(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の素子アンテナから構成されるアレーアンテナ部を備え、前記複数の素子アンテナの一部を干渉波抑圧処理に用いる補助アンテナとして選択する干渉波抑圧装置において、
前記複数の素子アンテナのそれぞれに接続され、各素子アンテナが受信した受信信号を移相する複数の移相器からなる第1の移相器群、前記第1の移相器群の各移相器による移相処理を制御する第1の位相制御部、前記複数の移相器のそれぞれに接続され、各移相器の出力信号を減衰する複数の減衰器からなる第1の減衰器群、前記第1の減衰器群の各減衰器による減衰処理を制御する第1の減衰制御部および前記第1の減衰器群の各減衰器の出力信号を合成する第1の合成部を有するBFN部と、
前記第1の合成部の出力信号をアナログ/デジタル変換する第1のA/D変換部と、
前記複数の素子アンテナより少ない数のA/D変換器からなる第2のA/D変換部と、
前記複数の素子アンテナの各受信信号を入力し、前記複数の素子アンテナの中から補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先を前記第2のA/D変換部のA/D変換器に切り替える第1のSW部と、
素子識別情報で指定された素子アンテナを補助アンテナとして選別するよう前記第1のSW部を制御する第1のSW制御部と、
前記第2のA/D変換部のA/D変換器の出力信号に基づいて前記第1のSW部が選別した各素子アンテナの受信電力を測定する第1の電力測定部と、
前記第1の電力測定部が測定した各受信電力を素子アンテナの素子識別情報に対応付けて記憶し、前記受信電力を記憶した素子アンテナのうち、受信電力値が閾値を超える素子アンテナの素子識別情報を前記第1のSW制御部に指定する電力データベース部と、
前記第1のA/D変換部の出力信号および前記第2のA/D変換部の各A/D変換器の出力信号に基づいて、干渉波成分を抑圧するサイドローブキャンセラ荷重を算出する荷重算出部と、
前記荷重算出部が算出したサイドローブキャンセラ荷重を、前記第2のA/D変換部の各A/D変換器の出力信号に乗算する荷重乗算部と、
前記第2のA/D変換部の各A/D変換器に対する前記荷重乗算部の各演算結果を合成する第2の合成部と、
前記第1のA/D変換部の出力信号から前記第2の合成部の出力信号を減算して最終的な出力信号として出力する減算部とを備えたことを特徴とする干渉波抑圧装置。
前記第1のSW部は、前記補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先を、前記第2のA/D変換部における特定のA/D変換器のみに切り替えることを特徴とする請求項1記載の干渉波抑圧装置。
前記第1のSW部は、受信ビームの指向方向が揃った素子アンテナをそれぞれまとめた素子アンテナ群の中から補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先を、前記第2のA/D変換部のA/D変換器に切り替えることを特徴とする請求項1記載の干渉波抑圧装置。
前記第1のSW部は、受信ビームの指向方向が揃った素子アンテナをそれぞれまとめた素子アンテナ群を、素子アンテナ群ごとの受信エリアが隣接する順に選別して、選別した素子アンテナ群の中から補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先を、前記第2のA/D変換部のA/D変換器に切り替えることを特徴とする請求項1記載の干渉波抑圧装置。
前記電力データベース部は、前記第2の電力測定部が測定した受信電力が前記第1のA/D変換部を飽和させる場合、飽和がなくなるまで受信電力値が大きい順に素子アンテナの素子識別情報を前記第1の減衰制御部に指定し、
前記第1の減衰制御部は、前記電力データベース部から素子識別情報で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう前記第1の減衰器群の各減衰器による減衰処理を制御することを特徴とする請求項5記載の干渉波抑圧装置。
前記電力データベース部は、前記第2の電力測定部が測定した受信電力が前記第1のA/D変換部を飽和させる場合、飽和がなくなるまで受信電力値が大きい順に素子アンテナの素子識別情報を選択して前記第2のSW制御部に指定し、
前記第2のSW制御部は、前記電力データベース部から素子識別情報で指定された素子アンテナの受信信号を短絡するよう前記第2のSW部の切り替えを制御することを特徴とする請求項7記載の干渉波抑圧装置。
前記電力データベース部は、前記第1の電力測定部が測定した受信電力が前記第2のA/D変換部を飽和させる場合に、飽和がなくなるまで受信電力値が大きい順に素子アンテナの素子識別情報を選択して前記第2の減衰制御部に指定し、
前記第2の減衰制御部は、前記電力データベース部から素子識別情報で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう前記第2の減衰器群の各減衰器による減衰処理を制御することを特徴とする請求項9記載の干渉波抑圧装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る干渉波抑圧装置の構成を示す図である。
図1に示す干渉波抑圧装置は、N(Nは、2以上の自然数)本の素子アンテナからなるアレーアンテナ部1を備え、N本の素子アンテナの一部を干渉波抑圧処理に用いる補助アンテナとして選択する。この発明に係る干渉波抑圧装置においては、アレーアンテナ部1のN本の素子アンテナのうち、受信電力が大きい素子アンテナのみ(干渉波を強く受信している素子アンテナのみ)を受信チャンネルに接続する。これにより、受信チャンネルにおいて、アナログデータからデジタルデータに変換するためのA/D変換器の数を削減している。
この干渉波抑圧装置は、
図1に示すように、アレーアンテナ部1、BFN(Beam Forming Network)部2、A/D変換部8,11、SW部9、SW制御部10、電力測定部12、電力DB(データベース)部13、荷重算出部14、荷重乗算部15、合成部16、および演算器17を備えて構成される。
【0012】
アレーアンテナ部1は、N本の素子アンテナ#1〜#Nから構成されるアレーアンテナであり、隣り合う素子アンテナが同様の方向に指向性を有している。
なお、“同様の方向”とは、完全に一致する方向ではなく、僅かな方向の違いを含んでいる。このため、アレーアンテナ部1において、近隣の素子アンテナ群(以下、ブロックと呼ぶ)では、各素子アンテナ#1〜#Nの指向方向は僅かに違いながらも同様な方向に揃っており、離れた位置の素子アンテナ間(例えば、異なるブロック間)では異なる方向に指向性が設定されている。これにより、アレーアンテナ部1全体では、素子アンテナが様々な方向を指向した状態となる。
【0013】
このように、この発明に係るアレーアンテナ部1においては、N本の素子アンテナが、上述のような指向性を有しているため、N本の素子アンテナで観測特性は一致していない。例えば、ある素子アンテナでは、ある方向から電波が到来した際に受信電力が大きくなり、別の素子アンテナでは、別の方向から電波が到来した際に受信電力が大きくなる場合がある。このため、この発明では、素子アンテナの受信電力を測定し、受信電力値がある閾値を超えた素子アンテナ(干渉波を強く受信している素子アンテナ)のみを補助アンテナとして選別する。これにより、補助アンテナの受信チャンネルにおいて、アナログデータからデジタルデータに変換するためのA/D変換器の個数を、全素子アンテナ数のNから“所望の干渉波抑圧数+1”まで削減することができる。
【0014】
BFN部2は、移相器群3、減衰器群4、位相制御部5、減衰制御部6および合成部7を有して構成される。移相器群3は、アレーアンテナ部1のN本の素子アンテナ#1〜#Nのそれぞれに接続され、各素子アンテナ#1〜#Nが受信した受信信号を移相するN個の移相器からなる第1の移相器群である。減衰器群4は、移相器群3のN個の移相器のそれぞれに接続され、各移相器の出力信号を減衰するN個の減衰器からなる第1の減衰器群である。位相制御部5は、移相器群3の各移相器による移相処理を制御する第1の位相制御部であり、減衰制御部6は、減衰器群4の各減衰器による減衰処理を制御する第1の減衰制御部である。合成部7は、減衰器群4の各減衰器の出力信号を合成する第1の合成部である。
【0015】
A/D変換部8は、合成部7の出力信号(アレーアンテナ部1の全ての素子アンテナで形成された主アンテナの受信ビーム)をアナログ/デジタル変換する第1のA/D変換部である。なお、合成部7の出力信号は、N本の素子アンテナ#1〜#Nの受信信号を移相および減衰した信号を合成した信号である。
【0016】
SW部9は、アレーアンテナ部1のN本の素子アンテナ#1〜#Nの各受信信号を入力(入力数N)し、SW制御部10の制御によりN本の素子アンテナの中からK(K<N)本の素子アンテナを補助アンテナとして選別し、選別した素子アンテナの分岐先をA/D変換部11の各A/D変換器#1〜#K(出力数K)に切り替える第1のSW部である。
SW制御部10は、素子番号で指定された素子アンテナを、補助アンテナとして選別するようSW部9を制御する第1のSW制御部である。
例えば、SW制御部10が、補助アンテナとして選別すべき素子アンテナ(A/D変換部11に受信信号を入力すべき素子アンテナ)の素子番号(素子識別情報)をSW部9に出力し、SW部9が、SW制御部10から入力した素子番号の素子アンテナの受信信号をA/D変換部11の各A/D変換器#1〜#Kに入力する。
なお、素子識別情報は、上述した各素子アンテナに付与した通し番号である素子番号でもよいが、個々の素子アンテナに固有なID情報であってもかまわない。以降では、素子番号を使用する場合を例に挙げて説明する。
【0017】
A/D変換部11は、N本の素子アンテナよりも少ないK(K<N)個のA/D変換器#1〜#Kから構成される第2のA/D変換部である。A/D変換器#1〜#Kは、入力側にSW部9が接続され、出力側に電力測定部12、荷重算出部14および荷重乗算部15が接続されており、SW部9により補助アンテナとして選別された素子アンテナの受信信号をデジタル信号に変換する。
電力測定部12は、A/D変換部11のA/D変換器#1〜#Kの出力信号に基づいて、SW部9が選別した各素子アンテナの受信電力を測定する第1の電力測定部である。
【0018】
電力DB部13は、電力測定部12が測定した各受信電力を素子アンテナの素子番号に対応付けて記憶するとともに、受信電力を記憶した素子アンテナの中から、受信電力値が閾値を超える素子アンテナの素子番号を、補助アンテナとする素子アンテナの素子番号としてSW制御部10に指定する。
例えば、電力測定部12が、アレーアンテナ部1の全ての素子アンテナのうち、SW部9がK本ずつ選別した素子アンテナの受信電力を順に測定する。このとき、電力DB13は、電力測定部12が測定した受信電力を入力し、SW制御部10から受信電力が測定された素子アンテナの素子番号を入力して、各受信電力を素子番号に対応付けて記憶する。
電力測定部12により全ての素子アンテナの受信電力が測定されると、電力DB部13は、記憶した全ての素子アンテナの受信電力のうち、所定の閾値を超える受信電力に対応する素子番号をSW制御部10に指定する。これにより、受信電力が所定の閾値を超えている、すなわち干渉波を強く受信している素子アンテナを補助アンテナとして選別させることができる。
【0019】
荷重算出部14は、A/D変換部8の出力信号およびA/D変換部11の各A/D変換器#1〜#Kの出力信号に基づいて、干渉波成分を抑圧するサイドローブキャンセラ荷重w
1〜w
kを算出する。
荷重乗算部15は、荷重算出部14が算出したサイドローブキャンセラ荷重w
1〜w
kを、A/D変換部11の各A/D変換器の出力信号に乗算する荷重乗算部である。
合成部16は、A/D変換部11の各A/D変換器#1〜#Kに対する荷重乗算部15の各演算結果を合成する第2の合成部である。
演算器17は、A/D変換部8の主アンテナの出力信号から、合成部16の出力信号を減算して最終的な出力信号として出力する減算部である。
【0020】
図2は、実施の形態1におけるSW部の構成を示すブロック図である。
図2において、SW部9は、N本の素子アンテナ#1〜#Nの各受信信号を入力し、N本の素子アンテナの一部(K本の素子アンテナ)を補助アンテナとして選別して、選別した素子アンテナの受信信号の出力先をA/D変換部11の各A/D変換器#1〜#Kに切り替える。
なお、
図2において、太線は、素子アンテナの出力とA/D変換器の入力とが接続していることを示しており、点線は、接続可能であることを示している。
すなわち、SW部9では、N本の素子アンテナ#1〜#Nにおける任意の素子アンテナがA/D変換部11のいずれのA/D変換器#1〜#Kにも接続可能である。
【0021】
例えば、
図3は、素子アンテナ#1がA/D変換器#Kに接続されており、点線で示すように、素子アンテナ#1は、A/D変換器#K以外に、A/D変換器#1〜A/D変換器#K−1にも接続可能である。
また、
図4は、素子アンテナ#NがA/D変換器#1に接続された場合であるが、点線で示すように、素子アンテナ#Nは、A/D変換器#1以外に、A/D変換器#2〜A/D変換器#Kに接続可能である。
【0022】
次に動作について説明する。
図5は、実施の形態1に係る干渉波抑圧装置の動作を示すフローチャートである。
まず、SW制御部10は、SW部9に指示して、アレーアンテナ部1の素子アンテナのうち、K本ずつの素子アンテナの出力先をA/D変換部11に切り替える。これにより、A/D変換部11のA/D変換器#1〜#Kが、素子アンテナの受信信号をデジタル信号に変換する。
電力測定部12は、A/D変換部11のA/D変換器#1〜#Kの出力信号に基づいてSW部9が選別した素子アンテナの受信電力を測定する。電力測定部12による電力測定結果およびSW制御部10がSW部9に選別させた素子アンテナの素子番号は、電力DB部13に入力されて蓄積される。
ステップST1においては、上述した処理が、アレーアンテナ部1における全ての素子アンテナ#1〜#Nの受信電力の測定が終わるまで繰り返される。
【0023】
次に、SW制御部10は、ステップST1で電力DB部13に蓄積された電力値情報に基づいて、受信電力値が所定の閾値を超えている素子アンテナの素子番号を最大でK個分選別し、これらの素子番号をSW部9に出力する。
SW部9は、アレーアンテナ部1の素子アンテナ#1〜#Nの中から、SW制御部10から素子番号で指定された素子アンテナを補助アンテナとして選別し、選別した素子アンテナの受信信号をA/D変換部11のA/D変換器#1〜#Kに出力する(ステップST2)。
【0024】
荷重算出部14は、A/D変換部11のA/D変換器#1〜#Kから補助アンテナ信号として出力される信号と、A/D変換部8から主アンテナ信号として出力される信号とを用いて、サイドローブキャンセラ荷重w
1〜w
kを算出する(ステップST3)。
次に、荷重乗算部15は、A/D変換部11のA/D変換器#1〜#Kから出力される信号に対して荷重算出部14が算出した荷重w
1〜w
kを乗算する(ステップST4)。
【0025】
合成部16は、ステップST4で荷重乗算部15が荷重を乗算した補助アンテナ信号を合成する(ステップST5)。
この後、演算器17は、A/D変換部8の主アンテナの出力信号から、合成部17の出力信号を減算して最終的な出力信号として出力する(ステップST6)。これによって、減算器17から干渉波成分が抑圧された主アンテナ信号が出力される。
【0026】
以上のように、この実施の形態1によれば、N本の素子アンテナ#1〜#Nのそれぞれに接続され、各素子アンテナで受信された受信信号を移相するN個の移相器からなる移相器群3、移相器群3の各移相器による移相処理を制御する位相制御部5、N個の移相器のそれぞれに接続され、各移相器の出力信号を減衰するN個の減衰器からなる減衰器群4、減衰器群4の各減衰器による減衰処理を制御する減衰制御部6および減衰器群4の各減衰器の出力信号を合成する合成部7を有するBFN部2と、合成部7の出力信号をアナログ/デジタル変換するA/D変換部8と、N本の素子アンテナ#1〜#Nより少ないK個のA/D変換器#1〜#KからなるA/D変換部11と、N本の素子アンテナの各受信信号を入力し、N本の素子アンテナ#1〜#Nの中から補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先をA/D変換部11のA/D変換器に切り替えるSW部9と、素子番号で指定された素子アンテナを補助アンテナとして選別するようSW部9を制御するSW制御部10と、A/D変換部11の各A/D変換器#1〜#Kの出力信号に基づいて、SW部9が選別した各素子アンテナの受信電力を測定する電力測定部12と、電力測定部12が測定した各受信電力を素子アンテナの素子番号に対応付けて記憶し、受信電力を記憶した素子アンテナのうち、受信電力値が閾値を超える素子アンテナの素子番号をSW制御部10に指定する電力DB部13と、A/D変換部8の出力信号およびA/D変換部11の各A/D変換器の出力信号に基づいて、干渉波成分を抑圧するサイドローブキャンセラ荷重w
1〜w
kを算出する荷重算出部14と、荷重算出部14が算出したサイドローブキャンセラ荷重を、A/D変換部11の各A/D変換器の出力信号に乗算する荷重乗算部15と、A/D変換部11の各A/D変換器に対する荷重乗算部15の各演算結果を合成する合成部16と、A/D変換部8の出力信号から合成部16の出力信号を減算して最終的な出力信号として出力する演算器17とを備える。
このように主アンテナとなり得るアレーアンテナ部1の複数の素子アンテナの中から、受信電力値が閾値を超えた素子アンテナ(干渉波を強く受信している素子アンテナ)のみを補助アンテナとして選別することで、補助アンテナを別途設ける必要がなく、A/D変換器の数も削減できるため、干渉波の抑圧性能を劣化させずに装置規模を削減することが可能である。
【0027】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係る干渉波抑圧装置の構成を示すブロック図である。
図6において、実施の形態2に係る干渉波抑圧装置は、実施の形態1におけるSW部9をSW部9Aに変更したものである。SW部9Aは、アレーアンテナ部1の素子アンテナ#1〜#Nのうち、補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先を、A/D変換部11における特定のA/D変換器のみに切り替える第1のSW部である。
【0028】
図7は、実施の形態2におけるSW部の構成を示すブロック図である。
図7において、太線は、素子アンテナの出力とA/D変換器の入力とが接続していることを示しており、点線は、接続可能であることを示している。
SW部9Aは、N本の素子アンテナ#1〜#Nの各受信信号を入力し、N本の素子アンテナの中から補助アンテナとして選別した素子アンテナの受信信号の出力先を、A/D変換部11における特定のA/D変換器のみに切り替えている。
例えば、
図7においては、素子アンテナ#1は、A/D変換部11におけるA/D変換器#Kのみに接続される。なお、
図7で点線で示すように、素子アンテナ#L(N>L)についてもA/D変換器#1のみに接続される。また、素子アンテナ#2はA/D変換器#2のみに接続され、素子アンテナ#NはA/D変換器#1のみに接続される。
【0029】
図8は、SW部9Aで任意の2つの素子アンテナに着目した場合のA/D変換器との接続関係を示す図である。
図8の例では、素子アンテナ#Nの分岐先がA/D変換器#1に切り替わって接続されており、このA/D変換器#1には、素子アンテナ#L(N>L)も接続可能である。
実施の形態1におけるSW部9は、N本の素子アンテナ#1〜#Nにおける任意の素子アンテナがA/D変換部11のいずれのA/D変換器#1〜#Kに接続可能である。
一方、SW部9Aでは、補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先をA/D変換部11における特定のA/D変換器のみに切り替える。これにより、SW部の規模を、N対1の切り替えを行うスイッチをK個有する構成から(N/K)対1の切り替えを行うスイッチをK個有する構成に削減することができる。
【0030】
図7,8のようにSW部9Aを構成してSW部の規模を削減する場合、補助アンテナとして選別されたある素子アンテナの受信信号は、A/D変換部11の特定のA/D変換器にしか入力できない。この制約のため、上記実施の形態1の
図5で示したフローチャートのステップST2において、最大K本の素子アンテナが補助アンテナとして選別された場合、素子アンテナが接続するA/D変換器が重複する可能性がある。この場合、適切な補助アンテナを選別することができず、干渉波を十分に抑圧できない。
【0031】
図9は、実施の形態2における素子アンテナと補助アンテナ信号のA/D変換器との接続関係を示す図である。
図9において、1〜10は、A/D変換部11のA/D変換器を示しており、例えば、A/D変換器#1が“1”、A/D変換器#2が“2”、A/D変換器#10が“10”である。
上述したように補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先をA/D変換部11における特定のA/D変換器のみに切り替える場合、素子アンテナが接続するA/D変換器が重複する可能性がある。
【0032】
そこで、
図9のように、SW部9Aが、受信ビームの指向方向が揃った素子アンテナをそれぞれまとめた素子アンテナ群(以下、ブロックと呼ぶ)の中から補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先を、A/D変換部11のA/D変換器に切り替える。
このように受信ビームの指向方向が揃った近隣の素子アンテナの分岐先を、A/D変換部11における特定のA/D変換器のみに切り替えるよう設定しておくことで、素子アンテナが接続するA/D変換器が重複することを防止できる。
【0033】
また、SW部9Aが、受信ビームの指向方向が揃った素子アンテナをそれぞれまとめたブロックを、ブロックごとの受信エリアが隣接する順に選別して、選別した素子アンテナ群の中から補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先を、A/D変換部11のA/D変換器に切り替えてもよい。
このような切り替えを行う場合に、受信電力値に応じて最大K本の素子アンテナを補助アンテナとして選別する際に、例えば、ブロック#Aの素子アンテナ#1とブロック#Cの素子アンテナ#Nが補助アンテナとして選別され、これらの双方がA/D変換部11のA/D変換器#1に接続すべき素子アンテナである場合を考える。
この場合、素子アンテナ#1と素子アンテナ#Nが競合するため、A/D変換器#1に接続すべき素子アンテナを選択できない。
【0034】
そこで、ブロック#Aの素子アンテナとブロック#Cの素子アンテナとの各受信電力を比較して、ブロック#Cの素子アンテナよりもブロック#Aの素子アンテナの受信電力の方が大きければ、
図9に示すように、ブロック#Aにおいて、素子アンテナ#1の代わりに、ブロック内で素子アンテナ#1に近接している素子アンテナ#2を選別する。
このように選別する理由は、近接している素子アンテナであれば、双方の受信ビームが重なっているため、補助アンテナとして十分に干渉波を受信していると考えられるからである。また、受信電力の大きい方の素子アンテナを代替する素子アンテナを選別する方が干渉波の受信電力の低下も小さく済む。
【0035】
なお、複数のブロックで受信電力が大きい場合には、1つのブロックから選択する素子アンテナの数に上限を設ける。例えば、A/D変換器がK個で、2つのブロックが対象になるならば、1つのブロックから選択する素子アンテナ数の上限をK/2とする。
一方のブロックでK/2個の素子アンテナを選択した場合、別のブロックでは未だ選択されていない素子アンテナから選択する。
【0036】
次に動作について説明する。
図10は、実施の形態2に係る干渉波抑圧装置の動作を示すフローチャートであり、
図10において、ステップST1、ステップST2からステップST6までの処理は
図5と同様であるので説明を省略する。
ステップST1−1において、SW制御部10は、ステップST1で電力DB部13に蓄積された電力値情報に基づいて、受信電力値が所定の閾値を超えている素子アンテナの素子番号を最大でK個分選別し、これらの素子番号をSW部9Aに出力する。
このとき、A/D変換部11のA/D変換器に接続できる素子アンテナが重複している場合、SW制御部10は、重複している素子アンテナのうち、受信電力値の大きい素子アンテナの方を、このアンテナに近接しかつ他の補助アンテナと接続可能なA/D変換器が重複していない素子アンテナを再び選別する。
【0037】
以上のように、この実施の形態2によれば、SW部9Aが、受信ビームの指向方向が揃った素子アンテナをそれぞれまとめたブロック(素子アンテナ群)の中から補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先をA/D変換部11のA/D変換器に切り替える。このようにすることで、受信ビームの指向方向が揃った近隣の素子アンテナの分岐先を、A/D変換部11における特定のA/D変換器のみに切り替えるよう設定しておくことで、素子アンテナが接続するA/D変換器が重複することを防止できる。
【0038】
また、この実施の形態2によれば、SW部9Aが、受信ビームの指向方向が揃った素子アンテナをそれぞれまとめたブロックを、ブロックごとの受信エリアが隣接する順に選別して、選別したブロックの中から補助アンテナとして選別した素子アンテナの分岐先を、A/D変換部11のA/D変換器に切り替える。このようにすることで、十分な干渉波の抑圧性能を維持しつつ、SW部9Aの規模を削減できる。これにより、装置の規模やコストが削減することが可能である。
【0039】
実施の形態3.
図11は、この発明の実施の形態3に係る干渉波抑圧装置の構成を示すブロック図である。
図11において、実施の形態3に係る干渉波抑圧装置では、主アンテナ信号のA/D変換部8および補助アンテナ信号のA/D変換部11が飽和することを避けるため、
図1に示した実施の形態1の構成に対して電力測定部18を追加し、電力DB部13の代わりに電力DB部13Aを設け、A/D変換部11の代わりにA/D変換部11Aを設ける。
【0040】
電力測定部18は、A/D変換部8の出力信号(主アンテナ信号)に基づいて、N本の素子アンテナ#1〜#Nの受信電力値、すなわち主アンテナ信号の受信電力値を測定する第2の電力測定部である。
電力DB部13Aは、電力測定部18が測定した受信電力を素子アンテナの素子番号に対応付けて記憶し、電力測定部18が測定した受信電力がA/D変換部8を飽和させる場合、飽和がなくなるまで素子アンテナの素子番号を選択して減衰制御部6に指定する。
減衰制御部6は、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう減衰器群4の各減衰器による減衰処理を制御する。
【0041】
A/D変換部11Aは、
図1と同様に、N本の素子アンテナ#1〜#Nより少ないK個のA/D変換器を有し、さらに減衰器群19と減衰制御部20を備える。
減衰器群19は、SW部9が選別した素子アンテナの受信信号を、A/D変換器に入力する前に減衰するK個の減衰器からなる第2の減衰器群である。
また、減衰制御部20は、減衰器群19の各減衰器による減衰処理を制御する第2の減衰制御部である。
【0042】
次に動作について説明する。
図12は、実施の形態3に係る干渉波抑圧装置の動作を示すフローチャートであり、
図12において、ステップST1からステップST6までの処理は、
図5と同様であるので説明を省略する。
まず、電力測定部18が、A/D変換部8の出力信号に基づいて、N本の素子アンテナ#1〜#Nの受信電力を測定して電力DB部13Aに出力する(ステップST1a)。
次に、電力DB部13Aは、素子アンテナの素子番号に対応付けて記憶した受信電力のうち、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和する電力値があるか否かを判定する(ステップST2a)。
【0043】
飽和する電力値がなければ(ステップST2a;NO)、ステップST1の処理に移行して、
図5と同様の処理を実行する。
一方、飽和する電力値がある場合(ステップST2a;YES)、SW制御部10が、SW部9に指示して、アレーアンテナ部1の素子アンテナのうち、K本ずつの素子アンテナの出力先をA/D変換部11Aに切り替える。
そして、電力測定部12が、A/D変換部11AのA/D変換器#1〜#Kの出力信号に基づいて、SW部9が選別した素子アンテナの受信電力を測定する。
電力測定部12による電力測定結果およびSW制御部10がSW部9に選別させた素子アンテナの素子番号は、電力DB部13Aに入力されて蓄積される。
ステップST3aにおいては、上述した処理が、アレーアンテナ部1における全ての素子アンテナ#1〜#Nの受信電力の測定が終わるまで繰り返される。
【0044】
次に、電力DB部13Aは、電力測定部12による電力測定結果のうち、補助アンテナ信号のA/D変換部11Aが飽和する電力値があるか否かを判定する(ステップST4a)。ここで、飽和する電力値がなければ(ステップST4a;NO)、ステップST7aに移行する。
飽和する電力値がある場合(ステップST4a;YES)、電力DB部13Aは、受信電力が飽和している素子アンテナの素子番号を選択して減衰制御部20に指定する。
減衰制御部20は、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう減衰器群19の各減衰器による減衰処理を制御する(ステップST5a)。例えば、電力DB部13Aが、受信電力がA/D変換部11Aを飽和させる場合に、飽和がなくなるまで受信電力値が大きい順に素子アンテナの素子番号を選択して減衰制御部20に指定して、減衰制御部20が、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう減衰器群19の各減衰器の減衰処理を制御する。
このようにすることで、補助アンテナ信号のA/D変換部11Aが飽和して各素子アンテナの信号が正しくA/D変換できなくなることを防止できる。
【0045】
減衰器群19の各減衰器による減衰処理が実行されると、SW制御部10が、SW部9に指示して、アレーアンテナ部1の素子アンテナのうち、K本ずつの素子アンテナの出力先をA/D変換部11Aに切り替える。
そして、電力測定部12が、A/D変換部11AのA/D変換器#1〜#Kの出力信号に基づいて、SW部9が選別した素子アンテナの受信電力を再び測定する。
電力測定部12による電力測定結果およびSW制御部10がSW部9に選別させた素子アンテナの素子番号は、電力DB部13Aに入力されて蓄積される。
ステップST6aにおいては、上述の処理が、アレーアンテナ部1における全ての素子アンテナ#1〜#Nの受信電力の測定が終わるまで繰り返される。
【0046】
次に、電力DB部13Aは、素子番号に対応付けて記憶した電力測定部18の電力測定結果のうち、A/D変換部8が飽和する電力値を確認して、受信電力値が最も大きい素子アンテナの素子番号を減衰制御部6に指定する。
減衰制御部6は、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう減衰器群4の各減衰器による減衰処理を制御する(ステップST7a)。これにより、指定された素子番号の素子アンテナの受信電力が減衰される。
【0047】
続いて、電力測定部18が、ステップST1aと同様に、A/D変換部8の出力信号に基づいて、N本の素子アンテナ#1〜#Nの受信電力を測定して電力DB部13Aに出力する(ステップST8a)。
次に、電力DB部13Aは、ステップST2aと同様に、素子アンテナの素子番号に対応付けて記憶した受信電力のうち、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和する電力値があるか否かを判定する(ステップST9a)。
飽和する電力値がなければ(ステップST9a;NO)、ステップST2の処理に移行して、
図5と同様の処理を実行する。
【0048】
飽和する電力値がある場合(ステップST9a;YES)、電力DB部13Aが、ステップST7aで減衰させている素子アンテナを除いた素子アンテナのうちで受信電力値が最も大きい素子アンテナの素子番号を減衰制御部6に指定する。
減衰制御部6は、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう減衰器群4の各減衰器による減衰処理を制御する(ステップST10a)。これにより、指定された素子番号の素子アンテナの受信電力が減衰される。
この後、電力測定部18が、減衰後の主アンテナ信号の受信電力を測定し、A/D変換部8が飽和している場合は、電力DB部13Aは、次に受信電力値が大きい素子アンテナの素子番号を減衰制御部6に指定する。この動作を主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和しなくなるまで繰り返す。
【0049】
なお、電力DB部13Aが、A/D変換部8のA/D変換器が飽和する受信電力の素子アンテナがある場合に、主アンテナとなる素子アンテナ#1〜#Nの受信電力を一括して減衰するよう減衰制御部6に指示してもよい。
また、電力DB部13AがA/D変換部11AのA/D変換器が飽和する受信電力の素子アンテナがある場合に、補助アンテナとなる素子アンテナの受信電力を一括して減衰するよう減衰制御部20に指示してもよい。
このようにすることでも、A/D変換部8,11Aが飽和することを防止できる。
【0050】
以上のように、この実施の形態3によれば、A/D変換部8の出力信号に基づいて、N本の素子アンテナ#1〜#Nの受信電力値を測定する電力測定部18を備え、電力DB部13Aが、電力測定部18が測定した受信電力を素子アンテナの素子番号に対応付けて記憶するとともに、電力測定部18が測定した受信電力がA/D変換部8を飽和させる場合、飽和がなくなるまで素子アンテナの素子番号を選択して減衰制御部6に指定し、減衰制御部6が、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう減衰器群4の各減衰器による減衰処理を制御する。
このようにすることで、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和することを回避でき、十分な干渉波抑圧性能を維持しつつ、装置の規模やコストが削減することができる。
【0051】
また、この実施の形態3によれば、電力DB部13Aが、電力測定部18が測定した受信電力がA/D変換部8を飽和させる場合、飽和がなくなるまで受信電力値が大きい順に素子アンテナの素子番号を減衰制御部6に指定し、減衰制御部6が、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう減衰器群4の各減衰器による減衰処理を制御する。このようにすることでも、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和することを回避できる。
【0052】
さらに、この実施の形態3によれば、SW部9が選別した素子アンテナの受信信号を減衰するK個の減衰器からなる減衰器群19と、減衰器群19の各減衰器による減衰処理を制御する減衰制御部20とを備え、電力DB部13Aが、電力測定部12が測定した受信電力がA/D変換部11Aを飽和させる場合、飽和がなくなるまで素子アンテナの素子番号を選択して減衰制御部20に指定し、減衰制御部20が、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう減衰器群19の各減衰器による減衰処理を制御する。このようにすることで、補助アンテナ信号のA/D変換部11Aが飽和することを回避でき、十分な干渉波抑圧性能を維持しつつ、装置の規模やコストが削減することができる。
【0053】
さらに、この実施の形態3によれば、電力DB部13Aが、電力測定部12が測定した受信電力がA/D変換部11Aを飽和させる場合に、飽和がなくなるまで受信電力値が大きい順に素子アンテナの素子番号を選択して減衰制御部20に指定し、減衰制御部20が、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を減衰するよう減衰器群19の各減衰器による減衰処理を制御する。このようにすることでも、補助アンテナ信号のA/D変換部11Aが飽和することを回避できる。
【0054】
実施の形態4.
図13は、この発明の実施の形態4に係る干渉波抑圧装置の構成を示すブロック図である。
図13に示すように、実施の形態4に係る干渉波抑圧装置では、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和することを避けるため、
図11に示した実施の形態3の構成におけるBFN部2の代わりにBFN部2Aを設けている。BFN部2Aは、BFN部2に対してSW部21とSW制御部22を追加している。
【0055】
SW部21は、減衰器群4の各減衰器の出力先を短絡または合成部7に切り替える第2のSW部である。減衰器群4の各減衰器に接続するN個のスイッチから構成される。
SW制御部22は、SW部21の切り替えを制御する第2のSW制御部である。
電力DB部13Aは、電力測定部18が測定した各受信電力を、素子アンテナの素子番号に対応付けて記憶し、電力測定部18が測定した受信電力がA/D変換部8を飽和させる場合に、飽和がなくなるまで素子アンテナの素子番号を選択してSW制御部22に指定し、SW制御部22は、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を短絡するようにSW部21の切り替えを制御する。
【0056】
次に動作について説明する。
図14は、実施の形態4に係る干渉波抑圧装置の動作を示すフローチャートであって、
図14におけるステップST1からステップST6までの処理は
図5と同様であり、ステップST1aからステップST6a、ステップST8a,9aの処理は、
図12と同様であるので説明を省略する。
【0057】
ステップST7bにおいて、電力DB部13Aは、素子番号に対応付けて記憶した電力測定部18の電力測定結果のうち、A/D変換部8が飽和する電力値を確認して、受信電力値が最も大きい素子アンテナの素子番号をSW制御部22に指定する。
SW制御部22は、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を短絡するようにSW部21の切り替えを制御する。これにより、指定された素子番号の素子アンテナと合成部7との接続が短絡される。
この後、電力測定部18が短絡後の主アンテナ信号の受信電力を測定し、A/D変換部8が飽和している場合は、電力DB部13Aは、次に受信電力値が大きい素子アンテナの素子番号をSW制御部22に指定する。この動作を主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和しなくなるまで繰り返す。
【0058】
ステップST10bにおいて、電力DB部13Aが、ステップST7bで短絡させている素子アンテナを除いた素子アンテナのうちで受信電力値が最も大きい素子アンテナの素子番号をSW制御部22に指定する。
SW制御部22は、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を短絡するようにSW部21の切り替えを制御する。これにより、指定された素子番号の素子アンテナと合成部7との接続が短絡される。
【0059】
なお、電力DB部13Aが、A/D変換部8のA/D変換器が飽和する受信電力の素子アンテナがある場合に、主アンテナとなる素子アンテナ#1〜#Nの受信電力を一括して合成部7との接続を短絡するようSW制御部22に指示してもよい。このようにすることでも、A/D変換部8が飽和することを防止できる。
【0060】
以上のように、この実施の形態4によれば、減衰器群4の各減衰器の出力先を短絡または合成部7に切り替えるSW部21と、SW部21の切り替えを制御するSW制御部22と、A/D変換部8の出力信号に基づいて、N本の素子アンテナの受信電力値を測定する電力測定部18を備え、電力DB部13Aが、電力測定部18が測定した各受信電力を、素子アンテナの素子番号に対応付けて記憶するとともに、電力測定部18が測定した受信電力がA/D変換部8を飽和させる場合、飽和がなくなるまで素子アンテナの素子番号を選択してSW制御部22に指定する。そして、SW制御部22が、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を短絡するようSW部21の切り替えを制御する。このように構成することで、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和することを回避でき、十分な干渉波抑圧性能を維持しつつ、装置の規模やコストが削減することができる。
【0061】
また、この実施の形態4によれば、電力DB部13Aが、電力測定部18が測定した受信電力がA/D変換部8を飽和させる場合、飽和がなくなるまで受信電力値が大きい順に素子アンテナの素子番号を選択してSW制御部22に指定し、SW制御部22が、電力DB部13Aから素子番号で指定された素子アンテナの受信信号を短絡するようSW部21の切り替えを制御する。このようにすることでも、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和することを回避できる。
【0062】
実施の形態5.
図15は、この発明の実施の形態5に係る干渉波抑圧装置の構成を示すブロック図である。
図15において、実施の形態5に係る干渉波抑圧装置では、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和することを避けるため、
図11に示した実施の形態3の構成に対して干渉波到来方向推定部23を追加している。
干渉波到来方向推定部23は、A/D変換部11AのA/D変換器の出力信号、つまり干渉波抑圧用に補助アンテナとして選別された素子アンテナの信号に基づいて、サイドローブキャンセラだけでなく、干渉波到来方向の推定を行う。到来方向推定方法としては、例えば、下記の参考文献1に記載されるMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)アルゴリズムなどを使用する。
(参考文献1)R.O.Schmidt, “Multiple emitter location and signal parameter estimation”, IEEE Trans. Antennas & Propag.,vol. AP−34, no.3, pp.276−280, March 1986.
【0063】
到来方向推定結果はBFN部2に入力され、BFN部2は、位相制御部5と減衰制御部6によって移相器群3と減衰器群4を制御し、干渉波が抑圧された主アンテナ受信ビームが形成される。これにより、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和することを避けている。通常の運用状態において、主アンテナ受信ビームは、電波源が存在する所望の範囲に利得を持つようにビームを形成する。例えば、通信機であれば、ユーザが居る範囲にビームを形成する。これに対して、干渉波を抑圧する際のビーム形成は、所望の範囲に利得を持ちつつ、干渉波の方向に利得を持たないように移相器群3と減衰器群4が制御される。
干渉波の方向は所望の範囲と無関係であり、所望の範囲の外である場合も所望の範囲内である場合もあり得る。特に、所望の範囲内に干渉波方向が存在する場合、所望の範囲内に利得の低い方向を作って干渉波を抑圧する。
【0064】
次に動作について説明する。
図16は、実施の形態5に係る干渉波抑圧装置の動作を示すフローチャートであって、
図16におけるステップST1aからステップST6aまでの処理は
図12と同様であるので説明を省略する。
ステップST7cにおいて、SW制御部10は、ステップST6aで電力DB部13Aに蓄積された電力値情報に基づいて、受信電力値が所定の閾値を超えている素子アンテナの素子番号を最大でK個分選別し、これらの素子番号をSW部9に出力する。
SW部9は、アレーアンテナ部1の素子アンテナ#1〜#Nの中から、SW制御部10から素子番号で指定された素子アンテナを補助アンテナとして選別し、選別した素子アンテナの受信信号をA/D変換部11AのA/D変換器#1〜#Kに出力する。
【0065】
ステップST8cにおいて、干渉波到来方向推定部23は、ステップST7cで選別された素子アンテナの受信信号をA/D変換したA/D変換部11Aの出力信号に基づいて干渉波の到来方向を推定する。干渉波到来方向推定部23が推定した干渉波到来方向情報は、BFN部2に入力される。
ステップST9cにおいて、BFN部2では、干渉波到来方向推定部23が推定した干渉波の到来方向情報に基づいて、干渉波が抑圧された主アンテナの受信ビームを形成するように、位相制御部5が、移相器群3の各移相器による移相処理を制御し、減衰制御部6が、減衰器群4の各減衰器による減衰処理を制御する。これにより、干渉波を抑圧するような主アンテナ受信ビームが形成される。
【0066】
以上のように、この実施の形態5によれば、A/D変換部11Aの各A/D変換器の出力信号に基づいて、干渉波の到来方向を推定する干渉波到来方向推定部23を備え、干渉波到来方向推定部23が推定した干渉波の到来方向情報に基づいて、干渉波が抑圧された主アンテナの受信ビームを形成するように、位相制御部5が移相器群3の各移相器による移相処理を制御し、減衰制御部6が減衰器群4の各減衰器による減衰処理を制御する。
このようにすることで、主アンテナ信号のA/D変換部8が飽和することを回避でき、十分な干渉波抑圧性能を維持しつつ、装置の規模やコストが削減することができる。
【0067】
なお、本発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。