特許第6038013号(P6038013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6038013車両用空調システム及び車両用空調制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6038013
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】車両用空調システム及び車両用空調制御方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 27/00 20060101AFI20161128BHJP
   B60H 1/00 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   B61D27/00 F
   !B60H1/00 101H
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-258432(P2013-258432)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-113081(P2015-113081A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 英樹
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−148746(JP,A)
【文献】 特開2012−017003(JP,A)
【文献】 特開2003−285637(JP,A)
【文献】 特開平06−064536(JP,A)
【文献】 特開2012−121484(JP,A)
【文献】 米国特許第04357988(US,A)
【文献】 特開2014−234020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 27/00
B60H 1/00− 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調コンプレッサを有し、車内の空調を行う空調装置と、
車内の温度を検知する車内温度センサと、
外部から駅情報を受信する受信部と、
車内温度と空調制御を行うために用いられる値である空調基準温度との差が予め決められた値を超える場合には前記空調コンプレッサを起動させて車内を空調する空調制御装置と、を有し、
前記空調制御装置は、
時刻を計時する時刻計時部と、
車内の設定温度を格納する車内設定温度格納部と、
予め決められたラッシュ時間帯を格納するラッシュ時間帯格納部と、
過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅情報を格納する最大運転開始駅格納部と、
過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅情報を格納する最大温度開始駅格納部と、
過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差を格納する温度差格納部と、を備え、
前記ラッシュ時間帯格納部を参照し、前記時刻計時部から得られる現在時刻が前記ラッシュ時間帯であった場合は、前記最大運転開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも前の駅であった場合には、前記車内設定温度格納部及び前記温度差格納部を参照し、現在の設定温度から、過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差を補正値として引いた値を前記空調基準温度にするように補正し、前記最大温度開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも後の駅であった場合には、前記補正を解除する
ことを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
空調コンプレッサを有し、車内の空調を行う空調装置と、
車内の温度を検知する車内温度センサと、
外部から駅情報を受信する受信部と、
車内温度と空調制御を行うために用いられる値である空調基準温度との差が予め決められた値を超える場合には前記空調コンプレッサを起動させて車内を空調する空調制御装置と、を有し、
前記空調制御装置は、
時刻を計時する時刻計時部と、
外気温度を検知する外気温度センサと、
車内の設定温度を格納する車内設定温度格納部と、
予め決められたラッシュ時間帯を格納するラッシュ時間帯格納部と、
過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅情報を格納する最大運転開始駅格納部と、
過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅情報を格納する最大温度開始駅格納部と、
過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差を格納する温度差格納部と、
空調基準温度の補正を行う毎にそれよりも過去における設定温度と車内最大温度との差を外気温度別に格納する外気温度別補正値格納部と、を備え、
前記ラッシュ時間帯格納部を参照し、前記時刻計時部から得られる現在時刻が前記ラッシュ時間帯であった場合は、前記最大運転開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも前の駅であった場合には、前記車内設定温度格納部及び前記外気温度別補正値格納部を参照し、現在の設定温度から、前記外気温度別補正値格納部に蓄積された前記外気温度センサから得られる現在の外気温度に応じた過去における設定温度と車内最大温度との差の平均値を算出した補正値を引いた値を前記空調基準温度にするように補正し、前記最大温度開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも後の駅であった場合には、前記補正を解除する
ことを特徴とする車両用空調システム。
【請求項3】
空調コンプレッサを有し、車内の空調を行う空調装置と、
車内の温度を検知する車内温度センサと、
外部から駅情報及び車両運用形態情報を受信する受信部と、
車内温度と空調制御を行うために用いられる値である空調基準温度との差が予め決められた値を超える場合には前記空調コンプレッサを起動させて車内を空調する空調制御装置と、を有し、
前記空調制御装置は、
時刻を計時する時刻計時部と、
車内の設定温度を格納する車内設定温度格納部と、
予め決められたラッシュ時間帯を格納するラッシュ時間帯格納部と、
過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅情報を格納する最大運転開始駅格納部と、
過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅情報を格納する最大温度開始駅格納部と、
過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差を格納する温度差格納部と、
空調基準温度の補正を行う毎にそれよりも過去における設定温度と車内最大温度との差を車両運用形態別に格納する車両運用形態別補正値格納部と、を備え、
前記ラッシュ時間帯格納部を参照し、前記時刻計時部から得られる現在時刻が前記ラッシュ時間帯であった場合は、前記最大運転開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも前の駅であった場合には、前記車内設定温度格納部及び前記車両運用形態別補正値格納部を参照し、現在の設定温度から、前記車両運用形態別補正値格納部に蓄積された前記受信部から得られる現在の車両運用形態に応じた過去における設定温度と車内最大温度との差の平均値を算出した補正値を引いた値を前記空調基準温度にするように補正し、前記最大温度開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも後の駅であった場合には、前記補正を解除する
ことを特徴とする車両用空調システム。
【請求項4】
前記過去は前日であり、
前記前日が休日であった場合は、一番近い過去の平日を前記前日とする
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記前の駅は一つ前の駅であり、
前記後の駅は一つ後の駅である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用空調システム。
【請求項6】
車内温度センサによって得られる車内の温度情報と、
受信部によって受信される外部からの駅情報と、を取得し、
時刻計時部によって計時される時刻情報と、
車内設定温度格納部に格納される車内の設定温度情報と、
ラッシュ時間帯格納部に格納される予め決められたラッシュ時間帯情報と、
最大運転開始駅格納部に格納される過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅情報と、
最大温度開始駅格納部に格納される過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅情報と、
温度差格納部に格納される過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差の情報と、を有し、
車内温度と空調制御を行うために用いられる値である空調基準温度との差が予め決められた値を超える場合には、空調装置が有する空調コンプレッサを起動させ、車内の空調を行う車両用空調制御方法であって、
前記ラッシュ時間帯格納部を参照し、前記時刻計時部から得られる現在時刻が前記ラッシュ時間帯であった場合は、前記最大運転開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも前の駅であった場合には、前記車内設定温度格納部及び前記温度差格納部を参照し、現在の設定温度から、過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差を補正値として引いた値を前記空調基準温度にするように補正し、前記最大温度開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも後の駅であった場合には、前記補正を解除するように前記空調装置を制御する
ことを特徴とする車両用空調制御方法。
【請求項7】
車内温度センサによって得られる車内の温度情報と、
受信部によって受信される外部からの駅情報と、
外気温度センサによって得られる外気温度情報と、を取得し、
時刻計時部によって計時される時刻情報と、
車内設定温度格納部に格納される車内の設定温度情報と、
ラッシュ時間帯格納部に格納される予め決められたラッシュ時間帯情報と、
最大運転開始駅格納部に格納される過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅情報と、
最大温度開始駅格納部に格納される過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅情報と、
温度差格納部に格納される過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差の情報と、
外気温度別補正値格納部に空調基準温度の補正を行う毎に外気温度別に格納されるそれよりも過去における設定温度と車内最大温度との差の情報と、を有し、
車内温度と空調制御を行うために用いられる値である空調基準温度との差が予め決められた値を超える場合には、空調装置が有する空調コンプレッサを起動させ、車内の空調を行う車両用空調制御方法であって、
前記ラッシュ時間帯格納部を参照し、前記時刻計時部から得られる現在時刻が前記ラッシュ時間帯であった場合は、前記最大運転開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも前の駅であった場合には、前記車内設定温度格納部及び前記外気温度別補正値格納部を参照し、現在の設定温度から、前記外気温度別補正値格納部に蓄積された前記外気温度センサから得られる現在の外気温度に応じた過去における設定温度と車内最大温度との差の平均値を算出した補正値を引いた値を前記空調基準温度にするように補正し、前記最大温度開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも後の駅であった場合には、前記補正を解除する
ことを特徴とする車両用空調制御方法。
【請求項8】
車内温度センサによって得られる車内の温度情報と、
受信部によって受信される外部からの駅情報及び車両運用形態情報と、を取得し、
時刻計時部によって計時される時刻情報と、
車内設定温度格納部に格納される車内の設定温度情報と、
ラッシュ時間帯格納部に格納される予め決められたラッシュ時間帯情報と、
最大運転開始駅格納部に格納される過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅情報と、
最大温度開始駅格納部に格納される過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅情報と、
温度差格納部に格納される過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差の情報と、
車両運用形態別補正値格納部に空調基準温度の補正を行う毎に車両運用形態別に格納されるそれよりも過去における設定温度と車内最大温度との差の情報と、を有し、
車内温度と空調制御を行うために用いられる値である空調基準温度との差が予め決められた値を超える場合には、空調装置が有する空調コンプレッサを起動させ、車内の空調を行う車両用空調制御方法であって、
前記ラッシュ時間帯格納部を参照し、前記時刻計時部から得られる現在時刻が前記ラッシュ時間帯であった場合は、前記最大運転開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも前の駅であった場合には、前記車内設定温度格納部及び前記車両運用形態別補正値格納部を参照し、現在の設定温度から、前記車両運用形態別補正値格納部に蓄積された前記受信部から得られる現在の車両運用形態に応じた過去における設定温度と車内最大温度との差の平均値を算出した補正値を引いた値を前記空調基準温度にするように補正し、前記最大温度開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも後の駅であった場合には、前記補正を解除する
ことを特徴とする車両用空調制御方法。
【請求項9】
前記過去は前日であり、
前記前日が休日であった場合は、一番近い過去の平日を前記前日とする
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の車両用空調制御方法。
【請求項10】
前記前の駅は一つ前の駅であり、
前記後の駅は一つ後の駅である
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の車両用空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電車やバスなどの車両内部の空調を制御するための車両用空調システム及び車両用空調制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調システムとして、車内温度と空調基準温度との差が予め決められた値を超える場合には空調コンプレッサを起動させ、車内の発熱量が空調能力以上となる前に事前に車内温度の低下を図っているものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用空調システムでは、車内温度と空調基準温度との差が予め決められた値を超えない場合であっても、次駅における乗車率が予め決められた値を超えると予測される場合には空調コンプレッサを起動させて事前に車内温度の低下を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3842688号公報(例えば[0011]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の車両用空調システムでは、荷重センサなどを用いて乗車率を求める必要があり、処理も複雑になるという課題があった。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、複雑な処理を行うことなく車内の発熱量が空調能力以上となる前に事前に車内温度の低下を図り、車内温度の上昇を抑制する車両用空調システム及び車両用空調制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用空調システムは、空調コンプレッサを有し、車内の空調を行う空調装置と、車内の温度を検知する車内温度センサと、外部から駅情報を受信する受信部と、車内温度と空調制御を行うために用いられる値である空調基準温度との差が予め決められた値を超える場合には前記空調コンプレッサを起動させて車内を空調する空調制御装置と、を有し、前記空調制御装置は、時刻を計時する時刻計時部と、車内の設定温度を格納する車内設定温度格納部と、予め決められたラッシュ時間帯を格納するラッシュ時間帯格納部と、過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅情報を格納する最大運転開始駅格納部と、過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅情報を格納する最大温度開始駅格納部と、過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差を格納する温度差格納部と、を備え、前記ラッシュ時間帯格納部を参照し、前記時刻計時部から得られる現在時刻が前記ラッシュ時間帯であった場合は、前記最大運転開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも前の駅であった場合には、前記車内設定温度格納部及び前記温度差格納部を参照し、現在の設定温度から、過去における空調能力が最大となる運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差を補正値として引いた値を前記空調基準温度にするように補正し、前記最大温度開始駅格納部を参照し、前記受信部から得られる現在の駅が過去のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも後の駅であった場合には、前記補正を解除するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用空調システムによれば、複雑な処理を行うことなく車内の発熱量が空調能力以上となる前に事前に車内温度の低下を図り、車内温度の上昇を抑制することができるため、車内の快適性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1における車両用空調システムを構成する各部品の配置と接続関係を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態1における車両用空調システムの制御系の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1における車両用空調システムの空調制御処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施の形態2における車両用空調システムの制御系の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施の形態2における車両用空調システムの空調制御処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態3における車両用空調システムの制御系の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態3における車両用空調システムの空調制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における車両用空調システムを構成する各部品の配置と接続関係を示す模式図である。なお、図1の紙面右側を列車の進行方向とする。
図1に示すように、列車は複数の車両50が連結されて構成されている。各車両50の天井には、空調コンプレッサ2を備え車内を冷暖房するための空調装置1が設置されており、各車両50の進行方向の前側上部には空調装置1を制御する空調制御装置20が設置されている。
【0011】
また、先頭の車両50の運転席には少なくとも1つの操作スイッチ(図示省略)が搭載された操作盤が設けられており、運転員が操作盤の操作スイッチを操作すると、操作信号が空調制御装置20へ送られるように構成されている。また、各車両50には各種センサ類が設置されており、車内の天井裏には冷房運転時の車内温度を計測するリターン口温度センサ13が、壁面には暖房運転時の車内温度を計測する壁部温度センサ14がそれぞれ設置されている。以後、リターン口温度センサ13と壁部温度センサ14とを総称して車内温度センサ15と呼ぶ。
【0012】
図2は本発明の実施の形態1における車両用空調システムの制御系の構成を示すブロッ
ク図である。
図2に示すように、本実施の形態1に係る空調制御装置20は、マイクロコンピューターやDSPなどで構成されており、記憶部(図示省略)を内蔵している。また、空調制御装置20には、リターン口温度センサ13と壁部温度センサ14とから成る車内温度センサ15と、外部から駅情報(現在の駅及びその次駅の情報)を受信する受信部16と、が接続されている。そして、それらから得た情報は、空調制御装置20内の情報演算処理部21に入力され、処理される。
【0013】
また、空調制御装置20は、車内設定温度格納部22と、ラッシュ時間帯格納部23と、最大運転開始駅格納部24と、最大温度開始駅格納部25と、温度差格納部26と、時刻計時部27と、を備えている。そして、それらの有する情報は、空調制御装置20内の情報演算処理部21に入力され、処理される。
【0014】
車内設定温度格納部22は、車両50内に現在設定されている温度を格納するものである。
ラッシュ時間帯格納部23は、予め決められたラッシュ時間帯を格納するものである。このラッシュ時間帯は、例えば過去の時間毎による空調コンプレッサ2の運転状況などから求められる。
最大運転開始駅格納部24は、前日における空調能力が最大となる運転を開始した(つまり、車内の発熱量が空調能力以上となった)駅間情報(空調能力が最大となる運転を開始した駅とその次駅)を格納するものであり、例えばA駅からB駅に向かう途中で空調能力が最大となる運転を開始した場合は、A駅及び次駅としてB駅が格納される。
【0015】
最大温度開始駅格納部25は、前日のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅間情報(車内の温度が最大となった駅とその次駅)を格納するものであり、例えばC駅からD駅に向かう途中で車内の温度が最大となった場合は、C駅及び次駅としてD駅が格納される。
温度差格納部26は、前日における空調能力が最大となる(空調コンプレッサ2の)運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差を格納するものである。
時刻計時部27は、空調装置1が備える内蔵時計であって、計時した時刻情報を情報演算処理部21に出力するものである。
【0016】
図3は、本発明の実施の形態1における車両用空調システムの空調制御処理を示すフローチャートである。
次に、本発明の実施の形態1における車両用空調システムの空調制御処理を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0017】
まず、空調制御装置20は、ラッシュ時間帯格納部23を参照し、時刻計時部27から得られる現在時刻がラッシュ時間帯であるかどうかを判定する(S1)。Yesであった場合は、最大運転開始駅格納部24を参照し、受信部16から得られる現在の駅が前日における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも一つ前の駅であるかどうかを判定する(S2)。Yesであった場合は、空調基準温度の補正を行う(S3a)。ここで、空調基準温度とは空調制御を行うために用いられる値であり、車内温度と空調基準温度との差が予め決められた値を超える場合には、空調コンプレッサ2を起動させて事前に車内温度の低下を図る。
【0018】
空調基準温度の補正は、温度差格納部26の前日における空調能力が最大となる(空調コンプレッサ2の)運転を行っている時の設定温度と車内最大温度との差を、補正値として現在の設定温度から引くことによって行われる。
空調基準温度の補正を行ったら、最大温度開始駅格納部25を参照し、受信部16から得られる現在の駅が前日のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも一つ後の駅であるかどうかを判定する(S4)。Yesであった場合は、空調基準温度の補正の解除を行って(S5)、終了する。
【0019】
以上のように、本実施の形態1に係る車両用空調システムは、ラッシュ時間帯において車内の発熱量が空調能力以上となる駅を予測し、その駅に到着する前に空調コンプレッサ2を起動させるために用いられる空調基準温度を補正するという空調処理制御を行う。そうすることにより、複雑な処理を行うことなく車内の発熱量が空調能力以上となる前に事前に空調コンプレッサ2を起動させて車内温度の低下を図り、車内温度の上昇を抑制することができるため、車内の快適性を保つことができる。
【0020】
なお、本実施の形態1では、車両用空調システムの空調制御処理は平日のみ行うものとし、最大運転開始駅格納部24、最大温度開始駅格納部25、及び温度差格納部26において前日の情報に基づいているが、前日が休日であった場合には、一番近い過去の平日の情報に基づくものとする。例えば、前日が休日の日曜日であった場合には、その前日の土曜日も休日であるため、その日曜日の2日前にあたる平日の金曜日の情報に基づくものとする。また、最大運転開始駅格納部24、最大温度開始駅格納部25、及び温度差格納部26は前日の情報に限定されるものではなく、例えば先週、先月などの情報に基づいてもよい。
【0021】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2における車両用空調システムの制御系の構成を示すブロック図である。
以下、本実施の形態2について説明するが、本実施の形態1と重複するものについては省略する。
図4に示すように、本実施の形態2に係る空調制御装置20Aは、車内温度センサ15と、車外部から駅情報(現在の駅及びその次駅の情報)を受信する受信部16と、外気温度(車外温度)を検知する外気温度センサ17と、が接続されている。そして、それらから得た情報は、空調制御装置20A内の情報演算処理部21に入力され、処理される。
【0022】
また、空調制御装置20Aは、車内設定温度格納部22と、ラッシュ時間帯格納部23と、最大運転開始駅格納部24と、最大温度開始駅格納部25と、温度差格納部26と、時刻計時部27と、外気温度別補正値格納部28と、を備えている。
外気温度別補正値格納部28は、空調基準温度の補正を行う毎に、その前日における設定温度と車内最大温度との差を外気温度別に格納するものである。そして蓄積された前日における設定温度と車内最大温度との差の平均値を算出することにより、外気温度別の補正値が求められる。
【0023】
図5は、本発明の実施の形態2における車両用空調システムの空調制御処理を示すフローチャートである。
次に、本発明の実施の形態2における車両用空調システムの空調制御処理を図5のフローチャートを用いて説明する。
まず、空調制御装置20Aは、ラッシュ時間帯格納部23を参照し、時刻計時部27から得られる現在時刻がラッシュ時間帯であるかどうかを判定する(S1)。Yesであった場合は、最大運転開始駅格納部24を参照し、受信部16から得られる現在の駅が前日における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも一つ前の駅であるかどうかを判定する(S2)。Yesであった場合は、空調基準温度の補正を行う(S3b)。
【0024】
空調基準温度の補正は、外気温度別補正値格納部28を参照し、外気温度センサ17から得られる現在の外気温度に応じた補正値を現在の設定温度から引くことによって行われる。
空調基準温度の補正を行ったら、最大温度開始駅格納部25を参照し、受信部16から得られる現在の駅が前日のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも一つ後の駅であるかどうかを判定する(S4)。Yesであった場合は、空調基準温度の補正の解除を行って(S5)、終了する。
【0025】
以上のように、本実施の形態2に係る車両用空調システムはラッシュ時間帯において車内の発熱量が空調能力以上となる駅を予測し、その駅に到着する前に空調コンプレッサ2を起動させるために用いられる空調基準温度を補正するという空調処理制御を行う。そうすることにより、複雑な処理を行うことなく車内の発熱量が空調能力以上となる前に事前に空調コンプレッサ2を起動させて車内温度の低下を図り、車内温度の上昇を抑制することができるため、車内の快適性を保つことができる。また、空調基準温度の補正において、外気温度に応じた補正値を用いているため、外気温度による車内温度の変化の違いに順応できる。
【0026】
なお、本実施の形態2では、車両用空調システムの空調制御処理は平日のみ行うものとし、最大運転開始駅格納部24、最大温度開始駅格納部25、及び温度差格納部26、外気温度別補正値格納部28において前日の情報に基づいているが、前日が休日であった場合には、一番近い過去の平日の情報に基づくものとする。例えば、前日が休日の日曜日であった場合には、その前日の土曜日も休日であるため、その日曜日の2日前にあたる平日の金曜日の情報に基づくものとする。また、最大運転開始駅格納部24、最大温度開始駅格納部25、及び温度差格納部26は前日の情報に限定されるものではなく、例えば先週、先月などの情報に基づいてもよい。
【0027】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3における車両用空調システムの制御系の構成を示すブロック図である。
以下、本実施の形態3について説明するが、本実施の形態1または2と重複するものについては省略する。
図6に示すように、本実施の形態3に係る空調制御装置20Bは、車内温度センサ15と、車外部から駅情報(現在の駅及びその次駅の情報)及び車両運用形態情報(普通列車、急行列車、特急列車など)を受信する受信部16と、が接続されている。そして、それらから得た情報は、空調制御装置20B内の情報演算処理部21に入力され、処理される。
【0028】
また、空調制御装置20Bは、車内設定温度格納部22と、ラッシュ時間帯格納部23と、最大運転開始駅格納部24と、最大温度開始駅格納部25と、温度差格納部26と、時刻計時部27と、車両運用形態別補正値格納部29と、を備えている。
車両運用形態別補正値格納部29は、空調基準温度の補正を行う毎に、その前日における設定温度と車内最大温度との差を車両運用形態別に格納するものである。そして蓄積された前日における設定温度と車内最大温度との差の平均値を算出することにより、車両運用形態別の補正値が求められる。
【0029】
図7は、本発明の実施の形態3における車両用空調システムの空調制御処理を示すフローチャートである。
次に、本発明の実施の形態3における車両用空調システムの空調制御処理を図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、空調制御装置20Bは、ラッシュ時間帯格納部23を参照し、時刻計時部27から得られる現在時刻がラッシュ時間帯であるかどうかを判定する(S1)。Yesであった場合は、最大運転開始駅格納部24を参照し、受信部16から得られる現在の駅が前日における空調能力が最大となる運転を開始した駅よりも一つ前の駅であるかどうかを判定する(S2)。Yesであった場合は、空調基準温度の補正を行う(S3c)。
【0030】
空調基準温度の補正は、車両運用形態別補正値格納部29を参照し、受信部16から得られる現在の車両運用形態に応じた補正値を現在の設定温度から引くことによって行われる。
空調基準温度の補正を行ったら、最大温度開始駅格納部25を参照し、受信部16から得られる現在の駅が前日のラッシュ時間帯における車内の温度が最大となった駅よりも一つ後の駅であるかどうかを判定する(S4)。Yesであった場合は、空調基準温度の補正の解除を行って(S5)、終了する。
【0031】
以上のように、本実施の形態3に係る車両用空調システムは、ラッシュ時間帯において車内の発熱量が空調能力以上となる駅を予測し、その駅に到着する前に空調コンプレッサ2を起動させるために用いられる空調基準温度を補正するという空調処理制御を行う。そうすることにより、複雑な処理を行うことなく車内の発熱量が空調能力以上となる前に事前に空調コンプレッサ2を起動させて車内温度の低下を図り、車内温度の上昇を抑制することができるため、車内の快適性を保つことができる。また、空調基準温度の補正において、車両運用形態に応じた補正値を用いているため、車両運用形態による車内温度の変化の違いに順応できる。
【0032】
なお、本実施の形態3では、車両用空調システムの空調制御処理は平日のみ行うものとし、最大運転開始駅格納部24、最大温度開始駅格納部25、及び温度差格納部26、車両運用形態別補正値格納部29において前日の情報に基づいているが、前日が休日であった場合には、一番近い過去の平日の情報に基づくものとする。例えば、前日が休日の日曜日であった場合には、その前日の土曜日も休日であるため、その日曜日の2日前にあたる平日の金曜日の情報に基づくものとする。また、最大運転開始駅格納部24、最大温度開始駅格納部25、及び温度差格納部26は前日の情報に限定されるものではなく、例えば先週、先月などの情報に基づいてもよい。
【0033】
また、本実施の形態1〜3における空調制御処理中のS2において、一つ前の駅であるかどうかを判定しているが、一つ前の駅に限定されるものではなく、例えば二つ前の駅としてもよい。また、S4において、一つ後の駅であるかどうかを判定しているが、一つ後の駅に限定されるものではなく、例えば二つ後の駅としてもよい。また、車両で説明しているが、例えばバスでもよく、その場合は駅ではなく停留所となる。
【符号の説明】
【0034】
1 空調装置、2 空調コンプレッサ、13 リターン口温度センサ、14 壁部温度センサ、15 車内温度センサ、16 受信部、17 外気温度センサ、20 空調制御装置、20A 空調制御装置、20B 空調制御装置、21 情報演算処理部、22 車内設定温度格納部、23 ラッシュ時間帯格納部、24 最大運転開始駅格納部、25 最大温度開始駅格納部、26 温度差格納部、27 時刻計時部、28 外気温度別補正値格納部、29 車両運用形態別補正値格納部、50 車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7