(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る管切断機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
[実施例]
本発明に係る管切断機の実施例を
図1から
図12に基づいて説明する。
【0012】
図1〜
図4の符号1は、本実施例の管切断機を示す。これらの図は、管切断機1を円筒状の切断対象の管(以下、「切断対象管」という。)Pcに設置した状態を表している。以下においては、特に言及しない限り、その切断対象管Pcの中心軸に沿う方向を軸線方向と云い、その切断対象管Pc周りの方向を周方向という。また、その切断対象管Pcの中心軸に直交する方向を径方向と云い、その中でも、内方に向けた側を径方向内側、外方に向けた側を径方向外側という。
【0013】
この管切断機1は、切断対象管Pcを周方向に切断して輪切り状態に分断させるものである。この管切断機1においては、切断刃10を切断対象管Pcの外周面上で周方向に沿って移動させながら切断対象管Pcの切断を行う。また、この管切断機1は、一重管のみならず、少なくとも1本の内管と1本の外管とを有する多重管を切断することもできる。この管切断機1は、多重管を切断する場合、外管から内管に至るまで、その全てを外管側から順に切断対象管Pcとして切断していくことも可能であり、2本以上の内管が存在するのであれば、径方向内側に少なくとも1本以上の内管を残して切断することも可能であり、外管のみを切断対象管Pcにして切断することも可能である。
【0014】
以下においては、外管P1と内管P2とを1本ずつ備えた二重管P(
図5〜
図7)を具体例として挙げながら管切断機1の説明を行う。
【0015】
流体は、管内を移動させることによって他所へと運ぶことができる。このため、管を使った流体の運搬には、例えば、その流体の通る管を周囲から守るべく、流体が内側を通る内管P2を径方向外側から外管P1で覆った二重管Pが用いられる。例えば、二重管Pは、橋脚等の構造物Stの中を通る配管として設置され、ガス等の流体を内管P2の内側で運ぶために利用される。この二重管Pは、コンクリート等の構造物Stの構成部材によって径方向外側から覆われた状態で構造物St内に埋められている。このような埋設型の二重管Pにおいては、例えば、外的要因に基づく耐久性の低下を防ぐべく、外管P1と内管P2との間の環状の空間に樹脂モルタルまたはゴム等の充填部材Fが充填されている。
【0016】
このような利用形態の二重管Pに対しては、定期的に耐久性の低下に関わる要因が発生していないか作業者の目視や非破壊検査器で検査が実施される。先ず、外管P1については、その周囲が構造物Stの構成部材で覆われており、検査しにくいものとなっている。このため、外管P1については検査を行わず、外管P1の周囲の構造物Stをはつり取って外管P1の一部を切断し、充填部材Fをはつり取って内管P2を露出させた後、内管P2の検査及び補修を行う。
図6及び
図7は、そのはつり作業後の状態の一例を表している。このはつり作業は、例えば、ウォータージェット工法等を用いて行う。更に、構造物Stの鉄筋が外管P1の切断除去を行う際に邪魔になるため、外管P1の径方向外側における切断除去に要する可能な限り狭い範囲で鉄筋の一部分を取り除く。よって、この例示では、
図7に示すように、奥側のはつり除去範囲が手前側のはつり除去範囲よりも狭くなっている。但し、奥側のはつり除去範囲は、外管P1の径方向外側の空間に少なくとも切断刃10が配置できる範囲とする。また、手前側のはつり除去範囲は、少なくとも切断した構造物Stの鉄筋を復旧するのに必要な範囲とする。一方、内管P2については、その周囲が外管P1や充填部材Fで覆われているので、これもまた検査しにくいものとなっている。このため、内管P2については、外管P1の一部分を周方向に切断して取り除き、更に充填部材Fを取り除いてから検査を行う。
【0017】
ここで、その外管P1の切断を行うに際しては、予め行った検査で把握した又は想定される内管P2における耐久性の低下している範囲の検査と補修が行える範囲まで外管P1を切断する。また、内管P2の検査の結果、耐久性の低下に関わる要因が発生している又は耐久性の低下の虞がある補修対象部分が見つかった場合には、例えば、その補修対象部分を径方向外側から覆うように図示しないスリーブ管(内管P2の外径よりも内径が大きく、かつ、外管P1の内径よりも外径の小さい管)を配置し、このスリーブ管の両端と内管P2の外周面とを溶接することで、内管P2の補修作業を行う。
【0018】
この検査を終えた二重管Pにおいては、内管P2の補修の有無に拘わらず、一部分が除去された外管P1を補修する必要がある。その際には、外管P1における除去部分に当該外管P1と同等の径の新たな管を配置して、この管を外管P1の残存部分に機械的に接続又は溶接で固定することによって、外管P1の補修作業を行う。その後、作業者は、その外管P1と内管P2の間の空間に充填部材Fを詰め、鉄筋を除去したのであれば、その除去分を溶接等で補充し、はつり除去した箇所に構造物Stの構成部材を新たに設ける(コンクリートを打設する)。
【0019】
このように、二重管Pの検査や補修を行うに際して、この二重管Pが橋脚のような構造物Stの中に埋められている場合には、上記のように外管P1の周囲を覆っている構造物Stの構成部材を除去する必要がある。しかしながら、その構成部材の除去作業に際しては、例えば構造物Stの強度等に関する理由から、構成部材の除去を広範囲に行うことは好ましくない。このため、このような作業現場では、外管P1の径方向外側の空間(はつり除去後の環状の空間)が狭くとも当該外管P1の切断を可能にする管切断機が必要とされる。本実施例の管切断機1は、そのような狭隘な空間においても外管P1(切断対象管Pc)の切断を行えるよう構成したものである。以下、この管切断機1の構成について
図1〜
図4に基づき説明する。
【0020】
管切断機1は、切断対象管Pcの切断刃10と当該切断刃10の駆動部20とを備えた切断装置を有する。
【0021】
切断刃10は、切断対象管Pcの径方向外側で自転しながら当該切断対象管Pcを切断する円盤形の回転刃である。この切断刃10は、その中心に回転軸(自転軸)11が固定されている。この切断刃10は、切断対象管Pcの径方向外側に配置し、この径方向外側から切断対象管Pcを周方向に切断する。従って、回転軸11は、切断対象管Pcの径方向外側で軸線方向に対して平行に配置する。また、この回転軸11は、その切断対象管Pcの外周面の一部分を覆う後述するステータ31とロータ32の径方向外側に配置する。尚、この切断刃10は、切断対象管Pcに接することの無い部分がカバー12で覆われている。
【0022】
ここで、この例示では、切断対象管Pc(外管P1)の切断箇所が構造物Stにおける作業者の居る側の壁面に対して奥まった位置に存在している。このため、その回転軸11は、その奥まった位置に切断刃10が配置されるように、その構造物Stの壁面から延在させる。
【0023】
駆動部20は、切断刃10に回転軸11を介して駆動力を伝達することで、この切断刃10を自転させる。よって、この駆動部20には、動力源(図示略)が少なくとも設けられている。この駆動部20においては、エアモータや電動モータ等が動力源の具体例として考えられ、その動力源の動力が歯車等を介して駆動力として回転軸11に伝達される。この例示では、駆動部20の出力軸21が軸継手22を介して回転軸11に連結されている。その出力軸21は、回転軸11と同心の軸である。
【0024】
この駆動部20の筐体23は、作業者が切断作業を行う際のグリップ部の機能を持っている。そのグリップ部には、駆動部20を作動または停止させるオンオフスイッチ(図示略)を設けてもよい。作業者は、切断対象管Pcを切断する際に、その筐体23(グリップ部)を径方向内側に押し下げて、切断刃10を切断対象管Pcに押し付ける。
【0025】
また、この管切断機1には、切断刃10を周方向へと案内する周方向案内装置が設けられている。その周方向案内装置は、切断刃10の周方向への移動を作業者に円滑かつ簡便に実施させるためのものである。この周方向案内装置は、ステータ31とロータ32とを備える。
【0026】
ステータ31は、切断対象管Pcの外周面を覆う金属製(例えばアルミニウム)の筒状体であり、切断刃10と駆動部20との間に配置する。このステータ31は、切断対象管Pcの外径よりも径の大きい内径を有する筒部31aと、この筒部31aの軸線方向における夫々の端部に設けた環状のフランジ部31bと、を備える(
図2及び
図3)。そのフランジ部31bは、筒部31aの外周面よりも径方向外側に延在させている。
【0027】
具体的に、このステータ31は、軸線方向に対して平行に複数の部材に分割し、これらを切断対象管Pcの外周面上で一体化させることによって筒状を成す。ここでは、
図8及び
図9に示すように、半割の2つの第1及び第2のステータ部材31A,31Bに分割している。第1ステータ部材31Aは、筒部31aの一部分を成している湾曲部31a
1と、フランジ部31bの一部分を成しているフランジ部31b
1,31b
1と、を有する。また、第2ステータ部材31Bは、筒部31aの一部分を成している湾曲部31a
2と、フランジ部31bの一部分を成しているフランジ部31b
2,31b
2と、を有する。
【0028】
このステータ31は、
図10及び
図11に示すように、第1ステータ部材31Aと第2ステータ部材31Bとを切断対象管Pcの外周面上に被せ、これらを固定部31cで固定して一体化させる。その固定部31cは、例えば、第1ステータ部材31Aのフランジ部31b
1,31b
1における夫々の端部と第2ステータ部材31Bのフランジ部31b
2,31b
2における夫々の端部とを固定するものである。この固定部31cには、例えば、雄螺子と雌螺子とを有する螺子部を用いればよい。
【0029】
このステータ31には、その軸心を切断対象管Pcの軸心に合わせる軸心調整部31dが設けられている。その軸心調整部31dは、筒部31aの少なくとも3箇所に設けた雌螺子と、この雌螺子に各々螺合させる少なくとも3つの雄螺子と、を備える。その雌螺子は、筒部31aに設けた径方向の貫通穴に形成したものである。作業者は、雄螺子を雌螺子に各々取り付け、雄螺子の先端を筒部31aの内周面から突出させて切断対象管Pcの外周面に当接させる。そして、作業者は、各雄螺子の筒部31aからの突出量を調整することで、ステータ31の軸心を切断対象管Pcの軸心に合わせる。
【0030】
続いて、ロータ32は、ステータ31の外周面を覆う金属製(例えばアルミニウム)の筒状体である。この例示では、ステータ31の筒部31aの外周面を覆うようにロータ32を配置する。このロータ32は、筒部31aの外径よりも径の大きい内径を有する。また、このロータ32は、ステータ31に対する同心上での周方向の相対回転が可能である。
【0031】
具体的に、このロータ32は、軸線方向に対して平行に複数の部材に分割し、これらをステータ31の外周面上で一体化させることによって筒状を成す。また、このロータ32は、その分割体の1つに切断刃10や駆動部20等の切断装置が取り付けられている。ここでは、
図10及び
図11に示すように、半割の2つの湾曲状の第1及び第2のロータ部材32A,32Bに分割している。そして、切断装置は、第1ロータ部材32Aに設置している。
【0032】
このロータ32は、
図1及び
図2に示すように、第1ロータ部材32Aと第2ロータ部材32Bとをステータ31の筒部31aの外周面上に被せ、これらを固定部32aで固定して一体化させる。その固定部32aは、環状の第1係合部材32a
1と、この第1係合部材32a
1の環状部分に引っ掛ける爪部を備えた第2係合部材32a
2と、を有する。第2係合部材32a
2は、その爪部を引っ張るリンク機構を備える。その第1係合部材32a
1と第2係合部材32a
2は、一方を第1ロータ部材32Aの周方向における夫々の端部に設け、他方を第2ロータ部材32Bの周方向における夫々の端部に設ける。この固定部32aは、第1係合部材32a
1に引っ掛けた第2係合部材32a
2の爪部をリンク機構で引っ張ることによって、互いを係合させる。尚、この固定部32aは、第1ロータ部材32Aと第2ロータ部材32Bとに各々設けた雄螺子と雌螺子とを有する螺子部であってもよい。
【0033】
前述したように、この周方向案内装置においては、ロータ32をステータ31に対して周方向に相対回転させる。そして、このロータ32の周方向の回転は、作業者の手で行わせる。そこで、このロータ32には、その回転操作を作業者が行う際に利用する回転操作部32bを設けている。その回転操作部32bは、ロータ32を回転させる際に作業者が持つことのできる形状に成形されたものであり、例えば、ロータ32の外周面に少なくとも1つ固定している。この例示では、3つ設けている。
【0034】
また、このロータ32には、そのステータ31に対する相対回転を円滑に行うべく、相対回転時の摩擦軽減部32cを周方向で複数箇所に設けている(
図10及び
図11)。その摩擦軽減部32cは、ステータ31の外周面とロータ32の内周面との間の軸受に相当するものであり、その間に回転体を介在させている。その回転体は、ロータ32の内周面側において、その内周面からステータ31の筒部31aの外周面に向けて突出させ、かつ、その外周面に当接させるよう配置する。この回転体は、保持機構によって回転自在に保持する。例えば、その回転体とは、球体や軸ローラ等である。この例示では、球体を配置している。尚、この摩擦軽減部32cは、ステータ31側に配置してもよい。
【0035】
切断装置は、第1ロータ部材32Aに対して固定機構を介して取り付けられている。以下に、その固定機構について説明する。
【0036】
固定機構は、切断刃10の回転軸11を回転自在に保持する保持部を備える。この例示では、軸線方向において間隔を空けて配置した板状の第1及び第2の保持部41A,41Bを有する(
図2及び
図3)。第1及び第2の保持部41A,41Bには、その長手方向の一端に形成された貫通穴に例えば軸受が各々設けられている。この第1及び第2の保持部41A,41Bは、ロータ32(第1ロータ部材32A)の径方向外側に配置する。回転軸11は、その第1及び第2の保持部41A,41Bの軸受に挿入することによって、この第1及び第2の保持部41A,41Bで回転自在に保持される。
【0037】
また、この固定機構には、軸線方向に対して平行に配置され、その第1及び第2の保持部41A,41Bを回転自在に支持する支持軸42が設けられている。その支持軸42は、ロータ32(第1ロータ部材32A)の径方向外側で、かつ、第1及び第2の保持部41A,41Bの長手方向の他端に配置する。その長手方向の他端には、貫通穴が形成されており、この貫通穴に例えば軸受が設けられている。第1及び第2の保持部41A,41Bは、その他端の軸受に支持軸42を挿入することによって、この支持軸42に回転自在に支持される。つまり、その支持軸42は、回転軸11に対して間隔を空けて平行に配置される。
【0038】
また、この固定機構には、その支持軸42をロータ32(第1ロータ部材32A)に固定する固定部が設けられている。この例示では、軸線方向で間隔を空けて配置した板状の第1及び第2の固定部43A,43Bを有する。第1固定部43Aは、支持軸42の一端を回転不能な状態で保持する。一方、第2固定部43Bは、支持軸42の他端を回転不能な状態で保持する。第1及び第2の固定部43A,43Bは、例えばボルト等の螺子部材を用いてロータ32(第1ロータ部材32A)の外周面に固定する。
【0039】
このように、この固定機構は、回転軸11を介して、切断装置(切断刃10や駆動部20等)をロータ32(第1ロータ部材32A)に固定する。この固定機構は、回転軸11の回転が妨げられないので、切断刃10による切断作業を邪魔しない。そして、この固定機構は、支持軸42を中心にして、第1及び第2の保持部41A,41Bと一体になって切断装置を回転させ、切断刃10と切断対象管Pcの外周面との間隔を変化させることができる。
【0040】
この固定機構には、駆動部20の筐体23(グリップ部)が径方向内側に押し下げられた際に、その支持軸42を中心とする切断装置等の回転を規制し、この切断装置等がそれ以上回転しないように係止する係止部(図示略)を設けている。例えば、その係止部は、第1及び第2の保持部41A,41Bに設ける。この場合には、第1及び第2の保持部41A,41Bのロータ32側を係止部とし、この係止部をロータ32の外周面に当接させることで、筐体23(グリップ部)が径方向内側に押し下げられた際の切断装置等の回転を制限する。また、その係止部は、第1及び第2の保持部41A,41Bと支持軸42との間に設けてもよい。この場合の係止部は、第1及び第2の保持部41A,41Bの支持軸42に対する回転を規制するものであり、例えば、支持軸42やロータ32の外周面に配置する。
【0041】
尚、この固定機構には、回転軸11を径方向外側から覆うカバー44が設けられている。そのカバー44は、例えば第1及び第2の保持部41A,41Bに取り付けられており、支持軸42を中心にして切断装置等と一体になって回転することができる。
【0042】
ここで、その切断装置は、その支持軸42を中心とする回転によって、切断対象管Pcの外周面に対する切断刃10の位置を変化させることができる。つまり、この切断装置の回転は、切断時の切断刃10の切り込み深さを変化させるものである。一方、この切断装置は、その支持軸42を中心とする回転を止めることができなければ、切断中の切り込み深さにばらつきを生じさせてしまう可能性がある。何故ならば、前述したように、切断対象管Pcを切断する際には、作業者が駆動部20の筐体23(グリップ部)を径方向内側に押し下げて、切断刃10を切断対象管Pcに押し付けるからである。このため、この管切断機1には、回転軸11等の切断装置と共に支持軸42の軸心を中心にして回転させた第1及び第2の保持部41A,41Bを当該回転させた位置で係止し、切断刃10の切り込み深さを調整する位置調整部50を設ける。
【0043】
その位置調整部50は、延設部材51と軸部材52と操作部材53と第1弾性部材54と第2弾性部材55と係止部材56とを備える。
【0044】
延設部材51は、カバー44に螺子部材や溶接等で取り付けられた板状の部材であり、その平面を切断対象管Pcやロータ32の外周面に対して接線方向に延在させている。この延設部材51は、ロータ32(第1ロータ部材32A)の径方向外側で、かつ、回転軸11に対して支持軸42とは反対側に配置する。
【0045】
この延設部材51には、その平面に垂線方向を軸心とする円形の貫通穴が形成されている。軸部材52は、その延設部材51の貫通穴に挿入し、一端をロータ32(第1ロータ部材32A)の外周面の溝または穴に挿入する。この軸部材52の一端は、その溝または穴に固定する。この軸部材52は、円筒状または円柱状の軸であり、その外周面に雄螺子が形成されている。
【0046】
操作部材53は、環状に成形された部材であり、その内周面に雌螺子が形成されている。この操作部材53は、その雌螺子を軸部材52の雄螺子に当該軸部材52の他端側から螺合させることで、この軸部材52に取り付ける。つまり、この操作部材53は、軸部材52における延設部材51よりも径方向外側に取り付けられている。
【0047】
第1弾性部材54は、軸部材52における延設部材51とロータ32の外周面との間で当該軸部材52に挿入する。この第1弾性部材54は、その延設部材51とロータ32の外周面との間で伸張方向の弾発力を発生させている。一方、第2弾性部材55は、軸部材52における延設部材51よりも径方向外側に取り付けられ、操作部材53よりも径方向内側で軸部材52に挿入する。軸部材52の他端には、その操作部材53の軸部材52からの脱落を回避するべく、係止部材56を取り付けている。その係止部材56は、内周面に雌螺子が形成されており、この雌螺子を軸部材52の雄螺子に螺合させることで当該軸部材52に取り付ける。第2弾性部材55は、その延設部材51と操作部材53との間で伸張方向の弾発力を発生させている。
【0048】
この位置調整部50においては、作業者が操作部材53を一方の軸心回りに回転操作することで、第1弾性部材54の伸張方向の弾発力によって延設部材51が径方向外側に押し上げられる。このため、この場合には、その延設部材51と共に、第1及び第2の保持部41A,41Bや切断装置が支持軸42の軸心回りに回転して押し上げられる。よって、この場合には、切断刃10を切断対象管Pcの外周面から離れさせることができる。これに対して、この位置調整部50は、作業者が操作部材53を他方の軸心回りに回転操作することで、延設部材51が径方向内側に押し下げられる。このため、この場合には、その延設部材51と共に、第1及び第2の保持部41A,41Bや切断装置が支持軸42の軸心回りに回転して押し下げられる。よって、この場合には、切断刃10を切断対象管Pcの外周面に近づけることができる(
図12)。従って、この位置調整部50は、作業者の操作部材53の操作によって、切断刃10の切り込み深さを調整することができる。その切り込み深さは、操作部材53の回転角度に応じて決まる。尚、その
図12は、図示の便宜上、固定機構の一部の構成や位置調整部50等を省いている。
【0049】
作業者は、ロータ32までの取り付け作業を終えると、その位置調整部50で切断刃10の切り込み深さ(例えば1mm)を調整する。その後、作業者は、駆動部20を作動させて切断刃10を回転させる。作業者は、筐体23(グリップ部)及び回転操作部32bを持ってロータ32を周方向に回転させると、位置調整部50の操作部材53が回転中の切断刃10を切断対象管Pcに近づけて(例えば1mm)行く。その際には、延設部材51が操作部材53の回転により上下に移動し、第1弾性部材54が管から離れる方向の力となり、第2弾性部材55が切断中の切断刃10
が切断対象管Pcから離れようとするのを抑えるダンパー(クッション)の役割を果たす。その筐体23の押し下げが止まった状態では、位置調整部50で調整した切り込み深さの分だけ回転中の切断刃10が切断対象管Pcを切り込んでいる。作業者は、その切断刃10を切断対象管Pcに切り込ませた状態のまま、回転操作部32bを操作してロータ32を周方向に1回転させる。これにより、切断対象管Pcは、調整された切り込み深さの分だけ外周面側が切断される。作業者は、再び切断刃10の切り込み深さを調整し、筐体23を押し下げ、ロータ32を周方向に1回転させて、切り込み深さの増量分だけ切断対象管Pcの切断を行う。作業者は、この作業を切断対象管Pcの肉厚分だけ繰り返すことで、切断対象管Pcを分断させる。
【0050】
以上示したように、この管切断機1は、ステータ31及びロータ32の径方向外側に回転軸11を配置し、そのステータ31及びロータ32を軸線方向で挟んで切断刃10と駆動部20を配置している。このため、この管切断機1は、切断対象管Pcの径方向外側が狭隘な空間であっても、この切断対象管Pcを周方向に沿って切断することができる。特に、この管切断機1は、その設置に際して、駆動部20が構造物Stの外に配置されるように合わせた長さの回転軸11を用意することが望ましい。つまり、切断対象管Pcの少なくとも一部分が構造物Stの中に埋設されており、かつ、その構造物Stの内方の空間(はつり除去後の環状の空間)に沿って切断対象管Pcの切断箇所が存在している場合、回転軸11の長さは、その構造物Stにおける作業者の居る側の壁面と切断箇所との間の距離よりも長くすることが望ましい。これにより、この管切断機1は、切断対象管Pcと構造物Stとの間における径方向の隙間(はつり除去後の環状の空間)が狭くても、この切断対象管Pcを周方向に沿って切断することができる。
【0051】
また、この管切断機1は、切断刃10の切り込み深さを細かく調整することができるので、内管P2を傷付けることなく、切断対象管Pcである外管P1のみを切断することができる。
【0052】
また、この管切断機1には、切断刃10による切断箇所に不燃性の液体(水等)を供給する液体供給装置60を設置する。これにより、この管切断機1は、切断時の火花の発生を抑えることができる。よって、この管切断機1は、例えば可燃性ガスの通る内管P2の外側の外管P1を切断するに際して、安全を担保することができる。つまり、この管切断機1は、火気の使用が制限されている場所で切断対象管Pcを切断することができる。
【0053】
更に、この管切断機1は、切断対象管Pcの肉厚よりも切り込み深さを浅くし、自転中の切断刃10等を複数周に渡って周方向へと移動させながら少しずつ切断していくことで、この切断対象管Pcを輪切り状態に分断する。このため、この管切断機1は、その切断対象管Pcの肉厚よりも切り込み深さを深くし、切断刃10等を切断対象管Pcの周方向へと1周移動させるだけで分断するよりも、火花の発生を抑えることができる。よって、この管切断機1は、前述した切断箇所への流体の供給の効果と相俟って、火気の使用が制限されている場所での切断対象管Pcの切断が可能になる。
【0054】
また、この管切断機1は、作業者が切断装置(切断刃10や駆動部20等)を周方向へと一緒に移動させる際に、一方向だけでなく、これとは逆の方向にも動かすことができる。つまり、この管切断機1は、切断装置の逆回転の妨げになる構造や部材等を持っていない。よって、この管切断機1は、仮に切断刃10が切断対象管Pcに噛み込んでしまったとしても、切断時とは逆方向に作業者が切断刃10等を移動させることで、その噛み込みを解消することができる。このため、この管切断機1は、切断刃10の耐久性の低下を抑えることができる。