(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の発明は、ガス通路内を通過するガス流量に基づいた複数のパルス信号を流量信号として出力する流量検出部と、前記流量信号に基づき前記ガス流量の正逆方向を判定し、逆流方向であれば負パルス信号を、正流方向であれば正パルス信号を出力する正逆判定部と、前記複数のパルス信号のHi,Loの組み合わせが所定の組み合わせとなる状態を起点とするとき、前記負パルス信号をカウントし、逆流方向側の起点に到達したときに負処理要求信号を出力し、さらに前記逆流方向側の起点を超えたときに負起点越え信号を出力し、負クリア信号を受け取ると前記負起点越え信号の出力を停止する負パルス判定部と、前記負処理要求信号を受け取ると、正起点越え信号がない場合には減算信号を出力し、前記正起点越え信号の有無に係わらず正クリア信号を出力する負要求判定部と、前記正パルス信号をカウントし、正流方向側の起点に到達したときに正処理要求信号を出力し、さらに前記正流方向側の起点を超えたときに前記正起点越え信号を出力し、前記正クリア信号を受け取ると前記正起点越え信号の出力を停止する正パルス判定部と、前記正処理要求信号を受け取ると、前記負起点越え信号がない場合には加算信号を出力し、前記負起点越え信号の有無に係わらず前記負クリア信号を出力する正要求判定部と、前記減算信号を受け取ると現在保持しているバッファ値から予め定められた第1の所定量を減算して新たなバッファ値として保持し、前記加算信号を受け取ると現在保持しているバッファ値に予め定められた第2の所定量を加算して新たなバッファ値として保持し、加算後のバッファ値が予め定めていた積算単位値を越えたときにバッファオーバ信号を出力して加算後のバッファ値から前記積算単位値を差し引いて新たなバッファ値として保持し直すバッファ部と、前記バッファオーバ信号を受け取ると現在保持している指針値に前記積算単位値を加算して新たな指針値として保持する指針値保持部と、を備えたものである。
【0023】
これによれば、起点を超えたか否かで前記バッファ部のバッファ値の減算または加算の有無を判定してバッファ値の更新を行うことでガス流量と指針値のズレを防止し指針値の精度を向上させることができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置の機能ブロック図を示すものである。
図2は、動作を説明するためのフローチャート、
図3は、2つのセンサからのパルス信号を用いる際のセンサ出力(流量信号)の状態と、流量の演算方法を説明するための図である。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態のガス遮断装置は流量検出部21、正逆判定部22、負パルス判定部23、負要求判定部24、正パルス判定部25、正要求判定部26、バッファ部27、指針値保持部28、流量演算部31、異常判定部32、弁33とから構成され、以下にその役割を記載する。
【0027】
なお、ガス遮断装置内には制御基板(図中には記載はない)が内蔵され、制御基板内のマイコン(図中には記載はない)が上記構成の各入出力や各判定を実施している。なお電源としては電池を用いている。
【0028】
流量検出部21は、ガス通路内を通過するガスの流量を、その流量に応じて往復運動する膜の動きを磁石とMRセンサで検出することにより計測する。そして、検出したパルス信号をガス流量に基づいた流量信号Aとして出力する。
【0029】
本実施の形態において、流量検出部21は、2つのMRセンサ(センサA,センサB)を用いている。MRセンサは、膜の往復運動に連動して回転運動する機構部に配置された磁石の位置に応じた2つのパルス信号を流量信号Aとして検出する。流量信号Aは、
図3(1)に示すように、MRセンサのセンサA、センサBにより検出された2つのパルス波形の信号(パルス信号)で構成される。
【0030】
また、
図3(1)及び(3)において、分割Noは、複数のパルス波形の状態に対応して流量信号Aを分割し、分割した部分(分割)に対して順番に付与した番号である。本実施の形態では2つのセンサ(センサA,B)のパルス出力が1/4周期だけ位相をずらした構成としており、1/4周期毎に流量信号Aは分割されている。
【0031】
また、起点として示すA〜Fは、2つのパルス出力(パルス信号のHi(high)、Lo(low))の組み合わせが所定の組み合わせである点(分割)を示す。本実施の形態では、センサA=L(センサAのパルス信号がLoである)、センサB=Lの(センサBのパルス信号がLoである)場合の分割を起点A〜Fとしており、起点は1周期毎に現れる。また、+1、−1は、起点A〜Fに対して前後に隣接する分割の位置を示すものである。
【0032】
また、以下の説明で、「正起点超え」とは、正流方向において、ある起点から次の分割へ変化することを意味し、「負起点超え」とは、逆流方向において、ある起点から次の分割へ変化することを意味する。
【0033】
そして、流量信号Aがある起点から次の起点に達すると一回転パルス(流量信号Aの1周期)と判定されて、計量体積に基づいた所定量でバッファ値を更新している。また、起点以外の分割、たとえば、「起点D−1(分割No.12)」や「起点D+1(分割No.14)」は分割パルスと判定され、分割パルスの数などは後述する積算方法で用いられる。
【0034】
なお、計量体積とは、ガス遮断装置内に構成された膜の往復運動によりガスを計量している際、たとえば、メータ筐体の大きさに基づいたガス通路を所定時間(たとえば、一回転パルス)毎に通過するガスの単位流量を指すものである。
【0035】
正逆判定部22は、流量検出部21の流量信号Aを受け取ると流量信号Aに基づいてガス流量の正逆方向(流量を計測しているガスの流れが正流方向または逆流方向であるか)を判定し、逆流方向であれば負パルス信号Bを、あるいは正流方向であれば正パルス信号Cを出力する。この流量信号Aのパルス信号のHi、Loの組合せが変化して、流量信号Aの分割が変わると、負パルス信号および正パルス信号は出力される。
【0036】
具体的には、
図3(2)に示すように、現在の流量信号Aが「起点D(分割No.13)」のセンサ出力状態(センサA=L、センサB=L)であった場合、正流方向であれば「正」に示すセンサ出力(パルス信号のHi、Lo)の組合せ(センサA=H(センサAのパルス信号がHiである)、センサB=L)となり、逆流方向であれば「負」に示すセンサ出力の組合せ(センサA=L、センサB=H(センサBのパルス信号がHiである))となることから正逆の判断をすることができる。
【0037】
そして、正逆判定部22は負パルス信号Bおよび正パルス信号Cを負パルス判定部23及び正パルス判定部25のそれぞれに出力する。負パルス判定部23及び正パルス判定部25は、正パルス信号Cおよび負パルス信号Bを受け取り、正パルス信号Cを「+1」、負パルス信号Bを「−1」としてカウントし、現在の分割Noを求める。
【0038】
また、正逆判定部22が負パルス信号Bを出力すると、負パルス判定部23は、正逆判定部22の負パルス信号Bを受け取る。そして、負パルス判定部23は、負パルス信号Bをカウントして、現在の分割Noが起点に到達したか否かを判定する。判定の結果、起点に達したときに、負パルス判定部23は、負起点越え信号Eの出力を停止して、負処理要求信号Dを出力する。さらに、負パルス判定部23は、現在の分割Noが起点を超えたか否か、即ち、
図3(1)において、「起点D(分割No.13)から起点D−1(分割No.12)へ」、「起点C(分割No.9)から起点C−1(分割No.8)へ」、「起点B(分割No.5)から起点B−1(分割No.4)へ」等の変化が発生したかどうかを判定する。判定の結果、起点を超えたときに、負パルス判定部23は負起点越え信号Eを出力する。また、負パルス判定部23は、正要求判定部26からの負クリア信号Fを受け取ると、負起点越え信号Eをクリアする。
【0039】
なお、1周期内では起点に相当するセンサ出力の組合せ(センサA=L、センサB=L)が1つしかないので、負パルス信号Bのカウントではなく各センサのパルス信号のHi、Loの組合せで1周期の判定を行ってもよい。また、逆流方向にガスが流れ続けると4つの分割パルス(分割)毎に起点が出現(「起点D(分割No.13)」→「起点C(分割No.9)」→「起点B(分割No.5)」)することとなる。
【0040】
負要求判定部24は、負パルス判定部23の負処理要求信号Dを受け取ると、正パルス判定部25の正起点越え信号Iがない場合には減算信号Gを出力し、また、正起点越え信号Iの有無に係わらず正クリア信号Jを出力する。
【0041】
一方、正逆判定部22が正パルス信号Cを出力すると、正パルス判定部25は、正逆判定部22の正パルス信号Cを受け取る。そして、正パルス判定部25は、正パルス信号Cをカウントして、現在の分割Noが起点に到達したか否かを判定する。判定の結果、起点に達したときに、正パルス判定部25は、正起点越え信号Iの出力を停止して、正処理要求信号Hを出力する。さらに、正パルス判定部25は、現在の分割Noが起点を超えるか否か、即ち、
図3(1)において、「起点D(分割No.13)から起点D+1(分割No.14)へ」、「起点E(分割No.17)から起点E+1(分割No.18)へ」、「起点F(分割No.21)から起点F+1(分割No.22)へ」等の変化が発生したかどうかを判定する。判定の結果、起点を超えたときに、正パルス判定部25は正起点越え信号Iを出力する。また、正パルス判定部25は、負要求判定部24の正クリア信号Jを受け取ると、正起点越え信号Iをクリアする。
【0042】
なお、1周期内では起点に相当するセンサ出力の組合せ(センサA=L、センサB=L)が1つしかないので、正パルス信号Cのカウントではなく各センサのパルス信号のHi、Loの組合せで1周期の判定を行ってもよい。また、正流方向にガスが流れ続けると4つの分割パルス(分割)毎に起点が出現(「起点D(分割No.13)」→「起点E(分割No.17)」→「起点F(分割No.21)」)することとなる。
【0043】
正要求判定部26は、正パルス判定部25の正処理要求信号Hを受け取ると、負パルス判定部23の負起点越え信号Eがない場合には加算信号Kを出力し、また、負起点越え信号Eの有無に係わらず負クリア信号Fを出力する。
【0044】
バッファ部27は、負要求判定部24の減算信号Gを受け取ると現在保持しているバッファ値から予め定められた第1の所定量(例えば、計量体積と同じ値でも良いし、計量体積に任意の係数を掛けて補正した値でも良い)を減算して新たなバッファ値として保持する。
【0045】
また、バッファ部27は、正要求判定部26の加算信号Kを取ると現在保持しているバッファ値に予め定められた第2の所定量(例えば、第1の所定量と同じでも良いし、計量体積に第1の所定量とは異なる任意の係数を掛けて補正した値でも良い)を加算して新たなバッファ値として保持し、加算後のバッファ値が予め定めていた積算単位値(例えば、計量体積でも良いし、1Lや10L等の任意の単位でも良い)を越えたときにバッファオーバ信号Lを出力し、加算後のバッファ値から積算単位値を差し引いて新たなバッファ値として保持し直す。
【0046】
この新たなバッファ値は積算単位値よりも小さな値の端数として保持されることとなる。例えば、第2の所定量=2.5L、積算単位値=1Lの場合は0.5(=2.5−1−1)がバッファ値として保持される。
【0047】
指針値保持部28は、バッファ部27のバッファオーバ信号Lを受け取ると現在保持している指針値に積算単位値を加算して新たな指針値として保持する。
【0048】
このバッファオーバ信号Lは、例えば、バッファ値から積算単位値を複数回引いた場合には、複数の信号として出力されたものを受け取っても良いし、信号に重み付けをした情報として受け取っても良い。
【0049】
また、指針値への積算単位値の加算方法としては、複数の信号として受け取ったときには信号を受け取る都度指針値に加算する方法とし、信号に重み付けをした情報として受け取ったときは重み付けに即した値を一挙に指針値に加算する方法とすることができる。
【0050】
なお、起点越えの判定方法として、1周期内に起点と同じセンサ出力の組合せ(例えば、センサA=L、センサB=L)が複数発生するような構成の場合は、1周期内の負パルス信号および正パルス信号をカウントして、正逆方向毎に1周期分の分割パルス数に達したか否かで起点の到達の有無を判定し、さらに「起点となる分割パルス数+1」で正起点越えを判定し、かつ「起点となる分割パルス数の−1」で負起点越えに到達したか否かを判定することができる。
【0051】
また、MRセンサのセンサ数は2つとは限らず、3つ以上(たとえば、
図4に記載したように3つ)のセンサをMRセンサに用いても良い。このように、3つ以上のセンサをMRセンサに用いた場合であっても、上記と同様に起点および起点越えを判定することが可能である。
【0052】
すなわち、起点を超えたか否かでバッファ部27のバッファ値の減算または加算の有無を判定してバッファ値の更新を行うことで、ガス流量と指針値のズレを防止することが可能となる。
【0053】
次に、
図3(3)分割パルスの入力パターンを用いてバッファ部27のバッファ値の挙動を以下で説明する。なお、以下の説明では、バッファ値を加減算する第1の所定量と第2の所定量は共に1Lとしている。この第1の所定量と第2の所定量は必ずしも同じになるとは限らないもので、正流方向と逆流方向の機構的な違いにより、異なる場合も有りうるものである。
【0054】
(1)case1の場合
バッファ部27のバッファ値=0の状態で、「起点D(分割No.13)」から正流方向に流れ「起点D+1(分割No.14)」で正起点越えとなるため正パルス判定部25にて正起点越え信号Iが出力される。
【0055】
その後も正流方向が続き分割No.14→分割No.15に至ったあと、逆流方向に流れが変わり分割No.15→分割No.14→分割No.13へと遷移して再び「起点D(分割No.13)」に至って負パルス判定部23で負起点越え信号Eの出力が停止し、負処理要求信号Dが出力されるが、負要求判定部24では正起点越え信号Iが出力されているので減算信号Gは出力されずバッファ部27のバッファ値は「0」のままとなり、正クリア信号Jにより正パルス判定部25の正起点越え信号Iの出力が停止される。
【0056】
更に、起点D(分割No.13)に至った後も逆流方向に流れているので「起点D−1(分割No.12)」で負起点越えとなるため負パルス判定部23にて負起点越え信号Eが出力される。
【0057】
その後も逆流方向が続き分割No.12→分割No.11に至ったあと、正流方向に流れが再び変わり分割No.11→分割No.12→分割No.13と遷移し、再々度「起点D(分割No.13)」に至り正パルス判定部25で正起点越え信号Iの出力が停止し正処理要求信号Hが出力されるが、正要求判定部26では負起点越え信号Eが出力されているので加算信号Kは出力されずバッファ部27のバッファ値は「0」のままとなり、負クリア信号Fにより負パルス判定部23の負起点越え信号Eの出力が停止されることとなる。
【0058】
以上のように、ある起点を中心として、前後の起点に至らないような正逆方向の流量変化が発生した場合において、バッファ値が増減することがなく、正しい積算を行うことができる。
【0059】
(2)case2の場合
バッファ部27のバッファ値=0の状態で、「起点D(分割No.13)」から正流方向に流れたので「起点D+1(分割No.14)」で正起点越えとなるため正パルス判定部25にて正起点越え信号Iが出力される。
【0060】
その後も正流方向が続き分割No.14→分割No.15に至ったあと、逆流方向に流れが変わり分割No.15→分割No.14→分割No.13と遷移して再び「起点D(分割No.13)」に至って負パルス判定部23で負起点越え信号Eの出力が停止し負処理要求信号Dが出力されるが、負要求判定部24では正起点越え信号Iが出力されているので減算信号Gは出力されずバッファ部27のバッファ値は「0」のままとなり、正クリア信号Jにより正パルス判定部25の正起点越え信号Iの出力が停止される。
【0061】
さらに、起点D(分割No.13)に至った後も逆流方向に流れているので「起点D−1(分割No.12)」で負起点越えとなるため負パルス判定部23にて負起点越え信号Eが出力される。
【0062】
その後も逆流方向が続き分割No.12→分割No.11→分割No.10→分割No.9と遷移し、新たな「起点C(分割No.9)」に至って負パルス判定部23で負起点越え信号Eの出力が停止し負処理要求信号Dが出力される。
【0063】
このとき、負要求判定部24では正起点越え信号Iは既に出力が停止されているので減算信号Gが出力され、バッファ部27のバッファ値は「−1(=0−1)」となり、正クリア信号Jにより正パルス判定部25の正起点越え信号Iの出力が停止(実際には既に出力は停止されている)されることとなる。
【0064】
さらに、起点C(分割No.9)に至った後も逆流方向に流れているので「起点C−1(分割No.8)」で負起点越えとなるため負パルス判定部23にて負起点越え信号Eが再び出力される。
【0065】
その後、正流方向に流れが変わり再び「起点C(分割No.9)」に至って正パルス判定部25で正起点越え信号Iの出力が停止し正処理要求信号Hが出力されるが、正要求判定部26では負起点越え信号Eが出力されているので加算信号Kは出力されずバッファ部27のバッファ値は「−1」のまま、負クリア信号Fにより負パルス判定部23の負起点越え信号Eの出力が停止されることとなる。
【0066】
さらに、起点C(分割No.9)に至った後も正流方向に流れているので「起点C+1(分割No.10)」で正起点越えとなるため正パルス判定部25にて正起点越え信号Iが出力される。その後も正流方向が続き分割No.10→分割No.11→分割No.12→分割No.13と遷移し、再び「起点D(分割No.13)」に至って正パルス判定部25で正起点越え信号Iの出力が停止し正処理要求信号Hが出力される。
【0067】
このとき、正要求判定部26では負起点越え信号Eは既に出力が停止されているので加算信号Kが出力され、バッファ部27のバッファ値は「0(=−1+1)」となり、負クリア信号Fにより負パルス判定部23の負起点越え信号Eの出力が停止(実際には既に出力は停止されている)されることとなる。
【0068】
そして、起点D(分割No.13)に至った後も引き続き正流方向に流れているので「起点D+1(分割No.14)」で正起点越えとなるため正パルス判定部25にて正起点越え信号Iが出力される。
【0069】
その後も正流方向が続き分割No.14→分割No.15→分割No.16→分割No.17と遷移し、新たな「起点E(分割No.17)」に至って正パルス判定部25で正起点越え信号Iの出力が停止し正処理要求信号Hが出力される。
【0070】
このとき正要求判定部26では負起点越え信号Eは既に出力が停止されているので加算信号Kが出力され、バッファ部27のバッファ値は「1(=0+1)」となり、負クリア信号Fにより負パルス判定部23の負起点越え信号Eの出力が停止されることとなる。
【0071】
以上のように、ある起点から逆流側の起点に達した後、その起点を超えた後に、正流方向に流れが転じ、再びある起点を超えて正流方向の起点を超えた場合において、正しい積算を行うことができる。
【0072】
(3)case3の場合
バッファ部27のバッファ値=0の状態で、「起点D(分割No.13)」から正流方向に流れて「起点D+1(分割No.14)」となり正起点越えとなるため正パルス判定部25にて正起点越え信号Iが出力される。
【0073】
その後も正流方向が続き分割No.14→分割No.15に至ったあと、逆流方向に流れが変わり分割No.15→分割No.14→分割No.13と遷移して再び「起点D(分割No.13)」に至って負パルス判定部23で負起点越え信号Eの出力が停止し負処理要求信号Dが出力されるが、負要求判定部24では正起点越え信号Iが出力されているので減算信号Gは出力されずバッファ部27のバッファ値は「0」のままで、正クリア信号Jにより正パルス判定部25の正起点越え信号Iの出力が停止される。
【0074】
さらに、起点Dに至った後も逆流方向に流れて「起点D−1(分割No.12)」で負起点越えとなるため負パルス判定部23にて負起点越え信号Eが出力される。
【0075】
その後も逆流方向が続き分割No.12→分割No.11→分割No.10→分割No.9と遷移し、新たな「起点C(分割No.9)」に至って負パルス判定部23で負起点越え信号Eの出力が停止し負処理要求信号Dが出力される。
【0076】
このとき負要求判定部24では正起点越え信号Iは既に出力が停止されているので減算信号Gが出力され、バッファ部27のバッファ値は「−1(=0−1)」となり、正クリア信号Jにより正パルス判定部25の正起点越え信号Iの出力が停止(実際には既に出力は停止されている)されることとなる。
【0077】
その後、再び正流方向に流れが変わり分割No.9→分割No.10→分割No.11→分割No.12→分割No.13と遷移し、再び「起点D(分割No.13)」に至って正パルス判定部25で正起点越え信号Iの出力が停止し正処理要求信号Hが出力される。
【0078】
このとき正要求判定部26では負起点越え信号Eは既に出力が停止(実際には新たな負起点越え信号Eは発生していない)されているので加算信号Kが出力され、バッファ部27のバッファ値は「0(=−1+1)」となり、負クリア信号Fにより負パルス判定部23の負起点越え信号Eの出力が停止されることとなる。
【0079】
そして、引き続き正流方向に流れているので「起点D+1(分割No.14)」で起点越えとなるため正パルス判定部25にて正起点越え信号Iが出力される。
【0080】
その後も正流方向が続き分割No.14→分割No.15→分割No.16→分割No.17と遷移し、新たな「起点E(分割No.17)」に至って正パルス判定部25で正起点越え信号Iの出力が停止し正処理要求信号Hが出力される。
【0081】
このとき正要求判定部26では負起点越え信号Eは既に出力が停止されているので加算信号Kが出力され、バッファ部27のバッファ値は「1(=0+1)」となり、負クリア信号Fにより負パルス判定部23の負起点越え信号Eの出力が停止(実際には既に出力は停止されている)されることとなる。
【0082】
以上のように、ある起点から逆流側の起点に達した後、その起点を超えずに正流方向に流れが転じ、再びある起点を超えて正流方向の起点を超えた場合において、正しい積算を行うことができる。
【0083】
次に、本実施の形態と比較するために、起点越え時、即ち、ある起点から起点に隣接の分割Noに至った場合にバッファ値を増減する方式をcase4として、逆に、起点に隣接する分割Noから起点に至った時にバッファ値を無条件に増減する方式をcase5として参考として以下説明する。
【0084】
(4)case4の場合
バッファ値=0の状態で、「起点D(分割No.13)」から正流方向に流れたので「起点D+1(分割No.14)」で正起点越えとなるためバッファ値が加算(1(=0+1))される。その後も正流方向が続き分割No.14→分割No.15に至ったあと、逆流方向に流れが変わり分割No.15→分割No.14→分割No.13→分割No.12と遷移して「起点D−1(分割No.12)」で負起点越えとなるためバッファ値が減算(0(=1−1))される。その後正流方向に流れが変わり分割No.12→分割No.13→分割No.14と遷移し、再び「起点D+1(分割No.14)」で正起点越えとなるためバッファ値が加算(1(=0+1))される。
【0085】
この場合、動作開始直後にバッファ値が加算されることを除けばバッファ値は追従しているように見受けられるが、分割No.13→分割No.14→分割No.13→分割No.14・・・と繰り返せばバッファ値は加算され続け、あるいは分割No.13→分割No.12→分割No.13→分割No.12・・・と繰り返せばバッファ値は減算され続けることとなる。
【0086】
即ち、起点越え時にバッファ値を増減する方式であれば、ある起点と隣の分割Noとの間を繰り返すような流量変動が発生した場合に、積算または減算の一方が繰り返されることになり、実際の積算値と誤差を生じることとなる。
【0087】
(5)case5の場合
バッファ値=0の状態で「起点D(分割No.13)」から正流方向に流れたので分割No.13→分割No.14→分割No.15に至ったあと、逆流方向に流れが変わり分割No.15→分割No.14→分割No.13と遷移して再び「起点D(分割No.13)」に至ってバッファ値が減算(−1(=0−1))される。
【0088】
その後、再び正流方向に流れが変わり分割No.13→分割No.14→分割No.15→分割No.16→分割No.17と遷移し、新たな「起点E(分割No.17)」に至ってバッファ値が加算(0(=−1+1))される。
【0089】
この場合、動作開始の最初の起点に至った時にバッファ値が減算されることを除けばバッファ値は追従しているように見受けられるが、分割No.14→分割No.13→分割No.14→分割No.13・・・と繰り返せばバッファ値は減算され続け、あるいは分割No.16→分割No.17→分割No.16→分割No.17・・・と繰り返せばバッファ値は加算され続けることとなる。
【0090】
即ち、起点に至った時にバッファ値を無条件に増減する方式であれば、ある起点と隣の分割Noとの間を繰り返すような流量変動が発生した場合に、積算または減算の一方が繰り返されることになり、実際の積算値と誤差を生じることとなる。
【0091】
本願の発明は、上記case4やcase5の不具合を考慮して改善し、起点近辺を行き来してもcase1のようにバッファ値の増減を繰り返さず、かつcase2やcase3のように起点に至ったときにバッファ値を増減可能にすることでガス通路を流れた実流量値と指針値のズレを防止したものである。
【0092】
なお、ガス遮断装置として必要な遮断機能は、流量検出部21、正逆判定部22、正パルス判定部25、流量演算部31、異常判定部32、弁33とから構成され、以下にその役割を記載する。
【0093】
なお、流量検出部21、正逆判定部22、正パルス判定部25の動作は前述しているので記載を省略する。
【0094】
流量演算部31は、正パルス判定部25から正処理要求信号Hを受け取ると流量値(例えば単位時間当たりの正処理要求信号Hの出力回数から算出しても良い)を算出し流量値信号Mを出力する。
【0095】
異常判定部32は、予め保持している判定値(例えば、ガスが大量に漏れた時の判定値等)と流量演算部31から取得した流量値信号Mの値を比較して異常(例えば、ガス漏れを判定する判定値を越えているか否か)の有無を判定し、異常であれば弁駆動信号Nを出力し、異常でなければ弁駆動信号Nを出力しない。弁33は、異常判定部32からの弁駆動信号Nを取得するとガス通路を閉栓する。
【0096】
そして、この遮断機能によりガス使用者の安全性と利便性が担保されている。
【0097】
次に、
図2に示す実施の形態1のプログラムフローチャート(処理S01から処理S29にて示す)を用いて処理の流れを説明する。ここで処理開始後は各処理を経由して再び処理S01に戻り周期的に処理されるものとする。
【0098】
流量検出部21において処理S01は、ガス通路内を通過するガス流量を流量信号Aであるパルス信号として検出し、ガス流量に基づいた流量信号Aを出力して処理S02へ移行する。
【0099】
正逆判定部22において処理S02は、流量検出部21の流量信号Aを受け取るとセンサ出力(ガス流量)の変化を
図3(2)に示す正逆方向の判断方法に基づいて判定する。そして、新たに取得した流量信号Aが前回取得した流量信号Aと同じ出力状態の組合せのときに処理S01に移行して再度新たな流量信号Aを取得し、新たに取得した流量信号Aが前回取得した流量信号Aと異なる出力状態の組合せのときに処理S03に移行する。
【0100】
処理S03は、
図3(2)の「負」に示すセンサ出力の組合せ(センサA=L、センサB=H)であれば、逆流方向であるとして負パルス信号Bを出力して処理S04へ移行し、「正」に示すセンサ出力の組合せ(センサA=H、センサB=L)であれば、正流方向であるとして正パルス信号Cを出力して処理S10へ移行する。
【0101】
負パルス判定部23において処理S04は、正逆判定部22の負パルス信号Bを受け取ると負パルス信号Bをカウントし起点に到達したか否かを判定し、起点に達したときに処理S05へ移行し、起点に達していなければ処理S07へ移行する。
【0102】
処理S05は、負起点越え信号Eの出力を停止して処理S06へ移行し、処理S06は負処理要求信号Dを出力して処理S16へ移行する。
【0103】
処理S07は、負処理要求信号Dの出力を停止して処理S08へ移行する。処理S08は起点を超えるか否かを判定し、起点を超えたときに処理S09へ移行し、起点を超えた直後でなければ処理S01へ移行する。処理S09は負起点越え信号Eを出力して処理S16へ移行する。
【0104】
負要求判定部24において処理S16は、負パルス判定部23の負処理要求信号Dを受け取っていれば処理S17へ移行し、負処理要求信号Dを受け取っていなければ処理S21へ移行する。
【0105】
処理S17は、正パルス判定部25の正起点越え信号Iがない場合には処理S18へ移行し、正起点越え信号Iがある場合には処理S19へ移行する。
【0106】
処理S18は、減算信号Gを出力して、バッファ部27において負要求判定部24の減算信号Gを受け取ると現在保持しているバッファ値から予め定められた第1の所定量(例えば、計量体積と同じ値でも良いし、計量体積に任意の係数を掛けて補正した値でも良い)を減算して新たなバッファ値として保持して処理S19へ移行する。
【0107】
処理S19は、正起点越え信号Iの有無に係わらず正クリア信号Jを出力し、正パルス判定部25において負要求判定部24の正クリア信号Jを受け取ると正起点越え信号Iの出力を停止して処理S20へ移行する。
【0108】
負パルス判定部23において処理S20は、負処理要求信号Dの出力を停止して処理S26へ移行する。
【0109】
正パルス判定部25において処理S10は、正逆判定部22の正パルス信号Cを受け取ると正パルス信号Cをカウントし起点に到達したか否かを判定し、起点に達したときに処理S11へ移行し、起点に達していなければ処理S13へ移行する。
【0110】
処理S11は、正起点越え信号Iの出力を停止して処理S12へ移行し、処理S12は正処理要求信号Hを出力して処理S16へ移行する。
【0111】
処理S13は、正処理要求信号Hの出力を停止して処理S14へ移行する。処理S14は起点を超えるか否かを判定し、起点を超えたときに処理S15へ移行し、起点を超えた直後でなければ処理S01へ移行する。
【0112】
処理S15は、正起点越え信号Iを出力して処理S16へ移行する。
【0113】
正要求判定部26において処理S21は、正パルス判定部25の正処理要求信号Hを受け取っていれば処理S22へ移行し、正処理要求信号Hを受け取っていなければ処理S01へ移行する。
【0114】
処理S22は、負パルス判定部23の負起点越え信号Eがない場合には処理S23へ移行し、負起点越え信号Eがある場合には処理S24へ移行する。
【0115】
処理S23は、加算信号Kを出力して、バッファ部27において正要求判定部26の加算信号Kを取ると現在保持しているバッファ値に予め定められた第2の所定量を加算して新たなバッファ値として保持して処理S24へ移行する。
【0116】
処理S24は、負起点越え信号Eの有無に係わらず負クリア信号Fを出力し、負パルス判定部23において正要求判定部26の負クリア信号Fを受け取ると負起点越え信号Eの出力を停止して処理S25へ移行する。
【0117】
正パルス判定部25において処理S25は、正処理要求信号Hの出力を停止して処理S26へ移行する。
【0118】
バッファ部27において処理S26は、加算後のバッファ値が予め定めていた積算単位値を越えたときにバッファオーバ信号Lを出力して処理S27へ移行し、積算単位値を越えていなければバッファオーバ信号Lの出力を停止して処理S01へ移行する。
【0119】
処理S27は、加算後のバッファ値から積算単位値を差し引いて新たなバッファ値として保持し直して処理S28へ移行する。
【0120】
指針値保持部28において処理S28は、バッファ部27のバッファオーバ信号Lを受け取ると現在保持している指針値に積算単位値を加算して新たな指針値として保持新たな指針値として保持して処理S29へ移行する。
【0121】
処理S29は、保持している指針値の値をLCD等の表示デバイスで表示して処理S01へ移行する。
【0122】
以上のように、本実施の形態において、
図3(3)に記載したように起点に達した時点でバッファ値を増減させるようにしても、供給ガスの圧力変動に伴う脈動により、例えば「起点D(分割No.13)」の近辺を行き来しただけではバッファ値の増減を繰り返さないようにすると共に、起点から次の起点(例えば「起点D(分割No.13)」と「起点E(分割No.17)」)の1回転パルスが計れた時点でバッファ値を増減可能にすることで体積流量に基づく第1の所定量と第2の所定量の加減算を実施することが可能となり、ガス通路を流れた実流量値と指針値のズレを防止し指針値の精度を向上させることができる。
【0123】
この結果、逆流方向の流量を伴う瞬時流量を計測できない膜式であっても単純に起点到達時にバッファ値の加減算を実施することを防止し、バッファ部のバッファ値を適正化できるようになるため精度と利便性を向上させることができる。