあり、かつ、前後傾斜センサ20から入力される前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内にある場合は、走行機体11の姿勢が適正であると判定して、重量測定決定部75に『姿勢適正信号』を出力する。また、姿勢判定部72は、重量測定決定部75に『姿勢適正信号』を出力するときに、走行機体11の姿勢が適正であると判定した時の左右傾斜センサ19から入力された左右傾斜角度、前後傾斜センサ20から入力された前後傾斜角度も併せて重量測定決定部75に出力する。
【0052】
一方、姿勢判定部72は、重量測定決定部75から姿勢判定の指令を入力した際に、左右傾斜センサ19から入力される左右傾斜角度が左右傾斜許容範囲内にない場合は、左右傾斜角度が不適切であると判定する。さらに、この場合、姿勢判定部72は、左右傾斜角度が左右傾斜許容範囲内に調整可能な範囲内にあるか否かを判定する。姿勢判定部72は、左右傾斜角度が調整可能な範囲内にない場合、重量測定決定部75に『調整不可信号』を出力する。一方、姿勢判定部72は、重量測定決定部75から姿勢判定の指令を入力した際に、左右傾斜角度が調整可能な範囲内にあるときは、第1油圧シリンダ23、第2油圧シリンダ27、第3油圧シリンダ29、第4油圧シリンダ31を駆動して、走行機体11の左右傾斜角度を左右傾斜許容範囲内に収める制御をするように重量測定決定部75に『左右傾斜調整信号』を出力する。
【0053】
そして、姿勢判定部72は、重量測定決定部75から姿勢判定の指令を入力した際に、前後傾斜センサ20から入力される前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内にない場合は、前後傾斜角度が不適切であると判定する。さらに、この場合、姿勢判定部72は、前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内に調整可能な範囲内にあるか否かを判定する。姿勢判定部72は、前後傾斜角度が調整可能な範囲内にない場合、重量測定決定部75に『調整不可信号』を出力する。一方、姿勢判定部72は、重量測定決定部75から姿勢判定の指令を入力した際に、前後傾斜角度が調整可能な範囲内にあるときは、第1油圧シリンダ23、第2油圧シリンダ27、第3油圧シリンダ29、第4油圧シリンダ31を駆動して、走行機体11の前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内収める制御をするように重量測定決定部75に『前後傾斜調整信号』を出力する。
【0054】
収納検出部73は、第1ポテンショメータ43と、第2ポテンショメータ44とに接続されている。収納検出部73は、重量測定決定部75から収納判定の指令を入力すると、第1ポテンショメータ43から入力される揺動角度と、第2ポテンショメータ44から入力される旋回角度と、に基づいて、横オーガ41がオーガ受け42に適正に収納されたか否かを判定する。
【0055】
収納検出部73は、重量測定決定部75から収納判定の指令を入力した際に、横オーガ41が収納位置にある場合は、収納適正であると判定し、重量測定決定部75に、『収納適正信号』を出力する。一方、収納検出部73は、重量測定決定部75から収納判定の指令を入力した際に、横オーガ41が収納位置にない場合は、重量測定決定部75に、モータ46および揺動シリンダ47を駆動して、横オーガ41がオーガ受け42に適正に収納されるように制御を行うように指令する『収納調整信号』を出力する。
【0056】
刈取高さ検出部74は、刈取高さセンサ36と、重量測定決定部75とに接続されている。刈取高さ検出部74は、重量測定決定部75から刈取高さ判定の指令を入力すると、刈取部13の上下位置が所定の高さよりも低くないか否かを判定する。
【0057】
刈取高さ検出部74は、重量測定決定部75から刈取高さ判定の指令を入力した際に、刈取高さセンサ36から入力される刈取高さが所定の高さよりも低くない場合は、刈取高さが適正であると判定し、重量測定決定部75に『刈取高さ適正信号』を出力する。一方、刈取高さ検出部74は、重量測定決定部75から刈取高さ判定の指令を入力した際に、刈取高さセンサ36から入力される刈取高さが所定の高さよりも低い場合は、刈取高さが不適であると判定し、重量測定決定部75に『刈取高さ適正信号』を出力しない。
【0058】
重量測定決定部75は、測定スイッチ66、作業状態判定部71、姿勢判定部72、収納検出部73、刈取高さ検出部74、ロードセル39、演算記憶部77、報知指令部78、第1油圧シリンダ23、第2油圧シリンダ27、第3油圧シリンダ29、第4油圧シリンダ31、モータ46、揺動シリンダ47、に接続されている。重量測定決定部75は、ロードセル39による重量測定の許否決定、走行機体11の姿勢調整、アンローダ16の位置調整、報知の指令を行う。
【0059】
重量測定決定部75は、測定スイッチ66から『重量測定信号』が入力されると、作業状態判定部71に作業状態の判定を要求する指令を出力し、『非作業信号』が応答されるか否かを確認する。重量測定決定部75は、『非作業信号』が応答されないと、報知指令部78に『作業中信号』を出力する。重量測定決定部75は、『非作業信号』が応答されたことを確認すると、次に、刈取高さ検出部74に刈取高さ判定を要求する指令を出力し、『刈取高さ適正信号』が応答されるか否かを確認する。
【0060】
重量測定決定部75は、『刈取高さ適正信号』が応答されないと、報知指令部78に『刈取高さ不正信号』を出力する。一方、重量測定決定部75は、『刈取高さ適正信号』が応答されたことを確認すると、次に、姿勢判定部72に姿勢の判定を要求する指令を出力し、応答を確認する。重量測定決定部75は、姿勢判定部72から『姿勢適正信号』と、左右傾斜角度及び前後傾斜角度が応答されたことを確認すると、演算記憶部77に左右傾斜角度及び前後傾斜角度を出力し、次に、収納検出部73に、収納判定の指令を入力し、応答を確認する。
【0061】
一方、重量測定決定部75は、姿勢判定部72から『調整不可信号』が応答されたことを確認すると、『非水平信号』を報知指令部78に出力する。
【0062】
また、重量測定決定部75は、姿勢判定部72から『左右傾斜調整信号』あるいは『前後傾斜調整信号』が応答されたことを確認すると、第1油圧シリンダ23、第2油圧シリンダ27、第3油圧シリンダ29、第4油圧シリンダ31を駆動して、走行機体11の左右傾斜角度あるいは前後傾斜角度が水平に近づくように制御する。
【0063】
重量測定決定部75は、収納検出部73から『収納適正信号』が応答されたことを確認すると、ロードセル39に重量を測定して所定時間の間、重量取得部76へ出力するよう指令するとともに、報知指令部78に『正常測定信号』を出力する。一方、重量測定決定部75は、収納検出部73から『収納調整信号』が応答されたことを確認すると、ロードセル39による重量測定を指令しないと共に、モータ46および揺動シリンダ47を駆動して、横オーガ41が収納位置に正しく姿勢変更されるように制御を行い、横オーガ41を収納位置に位置調整する。
【0064】
重量取得部76は、ロードセル39、演算記憶部77、に接続されている。重量取得部76は、ロードセル39から穀粒タンク15の重量を取得すると、所定時間の間、その穀粒タンク15の重量を取得して平均処理された測定データを演算し、その測定データを演算記憶部77に出力する。
【0065】
演算記憶部77は、重量測定決定部75、重量取得部76、報知指令部78、に接続されている。演算記憶部77は、重量取得部76から入力された測定データから穀粒タンク15の風袋重量を減算して、穀粒タンク15内の穀粒の概算重量値を取得する。そして、演算記憶部77は、さらに、概算重量値を、重量測定決定部75から入力された走行機体11の左右傾斜角度及び前後傾斜角度に基づいて、補正して補正重量値を演算し、その補正重量値を記憶する。
【0066】
報知指令部78は、重量測定決定部75、演算記憶部77、ディスプレイ50、スピーカ51に接続されている。報知指令部78は、重量測定決定部75から『作業中信号』を入力すると、例えば、ディスプレイ50やスピーカ51等に、「作業中のため重量を測定できません。」等の表示や音声の出力をさせて、運転者への報知を行う。また、報知指令部78は、重量測定決定部75から『刈取高さ不正信号』を入力すると、ディスプレイ50やスピーカ51等に、「刈取高さが低すぎるため重量を測定できません。」等の表示や音声の出力をさせて、運転者への報知を行う。また、報知指令部78は、重量測定決定部75から『非水平信号』を入力すると、ディスプレイ50やスピーカ51等に、「水平な場所で重量を測定して下さい。」等の表示や音声の出力をさせて、運転者への報知を行う。
【0067】
また、報知指令部78は、重量測定を行う時間の経過後、演算記憶部77に記憶された補正重量値を読み出して、ディスプレイ50やスピーカ51等に、「補正重量値」、すなわち、「穀粒タンク15内の穀粒の重量」を表示や音声の出力を行わせて、運転者への報知を行う。
【0068】
[フローチャート]
上記のようなECU18によって実現される、穀粒タンク15内の穀粒の重量測定の手順を、図4のフローチャートを用いて説明する。
まず、測定スイッチ66が操作入力されたか否かが確認される(ステップ♯1)。ステップ♯1において、測定スイッチ66が操作入力されていないと(♯1:No)、ステップ♯1へ戻る。ステップ♯1において、測定スイッチ66が操作入力されたことが確認されると(♯1:Yes)、次に、走行機体11の走行速度がゼロか否かが判定される(ステップ♯2)。ステップ♯2において、走行機体11の走行速度がゼロでないと判定されると(♯2:No)、測定不可の報知がなされ(ステップ♯3)、終了となる。一方、ステップ♯2において、走行機体11の走行速度がゼロであると判定されると(ステップ♯2:Yes)、次に、脱穀クラッチ37が切り状態か否かが判定される(ステップ♯4)。ステップ♯4において、脱穀クラッチ37が切り状態でないと判定されると(♯4:No)、ステップ♯3へ移行する。一方、ステップ♯4において、脱穀クラッチ37が切り状態である判定されると(♯4:Yes)、次に、株元センサ35が非検出状態である否かが判定される(ステップ♯5)。ステップ♯5において、株元センサ35が非検出状態でないと判定されると(♯5:No)、ステップ♯3へ移行する。一方、ステップ♯5において、株元センサ35が非検出状態であると判定されると(♯5:Yes)、次に、刈取部13が所定の高さより低くないか否かが判定される(ステップ♯6)。
【0069】
ステップ♯6において、刈取部13が所定の高さより高くないと判定されると(♯6:No)、ステップ♯3へ移行する。一方、ステップ♯6において、刈取部13が所定の高さより高いと判定されると(♯6:Yes)、次に、走行機体11の左右傾斜角度が左右傾斜許容範囲内であるか否かが判定される(ステップ♯7)。
【0070】
ステップ♯7において、走行機体11の左右傾斜角度が左右傾斜許容範囲内でないと判定されると(♯7:No)、次に、走行機体11の左右傾斜角度を調整可能か否かが判定される(ステップ♯8)。ステップ♯8において、走行機体11の左右傾斜角度が調整不可と判定されると(♯8:No)、調整不可の報知がなされる(ステップ♯9)。ステップ♯9では、例えば、図6に示すように、ディスプレイ50に「水平な場所で測定して下さい」等のメッセージを表示したり、スピーカ51により音声を出力する等して、運転手に対応を促す報知がなされる。ステップ♯8において、走行機体11の左右傾斜角度が調整可能と判定されると(♯8:Yes)、走行機体11の左右傾斜角度が調整され(ステップ♯10)、ステップ♯7へ戻る。
【0071】
ステップ♯7において、走行機体11の左右傾斜角度が左右傾斜許容範囲内であると判定されると(♯7:Yes)、次に、走行機体11の前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内であるか否かが判定される(ステップ♯11)。ステップ♯11において、走行機体11の前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内でないと判定されると(♯11:No)、次に、走行機体11の前後傾斜角度を調整可能か否かが判定される(ステップ♯12)。ステップ♯12において、走行機体11の前後傾斜角度が調整不可と判定されると(♯12:No)、ステップ♯9へ移行する。ステップ♯12において、走行機体11の前後傾斜角度が調整可能と判定されると(♯12:Yes)、走行機体11の前後傾斜角度が調整され(ステップ♯13)、ステップ♯11へ戻る。
【0072】
ステップ♯11において、走行機体11の前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内であると判定されると(♯11:Yes)、次に、横オーガ41が適正な収納位置にあるか否かが判定される(ステップ♯14)。
【0073】
ステップ♯14において、横オーガ41が適正な収納位置にないと判定されると(♯14:No)、横オーガ41を適正な収納位置へ移動させる制御が行われ(ステップ♯15)、ステップ♯14へ移行する。ステップ♯14において、横オーガ41が適正な収納位置にあると判定されると(♯14:Yes)、次に、ロードセル39による重量測定が実行される(ステップ♯16)。ステップ♯16の次に、測定された重量が補正された補正値を演算する重量補正が実行される(ステップ♯17)。ステップ♯17の次に、ディスプレイ等による報知がなされ(ステップ♯18)、終了となる。
【0074】
[別の実施形態]
(1)上記実施形態では、車速センサ33により検出された走行速度がゼロ、脱穀クラッチ37が切り状態、株元センサ35が非検出状態、の全ての条件を満たすときに、非作業状態であるとの判定を行うものを一例に示したが、これに限られない。例えば、車速センサ33から入力される走行速度がゼロ、脱穀クラッチ37が切り状態、株元センサ35が非検出状態、のうち少なくとも何れか1つ又は2つの条件を満たすときに、非作業状態との判定を行うものであってもよい。
【0075】
(2)上記実施形態では、刈取高さが所定の高さよりも低くないか否かの判定を行うものを一例に示したが、これに限られず、刈取高さについての判定を行われなくてもよい。
【0076】
(3)上記実施形態では、前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内であるか否かの判定を行うものを一例に挙げたが、これに限られず、前後傾斜角度が前後傾斜許容範囲内であるか否かの判定を行われなくてもよい。
【0077】
(4)上記実施形態では、左右傾斜角度が左右傾斜許容範囲内であるか否かの判定を行うものを一例に挙げたが、これに限られず、左右傾斜角度が左右傾斜範囲内であるか否かの判定を行われなくてもよい。
【0078】
(5)上記実施形態では、横オーガ41が収納位置にないと判定されたとき、横オーガ41を収納位置へ移動させる制御をするようにしている例を示したが、これに限られない。例えば、横オーガ41の旋回位置が自動的に正しい位置へ制御されるような構成であるときは、横オーガ41の上下方向の位置のみが正しくない位置となる。つまり、重量測定決定部75は、作業状態判定部71によって非作業状態であることが判定されると、モータ46を制御して横オーガ41を所定時間下降させた後に、ロードセル39に重量測定を指令する。図7に示すように、フローチャートにおいては、図4におけるステップ♯14、ステップ♯15に代えて、横オーガ41を所定時間下降させるようにする(ステップ♯♯15)。また上記実施形態では、横オーガ41が適正に収納されているか否かの判定を行うものを一例に挙げたが、これに限られず、横オーガ41が適正に収納されているか否かの判定を行われなくてもよい。
【0079】
(6)上記実施形態では、ロードセル39による重量測定を行わない場合は、運転者に、測定に関する情報を報知するものを一例に示したが、これに限られず、ロードセル39による重量測定を行わない場合であっても、運転者に、測定に関する情報の報知が行われないものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、クローラ走行式の自脱型コンバインの他、ホイール走行式の自脱型コンバインや、全稈投入型コンバイン等にも利用できる。
【符号の説明】
【0081】
10 :コンバイン
11 :走行機体
12 :クローラ走行装置
13 :刈取部
14 :脱穀装置
15 :穀粒タンク
16 :アンローダ
19 :左右傾斜センサ(左右傾斜角度検出部)
20 :前後傾斜センサ(前後傾斜角度検出部)
23 :第1油圧シリンダ(左右姿勢変更部、前後姿勢変更部)
27 :第2油圧シリンダ(左右姿勢変更部、前後姿勢変更部)
29 :第3油圧シリンダ(左右姿勢変更部、前後姿勢変更部)
31 :第4油圧シリンダ(左右姿勢変更部、前後姿勢変更部)
33 :車速センサ
35 :株元センサ(穀稈センサ)
36 :刈取高さセンサ
37 :脱穀クラッチ
38 :排出オーガ
39 :ロードセル(重量測定部)
40 :縦オーガ
41 :横オーガ
42 :オーガ受け
46 :モータ(旋回駆動部)
47 :揺動シリンダ(上下揺動駆動部)
66 :測定スイッチ(測定指示部)
71 :作業状態判定部
72 :姿勢判定部
73 :収納検出部
75 :重量測定決定部(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7