(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のセンサでは、導電体の切断によって構造物の変形量を検出するため、一度構造物に変形が生じて導電体が切断されてしまうと、その変形以後に再度変形が生じた場合には変形量を把握することができない。即ち、変形の履歴を記録することができない。また、一度変形が生じてしまうとセンサの交換が必要となり、コスト、使用性の観点からも好ましくない。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、構造物の変形履歴を把握することができるとともに、繰り返しの記録が可能な変形量記録装置、ブレース装置、及び、変形量記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る変形量記録装置は、構造物上の互いに離間する第一位置と第二位置とが近接離間する方向での該構造物の伸縮変形量を記録する変形量記録装置であって、前記第一位置に一端側が固定されるとともに、他端が前記第二位置に向かって延びるロッドと、前記第二位置に固定されるとともに、前記ロッドの他端側を相対移動可能に支持し、該ロッドを支持する部分での位置変化から前記伸縮変形量を計測する計測部と、前記計測部からの出力信号を受けて、前記伸縮変形量を記録する記録部と、前記計測部及び前記記録部に電力を供給する電源供給部と、前記電源供給部に前記電力の供給を開始させ、かつ、前記電力の供給開始から所定時間経過後に該電力の供給を停止する制御部と、前記ロッドの他端側の移動開始にともなって、前記電源供給部から前記電力の供給を開始させるように前記制御部に対して指示した後に、該電力の供給開始前の状態に復帰する検知部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような変形量記録装置によると、構造物に外力が作用して構造物が伸縮変形した際に、構造物の第一位置に固定されたロッドが計測部に支持された状態で伸縮方向に移動を開始し、この支持された部分が構造物の伸縮方向に変位することになる。従って、計測部でこの変位を検出することで、構造物の伸縮変形量を連続的に計測できる。さらに、ロッドが移動を開始すると、検知部がロッドの移動を検知したことにともなって、電源供給部に対して計測部、記録部への電力の供給を開始させ、その後、制御部が電力供給を自動的に停止する。このため、構造物に外力が作用しない状態では電力が供給されず、電力が無駄に消費されることがないことから、容量の少ない電池でも長期間の監視が可能となり、外部から電力を常時供給する必要がないため、電力及び配線コストの削減にもつながる。また、検知部は、電源供給部から計測部及び記録部への電力供給を開始させた後に、元の状態、即ち電力の供給開始前の状態に復帰するため、構造物の伸縮変形が再度発生した際にも同様に、伸縮変形量の記録を行うことが可能となる。
【0009】
また、前記ロッドは、強磁性体を材料としており、前記検知部は、前記ロッドが貫通して該ロッドの前記一端側及び前記他端側の方向に向かって該ロッドに対して相対移動可能に設けられたケーシングと、前記ケーシングに設けられて、該ケーシングが移動した際に該ケーシングに対して移動方向と反対方向に付勢力を与える弾性部材と、前記ケーシングに対して前記一端側及び前記他端側に配されて、該ケーシングが移動を開始すると接触して、前記電源供給部からの前記電力の供給を開始させるスイッチと、前記ケーシングの内側で該ケーシングに対して、前記移動方向に相対移動不能に設けられているとともに前記ロッドに磁力によって固着する磁石と、前記ケーシングの内側で前記ロッドに設けられているとともに、前記スイッチによって前記電力の供給が開始されると通電して前記磁石の磁力を打ち消す磁界を発生させるとともに、前記制御部が前記電力の供給を停止した際に、通電が停止されるコイルとを有していてもよい。
【0010】
このような検知部を用いることで、構造物の伸縮変形の開始前には、ケーシングは磁石によってロッドに固着されており、伸縮変形が開始すると、ケーシングはロッドとともに移動を開始し、スイッチに接触することになる。ケーシングがスイッチに接触すると、計測部及び記録部へ電力の供給が開始され、伸縮変形量の記録が開始される。さらに、このようにスイッチにケーシングが接触して電力供給が開始されると、コイルが通電して磁石の磁力を打ち消す磁界を発生させることで、ケーシングのロッドへの固着が解除される。よって、ケーシングはロッドに対して相対移動が可能となり、弾性部材からの付勢力が作用してケーシングが移動前の位置へ復帰することになるため、スイッチに接触しない状態となる。そして、計測部、記録部への電力供給が停止してコイルへの通電も停止されると、コイルからの磁界が発生しなくなるため、磁石の磁力によってケーシングが移動前の位置、即ちスイッチに接触しない位置でロッドに再び固着される。このように、検知部はソレノイド構造を採用して電力の供給開始前の状態に復帰することができるため、構造物の伸縮変形が再度発生した際であっても、再び伸縮変形量の記録を行うことが可能となる。
【0011】
さらに、前記検知部は、前記弾性部材での前記付勢力を調整可能な付勢力調整部をさらに有していてもよい。
【0012】
構造物の伸縮変形が発生する前やコイルへの通電中にケーシングに外力が作用し、ケーシングの位置が移動してスイッチに接触してしまう場合に、付勢力調整手段によって、弾性部材の付勢力を調整できるため、構造物の伸縮変形発生前やコイルへの通電中に、ケーシングをスイッチに接触しない所望の位置に保持することが可能となる。
【0013】
また、前記検知部は、前記ロッドにおける前記一端側と前記他端側との間で、該ロッドの外周面に接触して摩擦力を生ずる摩擦部材と、前記摩擦部材を先端に固定しているとともに、前記ロッドから離間するように延びる強磁性体を材料とする軸部材と、前記軸部材が貫通し、前記ロッドにおける前記一端側及び前記他端側の方向に向かって、前記摩擦力によって該ロッドとともに移動可能に設けられたケーシングと、前記ケーシングに設けられて、前記ケーシングが移動した際に該ケーシングに対して、移動方向と反対方向に付勢力を与える第一弾性部材と、前記ケーシングに対して前記一端側及び前記他端側に配されて、該ケーシングが移動を開始すると接触し、前記電源供給部からの前記電力の供給を開始するスイッチと、前記ケーシングに設けられて、前記スイッチによって前記電力の供給が開始されると通電して、前記摩擦部材及び前記軸部材を前記ロッドから離間する方向に移動させるとともに、前記制御部が前記電力の供給を停止した際に、通電が停止されるコイルと、前記軸部材に設けられ、前記軸部材が移動した際に該軸部材に対して、前記ロッドに近接する方向に付勢力を与える第二弾性部材とを有していてもよい。
【0014】
このような検知部を用いることで、構造物で伸縮変形が開始すると、摩擦部材がロッドに接触した状態で摩擦力によってロッドの動きにつられて軸部材及びケーシングがロッドの移動方向に移動を開始し、スイッチに接触することになる。ケーシングがスイッチに接触すると、計測部及び記録部へ電力の供給が開始され、伸縮変形量の記録が開始される。さらに、このようにスイッチにケーシングが接触して電力供給が開始されると、コイルに通電されて軸部材が移動することで、摩擦部材はロッドから離間する。よって、ロッドと摩擦部材との間で摩擦力が生じなくなり、ケーシングはロッドに対して相対移動が可能となり、第一弾性部材からの付勢力が作用してケーシングが移動前の位置へ復帰することになる。このため、ケーシングがスイッチに接触しない状態となる。そして、計測部、記録部への電力供給が停止してコイルへの通電も停止されると、コイルからの磁力が発生しなくなるため、軸部材へ第二弾性部材からの付勢力が作用して、軸部材がロッドに近接することで、摩擦部材がロッドの外周面に接触する。即ち、検知部はソレノイド構造を採用して、電力供給を開始した後に電力の供給開始前の状態に復帰することができるため、構造物の伸縮変形が再度発生した際であっても、再び伸縮変形量の記録を行うことが可能となる。
【0015】
さらに、前記検知部は、前記ロッドが貫通し、該ロッドにおける前記一端側と前記他端側とに向かって該ロッドに対して相対移動可能に設けられたケーシングと、前記ケーシングに設けられて、前記ロッドが移動した際に該ケーシングに対して、該ロッドの移動方向に付勢力を与える弾性部材と、前記ケーシングに設けられて、前記付勢力に抗する減衰力を与える減衰力付与部と、前記ケーシングの内側で前記ロッドの外周面上に固定された第一センサと該第一センサに前記ロッドの外周側で対向するように前記ケーシングに固定された第二センサとを有して、前記ロッドの移動にともなって、これら第一センサと第二センサとが離間すると前記電源供給部から電力の供給が開始されるスイッチとを有していてもよい。
【0016】
このような検知部を用いることで、構造物で伸縮変形が開始すると、第一センサはロッドとともに移動を開始し、第二センサとがロッド移動方向に離間することになる。これら第一センサと第二センサとが離間すると、計測部及び記録部へ電力の供給が開始され、伸縮変形量の記録が開始される。この際、ケーシングは、弾性部材によってロッドの移動方向に付勢力が与えられることで、ロッドとともに移動しようとするが、減衰力付与部によって減衰力が与えられることで、ケーシングがロッドにつられて移動してしまうことがなく、第一センサと第二センサとが構造物の伸縮変形にともなって確実に離間し、伸縮変形量の記録が可能となる。さらに、このように第一センサと第二センサとが離間した後に、弾性部材による付勢力で第一センサと第二センサとが再び近接する位置、即ち、電力の供給開始前の状態に復帰することができるため、構造物の伸縮変形が再度発生した際であっても、再び伸縮変形量の記録を行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明に係るブレース装置は、上記の変形量記録装置と、前記変形量記録装置が取り付けられた座屈拘束ブレースとを備え、前記変形量記録装置は、前記座屈拘束ブレースの芯材上で延在方向に互いに離間する二つの位置を前記第一位置と前記第二位置として、前記伸縮変形量を記録することを特徴とする。
【0018】
このようなブレース装置によると、地震等の加振力が芯材に作用し、芯材が伸縮変形した際には、変形量記録装置の計測部でロッドの変位を検出し、構造物の伸縮変形量を連続的に計測できる。さらに、ロッドが移動を開始すると、検知部がロッドの移動を検知したことにともなって、電源供給部に対して計測部、記録部への電力の供給を開始させ、その後、制御部が電力供給を自動的に停止するため、電源供給部からの電力が無駄に消費されることがないことから、容量の少ない電池でも長期間の監視が可能となり、外部から電力を常時供給する必要がないため、電力及び配線コストの削減にもつながる。また、検知部は、電源供給部から計測部及び記録部への電力供給を開始させた後に、電力の供給開始前の状態に復帰するため、構造物の伸縮変形が再度発生した際にも、再び伸縮変形量の記録を行うことが可能となる。
【0019】
本発明に係る変形量記録方法は、構造物上の互いに離間する第一位置と第二位置とが近接離間する方向での該構造物の伸縮変形量を記録する変形量記録方法であって、前記第一位置に一端側が固定されるとともに、前記第二位置に向かって延びるロッドの他端側の位置変化から前記伸縮変形量を計測部で計測する工程と、計測した前記前記伸縮変形量を記録部で記録する工程と、前記ロッドの他端側の移動開始にともなって、前記計測部及び前記記録部へ電力の供給を検知部が開始させた後に、該検知部を該電力の供給開始前の状態に復帰させる工程と、前記電力の供給開始から所定時間経過後に該電力の供給を停止する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
このような変形量記録方法によると、計測部でロッドの変位を検出し、構造物の伸縮変形量を連続的に計測できる。さらに、ロッドが移動を開始すると、検知部がロッドの移動を検知したことにともなって、電源供給部に対して計測部、記録部への電力の供給を開始させ、その後、制御部が電力供給を自動的に停止するため、電源供給部からの電力が無駄に消費されることがないことから、容量の少ない電池でも長期間の監視が可能となり、外部から電力を常時供給する必要がないため、電力及び配線コストの削減にもつながる。また、検知部は、計測部及び記録部への電力供給を開始させた後に、電力の供給開始前の状態に復帰するため、構造物の伸縮変形が再度発生した際に、再び伸縮変形量の記録を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の変形量記録装置によると、ロッドの変位によって構造物の伸縮変形量を計測、記録することで構造物の変形履歴を把握することができ、また、検知部によって、伸縮変形量を繰り返し計測、記録可能である。
【0022】
また、請求項2の変形量記録装置によると、ソレノイド構造を用いた検知部によって、構造物の伸縮変形量を繰り返し計測、記録することが可能となる。
【0023】
さらに、請求項3の変形量記録装置によると、付勢力調整手段によって、検知部を確実に機能させることが可能となる。
【0024】
また、請求項4の変形量記録装置によると、ソレノイド構造を用いた検知部によって、構造物の伸縮変形量を繰り返し計測、記録することが可能となる。
【0025】
さらに、請求項5の変形量記録装置によると、近接スイッチを用いた検知部によって、構造物の伸縮変形量を繰り返し計測、記録することが可能となる。
【0026】
また、請求項6のブレース装置によると、変形量記録装置を用いて、ロッドの変位によって座屈拘束ブレースの芯材の伸縮変形量を計測、記録することで芯材の変形履歴を把握することができる。また、変形量記録装置の検知部によって、芯材の伸縮変形量を繰り返し計測、記録可能である。
【0027】
さらに、請求項7の変形量記録方法によると、ロッドの変位によって構造物の伸縮変形量を計測、記録することで構造物の変形履歴を把握することができる。また、構造物の伸縮変形量を繰り返し計測、記録可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態に係るブレース装置1について説明する。
図1(a)、
図1(b)に示すように、ブレース装置1は、例えば建築、橋梁構造物において筋交いに用いられ、これらの耐震・制震性能を向上する座屈拘束ブレース2と、この座屈拘束ブレース2に取り付けられて、座屈拘束ブレース2の変形量を記録する変形量記録装置3とを備えている。
【0030】
座屈拘束ブレース2は、芯材5(構造物)と、芯材5の軸P方向の端部を突出させた状態で芯材5を軸P方向に相対移動可能に保持する拘束部材6とを有している。
【0031】
芯材5は、軸Pを中心とした鋼材よりなる板状部材であり、軸P方向に延在する平板状をなす芯材本体7と、芯材本体7の軸P方向の両端部において、芯材5の軸P方向に直交する断面形状が十字形状となるように芯材本体7の表面及び裏面から突出するように設けられたリブプレート8とを有している。なお、芯材5は板状をなす場合に限定されず、例えば断面H状、断面I状、断面十字状をなしていてもよく、この場合にはリブプレート8の設置の有無、形状等は適宜変更され得る。
【0032】
芯材本体7は、建築、橋梁構造物からの軸力を受けて軸P方向に弾性変形及び塑性変形可能とされたものであり、またリブプレート8は、芯材本体7の軸P方向の端部における曲げ剛性を向上する部材である。
【0033】
拘束部材6は、芯材5を外周から覆う鋼管と、鋼管と芯材5との間に充填されたコンクリート(又はモルタル)と、コンクリートと芯材5との間に設けられたアンボンド材とを有している。このようにして芯材5を外周側から拘束し、芯材5の軸P方向以外の方向への変形を防止しながらアンボンド材によって芯材5の軸力が拘束部材6へは伝達しないようにし、芯材5を拘束部材6に対して軸P方向へ相対移動可能に保持している。
【0034】
また、拘束部材6は、芯材本体7の軸P方向の両端部、及び、リブプレート8の一部が拘束部材6から軸P方向に突出するようにして芯材5を保持しており、さらに拘束部材6は、軸P方向の端部に設けられた端部蓋9を有している。
【0035】
次に、変形量記録装置3について説明する。
変形量記録装置3は、
図1(a)に示すように座屈拘束ブレース2の拘束部材6と芯材5との間に設置され、即ち、拘束部材6の内部に設置されている。また、
図1(b)に示すように座屈拘束ブレース2の拘束部材6の外部に設置されていてもよい。
【0036】
変形量記録装置3は、座屈拘束ブレース2の芯材5に固定されたロッド11と、ロッド11の位置変化から芯材5の変形量を計測する計測装置12(計測部)と、計測装置12からの信号により芯材5の変形量を記録する記録装置13(記録部)とを備えている。
さらに、この変形量記録装置3は、計測装置12及び記録装置13へ電力を供給する電源装置16(電源供給部)と、電源装置16に電力の供給を開始させ、且つ、電力の開始から所定時間経過後に電源装置16からの電力の供給を停止する制御装置14(制御部)と、制御装置14に対して計測装置12及び記録装置13へ電源装置16からの電力の供給開始を指示する検知装置15(検知部)と、を備えている。
なお、本実施形態では、計測装置12、及び、検知装置15は、拘束部材6の鋼管に固定された筒状部材10によって覆われるようにして設けられている。
【0037】
ロッド11は、鉄等の強磁性体を材料とする棒状をなす部材であって、芯材5の表面に一端11a側が固定されて、芯材5の表面に沿って他端11b側が軸Pに平行な軸P1(
図2参照)方向に延びている。より詳しくは、本実施形態では、芯材5のリブプレート8が拘束部材6から外部へ突出している一端5a側の位置で、リブプレート8にロッド11の一端11a側が固定されている。そして、地震等によって芯材5が軸P方向に伸縮変形すると、ロッド11の他端11b側の位置が軸P1方向に変位するようになっている。
【0038】
計測装置12は、芯材5のリブプレート8が拘束部材6から外部へ突出している他端5b側の位置で、リブプレート8に固定されており、ロッド11の他端11b側を計測装置12自身との間で相対移動可能に支持している。より詳しくは、この計測装置12は、筒状をなして内部にロッド11の他端5b側を収容するとともに、内部に設けられた変位センサによってロッド11の他端11b側の位置、即ち、ロッド11を支持する部分を検出する。なお、変位センサとしては、可変抵抗式、電磁誘導式、ホール素子等を用いた磁気式、光学式などの公知のセンサを用いることができる。
そして、上述したように芯材5が伸縮変形すると、ロッド11の他端11b側の位置が変化し、この変位を連続的に計測し、記録装置13へ信号を出力する。
【0039】
記録装置13は、計測装置12からの出力信号を受けて、ロッド11の他端11b側の位置の変化から芯材5の伸縮変形量を記録する。ここで、この記録装置13においては、芯材5の伸縮変形の履歴とともに、最大変形量も記録するようになっている。即ち、この記録装置13では、芯材5の一端5a側(第一位置)と、芯材5の他端5b側(第二位置)とが近接離間する方向での芯材5の伸縮変形量を記録することとなる。なお、記録装置13は一般にデータロガーと呼ばれるものであり、メモリーカードや、コンピュータ等を用いることができる。
【0040】
電源装置16は、計測装置12及び記録装置13に制御装置14を介して電力を供給することで、芯材5の伸縮変形量の計測、記録を可能とする。なお、この電源装置16は、例えばバッテリーや、AC100ボルトの商用電源が用いられる。ここで、バッテリーを使用する場合には、DC−DCコンバータや三端子レギュレータ等を使用して、電圧の安定化を図ることが好ましい。
【0041】
制御装置14は、検知装置15の指示により計測装置12、記録装置13へ電源装置16からの電力の供給を開始するとともに、計測装置12、記録装置13への電力供給が開始された後に、例えば10分程度など、予め設定した所定時間の経過後に電源装置16からの電力供給を停止する。ここで、所定時間の経過後であっても、ロッド11の変位が収束していない場合には、電源装置16からの電力供給を継続、もしくは、再開させるようになっている。
なお、この所定時間は予め設定したものでなくともよく、例えば計測装置12の上記変位センサや、別途センサを設置するなどして、地震が収まってロッド11の変位が停止したことを検知し、これによって電源装置16からの電力供給を停止してもよい。
【0042】
次に、検知装置15について説明する。
図2(a)に示すように、検知装置15は、ロッド11が貫通して設けられたケーシング21と、ケーシング21内に設けられた磁石22及びコイル23と、ケーシング21に対して、ロッド11の一端11a側及び他端11b側に配された一対のスイッチ25とを有している。
さらに、検知装置15は、これら一対のスイッチ25よりもロッド11のさらに一端11a側及び他端11b側でロッド11を貫通する一対の支持部材26と、各々の支持部材26とケーシング21との間に設けられた一対の弾性部材28とを有している。
【0043】
ケーシング21は、ロッド11の軸P1と同軸上に形成された筒状をなしており、ロッド11が軸P1方向に貫通した状態で、ロッド11との間で軸P1方向に相対移動可能となっている。
【0044】
磁石22は、永久磁石であって、ケーシング21の内側において、ケーシング21に対して軸P1方向に相対移動しないように設けられているとともに、
図2(b)に示すように、ロッド11を外周側から包みこむようにして、ロッド11の周方向に複数に分割されている。そして、外力が作用しない状態では、ロッド11に固着し、ロッド11の変位にともなってケーシング21とともに軸P1方向へ移動可能となっている。
【0045】
一対のスイッチ25は、ロッド11に変位が生じていない状態で、ケーシング21に接触しないように設けられているとともに、ロッド11とともにケーシング21が軸P1方向に移動すると、いずれか一方のスイッチ25がケーシング21に接触することでONの状態となる。これにより、制御装置14に対して電源装置16からの電力供給を開始させる。
本実施形態では例えば、各々のスイッチ25はケーシング21がレバー25aに接触してレバー25aを操作することで、ONの状態にすることが可能なトグルスイッチとなっている。また、このスイッチ25は、ケーシング21がレバー25aから離間すると自動的にOFFの状態となるものである。
【0046】
コイル23は、ケーシング21の内側で、上述した磁石22に軸P1方向に隣接するようにして、ロッド11の外周側に設けられており、上述したスイッチ25がONの状態となると通電して、上記磁石22の磁力を打ち消す。また、コイル23への通電は、記録装置13での記録が終了すると、これに連動して制御装置14によって通電を停止するようになっている。ここで、コイル23へは、上記電源装置16から電流を通電してもよいし、別途の電源を設けて通電を行ってもよい。
【0047】
支持部材26は、ケーシング21及び一対のスイッチ25よりもさらにロッド11の一端11a側、他端11b側に設けられており、ロッド11が貫通してロッド11を軸P1方向に移動可能に支持するとともに、例えば拘束部材6等の位置が変化しない部材に固定されている。
【0048】
弾性部材28は、本実施形態ではコイルバネであって、ロッド11に変位が発生して、ケーシング21がロッド11の一端11a側又は他端11b側に移動した際に、ケーシング21が一対のスイッチ25に接触しない状態となる位置に戻すようにケーシング21の移動方向とは反対方向に付勢力を付与する。
なお、弾性部材28は、本実施形態のようにケーシング21及び支持部材26には固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。
また、この弾性部材28はコイルバネに限定されることなく、板バネ等、付勢力を付与可能な他の部材であってもよい。さらに、弾性部材28は、このようにケーシング21を軸P1方向に挟むように両側に設けられている必要はなく、一方側のみで、ケーシング21と支持部材26とに固定されて設けられていてもよい。
【0049】
次に、
図3を参照して、検知装置15の動作について、芯材5の伸縮変形量の記録方法とともに説明する。
図3(a)に示すように、例えば地震が発生し、座屈拘束ブレース2の芯材5に伸縮変形が生じた際にはロッド11が移動することとなる。そして、ロッド11が
図3(a)に示す矢印の方向に移動すると、ケーシング21が磁石22の磁力によってロッド11に固着した状態でロッド11とともに移動を開始する。そして、スイッチ25にケーシング21が接触することで、スイッチ25がONの状態となって、コイル23への通電が行われる。
【0050】
そして、コイル23への通電と同時に、計測装置12及び記録装置13へ、制御装置14を介して電源装置16から電力の供給が開始され、芯材5の伸縮変形量の計測、記録が開始される(計測、記録する工程)。
【0051】
また、コイル23が通電することで、ロッド11に固着している磁石22の磁力を打ち消して、
図3(b)に示すように、ケーシング21のロッド11への固着が解除され、ケーシング21はロッド11に対して相対移動が可能となる。この際、弾性部材28からの付勢力がケーシング21に作用してケーシング21が移動前の位置へ移動し、即ち一対のスイッチ25間に配されてこれらスイッチ25に接触しない状態となる。
【0052】
そして、
図3(c)に示すように、ケーシング21は一対のスイッチ25間に配された状態のまま、芯材5の伸縮変形の計測及び記録を継続し、上述した所定時間経過後に制御装置14によって計測装置12、記録装置13への電源装置16からの電力供給が停止されて(電力の供給を停止する工程)、計測、記録が終了する。さらにコイル23への通電も停止され、コイル23からの磁力が発生しなくなって、磁石22の磁力によってケーシング21が移動前の位置で、即ちスイッチ25に接触しない位置でロッド11に固着されることになり、再び、
図3(a)に示す電源装置16からの電力供給前の初期状態に復帰する(復帰させる工程)。
即ち、検知装置15は、ソレノイド構造を用いてケーシング21の位置を制御している。
【0053】
このようなブレース装置1においては、座屈拘束ブレース2の芯材5に地震等による外力が作用して芯材5が伸縮変形した際に、ロッド11の他端5b側の位置の変化から伸縮変形量を計測し、記録するため、連続的な計測が可能である。
【0054】
さらに、ロッド11が移動を開始すると、検知装置15がロッド11の移動を検知したことにともなって、制御装置14に対して、計測装置12、記録装置13への電源装置16からの電力の供給を開始させ、その後、制御装置14が電源装置16からの電力供給を自動的に停止させるため、芯材5に外力が作用しない状態では、電源装置16からの電力が無駄に消費されることがなく、容量の少ない電池でも長期間の監視が可能となり、外部から電力を常時供給する必要がないため、電力及び配線コストの削減にもつながる。
【0055】
また、検知装置15は、制御装置14に対して計測装置12及び記録装置13への電源装置16からの電力供給を開始させた後に、電力の供給開始前の初期状態に復帰するため、芯材5の伸縮変形が再度生じた際にも伸縮変形量の記録を行うことが可能となる。ここで、地震によって仮に芯材5に残留変形が生じて、計測後にロッド11に位置が変化してしまっている場合であっても、検知装置15の支持部材26は常に同じ位置にあることから、弾性部材28によって確実にケーシング21を初期状態の位置に復帰させることが可能となる。
【0056】
本実施形態のブレース装置1によると、座屈拘束ブレース2の芯材5の変形履歴、及び最大変位量を把握することができるとともに、検知装置15を用いたことで伸縮変形量を繰り返し計測、記録可能となる。よって、部品交換等することなく、繰り返し変形量記録装置3を使用することができる。
【0057】
ここで、
図4に示すように、座屈拘束ブレース2が鉛直方向に設置される場合には、上述した構成そのままでは、ケーシング21が重力によって下方に移動してしまい、外力が作用しない状態でケーシング21がスイッチ25に接触してしまう。
【0058】
よって、例えば、
図5(a)に示すように、検知装置15は、弾性部材28の付勢力を調整する付勢力調整部材31(付勢力調整部)をさらに備えることで、ケーシング21がスイッチ25に接触しない位置に配されるようにしてもよい。
【0059】
具体的には、付勢力調整部材31は、ケーシング21に取り付けられたワイヤ32と、ワイヤ32に取り付けられた重り33と、ケーシング21と重り33との間に配されてワイヤ32を案内する滑車34とを有している。
【0060】
また、
図5(b)に示すように、付勢力調整部材31は、ワイヤ32及び滑車34に代えてケーシング21と重り33とを連結するリンク機構40を有していてもよい。リンク機構40は、重り33に作用する重力を、重力方向とは逆方向の力に変換してこの力をケーシング21に作用させる。
【0061】
そして、
図5(a)、
図5(b)のいずれの機構においても、重り33がロッド11の一端11a側へ向かって(図中の矢印の方向へ)移動すると、ケーシング21をロッド11の他端11b側へ向かって移動させるものとなっている。そして、重り33の重量を適宜調整することで、ケーシング21を所望の位置へ移動させることが可能である。
【0062】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態に係るブレース装置1Aについて説明する。
なお、第一実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、第一実施形態とは検知装置55が異なっている。ここで、本実施形態では、ロッド11は、強磁性体を材料とするものでなくともよい。
【0063】
図6(a)、
図6(b)に示すように、検知装置55は、ロッド11に外力が作用していない状態で、ロッド11の外周面に接触する摩擦部材56と、摩擦部材56を固定して軸P1方向に直交する方向に延びる軸部材57とを有している。
さらに、検知装置55は、軸部材57を支持するケーシング59と、ケーシング59に設けられたコイル60と、ケーシング59に対して、ロッド11の一端11a側及び他端11b側に配された一対のスイッチ61とを有している。
また、検知装置55は、これら一対のスイッチ61よりロッド11のさらに一端11a側及び他端11b側に配された一対の支持部材63と、各々の支持部材63とケーシング59との間に設けられた一対の第一弾性部材65と、摩擦部材56とケーシング59との間に設けられた第二弾性部材66とを有している。
【0064】
摩擦部材56は、例えば、ゴム等を材料としており、ロッド11の外周面にロッド11の一端11a側と他端11b側との間で接触して、ロッド11との間で摩擦力を生ずる部材である。
【0065】
軸部材57は、軸P2を中心とした鉄等の強磁性体を材料とする棒状部材であり、ロッド11から離間するように延びている。
【0066】
図6(b)に示すように、ケーシング59は、軸部材57の軸P2と同軸上に形成された筒状をなすケーシング本体71と、ケーシング本体71をロッド11の軸P1方向、及び軸部材57の軸P2方向に直交する直交軸方向を中心して回転可能に支持する回転支持部72とを有している。
【0067】
ケーシング本体71は、軸部材57が軸P2方向に貫通した状態で、軸部材57を軸P2方向に相対移動可能に支持している。
【0068】
回転支持部72は、上記直交軸方向に延在してケーシング本体71を貫通して設けられた回転ピン73と、ケーシング本体71を挟みこむようにして、回転ピン73を延在方向の両端部で支持する支持脚74とを有し、支持脚74は、例えば拘束部材6等の位置が変化しない部材に固定されている。
【0069】
一対のスイッチ61は、第一実施形態と同様なトグルスイッチを用いることができ、ロッド11に変位が生じていない状態で、ケーシング本体71に接触しないように、ケーシング本体71の下端部に対向して設けられているとともに、ロッド11の変位にともなってケーシング本体71が回転しながら、ケーシング本体71の下端部が軸P1方向に向かって移動すると、いずれか一方のスイッチ61がケーシング本体71に接触することでONの状態となる。これにより、制御装置14に対して電源装置16からの電力供給を開始させる。
なお、これらスイッチ61は、ケーシング本体71の下端部に対向する位置に設けられていなくともよく、ケーシング本体71の回転移動にともなって接触可能となっていればよい。
【0070】
コイル60は、ケーシング本体71の内側で軸部材57の外周側に設けられており、上述したスイッチ61がONの状態となると、通電して摩擦部材56及び軸部材57をロッド11から離間するように軸P2方向に移動させる。また、記録装置13での記録が終了すると、これに連動して制御装置14によってコイル60への通電が停止するようになっている。ここで、コイル60へは、上記電源装置16から電流を通電してもよいし、別途の電源を設けて通電を行ってもよい。
【0071】
支持部材63は、ケーシング本体71及び一対のスイッチ61よりもさらにロッド11の一端11a側、他端11b側に設けられており、例えば拘束部材6等の位置が変化しない部材に固定されている。
【0072】
第一弾性部材65は、本実施形態ではコイルバネであって、ロッド11が変位して、ケーシング本体71が回転移動した際に、ケーシング本体71が一対のスイッチ61に接触しない状態となる位置に戻すように、ケーシング本体71の移動方向とは反対側に付勢力を付与する。
なお、この第一弾性部材65はコイルバネに限定されることなく、板バネ等、付勢力を付与可能な他の部材であってもよい。また、第一弾性部材65は、このようにケーシング本体71を軸P方向に挟むように両側に設けられている必要はなく、一方側のみにケーシング本体71と支持部材63とに固定されるようにして設けられていてもよい。
【0073】
第二弾性部材66は、本実施形態ではコイルバネであって、摩擦部材56及び軸部材57がロッド11から離間するように移動した際に、ロッド11の外周面に対して摩擦部材56が接触する位置に戻すように、ロッド11に近接する方向に向かって軸部材57及び摩擦部材56に付勢力を与える。ここで、第二弾性部材66においても、第一弾性部材65と同様に、板バネ等、付勢力を付与可能な他の部材であってもよい。
【0074】
次に、
図7を参照して、検知装置55の動作について、芯材5の伸縮変形量の記録方法とともに説明する。
図7(a)に示すように、例えば地震が発生し、座屈拘束ブレース2の芯材5に伸縮変形が生じた際にはロッド11が移動することとなる。そして、ロッド11が
図7(a)に示す矢印の方向に移動すると、摩擦部材56による摩擦力によってケーシング本体71が軸Pを中心として回転移動し、スイッチ61に接触する。
【0075】
ケーシング本体71がスイッチ61に接触すると、計測装置12及び記録装置13へ電力の供給が開始され、伸縮変形量の計測、記録が開始される(計測、記録する工程)。さらに、このようにスイッチ61にケーシング本体71が接触して電力供給が開始されると、
図7(b)に示すように、コイル60が通電して、図中の矢印に示すように、軸部材57がロッド11から離間するように軸P2方向に移動することで摩擦部材56はロッド11から離間する。
【0076】
そして、
図7(c)に示すように、ケーシング本体71へ第一弾性部材65からの付勢力が作用してケーシング本体71が回転移動前の位置へ復帰し、ケーシング本体71がスイッチ61に接触しない状態となる。
【0077】
ここで、計測装置12、記録装置13への電力供給が停止して(電力の供給を停止する工程)、計測、記録が終了し、コイル60への通電も停止されると、コイル60からの磁力が発生しなくなり、軸部材57へ第二弾性部材66からの付勢力が作用して、軸部材57がロッド11に近接するように押し出される。これにより、摩擦部材56がロッド11の外周面に接触し、再び
図7(a)に示すような、電力供給前の初期状態に復帰する(復帰させる工程)。
即ち、検知装置15はソレノイド構造を用いてケーシング21の位置を制御している。
【0078】
本実施形態のブレース装置1Aによると、第一実施形態と同様に、座屈拘束ブレース2の芯材5の変形履歴、及び最大変位量を把握することができるとともに、検知装置55を用いたことで伸縮変形量を繰り返し計測、記録可能となる。よって、部品交換等することなく、繰り返しの使用ができる。
【0079】
なお、本実施形態では、回転支持部72によってケーシング本体71は回転移動するようにしているが、例えば、ケーシング本体71がロッド11の軸P方向に平行に移動可能となっていてもよく、少なくともケーシング本体71が移動することで、スイッチ61に接触可能となっていればよい。
【0080】
さらに、摩擦部材56、第二弾性部材66、ケーシング本体71、軸部材57、コイル60の全てを合わせた重心位置に、回転ピン73の回転軸を一致させることが好ましく、この場合、一対の第一弾性部材65による付勢力のバランスを考えることなく、自重によってケーシング本体71が回転してしまうことを防止できる。
【0081】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態に係るブレース装置1Bについて説明する。
なお、第一実施形態及び第二実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、第一実施形態及び第二実施形態とは検知装置85が異なっている。
【0082】
図8に示すように、検知装置85は、ロッド11が貫通し、ロッド11に対して相対移動可能に設けられたケーシング86と、ケーシング86の内側に設けられた近接スイッチ87と、ケーシング86に付勢力を与える弾性部材88と、ケーシング86に減衰力を付与する減衰部材90(減衰力付与部)とを有している。
【0083】
ケーシング86は、枠状をなして、ロッド11の軸P1方向に延在しており、ロッド11が軸P1方向に貫通した状態で、ロッド11との間で軸P1方向に相対移動可能となっている。
【0084】
近接スイッチ87は、ケーシング86の内側においてロッド11の外周面上に固定された第一センサ87aと、第一センサ87aにロッド11の径方向の外側で、即ち外周側で対向するように、ケーシング21の内側の面に固定された第二センサ87bとを有している。これら第一センサ87a及び第二センサ87bは例えばマグネットであって、即ち、近接スイッチ87としてマグネット式のものを用いることができる。
【0085】
そして、これら第一センサ87aと第二センサ87bとがロッド11の径方向に対向する位置で、近接スイッチ87がOFFの状態となる一方で、この対向する位置よりも離間する位置へ第一センサ87aと第二センサ87bとが相対移動すると、近接スイッチ87がONの状態となって制御装置14に対して電源装置16からの電力供給を開始させる。
【0086】
弾性部材88は、本実施形態ではコイルバネであって、第一センサ87aとケーシング86における一端11a側の端部との間、第一センサ87aとケーシング86における他端11b側の端部との間に一対が設けられている。そして、ロッド11に変位が発生してロッド11がケーシング86に対して相対的に軸P1方向に移動すると、ケーシング86に対してロッド11の移動方向に付勢力を付与する。
【0087】
なお、弾性部材88は、本実施形態のようにケーシング86及び第一センサ87aには固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。
また、この弾性部材88はコイルバネに限定されることなく、板バネ等、付勢力を付与可能な他の部材であってもよい。さらに、弾性部材88は、このように第一センサ87aを軸P1方向に挟むように両側に設けられている必要はなく、一方側のみで、ケーシング86と第一センサ87aとに固定されて設けられていてもよい。
【0088】
減衰部材90は、例えばオイルダンパ等であって、ロッド11が移動した際に弾性部材88によってケーシング86に作用する付勢力に対向するように、ケーシング86の移動方向と反対方向への減衰力をケーシング86に付与する。
【0089】
この減衰部材90は、例えば、
図9に示すように、ケーシング86の延在方向、即ちロッド11の軸P1方向に延びるチューブ91と、チューブ91の内部に封入されたオイル92と、チューブ91を外周側から相対移動可能に覆って、かつ拘束部材6等の位置が変化しない部材に固定された強磁性体のボディ93とを有している。
さらに、減衰部材90は、チューブ91の内部に設けられて軸P1方向に延びる棒状をなす強磁性体のピストン94と、このピストン94をチューブ91の内部で、ボディ93との間で相対移動しないように保持するマグネット95とを有している。
【0090】
そして、チューブ91をケーシング86に固定し、ケーシング86の軸P1方向への動きにともなって、チューブ91を図中の矢印の方向に動作させ、オイル92がチューブ91とピストン94との間を通過することで、減衰力を得るようになっている。
【0091】
次に、
図10を参照して、検知装置85の動作について、芯材5の伸縮変形量の記録方法とともに説明する。
図10(a)に示すように、例えば地震が発生し、座屈拘束ブレース2の芯材5に伸縮変形が生じた際にはロッド11が移動することとなる。そして、ロッド11が
図10(a)に示す矢印の方向に移動すると、第一センサ87aはロッド11とともに移動を開始し、弾性部材88によってケーシング21に付勢力が与えられる。この際、ケーシング21は、弾性部材88によってロッド11の移動方向に付勢力が与えられることで、ロッド11とともに移動しようとするが、減衰部材90によって減衰力が与えられることで、ケーシング86がロッド11につられてすぐに移動することはない。
【0092】
このように減衰力が作用することで、ロッド11は弾性部材88の付勢力が作用した状態で、軸P1方向にケーシング86に対して相対移動する。よって、第一センサ87aと第二センサ87bとはロッド11の軸P1方向に、ロッド11の径方向に対向する位置よりも離間することになる。
【0093】
そして、このように第一センサ87aと第二センサ87bとが離間すると、計測装置12及び記録装置13へ電力の供給が開始され、芯材5の伸縮変形量の計測、記録が開始され(計測、記録する工程)、上述した所定時間経過後に制御装置14によって計測装置12、記録装置13への電源装置16からの電力供給が停止されて(電力の供給を停止する工程)、計測、記録が終了する。
【0094】
ここで、第一センサ87aと第二センサ87bとが離間した後には、弾性部材88による付勢力が減衰力に対抗するように、ケーシング86を
図10(b)に示す矢印の方向に徐々に押し出して、第一センサ87aと第二センサ87bとは再びロッド11の径方向で対抗する位置に戻って近接し、即ち、
図8に示すような電力供給前の初期状態に復帰する(復帰させる工程)。
【0095】
本実施形態のブレース装置1Bによると、第一実施形態、第二実施形態と同様に、座屈拘束ブレース2の芯材5の変形履歴、及び最大変位量を把握することができるとともに、検知装置85を用いたことで伸縮変形量を繰り返し計測、記録可能となる。よって、部品交換等することなく、繰り返しの使用ができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、第一実施形態及び第二実施形態のスイッチ25、61についても、第三実施形態と同様の近接スイッチ87を用いて、非接触にON、OFFを行ってもよい。
【0097】
また、付勢力調整部材31は、第二実施形態及び第三実施形態に用いてもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、構造物として座屈拘束ブレース2の芯材5の伸縮変形量を計測、記録する例について説明したが、その他、様々な構造物の伸縮変形量を計測、記録することも可能である。