(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037945
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】流体の収集装置及び収集方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/18 20060101AFI20161128BHJP
F16L 1/26 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
F16L55/18 B
F16L1/26
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-120058(P2013-120058)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-238116(P2014-238116A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000182937
【氏名又は名称】日鉄住金パイプライン&エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129403
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】青柳 成彰
(72)【発明者】
【氏名】福島 祐治
(72)【発明者】
【氏名】山口 英也
(72)【発明者】
【氏名】小口 憲武
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−303982(JP,A)
【文献】
特開平08−270880(JP,A)
【文献】
特開2010−084848(JP,A)
【文献】
米国特許第6004412(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/18
F16L 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を搬送する管体に生じた漏洩孔から漏洩する流体を回収するための流体の収集装置であって、
前記管体に取り付けられる取り付け具と、該取り付け具に支持された支持部材と、該支持部材に進退可能に設けられた固定部材と、前記管体の漏洩孔を閉塞して漏洩する流体を収集または封止すると共に前記固定部材で管体との間に固定される収集口部とを備えたことを特徴とする流体の収集装置。
【請求項2】
前記取り付け具は、管体に固着可能なマグネットを備えてなる請求項1に記載された流体の収集装置。
【請求項3】
前記収集口部にはホースが連結されており、前記漏洩孔から漏洩した流体を収集口部からホースを通して収集するようにした請求項1または2に記載された流体の収集装置。
【請求項4】
前記管体は海底に設置されるパイプラインである請求項1乃至3のいずれか1項に記載された流体の収集装置。
【請求項5】
流体を搬送する管体に生じた漏洩孔の両側または片側に取り付け具を取り付ける工程と、前記漏洩孔を収集口部で塞ぐ工程と、前記取り付け具に設けた固定部材を進退させて前記収集口部を管体の漏洩孔に押圧して該漏洩孔を閉塞するようにしたことを特徴とする流体の収集方法。
【請求項6】
前記取り付け具は、管体に固着可能なマグネットを備えてなる請求項5に記載された流体の収集方法。
【請求項7】
前記取り付け具と支持部材と固定部材は予め組み立てられた状態で、前記管体に取り付け具を取り付けるようにした請求項5または6に記載された流体の収集方法。
【請求項8】
前記管体は海底に設置されるパイプラインである請求項5乃至7のいずれか1項に記載された流体の収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば海底に敷設されたガス等の流体を搬送するパイプラインに腐食や損傷等で生じた漏洩孔を閉塞して、漏洩孔から漏出する流体を回収するようにした流体の収集装置及び収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図8に示すように、海底にはガスや石油等の流体を搬送するパイプライン1が敷設されている。このパイプラインが腐食したり、航行する船の錨等が当たったりして、パイプライン1の一部のガス導管が損傷したり亀裂が生じたりして孔2(以下、漏洩孔という)ができることがあった。すると、ガス導管内部のガスや石油等が漏洩孔2から海中に噴出することがあった。
この場合、損傷した漏洩孔2を早急に修復しないと、ガス導管から海中に放出されたガスは拡散されて海面から大気中に放出されるが、ガスは可燃性であるために海上において火災等の二次災害が発生する可能性があった。
【0003】
このような場合、二次災害を防ぐために、またガスの大量放出を抑制するために、可能な限り速やかに漏洩孔2からのガスの噴出を止める必要があった。しかし、上述のように、漏洩孔からのガスの噴出を迅速に止めるための有効な手段がなかったため、ガス導管の大掛かりな修理が終了するまで、漏洩孔からガスが漏れっぱなしであった。
また、ガス導管の漏洩孔2を修理する際、パイプライン1のガス搬送を止めて修理するため、ガス圧が低下するので、パイプライン1を海底に設置した場合には、漏洩孔2からガス導管内に海水が侵入してしまうという不具合があり、修復作業が複雑且つ大規模化してしまうことが懸念された。
【0004】
また、ガス導管に漏洩孔2が発生した場合、漏洩孔2を応急的に塞いで修理する器具として、例えば特許文献1に開示された応急封止具が提案されている。この応急封止具は、ガス導管に生じた漏洩孔2を塞ぐために、内面に凹陥部が形成されたシール材を接着した添え板に遮断弁を備えた放散管を連結し、放散管をシール材の凹陥部に連通させている。
【0005】
この応急封止具のシール材をガス導管の漏洩孔2に押し当てて漏洩孔2をシール材で包囲する。そして、放散管の両側で2本のベルトで添え板とガス導管を巻き付けて、シール材がガス導管の外面に密着するようにベルトを締め付ける。
そうすると、ガス導管の漏洩孔から漏れ出すガスは凹陥部から放散管を通って放出されると共に、放散管の遮断弁のコックを閉じればガスの放散が止まり、シール材のシール効果によってガス漏れを応急的に防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−229289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された応急封止具は、地中の埋設管等を対象とするものであり、海底に敷設されたパイプラインでは、バンドを添え板とガス導管に巻くときにパイプラインが設置されている海底の岩盤や砂等が邪魔になってバンドをガス導管の下側に通すことが困難であり、漏洩孔の迅速な補修ができないという欠点があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、管体に生じた漏洩孔から流体が外部に漏洩することを迅速に抑制するようにした流体の収集装置及び収集方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、海底に設置された管体に生じた漏洩孔から流体が外部に漏洩することを迅速に抑制するようにした流体の収集装置及び収集方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による流体の収集装置は、流体を搬送する管体に生じた漏洩孔から漏洩する流体を回収するための流体の収集装置であって、管体に取り付けられる取り付け具と、取り付け具に支持された支持部材と、支持部材に進退可能に設けられた固定部材と、管体の漏洩孔を閉塞して漏洩する流体を収集または封止すると共に固定部材で管体との間に固定される収集口部とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、収集装置の取り付け具を管体に取り付けた状態で、収集口部で管体の漏洩孔を塞いで、更に固定部材によって収集口部を漏洩孔側に押圧して固定することで漏洩孔を閉塞でき、漏洩孔から漏出する流体は収集口部から収集または封止できる。
【0010】
また、取り付け具は、管体に固着可能なマグネットを備えていることが好ましい。
取り付け具をマグネットで漏洩孔の近くの管体に吸着固定することで、収集口部で漏洩孔を塞いだ状態で支持部材から延びる固定部材によって収集口部を漏洩孔に押圧する方向に押圧して閉塞し固定できる
【0011】
また、収集口部にはホースが連結されており、漏洩孔から漏洩した流体を収集口部からホースを通して収集するようにしてもよい。
漏洩孔から漏洩する流体を、管体の漏洩孔を塞ぐ収集口部に設けたホースを通して収集することができて、その後、流体の漏出量の測定や脱臭処理、焼却処理等の各種の処理が行える。
【0012】
また、管体は海底に設置されるパイプラインであってもよい。
管体が海底に設置されるパイプラインであると、管体の漏洩孔を修理する場合、管体内の流体の圧力を海水より低下させると海水が流入して補修が大規模になってしまうが、本発明によれば収集装置によって流体を収集できるため、流体の圧力を低下させることなく応急処理を施した上で、本格的な補修を行える。
【0013】
本発明による流体の収集方法は、流体を搬送する管体に生じた漏洩孔の両側または片側に取り付け具を取り付ける工程と、漏洩孔を収集口部で塞ぐ工程と、取り付け具に設けた固定部材を進退させて収集口部を管体の漏洩孔に押圧して該漏洩孔を閉塞するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、収集装置の取り付け具を管体に取り付けた状態で、収集口部で管体の漏洩孔を塞いで、更に固定部材によって収集口部を漏洩孔側に押圧して漏洩孔を閉塞できるため、漏洩孔から流体が漏洩することを迅速に抑えることができる。
【0014】
また、取り付け具は、管体に固着可能なマグネットを備えてなることが好ましい。
取り付け具をマグネットで漏洩孔の近くの管体に吸着固定できるから、管体の裏面に岩盤や砂等の邪魔物があったとしても簡単且つ迅速に取り付け部を管体に取り付けて収集口部で漏洩孔を塞ぐことができる。
【0015】
また、取り付け具と支持部材と固定部材は予め組み立てられた状態で、管体に取り付け具を取り付けることが好ましい。
管体に生じた漏洩孔を収集口部で塞ぐ場合、取り付け具と支持部材と固定部材からなる取付機構が予め組み立てられているから、組立作業を省いて迅速に取り付け部を管体に取り付けることができて、漏洩孔を塞いだ収集口部を固定部材で押圧して閉塞できるため、漏洩孔の閉塞作業の工程数が少なく作業が迅速に漏洩孔を閉塞できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による漏洩流体の収集装置及び収集方法によれば、取り付け具を管体に取り付けた状態で、収集口部で管体の漏洩孔を塞いだ後、固定部材によって収集口部を漏洩孔側に押圧して漏洩孔を閉塞して固定でき、漏洩孔から漏出する流体は速やかに収集口部を通して収集または封止できる。
しかも、管体と収集口部をバンドで巻きつける必要もないため、管体の設置位置が海底等の不自由な場所であっても、迅速且つ容易に漏洩孔を収集口部で閉塞できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による収集装置を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す収集装置の取付機構を示すものであって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図3】収集口部を構成するエルボ継手と開口を備えたニップルを示すもので、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【
図4】実施形態による収集装置の収集方法を示す図であって、取付機構をパイプラインのガス導管に設置した工程を示す図である。
【
図5】(a)は収集口部をガス導管の漏洩孔に近づける工程の図、(b)は収集口部を漏洩孔に重ねた工程の図である。
【
図6】固定ボルトを押し込んで収集口部をガス導管の漏洩孔に押し付け固定した状態を示す図である。
【
図7】実施形態による収集装置を海底に設置したパイプラインのガス導管の漏洩孔に設置して、収集口部のホースを海上の作業船に接続してガスを回収する状態を示す図である。
【
図8】従来のパイプラインのガス導管に生じた漏洩孔からガスが海上まで漏洩する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の
図1乃至
図7を参照して、本発明の実施形態によるガスの収集装置と収集方法について説明するが、上述した従来技術と同一部分または部材には同一の符号を用いるものとする。
本実施形態におけるガスの収集装置10は、例えば海水より高圧のガスを搬送するためのパイプライン1を海底に設置した状態で、その一部の管体であるガス導管1aに漏洩孔2が生じた場合に噴出するガスを回収するための装置である。
図1に示すガスの収集装置10は、取り付け具としての一対の取り付け部11と、これら取り付け部11間に設置された支持部材としての支持プレート12と、支持プレート12の中央孔12aに貫通して設置された固定部材としての固定ボルト13とを備えた門型の取付機構14を有している。
【0019】
そして、ガスの収集装置10は、取付機構14とは別の部材として、
図3及び
図5に示すように、ガス導管1aの漏洩孔2から噴出するガスを回収するための収集口部9として、略L字状のエルボ継手16が設けられている。このエルボ継手16の一端部にはガス回収用の開口17aを有するニップル17が設けられ、このニップル17の開口17aには弾性部材としてリング状の接触ゴム18が接着されている。エルボ継手16の他端側にはホースニップル17bを介してホース19が連結され、ホース19は例えば海上の作業船まで延びている。
このエルボ継手16の開口17aを、ガス導管1aに生じた漏洩孔2に対向させて漏洩孔2を接触ゴム18で気密に塞ぐことで、漏洩孔2から噴出するガスをエルボ継手16を通してホース19内に誘導できる。
【0020】
図1及び
図2に示す取付機構14において、取り付け部11は一対設けられていて、金属製のガス導管1aに吸着されるマグネット21と、マグネット21の上部に連結された軸部材20とが設けられている。マグネット21は永久磁石と電磁石のいずれでもよいが、電流によってON,OFFを切り替え制御できる電磁石を用いることが好ましい。
取り付け部11のマグネット21の底面21aは、正面方向から見るとガス導管1aの曲面に沿って凹曲面形状に形成され(
図1参照)、しかも、底面21aは凹曲面に直交する側面方向から見ると中央部にガス導管1aに非接触となる凹部21bが形成されている(
図2(b)参照)。
また、取り付け部11の軸部材20には雄ネジが切られており、この軸部材20には複数、例えば3個のナット22が螺合されている。支持プレート12にはその長手方向の両端に貫通孔23と長孔24とが形成され、これら貫通孔23と長孔24には各軸部材20が挿通されている。
【0021】
ここで、複数のナット22において、支持プレート12とマグネット21の間に配置されたものは高さ調整用のナット22aであり、任意の数を選択できる。支持プレート12の上に配置されたナット22は軸部材20へ支持プレート12を締め込み固定する固定ナット22bである。
また、支持プレート12において、固定ナット22bを軸部材20に締め付ける前に、一方の取り付け部11と他方の取り付け部11との間隔を支持プレート12に形成した長孔24の範囲で調整できる。なお、貫通孔23についても長孔に形成してもよく、この場合には一対の取り付け部11の間隔を調整できる範囲が広がる利点がある。
【0022】
また、支持プレート12の中央に形成された中央孔12aの上面(下面でもよい)には締結ナット26が固着されており、中央孔12aを通して締結ナット26には固定ボルト13が螺合されている。そのため、固定ボルト13を正逆回転することで固定ボルト13は支持プレート12の下方または上方に進退可能とされている。
本実施形態によるガスの収集装置10は、エルボ継手16が略L字状に屈曲され、その他端にホース19が接続された構成であるから、エルボ継手16の開口17aでガス導管1aの漏洩孔2を塞いだ状態で、取付機構14の固定ボルト13でエルボ継手16の上面を押圧して固定することができるようになっている。
【0023】
本実施形態による収集装置10は上述の構成を備えており、次にこの収集装置10を用いた漏洩ガスの収集方法について
図4乃至
図7を中心に説明する。
海底に設置されているパイプライン1のガス導管1aに腐食や錨が衝突すること等によって、ガス導管1aが損傷・破損して漏洩孔2が生じると、搬送される加圧ガスが漏洩孔2から海中に噴出することになる(
図8参照)。このような事故を作業員のダイバーが発見することで、収集装置10によって応急的に漏洩孔2からガス漏出を止めるための収集処理を速やかに行う。
【0024】
まず最初に、海上の作業船で、収集装置10の門型の取付機構14を予め組み立てておく。即ち、一対の取り付け部11間に、固定ボルト13を装着した支持プレート12を仮止めした取付機構14を組み立てる。そして、作業員のダイバーが取付機構14とホース19付きの収集口部9を持って海底に潜る。
海底に設置されたパイプライン1の漏洩孔2が生じたガス導管1aの位置に到達すると、
図4において、取付機構14は漏洩孔2を挟んでガス導管1aの周方向または長手方向の両側に一対の取り付け部11を対向させて配置させ、支持プレート12の固定ボルト13が漏洩孔2の真上に位置するように、支持プレート12の長孔24によって一対の取り付け部11の間隔を調整する。
【0025】
次に、各マグネット21をONして、各取り付け部11の底面21aの凹曲面をガス導管1aの曲面に吸着させて固定する。
こうして、
図4に示すように、一対の取り付け部11間に位置する漏洩孔2から漏洩ガスが支持プレート12方向に噴出することになる。
【0026】
次に、
図5(a)に示すように、作業者のダイバーは、ガス導管1aの漏洩孔2上に、収集用のホース19の先端に設けた収集口部9を移動させ、ニップル17の開口17aを漏洩孔2と支持プレート12の固定ボルト13との間に設置させる。そして、ニップル17の開口17aを、密着性の高い接触ゴム18を介して漏洩孔2に押圧して塞ぎ、噴出ガスが収集用のホース19内へ流動するように調整する。
この状態で、支持プレート12に設けた固定ボルト13を締結ナット26に対して締め込み、固定ボルト13の先端でエルボ継手16をガス導管1aの漏洩孔2に強固に押し付けて開口17aの接触ゴム18で気密に固定する。
【0027】
こうして、海底に設置したガス導管1aの漏洩孔2は応急的に収集口部9に設けたニップル17と接触ゴム18で閉塞することができて、
図7に示すようにエルボ継手16に連結したホース19を経由して海上に設けた作業船に漏洩ガスを移送させ、回収することができる。
そのため、漏洩孔2が発見されると、迅速に収集装置10の収集口部9を漏洩孔2に取り付けて漏洩孔2から噴出する漏洩ガスを応急的に回収して漏洩ガスの拡散防止と二次災害の予防とを実行できる。また、作業船上でガス漏出量の測定や漏洩ガスの脱臭、焼却または回収等の処理を行うことができる。
そして、収集装置10で漏洩ガスを応急的に回収している短期間のうちに、別の機器を準備して漏洩孔2を埋設する等して、漏洩孔2の強固で永続的な補修を行うことができる。
【0028】
上述のように本実施形態による漏洩ガスの収集装置10と収集方法によれば、漏洩孔2を生じたガス導管1aが海底に設置されていても、収集装置10の一対の取り付け部11に設けたマグネット21をガス導管1aに吸着固定して、漏洩孔2を収集口部9の開口17aで閉塞して固定ボルト13で押圧固定できるから、漏洩孔2の応急的な閉塞とガスの回収を迅速且つ簡単に吸着固定できる。
しかも、収集口部9は、ニップル17の開口17aを接触ゴム18を介して漏洩孔2に押し付けてエルボ継手16の背面を固定ボルト13で漏洩孔2に押しつけることで強固に気密に封止固定できるから、上述した従来技術のように、ガス導管1aの漏洩孔2を封止具で覆ってバンドで巻回固定するものと比較して、迅速且つ簡単に収集口部9をガス導管1aに固定できる。
【0029】
また、収集口部9の開口17aで漏洩孔2を閉塞することで、漏出するガスをホース19を通して作業船まで移送して回収できるため、ガスの漏出量の測定や脱臭、焼却等のガス処理等が可能であり、漏出したガスの海上での処理が容易である。
しかも、漏洩孔2を開口17a及び接触ゴム18で塞いでエルボ継手16を固定ボルト13で押圧することによって、漏洩孔2からのガスの漏洩を防止できるから、ガス導管1a内のガス圧を維持した状態で漏洩ガスの回収が可能であるため、漏洩孔2から海水が侵入することを防止できる。
また、収集口部9によって漏洩孔2からのガス噴流・漏れを低減できるため、ガス導管1aの内圧を維持できて漏洩孔2から海水の侵入を防止できると共に、漏洩するガス噴流を低減させて漏洩孔2付近の気泡が生じないから、海底付近での修復準備作業を行うダイバーの作業員の視界を確保できて負担を軽減できる。
【0030】
なお、本発明の実施形態によるガスの収集装置10を用いて、ガスを搬送するパイプライン1のガス導管1aに生じた漏洩孔2からガスが海中に噴出することを抑制して回収できる漏洩孔2の径は、例えば内径が5mm程度以下であり、パイプライン1におけるガスの内部圧力は例えば2MP程度またはそれ以下であることが好ましい。
【0031】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を変更しない範囲で上述した実施形態の構成を適宜変更することができる。
例えば、上述した実施形態によるガスの収集装置10とこれを用いた収集方法では、海底に設置したパイプライン1のガス導管1aに漏洩孔2が生じた場合に、漏洩孔2から噴出する圧力ガスを緊急に回収する収集装置10であるが、本発明は、海底のガス導管1aに限定されることなく、地上や地中に設置したガス導管1aのガス漏れ等にも対応できる。
【0032】
なお、上述の実施形態では、漏洩孔2から噴出する流体は天然ガス等のガスであるとしたが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。その他の不活性ガスや活性ガス等の気体、石油等の流体等、適宜の圧力を有するこれら流体を搬送するパイプライン1において、その一部であるガス導管1aに腐食や損傷等で生じた漏洩孔2から外部に流体が噴出する事故や緊急事態に対して、漏洩孔2を閉塞して流体を収集するような各種の収集装置10とその収集方法に本発明を適用できる。
【0033】
なお、上述の実施形態では、収集装置10では、エルボ継手16とニップル17の開口17aを備えた収集口部9にホース19を接続したが、収集口部9には必ずしもホース19を設ける必要がなく、ニップル17の開口17aまたはエルボ継手16で漏洩孔2を封止してガスを導管1aから噴出させないようにしてもよい。
また、上述した収集装置10は取り付け部11を一対設けて支持プレート12を支持させ、支持プレート12に設けた固定ボルト13でエルボ継手16を押圧するようにしたが、この構成に代えて取り付け部11を片方だけ設けて固定ボルト13を設置した支持プレート12を片持ち支持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 パイプライン
1a ガス導管
2 漏洩孔
9 収集口部
10 収集装置
11 取り付け部
12 支持プレート
13 固定ボルト
14 取付機構
16 エルボ継手
17 ニップル
17a 開口
18 接触ゴム
19 ホース
20 軸部材
21 マグネット