(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
位相基準信号を直交周波数分割多重した位相基準シンボルと、差動位相変調された複数のサブキャリアを直交周波数分割多重した複数のデータシンボルで構成されるフレームを伝送単位とする信号を第1乃至第L(Lは2以上の整数)アンテナで受信する受信装置において、
それぞれ前記第1乃至第Lのアンテナに対応して設けられ、対応するアンテナでの受信信号のFFT開始位置を決定する第1乃至第LのFFT開始位置決定部と、
前記第1乃至第LのFFT開始位置決定部で、それぞれ前記第1乃至第Lのアンテナでの受信信号に対して決定された前記FFT開始位置に応じて、前記受信信号のうちの、前記FFT開始位置が他の受信信号よりも早い位置に決定された前記受信信号を遅延させることでFFT開始位置を揃える遅延部と、
前記遅延部で前記FFT開始位置が揃えられた前記第1乃至第Lの受信信号の各々を、フレーム毎に設定された位相回転角だけ位相回転させる位相回転部と、
前記位相回転部で位相回転を付与された前記第1乃至第Lの受信信号を合成して合成信号を出力するダイバーシチ合成部と、
前記ダイバーシチ合成部から出力された合成信号に対してFFTを行って位相基準シンボルと複数のデータシンボルとを含む周波数領域の信号を出力するFFT部と、
前記FFT部から出力された周波数領域の信号を遅延検波する遅延検波部と、
前記FFT部から出力された周波数領域の信号から伝送路の周波数特性を推定する伝送路推定部と、
前記伝送路推定部で推定された伝送路の周波数特性から前記合成信号についての遅延プロファイルを計算するIFFT部と、
前記IFFT部で計算された前記合成信号についての遅延プロファイルと、前記位相回転部で前記第1乃至第Lの受信信号に加えた位相回転角をもとに、前記第1乃至第Lのアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの各々の遅延プロファイルを計算する遅延プロファイル分割部とを有し、
前記位相回転部は、前記遅延プロファイル分割部で前記少なくとも1つのアンテナの各々の遅延プロファイルを計算することを可能とするように、フレーム毎に前記位相回転角を設定し、
前記FFT開始位置決定部は、前記遅延プロファイル分割部で計算された前記少なくとも1つのアンテナの各々の遅延プロファイルをもとに前記FFT開始位置の決定を行う
ことを特徴とする受信装置。
位相基準信号を直交周波数分割多重した位相基準シンボルと、差動位相変調された複数のサブキャリアを直交周波数分割多重した複数のデータシンボルで構成されるフレームを伝送単位とする信号を第1乃至第L(Lは2以上の整数)アンテナで受信する受信方法において、
それぞれ前記第1乃至第Lのアンテナでの受信信号のFFT開始位置を決定するFFT開始位置決定ステップと、
前記FFT開始位置決定ステップで、それぞれ前記第1乃至第Lのアンテナでの受信信号に対して決定された前記FFT開始位置に応じて、前記受信信号のうちの、前記FFT開始位置が他の受信信号よりも早い位置に決定された前記受信信号を遅延させることでFFT開始位置を揃える遅延ステップと、
前記遅延ステップで前記FFT開始位置が揃えられた第1乃至第Lの受信信号の各々を、フレーム毎に設定された位相回転角だけ位相回転させる位相回転ステップと、
前記位相回転ステップで位相回転を付与された前記第1乃至第Lの受信信号を合成して合成信号を生成するダイバーシチ合成ステップと、
前記ダイバーシチ合成ステップで生成された合成信号に対してFFTを行って位相基準シンボルと複数のデータシンボルとを含む周波数領域の信号を生成するFFTステップと、
前記FFTステップで生成された周波数領域の信号を遅延検波する遅延検波ステップと、
前記FFTステップで生成された周波数領域の信号から伝送路の周波数特性を推定する伝送路推定ステップと、
前記伝送路推定ステップで推定された伝送路の周波数特性から前記合成信号についての遅延プロファイルを計算するIFFTステップと、
前記IFFTステップで計算された前記合成信号についての遅延プロファイルと、前記位相回転ステップで前記第1乃至第Lの受信信号に加えた位相回転角をもとに、前記第1乃至第Lのアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの各々の遅延プロファイルを計算する遅延プロファイル分割ステップを有し、
前記位相回転ステップは、前記遅延プロファイル分割ステップで前記少なくとも1つのアンテナの各々の遅延プロファイルを計算することを可能とするように、フレーム毎に前記位相回転角を設定し、
前記FFT開始位置決定ステップは、前記遅延プロファイル分割ステップで計算された前記少なくとも1つのアンテナの各々の遅延プロファイルをもとに前記FFT開始位置の決定を行う
ことを特徴とする受信方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図3は、本実施の形態の受信装置の構成を示す機能ブロック図である。
図示の受信装置は、
図1(a)に示すように、NULL(ヌル)シンボル、位相基準シンボル、複数のデータシンボルで構成されるフレームを伝送単位とする信号を、2本のアンテナ1−1及び1−2でダイバーシチ受信する。位相基準シンボルは、位相基準信号を直交周波数分割多重(OFDM)することで得られたものであり、データシンボルは、差動位相変調された複数のサブキャリアを直交周波数多重分割(OFDM)することで得られたものである。
【0015】
位相基準シンボルとデータシンボルの各々は、
図1(b)に示すように、有効シンボルとガードインターバルGIとで構成される。GIとしては、例えば、有効シンボルの末尾部分をコピーしたものが用いられる。コピーされた部分は、サイクリック・プレフィックスとも呼ばれる。
有効シンボル長、GI長、及び各フレーム内のデータシンボルの数は受信装置において既知である。
【0016】
図示の受信装置は、第1及び第2のフレーム先頭検出部3−1、3−2、第1及び第2のFFT開始位置決定部4−1、4−2、遅延部5、位相回転部6、ダイバーシチ合成部7、FFT部8、遅延検波部9、基準信号生成部10、除算部11、IFFT部12、遅延プロファイル分割部13、及び制御部15を有する。
【0017】
アンテナ1−1、1−2で受信された信号(RF信号)はIF信号への周波数変換、A/D変換、及び直交復調を経て、その結果得られたベースバンドのOFDM信号が端子2−1、2−2に供給される。
以下、端子2−1、2−2に供給されるOFDM信号を、単にアンテナ1−1、1−2での第1及び第2の受信信号とも言い、符号D2−1、D2−2で表す。
【0018】
第1及び第2のフレーム先頭検出部3−1、3−2は、それぞれアンテナ1−1、1−2に対応して設けられたものであり、それぞれ受信信号D2−1、D2−2の各フレームの先頭位置を検出する。各フレームの先頭は、NULLシンボルを利用して検出することができる。具体的には、受信信号のレベルがある一定の値を下回った位置を各フレームの先頭とする。
【0019】
1波環境では、受信信号のレベルがある一定の値を下回る位置は、NULLシンボルの先頭とほぼ一致するが、マルチパス環境では受信信号に含まれる、複数の到来時刻の異なる到来波が同時に受信されるため、最先到来波のNULLシンボルの先頭から最後の到来波のNULLシンボルの先頭までの間のどの位置が各フレームの先頭として検出されるかは電波環境に依存する。また、雑音の影響で各フレームの先頭位置の検出誤差が大きくなる場合もある。
【0020】
なお、既知の位相基準シンボルと受信信号との相互相関を計算して各フレームの先頭を検出することもできる。この方法は、フレームにNULLシンボルを含まない場合にも適用できる。ただし、NULLシンボルを使用した方法と同様、マルチパス環境では、最先到来波の位相基準シンボルの先頭から最後の到来波の位相基準シンボルの先頭までのどの位置が各フレームの先頭として検出されるかは電波環境に依存する。また、雑音の影響で各フレームの先頭位置の検出誤差が大きくなる場合もある。
【0021】
第1及び第2のFFT開始位置決定部4−1、4−2は、それぞれアンテナ1−1、1−2に対応して設けられたものであり、それぞれ受信信号D2−1、D2−2に対してFFT開始位置を決定する。このFFT開始位置の決定はフレーム毎に行われる。
FFT開始位置の決定の仕方は、初期状態(受信装置の動作開始から予め定められた時間以内の期間)と定常状態(受信装置の動作開始から予め決められた時間が経過した時点以降)とで異なる。
【0022】
FFT開始位置決定部4−1、4−2は、初期状態では、それぞれ、フレーム先頭検出部3−1、3−2で検出された各フレームの先頭を基準にそれぞれ受信信号D2−1、D2−2に対するFFT開始位置を決定する。
FFT開始位置決定部4−1、4−2は、定常状態では、後述の遅延プロファイル分割部13から出力される、アンテナ1−1、1−2の遅延プロファイルをもとに、それぞれ受信信号D2−1、D2−2に対するFFT開始位置を決定する。
【0023】
受信装置が初期状態か定常状態かの判定は制御部15が行う。制御部15は、初期状態か定常状態かの判定結果に基づいてFFT開始位置決定部4−1、4−2を制御する。なお、制御部15から各部への制御信号線は図示が省略されている。
【0024】
遅延部5は、受信信号D2−1、D2−2のうち、FFT開始位置決定部4−1、4−2で決定されたFFT開始位置が先であるものを遅延させ、FFT開始位置が後であるものを遅延させずに、FFT開始位置が揃えられた第1及び第2の信号D5−1、D5−2を出力する。
遅延部5から出力される信号D5−1、D5−2を区別のため「遅延信号」、或いは「遅延された受信信号」と言うこともあるが、これらの信号D5−1、D5−2も、アンテナ1−1、1−2での受信で得られたものであるので、「アンテナ1−1、1−2での受信信号」と言うこともある。
【0025】
例えば、
図4(a)に示すように、受信信号D2−1に対するFFT開始位置Tsf1が受信信号D2−2に対するFFT開始位置Tsf2より時間差Tdだけ早い場合、受信信号D2−1を該時間差Tdに等しい時間だけ遅延させる。これにより、遅延部5から出力される信号D5−1、D5−2は、
図4(b)に示すように、FFT開始位置Tsf1、Tsf2が互いに揃ったものとなる。
【0026】
なお、FFT開始位置を変更する場合、遅延部5における遅延量の変更は、フレームとフレームの間、つまり、各フレームの末尾のデータシンボルと次のフレームの位相基準シンボルの間で変化させるものとする。こうすることで、FFT開始位置の変化が遅延検波に影響を与えないようにすることができる。
遅延後のFFT開始位置(第1及び第2の遅延信号D5−1、D5−2で共通のFFT開始位置)を示す情報D5sfは、遅延部5からFFT部8に通知される。
【0027】
位相回転部6は、それぞれ遅延部5から出力される第1及び第2の遅延信号D5−1、D5−2に対して、フレーム毎に位相回転角を設定して、位相回転させて、第1及び第2の信号D6−1、D6−2を出力する。「フレーム毎に設定する」とはかならずしもフレーム毎に異なる値にすることを意味しない。また、位相回転角はゼロである場合もある。
位相回転部6から出力される信号D6−1、D6−2を区別のため「位相回転を付与された受信信号」と言うこともあるが、これらの信号D6−1、D6−2も、アンテナ1−1、1−2での受信で得られたものであるので、「アンテナ1−1、1−2での受信信号」と言うこともある。
位相回転部6で付与された位相回転角(を示すデータ)D6r−1、D6r−2は、位相回転部6から遅延プロファイル分割部13に通知される。
【0028】
ダイバーシチ合成部7は、位相回転部6で位相回転を付与された受信信号D6−1、D6−2をダイバーシチ合成して、合成信号D7を出力する。ダイバーシチ合成は、例えば、位相回転を付与された受信信号D6−1、D6−2の平均値の算出(等利得合成)によって行われる。
【0029】
FFT部8は、ダイバーシチ合成部7から出力される合成信号D7に対してFFTを行うことによって、周波数領域の信号D8を生成して出力する。即ち、FFT部8は、遅延部5から情報D5sfによって通知されたFFT開始位置を基準にダイバーシチ合成部7の出力D7をFFTすることで、各サブキャリアで伝送された信号D8を取得する。FFT部8から出力される信号D8は、フレーム毎に、位相基準シンボル及び複数のデータシンボルを含む。
【0030】
遅延検波部9は、FFT部8から出力される周波数領域の信号D8を遅延検波して、検波信号D9を出力する。
遅延検波においては、位相基準シンボルに続く最初のデータシンボルについては、位相基準シンボルに対するサブキャリア毎の位相差を検出し、2番目以降にデータシンボルについては、直前のデータシンボルに対するサブキャリア毎の位相差を検出する。
【0031】
遅延検波部9は、その内部に記憶部9aを備え、1シンボル前の各サブキャリアで伝送された信号の位相を保持し、現シンボルの各サブキャリアで伝送された信号の位相との差を検出する。
【0032】
基準信号生成部10は、既知の位相基準信号(位相基準シンボルの各キャリアで送信される信号と同じもの)D10を生成する。
【0033】
除算部11は、FFT部8から出力される周波数領域の信号D8に含まれる、位相基準シンボルを、基準信号生成部10で生成される、位相基準信号D10で除算して、伝送路の周波数特性(を示すデータ)D11を出力する。
除算の結果得られる信号は、位相回転部6で第1の遅延信号D5−1に付与した位相回転角だけアンテナ1−1の伝送路の周波数特性を回転させたものと、第2の遅延信号D5−2に付与した位相回転角だけアンテナ1−2の伝送路の周波数特性を回転させたものとを合成した信号である。
【0034】
基準信号生成部10と除算部11とで、FFT部8の出力D8に基づいて伝送路の周波数特性を計算する伝送路推定部14が構成されている。
【0035】
IFFT部12は、伝送路推定部14から出力される周波数特性に対してIFFTを行う。
こ
のIFFTの結果得られる信号D12は、位相回転部6で第1の遅延信号D5−1に付与した位相回転角だけアンテナ1−1の遅延プロファイルを回転させたものと、位相回転部6で第2の遅延信号D5−2に付与した位相回転角だけアンテナ1−2の遅延プロファイルを回転させたものを合成した遅延プロファイルであり、合成信号D7の遅延プロファイルとも言う。
【0036】
遅延プロファイル分割部13は、IFFT部12から出力される信号(合成信号D7の遅延プロファイル)D12と、位相回転部6で加えた位相回転角をもとに、各アンテナでの受信信号の遅延プロファイル(以下、単に「各アンテナの遅延プロファイル」と言うこともある)を計算する。
遅延プロファイル分割部13は、1フレーム期間の間電波環境が変化しない、即ち各アンテナ毎の遅延プロファイルが変化しないと仮定して、相前後する2つのフレームの位相基準シンボルにそれぞれ対応するIFFT部12の出力から、各アンテナの遅延プロファイルを計算する。
【0037】
位相回転部6において受信信号D5−1、D5−2に対して加えられる位相回転角は、遅延プロファ
イル分割部13でアンテナ毎の遅延プロファイルを計算することが可能となるように設定される。
【0038】
遅延プロファイル分割部13は、相前後するフレーム間で2本のアンテナ1−1、1−2の遅延プロファイルが変化しないと仮定し、上記2つのフレームの各々において、位相回転部6で遅延信号D5−1、D5−2に加えられる位相回転角と、IFFT部12から出力された遅延プロファイル(合成信号の遅延プロファイル)を既知数とし、2本のアンテナの遅延プロファイルを未知数とする2つの方程式を連立方程式として、2本のアンテナの遅延プロファイルを求める。
【0039】
マルチパス環境での遅延プロファイルは、例えば
図5に示すように、主波Wpのほか、1以上の先行波及び/又は遅延波を含む。
図5に示す例では、1つの先行波Wa及び1つの遅延波Wdが含まれる。
最も早い到来波(最先到来波)Waの到来時刻と最も遅い到来波(最後の到来波)Wdの到来時刻の差Tadを最大遅延時間又は遅延広がりと言う。
図示の例では先行波及び遅延波が存在するが、先行波Waが存在しない場合には、主波Wpが最先到来波となり、遅延波Wdが存在しない場合には、主波Wpが最後の到来波となる。
【0040】
マルチパス環境では、遅延広がりがGI長以下であれば、シンボル間干渉を防ぐことができる。この点を
図6及び
図7を参照して説明する。
図6、
図7には、
図5の遅延広がりTad、最先到来波Waと主波Wpの到来時間差Tap、主波Wpと最後の到来波Wdの到来時間差Tpdが示されている。
【0041】
図6は、遅延広がりTadがGI長Tgiと等しい場合を示す。
この場合、FFT区間の開始位置を符号Tsfaで示すように、最先到来波WaのGIの末尾、即ち有効シンボルの先頭に一致させれば、シンボル間干渉を防ぐことができる。
【0042】
図7は、遅延広がりTadがGI長Tgiよりも短い場合を示す。
この場合、FFT区間の開始位置を最先到来波WaのGIの末尾から、Tgi−Tadだけ進んだ位置Tsfbから、GIの末尾Tsfaまでの範囲内に位置させれば、シンボル間干渉を防ぐことができる。
但し、
図7の場合にも、FFT区間の開始位置を符号Tsfaで示すように、最先到来波WaのGIの末尾に一致させることが簡便であり、望ましい。
【0043】
上記の点を考慮して、第1及び第2のFFT開始位置決定部4−1及び4−2は、それぞれ受信信号D2−1、D2−2に含まれる位相基準シンボルとデータシンボルのFFT開始位置を決定する。
【0044】
上記のように、第1及び第2のFFT開始位置決定部4−1及び4−2の動作は、初期状態か定常状態かで異なる。
【0045】
初期状態では、FFT開始位置決定部4−1、4−2は、フレーム先頭検出部3−1及び3−2で検出された各フレームの先頭を基準に、それぞれ受信信号D2−1、D2−2に含まれる位相基準シンボルとデータシンボルのFFT開始位置を決定するが、上述のように、マルチパス環境では、最先到来波と最後の到来波の到来時刻差だけ各フレームの先頭の検出位置に差が生じるため、このフレーム先頭位置の検出結果から決められたFFT開始位置が
図2に示すように決められる可能性があり、その場合遅延波について前のシンボルの後端がFFT区間に含まれることになり、シンボル間干渉が生じる。
【0046】
シンボル間干渉を防ぐためには、遅延広がりがGI長以下であることを条件として、FFT区間の開始位置が、最先到来波のGIの後端に一致するようにすればよい。本発明では、そのために、遅延プロファイルに含まれる最先到来波がインデックス0に一致するように調整する。
【0047】
そこで、制御部15は、初期状態開始から予め決められた時間が経過した時点で受信装置を定常状態に遷移させ、定常状態においては、FFT開始位置決定部4−1、4−2は、遅延プロファイル分割部13で計算されたアンテナ毎の遅延プロファイルをもとに、それぞれ受信信号D2−1、D2−2に含まれる位相基準シンボルとデータシンボルのFFT開始位置を決定する。
具体的には、遅延プロファイルに含まれる最先到来波がインデックス0に位置するように、FFT開始位置を調整し、これによりシンボル間干渉が生じないようにしている。
ここでインデックスとは、位相基準シンボルから求める遅延プロファイルh(k)におけるインデックスkを意味し、インデックス0はインデックスkが0となる位置を意味する。
【0048】
受信信号に含まれる位相基準シンボルをFFT部8でFFTすることで得られる周波数軸のデータをR(n)(n=0,1,…、I−1)、
基準信号生成部10から出力される位相基準信号(周波数軸のデータ)をS(n)(n=0,1,…、N−1)とすると、伝送路の周波数特性は
H(n)=R(n)/S(n)(n=0,1,…、N−1)
で与えられる。
ここで、nは周波数を表すインデックスである。
上記の周波数特性H(n)をIFFTすることで遅延プロファイルh(k)(k=0,1,…、N−1)が得られる。
ここで、kは遅延時間を表すインデックスである。
【0049】
主波のみが存在する環境で、FFT開始位置が主波のGIの末尾に一致するように調整した場合、H(n)=1となり、これをIFFTして得られる遅延プロファイルはh(k)=δ(k)となる。
δ(k)はデルタ関数であり、インデックスk=0においてのみゼロ以外の値となる。即ち、遅延プロファイルにおいて主波に相当する部分が、インデックス0に一致する。
FFT開始位置が上記の位置からKaサンプル遅くなった場合、
H(n)=exp(j2πKa)
となり、
h(k)=δ(k−Ka)
となり、インデックスKaにおいて、ゼロ以外の値となる。即ち、遅延プロファイルにおいて主波に相当する部分が、インデックスKaに一致する。
【0050】
これらのことから逆に、遅延プロファイルh(k)において、
図8(a)に示すように、インデックス0に主波Wpに相当する部分が一致するように、FFT区間(窓位置)を調整することで、
図8(b)に示すように、FFT開始位置Tsfを主波のGIの末尾に一致させることができる。
【0051】
マルチパス環境でも同様に考えることができる。
つまり、
図9(a)に示すように、遅延プロファイルに含まれる最先到来波Waに相当する部分がインデックス0に一致するように、FFT窓位置を調整することで、
図9(b)に示すように、FFT開始位置Tsfを最先到来波WaのGIの末尾に一致させることができる。
【0052】
FFT開始位置決定部4−1、4−2の各々は、(受信装置の定常状態においては、)対応する受信信号D2−1、D2−2についての遅延プロファイルを基に、対応する受信信号D2−1、D2−2に対するFFT開始位置を決定する。この決定のための演算に当たり、相前後するフレームの位相基準シンボルの受信の時点相互間で、遅延プロファイルに変化がないことを仮定する。
【0053】
受信信号D2−1、D2−2についての遅延プロファイルは、遅延プロファイル分割部13で生成される。
【0054】
遅延プロファイル分割部13は、IFFT部12から出力される信号D12から、アンテナ1−1の遅延プロファイルh1(t)と、アンテナ1−2の遅延プロファイルh2(t)を算出する。
ここで、あるフレーム(i番目のフレーム)の位相基準シンボルに対する遅延プロファイルと、次のフレーム(i+1番目のフレーム)の位相基準シンボルに対する遅延プロファイルが等しい、つまり、1フレーム長の間に遅延プロファイルが変化しないと仮定する。
そして、i番目のフレームにおいては、第1の遅延信号D5−1にθ1a、第2の遅延信号D5−2にθ2aの位相回転を加え、i+1番目のフレームにおいては、第1の遅延信号D5−1にθ1b、第2の遅延信号D5−2にθ2bの位相回転を加えるものとする。
すると、i番目のフレームのIFFT部12の出力ga(t)とi+1番目のフレームのIFFT部12の出力gb(t)は次式で表される。
【0055】
exp(jθ1a)×h1(t)+exp(jθ2a)×h2(t)=ga(t)
…(1A)
exp(jθ1b)×h1(t)+exp(jθ2b)×h2(t)=gb(t)
…(1B)
【0056】
式(1A)、(1B)において、h1(t)とh2(t)が未知数で、残りは既知数である。つまり、上記の連立方程式をh1(t)とh2(t)について解くことで、アンテナ1−1及び1−2の遅延プロファイルを算出することができる。
ただし、位相回転角θ1a、θ2a、θ1b、θ2bは、式(1A)、(1B)が互いに独立になるよう選ぶ必要がある。
【0057】
式(1A)、(1B)において、θ1a=0、θ2a=0、θ1b=0、θ2b=πとすると、
h1(t)+h2(t)=ga(t) …(1C)
h1(t)−h2(t)=gb(t) …(1D)
となるため、ga(t)とgb(t)を加算して2で割ることでh1(t)が導出され、ga(t)からgb(t)を減算して2で割ることでh2(t)が導出される。
この場合、位相回転部6及び遅延プロファイル分割部13で乗算を行う必要がない。
【0058】
上記の例のように、位相回転部6で2つの遅延信号のうちの一方(例えばD5−1)に付与する位相回転角をゼロとし(位相回転せず)、他方の遅延信号(D5−2)に付与する位相回転角を、フレーム毎に位相回転角を0度と180度に交互に切り替える(信号の符号を正と負に交互に切り替える)こととすれば、位相回転(と等価な処理)を符号の切替えで実現することができ、乗算演算を省くことができる。即ち、乗算演算を省いても、ダイバーシチ合成後に算出された遅延プロファイルからアンテナ別の遅延プロファイルを導出することができ、計算量をさらに削減することができる。
【0059】
本実施の形態は、2本のアンテナで受信する場合について述べたが、本発明は任意の数のアンテナで受信する場合にも適用することができる。例えば、L本(Lは2以上の整数)のアンテナの場合、L−1フレーム期間(あるフレーム(i番目のフレーム)
)の位相基準シンボルの受信から、(L−1)フレーム後のフレーム
((i+L−1)番目のフレーム)の位相基準シンボルの受信までの期間)、遅延プロファイルが変化しないと仮定し、遅延プロファイル分割部13では、L本のアンテナの遅延プロファイルを未知数として含むL個の方程式を立て、連立方程式として解くことで、各アンテナの遅延プロファイルを算出することができる。ただし、L個の方程式がすべて独立になるように、それぞれのアンテナでの受信信号に対応する遅延信号(D5−1、D5−2に相当するもの)に対する位相回転角を決定する必要がある。
【0060】
L本のアンテナのうちの一部であるM本のアンテナについて遅延プロファイルを求めることとしても良い。この場合には、L個の連立方程式のうち、M個の方程式が独立となるように位相回転量を定めればよい。
【0061】
本実施の形態によれば、FFT部8の前で、遅延部5による遅延によりFFT開始位置を揃えた上でダイバーシチ合成を行うことで、FFT部8、遅延検波部9、及びIFFT部12をアンテナ数分用意する必要がなくなり、計算量を削減することができるとともに、ダイバーシチ合成する前の信号に対して位相回転を加えることで、合成信号から算出された遅延プロファイルから、アンテナ別の遅延プロファイルを算出することができ、アンテナ別にFFT開始位置を制御することでシンボル間干渉を回避することができるという効果がある。
【0062】
実施の形態2.
実施の形態1は、あるフレーム(i番目のフレーム)の位相基準シンボルに対する遅延プロファイルと、次のフレーム(i+1番目のフレーム)の位相基準シンボルに対する遅延プロファイルが等しい、つまり、1フレーム長の間に遅延プロファイルが変化しないとの仮定が成り立つ場合に適用し得るものである。実施の形態2は、電波環境の時間変動がより激しい場合に適用し得るものである。即ち、あるフレーム(i番目のフレーム)の末尾のデータシンボルに対する遅延プロファイルと、次のフレーム(i+1番目のフレーム)の位相基準シンボルに対する遅延プロファイルが等しいとの条件が満たされれば適用可能なものである。
【0063】
図10は、本実施の形態の受信装置の構成を示す機能ブロック図である。
図10において、
図3と同じ符号は、同様の構成要素を示す。
図10の受信装置は、
図3の受信装置と概して同じであるが、硬判定部21、再差動変調部22、及び切替部23を有する点で異なる。
【0064】
硬判定部21は、遅延検波部9の出力D9から、送信されたビットを推定して、ビット系列を出力する。
再差動変調部22は、基準信号生成部10から出力される位相基準信号D10と、硬判定部21から出力される、推定された送信ビット系列D21を用いて、該送信ビット系列を差動変調する。具体的には、まず、位相基準信号を基準に、推定された送信ビット系列を用いて最初のデータシンボルを差動変調し、2番目以降のデータシンボルの各々について1シンボル前の差動変調で得られた信号を基準にして差動変調する処理を繰り返す。このような処理を繰り返す結果、各フレームの末尾のデータシンボルが入力されたときには、当該末尾のシンボルの差動位相変調信号が出力される。
【0065】
切替部23は、FFT部8から各フレームの末尾のデータシンボルが出力されるときは、再差動変調部22の出力D22を選択し、FFT部8から各フレームの先頭の位相基準シンボルが出力されるときは、基準信号生成部10の出力D10を選択する。
【0066】
除算部11は、FFT部8から出力される信号D8を、切替部23から出力される信号で除算する。
切替部23により基準信号生成部10の出力D10が選択されているときの除算部11の動作は、実施の形態1と同じである。
切替部23により再差動変調部22の出力D22が選択されているときは、除算部11は、受信信号に含まれる、各フレームの末尾のデータシンボルを、再差動変調部の出力で除算することで、該フレームの末尾のデータシンボルに対する遅延プロファイルを算出する。
【0067】
実施の形態1では、受信信号に含まれる位相基準シンボルに対してのみ合成信号の遅延プロファイルの計算を行うが、実施の形態2では、受信信号の各フレームの末尾に存在するデータシンボルに対しても、合成信号の遅延プロファイルの計算を行う。
【0068】
基準信号生成部10と、硬判定部21と、再差動変調部22と、切替部23と、除算部11とで、伝送路推定部14bが構成されている。
【0069】
図10のIFFT部12は、実施の形態1と同様、除算部11から出力される信号D11をIFFTする。ただし、実施の形態1では、受信信号D2−1、D2−2に含まれる、位相基準シンボルに対する遅延プロファイルの合成結果が出力されるが、実施の形態2では、受信信号D2−1、D2−2に含まれる、位相基準シンボルに対する遅延プロファイルの合成結果だけではなく、受信信号D2−1、D2−2に含まれる、各フレームの末尾のデータシンボルに対する遅延プロファイルの合成結果も出力される。
【0070】
遅延プロファイル分割部13は、実施の形態1と同様、IFFT部12から出力される信号から、アンテナ1−1及び1−2の遅延プロファイルを算出する。ただし、実施の形態1では、位相基準シンボルに対する遅延プロファイルのみを扱っていたため、あるフレームの先頭の位相基準シンボルから、次のフレームの位相基準シンボルまでの間(1フレームの期間)、遅延プロファイルが変化しないと仮定していたが、
本実施の形態では、各フレームの末尾のデータシンボルから、次のフレームの先頭の位相基準シンボルまでの間(NULLシンボルの期間)のみ遅延プロファイルが変化しないと仮定する。このように、遅延プロファイルが変化しないと仮定する期間を短くすることで、電波環境の変化が激しい環境でも、アンテナ別に遅延プロファイルを算出することが可能となる。
【0071】
あるフレーム(i番目のフレーム)の末尾のデータシンボルに対するIFFT部12の出力fa(t)と、次のフレーム(i+1番目のフレーム)の先頭の位相基準シンボルのIFFT部12の出力fb(t)は次式で表される。
【0072】
exp(jθ1a)×h1(t)+exp(jθ2a)×h2(t)=fa(t)
…(2A)
exp(jθ1b)×h1(t)+exp(jθ2b)×h2(t)=fb(t)
…(2B)
ここで、h1(t)、h2(t)は、式(1A)、(1B)と同様、アンテナ1−1及び1−2の遅延プロファイルである。
【0073】
式(2A)、(2B)を、実施の形態1と同様、連立方程式として解くことで、h1(t)とh2(t)を算出することができる。
但し、位相回転角θ1a、θ2a、θ1b、θ2bは、式(1A)、(1B)の場合と同様、式(2A)、(2B)が互いに独立になるよう選ぶ必要がある。
【0074】
遅延プロファイルが変化しないと仮定する期間を、あるフレームの末尾のデータシンボルから次のフレームの位相基準シンボルの期間であるとすると、本実施の形態は、そのままでは、2本のアンテナで受信する場合に限定され、3本以上のアンテナで受信する場合には適用できない。
【0075】
しかしながら、例えば、i番目のフレームの末尾のデータシンボルとi+1番目のフレームの先頭の位相基準シンボルを用いて遅延プロファイルを算出する際、1本目のアンテナ以外に対する位相回転角をすべて同じにすることで、1本目のアンテナの遅延プロファイルとその他のアンテナの遅延プロファイルの合成結果を導出することは可能である。
【0076】
同様に、i+1番目のフレームの末尾のデータシンボルとi+2番目のフレームの先頭の位相基準シンボルを用いて遅延プロファイルを算出する際、2本目のアンテナ以外に対する位相回転角をすべて同じにすることで、2本目のアンテナの遅延プロファイルとその他のアンテナの遅延プロファイルの合成結果を導出することができる。同様に、i+2番目のフレームの末尾のデータシンボルとi+3番目のフレームの先頭の位相基準シンボルを用いて遅延プロファイルを算出する際、3本目のアンテナ以外に対する位相回転角をすべて同じにすることで、3本目のアンテナの遅延プロファイルとその他のアンテナの遅延プロファイルの合成結果を導出することができる。このように、遅延プロファイルを算出したいアンテナ以外のアンテナでの受信信号に加える位相回転角をすべて等しくすることで、前記アンテナに対する遅延プロファイルを算出することができる。したがって、フレーム毎に遅延プロファイルを算出するアンテナを切り替えることで、全アンテナに対する遅延プロファイルを算出することが可能である。
【0077】
以上要するに、遅延プロファイル分割部13は、各フレームの末尾のデータシンボルと次のフレームの先頭の位相基準シンボルの間で遅延プロファイルが変化しないと仮定して、各フレームの末尾のデータシンボルに対応するIFFT部12の出力と、次のフレームの先頭の位相基準シンボルに対応するIFFT部12の出力と、位相回転部6の回転角とを既知数とし、1つのアンテナの遅延プロファイルと、上記1つのアンテナ以外のアンテナの遅延プロファイルの合成結果を未知数とする方程式を立てて、これらを連立方程式として解くことで上記1つのアンテナの遅延プロファイル、及び上記1つのアンテナ以外のアンテナの遅延プロファイルの合成結果を求める処理を繰り返すことで、L本のアンテナの全てについてアンテナの遅延プロファイルを計算する。
【0078】
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、遅延プロファイルが一定であると仮定する期間を1フレーム長からNULLシンボル長まで短くすることができ、時間変動の激しい電波環境にも適用可能となるという効果がある。
【0079】
実施の形態3.
実施の形態1及び2では、複数のアンテナで受信した信号を等利得合成しているが、実施の形態3及び4は、ダイバーシチ合成に際し、アンテナ間で合成の重みを変えるものである。
アンテナ間で受信品質に差があるときに、アンテナ間で合成の重みを変えることで、ダイバーシチ利得が大きくすることができる。
【0080】
例えば、遅延プロファイル分割部13から出力される各アンテナの遅延プロファイルに基づいて、ある一定の閾値以下の雑音成分の電力を計算し、この電力が大きいほど受信品質が悪いと判断し、受信品質の悪いアンテナに小さな合成係数をかける。
【0081】
実施の形態1の改変として遅延プロファイルの閾値以下の雑音成分に基づく重み付け合成を行う構成を実施の形態3の受信装置として
図11に示す。
図11において、
図3と同じ符号は同様の構成要素を示す。
図11の受信装置は、
図3の受信装置と概して同じであるが、加重値制御部31を有する。
加重値制御部31は、電力計算部32−1、32−2と、加重値算出部33とを有する。
【0082】
電力計算部32−1は、アンテナ1−1の遅延プロファイルの、一定の閾値以下の雑音成分の電力を計算する。
電力計算部32−2は、アンテナ1−2の遅延プロファイルの、一定の閾値以下の雑音成分の電力を計算する。
【0083】
加重値算出部33は、電力計算部32−1、32−2での計算結果を元にして、加重値を算出する。この加重値は、ダイバーシチ合成部7での合成の際の加重値として用いられる。加重値は、電力計算部32−1、32−2での計算結果が小さいほど、大きくなるものであれば良く、加重値は、電力計算部32−1、32−2での計算結果に対して連続的に変化するものであっても良く、段階的に変化するものであっても良い。特に、計算結果に応じて一方に対する重みを1、他方に対する重みを0にするものであっても良い。
【0084】
実施の形態4.
実施の形態1の改変として、受信信号の信号レベルの測定結果に基づく、重み付け合成を行う構成を実施の形態4の受信装置として
図12に示す。
図12において、
図3と同じ符号は同様の構成要素を示す。
図12の受信装置は、
図3の受信装置と概して同じであるが、加重値制御部41を有する。
加重値制御部41は、信号レベル測定部42−1、42−2と、加重値算出部43とを有する。
【0085】
信号レベル測定部42−1は、受信信号D2−1のレベル、例えば振幅、電力、もしくは信号対雑音比を算出する。
信号レベル測定部42−2は、受信信号D2−2のレベル、例えば振幅、電力、もしくは信号対雑音比を算出する。
【0086】
加重値算出部43は、信号レベル測定部42−1、42−2での測定結果を元にして、加重値を算出する。この加重値は、ダイバーシチ合成部7での合成の際の加重値として用いられる。加重値は、信号レベル測定部42−1、42−2での測定結果が大きいほど、大きくなるものであれば良く、加重値は、信号レベル測定部42−1、42−2での測定結果に対して連続的に変化するものであっても良く、段階的に変化するものであっても良い。特に、計算結果に応じて一方に対する重みを1、他方に対する重みを0にするものであっても良い。
【0087】
実施の形態3、4によれば、アンテナ間で受信品質に差がある環境下で、ダイバーシチ利得を大きくすることができる。
【0088】
実施の形態5.
図13は、実施の形態5の受信方法における処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態5の受信方法は、実施の形態1の受信装置により実施されるものであり、実施の形態1と同様に、
図1(a)及び(b)に示される信号を受信して処理する。
【0089】
図13において、ステップS100では、受信装置が初期状態か否かの判定を行う。初期状態であれば、ステップS103に進み、そうでなければ、ステップS104Bに進む。ステップS100の処理は、
図3の制御部15で行われる。
【0090】
ステップS103では、受信信号D2−1、D2−2の各々について各フレームの先頭位置を検出する。この処理は、
図3のフレーム先頭検出部3−1、3−2で行われるものであり、その内容は、フレーム先頭検出部3−1、3−2について説明したのと同様である。
【0091】
次に、ステップS104Aでは、ステップS103で検出された各フレームの先頭位置に基づいて、受信信号D2−1、D2−2についてのFFT開始位置を決定する。この処理は、
図3のFFT開始位置決定部4−1、4−2で行われるものであり、その内容はFFT開始位置決定部4−1、4−2について説明した、初期状態における処理と同様である。
【0092】
次に、ステップS105Aでは、受信信号D2−1、D2−2のうちの、ステップS104Aで決定されたFFT開始位置が早い方を遅延させ、遅延後のFFT開始位置が互いに同じになるようにする。
この処理は、
図3の遅延部5で行われるものであり、その内容は遅延部5について説明したのと同様である。
【0093】
次に、ステップS107では、ステップS105Aにおける遅延によりFFT開始位置が合わせられた信号をダイバーシチ合成してダイバーシチ合成信号を生成する。
この処理は、
図3のダイバーシチ合成部7で行われるものであり、その内容はダイバーシチ合成部7について説明したのと同様である。
【0094】
次に、ステップS108では、ステップS107で生成されたダイバーシチ合成信号をFFT変換することで、各サブキャリアで伝送された信号 (周波数領域の信号)を取得する。
ステップS108の処理は、
図3のFFT部8で行われるものであり、その内容はFFT部8について説明したのと同様である。
【0095】
次に、ステップS109では、ステップS108におけるFFTで得られた信号を遅延検波する。
ステップS109の処理は、
図3の遅延検波部9で行われるものであり、その内容は遅延検波部9について説明したのと同様である。
【0096】
次に、ステップS114では、ステップS108におけるFFT変換の結果得られた信号を用いて伝送路推定を行う。
ステップS114の処理は、
図3の伝送路推定部14で行われるものであり、その内容は伝送路推定部14について説明したのと同様である。
【0097】
次に、ステップS112では、ステップS114で推定された伝送路特性をIFFT変換する。
このIFFTの結果、アンテナ1−1の遅延プロファイルとアンテナA2の遅延プロファイルを位相回転させたものを合成した遅延プロファイル(合成信号の遅延プロファイル)が得られる。
ステップS112の処理は、
図3のIFFT部12で行われるものであり、その内容はIFFT12について説明したのと同様である。
【0098】
次に、ステップS113では、ステップS112で生成された遅延プロファイルを分割して、アンテナ1−1、1−2の遅延プロファイルを生成する。
この処理は、
図3の遅延プロファイル分割部13で行われるものであり、その内容は遅延プロファイル分割部13に関して説明したのと同様である。
ステップS113の次にステップS200に進む。
【0099】
ステップS200では、受信終了か否かの判定を行う。ステップS200で受信終了であれば、動作を終了する。ステップS200で受信終了でなければ、ステップS100に戻る。
ステップS200の処理も制御部15で行われる。
【0100】
初期状態は、受信装置の動作開始後予め定められて時間続けられ、その後定常状態に遷移する。この制御も制御部15で行われる。
【0101】
ステップS104Bでは、ステップS113で生成されたアンテナ1−1、1−2の遅延プロファイルを用いて、受信信号D2−1、D2−2についてのFFT開始位置を決定する。この処理は、
図3のFFT開始位置決定部4−1、4−2で行われるものであり、その内容は、FFT開始位置決定部4−1、4−2について説明した、定常状態における処理と同様である。
【0102】
次に、ステップS105Bでは、受信信号D2−1、D2−2のうちの、ステップS104Bで決定されたFFT開始位置が早い方を遅延させ、遅延後のFFT開始位置が互いに同じになるようにする。
ステップS105Bの処理は、
図3の遅延部5で行われるものであり、その内容は遅延部5について説明したのと同様である。
【0103】
次に、ステップS106では、ステップS105Aにおける遅延によりFFT開始位置が合わせられた信号を位相回転させる。この処理は、実施の形態1で
図3の位相回転部6で行われるものであり、その内容は、位相回転部6について説明したのと同様である。
【0104】
ステップS106の次に、ステップS107に進む。
それ以降の処理は上記と同様である。
【0105】
初期状態では、ステップS114、S112、S113の処理を省略するようにしても良い。但し、この場合には、定常状態への遷移に先立って、ステップS114、S112、S113の処理を実行して、必要なフレーム数分の合成信号の遅延プロファイルを取得しておく必要がある。
【0106】
図14は、
図13の伝送路推定ステップS114の詳細を示す。
ステップS110では、位相基準シンボルの各キャリアで送信される既知信号、即ち位相基準信号を生成する。
ステップS110の処理は、
図3の基準信号生成部10で行われるものであり、その内容は基準信号生成部10について説明したのと同様である。
【0107】
次に、ステップS111では、ステップS108で生成される位相基準シンボルのFFT結果を、基準信号生成ステップS110で生成される位相基準シンボルの各キャリアで送信される既知信号で除算し、伝送路特性を生成する。
ステップS111の処理は、
図3の除算部11で行われるものであり、その内容は除算部11について説明したのと同様である。
【0108】
実施の形態1で説明した変形は実施の形態5にも当てはまる。
例えば、実施の形態1について説明したのと同様に、実施の形態5もL本のアンテナで受信する場合に適合するように改変することが可能である。
【0109】
実施の形態5によれば、FFTステップS108の前に遅延(S104A、S104B)によりFFT開始位置を揃え、アンテナ間でダイバーシチ合成(S107)を行うことで、FFT(S108)、遅延検波(S109)、IFFT(S112)をアンテナ数分別個に行う必要がなくなり、計算量を削減することができるとともに、ダイバーシチ合成する前の信号に対して位相回転を加えることで、合成後の信号から算出された遅延プロファイルから、アンテナ別の遅延プロファイルを導出することができ、アンテナ別にFFT開始位置を制御することでシンボル間干渉を回避することができるという効果がある。
【0110】
さらに、2本のアンテナで受信する場合、片方のアンテナで受信する信号に対しては位相回転せず、もう片方のアンテナで受信する信号に対しては、フレーム毎に符号を切り替えることで、乗算演算することなく、ダイバーシチ合成後に算出された遅延プロファイルからアンテナ別の遅延プロファイルを導出することができ、計算量をさらに削減することができる。
【0111】
実施の形態6.
実施の形態6は、実施の形態2の受信装置で実施される受信方法である。
実施の形態5では、実施の形態1で説明したように、受信信号に含まれる位相基準シンボルに対してのみ合成信号の遅延プロファイルを求めているが、実施の形態6では、実施の形態2で説明したように、受信信号の各フレームの末尾に存在するデータシンボルに対しても合成信号の遅延プロファイルを求める。
【0112】
実施の形態6の受信方法の処理手順は全体的には、実施の形態5に関し
図13で説明したのと同じである。しかし、実施の形態5では、
図13の伝送路推定
ステップS114として、
図14に示す処理が行われるのに対して、実施の形態6では、
図15に示されるステップS114bの処理が行われる。
【0113】
ステップS114bは、ステップS110、S121、S122、S123を含む。
図14のステップS110は、
図13のステップS110と同じである。
ステップS110と並行して、ステップS121及びステップS122が行われる。
ステップS121では、ステップS109の出力から、送信ビット系列を推定する。ステップS121の処理は、
図10の硬判定部21で行われるものであり、その内容は硬判定部21について説明したのと同様である。
【0114】
ステップS122では、ステップS110で生成される位相基準信号とステップS121で生成されるビット系列をもとに差動位相変調を行う。
ステップS122の処理は、
図10の再差
動変調部22で行われるものであり、その内容は再差
動変調部22について説明したのと同様である。
【0115】
ステップS123では、FFTステップS108で生成されるシンボルが、各フレームの先頭の位相基準シンボルか、各フレームの末尾のデータシンボルか、それ以外のシンボルかの判定を行う。
ステップS123の処理は、
図10の切替部23により行われ、その内容は切替部23について説明した処理に相当するものである。
【0116】
ステップS123で、位相基準シンボルであれば、ステップS111Aに進み、ステップS110で生成された位相基準信号を用いて除算を行い、その後、ステップS112に進む。
ステップS123で、末尾のデータシンボルであれば、ステップS111Bに進み、ステップS122の再差動変調の結果を用いて除算を行い、その後、ステップS112に進む。
ステップS123で、位相基準シンボルでもなく、末尾のシンボルでもない場合には、除算を行わずにステップS112に進む。
【0117】
実施の形態6でも、
図13のステップS112では、実施の形態5と同様、ステップS111で生成される伝送路特性をIFFTして遅延プロファイルを生成する。
【0118】
実施の形態5、6のステップS107においても、実施の形態1のダイバーシチ合成部7に関し、実施の形態3、4で説明したように、等利得合成ではなく、重み付け加算によって合成を行っても良い。
【0119】
以上説明した本発明の受信装置及び受信方法の一部又は全部はソフトウェアで、即ちプログラムされたコンピュータで実現することができる。従って、上記の受信装置の各構成要素における処理又は上記の受信方法の各ステップの処理をコンピュータに実行させるためのプログラム、並びに該プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体もまた本発明の一部を成す。