(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037932
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
B61D 27/00 20060101AFI20161128BHJP
B61D 49/00 20060101ALI20161128BHJP
B60H 1/32 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
B61D27/00 V
B61D49/00 A
!B60H1/32 613P
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-100029(P2013-100029)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-218209(P2014-218209A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】西村 光正
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−049776(JP,U)
【文献】
特開2009−023572(JP,A)
【文献】
特開平07−089440(JP,A)
【文献】
実開平07−028773(JP,U)
【文献】
特開平04−038264(JP,A)
【文献】
米国特許第06101836(US,A)
【文献】
特開2014−061728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 27/00
B61D 49/00
B61C 17/00 − 17/12
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の表面に開口した排気口と、
該排気口を包囲する筐体と、
該筐体内に配置され、吸引した空気を前記排気口に向かって送風する室外送風機と、
前記排気口の側縁に沿って形成された外気吹出口と、
前記排気口から予め定められた距離だけ離れた位置に形成された外気取入口と、
該外気取入口と前記外気吹出口とを連通するダクトと、
を具備する室外部を有し、
前記外気取入口および前記外気吹出口が、前記排気口の少なくとも前記車両の移動方向側に設けられ、前記ダクトの断面積が、前記外気取入口から前記外気吹出口に近づく程徐々に小さくなることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
車両の表面に開口した排気口と、
該排気口を包囲する筐体と、
該筐体内に配置され、吸引した空気を前記排気口に向かって送風する室外送風機と、
前記排気口の側縁に沿って形成された外気吹出口と、
前記排気口から予め定められた距離だけ離れた位置に形成された外気取入口と、
該外気取入口と前記外気吹出口とを連通するダクトと、
を具備する室外部を有し、
前記外気取入口および前記外気吹出口が、前記排気口の少なくとも前記車両の移動方向側に設けられ、
前記ダクトは、前記ダクトの断面積が、前記外気取入口から前記外気吹出口に近づく程、前記外気取入口寄りの範囲では徐々に大きくなり、前記外気吹出口寄りの範囲では徐々に小さくなり、空気溜めとして機能することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記外気取入口の前記排気口側に、前記車両の表面から離れる程前記排気口から遠ざかるように傾斜したフードが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記外気吹出口に、開度を調整可能な弁が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両等の移動車両に搭載する車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等の移動車両(以下「車両」と総称する)において省エネの機運が高まる中、車両用空気調和装置(以下「空調装置」と称す)を、小型化や軽量化する必要に迫られている。
一般に空調装置は、室外送風機、室外熱交換器、圧縮機等から構成される室外部と、室内送風機、室内熱交換器、冷媒膨張装置等から構成される室内部とから構成される。室内部は、車内の空気を該室内部に取り込み、室内熱交換器において該車内空気を冷媒と熱交換させた後、再度車内へ送風する。一方、室外部では吸引した外気を、室外熱交換器において冷媒と熱交換させた後、室外送風機によって車外へ排気する。
このとき、当該室外部の排気口は、車両の屋根や側面等の車両の表面に配置されているため、走行中に当該排気口を通過する外気流が、熱交換後の外気を排気する時の抵抗となる。そのため、当該排気抵抗に勝るだけの大型で、高静圧の室外送風機が必要となり、それに付随して空調装置の大型化、質量増加を招くという問題があった。
【0003】
そこで、排気効率の向上を目的とし、排気口の車両進行方向に対して前側の側縁および後側の側縁に、車両の外側に突出する衝立状の突起(制御板)を設けた通風装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、排気効率の向上と空気騒音の低減を目的とし、排気口の車両進行方向に対して前側および後側の車両の表面に、排気口に近づく程車両側に凹む傾斜部と、該傾斜部に連続して排気口に近づく程車両の外側に突出する突起とを具備する移動車両が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−89440号公報(第3頁、
図1)
【特許文献2】特開2010−83223号公報(第5−6頁、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載された通風装置は、外気流が突起により剥離することによって、排気口にサクション効果が得られることから、排気抵抗を低減することができ、特に、突起高さの増加に従ってより大きな効果が得ることができる。
しかしながら、排気抵抗の低減を促進する目的で、突起の高さを増加すると、車両空力抵抗および空力騒音が増加するという問題がある。
また、一般に車両(鉄道車両等)は、車両の大きさに車両限界が設定されていることから、車両自体の大きさや、車両の表面に設置される車両搭載機器の大きさは、車両限界内に納める必要がある。すなわち、突起の高さは制限される点においても、突起の高さを増加することができないという問題がある。
【0006】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、車両空力抵抗および空力騒音を抑制しつつ、排気抵抗を低減することができ、かつ小型化や軽量化を図ることができる車両用空気調和装置(空調装置と称している)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係わる車両用空気調和装置は、車両の表面に開口した排気口と、該排気口を包囲する筐体と、該筐体内に配置され、吸引した空気を前記排気口に向かって送風する室外送風機と、前記排気口の側縁に沿って形成された外気吹出口と、前記排気口から予め定められた距離だけ離れた位置に形成された外気取入口と、該外気取入口と前記外気吹出口とを連通するダクトと、を具備する室外部を有し、前記外気取入口および前記外気吹出口が、前記排気口の少なくとも前記車両の移動方向側に設けられ、前記ダクトの断面積が、前記外気取入口から前記外気吹出口に近づく程徐々に小さくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、車両が移動する際、外気取入口からダクト内に取り入れられた外気流れの一部は、ダクト内を徐々に圧縮されながら流れ、外気吹出口から高圧の空気流れになって噴射されることとなる。そのため、車両の表面に沿って流れていた外気流れは、排気口の位置において排気口から離れる方向に押しやられた外気流れとなって、偏向される。すなわち、排気口の直下(または直上等)では、流線が湾曲して流速が増した外気流れが形成されることから、排気口の静圧が減少するため、サクション効果が得られる。したがって、排気口における排気抵抗を軽減することができ、室外送風機の負担が軽減するから、室外送風機の小型化や軽量化を図ることが可能になる。また、外気流れの流線は滑らかに湾曲して剥離等による乱流が抑えられるから、車両空気抵抗や空力騒音が抑制されている。なお、特別の突起を設置するものではないことから、当然に、車両限界内に納まっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る車両用空気調和装置が具備する室外部を示す断面図(停車中)。
【
図2】
図1に示す室外部の一部(排気口上流部)を拡大して示す断面図(移動中)。
【
図3】この発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置が具備する室外部の一部(排気口上流部)を拡大して示す断面図(移動中)。
【
図4】この発明の実施の形態3に係る車両用空気調和装置が具備する室外部の一部(排気口上流部)を拡大して示す断面図(移動中)。
【
図5】この発明の実施の形態4に係る車両用空気調和装置が具備する室外部の一部(排気口上流部)を拡大して示す断面図(移動中)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1および
図2は、この発明の実施の形態1に係る車両用空気調和装置を説明するものであって、
図1は車両用空気調和装置が具備する室外部を示す断面図(停車中)、
図2は
図1に示す室外部の一部(排気口上流部)を拡大して示す断面図(移動中)である。なお、各部は模式的に示されているため、この発明は図示された形態に限定されるものではない。
図1において、車両用空気調和装置(以下「空調装置」と称す)10の室外部11は、車両90を形成する車両の表面91に形成され、開口している排気口3と、排気口3を包囲して風路を形成する筐体1と、筐体1内に配置された室外送風機2と、図示しない吸気口および室外熱交換器とを具備している。そして、停車中は、吸気口から吸引された外気A0は、室外熱交換器において熱交換され、熱交換された後の外気流れA2となって、室外送風機2により排気口3から車外へ排気される。
【0011】
図2において、排気口3の両側(車両移動方向側および車両移動方向とは反対側)に、ダクト4aおよびダクト4bを備えている。以下、説明の便宜上、車両90は図中右側から図中左側に移動しているものとしているから、外気A0は外気流れA1となって車両90に対して長い矢印で示される方向に相対的に流れている。そして、図中左側を上流側または移動方向側と、図中右側を下流側または移動反対方向側と称す。なお、車両90の移動方向が逆転した場合には、図中右側を下流側と、図中左側を上流側と、それぞれ読み替えることにする。
車両の表面91に開口した排気口3の上流側の側縁3aに沿って開口部(以下「外気吹出口」と称す)6aが形成され、外気吹出口6aよりも上流側に予め定められた距離だけ離れた位置に開口部(以下「外気取入口」と称す)5aが形成され、ダクト4aは外気取入口5aと外気吹出口6aとを連通している。このとき、ダクト4aは、外気取入口5aから外気吹出口6aになる略、断面積が徐々に小さくなるように構成されている。
【0012】
したがって、車両90が移動する際、外気取入口5aからダクト4a内に取り入れられた外気流れA1の一部である外気流れA3は、ダクト4a内を徐々に圧縮されながら流れ、外気吹出口6aから高圧の外気流れA4になって噴射されることとなる。そのため、車両の表面91に沿って流れていた外気流れA1は、排気口3から離れる方向に押しやられた外気流れA5となって、偏向される。
すなわち、排気口3の図中の直下では、外気流れA1の流線が湾曲して流速が増した外気流れA5が形成されることから、排気口3の静圧が減少するため、サクション効果が得られる。したがって、排気口3における排気抵抗を軽減することができ、室外送風機2の負担が軽減するから、室外送風機2の小型化や軽量化を図ることが可能になる。また、外気流れA5の流線は滑らかに湾曲するため、剥離等による乱流が抑えられ、車両空気抵抗や空力騒音が抑制されている。なお、特別な突起が設置されたものではないことから、当然に、車両限界内に納まっている。
【0013】
なお、上流側と同様に下流側にも、排気口3の下流側の側縁3bに沿って外気取入口5bと、外気取入口5bから離れた外気吹出口6bとを連通するダクト4bが配置され、ダクト4aとダクト4bとは、排気口3の中心面を基準に面対称に配置され同様の構造である。したがって、車両90の移動方向が切り替わっても、同様の効果を得ることができる。但し、一方向にのみ移動する車両90については、一方側(上流側)にのみダクト4aが設けられる。
また、以上は、図中、下方に向かって開口した排気口3を示しているが、これは車両の表面91が車両90の底面であることを必ずしも意味するものではなく、車両の表面91の屋根面や側面、あるいは底面であってもよい。そして、例えば、図中の直下とは、屋根面のときは、直上を意味するものと読み替え、側面のときは、側方外側の至近位置を意味するものと読み替える。
また、以上は、筐体1として直方体を示しているが、この発明はこれに限定するものではなく、排気口3を包囲する比較的広い断面積の直方体部分と、該直方体部分に連通し、室外送風機2が配置された比較的狭い部分(断面矩形または円形等)を具備するものであってもよく、このとき、比較的狭い部分は直線状でなくてもよい(例えば、L字状等)。
【0014】
[実施の形態2]
図3は、この発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置を説明するものであって、車両用空気調和装置が具備する室外部の一部(排気口上流部)を拡大して示す断面図(移動中)である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図3において、車両用空気調和装置(以下「空調装置」と称す)20の室外部21は、空調装置10(実施の形態1)の室外部11が具備する上流側の外気取入口5aの排気口3側(下流側)に、車両の表面91から離れる程排気口3から遠ざかるよう(上流側になるよう)に傾斜したフード7aが設けられたものに相当している。
【0015】
したがって、空調装置10(実施の形態1)よりも、より多量の空気流れA3が形成されることになる。すなわち、外気取入量を増加するようにしたので、空調装置10よりも多くの外気流れA3を補足することができると共に、外気取入量が増加することによって空調装置10よりも、より高圧の圧縮空気を吹き出すこと(より高圧の空気流れA4を形成すること)ができる。よって、空調装置10における作用効果を奏した上で、排気口3の図中の直下を通過する外気流れA5がより偏向されることになり、排気抵抗をさらに軽減することができる。
【0016】
なお、下流側の外気取入口5bの排気口3側(上流側)に、車両の表面91から離れる程排気口3から遠ざかるよう(下流側になるよう)に傾斜したフード7bが設けられているが、フード7aとフード7bとは、排気口3の中心面を基準に面対称に配置され同様の構造であるから、図示しない。
【0017】
[実施の形態3]
図4は、この発明の実施の形態3に係る車両用空気調和装置を説明するものであって、車両用空気調和装置が具備する室外部の一部(排気口上流部)を拡大して示す断面図(移動中)である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図4において、車両用空気調和装置(以下「空調装置」と称す)30の室外部31は、空調装置10(実施の形態1)の室外部11の外気吹出口6aに、開度(噴射流量)を調整可能な弁8aを設けたものに相当している。
すなわち、空調装置10では外気吹出口6aの断面積が固定されていたのに対し、空調装置30では弁8aが設けられているから、弁8aの開度(断面積)を調整することによって、車両90の移動する速度に応じて外気吹出口6aからの噴射量を調整することできる。よって、空調装置10における作用効果を奏した上で、車両90の移動する各速度において排気抵抗の低減量を最適にすることができる。
なお、下流側の外気吹出口6bに弁8bが設けられているが、弁8aと弁8bとは同様の構造であるから、弁8bを図示しない。
また、空調装置20(実施の形態2)に弁8a、8bを設けてもよい。
【0018】
[実施の形態4]
図5は、この発明の実施の形態4に係る車両用空気調和装置を説明するものであって、車両用空気調和装置が具備する室外部の一部(排気口上流部)を拡大して示す断面図(移動中)である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図5において、車両用空気調和装置(以下「空調装置」と称す)40の室外部41は、空調装置10(実施の形態1)の室外部11のダクト4aに、空気溜め9aを設けたものに相当している。
すなわち、空調装置10ではダクト4aの断面積が、外気取入口5aから外気吹出口6aに近づく程、外気取入口5a寄りの範囲では徐々に大きくなり、外気吹出口6a寄りの範囲では徐々に小さくなっている。すなわち、ダクト4aの略中央範囲が空気溜め9aとして機能している。
したがって、空気溜め9aにおいて外気流れA3を一定量確保しつつ、高圧の圧縮空気(空気流れA4)を噴射することができるから、排気口3の図中の直下を通過する外気A5を、さらに偏向されることになる。よって、空調装置10における作用効果を奏した上で、排気抵抗をさらに軽減することができる。
なお、下流側のダクト4bにも空気溜め9bが設けられているが、空気溜め9aと空気溜め9bとは同様の構造であるから、空気溜め9bを図示しない。また、空調装置20(実施の形態2)または空調装置30(実施の形態3)に空気溜め9a、9bを設けてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 筐体、2 室外送風機、3 排気口、3a 側縁、3b 側縁、4a ダクト、4b ダクト、5a 外気取入口、5b 外気取入口、6a 外気吹出口、6b 外気吹出口、7a フード、7b フード、8a 弁、8b 弁、9a 空気溜め、9b 空気溜め、10 空調装置(実施の形態1)、11 室外部、20 空調装置(実施の形態2)、21 室外部、30 空調装置(実施の形態3)、31 室外部、40 空調装置(実施の形態4)、41 室外部、90 車両、91 車両の表面。