(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037957
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】滑走制御システム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/66 20060101AFI20161128BHJP
B60T 8/32 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
B60T8/66 Z
B60T8/32
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-138691(P2013-138691)
(22)【出願日】2013年7月2日
(65)【公開番号】特開2015-9758(P2015-9758A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100137383
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 朋希
【審査官】
佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−258648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12− 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる車軸の滑走防止制御を独立に行う2以上の滑走防止装置と、
第1の前記滑走防止装置の対象の第1の車軸に滑走防止制御が行われることを検知する滑走制御検知部と、
前記第1の車軸に滑走防止制御が行われている場合に、前記第1の滑走防止装置とは異なる第2の前記滑走防止装置の対象の、第2の車軸の滑走防止制御を抑止する滑走制御抑止部と、
を備え、
前記滑走制御検知部は、前記第1の車軸の滑走防止弁に対する指令制御線の電気量を検出し、
前記滑走制御抑止部は、前記第2の車軸の滑走防止弁に対する指令制御線を開閉するスイッチを含み、
前記滑走制御抑止部は、前記第1の車軸に滑走防止制御が行われている場合に、前記スイッチを開いて、前記第2の車軸の滑走防止弁に対する指令を遮断する、
滑走制御システム。
【請求項2】
それぞれが異なる車軸の滑走防止制御を独立に行う2以上の滑走防止装置と、
第1の前記滑走防止装置の対象の第1の車軸に滑走防止制御が行われることを検知する滑走制御検知部と、
前記第1の車軸に滑走防止制御が行われている場合に、前記第1の滑走防止装置とは異なる第2の前記滑走防止装置の対象の、第2の車軸の滑走防止制御を抑止する滑走制御抑止部と、を備え、
前記滑走制御検知部は、前記第1の滑走防止装置が出力する前記第1の車軸の滑走防止弁の作動信号から前記第2の車軸の滑走防止制御を抑止する前記第2の車軸の滑走防止弁を表すビットパターンを生成し、
前記滑走制御抑止部は、前記ビットパターンをビットごとに反転し、前記第2の滑走防止装置が出力する前記第2の車軸の滑走防止弁の作動信号とのビットごとの論理積をとって、前記第2の車軸の滑走防止弁に対する指令制御線に出力する、
滑走制御システム。
【請求項3】
前記第1の滑走防止装置と前記第2の滑走防止装置はそれぞれ、2以上の車両が連結された列車の異なる車両の車軸を対象とする、請求項1または2に記載の滑走制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2台以上の滑走制御装置を備える車両の滑走制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両にブレーキをかけたとき、ブレーキ力より車輪とレールの粘着力が小さく、車輪が回転せずレール上を滑る滑走状態が起こる場合がある。滑走状態が起こると車両の操縦安定性が失われ、また、車輪が損傷することがある。そこで、車輪の滑走を検知して、滑走が発生したときに制輪子の圧力を弱めて、車輪とレールの粘着を回復する滑走防止制御が行われている(非特許文献1参照)。
【0003】
例えば特許文献1に記載されているように、滑走防止制御は、車輪の速度を検出する速度センサからの速度入力により滑走検知器にて滑走を判定し、滑走している場合に制輪子の圧力を調節する。例えば、滑走防止弁を制御して、ブレーキ制御装置にて出力する空気圧をブレーキシリンダから排気し、ブレーキシリンダ圧を調節することで滑走防止制御を実施している。
【0004】
滑走防止制御は、車輪または車軸ごとに独立に行われることがあるが、複数の車輪を関連づけて、滑走防止制御を行うこともある。例えば特許文献2では、車両のすべての車輪が許容できない程すべった時にも、実際の走行速度に関して所定の最適なすべりに制御する。最後のまだスリップしていない車輪が正常な摩擦状態を逸脱したとき、これを“最後にスリップした車輪”と呼ぶ。最後にスリップした車輪に対してその正常な摩擦状態を可及的速やかに回復させ、そのとき他の車輪が徐々にその正常な摩擦状態を回復するのを待つ必要がないようにする。
【0005】
特許文献3は、複数車両を連結した列車編成車両において、編成内各車両の車軸滑走頻度が連結車両位置に関係なく一様となるように車両内ブレーキ力を制御する列車ブレーキ分散制御方法を開示する。
【0006】
特許文献4のアンチスキッド制御装置は、各車輪がアンチスキッド制御移行条件となる前に、所定のロック傾向が生じた車輪に対してブレーキ圧の増圧を抑制する増圧抑制手段と、該増圧抑制手段によるブレーキ圧の増圧の抑制を、車両の少なくとも1輪に対して禁止する増圧抑制禁止手段とを備える。
【0007】
特許文献5のブレーキ制御装置は、複数の車軸が同時に滑走したことが検知されかつそのときの基準軸速度が模擬基準軸速度にあるとき、その滑走速度と基準軸速度との速度差が所定値以下で、かつ軸速度が所定の減速度になったときを再粘着として検知するようになし、再粘着の検知に基づいて滑走検知による滑走検知信号をOFFして再びブレーキ力を作用させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−319243号公報
【特許文献2】特開平1−119464号公報
【特許文献3】特開平5−294237号公報
【特許文献4】特開平7−329757号公報
【特許文献5】特開2007−210396号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】鉄道車両新指導書編集委員会編集、鉄道車両新指導書−ブレーキ編−、2004年3月発行、社団法人 日本鉄道車両機械技術協会、231頁−243頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
滑走防止制御において複数軸が同時に滑走した場合、例えば1号車の全軸および2号車の全軸が同時に滑走した場合、各軸単位に独立に滑走防止制御を行う方法では、場合によっては全ての軸が同時にブレーキシリンダから排気することになる。その場合、車両は一時的にノンブレーキ状態となり車両減速度が著しく変化し乗り心地の悪化を招くケースがある。
【0011】
特許文献3では、車軸滑走頻度が一様になるようにブレーキ力を制御するが、複数の軸で同時に滑走が起こる場合について考慮していない。特許文献4のアンチスキッド制御装置は、1つの滑走制御装置の中での制御を開示しているだけであって、それぞれが異なる車軸の滑走防止制御を独立に行う複数の滑走制御装置を備える車両については考慮していない。また、特許文献5は、全ての軸が同時に滑走した場合に、滑走防止制御を行う軸を選択しているわけではない。
【0012】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、それぞれが異なる車軸の滑走防止制御を独立に行う複数の滑走制御装置にまたがる複数の軸で、同時に滑走防止制御を行うことを抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するため、本発明の観点に係る滑走制御システムは、それぞれが異なる車軸の滑走防止制御を独立に行う2以上の滑走防止装置を含む。滑走制御システムは、第1の滑走防止装置の対象の第1の車軸に滑走防止制御が行われることを検知する滑走制御検知部と、第1の車軸に滑走防止制御が行われている場合に、第1の滑走防止装置とは異なる第2の滑走防止装置の対象の、第2の車軸の滑走防止制御を抑止する滑走制御抑止部と、を備える。
滑走制御検知部は、第1の車軸の滑走防止弁に対する指令制御線の電気量を検出し、滑走制御抑止部は、第2の車軸の滑走防止弁に対する指令制御線を開閉するスイッチを含む。滑走制御抑止部は、第1の車軸に滑走防止制御が行われている場合に、スイッチを開いて、第2の車軸の滑走防止弁に対する指令を遮断する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1の滑走防止装置の対象の第1の車軸に滑走防止制御が行われることを検知して、第2の滑走防止装置の対象の第2の車軸の滑走防止制御を抑止するので、それぞれが異なる車軸の滑走防止制御を独立に行う複数の滑走制御装置にまたがる複数の軸で、同時に滑走防止制御を行うことを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る滑走制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態2に係る滑走制御システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図中、同一または相当する部分には同じ符号を付す。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る滑走制御システムの構成例を示すブロック図である。
図1は、1号車と2号車の2両が連結された車両の場合の一例を示す。滑走制御システムは、1号車と2号車それぞれの滑走防止装置1を含む。滑走防止装置1は、滑走制御部11、車軸21、22、23、24ごとの供給停止弁12(AV弁)、排出弁13(RV弁)および回転速度センサ6から構成される。
図1において、実線は作動流体の経路を示す。また、破線は電気信号の経路を示す。図では、回転速度センサ6から滑走制御部11への信号線を省略している。
【0018】
1号車と2号車それぞれのブレーキ制御装置5、滑走防止装置1、車軸21、22、23、24ごとのブレーキシリンダ4および制輪子3は、各車両のブレーキ装置を構成する。
【0019】
図1には示されていないが、運転台からのブレーキ指令がブレーキ制御装置5に入力される。また、車両にかかる荷重の値がサスペンションの圧力センサからブレーキ制御装置5に入力される。ブレーキ制御装置5は、ブレーキ指令と車両の荷重から必要なブレーキ力を算出し、それに応じた作動流体のブレーキ圧をブレーキシリンダ4に供給する。ブレーキ圧が供給されたブレーキシリンダ4は、制輪子3を車輪2に押しつけ、ブレーキ力を発生させる。
【0020】
ブレーキ制御装置5は、例えば、ブレーキ制御ユニット、ブレーキ制御弁および中継弁など(いずれも図示せず)から構成される。ブレーキ制御弁は、作動流体である空気を中継弁に供給する電磁弁と、中継弁から空気を排出する電磁弁から構成される。これらの電磁弁は、ブレーキ制御ユニットで制御される。ブレーキ制御ユニットは、ブレーキ制御弁と中継弁の出力側の圧力が、指令されたブレーキ力に対応する圧力になるように、ブレーキ制御弁を制御する。中継弁は、ブレーキ制御弁側から入力された空気圧を増幅して、ブレーキシリンダ4に供給する。すなわち、中継弁からブレーキシリンダ4に供給される空気の圧力は、ブレーキ制御弁の出力側の圧力に比例して調節される。
【0021】
滑走防止装置1では、ブレーキ制御装置5からブレーキシリンダ4への作動流体の経路の途中に、供給停止弁12が配置されている。また、供給停止弁12とブレーキシリンダ4の間に排出弁13が接続される。供給停止弁12と排出弁13は、合わせて滑走防止弁を構成する。滑走制御部11が滑走していないと判断している間は、通常、供給停止弁12は開であり排出弁13は閉であって、ブレーキ制御部からのブレーキ圧はそのままブレーキシリンダ4に供給される。
【0022】
滑走制御部11は、回転速度センサ6の出力から車輪2が滑走していると判断すると、供給停止弁12と排出弁13を作動させて、滑走防止制御を行う。例えば、車輪2が滑走していると判断するとまず、その車軸の供給停止弁12を閉じて、そのときのブレーキ圧を保持し、それ以上にブレーキ圧がかからないようにする。それでもなお、車輪2とレールの粘着が回復傾向にならない場合、さらに、排出弁13を開いて、ブレーキシリンダ4にかかっているブレーキ圧を減少させ、制輪子3と車輪2の間の圧力を低下させる。滑走防止装置1は、滑走状態が解消したと判断すると、排出弁13を閉じ、供給停止弁12を開いて、再びブレーキ圧をブレーキシリンダ4に供給する。
【0023】
1号車の滑走防止装置1と2号車の滑走防止装置1は、それぞれ独立に滑走防止制御を行う。滑走制御部11は、4つの車軸21、22、23、24で独立に滑走防止制御を行ってもよいし、4つの車軸21、22、23、24を関連づけてそれらの滑走状況に応じて滑走防止制御を行ってもよい。例えば、4つの車軸21、22、23、24の滑走していると判断される車軸のうち、最も滑り率が大きい(回転速度が小さい)ものから順に決まった数まで、例えば、2つまでの車軸で滑走防止制御を行うようにしてもよい。
【0024】
図1の例では、2号車の車軸21の供給停止弁12と排出弁13への指令制御線10にそれぞれ、滑走制御検知部14が配置されている。また、1号車の車軸21の供給停止弁12と排出弁13への指令制御線10にそれぞれ、滑走制御抑止部15が配置されている。滑走制御検知部14は、例えば、指令制御線10の電流を検知するコイルである。滑走制御抑止部15は、例えば、指令制御線10を開閉するスイッチである。2号車の車軸21の供給停止弁12の滑走制御検知部14と、1号車の車軸21の供給停止弁12の滑走制御抑止部15は信号線16で接続されている。また、2号車の車軸21の排出弁13の滑走制御検知部14と、1号車の車軸21の排出弁13の滑走制御抑止部15は信号線16で接続されている。滑走制御検知部14で、作動信号を検知すると、滑走制御抑止部15であるスイッチが開いて、作動信号を遮断する。作動信号が遮断された供給停止弁12(または排出弁13)は作動せず、その車軸の滑走防止制御が抑止される。
【0025】
滑走制御検知部14はコイルに限らず、電圧を検知してもよいし、フォトカプラなどを用いて作動信号を検出してもよい。検出した信号そのままでは、滑走制御抑止部15を作動できない場合は、途中で増幅してもよい。
【0026】
滑走制御検知部14と滑走制御抑止部15を配置する車軸は、
図1の例に限らない。例えば、1号車の車軸24に滑走制御検知部14を配置し、それに対応して2号車の車軸24に滑走制御抑止部15を配置することができる。また、
図1の構成に加えて、1号車の車軸21に滑走制御検知部14を配置し、2号車の車軸21に滑走制御抑止部15を配置することもできる。この場合は、1号車の車軸21と2号車の車軸21とで、先に滑走防止制御が行われた車両の車軸21が優先し、その車軸21の滑走防止制御が行われている間は、他方の車両の車軸21の滑走防止制御が抑止される。
【0027】
滑走制御検知部14と滑走制御抑止部15とは、1対1に限らない。例えば、2号車の複数の車軸に滑走制御検知部14を配置し、それらの出力の論理和または論理積で、1号車のある車軸の滑走防止制御を抑止するように構成することができる。さらに、滑走制御システムは、3両以上が連結された車両に適用することができる。複数の滑走防止装置1、例えば2号車と3号車(図示せず)の滑走防止装置1のそれぞれに配置した滑走制御検知部14の出力の論理和または論理積で、1号車のある車軸の滑走防止制御を抑止するように構成することもできる。あるいは、1つの滑走制御検知部14の出力で、2以上の車軸の滑走防止制御を抑止するように構成することもできる。例えば1号車の車軸21に滑走制御検知部14を配置し、それに対応して2号車の車軸21と3号車の車軸21に滑走制御抑止部15を配置して、1号車の車軸21で滑走防止制御されている間は、2号車の車軸21と3号車の車軸21の滑走防止制御を抑止することができる。
【0028】
実施の形態1に係る滑走制御システムは、車両ごとに1つの滑走制御部11が搭載される車両に限らない。例えば、車両の台車ごとに滑走制御部11が設けられて、台車ごとに滑走防止制御を独立に行う車両に適用することができる。その場合、例えば、1つの車両の前の台車の車軸の滑走防止制御を検知して、後ろの台車の車軸の滑走防止制御を抑止する構成にすることができる。
【0029】
車両が走行する路線、車両の運転パターン、および乗車分布など、車両の運用状況に合わせて、滑走制御検知部14と滑走制御抑止部15とを配置する車軸の組み合わせを任意に選択することができる。それぞれが異なる車軸の滑走防止制御を独立に行う複数の滑走防止装置1において、少なくとも1つの滑走防止装置1の1つの車軸に滑走制御検知部14を配置し、それに対応して、他の1つの滑走防止装置1の1つの車軸に滑走制御抑止部15を配置することによって、その2つの滑走防止装置1の対象の全ての車軸で同時に滑走防止制御が行われることを防止できる。
【0030】
実施の形態1の滑走制御システムによれば、それぞれが異なる車軸の滑走防止制御を独立に行う複数の滑走防止装置1にまたがる複数の軸で、同時に滑走防止制御を行うことを抑止することができる。実施の形態1では、滑走防止弁に対する指令制御線10の電気量を検出し、信号線で直に滑走制御抑止部を作動させるので、滑走防止制御の抑止に要する時間が極めて短い。
【0031】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2に係る滑走制御システムの構成例を示すブロック図である。実施の形態2では、2つの滑走防止装置1の間でデータ通信する。
図2の滑走制御システムでは、
図1の滑走制御検知部14および滑走制御抑止部15に代えて、滑走制御送信部17、滑走制御受信部18および滑走制御抑止部19を備える。滑走制御送信部17と滑走制御受信部18は、通信線20で接続されている。滑走制御送信部17と滑走制御受信部18とは、例えば、RS485などのシリアル通信、または、各滑走制御部11がハブもしくはバスで接続されるLAN(Local Area Network)で通信する。
【0032】
滑走制御送信部17は、2号車の滑走制御部11が出力する供給停止弁12および排出弁13の作動信号をデータとして、滑走制御受信部18に送信する。例えば、滑走制御部11から各供給停止弁12および排出弁13への信号をビットに見立てて、定期的にラッチする。そして、そのビットパターンをデータとして、滑走制御受信部18に送信する。
【0033】
滑走制御受信部18は、受信したデータから滑走防止制御を抑止する供給停止弁12および排出弁13を表すビットパターンを生成し、滑走制御抑止部19に送る。
図1の例と同じ組み合わせの場合、2号車の車軸21の供給停止弁12および排出弁13の作動信号を表すビットから、1号車の車軸21の供給停止弁12および排出弁13の作動信号を抑止するビットが生成される。滑走制御送信部17と滑走制御受信部18とを合わせて、滑走制御検知部と見なすことができる。
【0034】
滑走制御抑止部19では、滑走制御受信部18から送られたビットパターンをビットごとに反転し、1号車の各供給停止弁12および排出弁13への作動信号とのビットごとの論理積をとって、それぞれ、供給停止弁12および排出弁13への指令制御線10に出力する。したがって、抑止するビットが立っている供給停止弁12および排出弁13への作動信号は指令制御線10に出力されない。
【0035】
滑走制御受信部18で、受信したデータから滑走防止制御を抑止する供給停止弁12および排出弁13を表すビットパターンをどのように生成するかは、任意に設定できる。例えば、実施の形態1で説明したように、様々な抑止するビットパターンを生成することができる。また、滑走制御抑止部19でこのビットパターンを生成してもよい。
【0036】
図2の構成に加えて、1号車の滑走制御部11に滑走制御送信部17を備え、2号車の滑走制御部11に滑走制御受信部18および滑走制御抑止部19を備えることによって、1号車と2号車で双方向に滑走防止制御を検知する車軸と滑走防止制御を抑止する車軸の組み合わせを設定することができる。また、通信にLANを用いて、データを複数の滑走制御受信部18に送信したり、複数の滑走制御送信部17から受信すれば、1つの滑走制御部11の滑走防止制御で、複数の滑走制御部11の滑走防止制御を抑止したり、複数の滑走制御部11の滑走防止制御で1つの滑走制御部11の滑走防止制御を抑止したりできる。
【0037】
滑走防止制御を抑止するビットパターンを生成するのは、例えば、簡単なプログラムで行うことができるので、滑走防止制御を検知する車軸と滑走防止制御を抑止する車軸の組み合わせを容易に変更できる。
【符号の説明】
【0038】
1 滑走防止装置、2 車輪、3 制輪子、4 ブレーキシリンダ、5 ブレーキ制御装置、6 回転速度センサ、10 指令制御線、11 滑走制御部、12 供給停止弁(AV弁)、13 排出弁(RV弁)、14 滑走制御検知部、15 滑走制御抑止部、16 信号線、17 滑走制御送信部、18 滑走制御受信部、19 滑走制御抑止部、20 通信線、21、22、23、24 車軸。